JP2019026735A - 高分子量ポリフェニレンスルフィド - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子量で靭性に優れ、かつ高融点で耐熱性、結晶化特性に優れた工業的に有用なポリフェニレンスルフィド、および、このような利点を有するポリフェニレンスルフィドの製造方法を提供する。【解決手段】環式ポリフェニレンスルフィドの含有量が50重量%未満であり、重量平均分子量が20,000以上80,000未満であり、加熱した際の重量減少が下式を満たすポリフェニレンスルフィド(a)を、融点以上の温度で、1分以上30時間以下の時間、圧力15kPa以上、ポリフェニレンスルフィド(a)と接する気相の酸素濃度が5〜50体積%の条件で加熱する、示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が275℃以上、かつ、重量平均分子量が80,000以上であるポリフェニレンスルフィドの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、高分子量で靭性に優れ、かつ高融点で耐熱性、結晶化特性に優れた工業的に有用なポリフェニレンスルフィドに関し、および、このような利点を有するポリフェニレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)は優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。また、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維などに成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品及び自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。
中でもフィルムや繊維などの押出成形用途には靭性が求められる場合があり、特に、リチウムイオン電池用のパッキンやガスケット部材、コンデンサーセパレーターフィルムなどの用途においては、近年、より高分子量なPPSが用いられている。また、こういった用途においては、成形後の機械特性や耐熱性、結晶化特性の観点から融点が高いことも必要とされており、当該PPSを得るために以下のような種々の方法が提案されている。
結晶化特性に優れた高融点なPPSに関しては、例えば特許文献1では、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させ、得られたポリマーを急冷するフラッシュ法で回収し、得られたポリマーを130℃以上の熱水で洗浄・濾過し、さらに金属元素を含む水溶液で熱処理することで高融点なポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略する場合もある。)を得る方法が開示されている。
特許文献2では、PPSを非酸化性雰囲気下、特定の時間、特定の温度で熱処理を行うことでより高融点なPPSを得る方法が開示されている。
高分子量PPSに関しては、例えば特許文献3では、PPSを非酸化性雰囲気下や減圧条件下で、融点以上の温度で加熱処理することによる高分子量化の方法が開示されている。
特許文献4では、フィルム、シート、繊維などの成形加工に対応できる高分子量かつ高純度なPASを製造する方法として、環式PASを含むPASプレポリマーを高重合度体へ転化させることで狭い分子量分布を有し、かつ高純度のPASを得る方法が開示されている。
また、熱処理による高分子量化は他の方法も開示されており、例えば特許文献5では糸強度に優れ、溶融紡糸性に優れたPPSとして酸化性雰囲気下で融点以下の温度による熱酸化処理をしたPPSが開示されており、熱処理前のPPSは重合時に酢酸ナトリウムを重合助剤として用いて高分子量化し、さらに適度に融点未満の温度で熱処理するという工程を経ている。
特許文献6では、粉末状のPPSを酸化性雰囲気下で、攪拌を伴いながら融点未満の温度で長時間加熱処理することで高分子量化する方法が開示されている。
特許文献7では、環式PASを酸化性雰囲気下で溶融開環重合し高分子量化させる方法が開示されており、短時間で架橋構造が形成され高分子量化が可能である。
特許文献8では、PPS樹脂骨格に架橋構造を付与する化合物を混合し、酸化性雰囲気下で融点以上の温度で加熱処理を行うことにより高分子量なPPSを得る方法が開示されている。
特許文献1では、得られたポリマーの急冷や熱水洗浄、金属元素を含む水溶液での熱処理など煩雑なプロセスが必要であるという課題を要している。また、本方法で得られたPPSの融点の高さは、結晶構造に由来するものであり、成形品として使用する際には、一度溶融し結晶構造が変化するため、使用時の融点として不十分となる問題もあった。
特許文献2や3では、煩雑なプロセスは必要とされないが、非酸化性雰囲気下での加熱処理では高分子量化に長時間が必要という問題があり、また、従来のPPSでは長時間の加熱処理による劣化が問題となり高融点かつ高分子量なPPSは得られない。
特許文献4では、狭い分子量分布で高分子量化が可能であり、また結晶化特性にも優れ、不純物量や溶融時の発生ガス量も少なく成形性に優れたPASを製造可能である。しかし、本方法では、高分子量かつ高融点化の両立が求められる用途においては、靭性や耐熱性、結晶化特性が不十分となる可能性があり、さらなる改善が求められていた。
特許文献5〜8では、酸化性雰囲気下での加熱処理により短時間での高分子量化が可能であるが、熱処理後のPPSを熱時濾過した際に、特許文献5、6では不溶部(残渣、ゲル化物)が存在することが明記されており、また、特許文献7、8についても記載の加熱処理方法では不溶部が存在することが推察でき、この不溶部により結晶化特性、成形性および機械強度が優れないといった問題があった。このため、不溶部を少なく抑えるよう熱処理条件を精密に制御する必要がありプロセスが煩雑になるといった課題や、また、不溶部の低減と高分子量化を両立させられないといった課題があった。
本発明は、上記課題に対し高分子量で靭性に優れるにもかかわらず、高融点で耐熱性、結晶化特性に優れ、好ましくは不溶部の少ない工業的に有用なポリフェニレンスルフィドを提供できる。および、このような利点を有するポリフェニレンスルフィドの製造方法を提供できる。
すなわち、本発明は、
[1]示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が275℃以上、かつ、重量平均分子量が80,000以上であることを特徴とする高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[2]1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部が10重量%未満であることを特徴とする[1]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[3]重量平均分子量が100,000以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[4]環式ポリフェニレンスルフィドの含有量が50重量%未満であり、重量平均分子量が20,000以上80,000未満であり、加熱した際の重量減少が下式を満たすポリフェニレンスルフィド(a)を、融点以上の温度で、1分以上30時間以下の時間、圧力15kPa以上、気相の酸素濃度が5〜50体積%の条件で加熱することを特徴とする[1]から[3]いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
ΔWr =(W1−W2)/W1×100 ≦ 0.18(%) ・・・式1
(ΔWrは重量減少率(%)、W1は100℃到達時の試料重量、W2は330℃到達時の試料重量)
[5]ポリフェニレンスルフィド(a)の、示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が273℃以上であることを特徴とする[4]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
[6]ポリフェニレンスルフィド(a)の、重量平均分子量/数平均分子量で表される多分散度が2.5以下であることを特徴とする[4]または[5]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
[7]攪拌しながら加熱することを特徴とする[4]から[6]いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
より構成されるものである。
すなわち、本発明は、
[1]示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が275℃以上、かつ、重量平均分子量が80,000以上であることを特徴とする高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[2]1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部が10重量%未満であることを特徴とする[1]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[3]重量平均分子量が100,000以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
[4]環式ポリフェニレンスルフィドの含有量が50重量%未満であり、重量平均分子量が20,000以上80,000未満であり、加熱した際の重量減少が下式を満たすポリフェニレンスルフィド(a)を、融点以上の温度で、1分以上30時間以下の時間、圧力15kPa以上、気相の酸素濃度が5〜50体積%の条件で加熱することを特徴とする[1]から[3]いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
ΔWr =(W1−W2)/W1×100 ≦ 0.18(%) ・・・式1
(ΔWrは重量減少率(%)、W1は100℃到達時の試料重量、W2は330℃到達時の試料重量)
[5]ポリフェニレンスルフィド(a)の、示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が273℃以上であることを特徴とする[4]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
[6]ポリフェニレンスルフィド(a)の、重量平均分子量/数平均分子量で表される多分散度が2.5以下であることを特徴とする[4]または[5]に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
[7]攪拌しながら加熱することを特徴とする[4]から[6]いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
より構成されるものである。
本発明によれば、高分子量で靭性に優れるにもかかわらず、高融点で耐熱性、結晶化特性に優れ、好ましくは不溶部の少ない工業的に有用なポリフェニレンスルフィドを、および、このような利点を有するポリフェニレンスルフィドの製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<ポリフェニレンスルフィド>
本発明におけるPPSとは、化学式(ア)
本発明におけるPPSとは、化学式(ア)
(Phはフェニレン基のことを表す。)
に示す繰り返し単位を主要構成単位とする。好ましくは当該繰り返し単位を90モル%以上含有する重合体である。Phとしては、化学式(イ)〜(エ)で表される単位があり、中でも好ましいのは化学式(イ)であり、好ましくは化学式(イ)を90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有するものである。
に示す繰り返し単位を主要構成単位とする。好ましくは当該繰り返し単位を90モル%以上含有する重合体である。Phとしては、化学式(イ)〜(エ)で表される単位があり、中でも好ましいのは化学式(イ)であり、好ましくは化学式(イ)を90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有するものである。
(ただし、R1、R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、化学式(オ)〜(セ)で表される共重合構造や、化学式(ソ)〜(チ)で表される分岐構造または架橋構造を、一種類、または、複数種類含んでもよい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、化学式(オ)〜(セ)で表される共重合構造や、化学式(ソ)〜(チ)で表される分岐構造または架橋構造を、一種類、または、複数種類含んでもよい。
<本発明の高分子量PPS>
本発明の高分子量PPSの分子量は、重量平均分子量で80,000以上であり、好ましくは100,000以上、より好ましくは120,000以上である。重量平均分子量が80,000未満のものでは成形品で十分な靭性が得られなくなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000以下を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下であり、この範囲内では溶融粘度の観点において高い成形加工性を得ることができる。なお、重量平均分子量は、示差屈折率検出器を具備したゲル浸透クロマトグラフ(以下、GPCと略する場合もある。)を使用して測定した値である。より詳細には、カラム温度210℃、検出器温度210℃であるGPCを使用し、1−クロロナフタレンを溶離液とし、流量1.0mL/分で、PPS濃度0.1重量%の1−クロロナフタレン溶液で測定し、ポリスチレンを標準物質として算出した値である。
本発明の高分子量PPSの分子量は、重量平均分子量で80,000以上であり、好ましくは100,000以上、より好ましくは120,000以上である。重量平均分子量が80,000未満のものでは成形品で十分な靭性が得られなくなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000以下を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは200,000以下であり、この範囲内では溶融粘度の観点において高い成形加工性を得ることができる。なお、重量平均分子量は、示差屈折率検出器を具備したゲル浸透クロマトグラフ(以下、GPCと略する場合もある。)を使用して測定した値である。より詳細には、カラム温度210℃、検出器温度210℃であるGPCを使用し、1−クロロナフタレンを溶離液とし、流量1.0mL/分で、PPS濃度0.1重量%の1−クロロナフタレン溶液で測定し、ポリスチレンを標準物質として算出した値である。
本発明の高分子量PPSは、融点が275℃以上のものであり、好ましくは277℃以上であり、より好ましくは280℃以上である。融点が275℃未満では、耐熱性や高い結晶化特性が求められる用途において不十分となる。なお、本発明における融点は、示差走査型熱量計(以下、DSCと略する場合もある。)を使用して、昇降温速度20℃/分の条件で、a)室温から340℃に昇温、b)340℃で1分保持、c)340℃から100℃に降温、d)100℃で1分保持、e)100℃から340℃に昇温、f)340℃で1分保持、g)340℃から100℃に降温、からなるプログラムの、e)における融解ピークの頂点温度である。
従来、PPSは重合進行により重量平均分子量が大きくなると、融点が低くなる傾向がある。このため高分子量でかつ高融点を両立するは困難であり、本発明の高分子量PPSはこれらを両立できる優れたPPSであるといえる。
本発明の高分子量PPSは、1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部がPPSの10重量%未満であることが好ましく、7重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがことさら好ましい。より具体的には、PPSをホットプレス機にて340℃で5分間加熱処理し室温の水で急冷した厚み170μm以下のフィルムを用い、PPSが0.2重量%になるように1−クロロナフタレンと混合し、250℃に加熱した条件で5分以上6分以下撹拌した後に、0.45μmメンブランフィルターで濾過操作を行った際に回収されたものが不溶部である。この不溶部が上記範囲の通り少ない場合、成型加工性や結晶化特性などPPSの本来持つ特性が十分に発現されるため好ましい。
<本発明の高分子量PPSの特性と用途>
本発明の高分子量PPSは、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、押出成形において成形性が優れており、その高い靭性や機械強度、耐熱性、結晶化特性を活かして様々な用途に適用することが可能である。特に、シート、フィルム、繊維及びパイプなど靭性、機械強度、耐熱性が複合的に求められる用途において高品質化が期待できる。
本発明の高分子量PPSは、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、押出成形において成形性が優れており、その高い靭性や機械強度、耐熱性、結晶化特性を活かして様々な用途に適用することが可能である。特に、シート、フィルム、繊維及びパイプなど靭性、機械強度、耐熱性が複合的に求められる用途において高品質化が期待できる。
本発明の高分子量PPSを用いたフィルムの製造方法としては、公知の溶融製膜方法を採用することができ、例えば、単軸または2軸の押出機中でPPSを溶融後、フィルムダイより押出し冷却ドラム上で冷却してフィルムを作成する方法、あるいは、このようにして作成したフィルムをローラー式の縦延伸装置とテンターと呼ばれる横延伸装置にて縦横に延伸する二軸延伸法などにより製造することができるが、特にこれに限定されるものではない。
本発明の高分子量PPSフィルムは、優れた機械特性、電気特性、耐熱性を有しており、フィルムコンデンサーやチップコンデンサーの誘電体フィルム用途、離形用フィルム用途など各種用途に好適に使用することができる。
本発明の高分子量PPSを用いたPPS繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法を適用することができ、例えば、原料であるPPSチップを単軸または2軸の押出機に供給しながら混練し、ついで押出機の先端部に設置したポリマー流線入替器、濾過層などを経て紡糸口金より押出し、冷却、延伸、熱セットを行う方法などを採用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
本発明の高分子量PPSのモノフィラメントあるいは短繊維は、抄紙ドライヤーキャンパス、ネットコンベヤー、バグフィルターなどの各種用途に好適に使用することができる。
また、本発明の高分子量PPSは、更に強度、耐熱性、寸法安定性等の性能を改善するために、各種充填材と組み合わせたPPS樹脂組成物として使用することが出来る。充填材としては、特に制限されるものではないが、例えば、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用出来る。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用出来る。また、成形加工の際に添加剤として離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤等の各種添加剤を含有せしめることが出来る。
さらに、本発明の高分子量PPSは、用途に応じて、適宜、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂、或いは、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等のエラストマーを配合したPPS樹脂組成物として使用してもよい。
<高分子量PPSの製造方法>
本発明の高分子量PPSは、後述するPPS(a)を、特定の加熱温度で、特定の加熱時間、特定の圧力条件下で、酸化性雰囲気下で加熱することにより製造することができる。以下に、PPS(a)、および加熱温度、加熱時間、圧力条件、酸化性雰囲気下について説明する。
本発明の高分子量PPSは、後述するPPS(a)を、特定の加熱温度で、特定の加熱時間、特定の圧力条件下で、酸化性雰囲気下で加熱することにより製造することができる。以下に、PPS(a)、および加熱温度、加熱時間、圧力条件、酸化性雰囲気下について説明する。
<PPS(a)>
本発明に用いるPPS(a)の分子量は、重量平均分子量で20,000以上であり、好ましくは22,000以上、より好ましくは25,000以上である。重量平均分子量が20,000未満では、オリゴマーなどの低分子量成分の量が多くなる傾向が強く、このことはPPS(a)を加熱した際のガス発生量の増大や加熱した際の副反応の増加に繋がる可能性があるため好ましくない。重量平均分子量の上限は、80,000未満であり、より好ましくは77,000以下、さらに好ましくは75,000以下である。前述の通り、従来、重量平均分子量80,000以上のPPSは、結晶化特性が著しく低下する傾向があり、本発明に用いるには好ましくない。
本発明に用いるPPS(a)の分子量は、重量平均分子量で20,000以上であり、好ましくは22,000以上、より好ましくは25,000以上である。重量平均分子量が20,000未満では、オリゴマーなどの低分子量成分の量が多くなる傾向が強く、このことはPPS(a)を加熱した際のガス発生量の増大や加熱した際の副反応の増加に繋がる可能性があるため好ましくない。重量平均分子量の上限は、80,000未満であり、より好ましくは77,000以下、さらに好ましくは75,000以下である。前述の通り、従来、重量平均分子量80,000以上のPPSは、結晶化特性が著しく低下する傾向があり、本発明に用いるには好ましくない。
本発明に用いるPPS(a)は、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される多分散度が2.5以下であることが好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。多分散度が2.5以下の場合は、上記と同様にPPSに含まれる低分子量成分の量が少なくなる傾向が強く、本発明の高分子量PPSがより製造しやすくなるため好ましい。なお、数平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を具備したGPCを使用して求めることができる。
PPS(a)は、環式PPSを含んでいてもよく、その含有量は50%未満であり、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。環式PPS含有量が50%を超えるPPSを、後述の本発明の製造方法の酸素濃度にて加熱した場合、好ましくない副反応によるPPSの劣化が起き、不溶部が多量に発生し成形性の低下や、結晶化特性の低下を招くため望ましくない。
また環式PPSとは、PPSのうち環式構造をとるもののことを呼び、下記化学式(ツ)で表される。
ここで、繰り返し数mは4〜50の整数であり、4〜25が好ましく、4〜20がより好ましい。環式PPSは、異なるmを有する複数種類の環式PPSの混合物でもよい。
本発明に用いるPPS(a)は、下記式2にて表される加熱した際の重量減少が0.18%以下であり、0.12%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。△Wrが0.18%を超える場合は、本発明の高分子PPSに定義される重量平均分子量8万以上への高分子量化はしないため好ましくない。この原因は定かではないが、上記範囲を外れるPPS(a)は重合時の副生成物であるγ−ブチロラクトンやp−クロロ−N−メチルアニリンなどが系中に多く存在し、これらが加熱時に高分子量化を阻害するためと推察している。
△Wr=(W1−W2)/W1×100(%) ・・・式2
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。なお、△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能である。
△Wr=(W1−W2)/W1×100(%) ・・・式2
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。なお、△Wrは一般的な熱重量分析によって求めることが可能である。
PPS(a)は、融点が273℃以上のものであることが好ましく、274℃以上がより好ましい。融点の範囲に上限はないが、290℃以下であることが好ましい。前述の通り、融点が273℃以上であれば、重量平均分子量が20,000以上80,000未満となる傾向があるため好ましい。また、重量平均分子量が20,000以上であれば、オリゴマーなどの低分子量成分を多量に含むことが少なくなり、上記環式PPS含有量が50%未満となる可能性や、ΔWrが0.18%以下になりやすく好ましい。
本発明において、PPS(a)の製造方法に特に制限はないが、特許文献4で開示されている、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させ、分離した環式PPSを高重合度体へ転化させてPPSを得る方法により製造することが可能である。
<加熱方法>
本発明における加熱温度は、PPS(a)の融点以上である。好ましくは融点+5℃以上であり、より好ましくは融点+10℃以上であり、さらに好ましくは融点+15℃以上であり、ことさら好ましくは融点+20℃以上である。加熱をPPS(a)の融点以上で行わなかった場合、高分子量PPSを製造するのに長時間を要してしまい熱による劣化が進行するため、本発明の高分子量PPSを得ることが出来ない。ここで、PPS(a)の融点は、PPS(a)の重量平均分子量や、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、上記の通りDSCにて把握することが可能である。加熱温度の上限は、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下、よりいっそう好ましくは340℃以下が例示できる。温度が高すぎる場合には加熱により生成したPPSの分解反応など好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPSの特性が低下する場合がある。上記の範囲内の温度で加熱を行うことで好ましくない副反応が起こらず、高分子量PPSが得られやすくなるため望ましい。
本発明における加熱温度は、PPS(a)の融点以上である。好ましくは融点+5℃以上であり、より好ましくは融点+10℃以上であり、さらに好ましくは融点+15℃以上であり、ことさら好ましくは融点+20℃以上である。加熱をPPS(a)の融点以上で行わなかった場合、高分子量PPSを製造するのに長時間を要してしまい熱による劣化が進行するため、本発明の高分子量PPSを得ることが出来ない。ここで、PPS(a)の融点は、PPS(a)の重量平均分子量や、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、上記の通りDSCにて把握することが可能である。加熱温度の上限は、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下、よりいっそう好ましくは340℃以下が例示できる。温度が高すぎる場合には加熱により生成したPPSの分解反応など好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPPSの特性が低下する場合がある。上記の範囲内の温度で加熱を行うことで好ましくない副反応が起こらず、高分子量PPSが得られやすくなるため望ましい。
本発明における加熱を行う時間は、PPS(a)における環式PPSの含有量や、分子量などの各種特性、また、加熱温度等の条件によって異なるため一意的に示すことはできないが、上記した好ましくない副反応がなるべく起こらないよう高温では比較的短時間に、低温では比較的長時間に設定することが好ましい。加熱時間の下限は1分以上であり、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、15分以上がさらに好ましく、20分以上がことさら好ましい。1分未満の加熱ではPPS(a)の高分子量化が不十分になるため適切ではない。加熱時間の上限は30時間以下であり、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。30時間を超える場合は、好ましくない副反応により、不溶部が多量に発生し、成形性が悪化したり結晶化特性が優れなくなるなどの悪影響を及ぼし、また、長時間化による経済的な不利益を生じさせる傾向が強い。
本発明においてはPPS(a)の加熱を酸化性雰囲気で行う。酸素と接触することによりPPS(a)の高分子量化が著しく促進され、また得られる高分子量PPSの耐薬品性や靭性などの各種特性、および結晶化特性に由来する機械強度が向上する傾向にある。なお、酸化性雰囲気とはPPS(a)を加熱する気相における酸素濃度が5体積%以上であり、好ましくは10体積%以上、より好ましくは大気組成と同じであることが例示できる。また、酸素濃度の上限は、50体積%以下である。酸素濃度が50%を超える場合、PPSの劣化が著しく進み、高分子量化が進行しなかったり、結晶化特性の低下に繋がる傾向が強い。
本発明における加熱の際の圧力は、酸素濃度によって異なるため、一意的に示すことはできないが、その上限に特に制限は無く、500kPa以下が例示でき、300kPa以下が好ましく、200kPa以下がより好ましく、150kPa以下がことさら好ましい。圧力の下限は、15kPa以上で行うことが必要である。好ましくは、25kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上である。15kPa以下では、ポリマーと接触する酸素量を十分に確保できない可能性が高くなり、本発明の高分子量PPSを製造できなくなる。
本発明における上記加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用でき、攪拌機構を具備した装置であればより好ましい。攪拌機構としては、表面更新特性に優れたものが望ましく、高い粘度の場合はスクリュー型の攪拌機構が、低い粘度の場合は、タービン型やパドル型の攪拌機構が好ましい。
本発明では、加熱の際にPPSが広範囲に酸素と接触するため、表面更新を目的とした攪拌を行うことが好ましい。攪拌を行う際の攪拌速度は、用いる攪拌機構やPPSの粘度によって異なるため一意的に示すことはできないが、1rpm以上が好ましく、10rpm以上がより好ましく、20rpm以上がさらに好ましい。上記攪拌速度以上で攪拌を行う場合、PPSと酸素との接触が局所的ではなくなるため好ましい。上限としては、1,000rpm以下が好ましく、500rpm以下がより好ましく、250rpm以下がさらに好ましく、100rpm以下がことさら好ましい。上記攪拌速度を超えた場合、粘度の高いPPSは攪拌機構に絡みつくなどして十分に表面更新がされず、酸素との接触が一部分に限られてしまいPPS全体が高分子量化しない、または、局所的な加熱により不溶部ができやすくなる傾向にある。このため、上記範囲の攪拌速度以下で攪拌を行うことで、PPSを酸素とムラなく接触させることができ、不溶部の発生を抑制し、高分子量なPPSを得ることが可能になる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これらの例は例示的なものであって限定的なものではない。
<融点測定>
融点は、DSCを用いて、10mg程度の試料を測定することで求めた。前処理によって見かけ上の融点が高くなることがあるため、下記測定プログラムのe)における融解ピークの頂点温度を融点とした。DSCの測定条件を以下に示す。
装置:TAインスツルメントTA−Q20
キャリアーガス:窒素
サンプルパージ流量:50mL/分
昇降温速度:20℃/分
測定プログラム:
a)室温から340℃に昇温
b)340℃で1分保持
c)340℃から100℃に降温
d)100℃で1分保持
e)100℃から340℃に昇温
f)340℃で1分保持
g)340℃から100℃に降温
<分子量測定>
PPSおよびPPSプレポリマーの分子量は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学製SSC−7110
カラム:昭和電工製Shodex UT−G+Shodex UT−806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/分
試料注入量:300μL (濃度:0.1重量%)
標準サンプル:ポリスチレン
<環式ポリフェニレンスルフィドの分析>
PPSの環式PPSの含有量の算出は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略する場合もある。)を用いて下記方法で行った。
融点は、DSCを用いて、10mg程度の試料を測定することで求めた。前処理によって見かけ上の融点が高くなることがあるため、下記測定プログラムのe)における融解ピークの頂点温度を融点とした。DSCの測定条件を以下に示す。
装置:TAインスツルメントTA−Q20
キャリアーガス:窒素
サンプルパージ流量:50mL/分
昇降温速度:20℃/分
測定プログラム:
a)室温から340℃に昇温
b)340℃で1分保持
c)340℃から100℃に降温
d)100℃で1分保持
e)100℃から340℃に昇温
f)340℃で1分保持
g)340℃から100℃に降温
<分子量測定>
PPSおよびPPSプレポリマーの分子量は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学製SSC−7110
カラム:昭和電工製Shodex UT−G+Shodex UT−806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/分
試料注入量:300μL (濃度:0.1重量%)
標準サンプル:ポリスチレン
<環式ポリフェニレンスルフィドの分析>
PPSの環式PPSの含有量の算出は、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略する場合もある。)を用いて下記方法で行った。
PPS約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて不溶部を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた濾液のHPLC測定により、PPS中の環式PPS量を定量した。
また、環式PPSの純度についても同様にHPLCを用いて求めた。
PPSプレポリマー約10mgをクロロホルム約10gに溶解させよく攪拌した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、得られた濾液のHPLC測定により、PPSプレポリマー中の環式PPS量を定量した。HPLCの測定条件を以下に示す。
HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学製 Mightysil RP−18GP
長さ150mm、内径4.6mm、(膜厚5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
<加熱時重量減少率の測定>
PPSの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
a)プログラム温度50℃で1分保持
b)プログラム温度50℃から350℃まで昇温(昇温速度20℃/分)。
ΔWrは(b)の昇温において、下記式2を用い、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%) ・・・式2
<PPSの不溶部の定量>
PPSの1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部量は、下記方法により求めた。なお、測定時試料としてPPSをホットプレス機にて340℃で5分間加熱処理し室温の水で急冷した厚み170μm以下のフィルムを用いた。
装置:高温溶解装置 SSC−9300 センシュー科学
溶媒:1−クロロナフタレン
溶解温度:250℃
溶解時間:5分
溶解濃度:0.2重量%(溶媒約5gに試料約10mg)
加熱濾過時フィルター:0.45μmメンブレンフィルター
測定条件:
a)PPSフィルムを分取し、PPS重量基準で0.2重量%になるように、PPS及び1−クロロナフタレンを高温濾過装置に仕込んだ。
b)高温濾過装置を用いて250℃にて5分加熱後に熱時ろ過した。
c)フレッシュな1−クロロナフタレン(上記サンプル調製時と同量)を再度高温濾過器に仕込み、上記同様の熱時ろ過操作を行った。
d)濾過機から濾別固体を回収し、メタノールで繰り返し洗浄することで1−クロロナフタレンを除去し、70℃で一晩乾燥した。
e)用いたPPS重量と、得られた乾燥固形分の重量比から不溶部の量を算出した。
HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学製 Mightysil RP−18GP
長さ150mm、内径4.6mm、(膜厚5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
<加熱時重量減少率の測定>
PPSの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
a)プログラム温度50℃で1分保持
b)プログラム温度50℃から350℃まで昇温(昇温速度20℃/分)。
ΔWrは(b)の昇温において、下記式2を用い、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%) ・・・式2
<PPSの不溶部の定量>
PPSの1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部量は、下記方法により求めた。なお、測定時試料としてPPSをホットプレス機にて340℃で5分間加熱処理し室温の水で急冷した厚み170μm以下のフィルムを用いた。
装置:高温溶解装置 SSC−9300 センシュー科学
溶媒:1−クロロナフタレン
溶解温度:250℃
溶解時間:5分
溶解濃度:0.2重量%(溶媒約5gに試料約10mg)
加熱濾過時フィルター:0.45μmメンブレンフィルター
測定条件:
a)PPSフィルムを分取し、PPS重量基準で0.2重量%になるように、PPS及び1−クロロナフタレンを高温濾過装置に仕込んだ。
b)高温濾過装置を用いて250℃にて5分加熱後に熱時ろ過した。
c)フレッシュな1−クロロナフタレン(上記サンプル調製時と同量)を再度高温濾過器に仕込み、上記同様の熱時ろ過操作を行った。
d)濾過機から濾別固体を回収し、メタノールで繰り返し洗浄することで1−クロロナフタレンを除去し、70℃で一晩乾燥した。
e)用いたPPS重量と、得られた乾燥固形分の重量比から不溶部の量を算出した。
[参考例1]
攪拌機付きオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、p−ジクロロベンゼン(以下、DCBと略する場合もある。)31.8g(0.217モル)、及び、N−メチル−2−ピロリドン(以下、nと略する場合もある。)600g(6.05モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。
攪拌機付きオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、p−ジクロロベンゼン(以下、DCBと略する場合もある。)31.8g(0.217モル)、及び、N−メチル−2−ピロリドン(以下、nと略する場合もある。)600g(6.05モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。
オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.0MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにDCBのNMP溶液(DCB3.54gをNMP10g)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることで、約394gの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応生成物を回収した。得られた反応生成物200gを分取し、300mL容のフラスコに仕込んだ。反応生成物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌すると共に、反応生成物のスラリーに窒素バブリングを行いながら、オイルバスにて100℃に加熱した。
ADVANTEC社製の万能型タンク付フィルターホルダーKST−90−UHに、直径90mm,平均細孔直径10μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターをセットし、タンク部分をバンドヒーターにて100℃に調温した。100℃に加熱した反応生成物をタンクに仕込み、タンクを密閉後、タンク内を窒素にて0.1MPaに加圧し、濾液の排出が終わるまで固液分離を行った。
上記固液分離で得られた濾液成分100gを300mLフラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。この際、常温では一部不溶成分が存在したが100℃に到達した段階、さらに80℃に冷却した段階で不溶部は認められなかった。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、チューブポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで30℃以下で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分を約30gの水に分散させ70℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間乾燥し、乾燥固体としてPPSプレポリマー1を得た。
得られたPPSプレポリマー1をHPLCにより分析した結果、m=4〜13の環式PPSを88重量%含有することが分かった。
PPSプレポリマー1を、撹拌翼(糸巻型パドル)を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返し、試験管内を約0.1kPaにし、340℃で3.5時間加熱した後、室温まで冷却してPPSを得た。
得られたPPSの各種特性を分析した結果、ΔWrは0.06%、融点は、280.5℃、分子量は重量平均分子量で5.9万であり、多分散度は2.4、m=4〜13の環式PPS含有量は3.5重量%であった。
[参考例2]
攪拌機付きオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、DCB35.4g(0.241モル)、及び、NMP600g(6.05モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだDCBに相当)の量は1.00モルであった。 オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.0MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
攪拌機付きオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、DCB35.4g(0.241モル)、及び、NMP600g(6.05モル)を仕込むことで反応混合物を調製した。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだDCBに相当)の量は1.00モルであった。 オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.0MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにDCBのNMP溶液(DCB8.84gをNMP20gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることで、約394gの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応生成物を回収した。得られた反応生成物を、参考例1の反応生成物スラリーの固液分離と同様に加圧濾過することで固液分離し、さらに、得られた濾液成分を参考例1と同様に処理することでPPSプレポリマー2を得た。
得られたPPSプレポリマー2をHPLCにより分析した結果、m=4〜13の環式PPS含有量は82重量%であった。
PPSプレポリマー2を、撹拌翼(糸巻型パドル)を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返し、試験管内を約0.1kPaとし、340℃で3.5時間加熱した後、室温まで冷却してPPSを得た。
得られたPPSの各種特性を分析した結果、ΔWrは0.01%、融点は、280.1℃、分子量は重量平均分子量で4.5万であり、多分散度は2.3、m=4〜13の環式PPS含有量は2.9重量%であった。
[参考例3]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、NMP11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.24kg(27.3モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で、加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たり0.02モルであった。
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、NMP11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.24kg(27.3モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で、加熱を終え冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、アルカリ金属硫化物の仕込み量1モル当たり0.02モルであった。
反応容器を200℃まで冷却した後、DCB10.32kg(70.20モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.8℃/分の速度で200℃から235℃まで昇温し、235℃で40分反応した。その後0.8℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で70分反応した後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し、内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過した。得られた固形物を、更に70リットルのイオン交換水に加え、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、PPSを得た。
得られたPPSの各種特性を分析した結果、ΔWrは0.46%、融点は、278.8℃、分子量は重量平均分子量で7.1万であり、多分散度は3.6、m=4〜13の環式PPS含有量は0.4重量%であった。
[参考例4]
撹拌機、精留塔および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、NMP11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、およびイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて除々に加熱し、精留塔を通して水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で、加熱を終え冷却を開始した。冷却を開始した時点での仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため本脱水工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。なお、硫化水素飛散に伴い、系内には水酸化ナトリウムが新たに1.4モル生成している。
撹拌機、精留塔および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、NMP11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、およびイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて除々に加熱し、精留塔を通して水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した時点で、加熱を終え冷却を開始した。冷却を開始した時点での仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため本脱水工程後の系内のスルフィド化剤は68.6モルであった。なお、硫化水素飛散に伴い、系内には水酸化ナトリウムが新たに1.4モル生成している。
反応容器を200℃まで冷却し精留塔を取り外した後、DCB10.19kg(69.29モル)、NMP9.37g(94.50モル)を加えた後に、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.8℃/分の速度で200℃から230℃まで昇温し、引き続き0.6℃/分で230℃から238℃まで昇温し、238℃で83分反応を行った後、238℃〜245℃までを9分かけて昇温し、0.8℃/分で245℃から255℃まで昇温した後、255℃で165分反応を行った。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを解放し、窒素で加圧しながら内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水53リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ポアザイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過した後、窒素気流下120℃で4時間乾燥しPPSを得た。
得られたPPSの各種特性を分析した結果、ΔWrは0.39%、融点は、279.4℃、分子量は重量平均分子量で5.0万であり、多分散度は2.6、m=4〜13の環式PPS含有量は2.6重量%であった。
[実施例1]
参考例1のPPS(PPS(a))を、撹拌翼(糸巻型パドル)を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、340℃で30分間、空気組成と同等の酸素濃度において加熱した。この際の圧力は102kPaであり、攪拌速度は30rpmであった。
参考例1のPPS(PPS(a))を、撹拌翼(糸巻型パドル)を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、340℃で30分間、空気組成と同等の酸素濃度において加熱した。この際の圧力は102kPaであり、攪拌速度は30rpmであった。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は13.2万であり、融点をDSCにより測定した結果、277.8℃であった。また、不溶部は3.8重量%であった。
[実施例2]
用いるPPS(PPS(a))を参考例2にした以外は実施例1と同様にして加熱を行った。
用いるPPS(PPS(a))を参考例2にした以外は実施例1と同様にして加熱を行った。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は10.6万であり、融点をDSCにより測定した結果、277.8℃であった。また、不溶部は3.4重量%であった。
[比較例1]
用いるPPSを、ΔWrが0.18を超えている参考例3とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
用いるPPSを、ΔWrが0.18を超えている参考例3とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は7.2万であり、融点をDSCにより測定した結果、277.5℃であった。
[比較例2]
用いるPPSを、ΔWrが0.18を超えている参考例4とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
用いるPPSを、ΔWrが0.18を超えている参考例4とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は4.0万であり、融点をDSCにより測定した結果、281.6℃であった。また、この時不溶部は16.5重量%であった。
実施例1、2は、本発明の高分子量PPSの製造方法で加熱することにより、重量平均分子量が8万以上であり、かつ、275℃以上の高い融点を有し、これらを両立した、本発明の高分子量PPSが得られた。
比較例1は、実施例1や2と同様の加熱を行っているにも関わらず、高分子量化していないことがわかる。これは前記の通り、ΔWrが0.18を超えていることからわかるように、参考例3のPPS中に多くの低分子量成分が存在することに起因すると推察した。
比較例2は、重量平均分子量が低下していることがわかった。また、不溶部について、実施例1、2と比較して多いことがわかる。参考例4などΔWrの多いPPSでは、酸化性雰囲気下での加熱によって低分子量成分が好ましくない副反応を起こしPPSの劣化を引き起こす傾向が強く、不溶部が増加したと考えられる。
[比較例3]
参考例1のPPSプレポリマー1を約3g円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで含まれる低分子量成分を分離した。得られた抽出液から溶媒を除去した後、約10gのクロロホルムを加えてスラリーを調製し、これを約600gのメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間乾燥し、乾燥固体としてPPSプレポリマー3を得た。
参考例1のPPSプレポリマー1を約3g円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで含まれる低分子量成分を分離した。得られた抽出液から溶媒を除去した後、約10gのクロロホルムを加えてスラリーを調製し、これを約600gのメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間乾燥し、乾燥固体としてPPSプレポリマー3を得た。
得られたPPSプレポリマー3をHPLCにより分析した結果、m=4〜13の環式PPSを96重量%含有することが分かった。
PPSプレポリマー3を、撹拌翼(糸巻型パドル)を取り付けたガラス製の試験管に仕込んだ後、試験管内の減圧、窒素置換を3回繰り返し、試験管内を約0.1kPaとし、340℃、5時間加熱した後、室温まで冷却してPPSを得た。
このPPSの分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は10.1万であり、融点をDSCにより測定した結果、270.8℃であった。
比較例3のように公知の技術により高分子量PPSを製造すると、前記の通り分子鎖の運動性が低下し融点が低くなることがわかる。
[比較例4]
用いるPPSを比較例3とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
用いるPPSを比較例3とした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定しようとした結果、1−クロロナフタレンにほとんどが不溶となり重量平均分子量を測定することは出来なかった。また、融点をDSCにより測定した結果、269.6℃であった。
比較例4のように重量平均分子量が8万以上のPPS(a)を用いた場合、既に分子鎖が長くなり運動性が低下しているため、本発明の高い融点を持つ高分子量PPSになりえないと考えられる。
[比較例5]
用いるPPS(PPS(a))を参考例1とし、試験管内を約0.1kPaにした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。この時、酸素濃度は0.01kPa以下であった。
用いるPPS(PPS(a))を参考例1とし、試験管内を約0.1kPaにした以外は、実施例1と同様にして加熱を行った。この時、酸素濃度は0.01kPa以下であった。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は6.1万であり、融点をDSCにより測定した結果、281.7℃であった。
実施例1と同原料(参考例1)を用いて真空条件下で加熱を行った場合、本発明の高分子量PPSが得られないことが確認できた。これは、ポリマーと酸素が適切に接触することが重要であることを示唆している。
[実施例3]
参考例1をPPS(a)として用い、攪拌を行わないこと以外は実施例1と同様にして加熱を行った。
参考例1をPPS(a)として用い、攪拌を行わないこと以外は実施例1と同様にして加熱を行った。
加熱後のPPSを回収し、分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は8.0万であり、融点をDSCにより測定した結果、278.0℃であった。
実施例3より、加熱時に攪拌を行わなくても、本発明の高分子量PPSが得られることがわかった。しかし、攪拌を行い酸素との接触を促す実施例1の方が、重量平均分子量の高いPPSをより短時間で得られることもわかった。
Claims (7)
- 示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が275℃以上、かつ、重量平均分子量が80,000以上であることを特徴とする高分子量ポリフェニレンスルフィド。
- 1−クロロナフタレンに溶解した際に生じる不溶部が10重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
- 重量平均分子量が100,000以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィド。
- 環式ポリフェニレンスルフィドの含有量が50重量%未満であり、重量平均分子量が20,000以上80,000未満であり、加熱した際の重量減少が下式を満たすポリフェニレンスルフィド(a)を、融点以上の温度で、1分以上30時間以下の時間、圧力15kPa以上、気相の酸素濃度が5〜50体積%の条件で加熱することを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
ΔWr =(W1−W2)/W1×100 ≦ 0.18(%) ・・・式1
(ΔWrは重量減少率(%)、W1は100℃到達時の試料重量、W2は330℃到達時の試料重量) - ポリフェニレンスルフィド(a)の、示差走査型熱量計で昇温速度20℃/分の条件で求めた融点が273℃以上であることを特徴とする請求項4に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
- ポリフェニレンスルフィド(a)の、重量平均分子量/数平均分子量で表される多分散度が2.5以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
- 攪拌しながら加熱することを特徴とする請求項4から6いずれかに記載の高分子量ポリフェニレンスルフィドの製造方法。
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