JP2013010345A - ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回転成形方法とその成形体 - Google Patents

ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回転成形方法とその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】回転成形時に気泡の発生が極めて少なく、表面平滑性や厚肉の均一性、機械物性に優れた成形体を得ることが可能なポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回転成形方法、およびその回転成形体を提供すること。
【解決手段】特定構造を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を金型内で、回転しながら開環重合することを特徴とする回転成形方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回転成形に関し、気泡やクラックが極めて少なく、表面平滑性や厚肉の均一性に優れた成形体を製造可能な、生産性に優れる回転成形方法および該方法により得られる成形体を提供するものである。
ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、耐湿熱性、難燃性、不純物の非溶出性、耐摩耗性、摺動性、耐放射線性などエンジニアリングプラスチックとして極めて好適な性質を有する樹脂である。特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、PEEK樹脂と略することもある)は、射出成形、押出成形などの溶融成形加工法により各種成形部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、電気・電子部品や機械部品および自動車部品など高い耐熱性や耐薬品性、低汚染性の要求される分野で用いられつつある。
また、特に粉末を用いた回転成形により成形されたポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の成形体は、大型化が可能であり、上記の優れた特徴を活かし各種分野においてさらなる応用が期待されている。
回転成形法では、金型のキャビティー内に粉末上の熱可塑性樹脂を仕込み、金型を一軸または二軸もしくは斜角をつけて回転させながら炉内で加熱して、金型内壁に均一な樹脂融液層を形成させた後、金型を冷却して樹脂層を固化させ、金型を開いて成形体を取り出す方法により成形体を製造している。特に本成形方法によれば、従来の溶融成形加工方法、たとえばブロー成形、真空成形、射出成形などでは製造することが困難な大型の成形体までも成形可能となり、さらに他の成形方法では成形不可能な複雑な形状を有する成形体の製造が可能であり、さらに従来の成形方法とは異なり異方性、偏肉、厚みムラがない成形体の製造が可能である。また金型として金属製容器を用いると、金型製容器の内面に樹脂層がライニングされた容器を得ることができるなどの特徴を有している。金属製容器を用いる後者の方法は、回転ライニング技術として、通常の粉末ライニング法に比べて、安定した膜厚のライニング品が得られるという特徴を有している。
特許文献1には、低粘度のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂を用いた回転成形が開示されているが、本技術により得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂を用いても、回転成形による加工性は悪く、さらに、得られる成形体の機械強度に問題があった。このように、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂そのものの流動性をさらに向上させることにより回転成形加工性をより向上させ、得られる回転成形体の品質を向上させるには、さらなる低粘度化が必要である。しかしながら、低分子量ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂を使用して低溶融粘度化する手法が一般的であるが、本手法により回転成形性は向上する傾向になるものの、低分子量化に伴い、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂本来の機械特性や耐薬品性などが低下するという問題があった。すなわち従来技術による回転成形性の向上と回転成形品の品質向上は二律背反するものであり、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の回転成形に関しては抜本的な改良が望まれていた。
特許文献2は、本発明のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂とは全く異なるポリマー材料であるが、ナイロン6の原料であるω−ラクタムをアニオン重合開始剤とともに、金型に注入し、金型内で短時間でアニオン重合し、中空成形品を得ることが開示されている。しかしながらこの技術はω−ラクタムのアニオン重合により得られるナイロン6からなる回転成形品を製造する場合にのみ有効である。ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の重合方法はナイロン6とは全く異なるため、本技術によりポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂回転成形品を製造することは当然のことながら不可能であった。またナイロン6の成形品は、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂に比べ、耐熱性、耐薬品性に劣るという材料の化学構造由来の本質的な問題があった。
同じように特許文献3には、環状ポリフェニレンスルフィドを加熱することにより、金型内で短時間で重合し、得られるポリフェニレンスルフィド樹脂の回転成形体を得ることが開示されているものの、本技術も環状ポリフェニレンスルフィドの加熱重合によるポリフェニレンスルフィド樹脂の回転成形体を製造する限りにおいて有効であるといえる。また、ポリフェニレンスルフィドはポリフェニレンエーテルエーテルケトンと比較して耐熱性に劣るという問題点も解消されていない。
発明者らは、これらの従来技術の解決課題を鑑み、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の回転成形性を抜本的に改良するためには、まず回転成形機内において、低粘度のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の前駆体を加熱により急速に重合させ、高分子量のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂を得る技術が必要であると考えた。
そのための低粘度のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の前駆体として、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが非特許文献1に記載されており、さらに加熱により重合させる方法として、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンをイオン性の開環重合触媒下で加熱開環重合する方法が開示されている。しかしながら、本非特許文献には回転成形品を製造する方法は開示されていないが、本法で得られる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは高融点であり、高い加工温度が必要であることから、得られる回転成形体の熱劣化により十分な物性が得られないことが問題点として挙げられる。
以上のように、金型成形機内での重合が比較的低温で速やかに進行し、かつ品質の高いポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂成形品を得ることのできる回転成形方法の創出が強く望まれていた。
特表2009−540094号公報 特開平10−287743号公報 特開2008−200986号公報
Macromolecules、29巻、p5502(1996年)
本発明は、気泡やクラックが極めて少なく、表面平滑性や厚肉の均一性に優れ、かつポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂本来の特徴を有する大型成形体を得ることが可能であり、かつ生産性に優れる回転成形方法、および該方法により得られる回転成形体を提供するものである。
発明者らは、本技術課題に対し、特定の環構造を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン化合物を用いることにより金型内で急速重合することが可能となること、さらに該手法により回転成形加工の生産性が向上し、気泡やクラックが極めて少なく表面平滑性や厚み均一性に優れた成形体を得ることが可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含み、かつ270℃以下の融点を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を、金型内で回転しながら開環重合することを特徴とする回転成形方法、
Figure 2013010345
(mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい)、
(2)金型内で回転しながら開環重合する際、触媒存在下で重合を行うことを特徴とする上記(1)に記載の回転成形方法、
(3)金型内で回転しながら開環重合する際の加熱温度が環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点以上400℃以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の回転成形方法、
(4)環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が、前記一般式(I)におけるmが連続する少なくとも3つ以上の異なる整数である環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の回転成形方法、
(5)金型内で回転しながら開環重合する際の加熱時間が5分以上120分以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の回転成形方法、
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の回転成形方法により製造される成形体、
を提供するものである。
本発明により、気泡やクラックが極めて少なく、表面平滑性や厚肉の均一性に優れ、高強度の成形体を得ることが可能な、生産性に優れるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回転成形方法および、該方法により得られる回転成形体を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明で使用する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物について説明する。
(1)環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物
本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物とは、少なくとも1つのフェニレンケトン、および少なくとも1つのフェニレンエーテルを繰り返し構造単位に持つ、下記一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む組成物である。
Figure 2013010345
式(I)における繰り返し数mの範囲に特に制限はないが、2〜40が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜15がさらに好ましく、2〜10が特に好ましい範囲として例示できる。繰り返し数mが大きくなると環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの融点が高くなる傾向にあるため、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを低温で溶融解させるとの観点から、繰り返し数mを前記範囲にすることが好ましい。
本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含むという特徴を有する。中でも、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを65重量%以上含む組成物であることがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましく、75重量%以上含む組成物であることがよりいっそう好ましい。60重量%未満である場合、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回転成形時における溶融粘度が高くなり、得られる成形品の表面平滑性や強度が低下する傾向がある。なお、ここで環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中の、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー等により測定することができる。
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における不純物成分、すなわち環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分としては線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを主に挙げることができる。この線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは融点が高いため、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が高くなると環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が高くなる傾向にある。従って、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が上記範囲にあることで、融点の低い環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物となる傾向にあり、さらに環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を回転成形に供した際に、十分に高重合度化が進行したポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂が得られ、良好な機械物性と易加工性を両立することが可能となる。
また、式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは少なくとも異なる3つ以上の繰り返し数mからなる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物であるという特徴を有し、4つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることがさらに好ましく、5つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることがより好ましい。さらに、これら繰り返し数mが連続するものであることが特に好ましい。単一の繰り返し数mを有する単独化合物、2種類の異なる繰り返し数mからなる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと比べて、3種類以上の繰り返し数mからなる混合物の融点は低くなる傾向にあり、さらに不連続の繰り返し数mからなる混合物よりも連続する繰り返し数mからなる混合物の方がさらに融点が低くなる傾向にある。これにより、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を簡便な方法で、つまり回転成形温度を高温にすることなく、回転成形加工することが可能となり、さらに回転成形加工時の流動性が向上し、気泡やクラックが少なく、かつ表面平滑性に優れる良回転成形加工性が得られるという優れた特徴を発現する。
また、本発明の一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは、繰り返し数m=2〜8までの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの総重量を100%とした場合に、繰り返し数m=2、3それぞれの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンをそれぞれ少なくとも5重量%以上含む混合物であることが好ましく、それぞれ少なくとも6重量%以上含む混合物であることがより好ましく、7重量%以上含む混合物であることがさらに好ましく、8重量%以上含む混合物であることがよりいっそう好ましい。さらに、これらに加えて繰り返し数m=4の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が5重量%以上である混合物であることが特に好ましい。一般的に繰り返し数mの小さい環状化合物は、繰り返し数mの大きな環状化合物と比較して環歪みが大きく、開環し易い環骨格であると考えられる。従って、繰り返し数m=2,3または4といった繰り返し数mの小さい環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が高い混合物であるほど、開環重合による高分子量化反応が進行しやすい傾向にあるため上記環組成を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物が好ましい。なおここで、各繰り返し数mを有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは高速液体クロマトグラフィーによる分割分析が可能であり、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の環組成、即ち環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物に含まれる各繰り返し数mを有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率は、高速液体クロマトグラフィーにおける各環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのピーク面積比率より算出することが可能である。
さらに、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は融点が270℃以下であり、対応する線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと比較して大幅に融点が低いという特徴を有する。その融点としては250℃以下であることが好ましく例示でき、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が低いほど回転成形温度を下げることが可能であり、加工に要するエネルギーを低減し得るとの観点で有利となる。融点が270℃を超える組成物は、溶融時の流動性が低下し、成形加工性が低下し、それに伴って得られる成形品の外観や機械物性が悪化する傾向にある。なおここで、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点は示差走査型熱量測定装置を用いて昇温時における吸熱ピーク温度を観測することにより測定することが可能である。
上記のような特徴を有する本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度(η)としては、0.1dL/g以下であることが好ましく例示でき、0.09dL/g以下であることがより好ましく、0.08dL/g以下であることがさらに好ましく例示できる。なお、還元粘度は、98%硫酸などの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が溶解する溶媒を用いて、オストワルド型粘度計等により測定することができる。還元粘度が0.1dL/gより大きい場合、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回転成形時における溶融粘度が高くなり、得られる成形品の表面平滑性や強度が低下する傾向がある。還元粘度が0.1dL/g以下の場合、成型加工性が良好となり、表面平滑性および強度に優れた成形品を得ることが可能となる。
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法としては、上記した特徴を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを製造できれば如何なる方法でも問題ないが、好ましい方法として(a)少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる製造方法、(b)少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる製造方法を用いることが可能である。
ここで、ジハロゲン化芳香族ケトン化合物の具体例としては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジヨウ化ベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−クロロベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ヨウ化ベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ヨウ化ベンゾフェノン、4−ブロモ−4’−ヨウ化ベンゾフェノンなどが挙げられ、これらの中でも4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンが好ましく、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンがより好ましい具体例として挙げることができる。
塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどのアルカリ土類金属の重炭酸塩、または水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができ、なかでも経済性・反応性の観点から炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、および炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの重炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがさらに好ましく用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても問題ない。また、アルカリは無水物の形で用いることが好ましいが、水和物または水性混合物として用いることも可能である。なお、ここでの水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことを指す。
また、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造において用いる有機極性溶媒としては、反応の阻害や生成した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解などの好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。このような有機極性溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ジフェニルエーテルなどのジアリールエーテル類、ベンゾフェノン、アセトフェノンなどのケトン類、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらはいずれも反応の安定性が高いため好ましく使用されるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましく用いられる。これら有機極性溶媒は高温領域での安定性に優れ、さらに入手性の観点からも好ましい有機極性溶媒であると言える。
ジヒドロキシ芳香族化合物としては、ヒドロキノンを好ましい具体例として挙げることができる。
上記製造方法(a)もしくは(b)による方法により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の混合物中の有機極性溶媒の量は、好ましくは混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対して1.15リットル以上、より好ましくは1.30リットル以上、さらに好ましくは1.50リットル以上、特に好ましくは2.0リットル以上である。また、混合物中の有機極性溶媒量の上限に特に制限はないが、混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対して100リットル以下であることが好ましく、50リットル以下がより好ましく、20リットル以下がさらに好ましく、10リットル以下が特に好ましい。有機極性溶媒の使用量を多くすると、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成の選択率が向上する傾向となるが、多すぎる場合、反応容器の単位体積当たりの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成量が低下する傾向にあり、さらに反応に要する時間が長時間化する傾向にある。従って、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成選択率と生産性を両立するとの観点から、前記した有機極性溶媒の使用範囲とすることが好ましい。なお、ここでの有機極性溶媒の量は、常温常圧下での溶媒の体積を基準とし、反応混合物における有機極性溶媒の使用量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒量から脱水操作中などに反応系外に除外された有機極性溶媒量を差し引いた量である。また、ここでの混合物中のベンゼン環成分とは、反応により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構成成分となり得る原料に含まれるベンゼン環成分であり、これら原料におけるベンゼン環成分の「モル数」とは「化合物を構成するベンゼン環の数」を表す。例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンはベンゼン環成分2モル、ヒドロキノン1モルはベンゼン環成分1モル、さらに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1モルとヒドロキノン1モルを含む混合物はベンゼン環成分3モルを含む混合物と計算する。なお、トルエンなど反応により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構成成分と成り得ない成分はベンゼン環成分0モルとみなす。
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法(a)における塩基の使用量は、ジハロゲン化芳香族ケトン化合物に対して化学量論的比率より大きい比率であればよく、塩基の具体的な使用量は、例えば炭酸ナトリウムや炭酸カリウムのような2価の塩基の使用量をAモル、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムのような1価の塩基の使用量をBモルとした場合、製造方法(a)により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際に用いたジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して(A+2B)が1.00モルから1.25モルの範囲にあることが好ましく、1.00モルから1.15モルの範囲にあることがより好ましく、1.00モルから1.10モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。
一方で、少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法(b)における塩基の使用量は、ジヒドロキシ芳香族化合物に対して化学量論的比率より大きい比率であればよく、塩基の具体的な使用量はジヒドロキシ芳香族化合物に対して(A+2B)が1.00から1.10モルの範囲にあることが好ましく、1.00モルから1.05モルの範囲にあることがより好ましく、1.00から1.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。また、製造方法(b)による方法で、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際に、別途調製したジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を用いる場合には、塩基を追加して、過剰量の塩基を供給することができる。この供給する塩基の過剰量は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造するために用いたジヒドロキシ芳香族化合物1.0モルに対して(A+2B)が0〜0.10モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.05モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。製造方法(b)において環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の塩基の使用量がこれら好適な範囲にあることにより、ジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を十分に生成させることが可能であり、さらに大過剰の塩基による生成した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解反応といった好ましくない反応の進行を抑制することもできるため好ましい。
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、および有機極性溶媒を含む混合物、もしくは少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、および有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる反応温度は、反応に用いるジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒さらにはジヒドロキシ芳香族化合物の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120〜350℃、好ましくは130〜320℃、より好ましくは140〜300℃の範囲が例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られる傾向にある。また、反応は一定の温度で行う1段階反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでも構わない。
反応時間は、使用した原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定することはできないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を十分に減少できる傾向にある。一方、反応時間に特に上限はないが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる際、もしくは少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる際、混合物には前記必須成分以外に反応を著しく阻害しない成分や、反応を加速する効果を有する成分を加えることも可能である。また、反応を行う方法に特に制限はないが、撹拌条件下に行うことが好ましい。さらに、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する方法においては、バッチ式および連続式などの公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さから窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
また、上記反応は反応系内に水が多量に存在すると、反応速度の低下や環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの分離が困難な副反応生成物が生成するといった悪影響が顕在化する傾向にある。従って、塩基として水和物や水性混合物を用いた場合の水や、反応により副生する水を反応系外に除外することが重要である。反応中に系内に存在する水分量としては2.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがさらに好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましく、この好ましい範囲以下となるように必要に応じて脱水操作を行うことが重要となる。なお、ここでの系内に存在する水分量は反応混合物総重量に対する重量分率であり、水分量はカールフィッシャー法により測定することができる。脱水操作を行う時期に特に制限はないが、(ア)製造方法(a)もしくは(b)における必須成分を混合した後、または(イ)ジハロゲン化芳香族ケトン化合物以外の必須成分を混合した後であることが好ましい。ここで、(イ)による方法で脱水操作を行った場合、脱水操作後にジハロゲン化芳香族ケトン化合物、もしくはジハロゲン化芳香族ケトン化合物および有機極性溶媒を加えることにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造を行う。水の除去方法としては、反応系外に水を取り除くことができれば如何なる方法でも良く、例えば高温加熱による脱水や共沸溶媒を用いた共沸蒸留による方法が挙げられ、なかでも脱水効率の観点から共沸蒸留による方法が好ましい方法として挙げられる。ここで、共沸蒸留に用いられる共沸溶媒としては、水との共沸混合物を形成し得る有機化合物であり、且つ共沸混合物の沸点が反応に用いる有機極性溶媒の沸点よりも低いものであれば問題なく、具体的にはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの不活性塩素化芳香族化合物などが挙げられ、なかでもトルエン、キシレンを好ましい共沸溶媒として挙げることができる。また、共沸溶媒の量は系内に存在する水の量や溶媒の種類により水との共沸混合物を形成するための必要量が異なるため一概に規定することはできないが、反応系内の水を共沸混合物として除去するのに必要な量よりも過剰量の溶媒を用いるのが好ましく、具体的には混合物中のジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して0.2リットル以上が好ましく、0.5リットル以上がより好ましく、1.0リットル以上がさらに好ましい。さらに共沸溶媒量の上限に特に制限はないが、混合物中のジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して20.0リットル以下であることが好ましく、10.0リットル以下であることがさらに好ましく、5.0リットル以下であることがより好ましい。共沸溶媒の使用量が多すぎる場合、混合物の極性が低下するため、塩基とジハロゲン化芳香族ケトン化合物の反応、もしくは塩基とジヒドロキシ芳香族化合物の反応の効率が低下する傾向にある。なお、ここでの共沸溶媒の量は、常温常圧下での溶媒の体積を基準とする。また、ディーン・スターク装置の原理を用いて水の共沸蒸留を行う場合、反応系内の共沸溶媒量を常に一定に保つことができるため、用いる共沸溶媒量をさらに少なくすることも可能である。反応系外に水を取り除く際の温度は、共沸溶媒の種類により水との共沸混合物の沸点が異なるため一意的に決めることはできないが、水との共沸混合物の沸点以上であり反応に用いる有機極性溶媒の沸点以下であることが好ましく、具体的には60〜170℃の範囲が例示でき、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜170℃の範囲が例示できる。なお、水の除去は好ましい温度範囲内における一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、もしくは連続的に温度を変化させていく形式の方法のいずれでも構わない。さらに、上記共沸蒸留を減圧下で行うことも好ましい方法であり、減圧下で行うことにより、より効率よく水の除去を行える傾向にある。
上記の共沸溶媒は、共沸蒸留後に系内から除外することが好ましい。共沸溶媒を系内から除外する時期は水の共沸蒸留の終了後であることが好ましく、さらに上記(イ)による方法で脱水操作を行った場合、共沸溶媒の除去はジハロゲン化芳香族ケトン化合物、もしくはジハロゲン化芳香族ケトン化合物および有機極性溶媒を加える前の段階で行うことが好ましい。共沸溶媒が系内に多量に残存すると、反応系の極性が下がり、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応速度が低下する傾向にあるため、共沸溶媒の除去操作は必要となる。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応中に系内に存在する共沸溶媒量としては、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応に用いている有機極性溶媒に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが特に好ましい。この好ましい範囲以下となるように共沸溶媒の除去を行うことが重要である。共沸溶媒の除去方法としては蒸留による方法が好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスをキャリアーガスとして用いても良い。また、減圧下で蒸留を行うことも好ましい方法であり、より効率よく共沸溶媒の除去が可能となる傾向にある。また、共沸溶媒の除去を行う温度は、共沸溶媒を反応系から除外できれば如何なる温度でも良いが、具体的には60〜170℃の範囲が例示でき、好ましくは100〜170℃、より好ましくは120〜170℃、さらに好ましくは140〜170℃の範囲が例示できる。なお、共沸溶媒の除去は好ましい温度範囲における一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、あるいは連続的に温度を変化させていく形式のいずれでも構わない。
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、前述した製造方法により得られた反応混合物から分離回収することにより得ることが可能である。上記製造方法により得られた反応混合物には少なくとも環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応原料や副生塩、水、共沸溶媒などが含まれる場合もある。この様な反応混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを回収する方法に特に制限はなく、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留などの操作により除去した後に、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体として回収する方法が例示できる。このような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
このような溶剤による処理を行うことにより、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。この処理により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは共に固体成分として析出するので、公知の固液分離法により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を回収することが可能である。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能であり、これにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
また、上記の溶剤による処理方法としては、溶剤と反応混合物を混合する方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。溶剤による処理を行う際の温度に特に制限はないが、20〜220℃の範囲が好ましく、50〜200℃の範囲がさらに好ましい。このような範囲では例えば副生塩の除去が容易となり、また比較的低圧の状態で処理を行うことが可能であるため好ましい。ここで、溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、また、硫酸やリン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いることも可能である。この処理後に得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体が、処理に用いた溶剤を含有する場合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。
上記した回収方法では、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物として回収され、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が得られる。この組成物の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの含有量をさらに上げるために、この混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを分離回収する方法としては、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶解性の差を利用した分離方法、より具体的には、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性が高く、且つ線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性に乏しい溶剤を、必要に応じて加熱下で上記環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物と接触させて、溶剤可溶成分として環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得る方法が例示できる。一般に線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは結晶性が高く、溶剤への溶解性が非常に低いという特徴を有することが知られており、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解性の違いが大きいため、上記の溶解性の差を利用した分離方法により効率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることが可能である。
ここで用いる溶剤としては環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解するが、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しない溶剤がより好ましい。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。このような観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、上記混合物を溶剤と接触させる操作を、例えば常圧還流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、なかでもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1、2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2、6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの観点から窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
上記、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記した通り、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物の溶剤との接触は常圧下で行うことが好適であるため、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での還流温度にすることが好ましく、前記した好ましい溶剤を用いる場合には例えば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤の種類や温度などによって異なるため一意的には限定できないが、例えば1分〜50時間が例示でき、このような範囲では環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解が十分になる傾向にある。
上記混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く、特に限定はないが、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を混合し、必要に応じて撹拌した後に溶液部分を回収する方法、各種フィルター上の上記混合物に溶剤をシャワーすると同時に環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、例えば混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比がこの様な範囲の場合、上記混合物と溶剤を均一に混合し易く、また環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが溶剤に十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に浴比が大きい方が環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不益が生じることがある。なお、混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果が得られる場合が多く、ソックスレー抽出法は、その原理上、類似の効果が得られるのでこの場合も小さい浴比で十分な効果が得られる場合が多い。
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を溶剤と接触させた後に、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解した溶液が固形状の線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することが好ましい。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。このようにして分離した溶液から溶剤の除去を行うことにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回収が可能となる。一方、固体成分については環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンがまだ残存している場合、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることも可能である。
前述のようにして得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液から溶剤の除去を行い、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを固形成分として得ることが可能である。ここで溶剤の除去は、例えば加熱し、常圧下で処理する方法や、膜を利用した溶剤除去を例示できるが、より収率良く、また効率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述のようにして得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに属する物であるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収することが好ましく、これにより収率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得られるようになる。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが好ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の種類に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温でおこなうことが可能となる。
(2)環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回転成形方法
次に本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を用いた回転成形方法について説明する。
本発明は、前記ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を成形金型内で、回転しながら加熱重合することにより回転成形することを特徴としている。すなわち、通常の回転成形方法は高分子量の樹脂を成形金型内で溶融させたポリマー融液を、回転させることで金型内壁にポリマー融液層を形成させることにより成形体を製造するが、本発明は、高分子量の樹脂の原料となる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を成形金型内で、回転しながら加熱重合することで、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物融液を金型内壁に形成させ、融液状態のまま高分子量化させることにより回転成形体を製造するものである。
ここで、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、粉体状態のまま閉じた金型内に供給することができるし、あるいは融液状態となる温度に加熱した後、閉じた金型内に融液状態で供給することもできる。
加熱重合温度(すなわち回転成形温度)は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点以上400℃以下が好ましく、好ましくは270℃以上400℃以下、より好ましくは280℃以上380℃以下であり、さらに好ましくは280℃以上340℃以下である。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点以上では、金型内に均一な樹脂層を形成することが容易であり、また環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂への転化が促進されるため好ましい。また400℃以下では、得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の熱劣化を抑制できるため好ましい。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重合性や最終的に得られる回転成形品の厚みむらや機械物性の面から、加熱重合温度は280℃以上340℃以下が特に好ましい。
なお、ここで環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が溶融解する温度は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン含有量や繰り返し数mの組成、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を示差走査型熱量計で分析することで環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点(Tm)を測定することが可能である。
また回転方法としては、水平および垂直の方向へ一軸または同時二軸回転、あるいは斜角回転を与えることができる。また回転成形時の回転数は特に制限はないが、金型内壁に均一に環状PPS化合物を付着・重合・溶融させるためには、通常1〜100rpmが好ましく、さらに好ましくは2〜50rpmである。
成形金型内での環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は、非酸化性雰囲気で行うこともでき、減圧条件下で行うこともできる。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることもできる。これにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物間、加熱により生成したポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂間、及びポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂と環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によっては環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物に含まれる、分子量の低い環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンやその他低分子量オリゴマーが揮散しやすくなる傾向にある。
成形金型内での加熱重合時間としては1分以上〜180分以下が例示でき、3分〜150分が好ましく、5分〜120分がより好ましく、さらに5分〜60分がさらに好ましい。1分未満では環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂への転化が不十分になりやすく、180分を超えると、回転成形加工時間が長くなり、生産性が著しく悪化することや、好ましくない副反応により、得られるポリフェニレンエーテル樹脂の特性への悪影響が顕在化する場合がある。また環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の重合性や最終的に得られる回転成形品の厚みむらや機械物性の面から、加熱重合時間は5分〜120分が特に好ましい。また、5分〜60分では生産性と得られる回転成形品の外観および機械物性を両立できるため、最も好ましい。
成形金型内における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合においては、触媒の非存在化または触媒の存在下に行うことができる。ここでの触媒とは、本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合反応を加速させる効果のある化合物であれば特に制限はなく、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、遷移金属触媒など公知の触媒を用いることができるが、なかでもアニオン重合開始剤が好ましい。アニオン重合開始剤としては、無機アルカリ金属塩または有機アルカリ金属塩を例示することができ、無機アルカリ金属塩としてはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物を例示でき、また有機アルカリ金属塩としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドまたは、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウム4−フェノキシフェノキシド、カリウム4−フェノキシフェノキシドなどのアルカリ金属フェノキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩を例示することができる。また、これらアニオン重合開始剤は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を求核攻撃することにより触媒作用を発現していると推測している。従って、これらアニオン重合開始剤と同等の求核攻撃能を有する化合物を触媒として用いることも可能であり、このような求核攻撃能を有する化合物としては、アニオン重合性末端を有するポリマーを挙げることができる。これらアニオン重合開始剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合をこれら好ましい触媒の存在下に行うことにより、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂が短時間で得られる傾向にあり、具体的には加熱開環重合の加熱時間として、2時間以下、さらには1時間以下、0.5時間以下が例示できる。
使用する触媒の量は、目的とするポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の分子量ならびに触媒の種類により異なるが、通常、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の繰り返し単位1モルに対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.005〜15モル%、さらに好ましくは0.01〜10モル%である。この好ましい範囲の触媒量を添加することにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合がより短時間で進行する傾向にある。
これら触媒の添加に関しては、そのまま添加しても構わないが、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物に触媒を添加した後、均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法などが挙げられる。機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を適宜な溶媒に溶解または分散し、これに触媒を加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。また、触媒の分散に際して、触媒が固体である場合、より均一な分散が可能となるため重合触媒の平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
本方法により得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の分子量は、最終的に得られる回転成形体の機械物性やポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂本来の特徴を維持する観点からも、重量平均分子量(Mw)で10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上である。重量平均分子量が10,000未満では得られる回転成形品の機械強度のみならず、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂本来の特性が損なわれる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、更に好ましくは200,000未満であり、この範囲内では優れた機械強度、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂本来の特性を有する回転成形体を得ることができる。ここでポリフェニレンエーテルエーテルケトン回転成形体の重量平均分子量は、有機溶媒可溶化(非晶化)処理を施した後にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した値である。
このように成形金型内で回転しながら加熱重合し、高分子量化させた後、金型を回転させたまま冷却することにより樹脂層を固化させた後、金型を開いて成形品を取り出すことにより、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂からなる回転成形体を製造することができる。
(3)その他の成分
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに繊維状および/または非繊維状充填材を配合することができる。その配合量は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物100重量部に対し400重量部までの範囲で配合することが可能であり、より高い機械的性質、寸法安定性等を得る意味においては、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物100重量部に対し維状および/または非繊維状充填材を0.1〜350重量部配合することが好ましい。
本発明において必要に応じて配合される繊維状および/または非繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をシラン系あるいはチタネート系などのカップリング剤で予備処理して使用することは、機械的強度などの面からより好ましい。
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤、結晶核剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などの通常の添加剤を添加することができる。また、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリ四フッ化エチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリエステル、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ等の樹脂を含んでも良い。
さらに本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、機械的強度およびバリ等の成形性などの改良を目的として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシランおよびγ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどの有機シラン化合物を添加することができる。
前述する各種添加剤の混合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物および必要に応じてその他の添加剤等を予めブレンドしたり、ブレンド後、一軸または二軸押出機、バンバリミキサー等の混合機で加熱、溶融混合することができる。
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回転成形により、気泡やクラックが極めて少なく、表面平滑性が優れ、厚みむらも極めて少なく、優れた機械的特性を有した回転成形体を得ることができる。さらにポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の原料となる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を用いることから、回転成形時の流動性に優れ、かつ融液状態のまま加熱による重合が速やかに進行し、従来のポリフェニレンエーテルエーテル樹脂を用いた回転成形では製造が困難であった大型回転成形体を製造する際の、回転成形性に優れている。
本発明の回転成形体は、樹脂層を内面にライニングした金属性容器であってもよいし、また成形品の外側や内側に、その他の種類の樹脂層を被覆することもできる。その樹脂層は本発明の回転成形の前に設けられていても、また本発明の回転成形後に設けられていてもよい。
このようにして得られる回転成形体は、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂の特性である、耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性、不純物の非溶出性、非透水性、寸法安定性に優れ、さらに得られる回転成形体は気泡やクラックが極めて少なく、表面平滑性が優れ、厚みむらも極めて少なく、優れた機械的特性を有していることから、灯油、ガソリンなどの運搬用容器、自動車二輪車、自動車用などのオイルタンク、ガソリンタンクなどの油貯蔵容器、あるいは電気電子などの製造過程において用いられている各種容器、例えば半導体素子や液晶表示素子などの製造工程において用いられる各種容器などの分野に好適に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これらは例示的なものであって限定的なものではない。本発明で行った測定の詳細な分析条件は以下の通りである。
<環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の純度>
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中のポリフェニレンエーテルエーテルケトン含有量は高速液体クロマトグラフィーにより下記条件にて測定した。
装置 :島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム :Mightysil RP−18GP150−4.6
検出器 :フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nmを使用)
カラム温度 :40℃
サンプル濃度:0.1重量%THF溶液
移動相 :THF/0.1重量%トリフルオロ酢酸水溶液。
<環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物およびポリフェニレンエーテルエーテルケトン回転成形体の還元粘度>
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物またはポリフェニレンエーテルエーテルケトン回転成形体の還元粘度は下記条件にて測定した。なお、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は粉体試料を、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン回転成形体は所定の重量となるように切削した固体試料を用いた。
粘度計 :オストワルド型粘度計
溶媒 :98重量%硫酸
サンプル濃度:0.1g/dL(サンプル重量/溶媒容量)
測定温度 :25℃
還元粘度計算式:η={(t/t0)−1}/C
t : サンプル溶液の通過秒数
t0 : 溶媒の通過秒数
C : 溶液の濃度。
<環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点>
セイコー電子工業製ロボットDSC RDC220を用い、窒素雰囲気下、得られたポリマーの熱的特性を測定した。下記測定条件を用い、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点、および回転成形品の融点は2nd Runの値を用いた。
(First Run)
・50℃×1分 ホールド
・50℃から380℃へ昇温,昇温速度20℃/分
・昇温後×1分 ホールド
・50℃へ降温,降温速度20℃/分
(Second Run)
・50℃×1分 ホールド
・50℃から380℃へ昇温,昇温速度20℃/分(この時のTmをDSC曲線より測定する)。
<回転成形>
回転成形装置の内径70mm、長さ150mmの円筒状金型内に、本発明の環状フェニレンエーテルエーテルケトン組成物粉体を200gを入れ、窒素フローにより窒素置換した。なお金型はあらかじめ加熱重合温度に設定した。金型は回転軸によって支えられ、モーターによって水平に回転される。金型は原料を粉体状態で投入後、あらかじめ環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱重合温度に設定した加熱炉内に設置した。その後、加熱炉内で、回転数30rpmで回転させながら、所定時間加熱重合させた。この時の時間を加熱重合時間と定義する。その後、加熱炉を200℃まで空冷し、回転を停止した後、加熱炉から金型を取り出し水冷した。その後、常温まで冷却後、成形品を取り出した。
<表面平滑性(成形品厚みむら)>
得られた内径70mm、長さ150mmの円筒状成形品の樹脂層表面の5mm×5mmの部分を任意に20箇所選び、全測定箇所の中から、成形品の厚みの最大値と最小値の差を測定した。
<機械物性>
得られた成形品からの平面部分切り取り、切削加工して12.7×63×3mmの試験片を調製し、ASTM D256の方法に従ってアイゾット衝撃値を測定した。
[参考例1]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(PEEK−1)の製造
攪拌機を具備したオートクレーブに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1.1kg(5mol)、ヒドロキノン0.55kg(5mol)、無水炭酸カリウム0.69kg(5mol)、N−メチル−2−ピロリドン50Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.33リットルである。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持し反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約4.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、絶対検量線法により算出した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのヒドロキノンに対する収率は20.0%であった。また、繰り返し数m=2〜8の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの総重量に対するm=2の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率は32%、m=3の重量分率は34%、m=4の重量分率は21%であった。
このようにして得られた反応混合物50kgに1重量%酢酸水溶液150kgを加え、撹拌してスラリー状にした後、70℃に加熱して30分間撹拌を継続した。スラリーをフィルターで濾過して固形分を得た。得られた固形分を脱イオン水50kgに分散させ70℃で30分間保持して濾過して固形分を得る操作を3回繰り返した。得られた固形分を70℃で一晩真空乾燥に処し、乾燥固体約1.3kgを得た。
さらに、上記で得られた乾燥固体1.3kgをクロロホルム30kgを用いて、80℃で5時間抽出操作を行った。得られた抽出液からクロロホルムを留去して固形分を得た。この固形分にクロロホルム2.5kgを加えた後、メタノール40kgに滴下した。これにより生じた析出成分を濾別後、70℃で3時間真空乾燥に処し、白色固体0.19kgを得た。
この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンエーテルケトン単位からなる化合物であることを確認、また高速液体クロマトグラフィーにより成分分割したマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報により、この白色粉末は繰り返し数mが2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物を主要成分とする環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物であることが分かった。
また、得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の分析を行った結果、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は88重量%であり、160℃の融点を有することが分かった。また、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.02dL/g未満であることも分かった。
[参考例2]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の(PEEK−2)製造
攪拌機を具備したオートクレーブに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン2.18kg(10mol)、ヒドロキノン1.10kg(10mol)、無水炭酸カリウム1.38kg(10mol)、還元粘度0.75dL/gの線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン11.5kg(40mol)、N−メチル−2−ピロリドン500Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.33リットルである。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、次いで250℃にまで昇温し250℃で2時間保持し反応を行った。
得られた反応混合物についてHPLC分析を行った結果、繰り返し数m=2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は9.5%であった(ここでの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は、生成した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物に含まれるベンゼン環成分量と、反応に用いたポリフェニレンエーテルエーテルケトン、ヒドロキノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンに含まれるベンゼン環成分量の比較により算出した)。
また、参考例1記載の方法により上記反応混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、収率8.6%で環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を得た。得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の分析を行った結果、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は78重量%であり、163℃の融点を有することが分かった。また、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.02dL/g未満であることも分かった。
[参考例3]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の(PEEK−3)製造
攪拌機を具備したオートクレーブに還元粘度0.75dL/gの線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン1.4kg(5mol)、フッ化セシウム0.15kg(1mol)、N−メチル−2−ピロリドン50Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.33リットルである。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、次いで250℃にまで昇温し250℃で2時間保持し反応を行った。
得られた反応混合物についてHPLC分析を行った結果、繰り返し数m=2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は13.7%であった(ここでの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成量と、反応に用いたポリフェニレンエーテルエーテルケトンの量の比較により算出した)。
また、実施例1記載の方法により上記反応混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、収率12.2%で環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を得た。得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は79重量%であり、168℃の融点を有することが分かった。また、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.02dL/g未満であることも分かった。
[参考例4]ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(PEEK−4)の製造
攪拌機を具備したオートクレーブに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン2.25kg(10mol)、ヒドロキノン1.10kg(10mol)、無水炭酸カリウム1.38kg(10mol)、およびN−メチル−2−ピロリドン5Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は0.16リットルである。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、次いで250℃にまで昇温し250℃で5時間保持し反応を行ったが、反応初期の段階で撹拌不良が起こり、十分な撹拌が困難な状態であった。これは、反応初期の段階のポリマー析出に依るものと推測している。
また、参考例1記載の方法により上記反応混合物からクロロホルム可溶成分の回収を行った結果、ヒドロキノンに対し収率約0.8%でクロロホルム可溶成分を得た。得られたクロロホルム可溶成分の分析を行った結果、クロロホルム可溶成分中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は53重量%であり、210℃の融点を有することが分かった。また、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.12dL/gであった。
[参考例5] ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(PEEK−5)の製造
ここでは特許公表2007−506833の実施例に記載の一般的な方法によるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法に準じた合成について記す。
攪拌機、窒素吹き込み管、ディーン・スターク装置、冷却管、温度計を具備した4つ口フラスコに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン225g(1mol)、ヒドロキノン110g(1mol)、およびジフェニルスルホン490gを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するジフェニルスルホンの量は約0.16リットルである。窒素を通じながら140℃にまで昇温したところ、ほぼ無色の溶液を形成した。この温度で無水炭酸ナトリウム106g(1mol)及び無水炭酸カリウム2.76g(20mmol)を加えた。温度を200℃に上げて1時間保持し、250℃に上げて1時間保持、次いで315℃に上げて3時間保持した。
反応混合物を放冷して粉砕し、水およびアセトンで洗浄することにより、副生塩及びジフェニルスルホンを洗浄除去した。得られたポリマーを真空乾燥機中、120℃で8時間乾燥させて粉末を得た。
得られた粉末のHPLC分析を行った結果、反応組成物中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は0.2重量%であり、また環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物は繰り返し数m=4、5からなり、さらに繰り返し数m=4の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの含有率が80重量%以上を占めるものであった。この組成物の融点は約338℃であった。また、還元粘度の測定を行った結果、このポリフェニレンエーテルエーテルケトンは0.75dL/gの還元粘度を有していることが分かった。
[参考例6]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(PEEK−6)の製造
ここでは非特許文献1に記載の方法による環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法に準じた合成について示す。
冷却管、窒素吹き込み管、ディーン・スターク装置を具備した反応缶にジメチルアセトアミド45L、トルエン23Lを入れ、120℃で4時間加熱、溶媒中に含まれる水を除いた後に、135℃で24時間加熱し、トルエンを留去させた。次に、炭酸カリウム196g(1.42mol)を加え、さらに4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン358g(0.90mol)と1,4−ビス(4−(4−フルオロベンゾイル)フェノキシ)ベンゼン456g(0.90mol)を36時間かけて4回に分けて加え、全量加えた後にさらに24時間反応を続けた。反応溶液を濃縮した後、濃縮液を水中に滴下し沈殿物を濾過により回収した。回収物を80℃で12時間減圧乾燥し、白色固体255gを得た。この白色固体を60℃のクロロホルムで撹拌抽出し、得られた濾液を濃縮して白色固体241gを得た。
得られた白色固体を約2mg秤取り、THF10gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=3、6の2種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、また、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の含有率は92重量%であることが分かった。
この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンエーテルケトン単位からなる化合物であることが分かった。
このような環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の溶融解温度を測定した結果、275℃と345℃の2峰性の溶融解温度を有することが分かった。また、還元粘度を測定した結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は0.02dL/g未満の還元粘度を有していることが分かった。
[実施例1〜15][比較例1〜9]
表1に示した各種ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(PEEK−1〜6)に、フッ化セシウムまたはカリウム4−フェニルフェノキシドを2重量%混合し、乳鉢で粉砕混合した後110℃で5時間真空乾燥した。その後、表2に示した条件で回転成形を行い、得られた成形品を各種測定に供した。結果を表2に示す。
Figure 2013010345
Figure 2013010345
実施例1〜3より、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を、粉体状態のまま、あらかじめ加熱重合温度と同じ温度(360℃)に加熱した金型に入れ、360℃/30分間、回転数30rpmで、回転成形機内で加熱重合させることにより、内径70mm、長さ150mmの円筒状の回転成形品を得た。得られたポリフェニレンエーテルエーテルケトン成形品は高分子量体であり、厚みむらも少なく、機械物性(衝撃強度)に優れることがわかる。
また実施例4〜15では回転成形温度を280〜400℃とし、回転成形時間を変更して行ったが、いずれの温度および成形時間においても厚みむらも少なく、機械物性に優れた成形体が得られることが分かる。
一方、参考例4、5で製造した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン含有率が60重量%未満のポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を用い、表2に示す温度で回転成形を行ったところ(比較例1〜6)、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の金型への充填が不十分であり、また分解ガスの発生により不良成形品の表面には無数のボイドが発生していた。このことは参考例4、5で製造したポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の粘度が高いことに起因すると考えられる。
また、参考例6で製造した270℃以上の融点を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を用い、表2に示す温度で回転成形を行った場合(比較例7〜9)、得られる回転成形品の表面平滑性(厚みむら)が大きいことがわかる。これは、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融解温度が高いと、均一融解物となるのに時間がかかるため、金型内での重合速度にむらができるためであると考えられる。一方で高温で重合させると、分解ガスの発生により成形品表面にボイドが発生する。 以上のことから、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含み、270℃以下の融点を有するポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を金型内で回転しながら開環重合させる回転成形方法を採用することにより、気泡やクラックが極めて少なく表面平滑性や厚み均一性に優れ、かつ強度にも優れた成形品を得ることが可能であることが分かる。

Claims (6)

  1. 一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含み、かつ270℃以下の融点を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を、金型内で回転しながら開環重合することを特徴とする回転成形方法。
    Figure 2013010345
    (mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい。)
  2. 金型内で回転しながら開環重合する際、触媒存在下で重合を行うことを特徴とする請求項1に記載の回転成形方法。
  3. 金型内で回転しながら開環重合する際の加熱温度が環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点以上400℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転成形方法。
  4. 環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が、前記一般式(I)におけるmが連続する少なくとも3つ以上の異なる整数である環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転成形方法。
  5. 金型内で回転しながら開環重合する際の加熱時間が5分以上120分以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転成形方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の回転成形方法により製造される成形体。
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