JP2014182895A - 電池用電極組成物用バインダー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電池の電極を形成する電極組成物用バインダーであって、上記バインダーは、主鎖に環状エーテル構造を有する重合体を含有し、上記重合体の環状エーテル構造を繋ぐ骨格は、直接結合、メチレン基、又は、炭素数2個以上の炭素−炭素結合である電池用電極組成物用バインダーである。
【選択図】なし
Description
電極組成物のうち、正極の形成に用いられる正極組成物は、主に正極活物質、導電助剤、バインダー及び溶媒からなっている。そのバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が一般に用いられている。しかしながら、近年は環境問題への関心の高まりを背景に、電極組成物にも有機溶媒を使用しない水系のものが求められてきている。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
上記炭素数2個以上の炭素−炭素結合は、例えば、後述する構造単位(II)、構造単位(III)の炭素−炭素結合を含むものが挙げられる。
上記炭素数2個以上の炭素−炭素結合は、炭素数が3個以上の場合は、該3個以上の炭素原子が直列に並んで直列状の炭素−炭素結合を構成するものであればよい。また、上記炭素数2個以上の炭素−炭素結合は、例えばエーテル結合等の、炭素−炭素結合以外の結合を含まないものである。
上記炭素数2個以上の炭素−炭素結合は、例えば、炭素数が200個以下であることが好ましい。より好ましくは、100個以下であり、更に好ましくは、50個以下である。
また、本発明の電池用電極組成物用バインダーは、環状エーテル構造含有重合体を1種含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
該置換基は、例えば、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ原子含有環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、又は、アリールアミノ基が挙げられる。炭素数は、1〜18であることが好ましい。より好ましくは、1〜8である。
なお、上記構造単位(I)は、上記エチレン性不飽和単量体(a)が重合する際にその炭素−炭素二重結合が単結合になったものであることが好ましいが、このようにして得られる構造と同じ構造を有する限り、その他の反応経路を経て得られたものであってもよい。例えば、重合化した後に、重合体主鎖中に環状エーテル構造を形成したものであってもよい。
上記金属イオンを形成する金属は、アルカリ金属であることが好ましい。より好ましくは、リチウム、ナトリウム、又は、カリウムである。更に好ましくは、リチウムである。
中でも、上記Xは、リチウムイオンであることが特に好ましい。
なお、環状エーテル構造含有重合体中には、式(1)で表されるR、及び/又は、式(2)で表されるXが繰り返し単位として複数存在することになる。これら式(1)中のRは、同一であってもよく、異なる2種以上であってもよい。また、式(2)中のXも同様に、同一であってもよく、異なる2種以上であってもよい。
式(3)で表される単量体のRは、水素原子、又は、炭素数が1〜10の有機基を表し、目的や用途に合わせて、適宜選択すればよい。Rの具体例としては、上記式(1)のRと同じである。
また重合体の主鎖を構成する炭素原子100モル%中、環状エーテル構造を構成する炭素原子の割合が、0.5モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、1モル%以上であり、更に好ましくは、3モル%以上である。また、50モル%以下であることが好ましい。
酸価が100mgKOH/g以上であることにより、本発明の効果を発揮できるとともに、耐電解液性が充分良好なものとなる。より好ましくは、150mgKOH/g以上であり、更に好ましくは、200mgKOH/g以上である。上記酸価は、中和されているか否かに関わらず、環状エーテル構造含有重合体に含まれる酸基全てを中和すべき酸基として数えて算出されるものである。なお、酸基は、上記構造単位(I)の酸基(カルボン酸及び/又はカルボン酸塩)に限られず、後述するエチレン性不飽和カルボン酸系単量体(b)等の酸モノマーが重合して環状エーテル構造含有重合体中に導入された酸基や、二価の酸が変性して重合体に導入された酸基も含む。
酸価の測定は、中和滴定にて行う。サンプルを適切な溶媒に希釈して、滴定液(容量分析用エタノール性水酸化カリウム溶液)を添加することにより、電位差自動滴定装置を用いて酸価を求める。中和されたサンプルは、先に過剰の酸を混合して酸に戻した後に滴定することにより酸価を求める。
これにより、本発明の効果を発揮できるとともに、環状エーテル構造含有重合体を用いて得られる電池用電極等の耐電解液性を充分なものとすることができる。耐電解液試験における体積膨潤率は、好ましくは200%以下であり、より好ましくは150%以下である。尚、体積膨潤率は、通常100%以上である。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の炭素数3〜10のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等の炭素数4〜10のエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3〜6の不飽和モノカルボン酸が好ましい。
上記アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アンモニウム塩を形成する化合物としては、アンモニア等が挙げられる。
また、有機アミン塩を形成する化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。上記塩類のうち、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはリチウムである。
このように、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体もまた、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と同様に、環状エーテル構造含有重合体が電解液に対して膨潤するのを抑制することができる。尚、特に水系重合体では、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体は塩であるエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体である。これらエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
その他の重合可能な単量体(c)としては、例えば、環状エーテル構造を有するエチレン性不飽和単量体(a)以外の、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の多官能アリル系単量体;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=4,9,14等)、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリレート;1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体、酢酸ビニルが挙げられる。
また、末端がハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有する、ポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。この場合、アルキレンオキサイド末端に疎水基を有することで、疎水基が会合することにより電極組成物の粘性を変えることができる。
上記アルキレンオキサイド末端の疎水基として好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数15〜20のアルキル基である。
その他の重合可能な単量体(c)としては、これらの中でも、環状エーテル構造を有するエチレン性不飽和単量体(a)以外のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、多官能アリル系単量体であることが好ましい。これらのその他の重合可能な単量体(c)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
単量体成分の重合方法としては特に限定されず、例えば、乳化重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合等の方法を挙げることができる。これらの重合方法の中でも、乳化重合法が好ましい。
このように、重合体が、乳化重合時に反応性界面活性剤を用いて得られることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記連鎖移動剤の使用量として好ましくは、重合反応に供する単量体成分の総量100重量部に対して、0〜1重量部である。
乳化重合する際に、得られる共重合体に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
上記エマルションの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、更に好ましくは30〜500nmである。エマルションの粒子径がこの範囲にあることで、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集したりする可能性を下げることができる。一方、エマルションの粒子径が10nm未満の場合、エマルションの粘度が高くなりすぎたり、分散安定性を保てず凝集したりするおそれがあり、また、1μmを超えると、重合体粒子の分散安定性を保つことが難しくなる。
上記エマルションの平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定することができる。
このように、重合体が、乳化重合によって合成した高分子をアルカリ金属塩で中和することにより得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
ここで、透明溶液とは、乳化重合した高分子をアルカリ金属塩で中和した不揮発分2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものを意味する。すなわち、上記重合体は、不揮発分2質量%に調整した水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものである。全光線透過率として好ましくは、95%以上であり、より好ましくは97%以上である。また、上記重合体は、不揮発分2質量%に調整した水溶液のヘイズが3%以下であることが好ましく、より好ましくは、1%以下である。
上記全光線透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(型番「NDH5000」、日本電色工業株式会社製)を用いて、実施例と同様の方法により測定することができる。
また、上記pHは、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。
導電助剤の平均粒子径は、動的光散乱の粒度分布計(導電助剤屈折率を2.0とする)により測定することができる。
本発明の電池用正極組成物において、重合体及び導電助剤は、上述したものを用いることができる。本発明の電池用電極組成物において用いる正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、放出できる正極活物質であることが好ましい。このような正極活物質を用いることで、リチウムイオン電池の正極として好適に用いることができるものとなる。リチウムイオンを吸蔵、放出できる化合物としては、リチウム含有の金属酸化物が挙げられ、そのような金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、オリビン系(リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム)、マンガン系(マンガン酸リチウム)、三元系(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA系(リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物)等が挙げられる。
なおここで、「負極活物質が、炭素系負極材料やチタン酸リチウムを主成分として含む」とは、負極活物質の全量100質量%に対して、炭素系負極材料及びチタン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を50質量%以上含むことを表している。負極活物質中の炭素系負極材料及びチタン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の含有割合として好ましくは、70〜100質量%であり、より好ましくは、80〜100質量%である。特に好ましくは、負極活物質が炭素系負極材料及びチタン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種からなる形態である。
樹脂粒子分散体をアルミ皿に約1g秤量し、150℃の熱風乾燥機中で30分間乾燥し、乾燥前後の質量から下記式により求めた。
不揮発分(%)=(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)×100
また、樹脂粒子分散体の代わりに水溶性高分子の水溶液を用いた以外は上記と同様にして、その不揮発分を求めた。
樹脂粒子分散体の粘度は、樹脂粒子分散体を不揮発分2%に調整後、TVB−10(東機産業株式会社製)を用い、25±1℃、30rpmで測定した。
また、水溶性高分子水溶液の粘度はpH7、不揮発分2%の水溶性高分子水溶液を、TVB−10(東機産業株式会社製)を用い、25±1℃、30rpmで測定した。
日本電色工業株式会社のヘイズメーター(型番;NDH5000)を用いて、奥行10mmの石英セル中に、不揮発分2質量%の水溶性高分子水溶液を入れ、全光線透過率を測定した。
ポリマー溶液1.0g(不揮発分は本明細書記載の方法で算出)をN−メチルピロリドン40gに希釈し、硫酸0.03gを加え、更に水20gを加えた。その後、自動滴定装置(株式会社三菱化学アナリテック製 GT−200)を用いて0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液を滴定した。その際に変曲点が二つ生じることになるが、夫々の滴定量をA1、A2とした際の滴定量の差を用いて酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(A2−A1)×FA×C/S
A2:第2変曲点の滴定量
A1:第1変曲点の滴定量
FA:滴定液のファクター
C :濃度換算値(5.61mg/mL)
(0.1mol/L水酸化カリウム相当量)
S :サンプルの不揮発分量
テフロン(登録商標)板の上に厚さ3mmの型枠を作製し、水溶性高分子を型枠内に流し込み乾燥することで、20mm角の試験片を作製した。得られた試験片を電解液(EC/EMC=3/7)に1日浸漬して、膜の縦及び横の長さを測定した。尚、膨潤率は、縦横の増減率を基に体積換算した値を示し、膨潤率100%の場合変化なく膨潤していないことを示している。例えば電解液に浸漬することで縦横それぞれ22mmとなった場合、膨潤率は133%となる。
上記ECとはエチレンカーボネートを表し、EMCはエチルメチルカーボネートを表している。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水184.67質量部、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩0.23質量部を投入した。内温72℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩0.23質量部、過硫酸アンモニウム0.015質量部をイオン交換水14.97質量部に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、α―アリルオキシメチルアクリル酸(以下、HAMA)10.2質量部、α―アリルオキシメチルアクリル酸メチル(以下、MeAMA)4.8質量部を投入し、プレエマルションを作製した。反応容器内の温度を72℃に保ち、プレエマルション6.1質量部を添加した。添加終了時から5分経過した後に、残りのプレエマルションを30分にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水5質量部で滴下槽を洗浄し、内温を73℃に保ち、更に2時間攪拌を続けた後、3%の過硫酸アンモニウム水溶液0.5質量部を添加した。更に2時間加熱し続けた後、冷却して反応を完了し、不揮発分7%の樹脂粒子分散体aを得た。
樹脂粒子分散体aを、水希釈して不揮発分2%に調整し粘度測定したところ、6mPa・sであった。
得られた樹脂粒子分散体aに、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液とイオン交換水を加えて攪拌し、pH7に調整し、不揮発分2%の水溶性樹脂A水溶液を得た。得られた水溶性樹脂Aは、粘度3,400mPa・s、全光線透過率99%、ポリマーの酸価は250mgKOH/gであった。またポリマーの耐電解液膨潤率は100%であった。
MeAMA4.8質量部の代わりにアクリル酸エチル4.8質量部を用いたこと以外は、水溶性樹脂Aの合成と同様にして行い、不揮発分6.9%の樹脂粒子分散体bを得た。
樹脂粒子分散体bを、水希釈して不揮発分2%に調整し粘度測定したところ、5mPa・sであった。
得られた樹脂粒子分散体bに、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液とイオン交換水を加えて攪拌し、pH7に調整し、不揮発分2%の水溶性樹脂B水溶液を得た。得られた水溶性樹脂Bは、粘度4,000mPa・s、全光線透過率99%、ポリマーの酸価は256mgKOH/gであった。またポリマーの耐電解液膨潤率は108%であった。
HAMA10.2質量部、MeAMA4.8質量部の代わりにメタクリル酸6.15質量部、MeAMA8.85質量部を用いたこと以外は、水溶性樹脂Aの合成と同様にして行い、不揮発分7.0%の樹脂粒子分散体cを得た。
樹脂粒子分散体cを、水希釈して不揮発分2%に調整し粘度測定したところ、5mPa・sであった。
得られた樹脂粒子分散体cに、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液とイオン交換水を加えて攪拌し、pH7に調整し、不揮発分2%の水溶性樹脂C水溶液を得た。得られた水溶性樹脂Cは、粘度2,800mPa・s、全光線透過率99%、ポリマーの酸価は260mgKOH/gであった。またポリマーの耐電解液膨潤率は100%であった。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水292.1質量部、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩2.7質量部を投入した。内温75℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩2.7質量部をイオン交換水97.0質量部に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、メタクリル酸72.0質量部、アクリル酸エチル84.6質量部、アクリル酸メチル9.0質量部、MeAMA14.4質量部の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。別途、過硫酸カリウム0.45質量部をイオン交換水44.5質量部に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。反応容器内の温度を78℃に保ち、プレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、内温を78℃に保ち、更に2時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、不揮発分30%の樹脂粒子分散体dを得た。樹脂粒子分散体dを、水希釈して不揮発分2%に調整し、粘度測定したところ5mPa・sであった。
得られた樹脂粒子分散体dに、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液とイオン交換水を加えて攪拌し、pH7に調整し、不揮発分2%の水溶性樹脂D水溶液を得た。得られた水溶性樹脂Dは、粘度2,800mPa・s、全光線透過率18%、ポリマーの酸価は253mgKOH/gであった。またポリマーの耐電解液膨潤率は116%であった。
TVB−10(東機産業株式会社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
ガラス電極式水素イオン濃度計F−21(製品名、株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃での値を測定した。
可変式アプリケーターを用いて、所定の膜厚になるように調整して正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し正極を作製した。作製した正極を、φ10mmで曲げ試験を行い、下記評価基準に従い、評価した。
評価基準:
○・・・問題なし(ワレ、剥がれ、クラックなし)。
△・・・製膜時の体積収縮クラックはないが、電極を曲げるとクラックが生じた。
×・・・製膜時に体積収縮クラックが起こった。
アプリケーターを用いて、正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し、ロールプレス機を用いて線圧5kNでプレスした。
その後、80℃で減圧乾燥し、12mg/cm3の電極シートを作製した。
周波数応答アナライザ1260型(ソーラートロン社製)を用いて、作製した電極を、1cm2のセルに挟み込んで、直流抵抗を測定した。得られた直流抵抗から、周波数1〜100Hzにおける電極の直流抵抗の平均を求め、電極の抵抗とした。作製した電極の膜厚をマイクロメータで測定し、抵抗と膜厚から電極の導電率を求めた。
アプリケーターを用いて、正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し、ロールプレス機を用いて線圧5kNでプレスした。
その後、80℃で減圧乾燥し、電極重量12mg/cm3の電極シートを作製した。作製した電極シートを用いて、下記のようにコインセル(CR2032)を作製し、充放電測定装置ACD−001(製品名、アスカ電子株式会社製)を用いて下記条件により電池評価を行った。
コインセル
正極:表1の正極組成物
負極:Li箔
電解液:1mol%/L LiPF6 EC/EMC=3/7(キシダ化学株式会社製)
電池評価条件(NMC)
充電条件:0.5C CC−CV Cut−off 4.3V
放電条件:0.5C CC Cut−off 3.0V
上記と同様に作製した電極シートを用いて、下記のようにコインセル(CR2032)を作製し、充放電測定装置ACD−001(製品名、アスカ電子株式会社製)を用いて下記条件により電池評価を行った。なお、負荷特性は、レート特性とも言う。
コインセル
正極:表1の正極組成物
負極:Li箔
電解液:1mol%/L LiPF6 EC/EMC=3/7(キシダ化学株式会社製)
電池評価条件(NMC)
充電条件:0.2C CC−CV Cut−off 4.3V
放電条件:0.2C CC Cut−off 3.0V ⇒ 0.5C CC ⇒ 1C CC ⇒ 3C CC ⇒ 5C CC
(放電時のカットオフ条件が3.0Vは全て同じ。)
水溶性樹脂A26.67質量部とイオン交換水3質量部を混合して均一溶液とし、アセチレンブラックHS−100(電気化学工業株式会社製)2質量部を加えて混合分散した。さらに、セルシードNMC111(日本化学工業株式会社製)40質量部を加えて混合分散し、正極水系組成物(1)を得た。この正極水系組成物(1)を用いて上記の手順で電極作製を行った。得られた正極は、導電率3.3×10−3S/cm、0.5C初期放電容量146mAh/g、50サイクル後の容量維持率98.5%であった。また、負荷特性(5C放電容量/0.2C放電容量)は、81%であった。
水溶性樹脂A6.67質量部とイオン交換水8質量部を混合して均一溶液とし、アセチレンブラックHS−100(電気化学工業株式会社製)2質量部を加えて混合分散した。さらに、セルシードNMC111(日本化学工業株式会社製)40質量部を加えて混合分散し、VDFアクリル変性エマルション1.25質量部を加えて、正極水系組成物(2)を得た。以下は実施例1と同様に行い、得られた電極の物性を表1に示した。
表1に記載の通りの配合で、実施例1と同様に塗料化を行い正極を作製した。得られた電極の物性を表1に示した。
水溶性樹脂をセロゲンBSH−6(第一工業製薬株式会社製)に変更して、実施例1と同様に塗料化を行う正極を作製した。得られた電極の物性を表1に示した。
実施例2は、水溶性樹脂及びエマルション(二液)を併用するものであり、電極組成物の分散性と粘度を確保し、更に高固形分化が可能であり、また、電極の導電率が向上した。
本発明の電極組成物用バインダーは、実施例1、3〜6のような水溶性樹脂だけ(一液)での使用も可能であり、実施例2のような水溶性樹脂及びエマルション(二液)の併用も可能であることが分かった。
また、実施例6のように、重合体主鎖中に環状エーテル構造を形成するエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)の割合が、重合体を構成する構造単位全体100質量%に対し、8質量%〔14.4質量部/180質量部(各単量体の合計)=8質量%〕である水溶性樹脂Bにおいても、本発明の効果を発揮することができる。
なお、比較例1は、水溶性高分子であるCMCを単独で使用した例であるが、電極の導電率が確保されているにも関わらず、初期放電容量が低かった。
Claims (12)
- 電池の電極を形成する電極組成物用バインダーであって、
該バインダーは、主鎖に環状エーテル構造を有する重合体を含有し、
該重合体の環状エーテル構造を繋ぐ骨格は、直接結合、メチレン基、又は、炭素数2個以上の炭素−炭素結合であることを特徴とする電池用電極組成物用バインダー。 - 前記重合体は、重合体主鎖中に環状エーテル構造を形成するエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)を有し、
該構造単位(I)の割合は、重合体を構成する構造単位全体100質量%に対して、1〜100質量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池用電極組成物用バインダー。 - 前記重合体は、酸価が100〜750mgKOH/gである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池用電極組成物用バインダー。 - 前記重合体は、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー。 - 前記バインダーは、更に水を含む
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー。 - 前記重合体を用いて調製した不揮発分2質量%の水溶液は、25℃、pH7における粘度が、100mPa・s以上である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー、及び、導電助剤を必須成分として含む
ことを特徴とする導電性付与剤。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー、電極活物質、及び、溶媒を必須成分として含む
ことを特徴とする電池用電極組成物。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の電池用電極組成物用バインダー、及び、電極活物質を含有する
ことを特徴とする電池用電極。 - 請求項8に記載の導電性付与剤、又は、請求項9に記載の電池用電極組成物を用いて形成される
ことを特徴とする電池用電極。 - 請求項10又は請求項11に記載の電池用電極を用いて構成される
ことを特徴とする電池。
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