JP2018053196A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、高温、長時間を要し、高重合度化が十分ではなく、触媒の促進効果が十分でないものが多いという課題を解決し、より短時間で、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する方法を提供することを課題とするものである。【解決手段】環式ポリアリーレンスルフィドならびに、ニッケル化合物、および、ニッケルよりイオン化傾向の小さい金属塩存在下で加熱することによりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する。【選択図】なし

Description

本発明はポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。より詳しくは、ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、および、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中にニッケル、および、ニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)に代表されるポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。さらに、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維などに成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品及び自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。
しかし、ポリアリーレンスルフィド樹脂はこれらの性質を有する一方で靭性に乏しい欠点があり、靭性改良を目的としてポリアリーレンスルフィド樹脂に金属を分散させる方法が開示されている。靭性改良のためにはポリアリーレンスルフィドと金属との接触面積が大きいことが好ましく、金属の粒子質量あたりの表面積が大きい、つまり、金属の粒径が小さいことが望まれている。
特許文献1では、無機金属塩を溶媒に溶解させ、本溶液をポリアリーレンスルフィドと混合したのちに溶媒を除去し、得られたポリアリーレンスルフィドおよび金属塩からなる固溶体または混合物を溶融混練することで、無機金属塩を金属へ還元するとともにポリアリーレンスルフィド中に平均粒径0.5〜30nmの大きさで分散させたポリアリーレンスルフィド複合材料を製造する方法が開示されている。
特許文献2では、熱可塑性プラスチックに対し、導電性付与の目的で鉄、ニッケル、鉄合金の金属繊維、さらに金属粉末を充填し分散させたプラスチック組成物が開示されている。
特許文献3では、金属酸化物または金属有機化合物と樹脂の混合物を、該金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度以上かつ樹脂の劣化温度未満の温度で加熱成型して、平均粒径1〜100nmの金属超微粒子を樹脂成型物中で生成させることによる、金属超微粒子を含む樹脂組成物またはその成型物、およびそれらの製造方法が開示されている。
特許文献4では、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な有機溶剤に、ポリアリーレンスルフィド樹脂と有機金属化合物とを溶解させた後、析出させることによる、金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法が開示されている。
特許文献5では、ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶解されかつ無機微粒子が分散された有機溶剤溶液から、ポリアリーレンスルフィド樹脂を析出させることによる、ポリアリーレンスルフィド樹脂と無機微粒子との複合体の製造方法が開示されている。
特許文献4および5のいずれも溶融混練を行うことなくポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造することができる。
特許文献6では、平均粒子径が0.5〜20nmであるニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、および、カルボン酸ニッケル、カルボン酸ニッケルアミン錯体、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱して、平均粒子径が0.5〜20nmであるニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法が開示されている。
このポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物とを反応させる方法が提案されている。この方法はポリアリーレンスルフィドの工業的な製造方法として幅広く利用されている(例えば特許文献7)。しかしながら、この製造方法は高温、高圧、かつ強アルカリ条件下で反応を行うことが必要であり、さらに、N−メチル−2−ピロリドンのような高価な高沸点極性溶媒を必要とし、溶媒回収に多大なコストがかかるエネルギー多消費型で、多大なプロセスコストを必要とするといった課題を有している。
上記のごときポリアリーレンスルフィドの製造方法の課題を解決するポリアリーレンスルフィドの別の製造方法として、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することによるポリアリーレンスルフィドの製造方法が開示されている(例えば特許文献8)。
さらに、モノマー源として環式ポリフェニレンスルフィドと線状ポリフェニレンスルフィドの混合物を加熱するポリフェニレンスルフィドの重合方法も知られている(非特許文献1)。
また、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、転化を促進する方法として、各種触媒成分(ラジカル発生能を有する化合物、イオン性化合物、有機カルボン酸など)を使用する方法が知られている。
特許文献9、非特許文献2には、ラジカル発生能を有する化合物として、例えば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物が開示されており、具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が開示されている。
特許文献10及び11には、アニオン重合において開環重合触媒になり得るイオン性化合物が開示されており、具体的には例えばチオフェノールのナトリウム塩のような硫黄のアルカリ金属塩を用いる方法が開示されている。
特許文献10には、カチオン重合において開環重合触媒となり得るイオン性化合物として、塩化鉄(III)などのルイス酸、プロトン酸、トリアルキルオキソニウム塩、カルボニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、アルキル化剤またはシリル化剤などを用いる方法も挙げられている。
特許文献12には、アニオン重合において開環重合触媒となり得るイオン性化合物とルイス酸を共存させる方法が開示されており、具体的にはチオフェノールのナトリウム塩と塩化銅(II)を共存させる方法が開示されている。
環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、転化を促進する触媒として遷移金属化合物(0価遷移金属化合物、低原子価鉄化合物、ニッケル化合物)を使用する方法も報告されている(例えば特許文献6、13〜16)。
特許文献13および14には、0価遷移金属化合物として、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルなどを用いる方法が開示されている。特許文献14には、反応系内で0価遷移金属化合物を生成させるため、酢酸ニッケルと亜鉛を共存させる方法も報告されている。
特許文献15には、低原子価鉄化合物として、具体的には塩化鉄などを用いる方法が開示されている。加えて、反応系内で低原子化鉄化合物を生成させるために、塩化鉄(III)と塩化銅(I)を共存させる方法も報告されている。
特許文献6および16には、ニッケル化合物として、例えば、カルボン酸ニッケル、カルボン酸ニッケルアミン錯体、ニッケルアセチルアセトナートなどを用いる方法が開示されている。
また、特許文献17には、開始剤としてカルボアニオンを用いる方法が開示されており、具体的には例えば4−クロロフェニル酢酸ナトリウム塩、4−クロロフェニル酢酸を用いる方法が開示されている。
特開平8−208849号公報 特開昭57−65754号公報 特開2006−348213号公報 特開2010−184964号公報 特開2010−275464号公報 国際公開第2014/208418号 特公昭52−12240号公報 国際公開第2007/034800号 米国特許第5869599号明細書 特開平5−163349号公報 特開平5−301962号公報 特開平5−105757号公報 国際公開第2011/013686号 特開2014−159544号公報 特開2012−92315号公報 特開2015−28142号公報 特開2011−173953号公報
ポリマー(Polymer), vol.37, no.14,1996年(第3111〜3116ページ) マクロモレキュールズ(Macromolecules), 30巻, 1997年(第4502〜4503ページ)
特許文献1には、ニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物については開示がなされていない。また、溶媒除去工程において、溶解していた金属塩が粗大に凝集、析出し、溶融混練後の複合材料中に粗大粒子が残存する恐れもある。さらに、溶融混練操作においても、剪断発熱や空気酸化によるポリアリーレンスルフィドの劣化、異常架橋や主鎖切断が起こる恐れ、無機金属塩の金属カチオンに対するカウンターアニオン成分、残留溶媒成分に由来するガス(塩化物の場合の塩素ガス、硫化物の場合のSOxガス、硝化物の場合のNOxガスなど)が発生する恐れがある。
特許文献2には、ポリアリーレンスルフィドに関する具体的な例示はなく、また、充填する金属粉末の粒度は記載されているもののプラスチック組成物中での粒径に関する情報もないが、一般的に金属粉末は溶融状態のプラスチック中で二次凝集しやすい傾向があり、充填する際の粒度に対して粗大化しやすい。
特許文献3にも、ポリアリーレンスルフィドやニッケル微粒子に関する具体的な例示はなされていない。また、熱可塑性樹脂中に金属超微粒子を生成させるためには、金属酸化物または金属有機化合物の熱分解開始温度が、熱可塑性樹脂の溶融温度より高くなければならず、ポリアリーレンスルフィドのような耐熱性に優れる樹脂を用いる場合、熱分解開始温度が極めて高い金属酸化物または金属有機化合物を用いる必要がある。
特許文献4においてはニッケル含有ナノ粒子については開示がなされておらず、特許文献5においては無機微粒子種として金属ニッケルを用いた実施例があるものの、分散粒径が200nmより大きい例のみであり、無機微粒子種として用いた金属ニッケルナノ粒子の粒径(平均一次粒径200nm)に対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中での分散粒径は220nmと、二次凝集を抑制できない傾向にあることから、分散粒径を小さくするためには無機微粒子種として用いる金属ニッケルナノ粒子の粒径を小さくすることが必須、すなわち高価な金属ナノ粒子が必須となる。また、いずれもN−メチル−2−ピロリドンのような高価な高沸点極性溶媒を用いることに加え、沸点以上での加熱が好ましいため、高価な加圧容器が必要となる。さらに、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中に有機溶剤が残留する恐れもある。
特許文献6では、平均粒子径が0.5〜20nmであるニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、および、カルボン酸ニッケル、カルボン酸ニッケルアミン錯体、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱して、ニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法が開示されているが、平均粒子径10nm程度であるニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する具体的な例示があるのみで、さらに平均粒子径が小さいニッケル微粒子を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法が望まれる。
特許文献8において提案されている方法では、高分子量で、狭い分子量分布を有し、加熱した際の重量減少が少ないポリアリーレンスルフィドを得ることが期待できるが、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには反応に高温、長時間を要するため、より低温、より短時間でのポリアリーレンスルフィドの製造方法が望まれる。
非特許文献1において提案されている方法は、ポリフェニレンスルフィドの安易な重合法であるが、得られるポリフェニレンスルフィドの重合度は低く実用に適さないポリフェニレンスルフィドである。該文献では加熱温度を高くすることで重合度の向上が見られることが開示されているが、それでもなお実用に適した分子量には到達しておらず、また、この場合は架橋構造の生成が回避できず、熱的特性の劣るポリフェニレンスルフィドしか得られず、より実用に適した品質の高いポリフェニレンスルフィドの重合方法が望まれる。
また、特許文献9、非特許文献2、特許文献10及び特許文献11において提案されている方法を用いても、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果としては不十分で、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには高温、長時間を有するという課題がある。
また、特許文献10には、カチオン重合において開環重合触媒となり得るイオン性化合物として、塩化鉄(III)などのルイス酸、プロトン酸、トリアルキルオキソニウム塩、カルボニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、アルキル化剤またはシリル化剤などを用いる方法も挙げられているが、これら開環重合触媒の効果に関する具体的な開示はなく、効果は明らかでない。さらに、例えば塩化鉄(III)を開環重合触媒として用いた際の、開環重合触媒の作用機構についても明らかでなく、環式ポリアリーレンスルフィドへの触媒の添加方法、重合条件に関する具体的な開示もない。
また、特許文献12において提案されている方法を用いても、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果としては不十分で、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには高温、長時間を有するという課題がある。
また、特許文献13及び14に記載の方法を用いた場合、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られることが記載されているが、遷移金属化合物の分散状態については何ら記載がなく、触媒安定性が低く、触媒が高価であり、より安定性が高く安価な触媒を用いる製造方法が望まれる。特許文献14には、反応系内で0価遷移金属化合物を生成させるため、酢酸ニッケルと亜鉛を共存させる方法も報告されているが、還元性の高い亜鉛を触媒に対して大量に添加する必要があり、亜鉛の安定性が低いことが課題である。
また、特許文献15に記載の方法を用いた場合も、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるが、さらに高重合度のポリアリーレンスルフィドの製造方法が望まれる。また、遷移金属化合物の分散状態については何ら記載がない。反応系内で低原子化鉄化合物を生成させるために、塩化鉄(III)と塩化銅(I)を共存させる方法も報告されているが、塩化銅(I)の安定性が低いことが課題である。
特許文献6及び16には、安定性の高い触媒を用いて、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるが、より低温、短時間で、より高重合度のポリアリーレンスルフィドの製造方法が望まれる。加えて、ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法に関する具体的な開示がない。
特許文献17に記載の方法を用いた場合も、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるが、さらに低温、短時間でポリアリーレンスルフィドを得る方法が望まれる。
このように、従来の技術による環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化においては触媒の促進効果、ポリアリーレンスルフィドの高重合度化が十分ではなく、より低温、短時間で、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを製造する方法が望まれる。
本発明は、上記の背景技術における、ニッケル微粒子を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその製造方法の課題、すなわち、より平均粒子径の小さいニッケル微粒子を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその簡便かつ汎用的な製造方法を提供することを課題とするものである。
さらに、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、高温、長時間を要し、高重合度化が困難であるという前記課題を解決し、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを低温、短時間で得ることのできる製造方法を提供することを課題とするものである。また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形加工品の機械強度や耐薬品性などの特性をより高めるため、さらに高重合度のポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法およびポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。より詳しくは、ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、および、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中にニッケル、および、ニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
すわなち、本発明は以下の通りである。
1.ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
2.ニッケル化合物が、0価ニッケル化合物および加熱により0価ニッケル化合物を生成するニッケル化合物から選ばれる少なくとも1種のニッケル化合物であることを特徴とする、1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
3.ニッケル化合物の存在量が、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して、ニッケル原子として0.001mol%以上10mol%未満であることを特徴とする、1〜2のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
4.前記金属塩の存在量が、ニッケル化合物中に含まれるニッケル原子に対して、金属原子として0.01mol%以上10mol%以下であることを特徴とする、1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
5.前記金属塩を構成する金属が周期表第8族から第14族かつ第4周期から第6周期の中から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
6.前記金属塩を構成する金属がパラジウム、銀、白金、および金から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、1〜5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
7.前記金属塩を構成する金属がパラジウムおよび白金から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、6に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
8.ニッケル化合物が、下記(i)、(ii)、および(iii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、1〜7のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
(i)一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物
(ここで、Rは水素、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、および式(B)で表される構造(置換基)から選ばれる置換基を表し、各置換基の水素は炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよく、式(B)中のkは0〜6の整数を表し、mは0または1の整数を表し、nは0〜6の整数を表す。)
(ii)一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体
(ここで、RおよびRは水素もしくは炭素数が1〜12の炭化水素基から選ばれる置換基を表し、RおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
(iii)一般式(D)で示されるニッケル化合物
(ここで、mは0〜10の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、ハロゲン基から選ばれる置換基を表し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基の水素原子はハロゲン原子基で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
9.前記一般式(A)における、Rが水素または式(B)で表される構造中のmが0である構造であることを特徴とする、8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
10.前記一般式(A)における、Rが水素または式(B)で表される構造中のkおよびnが0である構造であることを特徴とする、8または9に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
11.前記一般式(A)で表されるカルボン酸ニッケル化合物がギ酸ニッケルであることを特徴とする、8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
12.前記一般式(C)における、Rが水素および炭素数が1〜8の炭化水素基であり、Rが水素および炭素数が1〜8の炭化水素基であることを特徴とする、8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
13.前記カルボン酸ニッケルアミン錯体を構成する第1級アミンが脂肪族アミンであることを特徴とする、8または12に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
14.前記一般式(D)における、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基であることを特徴とする、8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
15.ポリアリーレンスルフィド樹脂中の硫黄原子に対し0.001mol%以上10mol%未満のニッケル、および、ニッケル原子に対して0.01mol%以上10mol%以下のニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むことを特徴とする、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
本発明によれば、ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法は、従来法と比較して、低温、短時間で、環式ポリアリーレンスルフィドからポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる製造方法を提供できる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中にニッケル、および、ニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、樹脂フィルムとして電子材料(プリント配線、導電性材料等)、磁性材料(磁気記録媒体、電磁波吸収体、電磁波共鳴体等)、触媒材料(高速反応触媒、センサー等)、構造材料(遠赤外材料、複合皮膜形成材等)、光学材料(特定波長光遮蔽フィルター、熱線吸収材料、紫外線遮蔽材料、波長変換材料、偏光材料、高屈折率材料、防眩材料、発光素子等)、セラミックス・金属材料(焼結助剤、コーティング材料等)、医療材料(抗菌材料、浸透膜等)などの各種用途への展開が期待できる。
さらに、ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属である、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法により、ニッケル微粒子が数nmから数十nmのオーダーで分散し、それによりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の機械特性(例えば引張試験における引張伸度など)、および環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の際の触媒活性を大きく向上することができる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
<ポリアリーレンスルフィド>
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80mol%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(E)〜式(O)などで表される単位などがあるが、なかでも式(E)が特に好ましい。
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、RとRは同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(P)〜(R)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1molに対して0〜1mol%の範囲であることが好ましい。
また、本発明におけるポリアリーレンスルフィドは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、特に90mol%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの好ましい分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは50,000以上である。ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量が10,000以上では加工時の成形性が良好で、また成形品の機械強度や耐薬品性などの特性が高くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、さらに好ましくは200,000未満であり、この範囲内では高い成形加工性を得ることができる。
<環式ポリアリーレンスルフィド>
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法における環式ポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80mol%以上含有する下記一般式(S)の環式化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものである。Arとしては前記式(E)〜式(O)などで表される単位などがあるが、なかでも式(E)が特に好ましい。
(Arはアリーレン基、qは4〜50の整数であり、異なるqを有する混合物である)
なお、環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物においては前記式(E)〜式(O)などの繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい前記(S)式の環式化合物としては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、特に90mol%以上含有する環式化合物が挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる前記(S)式の環式化合物中の繰り返し数qは4〜50の範囲である。ここで、qの下限値は4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、7以上がよりいっそう好ましく、8以上がさらにいっそう好ましい。qが小さい環式化合物は反応性が低い傾向があるため、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるようになるとの観点ではqを前記範囲にすることが好ましい。一方、qの上限値は50以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。後述するように環式ポリアリーレンスルフィドの加熱によるポリアリーレンスルフィドへの転化は環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度以上で行うことが好ましいが、qが大きくなると環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度が高くなる傾向にある。そのため、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化をより低い温度で行うためには、qを前記範囲にすることが好ましい。
また、環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる前記(S)式の環式化合物は、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物のいずれでもよいが、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも融解する温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の使用はポリアリーレンスルフィドへの転化を行う際の加熱温度をより低くできるため好ましい。
環式ポリアリーレンスルフィドにおける前記(S)式の環式化合物以外の成分はポリアリーレンスルフィドオリゴマーであることが特に好ましい。ここでポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80mol%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(E)〜式(O)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(E)が特に好ましい。ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記した式(P)〜式(R)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1molに対して0〜1mol%の範囲であることが好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80mol%以上、特に90mol%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの分子量としては、ポリアリーレンスルフィドよりも低分子量のものが例示でき、具体的には重量平均分子量で10,000未満であることが好ましい。環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量平均分子量で10,000未満である場合、環式ポリアリーレンスルフィドの融解する温度が低くなる傾向にあり、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化をより低い温度で行うためには、前記範囲にすることが好ましい。
環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマー量は、環式ポリアリーレンスルフィドが含有する前記(S)式の環式化合物よりも少ないことが特に好ましい。即ち環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比(前記(S)式の環式化合物/ポリアリーレンスルフィドオリゴマー)は1を超えることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、9以上がよりいっそう好ましく、このような環式ポリアリーレンスルフィドを用いることで重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。
従って、環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比の値が大きいほど、本発明のポリアリーレンスルフィド製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は大きくなる傾向にある。この重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を超える環式ポリアリーレンスルフィドを得るためには、環式ポリアリーレンスルフィド中のポリアリーレンスルフィドオリゴマー含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法によれば該重量比が100以下の環式ポリアリーレンスルフィドを用いても重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。
環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量した環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物量から算出することができる。例えば環式ポリアリーレンスルフィドにおける前記(S)式の環式化合物以外の成分がポリアリーレンスルフィドオリゴマーである場合には、
重量比=前記(S)式の環式化合物量(%)/(100−前記(S)式の環式化合物量(%))
のように算出できる。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物>
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とは、ポリアリーレンスルフィド、ニッケル、および、ニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含む、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物である。
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のニッケルの存在量は、樹脂組成物中の硫黄原子に対してニッケル原子として0.001mol%以上10mol%未満の範囲であり、好ましくは0.005mol%以上10mol%未満、より好ましくは0.01mol%以上10mol%未満の範囲である。この範囲であれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に高い熱安定性を付与し、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形加工品に高い機械特性(強度、伸びに優れる高靭性など)や優れた熱伝導性を付与することができる傾向がある。
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のニッケルよりイオン化傾向の低い金属の存在量は、樹脂組成物中のニッケル原子に対して金属原子として0.01mol%以上10mol%以下の範囲であり、好ましくは0.05mol%以上10mol%以下、より好ましくは0.1mol%以上10mol%以下の範囲である。この範囲であれば、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法において、より低温、短時間で環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化が進行し、ニッケルおよびニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
ニッケルよりイオン化傾向の低い金属としては、金属塩、金属原子、金属イオンの形で含まれていても良い。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に含まれる金属の分散状態は、特に断りがない限り、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、透過型電子顕微鏡(装置:日立製H−7100)を用いて2万倍にて観察し、ポリアリーレンスルフィド中の金属の分散状態を確認することできる。また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の透過型電子顕微鏡観察像の粒子がニッケルまたはニッケルよりイオン化傾向の低い金属であることは、例えばエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を具備した透過型電子顕微鏡を用いて確認できる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のニッケルおよびニッケルよりイオン化傾向の低い金属の存在量は、例えばポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を灰化し、灰化物を硝酸、ふっ化水素酸で加熱分解したのち、希硝酸または王水に溶かし得た定容液をICP質量分析装置およびICP発光分光分析装置を用い、分析することで定量できる。
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のポリアリーレンスルフィドは、分子量分布の広がり、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度が狭い特長を有する傾向にある。本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のポリアリーレンスルフィドの分散度は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下がさらに好ましい。分散度が2.5以下ではポリアリーレンスルフィドに含まれる低分子量体成分の量が少なくなる傾向が強く、このことはポリアリーレンスルフィドを成形加工用途に用いた場合の機械特性向上、加熱した際のガス発生量の低減及び溶剤と接した際の溶出成分量の低減などの効果を奏する。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のガス発生量は、一般的な熱重量分析によって求められる、下記式で表される、加熱した際の重量減少率ΔWrから評価できる。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100
なお、ΔWrは常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
この熱重量分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中のポリアリーレンスルフィドの酸化などが起こり、実際にポリアリーレンスルフィドの成形加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、ポリアリーレンスルフィドの実使用に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、ΔWrの測定においては50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドを実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のポリアリーレンスルフィドを溶融させ、その後任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のポリアリーレンスルフィドからのガス発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないポリアリーレンスルフィドの方が品質の高い優れたポリアリーレンスルフィドであるといえる。ΔWrの測定は約10mg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
本発明の製法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、従来法と異なり、製造時にN−メチル−2−ピロリドンのような溶媒や公知のラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物などの触媒の使用が必須ではないことなどから、加熱加工時のガス発生量が少ない傾向があり、上記にて加熱した際の重量減少率ΔWrは使用するニッケル化合物および金属塩の濃度ならびにニッケル化合物および金属塩の種類により異なるが、0.25%以下であることが好ましく、0.16%以下がより好ましく、0.13%以下がさらに好ましく、0.10%以下がよりいっそう好ましい。
ΔWrが前記範囲内の場合は、例えばポリアリーレンスルフィドを成形加工する際に発生ガス量が少なくなる傾向があり、押出成形時の口金やダイスおよび射出成形時の金型への付着物を低減する傾向となり、成型加工性が高くなるため望ましい。
本発明の製法における、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化率は70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。転化率が70%以上では前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化率は、加熱前の原料に含まれる前記(S)式の環式化合物存在量、および、加熱後に得られた生成物に含まれる前記(S)式の環式化合物存在量を、HPLCを用いて定量し、その値から算出することができる。具体的には、
転化率(%)=(加熱前の原料に含まれる前記(S)式の環式化合物存在量(%)−加熱後に得られた生成物に含まれる前記(S)式の環式化合物存在量(%))/加熱前の原料に含まれる前記(S)式の環式化合物存在量(%)×100
のように算出することができる。
<ニッケル化合物>
本発明におけるニッケル化合物としては、0価ニッケル化合物、加熱により0価ニッケル化合物を生成するニッケル化合物などが挙げられる。具体的には、0価ニッケル化合物として、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、加熱により0価ニッケル化合物を生成するニッケル化合物として、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロリド、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケルジクロリド、臭化ニッケルエチレングリコールジメチルエーテル錯体、(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド、(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケルジクロリド、ギ酸ニッケル、ギ酸ニッケルアミン錯体、酢酸ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケルなどが例示できる。
ニッケル化合物が重合触媒として作用する理由は現時点で明らかではないが、多くの価数状態を取りうるニッケル原子は、環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用を生じやすいため、あるいは、ニッケル原子が環式ポリアリーレンスルフィド中に分散しやすく、環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化を促す活性ニッケル化合物を形成可能であるためと推測している。
また、上記ニッケル化合物の中でも、加熱により0価ニッケル化合物を生成するニッケル化合物が好ましく、その中でも後述の(i)、(ii)、および(iii)のニッケル化合物を用いることがよりいっそう好ましい。(i)、(ii)、および(iii)のニッケル化合物は環式ポリアリーレンスルフィドの転化を促進する高い効果を有し、安定性の高い傾向にある。
<(i)一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物>
(ここで、Rは水素、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、および式(B)で表される構造から選ばれる置換基を表し、各置換基の水素は炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよく、式(B)中のkは0〜6の整数を表し、mは0または1の整数を表し、nは0〜6の整数を表す。)
一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物について、Rは水素、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、および式(B)で表される構造から選ばれる置換基であれば重合触媒として有効であり、各置換基の水素は炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい。例えば、水素、アリール基としてフェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アルケニル基としてメテニル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、アルキニル基としてメチニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルなどが例示できる。また例えば、前記式(B)で表される構造からなるカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸などが例示できる。
また、一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物は無水物であってもよく、水和物であってもよい。
本発明におけるカルボン酸ニッケル化合物の重合触媒としての作用機構は現時点不明であるが、配位子や還元剤などの添加を必要とせず、加熱による分解反応時に活性ニッケル化合物が生成していると推測しており、その活性ニッケル化合物としては、加熱による分解反応時にニッケル原子が還元されることで生成する0価ニッケル化合物の可能性を考えている。さらに、その活性ニッケル化合物生成時に活性ニッケル化合物は粒子として分散し、それにより前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化の際の触媒活性が高くなると考えている。
前記カルボン酸ニッケル化合物の中でも、カルボン酸ニッケル化合物の構造中に炭素−炭素間の多重結合を含まないカルボン酸ニッケル化合物では、前記した活性ニッケル化合物の生成以外の反応が生じにくい傾向にあると考えられ、Rは水素または前記式(B)で表される構造のうちmが0である構造から選ばれる置換基であることがより好ましい。例えば、Rが水素であるギ酸、前記式(B)で表される構造からなるカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などが例示できる。
さらに、カルボン酸ニッケル化合物におけるカルボン酸構造中の炭素数が少ない方が、添加した重合触媒量に対する前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果が高い傾向にあり、前記した活性ニッケル化合物の生成以外の反応が生じにくい傾向にあると考えられ、Rは水素または前記式(B)で表される構造のうちk、nが0である構造から選ばれる置換基であることがより好ましい。例えば、ギ酸、シュウ酸などが例示できる。
これらの中でも、ギ酸ニッケルが、加熱による分解反応がより低温で生じる傾向にあるためより好ましい。
また、ニッケル化合物が有効である理由は現時点で明らかではないが、遷移金属原子の中でも比較的原子半径が小さい傾向にあり、ニッケル原子とカルボン酸構造との距離が近づきやすく、加熱による分解反応時にニッケル原子とカルボン酸構造間での作用が生じやすく、活性ニッケル化合物を生成しやすいため、あるいは環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用が比較的強い傾向にあるため、あるいはニッケル原子は環式ポリアリーレンスルフィド中に分散しやすい化合物を形成可能であるためと推測している。
本発明では、カルボン酸ニッケル化合物を原料として添加してもよいし、系内でカルボン酸ニッケル化合物を生成させてもよい。また、1種単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。ここで後者のように系内でカルボン酸ニッケル化合物を生成させるには、例えば一般的な溶液中でのカルボン酸ニッケル化合物合成方法で用いられるような、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、ハロゲン化ニッケルなどのニッケル塩とカルボン酸とから生成させる方法などが挙げられる。
<(ii)一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体>
(ここで、RおよびRは水素もしくは炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、RおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体について、RおよびRは、水素または炭素数が1〜12の炭化水素基であれば重合触媒として有効であり、各置換基の水素は炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよい。例えば、RおよびRは、水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基であれば重合触媒として好ましい。より具体的には、水素、アルキル基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、s−ヘキシル、t−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、s−ヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、s−オクチル、t−オクチル、n−ノニル、イソノニル、s−ノニル、t−ノニル、n−デカニル、イソデカニル、s−デカニル、t−デカニル、n−ウンデカニル、イソウンデカニル、s−デカニル、t−デカニル、n−ドデカニル、イソドデカニル、s−ドデカニル、t−ドデカニル、アリール基としてフェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アルケニル基としてメテニル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、アルキニル基としてメチニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、アリール基としてフェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、アルケニル基としてメテニル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、アルキニル基としてメチニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルなどが例示できる。
また、一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物は無水物であってもよく、水和物であってもよい。
本発明におけるカルボン酸ニッケルアミン錯体の重合触媒としての作用機構は現時点不明であるが、特開2010−64983号公報や国際公開第2011/115213号にカルボン酸ニッケルのアミン錯体の加熱により0価ニッケルが生成することが開示されている。カルボン酸ニッケルアミン錯体の加熱による分解反応時に活性ニッケル化合物が生成していると推測しているが、その活性ニッケル化合物としては、加熱による分解反応時にニッケル原子が還元されることで生成する0価ニッケル化合物の可能性を考えている。さらに、その活性ニッケル化合物生成時に活性ニッケル化合物は粒子として分散し、それにより環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の際の触媒活性が高くなると考えている。
前記カルボン酸ニッケルアミン錯体の中でも、一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物の構造中に炭素−炭素間の多重結合を含まないカルボン酸ニッケル化合物では、前記した活性ニッケル化合物の生成以外の反応が生じにくい傾向にあると考えられ、RおよびRは水素またはアルキル基から選ばれる置換基であることがより好ましい。
さらに、カルボン酸ニッケルアミン錯体におけるカルボン酸構造中の炭素数が少ない方が、添加した重合触媒量に対する環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果が高い傾向にあり、前記した活性ニッケル化合物の生成以外の反応が生じにくい傾向にあると考えられ、RおよびRは水素または炭素数が1〜12の炭化水素基であることが好ましく、水素もしくは炭素数が1〜8の炭化水素基であることがより好ましい。
これらの中でも、ギ酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるギ酸ニッケルアミン錯体が、加熱による分解反応がより低温で生じる傾向にあるためより好ましい。
カルボン酸ニッケルアミン錯体中のアミンは、第1級アミンでニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば特に限定するものではなく、常温常圧で固体または液体のものが使用できる。ここで、常温常圧とは、25℃1気圧の状態をいう。常温で液体の第1級アミンは、カルボン酸ニッケルアミン錯体を形成する際の溶媒としても機能する。なお、常温常圧で固体の第1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、または有機溶媒を用いて溶解するものであれば、用いてもよい。
第1級アミンは、分散剤としても作用し、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の活性ニッケル化合物同士の凝集を抑えることができる。
第1級アミンは、芳香族第1級アミンであってもよいが、カルボン酸ニッケルアミン錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンがより好ましい。例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミンなどを挙げることができる。
第1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(またはニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、第2級アミンは立体障害が大きいため、カルボン酸ニッケルアミン錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、第3級アミンはニッケルイオンの還元能を有しないため、いずれも使用できない。
第1級アミンは、活性ニッケル化合物の生成時に表面修飾剤としても機能する可能性があるため、第1級アミンの除去後においても二次凝集を抑制できる傾向にある。
さらに、第1級アミンは、カルボン酸ニッケルアミン錯体を還元してニッケルナノ粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。すなわち、第1級アミンは、沸点が180℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましい。また、脂肪族第1級アミンは、炭素数が8以上であることが好ましい。ここで、例えば炭素数が8である脂肪族アミンのC17NH(オクチルアミン)の沸点は185℃である。
2価のニッケルイオンは配位子置換活性種として知られており、形成する錯体の配位子は温度、濃度によって容易に配位子交換し、錯体が変化する可能性がある。例えば一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物および第1級アミンの混合物を加熱して錯化反応液を得る際、用いるアミンの炭素鎖長等の立体障害を考慮すると、例えば、下記式に示すように、カルボン酸イオン(RCOO−)および(RCOO−)が二座配位(T)または単座配位(U)のいずれかで配位する可能性があり、さらにアミンの濃度が大過剰の場合は外圏にカルボン酸イオンが存在する構造(V)をとる可能性がある。目的とする反応温度(還元温度)において均一溶液とするにはL、L、L、L、L、Lで示したような、配位子のうち少なくとも一つは第1級アミンがニッケルイオンに配位した構造をとる必要がある。その状態をとるには、第1級アミンが過剰に反応溶液内に存在している必要があり、少なくともニッケルイオン1molに対し2mol以上存在していることが好ましく、2.2mol以上存在していることがより好ましく、4mol以上存在していることがさらに好ましい。
一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンの反応によって生成するカルボン酸ニッケルアミン錯体の合成は、例えば、特開2010−64983号公報や国際公開第2011/115213号などに記載された公知の方法で行うことが例示できる。
この錯形成反応は、大気圧下で行うことも、大気圧よりも高い加圧条件下で行うことも、減圧条件下あるいは脱揮条件下で行うことも可能である。一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物、第1級アミン、生成するカルボン酸ニッケルアミン錯体の酸化を抑制する観点からは、非酸化性雰囲気下であることが好ましい。
この錯形成反応の温度は、錯形成反応を行う系内の条件により異なるが、例えば大気圧下での錯形成反応において、室温でも進行させることが可能であり、反応を確実かつより効率的に行うためには100℃以上の温度で加熱を行うことが好ましい。
このように錯形成反応を確実より効率的に行うという観点からは、加熱温度の下限は100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、125℃以上がさらに好ましく、140℃以上がよりいっそう好ましい。
この加熱は、一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物として、例えばギ酸ニッケル2水和物や酢酸ニッケル4水和物のようなカルボン酸ニッケル化合物の水和物を用いた場合に特に有利である。
これにより、例えば一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物に配位した配位水と第1級アミンとの配位子置換反応が効率よく行われ、この錯体配位子としての水分子を解離させることができ、さらにその水分子を系外に出すことができるため、効率よくカルボン酸ニッケルアミン錯体を形成させることができる。例えば、ギ酸ニッケル2水和物は、室温では2個の配位水と2座配位子である2個のギ酸イオンが存在した錯体構造をとっており、加熱によりこの2つの錯体配位子としての水分子を解離させやすく、第1級アミンとの配位子置換による錯形成を効率よく進めることができる。
また、加熱温度の上限は、後に続くニッケル錯体(又はニッケルイオン)の加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、175℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。
加熱時間は、加熱温度や、各原料の含有量に応じて適宜決定することができるが、錯形成反応を確実に完結させるという観点から、15分以上とすることが好ましい。加熱時間の上限は特にないが、長時間加熱することは、エネルギー消費及び工程時間を節約する観点から無駄である。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンとの錯形成反応の進行の程度は、例えば赤外吸収スペクトルや紫外・可視吸収スペクトル測定装置を用いて確認することができる。例えば、ギ酸ニッケル2水和物とステアリルアミンの錯形成反応において、赤外吸収スペクトル測定を行うと、反応終了後にはギ酸ニッケル2水和物の水和水のO−Hに由来する3100−3400cm−1のピークが消失し、かわりに、脂肪族C−H基の伸縮振動に基づく2950−2850cm−1、N−H伸縮振動に基づく3325cm−1、3283cm−1およびN−H基の変角振動に基づく1630cm−1の位置にそれぞれ鋭いピークが認められ、ニッケルにアミンが配位していることを確認できる。また、紫外・可視吸収スペクトル測定装置にて、300nm〜750nmの波長領域において観測される吸収スペクトルの極大吸収波長測定を行うと、原料の極大吸収波長(例えば酢酸ニッケル4水和物ではその極大吸収波長は710nm)に対する反応液の極大吸収波長のシフトを観測することによって、ニッケルにアミンが配位していることを確認できる。
<(iii)一般式(D)で示されるニッケル化合物>
(ここで、mは0〜10の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、ハロゲン基から選ばれる置換基を表し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基の水素原子はハロゲン原子基で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
を用いることが好ましい。
一般式(D)で示されるニッケル化合物について、mは0〜10の整数であれば重合触媒として有効であるが、ニッケル化合物構造の立体的な安定性の観点からは0〜5であることが好ましく、さらにニッケル化合物構造の電子的な安定性の観点からは共鳴構造をとることができるため0であることがより好ましい。
例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそのハロゲン置換体、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシおよびそのハロゲン置換体、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチルおよびそのハロゲン置換体、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示できる。ニッケル化合物として具体的には、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)ニッケルなどが例示できる。
中でも、RおよびRが電子供与性基であれば環式ポリアリーレンスルフィドの転化を促進する効果が大きい傾向にあるため炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基から選ばれる置換基であることが好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそのハロゲン置換体、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシおよびそのハロゲン置換体、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチルおよびそのハロゲン置換体などが例示できる。この理由は現時点で明らかではないが、電子供与性基を有することでニッケル原子が電子供与性を有し、その電子状態により、ニッケル原子と環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用が比較的強い傾向にあるためと推測している。
さらに、ニッケル化合物構造の立体的な安定性の観点からは炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそのハロゲン置換体などが例示できる。
これらの中でも、電子供与性、ニッケル化合物構造の立体的な安定性を両立可能であり、さらに遷移金属化合物の入手性、取り扱い性にも優れるメチル基が最も好ましい。
ニッケル化合物として具体的には、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケルなどが例示できる。なお、一般式(D)で示されるニッケル化合物は無水物であってもよく、水和物であってもよい。
このニッケル化合物が有効である理由は現時点で明らかではないが、遷移金属原子の中でも比較的原子半径が小さい傾向にあり、またニッケル原子は環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用が比較的強い傾向にあるため、あるいはニッケル原子は環式ポリアリーレンスルフィド中に分散しやすい化合物を形成可能であるためと推測している。
本発明では、一般式(D)で示されるニッケル化合物存在下で環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することが特徴であり、一般式(D)で示されるニッケル化合物を原料として添加してもよいし、系内で一般式(D)で示されるニッケル化合物を生成させてもよい。また、1種単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。ここで後者のように系内で一般式(D)で示されるニッケル化合物を生成させるには、例えば一般的な溶液中でのアセチルアセトナート化合物合成方法で用いられるような、ニッケル塩とアセチルアセトンから生成させる方法などが挙げられる。
<金属塩>
本発明における金属塩としては、金属塩を構成する金属が、ニッケルよりイオン化傾向の低い金属であり、周期表第8族から第14族かつ第4周期から第6周期の中から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましい。具体的には、スズ、鉛、水銀、銅、イリジウム、ビスマス、ルテニウム、レニウム、タリウム、インジウム、ロジウム、テクネチウム、パラジウム、銀、白金、金などが挙げられる。この中でも、好ましくはパラジウム、銀、白金、および金から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、より好ましくはパラジウムおよび白金から選ばれる少なくとも1種の金属である。さらに、金属塩単体では前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化を促進する効果がないものであることが好ましい。
前記ニッケル化合物および前記金属塩存在下で、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化が促進される理由は現時点では明らかではないが、以下の要因のためと推測している。
前記金属塩を構成する金属のイオン化傾向がニッケルより低いため、先に金属塩由来の金属粒子が多数生成しやすく、これらを核として、前記ニッケル化合物から活性ニッケル化合物が生成することにより、活性ニッケル化合物の粒子径が小さくなり、分散性が向上するため。
前記金属塩は、塩の種類を限定するものではないが、金属ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、および酢酸塩などが例示できる。これらは、1種単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。
<ニッケル化合物および金属塩を添加した際の存在量および添加方法>
使用する前記ニッケル化合物を添加した際の存在量は、目的とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の分子量、使用するニッケル化合物および金属塩の種類により異なるが、ニッケル化合物の存在量が、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して、ニッケル原子として、0.001mol%以上10mol%未満の範囲であり、好ましくは0.005mol%以上10mol%未満、より好ましくは0.01mol%以上10mol%未満の範囲が例示できる。0.001mol%以上では、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへ転化が促進される。一方、上限としては、10mol%未満であれば、活性ニッケル化合物が十分に分散しニッケル粒子同士の凝集が生じにくく、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化が促進され、前述した特性を有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向がある。ここでいうニッケルを添加した際の存在量とは、前記ニッケル化合物を原料として添加する場合は、その添加量をいう。一方で、系内で各ニッケル化合物を生成させる場合、原料として添加するニッケル塩などを添加した際の存在量をいう。
使用する前記金属塩を添加した際の存在量は、目的とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の分子量、使用するニッケル化合物および金属塩の種類により異なるが、金属塩の存在量が、ニッケル化合物中に含まれるニッケル原子に対して、金属原子として0.01mol%以上10mol%以下の範囲であり、好ましくは0.05mol%以上10mol%以下、より好ましくは0.1mol%以上10mol%以下の範囲が例示できる。0.01mol%以上では、金属塩由来の金属粒子が多数生成し、これらを核として、前記ニッケル化合物から活性ニッケル化合物が生成しやすく、活性ニッケル化合物の粒子径が小さくなり、分散性が向上しやすいため、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへ転化が促進される傾向がある。一方、上限としては、10mol%以下であれば、金属塩由来の金属粒子が生成した際の粒子径が粗大になりにくく、活性ニッケル化合物を十分に分散させやすくニッケル粒子同士の凝集が生じにくくなっているため、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化が促進される傾向がある。
環式ポリアリーレンスルフィドならびに、前記ニッケル化合物、または系内で各ニッケル化合物を生成させるためのニッケル塩、前記金属塩の混合に際しては、そのまま混合してもよいが、環式ポリアリーレンスルフィド中に均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法、あらかじめ重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内に分散させる方法などが挙げられる。
機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。
溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には環式ポリアリーレンスルフィドを適宜な溶媒に溶解または分散し、これにニッケル化合物および前記金属塩を所定量加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。
環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法としては、固体状態の環式ポリアリーレンスルフィドに前記ニッケル化合物および前記金属塩を添加した後、加熱により環式ポリアリーレンスルフィドを溶融させる方法、あらかじめ環式ポリアリーレンスルフィドを溶融した後に前記ニッケル化合物および前記金属塩を添加する方法などが例示できる。
あらかじめ重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内に分散させる方法としては、そのまま分散させる方法、適宜な溶媒に前記ニッケル化合物および前記金属塩を所定量加えた後、重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内で溶媒を除去することで分散させる方法などが例示できる。
また、2種以上の化合物を添加する場合には、添加する化合物の安定性、反応性にもよるが、一度に添加してもよいし、別々に添加した後に、重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内外で混合してもよい。
また、各ニッケル化合物、各金属塩が固体である場合、より均一な分散が可能となるため、それらの平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
また、本発明で用いるニッケル化合物の中でも、一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物、または、一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体のニッケル化合物、一般式(D)で示されるニッケル化合物は、例えば重合触媒として知られている0価ニッケル化合物に対して安定性が高い傾向にあるためより好ましい。そのため、例えば0価ニッケル化合物であるビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルは非酸化性雰囲気下で取り扱わない場合に環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化を促進する効果が低下する傾向にあるが、一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物、一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体、カルボン酸ニッケル化合物、および、一般式(D)で示されるニッケル化合物は非酸化性雰囲気下で添加することも好ましいが、大気中で添加することも可能である。
本発明で用いる前記ニッケル化合物または系内で各ニッケル化合物を生成させるためのニッケル塩、および前記金属塩を添加する際の温度は、添加に用いる方法が実施可能な温度範囲であれば特に制限はないが、上限としては、前記(S)式の環式化合物がポリアリーレンスルフィドへ転化しにくい温度領域であることが好ましく、例えば300℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは220℃以下、よりいっそう好ましくは200℃以下、さらにいっそう好ましくは180℃以下が例示できる。また、使用するニッケル化合物の種類によって異なるが、ニッケル化合物が前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化を促進しにくい温度領域であることが好ましい。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造条件>
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する際の加熱温度の範囲としては、180℃以上400℃以下が例示でき、好ましくは200℃以上360℃以下、より好ましくは260℃以上300℃以下である。この温度範囲では、前記(S)式の環式化合物が融解し、各ニッケル化合物と環式ポリアリーレンスルフィドが相溶しやすく、各ニッケル化合物の分解反応がより容易すなわち活性ニッケル化合物の生成が良好に進行し、短時間で前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化が進行し、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。一方、400℃より温度が高いと、環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。また加熱温度は、加熱あるいは冷却に要するエネルギー低減や時間短縮が可能になり生産性が向上することから低い方がより好ましい。
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する際の加熱温度は、環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度であることが好ましく、前記ニッケル化合物から、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化を促進し、かつ活性ニッケル化合物が生成する温度であれば特に制限はない。ただし、加熱温度が環式ポリアリーレンスルフィドの融解温度未満では、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に長時間が必要となる傾向がある。
なお、環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環式ポリアリーレンスルフィドを示差走査型熱量計で分析することで把握することが可能である。ただし、一般に融解する温度には幅があり、融点以上でも融解にともなう吸熱が継続する傾向があるため、均一に融解させるためには、加熱温度は環式ポリアリーレンスルフィドの融点以上であることが好ましく、環式ポリアリーレンスルフィドの融点よりも10℃以上高い温度が好ましく、20℃以上高い温度がより好ましい。なお、融点は示差走査熱量計により測定することができる。また、ニッケル化合物から活性ニッケル化合物が生成する温度についても、各ニッケル化合物および金属の種類や加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば各ニッケル化合物を熱重量測定装置で分析することで把握することが可能である。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気とは環式ポリアリーレンスルフィドが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応、各ニッケル化合物、各金属塩、生成した活性ニッケル化合物の酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は、非酸化性雰囲気下であれば、大気圧下で行うことも、大気圧よりも高い加圧条件下で行うことも、減圧条件下あるいは脱揮条件下で行うことも可能であり、減圧下あるいは脱揮条件下で行うことが好ましく、脱揮条件下で行うことがより好ましい。
大気圧よりも高い加圧条件は、加熱時に、重合触媒であるニッケル化合物が揮散しにくいという観点で好ましく、加圧条件の上限としては特に制限はないが、反応装置の取り扱いの容易さの面からは0.2MPa以下が好ましい。また、加熱を50kPa以上の条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから目的の圧力条件にすることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応、各ニッケル化合物、各金属塩、生成した活性ニッケル化合物の酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい下限以上では、環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる分子量の低い前記(S)式の環式化合物が揮散しにくい傾向にある。一方好ましい上限以下では、ニッケル化合物や金属塩から分解生成した成分やアミン化合物を加熱系内から除去しやすく、融解した原料中の上記分解生成成分やアミン化合物の濃度が低下し、より効率よく加熱による分解反応、それにともなう活性ニッケル化合物の生成、環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマーの加熱系内からの除去が可能になることにより、より低温、短時間でポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向にあるため好ましい。
脱揮条件下とは環式ポリアリーレンスルフィドをニッケル化合物および金属塩存在下で加熱する際に発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する条件のことである。上記気体状態の成分としては、それぞれのニッケル化合物の特性および脱揮条件の詳細により発生の有無やその程度は異なるが、例えばニッケル化合物および金属塩に含まれる水和水、加熱による分解反応時に生成する成分、アミン化合物や環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマーなどが例示できる。
上記条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であれば特に限定はされないが、例えば連続的な減圧条件下での脱揮や、連続的にガスを系内へ流入し、流入したガスとともに、発生した気体状態の成分を加熱系外に流出させる条件、発生した気体状態の成分を冷却し系外に捕集する条件などが挙げられる。脱揮条件下で加熱することにより、ニッケル化合物から分解生成した成分を加熱系内からより除去しやすく、融解した原料中の上記分解生成成分の濃度が低下し、加熱による分解反応、それにともなう活性ニッケル化合物の生成がさらに効率よく可能になるため、より低温、短時間でポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向にあるため好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーが加熱系内により残存しにくく、加熱系内における環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比がより大きくなりやすいため、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量が大きくなる傾向にある点でも好ましい。
連続的な減圧条件下での脱揮における、連続的な減圧条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であればよく、例えば反応を行う系内全体が連続的に減圧されていてもよいし、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などを用いて加熱する場合には、常圧あるいは加圧条件下にある型内、押出機内、溶融混練機内などから一部が減圧装置に連結され連続的に減圧されていてもよい。ただし、例えば重合系内を減圧条件下で密封し加熱するよりも、連続的に減圧し脱揮を行うことで、融解した原料中の前記分解生成成分の濃度が低下し、加熱による分解反応、それにともなう活性ニッケル化合物の生成、環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマーの加熱系内からの除去がより効率よく可能になることにより、より低温、短時間でポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
また、連続的に減圧する場合、反応系内の雰囲気は一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応、各ニッケル化合物、各金属塩、生成した活性ニッケル化合物の酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
連続的にガスを系内へ流入し、流入したガスとともに、発生した気体状態の成分を加熱系外に流出させる条件においては、反応系内の雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応、各ニッケル化合物、各金属塩、生成した活性ニッケル化合物の酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。用いるガスは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが好ましく、この中でも特に、経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素ガスが好ましい。
系内へ流入するガスの温度は、流入するガスの流量、系内の加熱温度、反応系の構造にもよるが、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。ただし、安定なガス温度制御の面から0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、安定な系内の加熱温度制御の面からはさらに、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、系内の加熱温度と同温度であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
また、系内へ流入するガスの流量は、流入するガスの温度、系内の加熱温度、反応系の構造にもよるが、環式ポリアリーレンスルフィドをニッケル化合物および金属塩存在下で加熱する際に発生する気体状態の成分を加熱系内から除去可能であり、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。ただし、環式ポリアリーレンスルフィドを各ニッケル化合物存在下に加熱する際に発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する効果の面からは、1分間に系内へ流入するガスの流量は、系内の容積の1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
脱揮による発生した気体状態の成分の加熱系内からの除去量は、加熱系外に除去された成分を回収し秤量する方法、加熱前後の重量差から算出する方法、得られたポリアリーレンスルフィドの加熱時重量減少により残存成分量を算出し差し引く方法などにより把握することができる。
反応時間は、使用する環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(S)式の環式化合物の含有率や繰り返し数q、および分子量などの各種特性、使用する重合触媒であるニッケル化合物の種類、使用する金属塩の種類、加熱の温度などの条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間の下限としては0.01時間以上が例示でき、好ましくは0.05時間以上が例示できる。0.01時間以上であれば、前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへ転化させることができる。一方上限としては100時間以下が例示でき、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下が例示できる。本発明の好ましい製造方法によれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物(1)の加熱は2時間以下で行うことも可能である。加熱時間としては2時間以下、さらには1時間以下、0.5時間以下、0.3時間以下、0.2時間以下が例示できる。100時間以下では好ましくない副反応による得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の特性への悪影響を抑制できる傾向にある。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことも可能である。このような条件下で行う場合、短時間での昇温が可能であり、より短時間でポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。ここで実質的に溶媒を含まない条件とは、環式ポリアリーレンスルフィド中の溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下がより好ましい。
前記加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用でき、脱揮機構を具備した装置であればより好ましい。
上記した環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は繊維状物質の共存下で行うことも可能である。ここで繊維状物質とは細い糸状の物質のことであって、天然繊維のごとく細長く引き延ばされた構造である任意の物質が好ましい。繊維状物質存在下で前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化を行うことで、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物と繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作成する事ができる。このような構造体は、繊維状物質によって補強されるため、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物単独の場合に比べて、例えば機械物性に優れる傾向にある。
ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維からなる強化繊維を用いることが好ましく、これによりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を高度に強化する事が可能になる。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材料構造体を作成する際には、樹脂が溶融した際の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維状物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な複合材料ができないなど、期待通りの機械物性が発現しないことが多い。ここでぬれとは、溶融樹脂のごとき流体物質と、繊維状化合物のごとき固体基質との間に実質的に空気または他のガスが捕捉されないようにこの流体物質と固体基質との物理的状態の良好かつ維持された接触があることを意味する。ここで流体物質の粘度が低い方が繊維状物質とのぬれは良好になる傾向にある。本発明の環式ポリアリーレンスルフィドは融解した際の粘度が、一般的な熱可塑性樹脂、例えばポリアリーレンスルフィドと比べて著しく低いため、繊維状物質とのぬれが良好になりやすい。環式ポリアリーレンスルフィドと繊維状物質が良好なぬれを形成した後、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法によれば前記(S)式の環式化合物がポリアリーレンスルフィドに転化するので、繊維状物質とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が良好なぬれを形成した複合材料構造体を容易に得ることができる。
繊維状物質としては長繊維からなる強化繊維が好ましいことを前述したとおりであり、本発明に用いられる強化繊維に特に制限はないが、好適に用いられる強化繊維としては、一般に、高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な繊維があげられる。例えば、その強化繊維には、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維が挙げられる。この内、比強度、比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が最も良好なものとして例示できる。炭素繊維や黒鉛繊維は用途に応じて、あらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張強度450kgf/mm、引張伸度1.6%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。長繊維状の強化繊維を用いる場合、その長さは、5cm以上であることが好ましい。この長さの範囲では、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させることが容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は、他の強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊維は、その形状や配列を限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
また、上記した前記(S)式の環式化合物のポリアリーレンスルフィドへの転化は充填剤の存在下で行うことも可能である。充填剤としては、例えば非繊維状ガラス、非繊維状炭素や、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<1>環式ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンスルフィドの特性の評価
<分子量の測定>
ポリフェニレンスルフィド及び環式ポリフェニレンスルフィドの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率の測定>
環式ポリフェニレンスルフィド中の一般式(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
(qは4〜50の整数であり、異なるqを有する混合物である)
環式ポリフェニレンスルフィドの加熱により得られたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて1−クロロナフタレン不溶成分を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、未反応の前記(W)式の環式化合物存在量を定量し、前記(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率を算出した。
HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
<赤外分光分析>
装置 :Perkin Elmer System 2000 FT−IR
サンプル調製:KBr法。
参考例1 環式ポリフェニレンスルフィドの調製
国際公開第2013/12890号に記載の方法に準拠し、環式ポリフェニレンスルフィドを以下のようにして調製した。撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を1.648kg(水硫化ナトリウム0.791kg(14.1モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を1.225kg(水酸化ナトリウム0.588kg(14.7モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35L、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.116kg(14.4モル)を仕込んだ。 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で2時間反応を行った。次いで、内温を250℃に保ちながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、40分かけて溶媒を26.6kg留去した。溶媒留去の完了後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
回収した内容物を、反応液の温度が50℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった。50℃で20分間保持した後、平均目開き10μmのステンレス製金網を用いて固液分離を行ない、得られた濾液成分を約3倍量のメタノールに滴下し析出成分を回収した。得られた固体成分を約2.5Lの80℃温水でリスラリー化し、30分間80℃で攪拌後、濾過する操作を3回繰り返したのち、得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥を行ない、乾燥固体粉末を得た。生成物の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、(W)式の環式化合物含有量が86%で、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造に好適に用いられる環式ポリフェニレンスルフィドであることが判明した。また、GPC測定を行った結果、環式ポリフェニレンスルフィドは室温で1−クロロナフタレンに全溶であり、重量平均分子量は900であった。
実施例1
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、ギ酸ニッケル2水和物(和光純薬工業製、表中にNi(HCOO)・2HOと記載、以下同様)を環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対してニッケル原子として1mol%、塩化白金(和光純薬工業製、表中にPtClと記載、以下同様)をギ酸ニッケル2水和物中のニッケル原子に対して、白金原子として1mol%となるように(つまり、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して、白金原子として0.01mol%)、大気下で混合した粉末300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した後、真空ポンプを用いて約0.4kPaに減圧した。約0.4kPaに減圧してから約10秒後、300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、真空ポンプによってアンプル内を約0.4kPaに保ち脱揮をしながら60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物、白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率64%であることがわかった。結果を表1に示した。
なお、ガラス製アンプル内を約0.4kPaに保った状態で、300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置した場合の、アンプル内温度を別途測定したところ、電気炉内にアンプルを設置してから約3分後に260℃に、約4分後に290℃に到達し、約5分後以降300℃で安定することがわかった。
実施例2
実施例1と同様に、環式ポリフェニレンスルフィドに、ギ酸ニッケル2水和物、塩化白金を混合した粉末300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、アンプル内を常圧の窒素雰囲気に保ったまま60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物、白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率59%であることがわかった。結果を表1に示した。
実施例3
塩化パラジウム(和光純薬工業製、表中にPdClと記載、以下同様)をギ酸ニッケル2水和物中のニッケル原子に対して、パラジウム原子として1mol%となるように(つまり、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して、パラジウム原子として0.01mol%)、加え混合したことに変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物、パラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率57%であることがわかった。結果を表1に示した。
実施例4
塩化パラジウムをギ酸ニッケル2水和物中のニッケル原子に対して、パラジウム原子として1mol%となるように(つまり、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して、パラジウム原子として0.01mol%)、加え混合したことに変更した以外は、実施例2と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物、パラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率59%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例1
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、ギ酸ニッケル2水和物(和光純薬工業製、表中にNi(HCOO)・2HOと記載、以下同様)を環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対してニッケル原子として1mol%となるように、大気下で混合したことに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率39%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例2
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、ギ酸ニッケル2水和物を環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対してニッケル原子として1mol%となるように、大気下で混合したことに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくニッケル化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率42%であることがわかった。結果を表1に示した。
実施例1−4および比較例1−2の比較から、ニッケル化合物であるギ酸ニッケルに水和物およびニッケルよりもイオン化傾向の低い金属である白金またはパラジウム塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することで、ギ酸ニッケル二水和物のみ存在下の場合に比べて、窒素雰囲気下や脱揮条件下によらず、より短時間で(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することが分かった。
比較例3
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドの粉末を用いたことに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、生成物を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率30%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例4
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドの粉末を用いたことに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、、生成物を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率28%であることがわかった。結果を表1に示した。
実施例1−4および比較例3−4の比較から、ニッケル化合物であるギ酸ニッケルに水和物およびニッケルよりもイオン化傾向の低い金属である白金またはパラジウム塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することで、窒素雰囲気下や脱揮条件下によらず、より短時間で(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することが分かった。
比較例5
環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して塩化白金を0.01mol%なるように、加え混合したことに変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなく白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率30%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例6
環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して塩化白金を0.01mol%なるように、加え混合したことに変更した以外は、実施例2と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなく白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率29%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例7
環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して塩化パラジウムを0.01mol%なるように、加え混合したことに変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率30%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例8
環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して塩化パラジウムを0.01mol%なるように、加え混合したことに変更した以外は、実施例2と同様な操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィド中の(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化率28%であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例3−8の比較から、ニッケルよりもイオン化傾向の低い金属である白金またはパラジウム塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱する場合、窒素雰囲気下や脱揮条件下によらず、(W)式の環式化合物のポリフェニレンスルフィドへの転化がほとんど促進しないことが分かった。

Claims (15)

  1. ニッケル化合物および金属塩存在下で、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、金属塩を構成する金属がニッケルよりイオン化傾向の低い金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  2. ニッケル化合物が、0価ニッケル化合物および加熱により0価ニッケル化合物を生成するニッケル化合物から選ばれる少なくとも1種のニッケル化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  3. ニッケル化合物の存在量が、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して、ニッケル原子として0.001mol%以上10mol%未満であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記金属塩の存在量が、ニッケル化合物中に含まれるニッケル原子に対して、金属原子として0.01mol%以上10mol%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記金属塩を構成する金属が周期表第8族から第14族かつ第4周期から第6周期の中から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記金属塩を構成する金属がパラジウム、銀、白金、および金から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記金属塩を構成する金属がパラジウムまたは白金から選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項6に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  8. ニッケル化合物が下記(i)、(ii)、および(iii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
    (i)一般式(A)で示されるカルボン酸構造とニッケルとからなるカルボン酸ニッケル化合物

    (ここで、Rは水素、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、および式(B)で表される構造(置換基)から選ばれる置換基を表し、各置換基の水素は炭素数1〜12のアルキル基で置換されていてもよく、式(B)中のkは0〜6の整数を表し、mは0または1の整数を表し、nは0〜6の整数を表す。)
    (ii)一般式(C)で示されるカルボン酸ニッケル化合物と第1級アミンからなるカルボン酸ニッケルアミン錯体

    (ここで、RおよびRは水素もしくは炭素数が1〜12の炭化水素基から選ばれる置換基を表し、RおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
    (iii)一般式(D)で示されるニッケル化合物
    (ここで、mは0〜10の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、ハロゲン基から選ばれる置換基を表し、アルキル基、アルコキシ基、アリール基の水素原子はハロゲン原子基で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
  9. 前記一般式(A)における、Rが水素または式(B)で表される構造中のmが0である構造であることを特徴とする、請求項8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  10. 前記一般式(A)における、Rが水素または式(B)で表される構造中のkおよびnが0である構造であることを特徴とする、請求項8または9に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  11. 前記一般式(A)で表されるカルボン酸ニッケル化合物がギ酸ニッケルであることを特徴とする、請求項8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  12. 前記一般式(C)における、Rが水素および炭素数が1〜8の炭化水素基であり、Rが水素および炭素数が1〜8の炭化水素基であることを特徴とする、請求項8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  13. 前記カルボン酸ニッケルアミン錯体を構成する第1級アミンが脂肪族アミンであることを特徴とする、請求項8または12に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  14. 前記一般式(D)における、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基であることを特徴とする、請求項8に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  15. ポリアリーレンスルフィド樹脂中の硫黄原子に対し0.001mol%以上10mol%未満のニッケル、および、ニッケル原子に対して0.01mol%以上10mol%以下のニッケルよりイオン化傾向の低い金属を含むことを特徴とする、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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