JP2011173953A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】環式ポリアリーレンスルフィドを有機カルボン酸化合物の存在下に加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。有機カルボン酸化合物としてはアリール酢酸の塩などがあげられ、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.001〜20モル%存在下で加熱することが好ましい。
【選択図】なし
Description
1.環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも一種の有機カルボン酸化合物またはその塩の存在下に加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法、
2.有機カルボン酸化合物が有機カルボン酸金属塩であることを特徴とする前記1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
3.有機カルボン酸化合物が非置換または核置換されたアリール酢酸化合物であることを特徴とする前記1または2項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
4.有機カルボン酸化合物が電子吸引性置換基により核置換されたアリール酢酸化合物であることを特徴とする前記1から3項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
5.加熱の際に有機カルボン酸化合物からカルボアニオンが生じることを特徴とする前記1から4項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
6.カルボアニオンがベンジルカルボアニオンであることを特徴とする前記5に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
7.加熱を実質的に溶媒を含まない条件下で行うことを特徴とする前記1から6項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
8.環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001〜20モル%の有機カルボン酸化合物存在下で加熱することを特徴とする前記1から7項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
9.加熱を340℃以下で行うことを特徴とする前記1から8項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
10.加熱を300℃以下で行うことを特徴とする前記1から9項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
11.環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる下記式中の繰り返し数(m)が4〜50であることを特徴とする前記1〜10項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、
12.環式ポリアリーレンスルフィドが環式ポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする前記1から11項のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法、である。
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法における環式ポリアリーレンスルフィドとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき環式化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
本発明は前述した環式ポリアリーレンスルフィドを、少なくとも一種の有機カルボン酸化合物またはその塩の存在下に加熱することを特徴としてポリアリーレンスルフィドを製造する。ここで有機カルボン酸化合物とは一般式R(COOH)nで表される化合物であり、その塩とは一般式R(COOM)nで表される化合物であって、これらの中でも後者の塩の形態がより好ましい。ここで、この式中Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基であり、中でもアリールアルキル基が好ましい。また、前記式中Mはアルカリ金属、即ちナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムが好ましく、中でもリチウムおよびナトリウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。また同じく前記式中、nは1〜3の整数であり、1が好ましい。
本発明におけるポリアリーレンスルフィドを製造する際の加熱温度は、環式ポリアリーレンスルフィドが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限はない。ただし、加熱温度が環式ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度未満ではポリアリーレンスルフィドを得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環式ポリアリーレンスルフィドが溶融解する温度は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環式ポリアリーレンスルフィドを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。加熱温度の下限としては、180℃以上が例示でき、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。この温度範囲では、環式ポリアリーレンスルフィドが溶融解し、短時間でポリアリーレンスルフィドを得ることができる。一方、温度が高すぎると環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるポリアリーレンスルフィドの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度の上限としては、400℃以下が例示でき、好ましくは340℃以下、より好ましくは320℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。この温度囲下では、好ましくない副反応による得られるポリアリーレンスルフィドの特性への悪影響を抑制できる傾向にあり、前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
ポリアリーレンスルフィド及び環式ポリアリーレンスルフィドの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:shodex UT−806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を14.03g(0.120モル)、96%水酸化ナトリウムを用いて調製した48重量%水溶液12.50g(0.144モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.0g(6.20モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.35MPaであった。次いで200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。得られた内容物をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp−DCBの消費率は93%、反応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに転化すると仮定した場合の環式PPS生成率は18.5%であることがわかった。
ガラス製ナスフラスコに水酸化ナトリウム(0.284g,7.1mmol;アルドリッチ社製品)およびメタノール10mlを加えて水酸化ナトリウムのメタノール溶液を調製した。4―クロロフェニル酢酸(1.21g,7.1mmol;東京化成社製品)をメタノール4mlに溶解させ、水酸化ナトリウムのメタノール溶液に滴下した。得られた溶液をエバポレーションすることでメタノールを除去した後、さらに70℃にて真空乾燥を1晩行って乾燥させた。反応前の4−クロロフェニル酢酸の赤外分光分析における吸収スペクトルで観察されたカルボニルのピーク(1698cm−1)が、乾燥後に得られた白色固体では1570cm−1にシフトしたことから、4―クロロフェニル酢酸ナトリウム塩の生成を確認した。
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して参考例1で得られた4−クロロフェニル酢酸ナトリウム塩を1モル%混合した粉末100mgを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。300℃に温調したヒーター内にアンプルを設置し60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、樹脂状ペレットを得た。
4−クロロフェニル酢酸ナトリウムの変わりに4−クロロフェニル酢酸を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を実施した。
ここでは特許文献1に開示されているポリアリーレンスルフィドの製造方法、即ち有機カルボン酸化合物を用いずに環式ポリアリーレンスルフィドの加熱を行った例を示す。
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィド100mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。300℃に温調したヒーター内にアンプルを設置し60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、茶色の樹脂状ペレットを得た。
ここでは特許文献3〜5に開示されているポリアリーレンスルフィドの製造方法、即ち環状アリーレンスルフィドオリゴマーをチオフェノールのナトリウム塩を触媒として用いて加熱開環重合する方法に従ってポリアリーレンスルフィドの製造を行った例を示す。
4−クロロフェニル酢酸ナトリウムの変わりにチオフェノールのナトリウム塩(アルドリッチ社製品)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を実施した。
加熱温度を280℃に変えた以外は実施例1と同様に実施し樹脂状ペレットを得た。得られたペレットは1−クロロナフタレンに250℃で全溶であったこと、赤外スペクトルがポリフェニレンスルフィドに一致したことから、生成物は線状ポリフェニレンスルフィドであることがわかった。また、HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドの残存率は79%であり、21%がポリフェニレンスルフィドに転化したことがわかった。
加熱温度を280℃に変えた以外は比較例1と同様に実施し樹脂状ペレットを得た。得られたペレットは1−クロロナフタレンに250℃で全溶であったこと、赤外スペクトルがポリフェニレンスルフィドに一致したことから、生成物は線状ポリフェニレンスルフィドであることがわかった。また、HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドの残存率は85%であり、15%がポリフェニレンスルフィドに転化したことがわかった。
実施例3と比較例3と対比から、加熱温度を低下させた場合にも有機カルボン酸化合物を用いることによる反応の促進効果が確認された。
Claims (12)
- 環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも一種の有機カルボン酸化合物またはその塩の存在下に加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 有機カルボン酸化合物が有機カルボン酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 有機カルボン酸化合物が非置換または核置換されたアリール酢酸化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 有機カルボン酸化合物が電子吸引性置換基により核置換されたアリール酢酸化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱の際に有機カルボン酸化合物からカルボアニオンが生じることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- カルボアニオンがベンジルカルボアニオンであることを特徴とする請求項5に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱を実質的に溶媒を含まない条件下で行うことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001〜20モル%の有機カルボン酸化合物存在下で加熱することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱を340℃以下で行うことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱を300℃以下で行うことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィドが環式ポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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