JP2011137123A - 反応性希釈剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化が速く、表面硬化性、薄膜硬化性に優れており、かつ、酸素による重合阻害を受けにくく、硬化収縮率が小さく、ラジカル硬化型の反応性希釈剤として有用な、新規なラジカル重合性単量体、および該ラジカル重合性単量体を含んでなる硬化性組成物と、その硬化方法を提供することを目的とする。また、該硬化方法により得られる、密着性、機械物性に優れた硬化物を提供することをも目的とする。
【解決手段】下記式(1);
[化1]
Figure 2011137123

(式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるラジカル重合性単量体であって、1333Pa条件下での沸点が95℃以上であることを特徴とするラジカル重合性単量体。
【選択図】なし

Description

本発明は、種々の工業的用途における硬化性材料等として用い得るラジカル重合性単量体、それを含んでなるラジカル硬化性組成物等に関する。より詳しくは、特に反応性希釈剤として好適に用いることができるラジカル重合性単量体、それを含んでなるラジカル硬化性組成物、それらラジカル重合性単量体又はラジカル硬化性組成物を硬化する方法、それによって得られる硬化物に関する。
反応性希釈剤は、低粘度で種々の化合物と相溶し、重合反応により粘凋な液状物質や硬い固体状物質を形成することができる液体、すなわち溶媒を兼ねた重合性単量体であり、コーティング材、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、インク、レジスト、歯科材料、レンズ、成型材料等、種々の用途で用いられている。このような反応性希釈剤としては、ラジカル機構で付加重合する(メタ)アクリル系単量体、およびカチオン機構で付加重合するエポキシ化合物やオキセタン化合物が主に用いられている。
一般に、ラジカル機構に基づく付加重合(以下、単にラジカル硬化と表す場合もある。)は、水や塩基による重合阻害がない、暗反応がない、硬化速度が速い、等の点で優れているが、酸素による重合阻害を受け易く、硬化収縮率が大きい。逆に、カチオン機構に基づく付加重合は、酸素による重合阻害がない、硬化収縮率が小さい、等の点で優れているが、水や塩基による重合阻害を受け易く、暗反応が生じる、硬化速度が比較的遅いといった欠点がある。また、(メタ)アクリル系単量体の硬化物は、エポキシ化合物やオキセタン化合物の硬化物と比べると、密着性が劣る傾向にある。このように、それぞれ一長一短があり、用途や要求性能に応じて使い分けられているが、硬化できる条件の幅が広く、経済性にも優れることから(メタ)アクリル系単量体、特にアクリル酸エステル類が使用されることが多い。
ところで、(メタ)アクリル系単量体と同様に、隣接するカルボニル基と共役した二重結合を持つラジカル重合性化合物の1つとして、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルなどの、アクリル酸エステルのα位にアリルオキシメチル基を導入した化合物がある。この化合物は、環化重合して主鎖にテトラヒドロフラン環を有する可溶性の重合体を生じることが開示されているが(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)、反応性希釈剤としての使用や、性能については記載されていない。
ロバート・トンプソン(Robert D. Thompson)、外2名、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、1992年、第25巻、p.6455−6459 ミチオ・ウルシザキ(Michio Urushizaki)、外4名、「マクロモレキュールズ(Macromolecules)」、1999年、第32巻、p.322−327
上述したように、(メタ)アクリル系単量体は、水や塩基による重合阻害がない、暗反応がない、硬化速度が速い、といったようなエポキシ化合物やオキセタン化合物では達成不可能な長所を有しており、それ故に広く用いられているものであるが、課題も多い。かといって、エポキシ化合物やオキセタン化合物を単に混合すれば両者の長所が発揮されるというものでもない。このようなことから、(メタ)アクリル系単量体の課題を克服して、より広い分野において適用することを可能とするラジカル硬化型の反応性希釈剤が求められるところであった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、硬化が速く、表面硬化性、薄膜硬化性に優れており、かつ、酸素による重合阻害を受けにくく、硬化収縮率が小さく、ラジカル硬化型の反応性希釈剤として有用な、新規なラジカル重合性単量体、および該ラジカル重合性単量体を含んでなる硬化性組成物と、その硬化方法を提供することを目的とする。また、該硬化方法により得られる、密着性、機械物性に優れた硬化物を提供することをも目的とする。
本発明者は、反応性希釈剤として使用できる化合物について種々検討し、α−アリルオキシメチルアクリル酸系単量体に着目した。そして、その中でも、1333Pa条件下での沸点が95℃以上であるものは、反応性希釈剤として通常用いられる(メタ)アクリル系単量体よりもラジカル硬化性が高く、低収縮であり、また、そのような化合物の硬化物が密着性や機械物性に非常に優れることを見出し、このような化合物が、コーティング材、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、インク、レジスト、歯科材料、レンズ、成型材料等の各種用途において反応性希釈剤として好適に用いることができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、下記式(1);
Figure 2011137123
(式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるラジカル重合性単量体であって、1333Pa条件下での沸点が95℃以上であるラジカル重合性単量体である。
本発明はまた、上記ラジカル重合性単量体を含んでなるラジカル硬化性組成物でもある。本発明は更に、それらを硬化させる硬化方法、及び、該硬化方法によりラジカル重合性単量体を硬化させて得られる硬化物でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のラジカル重合性単量体は、上記式(1)で表される化合物(以下、AMA単量体と表することもある。)であるが、該化合物は、(メタ)アクリル系単量体よりも、ラジカル硬化性が高く、硬化時の収縮が小さく、該化合物を硬化して得られる硬化物は優れた密着性、機械物性を有するものである。このような特徴は、下記式(2)で表される重合性基(アクリロイル基のα位にアリルオキシメチル基を導入した構造、以下AMA基と表することもある。)に起因して発現するものと考えられる。
なお、本発明において、「硬化」とは、重合反応により高分子量体が生じ、例えば粘着剤として有用な粘凋な液状物質や、例えばコーティング材として有用な硬い固体状物質を形成することであり、固化や架橋体の形成を必須とする概念ではない。
Figure 2011137123
上述したように、本発明のラジカル重合性単量体は、ラジカル硬化性に優れ、またその硬化物は密着性、機械物性に優れるものであるが、その理由の大部分は、AMA基の特異なラジカル重合性に帰結できると考えられる。
以下にAMA基のラジカル硬化機構について説明する。
上記AMA基が、退化的連鎖移動を起こし易い(アリルラジカルを生じ易い)アリルエーテル基を含み、かつカルボニル基と共役している二重結合のα位が立体的に込み合っているにもかかわらず、(メタ)アクリロイル基より、むしろ高いラジカル硬化性を示すのは驚くべきことだが、これは、AMA基が、アリルラジカルを生じにくく、生長ラジカルとして重合活性の高いメチレンラジカルを生じる上に、通常の(メタ)アクリロイル基のラジカル付加重合で見られる酸素硬化阻害を起こしにくいためと考えられる。この機構を、図1および図2に示す概念図とともに詳細に説明する。
図1は、AMA基のラジカル付加重合機構において、アリルラジカルが生じにくく、生長ラジカルとして重合活性の高いメチレンラジカルを生じることを示した概念図である。AMA基中には、2種類の二重結合(図1の(I)および(II))が存在するが、開始ラジカルあるいは生長末端ラジカル(X・)は、隣接するカルボニル基と共役し活性化された(I)の方を選択的に攻撃すると考えられる。もし、(II)の方を攻撃すれば、直ちにアリルラジカルが生じ重合が失活してしまう(退化的連鎖移動)。X・の(I)への攻撃により生じたラジカルは、2種類の付加重合が可能であり、それぞれ生成する構造が異なる。経路(a)は、環化反応の後、分子間生長反応が起こる機構であり、アリルラジカルを生じることはない。経路(b)は、直ちに分子間生長反応が起こりアリルエーテル基が残存する機構であり、残存したアリルエーテル基は、退化的連鎖移動、すなわち、重合失活の原因となる。経路(a)の最初のステップ(環化反応)は分子内反応であり、分子間反応である生長反応より非常に速く、また、2つの経路の生長ラジカルを比較すると、経路(a)の生長ラジカルは立体的に混み合っていないメチレンラジカルであり、経路(b)の生長ラジカル(α位がアリルオキシメチル基で置換されている、立体的に混み合った3級ラジカル)より重合活性が高いため、2ステップではあるが、経路(a)が優先すると考えられる。このように、AMA基のラジカル付加重合反応においては、アリルラジカルを生じない機構(X・の二重結合(I)への攻撃→経路(a)の環化重合)が優先するため、アリルラジカルが生じにくく、また生長ラジカルとして重合活性の高いメチレンラジカルが生じると考えられる。
図2は、AMA基が酸素硬化阻害を起こしにくいことを示した概念図である。通常の(メタ)アクリロイル基のラジカル付加重合においては、生長ラジカルと活性酸素が反応して付加重合活性の無い安定ラジカルを生じ易いが、AMA基のラジカル付加重合においては、生長ラジカル以外に活性酸素を吸収する部位が存在し、なおかつ活性酸素を吸収した構造に変化しても付加重合活性を維持していると考えられる。そのため、酸素による硬化阻害を受けにくいと考えられる。
AMA単量体であれば、上述の機構により硬化することができるが、沸点の低いものは、条件によっては硬化性に劣る傾向があり(例えば、薄膜状態にして空気中で硬化させる場合など)、反応性希釈剤として使用するには問題となる場合がある。この理由は明確ではないが、沸点が低い場合、生長ラジカルの活性が高すぎて、本来、周囲に多量に存在する未反応の単量体と反応するはずの生長ラジカルが、極僅かに存在する活性酸素とでも反応してしまう、或いは酸素吸収部位に生じたハイドロパーオキサイド構造とも反応して重合が停止してしまう、等の機構により、却って硬化性が低下するものと考えられる。
さらに、本発明のラジカル重合性単量体は、(メタ)アクリル系単量体よりも硬化時の収縮が小さいものであるが、これは、図1の経路(a)に示すように環化しながら重合し、またその割合が非常に高いためではないかと考えられる。すなわち、通常の(メタ)アクリル系単量体の重合(図1の経路(b)と同様の機構)に比べて、嵩高い環状構造を生じながら重合するため、収縮が抑えられるのではないかと考えられる。
また、本発明のラジカル重合性単量体を硬化させて得られる硬化物は高い密着性を有するが、これは図1の経路(a)に示すように、重合で生じる下記式(3);
Figure 2011137123
で表される構造に含まれるテトラヒドロフラン環、及びテトラヒドロフラン環の両隣にあるメチレン基に起因すると考えられる。テトラヒドロフラン環は、いわゆるLewis塩基(孤立電子対の供与体)としての作用があり、テトラヒドロフラン環と基材表面の官能基とが相互作用しやすくなるため、良好な密着性を発現すると考えられる。テトラヒドロフラン環の両隣にあるメチレン基は、重合体鎖の柔軟性を向上させ、上記の相互作用がより効果的に生じると考えられる。さらに、本発明のラジカル重合性単量体の硬化物は、耐熱性、色材分散性、相溶性、機械物性にも優れるが、これらの諸性能が発現する理由は、式(3)に示す構造に帰結できると考えられる。
本発明のラジカル重合性単量体は、1333Pa条件下での沸点が95℃以上のものである。これはすなわち、本発明のラジカル重合性単量体の蒸気圧曲線における1333Paでの温度が95℃以上であることを表している。本発明のラジカル重合性単量体においては、沸点と硬化性とに強い相関関係があることが確認されており、1333Pa条件下での沸点が95℃以上であれば、優れた硬化性を発揮することになる。また、このような沸点を有することにより、本発明のラジカル重合性単量体は、硬化速度、表面硬化性、薄膜硬化性に優れたものとなる。
上記ラジカル重合性単量体の1333Pa条件下での沸点としては、99℃以上であることがより好ましく、103℃以上であることが更に好ましい。
上述のように、上記ラジカル重合性単量体の沸点について、1333Pa条件下での沸点として規定したのは、本発明のラジカル重合性単量体は反応性が高いために、常圧での沸点を測定することが困難であることに因る。ただし、本発明のラジカル重合性単量体の沸点について常圧での沸点を規定するには、例えば、以下のような方法により規定することができる。
例えば、1点の実測値から任意の沸点を推算する方法が開示されているが(大江修造、物性推算法、データブック出版社、p73、(4.32)式)、本発明のラジカル重合性単量体は極性液体であるので、下記数式(1)を用いることにより推算することができる。
0.105=14.1T0.105+C (1)
P:蒸気圧[mmHg]、T:温度[K]、C:物質定数
上式(1)を用いれば、一点の実測値から物質定数Cが決まり、任意圧力の沸点を求めることができる。つまり、1333Pa(10mmHg)での実測値の沸点から常圧の沸点を求めることができる。
上記AMA単量体は、上述のようにして求めた常圧での沸点が205℃未満であっても条件次第で硬化するが、良好な硬化性を得るには常圧での沸点205℃以上が必要である。好ましくは210℃以上、最も好ましくは215℃以上である。このように、上記式(1)で表されるAMA単量体であって、上述のようにして求めた常圧での沸点が205℃以上であるものも、反応性希釈剤として好適に用いることができる。
すなわち、下記式(1);
Figure 2011137123
(式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるラジカル重合性単量体であって、下記数式(1);
0.105=14.1T0.105+C (1)
(式中、Pは、蒸気圧[mmHg]を表す。Tは、絶対温度[K]を表す。Cは、物質定数を表す。)を用いて求めた101.3kPa条件下での沸点が205℃以上であるラジカル重合性単量体もまた、本発明の1つである。
また、上述した式を用いれば任意の圧力の沸点を推算することも可能である。例えば、1333Paでは沸点が測定できないが、1333Pa以下で沸点が測定可能な場合は、1333Pa以下の沸点から1333Paの沸点を求めることができる。但し、高沸点のラジカル重合性単量体の場合は、1333Pa以下の圧力においても沸点に到達する前に重合してしまうことがある。実際に測定できるラジカル重合性単量体の沸点として、例えば、通常の減圧装置で達成可能と考えられる圧力533Paにおいて、110℃程度が測定可能な範囲と考えられる。気相部が110℃の時、ラジカル重合性単量体はそれ以上の温度で加熱されており、それ以上の沸点を測定しようとすると重合して測定できない恐れがある。533Paで110℃の沸点のラジカル重合性単量体の1333Paでの沸点、常圧での沸点を上述した式を用いて算出するとそれぞれ、126℃、245℃である。例えば、沸点の測定及び蒸留工程において、沸点が測定できる十分な蒸気量を得ようとすると、気相部の温度が110℃の場合、液相部のラジカル重合性単量体を加熱する温度は130℃以上必要であると考えられる。つまり、圧力533Paで130℃以上の温度で加熱しても十分な蒸気量が得られずラジカル重合性単量体の沸点が測定できない場合は、1333Paでの沸点が126℃以上、常圧での沸点が245℃以上であるとみなすことができる。
このように、本発明のラジカル重合性単量体の優れたラジカル硬化性は、AMA基と沸点に由来するものであると考えられる。また本発明の単量体が低硬化収縮で、その硬化物が優れた密着性、機械物性を示すのは、AMA基の重合で生じるテトラヒドロフラン環を含む構造に由来するものと考えられるため、本発明のラジカル重合性単量体は、上記式(1)(式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表され、1333Pa条件下での沸点が95℃以上であれば、合成方法、原料の入手性、各用途の要求特性などに合わせて適宜選択すればよく、特に限定されない。
上記Rは、水素原子又は1価の有機基を表すものであるが、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また環状構造を含んでいてもよい。
また、該有機基は、炭化水素骨格、またはエーテル結合を含む炭化水素骨格からなる1価の有機基であり、置換基を有していてもよい。すなわち、上記炭化水素骨格、またはエーテル結合を含む炭化水素骨格を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部が置換基で置き換えられていてもよい。
上記炭化水素骨格からなる1価の有機基としては、例えば、炭素数3以上の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3以上の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3以上の脂環式炭化水素基、炭素数6以上の芳香族炭化水素基、などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜30の鎖状飽和炭化水素基、炭素数4〜30の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数4〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記エーテル結合を含む炭化水素骨格からなる1価の有機基としては、上記鎖状飽和炭化水素基、鎖状不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を構成する少なくとも1つの炭素−炭素結合に酸素原子が挿入した構造のものが挙げられる。
上記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、シアノ基、トリメチルシリル基、などが挙げられる。
上記鎖状飽和炭化水素基としては、直鎖状、或いは分岐状の炭化水素基であればよく、特に限定されないが、例えば、n−ブチル、n−アミル、s−アミル、t−アミル、ネオペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、s−オクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、カプリル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、エイコシル、セリル、メリシル等の基が好適なものとして挙げられる。
また、鎖状飽和炭化水素基を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子やシアノ基等で置換したものであってもよい。
上記鎖状不飽和炭化水素基としては、芳香属性でない炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ含む直鎖状、或いは分岐状の炭化水素基であればよく、特に限定されないが、例えば、クロチル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、2−メチル−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、オレイル、リノール、リノレン、等の基が好適なものとして挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、3員環以上の飽和環状構造、あるいは芳香属性でない不飽和環状構造を含む炭化水素基であればよく、特に限定されないが、例えばシクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、4−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル等の基が好適なものとして挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、6員環以上の芳香属性の環状構造を含む炭化水素基であればよく、特に限定されないが、例えばフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、ベンジル、ジフェニルメチル、ジフェニルエチル、トリフェニルメチル、シンナミル、ナフチル、アントラニル等の基が好適なものとして挙げられる。
上記エーテル結合を含む炭化水素骨格からなる1価の有機基としては、上記鎖状飽和炭化水素基、鎖状不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を構成する少なくとも1つの炭素−炭素結合に酸素原子が挿入した構造のものであればよく、特に限定されないが、例えば、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトシキエトキシエチル、3−メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシエトキシエチル等の鎖状エーテル基:シクロペントキシエチル、シクロヘキシルオキシエチル、シクロペントキシエトキシエチル、シクロヘキシルオキシエトキシエチル、ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂環式炭化水素基と鎖状エーテル基を併せ持つ基:フェノキシエチル、フェノキシエトキシエチル等の芳香族炭化水素基と鎖状エーテル基を併せ持つ基:グリシジル、β−メチルグリシジル、β−エチルグリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、2−オキセタンメチル、3−メチル−3−オキセタンメチル、3−エチル−3−オキセタンメチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフルフリル、テトラヒドロピラニル、ジオキサゾラニル、ジオキサニル等の環状エーテル基が好適なものとして挙げられる。
本発明のラジカル重合性単量体を化合物名で例示すると、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸1,1−ジメチル−2−プロペニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチルブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−2−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸オレイル、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノール、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノレン、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−メチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−t−ブチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトシキエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸グリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−メチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−エチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−エチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、ジオキサゾラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジオキサニル等が好適なものとして挙げられる。
本発明のラジカル重合性単量体の製造方法としては、例えば製法A)α−ハロメチルアクリル酸アルキルエステルを経由する製造方法、製法B)2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸アルキルエステルを経由する製造方法、製法C)α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルやα−アリルオキシメチルアクリル酸エチル等のα−アリルオキシメチルアクリル酸の低級エステルからエステル交換反応を利用して製造する方法等が挙げられる。これらの製法の反応式の一例を図3に示す。
上記α−ハロメチルアクリル酸アルキルエステルを経由する製造方法としては、例えば、α−クロロ又はα−ブロモアクリル酸アルキルエステルとアリルアルコールとの反応により製造する方法が好適に挙げられる。図3の製法A)においては、α−ブロモアクリル酸アルキルエステルとアリルアルコールとの反応により製造する場合の反応式が描かれている。
上記2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸アルキルエステルを経由する製造方法としては、例えば、図3の製法B)に示すように、下記(a)、(b)及び(c)の反応工程を順に行う方法が好適に挙げられる。
(a)アクリル酸アルキルエステルとパラホルムアルデヒドとを反応させて、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステルを得る工程。
(b)α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステルから、2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸アルキルエステルを得る工程。
(c)2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸アルキルエステルにアリルアルコールを反応させて、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルとα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステルとを含む組成物を得る工程。
上記α−アリルオキシメチルアクリル酸の低級エステルからエステル交換反応を利用して製造する方法として、例えば、図3の製法C)に示すように、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルとアルコールとのエステル交換反応を行う方法が好適に挙げられる。
本発明は、上記本発明のラジカル重合性単量体を含んでなるラジカル硬化性組成物でもある。本発明の硬化性組成物は、上記本発明のラジカル重合性単量体以外に、目的や用途に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては特に限定されないが、硬化促進剤、他の重合性単量体、安定剤、バインダー樹脂、溶剤、フィラー、色材、分散剤、密着性向上剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、表面改質剤、シラン系やアルミニウム系、チタン系などのカップリング剤、酸発生剤などが挙げられる。中でも、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合促進剤、光増感剤などの硬化促進剤は、本発明のラジカル重合性単量体の性能をより引き出すことができるため、添加することが好ましい成分である。
以下に主な添加剤について説明する。
(A)ラジカル重合開始剤
本発明のラジカル重合性単量体は、加熱および/または電磁波や電子線などの活性エネルギー線の照射によりラジカル重合を開始し、硬化することができるが、ラジカル重合開始剤を併用することにより、より効果的に硬化させることができる。すなわち、本発明のラジカル硬化性組成物が、更に、ラジカル重合開始剤を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤と、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤とがあり、通常ラジカル重合開始剤として用いられるものを1種または2種以上使用できる。また、必要に応じて通常用いられるラジカル重合促進剤、光増感剤等を1種または2種以上さらに添加することも好ましい。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤やアゾ系重合開始剤が好適であり、具体的には、例えば、下記のものが挙げられる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α′−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の過酸化物系重合開始剤。
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系重合開始剤。
上記熱ラジカル重合開始剤とともに使用できるラジカル重合促進剤としては、上記熱ラジカル重合開始剤の分解(開始ラジカルの発生)を促進するものであればよく、通常用いられるものを使用でき、特に限定されないが、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム等の金属塩、あるいは金属錯体;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、エチレンチオ尿素、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシー2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボキニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−(2′−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2′−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′ −テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4′,5,5′ −テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光増感剤やラジカル重合促進剤を使用することにより、感度や硬化性を向上できる。このような光増感剤やラジカル重合促進剤としては、通常、光増感剤やラジカル重合促進剤として使用されるものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、キサンテン色素、クマリン色素、3−ケトクマリン系化合物、ピロメテン色素などの色素系化合物;4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどのジアルキルアミノベンゼン系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのメルカプタン系水素供与体等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、上記ラジカル重合開始剤は必須成分ではなく、目的、用途に応じて、添加の有無、添加量を適宜設定すればよい。上記ラジカル重合開始剤を添加する場合の添加量としては、特に限定されるわけではないが、硬化性、分解物の悪影響、経済性のバランスの点から、上記ラジカル重合開始剤を添加する場合の添加量は、本発明のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性の化合物の合計量に対して、0.01〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜15質量%である。
本発明の硬化性組成物において、上記ラジカル重合促進剤、光増感剤は必須成分ではなく、目的、用途に応じて、添加の有無、添加量を適宜設定すればよい。上記ラジカル重合促進剤、光増感剤を添加する場合の添加量としては、特に限定されるわけではないが、硬化性、経済性のバランスなどから、上記ラジカル重合促進剤、光増感剤を添加する場合の添加量はそれぞれ、本発明のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性の化合物の合計量に対して、0.001〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜10質量%であり、さらに好ましくは0.05〜10質量%である。
(B)ラジカル重合開始剤以外の硬化促進剤
ラジカル重合開始剤以外の硬化促進剤としては、多官能チオールが挙げられる。多官能チオールは、ラジカル硬化において多官能性連鎖移動剤として作用でき、また、アリルエーテル基とのエン−チオール反応機構に基づく架橋剤としても作用できるため、本発明の硬化性組成物の硬化性を向上することができる。このような多官能チオールとしては、メルカプト基を同一分子内に2個以上有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(C)本発明のラジカル重合性単量体以外の他の重合性単量体
本発明の硬化性組成物は、性能バランスや経済性を考慮し、その優れた特徴を失わない範囲で、本発明のラジカル重合性単量体以外の他の重合性単量体を含んでいてもよい。このような他の重合性単量体としては、炭素−炭素不飽和結合のようなラジカル重合性基を有する化合物や、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基のようなカチオン重合性基を有する化合物、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の両方を有するハイブリッド型化合物が挙げられ、目的、用途に応じて1種または2種以上を使用することができ、特に限定はされないが、上述した本発明のラジカル重合性単量体と同じ機構で硬化することができる本発明のラジカル重合性単量体以外の他のラジカル重合性単量体であることが好ましい。
上記他のラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性不飽和基を同一分子内にひとつだけ有する単官能性のラジカル重合性単量体と、2個以上有する多官能性のラジカル重合性単量体に分類することができる。
上記単官能性のラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸無水物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類などが挙げられる。
上記多官能性のラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類等が挙げられる。
(D)安定剤
安定剤は、取扱い性や貯蔵安定性を向上するために、ラジカル重合や酸化劣化を防止する機能をもつ化合物であり、通常用いられる重合禁止剤、酸化防止剤を1種または2種以上使用でき、特に限定されるものではない。このような化合物としては、例えば、フェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。これらの中では、着色や相溶性などの点でフェノール系化合物が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物において、上記安定剤は必須成分ではなく、目的、用途に応じて、添加の有無、添加量を適宜設定すればよい。上記安定剤を添加する場合の添加量としては、特に限定されるわけではないが、貯蔵安定性、硬化性、経済性のバランスなどから、上記安定剤を添加する場合の添加量は、本発明のラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性の化合物の合計量に対して、0.001〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.01〜10質量%であり、さらに好ましくは0.05〜5質量%である。
(E)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、塗膜形成性付与/向上、型崩れ防止などの充填剤的な役割をするオリゴマーあるいは重合体であり、目的や用途に応じて、さらに、アルカリ現像性、色材分散性、耐熱性など、様々な機能を付与する。このようなバインダー樹脂としては、通常バインダー樹脂として用いられる様々なオリゴマー、あるいは重合体を1種または2種以上使用でき、特に限定されるものではない。例えば、カルボキシル基変成ビニルエステル樹脂や(メタ)アクリル酸共重合体などのアルカリ可溶性のオリゴマー、あるいは重合体をバインダー樹脂に用いると、本発明の硬化性組成物を、ソルダーレジスト、カラーフィルター用レジスト、保護膜レジストなどのアルカリ現像型の永久レジスト用途に適用できる。また、例えば(メタ)アクリル酸エステル重合体など、適度なガラス転移温度と、色材や分散剤との相溶性を有する重合体をバインダー樹脂に用いると、本発明の硬化性組成物を、塗料やインキ用途に適用することができる。
(F)溶剤
溶剤は、希釈による低粘度化、塗布膜厚の調整、硬化性組成物中の各成分の均一混合/分散、等のために使用されるものであり、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。このような溶剤としては、硬化性組成物中の各成分を溶解、或いは分散できる低粘度の有機溶媒或いは水であればよく、硬化性組成物に通常用いられるものが使用でき、特に限定されるものではない。
上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、水等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよく、また、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明はまた、本発明のラジカル重合性単量体、又は、本発明のラジカル硬化性組成物中のラジカル重合性単量体を硬化させる硬化方法でもある。上述のように、本発明のラジカル重合性単量体、および硬化性組成物は、ラジカル機構で付加重合することにより硬化するものであり、加熱、および/または活性エネルギー線の照射により硬化させることができ、またこれらの方法のうち1種類だけを用いてもよく、2種を併用してもよい。すなわち、本発明のラジカル重合性単量体、又は、本発明のラジカル硬化性組成物中のラジカル重合性単量体を硬化させる方法であって、上記方法は、加熱及び/又は活性エネルギー線の照射により硬化させる工程を含むラジカル重合性単量体の硬化方法もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記加熱による硬化方法における加熱条件、すなわち硬化温度は、組成物の組み合わせなどに応じて適宜選択すればよいが、硬化促進剤を併用しない場合には、30〜400℃が好ましく、より好ましくは70〜350℃、さらに好ましくは100〜350℃である。このような温度とすることにより、硬化促進剤なしで容易に硬化させることができ、また過剰な加熱による熱分解を低減できる。硬化促進剤を併用する場合には、併用しない場合よりも低い温度で硬化させることができ、0〜400℃が好ましく、より好ましくは10〜350℃、さらに好ましくは20〜350℃である。加熱による硬化は、2段階以上に分けて行ってもよく、また活性エネルギー線の照射による硬化の前に行っても、後に行ってもよい。例えば、低温での加熱や、短時間の活性エネルギー線照射などにより、一旦ある程度硬化させてから現像などの処理を行った後に、150℃以上、より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃以上の高温で硬化させる工程は、ポストベーク、あるいはポストキュアとも呼ばれ、より硬化を進行させることができ、好ましい。
上記活性エネルギー線の照射による硬化方法における活性エネルギー線としては、通常用いられるものを使用することができ、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線などの電磁波や、電子線、中性子線、陽子線などの粒子線などが挙げられる。これらの中では、エネルギーの強さ、エネルギー線の発生装置などの点から、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、電子線が好ましく、紫外線、可視光線、電子線がより好ましく、紫外線が最も好ましい。硬化促進剤を併用しない場合には、ガンマ線、X線、電子線などのエネルギーの強い活性エネルギー線を用いるのが好ましく、硬化促進剤を併用する場合には、紫外線、可視光線などの、エネルギーは比較的弱いが発生が容易で経済的な活性エネルギー線を好ましく用いることができる。
さらに、本発明はまた、上記硬化方法により本発明のラジカル重合性単量体、または本発明のラジカル重合性単量体を含む硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物でもある。すなわち、本発明のラジカル重合性単量体以外の成分を含んで硬化させて得られたものも本発明の硬化物の1つである。本発明の硬化性組成物の項で述べたように、本発明のラジカル重合性単量体以外の成分としては、例えば、ラジカル開始剤、他のラジカル重合性単量体、安定剤、溶剤などが挙げられ、したがって、例えば、本発明の硬化物は、溶剤を含んだ状態でもよく、さらに、そのような硬化物から脱溶剤工程を経て乾燥し、溶剤をほとんど含まない状態にしたものでもよい。本発明の硬化物は、前述のように、上記式(3)に示す構造を含み、これにより、硬化性、密着性、機械物性において有利な作用効果を奏することができるものである。また更には、耐熱性、色材分散性、相溶性にも優れたものとなる。
上記硬化性については、上述した硬化機構に示されるように、基本的にはラジカルによる硬化反応による特性が優れることである。ラジカル硬化性が優れるとは、加熱及び/又は活性エネルギー線の照射によるラジカルによる硬化特性に優れることである。
上記硬化物の密着性、機械物性については、主にラジカル硬化機構により生じる繰り返し単位の構造(テトラヒドロフラン環の両隣にメチレン基がある構造)に起因して発揮されると推測される特性であり、密着性に優れるとは、上述の硬化方法により得られた硬化物が、基材(例えば、ガラス、樹脂、金属など)によく密着し剥がれにくい、ということである。また、機械物性に優れるとは、上述の硬化方法により得られた硬化物が、高靭性である(硬く、粘り強い)、ということである。
上記硬化性については、硬化速度として、ラジカル重合性単量体又はラジカル硬化性組成物を基板に塗布して、UVを照射し、その表面が硬化するために必要なUV照射時間を測定した時に、その照射時間が短いほどラジカル硬化性(この場合は特にUV硬化性)に優れているということができる。また、硬化収縮率として、ラジカル重合性単量体又はラジカル硬化性組成物を基板に塗布して、UVを照射し、硬化させた際の収縮率を測定した時に、その収縮率が小さいほど硬化による収縮を起こしにくいということから硬化性能に優れているということができる。
上記硬化物の密着性については、クロスカット試験法における密着しているマス目の割合や、基材と基材を上記硬化物で張り合わせたものを剥がす時に必要な引張強度などによって表すことができ、これらの値が高いほど密着性に優れていると言える。
上記硬化物の機械物性については、破断エネルギーや伸び、弾性率によって表すことができ、これらの値が高いほど高靭性であり、硬くて粘り強い硬化物となる。
上記硬化性、密着性、機械物性などの特性は、各種用途に応じて硬化条件や測定条件を種々設定することができ、それによって種々の値を取ることになるが、ラジカル重合性単量体又はラジカル硬化性組成物を評価する際は、例えば、後述する実施例における条件を適用して比較すればその性能を把握することができる。本発明のラジカル重合性単量体、ラジカル硬化性組成物及びそれらの硬化方法は、上記性能において、ラジカル重合性単量体の沸点及び単量体中のAMA基に起因する特性を発揮し得るものであり、各種の用途、特に反応性希釈剤用途に好適に適用することができる。例えば、コーティング材、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、インク、レジスト、歯科材料、レンズ、成型材料等、種々の技術分野・用途においては、上記硬化性、密着性、機械物性などの特性が要求されるものであり、それらの特性を向上することができれば、当該技術分野において際立って優れた作用効果を奏すると評価され得る。従って、上記特性に優れる本発明のラジカル重合性単量体、ラジカル硬化性組成物及びそれらの硬化方法は、種々の技術分野・用途において好適に適用することができ、際立って優れた作用効果を奏することができるものである。
上述したように、本発明のラジカル重合性単量体は、硬化が速く、表面硬化性、薄膜硬化性に優れており、かつ、酸素による重合阻害を受けにくく、硬化収縮率が小さいため、ラジカル硬化型の反応性希釈剤として有用なものである。すなわち本発明は、下記式(1);
Figure 2011137123
(式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表される反応性希釈剤であって、1333Pa条件下での沸点が95℃以上である反応性希釈剤でもある。
なお、上記反応性希釈剤を他の組成物や材料と混合したり接触したりする条件下で硬化させて硬化物を得る場合においても、本発明の反応性希釈剤は希釈剤として働いているということができ、有している効果を発揮することもできる。したがって、本発明の反応性希釈剤を他の組成物や材料と混合する、及び/又は、接触する条件下で硬化させて硬化物を得ることもまた、本発明の反応性希釈剤の用途の1つといえる。
本発明によれば、硬化速度、表面硬化性、薄膜硬化性に優れ、硬化時の収縮を低減できる新規なラジカル重合性単量体、および該ラジカル重合性単量体を含む硬化性組成物とそれらの硬化方法が提供される。また、該硬化方法により得られる、密着性、機械物性に優れた硬化物が提供される。したがって、本発明のラジカル重合性単量体、および硬化性組成物は、コーティング材、接着剤、封止材、粘着剤、塗料、インク、レジスト、歯科材料、レンズ、成型材料等の各種用途に好適に用いることができる。
図1は、AMA基のラジカル付加重合機構において、アリルラジカルが生じにくく、生長ラジカルとして重合活性の高いメチレンラジカルを生じることを示した概念図である。 図2は、AMA基が酸素硬化阻害を起こしにくいことを示した概念図である。 図3は、本発明のラジカル重合性単量体の製造方法の反応スキームを示した概念図である。 図4は、実施例1−1のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図5は、実施例1−2のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図6は、実施例1−3のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図7は、実施例1−4のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図8は、実施例1−5のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図9は、実施例1−6のラジカル重合性単量体のH−NMRチャート及び帰属させた図である。 図10は、引張試験に供する硬化物の形状を示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<式(1)で表されるラジカル重合性単量体の合成>
式(1)で表されるラジカル重合性単量体を合成する際に行う分析は、次のような方法により行った。
(高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による反応追跡)
反応溶液を、下記希釈溶媒で希釈し、下記高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置、及び条件で分析し、ピークの面積比を元にして生成した化合物の割合を計算した。
HPLC装置:DGU−20A5、LC−20AD、SIL−20A、SPD−20A、CTO−20A(いずれも島津製作所社製)の組み合わせ
希釈溶媒:アセトニトリル/メタノール=2/1(質量比)
溶出溶媒:5mol%リン酸水溶液/アセトニトリル/メタノール混合溶媒
分離カラム:CAPCELL PACK C18 TYPE:AQ (資生堂社製)
(ガスクロマトグラフィ(GC)による反応液分析)
反応溶液をn−ヘキサン又はアセトニトリルで希釈し、下記ガスクロマトグラフィ装置で分析し、ピークの面積比を元にして生成した化合物の割合を計算した。
GC装置:6890N(Agilent Technologies社製)
分離カラム:キャピラリーカラム DB−WAX(Agilent Technologies社製)長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.5μm
H−NMR測定)
試料200mgをテトラメチルシランを含有する重クロロホルム3gに溶解し、核磁気共鳴装置(400MHz、Varian社製)により測定した。
[合成例1]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(Me−AMA)の合成)
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管、減圧装置を備えた5Lの4つ口フラスコに、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル 2032.1部、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン 98.9部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール(MEHQ) 1.02部、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO) 1.02部を仕込んだ。その後、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を吹き込みながら、10kPaの減圧下、反応液を100℃に昇温し、生成する水を留去しながら2時間反応させた。解圧して、常圧下、100℃でアリルアルコール 1523.0部に1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン 98.0部を溶解させた液を2時間かけて滴下し、更に12時間反応させた。
反応後、ガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、Me−AMAの収率がα−(ヒドロキシメチル)メチルに対し59モル%、α−(ヒドロキシ)アクリル酸メチルの転化率が89モル%であった。次に残存しているアリルアルコールを減圧下(操作圧力:7kPa)、単蒸留で留出させて、反応液 2778.1部を得た。この反応液に8質量%水酸化ナトリウム溶液 919.5部を加え室温で30分撹拌した後30分静置し、油水分離して有機相を2101.3部得た。更にこの有機相に8質量%水酸化ナトリウム溶液 231.3部を加え室温で30分撹拌した後30分静置し、油水分離して有機相を2017.7部得た。引き続き、得られた有機相を5質量%芒硝水溶液で洗浄し油水分離を行った。この操作をもう一度行った後、有機相を1900.7部得た。この有機相に重合禁止剤としてMEHQ 0.95部、2−t−ブチルハイドロキノン(TBH) 0.95部、亜リン酸トリフェニル 0.95部を加え、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を吹き込みながら、2kPaの減圧下、ディクソンパッキンを充填した充填塔を用いて蒸留し、純度99.5質量%のMe−AMAを1337.3部得た。
[合成例2]
(1−クロロ−3−メトキシ−テトラメチルジスタノキサンの合成)
エステル交換触媒である1−クロロ−3−メトキシ−テトラメチルジスタノキサン(CMDS、下記化学式(4)に示す化合物)は、Rokuro Okawara、Masanori Wada、Journal of Organometallic Chemistry、1963年、第1巻、p.81−88に記載の方法により合成した。
Figure 2011137123
[合成例3]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル(tBu−AMA)の合成)
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管、減圧装置を備えた500mLの4つ口フラスコにアクリル酸t−ブチル 307.6部、パラホルムアルデヒド(純度92%) 39.2部、蒸留水 4.5部、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン 6.8部、重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 1.02部を仕込んだ。その後、撹拌し、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を吹き込みながら、反応液を90℃に昇温し、11時間反応させた。残存するアクリル酸t−ブチルを留去するため、一旦、40℃まで冷却させた後、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を吹き込みながら、反応器内の圧力が2.0kPaになるように減圧し、徐々に昇温と減圧を行い、最終的に反応器内の圧力が1.0kPa、反応液の温度が100℃に到達した時点でアクリル酸t−ブチルの留去を終了した。解圧して常圧に戻した後、アリルアルコール 90.6部に1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン 6.6部を溶解させた溶液を加え、100℃で更に14時間反応させた。反応後、触媒である1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを取り除く目的で水洗を行い、油水分離により有機相を227.3部得た。次に残存しているアリルアルコールを減圧下(操作圧力:7.0kPa)、単蒸留で留出させて、更に1.33kPaまで減圧し、t−Bu−AMAとα−ヒドロキシメチルアクリル酸t−ブチルとの混合物を137.0部得た。更にα−ヒドロキシメチルアクリル酸t−ブチルを除去することを目的に、この混合物に無水酢酸 42.6部、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン 4.0部、4H−TEMPO 0.07部を加え、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を吹き込みながら80℃で6時間反応させ、α−ヒドロキシメチルアクリル酸t−ブチルのみをα−アセトキシメチルアクリル酸t−ブチルに変換した。その後、触媒の1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと副生する酢酸の除去を目的として水洗を行い、油水分離により得られた有機相を1333Paの減圧下、蒸留精製し、tBu−AMAを99.4質量%の純度で得た。また、tBu−AMA留出の際、その留出温度は87℃であった。
[実施例1−1]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル(Bz−AMA)の合成)
攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に、ベンジルアルコール(BzOH) 115.0部、Me−AMA 332.2部、CMDS 6.1部、p−メトキシフェノール(MEHQ) 4.9部を仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が40kPaになるまで徐々に減圧した。40kPaに到達してから昇温を開始し、内温が105℃〜110℃になるように調節しながら、エステル交換反応により生じたメタノールを溜出させた。反応液を1時間おきにサンプリング、HPLCで反応生成物を追跡しながら、メタノールの溜出を続けた。HPLCによる分析で、BzOHのピークの面積が、Bz−AMAのピークの面積の3%以下になったのを確認した後、1kPaまで減圧し、40分間その圧力を維持して過剰のMe−AMAを溜出させた。その後、冷却、解圧した。
反応液を分液漏斗に入れ、n−ヘキサンで希釈し、4%水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく攪拌した後、静置、下層の水層を除去した。これを5回繰り返し、CMDS、残存Me−AMA、MEHQを除去した。上層の有機層を取り出し、アルカリ吸着剤(キョーワード700SL、協和化学工業社製)を20.0部添加して、1時間室温で攪拌した後、濾過した。濾液を、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、内温が25〜30℃になるよう加温しながら、圧力が1kPaになるまでゆっくり減圧してn−ヘキサンを除去した。1kPaに到達した後、20分間その圧力を維持してから解圧して、目的の化合物である、Bz−AMAを197部得た。得られたBz−AMAにMEHQ 0.06部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたBz−AMAをNMR装置で分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図4に示す。
[実施例1−2]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル(CH−AMA)の合成)
攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器にシクロヘキサノール(CHOH) 24.04部、Me−AMA 74.6部、酸化ジブチルすず(IV)(DBTO) 6.0部、MEHQ 1.5部を仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が27kPaになるまで徐々に減圧した。27kPaに到達してから昇温を開始し、内温が100℃になるように調整し、エステル交換反応により生じたメタノールを溜出させながら6.5時間反応させた。反応終了後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、CH−AMA、Me−AMA、CHOHの面積比は39:45:12であった。その後、一旦冷却し、800Paまで減圧した後、内温が100℃に到達するまでCHOH及びMe−AMAを留出させた。その後、冷却、解圧した。
反応液をn−ヘキサンで希釈し、更に4%NaOH水溶液を加え、DBTOを析出させ濾過により取り除いた。ろ液を油水分離し、得られた油層を15%NaOH水溶液で洗浄し、油水分離した。この操作を5回繰り返し、残存Me−AMA、MEHQを取り除いた。得られた有機相に、アルカリ吸着剤(キョーワード700SL、協和化学工業社製)を5.0部添加して、1時間室温で攪拌した後、濾過した。濾液を、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、内温が25〜30℃になるよう加温しながら、圧力が800Paになるまでゆっくり減圧してn−ヘキサンを除去した。800Paに到達した後、20分間その圧力を維持してから解圧して、目的の化合物である、CH−AMAを26.4部得た。得られたCH−AMAにMEHQ 0.008部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたCH−AMAをNMR装置で分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図5に示す。
[実施例1−3]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル(THF−AMA)の合成)
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管を付した反応器にテトラヒドロフルフリルアルコール(THFOH) 198.4部、Me−AMA 100.1部、チタンテトラブトキシド 10.9部、4H−TEMPO 0.10部を仕込み、撹拌しながら酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、100℃まで昇温し、14時間反応させた。反応終了後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、THF−AMA、Me−AMA、THFOHの面積比は24:11:51であった。また、触媒由来の不純物であるα−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル(nBu−AMA)がTHF−AMAに対して15面積%含まれていた。この反応液をn−ヘキサンで希釈し、水を加え、チタン化合物を析出させ濾過により取り除いた。濾液を油水分離し、得られた有機相に水を加えよく撹拌し、静置、油水分離し、残存THFOHを水相側に取り除いた。得られた有機相に4H−TEMPOを0.15部加え、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が400Paになるまで徐々に減圧した。400Pa到達後、徐々に昇温し、内温が80℃になるまで残存Me−AMAを取り除いた。その後、冷却、解圧した。
得られた液をn−ヘキサンで希釈し、水を加え十分に撹拌し、静置、油水分離を行った。この操作を3回繰り返し、4H−TEMPOを取り除いた。得られた有機相を、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、内温が25〜30℃になるよう加温しながら、圧力が800Paになるまでゆっくり減圧してn−ヘキサンを除去した。800Paに到達した後、20分間その圧力を維持してから解圧して、目的の化合物である、THF−AMAを70.0部得た。得られたTHF−AMAにMEHQ 0.021部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたTHF−AMAをガスクロマトグラフィーにより分析したところ、THF−AMA、Me−AMA、nBu−AMAの混合物であり、その面積比はTHF−AMA:Me−AMA:nBu−AMA=83:3:14であった。更にNMR装置でも分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図6に示す。
[実施例1−4]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル(MOE−AMA)の合成)
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管を付した反応器に2−メトキシエタノール(MOEOH) 44.0部、Me−AMA 30.0部、チタンテトライソプロポキシド 2.9部、TBH 0.03部を仕込み、撹拌しながら酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、100℃まで昇温し、8時間反応させた。反応終了後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、MOE−AMA、Me−AMA、MOEOHの面積比は3:1:3であった。この反応液をn−ヘキサンで希釈し、水を加え、チタン化合物を析出させ濾過により取り除いた。濾液を油水分離した後、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、ビグリュー、トの字管、冷却管、分留器、溜出液受器を付した反応器に有機相とTBHを0.17部仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が1333Paになるように減圧し、徐々に昇温と減圧を行い、n−ヘキサン、残存2−メトキシエタノール、残存Me−AMA、MOE−AMAの順に留出させ分離した。得られた目的物MOE−AMAは9.1部であり、最終到達圧力は533Pa、内温は110℃であった。またMOE−AMAは圧力1333Paでは内温110℃で留出せず、圧力を533Paまで下げることにより留出した。その際の気相部の温度は104℃であった。得られたMOE−AMAにMEHQ 0.003部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたMOE−AMAをNMR装置で分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図7に示す。
[実施例1−5]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸エチルヘキシル(EH−AMA)の合成)
攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に2−エチルヘキサノール(EHOH) 21.0部、Me−AMA 50.0部、DBTO 4.0部、MEHQ 1.0部を仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が20kPaになるまで徐々に減圧した。20kPaに到達してから昇温を開始し、内温が100℃になるように調整し、エステル交換反応により生じたメタノールを溜出させながら6時間反応させた。反応終了後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、EHOHは完全転化しており、EH−AMAとMe−AMAの面積比は36:14であった。その後、一旦冷却し、800Paまで減圧した後、内温が100℃に到達するまでMe−AMAを留出させた。その後、冷却、解圧した。
反応液をn−ヘキサンで希釈し、更に4%NaOH水溶液を加え、DBTOを析出させ濾過により取り除いた。ろ液を油水分離し、得られた油層を15%NaOH水溶液で洗浄し、油水分離した。この操作を5回繰り返し、残存Me−AMA、MEHQを取り除いた。得られた有機相に、アルカリ吸着剤(キョーワード700SL、協和化学工業社製)を5.0部添加して、1時間室温で攪拌した後、濾過した。濾液を、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、トの字管、冷却管、溜出液受器を付した反応器に仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、内温が25〜30℃になるよう加温しながら、圧力が800Paになるまでゆっくり減圧してn−ヘキサンを除去した。800Paに到達した後、20分間その圧力を維持してから解圧して、目的の化合物である、EH−AMAを36.6部得た。得られたEH−AMAにMEHQ 0.011部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたEH−AMAをNMR装置で分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図8に示す。
[実施例1−6]
(α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル(NP−AMA)の合成)
撹拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管を付した反応器にネオペンチルアルコール(NPOH) 49.5部、Me−AMA 88.6部、チタンテトライソプロポキシド 8.1部、4H−TEMPO 0.09部を仕込み、撹拌しながら酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、100℃まで昇温し、6時間反応させた。反応終了後、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、NP−AMA、Me−AMA、NPOHの面積比は17:8:7であった。この反応液をn−ヘキサンで希釈し、水を加え、チタン化合物を析出させ濾過により取り除いた。濾液を油水分離した後、攪拌装置、温度センサー、ガス導入管、ビグリュー、トの字管、冷却管、分留器、溜出液受器を付した反応器に有機相と4H−TEMPOを0.46部仕込み、攪拌しながら、酸素/窒素混合ガス(酸素濃度8%)を通じつつ、反応器内の圧力が1333Paになるように減圧し、徐々に昇温行い、n−ヘキサン、残存NPOH、残存Me−AMA、NP−AMAの順に留出させ分離した。得られた目的物NP−AMAは37.1部であり、最終の内温は110℃であった。またNP−AMA留出の際の気相部の温度は106℃であった。得られたNP−AMAにMEHQ 0.011部を加えMEHQの濃度が300ppmになるように調製した。また、得られたNP−AMAをNMR装置で分析した。そのH−NMRチャート及び帰属させた図を図9に示す。
<式(1)で表されるラジカル重合性単量体の減圧時の沸点の測定、及び常圧の沸点の算出>
気相部の温度が測定可能なガラス器具、冷却管、減圧装置を備えたフラスコに合成例1で得られたMe−AMA 100部、4H−TEMPO 0.2部を加え、撹拌しながら1333Paまで減圧し、昇温して還流させた。十分な還流量であることを確認し、気相部の温度を測定したところ、72℃であった。
tBu−AMA、NP−AMAの沸点については、圧力1333Pa、MOE−AMAについては533Paで単蒸留で蒸留精製する際の気相部の温度を測定した。また、Bz−AMA、CH−AMA、THF−AMA、EH−AMAについては、フラスコに仕込み533Paに減圧し、フラスコを加熱するオイルバスを130℃まで加熱したが留出しなかったため、1333Paの沸点が126℃以上、常圧での沸点が245℃以上とみなした。
次に、NP−AMAの常圧(101.3kPa)での沸点を以下の式により求めた。
0.105=14.1T0.105+C
P:蒸気圧[mmHg]、T:温度[K]、C:物質定数
1333Pa(10mmHg)での沸点106℃から定数C=−25.0277が求まり、常圧101.3kPa(760mmHg)での沸点は219℃と算出された。また、同様にして、Me−AMA、tBu−AMAの常圧での沸点求め、MOE−AMAの1333Paでの沸点と常圧での沸点を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2011137123
以下、合成例1、合成例3、実施例1−1〜1−6で得られたラジカル重合性単量体の各種評価を行っている。その評価結果を示すに際し、用いたラジカル重合性単量体名で記載しているが、これは、記載されたラジカル重合性単量体の純物質を用いたことを表すものではなく、上記合成例、実施例で得られたものを用いたことを表しており、上記合成例、実施例の記載の通り、重合禁止剤のMEHQや不純物等を含んだものを表している。
<ラジカル硬化性の評価>
本発明のラジカル重合性単量体のラジカル硬化性を、酸素硬化阻害の影響が出易い、薄膜でのUV硬化で評価した。UV照射装置としては、次の高出力パルス型UV照射装置を用いた。
パルス紫外線照射システムRC−800 (Xenon社製)
1秒あたりのショット数:15回
[実施例2−1]
ラジカル重合性単量体として、実施例1−1で得られたBz−AMA 2.0部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 0.1部を攪拌混合し、バーコーター(No.20)を用いてアルミ板に塗布した。これに上記UV照射装置を用いて1秒単位でUV照射した。UV照射前は低粘度の液体であり、指触してもタックはないが、硬化が進行するにつれ、タックが発現し、完全に硬化すると表面がタックレスとなった。タックが発現した時、及びタックレスとなった時のUV照射時間[秒]をラジカル硬化性の指標とした。結果を表2に示す。
[実施例2−2〜2−6]
用いたラジカル重合性単量体を表2に示すように変えたこと以外は、実施例2−1と同様にラジカル硬化性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例2−1]
Me−AMAをラジカル硬化性単量体として用いた以外は、実施例2−1と同様にラジカル硬化性を評価したところ、最短で20秒でタック化、25秒でタックレス化する場合もあったが、全く硬化しない場合もあり、再現性が非常に悪かった。結果を表2に示す。
[比較例2−2]
tBu−AMAをラジカル硬化性単量体として用いた以外は、実施例2−1と同様にラジカル硬化性を評価したところ、最短で9秒でタック化、11秒でタックレス化する場合もあったが、最長で15秒でタック化、17秒でタックレス化する場合もあり、硬化はするものの、再現性が悪かった。結果を表2に示す。
[比較例2−3〜2−8]
用いたラジカル重合性単量体を表2に示すように変えたこと以外は、実施例2−1と同様にラジカル硬化性を評価した。結果を表2に示す。
なお、表2中の略号は、以下の通りである。
BzA:アクリル酸ベンジル
CHA:アクリル酸シクロヘキシル
THFA:アクリル酸テトラヒドロフルフリル
THFM:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
MOEA:アクリル酸メトキシエチル
EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
×:30秒照射しても硬化しない。
−:硬化物のガラス転移温度が室温未満であるため、タックレス化しない。
Figure 2011137123
※1:丸括弧内は、ラジカル重合性単量体を得た合成例、又は、実施例を表している。
※2:数値は、タック化、又は、タックレス化に要したUV照射時間(秒)を表し、丸括弧内の数値は、硬化物のガラス転移温度が室温付近であるためタックレス化の判断が難しいが、タックレス化に要したと思われるUV照射時間(秒)を表している。
○AMA単量体における、ラジカル硬化性に対する沸点の効果
実施例2−1〜2−6と比較例2−1〜2−2との対比から、AMA単量体においては、沸点を上げることがラジカル硬化性に対して非常に効果的であり、1333Pa条件での沸点が95℃以上(常圧での沸点が205℃以上)とすることが好ましいことが分かる。
○(メタ)アクリル系単量体に対する優位性
実施例2−1と比較例2−3、実施例2−2と比較例2−4、実施例2−3と比較例2−5及び比較例2−6、実施例2−4と比較例2−7、実施例2−5と比較例2−8、以上の各対比から、硬化性基をAMA構造とすることにより、(メタ)アクリル系単量体よりもラジカル硬化性が飛躍的に向上していることが分かる。
<密着性の評価>
[実施例3−1]
ラジカル重合性単量体として、実施例1−1で得られたBz−AMA 2.0部、光開始剤としてダロキュア1173 0.1部を攪拌混合し、バーコーター(No.20)を用いてアルミ板に塗布した。これに上記UV照射装置を用い、表面がタックレスとなるまで1秒単位でUV照射した。表面がタックレスとなってから、さらに2秒UV照射した後、JIS K 5600−5−6(クロスカット法)に従い、0〜5の6段階で密着性を評価した。結果を表3に示す。
[実施例3−2〜3−4]
用いたラジカル重合性単量体を表3に示すように変えたこと以外は、実施例3−1と同様に密着性を評価した。結果を表3に示す。
[比較例3−1〜3−2]
用いたラジカル重合性単量体を表3に示すように変えたこと以外は、実施例3−1と同様に密着性を評価した。結果を表3に示す。
[比較例3−3〜3−4]
ラジカル重合性単量体として、硬化物のガラス転移温度が室温より高いアクリレートである、アクリル酸イソボルニル(IBA)、及びアクリル酸ジシクロペンタニル(DCPA)を用いたこと以外は、実施例3−1と同様に密着性を評価した。結果を表3に示す。
また、表3中の密着性の分類についての一覧を表4に示す。
なお、表3中のラジカル重合性単量体についての記載方法は、表2と同様である。
Figure 2011137123
Figure 2011137123
○密着性における効果
実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−2と、比較例3−3〜3−4との対比から、硬化基をAMA構造とすることにより、密着性が飛躍的に向上することが分かる。
<硬化収縮率の評価>
[実施例4−1]
(比重測定用硬化物の作製)
ラジカル重合性単量体としてBz−AMA 5.0部、熱ラジカル開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日油社製) 0.08部、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(パーヘキシルND、日油社製) 0.02部を攪拌混合したものを、1mm幅の注型に流し込んだ。これを恒温水槽に入れ、50℃で1時間、さらに60℃で1時間加熱した後に、熱風乾燥器に入れ、70℃で2時間、さらに90℃で2時間加熱して硬化させた。室温まで冷却してから注型をはずし、1mm厚の板状硬化物を得た。この硬化物をカッターで切り出し、さらにサンドペーパーで側面を磨いて25mm×35mmの長方形に加工し、さらにワイアー用の穴を開けて比重測定用硬化物サンプルを得た。
(硬化収縮率の測定)
Bz−AMA、上記のようにして得たBz−AMAの硬化物、及び純水を23℃に調温し、比重を測定した。単量体の比重は、比重瓶で測定した。硬化物の比重は、アルキメデスの原理に基づき、硬化物にワイアーを取り付け、水に浸すことにより測定した。なお、硬化物の比重は次の式により算出した。
硬化物の比重=(M−M)/(M−M)×水の比重
:ワイアー質量
:ワイアーが取り付けられた硬化物の質量
:水に浸した硬化物の質量
水の比重:1.00
(硬化収縮率の算出)
次の式にしたがって算出した。
収縮率[%]=(dP−dM)/dP×100
dP:硬化物の比重
dM:単量体の比重
結果を表5に示す。
[実施例4−2、比較例4−1〜4−4]
用いたラジカル重合性単量体の種類を、表5に示すとおりに変えたこと以外は、実施例4−1と同様にして硬化収縮率を測定した。結果を表5に示す。
なお、表5中のラジカル重合性単量体についての記載方法は、表2と同様であり、表5中の略号は、以下の通りである。
BzMA:メタクリル酸ベンジル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
Figure 2011137123
○硬化収縮率における効果
実施例4−1と比較例4−2、実施例4−2と比較例4−3、比較例4−1と比較例4−4との対比から、硬化基をAMA構造とすることにより、硬化収縮率を低減できることが分かる。
<機械強度の評価>
[実施例5−1]
ラジカル重合性単量体としてBz−AMA 20.0部、熱ラジカル開始剤としてパーブチルO 0.32部、パーヘキシルND 0.08部を攪拌混合したものを、1mm幅の注型に流し込んだ。これを恒温水槽に入れ、50℃で1時間、さらに60℃で1時間加熱した後に、熱風乾燥器に入れ、70℃で2時間、さらに90℃で2時間加熱して硬化させた。室温まで冷却してから注型をはずし、1mm厚の板状硬化物を得た。この硬化物をカッターで切り出し、さらにサンドペーパーで側面を磨いて図10のような形状に加工し、引張試験用サンプルを合計7個得た。このサンプルを下記引張試験機(インストロン社製)および試験条件にて引張試験を行い、7サンプルの平均値として、破断エネルギー(破壊靭性値、あるいは単に靭性値ともいう)[mJ]、伸び[%]、最大荷重[N]、弾性率[GPa]の各機械物性値を得た。結果を表6に示す。
(引張試験機)
本体型式:55R1185
コントローラ型式:5500
制御ソフト:BlueHill2(バージョン2.6.440)
(試験条件)
チャック間距離:40mm
クロスヘッド速度:5mm/min
[実施例5−2、比較例5−1〜5−2]
用いたラジカル重合性単量体の種類を、表6に示すとおりに変えたこと以外は、実施例5−1と同様にして機械物性値を測定した。結果を表6に示す。
なお、表6中のラジカル重合性単量体についての記載方法は、表2と同様であり、表6中の略号は、表5と同様である。
Figure 2011137123
○機械物性における効果
実施例5−1と比較例5−1、実施例5−2と比較例5−2との対比から、硬化基をAMA構造とすることにより、硬さがありながら(最大荷重、弾性率が十分な値を取る)、伸びが大きく、したがって破断エネルギーが大きくなり、飛躍的に機械物性が向上する(硬さがありながら粘り強い)ことが分かる。
s:ピークの分裂パターンが1重線
d:ピークの分裂パターンが2重線
t:ピークの分裂パターンが3重線
m:ピークの分裂パターンが多重線

Claims (5)

  1. 下記式(1);
    Figure 2011137123
    (式中、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。該有機基は、炭化水素で構成され、エーテル基を有していてもよく、該炭化水素の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)で表されるラジカル重合性単量体であって、
    1333Pa条件下での沸点が95℃以上であることを特徴とするラジカル重合性単量体。
  2. 請求項1に記載のラジカル重合性単量体を含んでなることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
  3. 前記ラジカル硬化性組成物は、更に、ラジカル重合開始剤を含むことを特徴とする請求項2に記載のラジカル硬化性組成物。
  4. 請求項1に記載のラジカル重合性単量体、又は、請求項2若しくは3に記載のラジカル硬化性組成物中のラジカル重合性単量体を硬化させる方法であって、
    該硬化方法は、加熱及び/又は活性エネルギー線の照射により硬化させる工程を含むことを特徴とするラジカル重合性単量体の硬化方法。
  5. 請求項4に記載の硬化方法によりラジカル重合性単量体を硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
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