JP2014130702A - 二次電池用水系電極バインダー - Google Patents

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理香 松本
Kazushi Omote
和志 表
Masaru Ogawa
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Hiroko Harada
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Abstract

【課題】優れた導電性及び電池特性を有し、かつ、二次電池用電極を形成する組成物に含有させる水溶性バインダーとして好適に用いることができる、二次電池用水系電極バインダーを提供する。
【解決手段】水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含む二次電池用水系電極バインダーであって、該水溶性高分子は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とし、かつ、該イソチアゾリン系化合物の含有量が、水溶性高分子100質量部に対して、0.001〜30質量部であることを特徴とする二次電池用水系電極バインダー。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用水系電極バインダーに関する。
二次電池は、繰り返し充放電を行うことができる電池である。近年の環境問題への関心の高まりを背景に、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野においても使用が進んでいる。このような二次電池への需要の高まりを受けて、研究も活発に行われている。特に、二次電池の中でも軽量、小型かつ高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、各産業界から注目されており、盛んに開発が行われている。
リチウムイオン電池は、主に正極、電解質、負極、及び、セパレータから構成される。この中で電極は、電極組成物を集電体の上に塗布したものが主に用いられている。
電極組成物のうち、正極の形成に用いられる正極組成物は、主に正極活物質、導電助剤、バインダー及び溶媒からなっている。そのバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が一般に用いられている。
これは、ポリフッ化ビニリデンが化学的、電気的に安定であり、NMPがポリフッ化ビニリデンを溶解する経時安定性のある溶媒であること、及び、正極活物質として一般に用いられているコバルト酸リチウムが水中では加水分解をおこす恐れがあり、有機溶媒を使用する必要があるためである。
しかしながら、ポリフッ化ビニリデンの低分子量品は密着性が不十分であり、高分子量のポリフッ化ビニリデンでは溶解性が悪いため、固形分濃度を上げ難い。また、NMPは、沸点が高いため、NMPを溶媒として用いると電極を形成する際に溶媒の揮発に多くのエネルギーを必要とするといった問題がある。それに加え、近年は環境問題への関心の高まりを背景に、電極組成物にも水系のものが求められてきている。
一方、電極組成物のうち、負極の形成に用いられる負極組成物は、主に負極活物質、バインダー及び溶媒からなっている。そのバインダーとしては、溶媒系ではポリフッ化ビニリデン(溶媒はN−メチル−2−ピロリドン(NMP))を用い、水系ではカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)とを併用することが一般的である。
負極組成物についても、上述のような背景から、溶媒系のものから水系のものが検討されるようになっている。通常水系では、バインダーとしては、CMCに代表される分散性と粘度調整機能を担う水溶性高分子と、SBRに代表される電極の柔軟性や活物質粒子同士を結着させる結着剤としてエマルション(ポリマー粒子の水分散体)を併用する。CMCのような水溶性高分子単独では作成した電極が柔軟性に欠け堅脆くなる点で問題があり、SBRに代表されるエマルションのみをバインダーとして用いた場合は、電極活物質、導電助剤などを含む電極組成物にした際に分散性が不足し均一な電極が得られなかったり、集電体上に塗工するのに適した粘度にならないという問題があった。
このような状況下、電極組成物に用いることができる水系バインダーについて、より高出力化、長寿命化を発現させるために、様々な研究、開発がなされている。
二次電池用水系電極バインダーとして、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位と、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を特定量含み、特定の重量平均分子量を有する水溶性高分子を含有するものが開示されている(特許文献1参照)。
また、特定組成のバインダーを含有する組成物に、特定量範囲のイソチアゾリン系化合物及びキレート化合物を含有させた二次電池正極用水系バインダー組成物について開示されている(特許文献2参照)。
国際公開第2012/008539号 国際公開第2012/029839号
しかしながら、特許文献1においては、水溶性高分子を水系バインダーとして単独で使用した際には電池性能の面では改善の余地があった。
また、上記各特許文献に記載の発明においても、導電性及び電池特性を充分にするための工夫の余地があった。
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、電極活物質を水に分散させた水系電極組成物とした際には分散性や粘度調整機能を発揮し、さらに、この水系電極組成物を用いて形成した電極は密着性や可撓性に優れているため、優れた電池性能を発揮する二次電池用水系電極バインダーを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために種々検討を行い、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を特定割合で含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする水溶性高分子、およびイソチアゾリン系化合物を特定量含有する水系電極バインダーを用いると、水系電極組成物の導電率及び電池特性を向上させることができることを見出し、本発明に到達したものである。
イソチアゾリン系化合物は、一般的に防腐剤として利用される化合物である。これまで水系電極バインダーに使用された例(特許文献2)はあったものの、使用範囲が樹脂組成物に対して数%未満という、防腐効力を発現するために必要な量のみであった。しかしながら、本発明者らの検討により、特定構造の水溶性高分子に、イソチアゾリン系化合物を従来量より過剰に添加することで、導電率や電池特性を効率的に向上させることができることを見出した。
本発明の二次電池用水系電極バインダーは、上述の構成よりなる水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含有するので、優れた導電性及び電池特性を有する。このような二次電池用水系電極バインダーを用いた二次電池用正極水系組成物及び二次電池用負極水系組成物は、均一な電極形成を可能にするので、二次電池用正極及び二次電池用負極を形成する組成物として好適に用いることができる。
すなわち、本発明は、水溶性高分子および下記一般式(1)で示されるイソチアゾリン系化合物を含む二次電池用水系電極バインダーであって、該水溶性高分子は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とし、かつ、該イソチアゾリン系化合物の含有量が、水溶性高分子100質量部に対して、0.001〜30質量部であることを特徴とする二次電池用水系電極バインダーである。
Figure 2014130702
(式中、XおよびYは、それぞれ、水素、ハロゲン又は炭化水素基を、Rは水素又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
以下、本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の二次電池用水系電極バインダー(以下、「水系電極バインダー」とも言う)は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする水溶性高分子(以下、「本発明における水溶性高分子」又は単に「水溶性高分子」とも言う)およびイソチアゾリン系化合物を、水溶性高分子100質量部に対して0.001〜30質量部含有するものである。
本発明の水系電極バインダーは、上述の水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含む限り、その他の成分や、その他の水溶性高分子を含んでいてもよい。
なお、本発明の水系電極バインダーは、密着性の点から、当該水系電極バインダー全量100質量%に対して、本発明における水系電極バインダー組成物を10〜100質量%含むことが好ましく、より好ましくは50〜100質量%である。
また、本発明の水系電極バインダーは、本発明における水溶性高分子を1種含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
さらに、本発明の水系電極バインダーは、本発明におけるイソチアゾリン系化合物を1種含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
本発明における水溶性高分子が必須として含む、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位(以下、「構造単位(a)」とも言う)とは、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の炭素数3〜10のエチレン性不飽和モノカルボン酸塩単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の炭素数4〜10のエチレン性不飽和ジカルボン酸塩単量体等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数3〜6のエチレン性不飽和モノカルボン酸の塩が好ましい。
上記アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アンモニウム塩を形成する化合物としては、アンモニア等が挙げられる。
有機アミン塩を形成する化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。上記塩類のうち、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはリチウム塩である。
このように、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体を用いることで、特にはエチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩にすることにより、本発明における水溶性高分子が電解液に対して膨潤するのを抑制することができる。これらエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩は、後述する重合方法により水溶性高分子を合成することができる限り、その一部がカルボン酸(−COOH)の形態であってもよい。エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩の一部がカルボン酸となっている形態の場合には、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体の有するカルボン酸塩のうち、水への溶解性の点から、カルボン酸の形態となっているものが50モル%以下であることが好ましい。より好ましくは40モル%以下であり、更に好ましくは30モル%以下である。
本発明における水溶性高分子は、上記構造単位(a)以外に、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を含むことが好ましい。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位(以下、「構造単位(b)」とも言う)とは、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル等が挙げられる。好ましくは、例えば、一般式(2);
CH=CR−C(=O)−OR’ (2)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)
で表される化合物である。
上記一般式(2)におけるR’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、後述する乳化重合やソープフリー乳化重合時の安定性等の面からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(2)におけるR’がアルキル基であると、得られる水溶性高分子のガラス転移温度(Tg)が低くなるため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜2のアルキル基である。炭素数が1〜4のアルキル基であると、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体との共重合物の水への溶解がし易くなる。
これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明における水溶性高分子は、上記構造単位(a)及び構造単位(b)以外に、その他の重合可能な単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。
上記その他の重合可能な単量体由来の構造単位(以下、「構造単位(c)」とも言う)とは、その他の重合可能な単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。
その他の重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニル、フタル酸ジアリル等の多官能アリル系単量体;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能アクリレート;ビニルピロリドン等が挙げられる。
また、下記一般式(3)に示す、末端がハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有する、ポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。
Figure 2014130702
(式中、A、A及びAは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Aは、水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表す。Aは、同一若しくは異なって、炭素数2〜10のアルキレン基を表す。Bは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基、カルボニル基、又は、直接結合を表す。mはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、2〜200の整数である。)
その他の重合可能な単量体としては、これらの中でも、スチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、多官能アリル系単量体、多官能アクリレートであることが好ましい。
これらのその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明における水溶性高分子での構造単位(a)の含有割合は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、5〜95質量%である。構造単位(a)がこの範囲内にあることにより、本発明における水溶性高分子を乳化重合やソープフリー乳化重合により容易に製造することが可能となると共に、製造される高分子の水への溶解性(水溶性)を発現することが可能となる。一方、構造単位(a)が5質量%未満の場合、水への溶解度が不足して不揮発分2%の時の粘度が高粘度化しにくく、また、均一溶液となり難い。また、95質量%を超える場合、乳化重合やソープフリー乳化重合による製造が困難になるおそれがある。本発明における水溶性高分子での構造単位(a)の含有割合としては、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは25〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜60質量%である。
本発明における水溶性高分子での構造単位(b)の含有割合は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、5〜95質量%であることが好ましい。構造単位(b)がこの範囲内にあると、本発明における水溶性高分子を乳化重合やソープフリー乳化重合により容易に製造することができる。一方、構造単位(b)が95質量%を超える場合、水への溶解度が不足して不揮発分2%の時の粘度が高粘度化しにくく、均一溶液とならないおそれがあり、また、5質量%未満の場合、乳化重合やソープフリー乳化重合による製造が困難になるおそれがある。本発明における水溶性高分子での構造単位(b)の含有割合としては、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜75質量%であり、さらに好ましくは40〜70質量%である。
なお、構造単位(b)が、特に一般式(2)で表されるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体に由来する構造単位である場合、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、エステル構造部分、すなわち一般式(2)において−C(=O)−OR’で表される構造部分、を有する単量体であり、疎水性単量体であるが極性基を含有している。このため、乳化重合やソープフリー乳化重合時には、乳化滴の核になり易い一方で、高分子化後にアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等を用いて中和する際には、水中に均一に溶解しやすくなると考えられる。そのため、水溶性高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位(構造単位(b))を5〜95質量%含むことが好ましい。
本発明における水溶性高分子が構造単位(c)を含む場合、その含有割合としては、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
すなわち、本発明における水溶性高分子での各構造単位の比率としては、水溶性高分子が有する構造単位の全量を100質量%とした時に、((a)エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位)/((b)エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位)/((c)その他の重合可能な単量体由来の構造単位)=5〜95質量%/5〜95質量%/0〜20質量%となることが好ましい。
本発明における水溶性高分子は、上記のように、疎水性部と極性部とがバランスよく含有されているため、電極活物質や導電助剤等の分散安定性に優れており、電極活物質や導電助剤等を分散した二次電池用正極水系組成物を作成するためのバインダーとして好適に用いることができる。
上記水溶性高分子は、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることが、粘度調整能の点から好ましい。より好ましくは300〜20,000mPa・sであり、更に好ましくは500〜15,000mPa・s、最も好ましくは1000〜10,000mPa・sである。
上記水溶性高分子の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましい。重量平均分子量が50万未満の場合、水溶性高分子に求められる分散性や粘度調整能は発現できるが、粒子間の結着性を向上させる上では充分でないおそれがある。エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用による可とう性の向上と、重量平均分子量50万以上とする高分子量化による強度の向上とにより、分散性及び粘度調整機能に加え、更に結着性をも向上させることができる。好ましくは70万〜200万であり、より好ましくは90万〜180万である。
重量平均分子量は、後述する実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)により測定することができる。
上記水溶性高分子は、不揮発分2質量%水溶液での全光線透過率が90%以上であることが、均一性及び透明性の点から好ましい。より好ましくは95〜100%、更に好ましくは97〜100%である。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)等を用いて、測定することができる。
また、上記水溶性高分子は、不揮発分2質量%に調整した水溶液のヘイズが3%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)等を用いて、測定することができる。
本発明における水溶性高分子は、上述した構造単位の由来となる各単量体成分を重合することにより製造することができる。
単量体成分の重合方法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合等の方法を挙げることができる。これらの重合方法の中でも、乳化重合法、またはソープフリー乳化重合法が好ましい。
上記乳化重合は、ミセル内部で重合が進行するため、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。
上記乳化重合は、乳化剤を用いて行うことができる。乳化剤としてはアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤や、これらの界面活性剤構造中にラジカル重合性の不飽和基を有するものである反応性界面活性剤などを挙げることができる。
上記アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、アルキルアリルポリエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類、ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニクムクロライド等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、ラウリルペタイン、ステアリルペタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
上記高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体又は他の単量体との共重合体等が挙げられる。
上記反応性界面活性剤としては、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート、プロペニル−アルキルスルホコハク酸モノエステル塩;(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート;(メタ)アクリル酸オキシエチレンホスホネート、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンスルホネート、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンスルホネート、アリル基含有硫酸エステル塩、殊にアリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、アリルオキシメチルノニルフェニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン等が挙げられる。
上記ソープフリー乳化重合法においては、単量体及び重合開始剤を溶媒(水等)中に添加し、これらが接触することにより、ラジカルと重合開始剤末端が有するイオン性基とを有するオリゴマーラジカルが生成して粒子核を形成し、その粒子核中に単量体が入り込んで重合反応が進行し、粒子が成長して樹脂粒子(重合体粒子)となると考えられている。そのため、上記ソープフリー乳化重合法は、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。また、疎水性の単量体を用いると、オリゴマーラジカルが水に不溶化しやすくなるため粒子核がよりできやすく、好ましい。更に、重量平均分子量50万以上の水溶性高分子は、ソープフリー乳化重合法により樹脂粒子分散体として作製し、後述のようにアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等で中和し、可溶化(均一化)する工程をとることにより、製造を簡便に行うことができ、生産コストの点でメリットがある。
また、このようなソープフリー乳化重合においては、生成した樹脂粒子は、重合開始剤末端が有するイオン性基により、分散安定化する。そのため、上記ソープフリー乳化重合では、界面活性能を有する化合物を用いない、又は、界面活性能を有する化合物を極微量用いるだけで行うことができる。
ソープフリー乳化重合における界面活性能を有する化合物の使用量は、重合反応に供する単量体成分の総量100質量%に対して、好ましくは0〜0.3質量%、より好ましくは0〜0.1質量%、特に好ましくは0質量%である。
また、シード粒子を利用してソープフリー乳化重合を行うこともできる。この場合、シード粒子が、重合反応に供した単量体を吸収し、樹脂粒子が成長する。そのため、水溶液中で単量体が反応することが殆どないので、低分子量物ができにくく、密着性の点から好ましい。
上記シード粒子としては、公知の樹脂粒子を用いることができる。上記シード粒子の組成(成分)としては、上述したように、シード粒子が単量体を吸収して樹脂粒子が成長するため、作製しようとする水溶性高分子と類似組成を有するものが好ましい。
上記各単量体成分の重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、通常用いられているものを使用することができ、特に制限されず、熱によってラジカル分子を発生させるものであればよい。重合方法として乳化重合やソープフリー乳化重合を行う場合は、水溶性の開始剤が好ましく使用される。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等を挙げることができる。これら重合開始剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記重合開始剤の使用量としては、密着性の点から、重合反応に供する単量体成分の総量100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。より好ましくは0.1〜1質量部である。
上記乳化重合やソープフリー乳化重合時においては、分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤の種類としては上述のとおりである。
上記連鎖移動剤の使用量としては、密着性の点から、重合反応に供する単量体成分の総量100質量%に対して、0〜1質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜0.5質量%である。連鎖移動剤の使用量が多すぎると、得られる水溶性高分子の分子量が低くなり、電池性能が悪くなる恐れがある。
また、乳化重合やソープフリー乳化重合する際に、得られる共重合体に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
上記親水性溶媒としては、例えば、アルコール類、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、アセトン等が挙げられる。
上記添加剤としては、例えば有機塩、無機塩、pH緩衝剤等が挙げられる。
上記重合における重合温度については、特に限定されないが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。
重合における重合時間についても、特に限定されないが、生産性を考慮すると、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1.5〜8時間である。
各単量体成分を乳化重合やソープフリー乳化重合の反応系に添加する方法としては、特に限定はなく、一括重合法、単量体成分滴下法、パワーフィード法、シード法、多段添加法等を用いることができる。
上記重合反応後に得られる樹脂粒子分散体の不揮発分は、5〜60%であることが好ましい。不揮発分が上記範囲内であると、得られる樹脂粒子分散体の流動性や分散安定性を保つことが容易になり、また、目的とする重合体の生産効率の点からも好ましい。一方、不揮発分が60%を超えると、樹脂粒子分散体の粘度が高すぎるため、分散安定性を保てず、凝集が生じるおそれがある。不揮発分が5%未満の場合、重合系の濃度が低く、反応に時間を要する可能性があり、また、目的とする重合体の生産量の点から生産効率が悪くなるおそれがある。
なお、本明細書においては、樹脂粒子分散体を形成する重合体のことを、樹脂粒子ともいう。
上記樹脂粒子は、JIS K 7117−1で測定した、25℃、不揮発分2質量%水溶液とした場合の粘度が0.01〜100mPa・sであることが、作業性の点から好ましい。より好ましくは0.01〜50mPa・s、更に好ましくは0.01〜10mPa・sである。
上記樹脂粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは30〜500nmである。樹脂粒子の粒子径が上記範囲内であると、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集する可能性を下げることができる。一方、樹脂粒子の粒子径が10nm未満の場合、樹脂粒子分散体の粘度が高くなりすぎたり、分散安定性を保てず凝集するおそれがあり、また、1μmを超えると、樹脂粒子の分散安定性を保つことが難しくなるおそれがある。
上記樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定することができる。
本発明における水溶性高分子は、上記のような方法で得られた樹脂粒子を、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等で中和して得ることが好ましい。
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。これらの金属塩で中和する為には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム等の水溶液を用いることができ、好ましくは、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウムである。
アンモニウム塩で中和する為には、アンモニア等の水溶液を用いることができる。
有機アミン塩で中和する為には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等の水溶液を用いることができ、好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンである。
上記塩類のうち特に好ましくは、アルカリ金属塩、その中でも更に好ましくは水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウムである。
これらの金属塩で中和することにより、粘調な水溶液となり、均一な水溶液となり得る。
中和は、理論カルボン酸量の50%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上である。中和後のpHは、6以上が好ましく、より好ましくは6.2以上である。また、pHが9以下が好ましい。
上記pHは、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値として測定することができる。
このように、水溶性高分子が、乳化重合またはソープフリー乳化重合によって合成した樹脂粒子を、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等で中和することにより得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
次に、本発明のイソチアゾリン系化合物について説明する。
イソチアゾリン系化合物は、一般的な防腐剤としては公知の化合物であり、下記一般式(1)で示される。
Figure 2014130702
(式中、XおよびYは、それぞれ、水素、ハロゲン又は炭化水素基を、Rは水素又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
上記一般式(1)において、Rは水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。Rで示される置換されていてもよい炭化水素基の置換基としては、例えばヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、炭素数1〜4のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基等)及び炭素数6〜10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)等が挙げられる。前記置換基の中では、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。これらの置換基は1〜5個、好ましくは1〜3個の範囲で前記炭化水素基の水素を置換していてもよく、また前記置換基はそれぞれ同一でもよく、相異なっていてもよい。
Rで示される置換されていてもよい炭化水素基の該炭化水素基としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基等が挙げられる。前記炭化水素基の中では炭素数1〜10のアルキル基や炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ノニル基及びデシル基等が挙げられる。これらアルキル基の中では、例えばメチル基、エチル基等の炭素数1〜3のアルキル基や、例えばオクチル基、tert−オクチル基等の炭素数7〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
前記炭素数2〜6のアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。前記アルケニル基の中では、ビニル基、アリル基が好ましい。
前記炭素数2〜6のアルキニル基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられる。前記アルキニル基の中では、エチニル基、プロピニル基が好ましい。
前記炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。前記シクロアルキル基の中では、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
前記炭素数6〜14のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。前記アリール基の中では、フェニル基が好ましい。
以上説明したように、Rで示される置換されていてもよい炭化水素基として種々のものが挙げられるが、これら炭化水素基の中では、メチル基やオクチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
上記一般式(1)において、X及びYは、同一又は相異なる水素原子、ハロゲン原子又は置換されていても良い炭化水素基をそれぞれ示す。上記置換基としては、前述したRにおける置換基と同様のものがあげられる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、これらの中では塩素原子が好ましい。
前記炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。前記アルキル基の中では、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。以上説明した置換基の中で、Xとしては水素原子又は塩素原子がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。また、Yとしては水素原子又は塩素原子がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。すなわち、下記一般式(4)で表わされる構造が特に好ましい。
Figure 2014130702
(ただし、Rは一般式(1)のRと同様である)
上記一般式(1)で表されるイソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、等が挙げられる。
これらの化合物の中では、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンがより好ましい。
また、一般式(1)は、X、Yが共同して芳香環を形成してもよい。
下記一般式(5)は、上記一般式(1)において、X、Yが共同して芳香環を形成したもののうち、ベンゼン環を形成した場合を示す。
Figure 2014130702
(式中、Rは一般式(1)の場合と同様であり、Z〜Zは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基をそれぞれ示す。)
上記一般式(5)において、Z〜Zは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基等)、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えばメトキシ基及びエトキシ基等)等が挙げられる。これらZ〜Zは、それぞれ同一でもよく、相異なっていてもよい。
これらの中では、水素原子、ハロゲン原子や炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、その中でも下記一般式(6)で表わされる水素原子がより好ましい。
Figure 2014130702
(式中、Rは一般式(1)の場合と同様である。)
上記一般式(5)で表わされるイソチアゾリン系化合物としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられ、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンがより好ましい。
これらイソチアゾリン系化合物は、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。水系バインダー組成物を用いた電池特性においては、これらの中でも、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが含まれることが特に好ましい。
本発明においては、前記の特定の単量体単位を含む特定組成のバインダーに対する、イソチアゾリン系化合物の含有量は、該バインダー100質量部(固形分換算)に対し、0.001〜30質量部の範囲であり、好ましくは1〜28質量部、より好ましくは5〜25質量部である。イソチアゾリン系化合物の含有量が0.001質量部未満では、十分な導電率および電池特性が発現しない。また、バインダーの組成物中における菌類の繁殖が抑制されず、該バインダー組成物の長期保存安定性が低下する。一方、イソチアゾリン系化合物の含有量が30質量部を超えると、該バインダー組成物中の水溶性高分子の固形分比率が下がるため、密着性が低下する恐れがある。
なお、本発明においては、本発明の効果を妨げない範囲において、上記のイソチアゾリン系化合物以外の防腐剤を使用することを何ら妨げるものではない。
次に、本発明の導電性付与剤について説明する。
本発明の導電性付与剤は、上述した水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、導電助剤、及び、水を必須成分として含むことを特徴とする。本発明の導電性付与剤は、これらの必須成分をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含んでいてもよい。
上記導電助剤は、リチウムイオン電池を高出力化するために用いられ、主に導電性カーボンが用いられる。
導電性カーボンとしては、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛等が挙げられる。これらの中でも、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックが好ましい。ケッチェンブラックは、中空シェル構造を持ち、導電性ネットワークを形成しやすい。そのため、従来のカーボンブラックに比べると、半分程度の添加量で同等性能を発現するため好ましい。また、アセチレンブラックは、高純度のアセチレンガスを用いることで、生成されるカーボンブラックの不純物が非常に少なく、表面の結晶子が発達しているため好ましい。
上記導電助剤は、平均粒子径が1μm以下のものであることが好ましい。平均粒子径が1μm以下の導電助剤を用いることにより、本発明の導電性付与剤を用いて作製される正極水系組成物から正極を形成し、形成された正極を電池の正極として用いた場合に、出力特性等の電気特性を優れた正極とすることが可能となる。平均粒子径は、より好ましくは0.01〜0.8μmであり、更に好ましくは0.03〜0.5μmである。
導電助剤の平均粒子径は、動的光散乱の粒度分布計(導電助剤屈折率を2.0とする)により測定することができる。
本発明の導電性付与剤には、更に必要に応じて分散剤を用いることができる。分散剤を用いることにより、粘度を低減することが可能となり、正極活物質等と混合した正極水系組成物とした場合の固形分を高く設定することができる。
分散剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤;スチレンとマレイン酸との共重合体(ハーフエステルコポリマー−アンモニウム塩を含む)等の高分子分散剤;等の種々の分散剤を用いることができる。
本発明における水溶性高分子に更に分散剤を併用して、導電助剤の均一分散安定性を向上させることにより、正極活物質等と混合した正極水系組成物とした場合に、正極活物質粒子間の接触抵抗を低減でき、良好な正極膜の導電率を達成することができる。
本発明の二次電池用電極水系組成物としては、二次電池用正極水系組成物と、二次電池用負極水系組成物を包含する。電極活物質として後述する正極活物質を使用することにより、二次電池用正極水系組成物とすることができる。同様に、電極活物質として後述する負極活物質を使用することにより、二次電池用負極水系組成物とすることができる。
本発明は、更に、上述した水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、正極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用正極水系組成物である。これらの必須成分は、それぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含んでいてもよい。さらに、本発明の二次電池用正極水系組成物は、導電助剤を含んでいてもよい。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、水溶性高分子、イソチアゾリン系化合物及び導電助剤は、上述したものを用いることができる。
本発明の二次電池用電極水系組成物において用いる正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、放出できる正極活物質であることが好ましい。このような正極活物質を用いることにより、リチウムイオン電池の正極として好適に用いることができるものとなる。
リチウムイオンを吸蔵、放出できる化合物としては、リチウム含有の金属酸化物が挙げられ、当該金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、オリビン構造を有する化合物、LiNi1−x−yCoMnやLiNi1−x−yCoAl(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLiMnOと、電気化学的に活性な層状のLiMO(M=Co、Ni等の遷移金属)との固溶体)等が挙げられる。これらのうち、三元系酸化物等の遷移金属酸化物、またはオリビン構造を有する化合物を含むものであることが好ましい。
これら正極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、正極活物質や導電助剤等の結着剤として、エマルションを用いてもよい。
上記エマルションとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー等の非フッ素系ポリマー;ポリフッ化ビニリデン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマー等のフッ素系ポリマー(フッ素含有重合体);等が挙げられる。水溶性高分子と異なり、エマルションは、粒子間の結着性と柔軟性(膜の可とう性)に優れるものが好ましい。このことから、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマーが好ましい。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、正極水系組成物の固形分における水系電極バインダーの含有割合(質量%)は、正極水系組成物の固形分100%に対して、0.2〜5.0%であることが好ましい。より好ましくは0.3〜3.0%である。このような含有割合であると、正極水系組成物から形成される電極を電池の正極として用いた場合の、出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、正極水系組成物の固形分における正極活物質の含有割合(質量%)は、正極水系組成物の固形分100%に対して、70〜98.8%であることが好ましい。より好ましくは80〜99.5%である。このような含有割合であると、正極水系組成物から形成される電極を電池の正極として用いた場合の、出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、正極水系組成物の固形分における導電助剤の含有割合(質量%)は、正極水系組成物の固形分100%に対して、1〜20%であることが好ましい。より好ましくは2〜10%である。このような含有割合であると、正極水系組成物から形成される電極を電池の正極として用いた場合の、出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。
本発明の二次電池用正極水系組成物において、正極水系組成物の固形分におけるエマルションの含有割合(質量%)は、正極水系組成物の固形分100%に対して、0〜10%であることが好ましい。より好ましくは0〜6.0%である。このような含有割合であると、正極水系組成物から形成される電極を電池の正極として用いた場合の、出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。
本発明の二次電池用正極水系組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。ここでいうその他の成分は、上述の水系電極バインダー、正極活物質、導電助剤、エマルション以外の成分を指し、分散剤等が含まれる。
本発明の二次電池用正極水系組成物は、粘度が1〜20Pa・sであることが好ましい。二次電池用正極組成物の粘度がこのような範囲にあると、塗工する際の適当な流動性を確保でき、作業性の面で好ましい。より好ましくは2〜15Pa・sであり、更に好ましくは、3〜12Pa・sであり、特に好ましくは4〜10Pa・sである。
二次電池用電極水系組成物の粘度は、B型粘度計(東機産業社製)、30rpmにより測定することができる。
また、本発明の二次電池用正極水系組成物は、チクソ値が2.5〜8であることが好ましい。2.5未満の場合は塗工液が流れてハジキ易くなり、8を超える場合は塗工液の流動性が無く塗工し難い。より好ましくは3〜7.5、特に好ましくは3.5〜7である。
当該チクソ値は、B型粘度計(東機産業社製)により、25±1℃、6rpmと60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値として得ることができる。
本発明の二次電池用正極水系組成物は、25℃でのpHが6〜11であることが好ましい。pHがこのような範囲にあると、集電体(例えばアルミ等)の腐食を起こしにくくなり、材料の持つ電池性能を充分に発現することができる。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン温度計F−21(堀場製作所社製)を用いて、25℃の値を測定することができる。
本発明の二次電池用正極水系組成物が、上述の水系電極バインダー、正極活物質、導電助剤と水とを含むものである場合、正極水系組成物の作製方法としては、正極活物質と導電助剤とが均一に分散される限り特に制限されない。例えば、溶媒である水に溶解した水系電極バインダーに、場合により分散剤を添加し、更に導電助剤を混合して、ビーズ、ボールミル、攪拌型混合機、薄膜旋回型高速ミキサー等を用いて分散させて、導電性付与剤を調整し、その溶液に正極活物質を加えて同様の分散処理を行うことが好ましい。このような手順で組成物を調製すると、正極活物質と導電助剤とを十分に均一に分散させやすく好ましい。
本発明の二次電池用正極水系組成物は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする水溶性高分子、およびイソチアゾリン系化合物を用いたものであって、更には正極活物質、導電助剤を含有するものであることが好ましい。
これにより、正極活物質や導電助剤等のフィラー成分の分散安定性を確保し、更に、塗膜の形成能、基材との密着性や可とう性に優れたものとなる。そして、このような正極水系組成物から形成される正極は、導電性と電池特性に優れた二次電池用の正極となる。
このような本発明の二次電池用正極水系組成物を用いて形成される二次電池用正極もまた、本発明の1つである。更に、このような二次電池用正極を用いて構成される二次電池もまた、本発明に含まれる。
また、上述した水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、及び、正極活物質を含む二次電池用正極、並びに、本発明の導電性付与剤を用いて形成される二次電池用正極もまた、本発明の1つである。そして、それら二次電池用正極を用いて構成される二次電池もまた、本発明に含まれる。
本発明は、更に、上述した水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、負極活物質、及び、水を必須成分として含む二次電池用負極水系組成物である。本発明の二次電池用負極水系組成物は、これらの必須成分をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含んでいてもよい。更に、上述した水溶性高分子及びイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、及び、負極活物質を含む二次電池用負極、並びに、このような二次電池用負極を用いて構成される二次電池も本発明に含まれる。
本発明の二次電池用負極水系組成物において、水系電極バインダーとしてはは上述したものを用いることができる。本発明の二次電池用負極水系組成物において用いる負極活物質としては、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料;ポリアセン系導電性高分子;チタン酸リチウム等の複合金属酸化物;リチウム合金等が例示される。好ましくは炭素材料である。
なお、「負極活物質が、炭素系負極材料を主成分として含む」とは、負極活物質の全量100質量%に対して、炭素系負極材料を50質量%以上含むことを表している。負極活物質中の炭素系負極材料の含有割合としては、好ましくは70〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%である。特に好ましくは、負極活物質が炭素系負極材料からなる形態である。
本発明の二次電池用負極水系組成物において、必要に応じて、エマルション、導電助剤、分散剤、増粘剤等を含むことができる。
負極活物質としての炭素系負極材料、上述の水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含有する本発明の二次電池用水系電極バインダー、及び、水を含む負極組成物が、本発明の最も好適な実施形態である。
本発明の二次電池用負極水系組成物を、負極を形成する材料として用いる場合、組成物の固形分における水系電極バインダー組成物の含有比率(質量%)は、組成物中の固形分100%に対して0.3〜2%であることが好ましい。このような含有割合であると、負極水系組成物から形成される電極を電池の負極として用いた場合の出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。より好ましくは0.5〜1.5%である。
本発明の二次電池用負極水系組成物を、負極を形成する材料として用いる場合、組成物の固形分100%における負極活物質の含有比率(質量%)は、85〜99.7%であることが好ましい。このような含有割合であると、負極水系組成物から形成される電極を電池の負極として用いた場合の出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。より好ましくは90〜99.5%である。
また、二次電池用負極水系組成物中の組成物の固形分100%における導電助剤の含有比率(質量%)は、0〜10%であることが好ましい。より好ましくは0〜5%である。
二次電池用負極水系組成物中の組成物の固形分100%におけるエマルションの含有比率(質量%)は、0〜9%であることが好ましい。より好ましくは0〜3%である。
本発明の二次電池用負極水系組成物には、その他の成分を含んでいても良い。ここでいう「その他の成分」は、負極活物質、導電助剤、水溶性高分子、イソチアゾリン系化合物以外の成分を意味し、エマルションのようなバインダー、分散剤や増粘剤等が含まれる。
本発明の二次電池用負極水系組成物の粘度、チクソ値、pHとしてはそれぞれ、上述した本発明の二次電池用正極水系組成物における粘度、チクソ値、pHと同様であることが好ましい。
本発明の二次電池用負極水系組成物は、上述の二次電池用水系電極バインダー、負極活物質、及び、水を含むものである場合、負極水系組成物の作製方法としては、負極活物質が均一に分散されることになる限り特に制限されないが、溶媒である水に溶解した水系電極バインダーと、場合により分散剤を添加して均一な水溶液とし、更に必要に応じて導電助剤を混合して、ビーズ、ボールミル、攪拌型混合機、薄膜旋回型高速ミキサー等を用いて分散させ、そこにエマルションを混合して、二次電池用負極組成物を得ることが好ましい。このような手順で組成物を調製すると、負極活物質が均一に分散させやすく好ましい。
本発明の二次電池用負極水系組成物は、上述した水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする水溶性高分子、およびイソチアゾリン系化合物を用いたものであって、更に負極活物質を含有するものである。
これにより、負極活物質の分散安定性を確保し、更に、形成された塗膜の形成能、基材との密着性や可とう性に優れたものとなる。そして、このような負極水系組成物から形成される負極は、導電性と電池特性に優れた二次電池用の負極となる。
このような本発明の二次電池用負極水系組成物から得られる二次電池用負極もまた、本発明の1つである。更に、このような二次電池用負極を用いて構成される二次電池もまた、本発明の1つである。
本発明の二次電池用正極を用いて構成される二次電池用電極は、活物質100質量部に対して、導電助剤3質量部、バインダー1.5質量部から形成される電極の周波数1〜100Hzにおける直流抵抗から求めた導電率が、0.5×10−3S/cm以上であることが好ましい。より好ましくは0.8×10−3S/cm以上である。
本発明の二次電池用負極を用いて構成される二次電池用電極は、活物質100質量部に対して、バインダー2質量部から形成される電極の周波数1〜100Hzにおける直流抵抗から求めた導電率が、1.0×10−3S/cm以上であることが好ましい。より好ましくは2.0×10−3S/cm以上である。
本発明の二次電池用正極を用いて構成される二次電池は、正極活物質がLiFePOの場合、電池性能の点から、初期放電容量が130mAh/g以上であることが好ましい。より好ましくは140mAh/g以上である。正極活物質がニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Ni:Mn:Co=1:1:1)の三元系である場合、初期放電容量が130mAh/g以上であることが好ましい。より好ましくは140mAh/g以上である。
なお、上記初期放電容量は、例えば、後述の実施例に記載の方法等により測定することができる。
本発明の二次電池用負極を用いて構成される二次電池は、負極活物質が天然黒鉛の場合、電池性能の点から、初期放電容量が320mAh/g以上であることが好ましい。より好ましくは330mAh/g以上である。なお、上記初期放電容量は、例えば、後述の実施例に記載の方法等により測定することができる。
本発明の二次電池用電極を用いて構成される二次電池は、充放電を50回繰り返した50サイクル後の電気容量維持率(単に、「50サイクル維持率」とも言う。)が90%以上であることが好ましい。より好ましくは93%以上である。50サイクルの維持率を確認することで、結着剤として問題ないことが確認できる。二次電池の電気容量は充放電評価装置により測定できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の実施例、比較例において、樹脂粒子分散体、水溶性高分子又はその水溶液及び電極バインダーの物性評価は、下記の測定方法により行った。
<不揮発分測定>
樹脂粒子分散体又は水溶性高分子の水溶液をアルミ皿に約1g秤量し、150℃の熱風乾燥機中で20分間乾燥し、乾燥前後の質量から下記式により求めた。
不揮発分(%)=(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)×100
<粘度測定>
樹脂粒子分散体および水溶性高分子水溶液の粘度は、樹脂粒子分散体を不揮発分2%に調整後、TVB−10(東機産業社製)を用い、JIS K 7117−1に準拠して25℃で測定した。
<重量平均分子量測定>
水溶性高分子を、測定対象物の不揮発分が0.2質量%となるように、溶離液に溶解し、フィルターにてろ過したものを以下の条件で測定した。
測定機器:東ソー社製GPC(型番:HLC−8120)
分子量カラム:TSKgel GMHXL(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン
<全光線透過率測定>
日本電色社製のヘイズメーター(型番;NDH5000)を用いて、奥行10mmの石英セル中に、不揮発分2質量%の水溶性高分子水溶液を入れ、全光線透過率を測定した。
<導電率評価>
周波数応答アナライザ1260型(ソーラートロン社製)を用いて、作製した電極を、1cmのセルに挟み込んで、直流抵抗を測定した。得られた直流抵抗から、周波数1〜100Hzにおける電極の直流抵抗の平均を求め、電極の抵抗とした。
作製した電極の膜厚をマイクロメータで測定し、抵抗と膜厚から電極の導電率を求めた。
<電池特性評価>
充放電測定装置ACD−001(アスカ電子社製)を用いて、コインセル(CR2032)を作製し、初期容量及び50サイクル後の容量維持率を評価した。その他の測定条件は下記の通りである。
正極:下記実施例及び比較例で得られた正極
負極:Li箔
電解液:1mol/L LiPF EC/EMC=3/7(キシダ化学社製)
充電条件:0.5C CC−CV Cut−off 4.3V
放電条件:0.5C CC Cut−off 2.7V

(実施例1)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水269.2質量部、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩3.3質量部を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、別の容器にポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩3.3質量部をイオン交換水206.3質量部に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、メタクリル酸77質量部、アクリル酸エチル98.3質量部、アクリル酸メチル44質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の混合物を投入し、混合してプレエマルションを作製した。別途、過硫酸アンモニウム0.55質量部をイオン交換水54.5質量部に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。反応容器内の温度を72℃に保ち、プレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水8質量部で滴下槽を洗浄後、洗浄液を反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、樹脂粒子分散体aを得た。得られた樹脂粒子分散体aは、不揮発分30%、不揮発分2%での粘度は10mPa・s以下であった。
次に、樹脂粒子分散体a(10部/不揮発分3部)にイオン交換水(134.1部)を加えて攪拌し、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を添加し、pH7、不揮発分2%に調整することで水溶性高分子A水溶液を得た。得られた水溶性高分子Aは、重量平均分子量100万、粘度2600mPa・s、全光線透過率96%であった。
この水溶性高分子A水溶液(20部/不揮発分0.4部)に、N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン(0.2部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.8部)を添加し、水系電極バインダー(1)を得た。水溶性高分子Aに対するN−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オンの固形分比は、水溶性高分子A/N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン=100/10であった。
次に、水系電極バインダー(1)22.5部とイオン交換水0.65部を混合して均一溶液とし、アセチレンブラックHS−100(デンカ社製)0.9部を加えて混合分散した。さらに、セルシードNMC(日本化学工業社製)30.0部を加えて混合分散し、正極水系組成物(1)を得た。この正極水系組成物(1)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率1.1×10−3S/cm、初期容量146mAh/g、50サイクル後の容量維持率95%であった。

(実施例2)
実施例1において、N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン(0.2部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.8部)の代わりに、N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン(0.4部/不揮発分0.08部)とイオン交換水(3.6部)を添加した以外は、実施例1と同様の手法で水系電極バインダー(2)を得た。水溶性高分子Aに対するN−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オンの固形分比は、水溶性高分子A/N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン=100/20であった。
次に、実施例1において、水系電極バインダー(1)の代わりに、水系電極バインダー(2)を用いた以外は、実施例1と同様の手法で正極水系組成物(2)を得た。この正極水系組成物(2)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率1.2×10−3S/cm、初期容量147mAh/g、50サイクル後の容量維持率94%であった。

(実施例3)
実施例1において、N−メチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン(0.2部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.8部)の代わりに、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(0.8部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.2部)を添加し、水系電極バインダー(3)を得た。水溶性高分子Aに対する2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの固形分比は、水溶性高分子A/2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン=100/10であった。
次に、実施例1において、水系電極バインダー(1)の代わりに、水系電極バインダー(3)を用いた以外は、実施例1と同様の手法で正極水系組成物(3)を得た。この正極水系組成物(3)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率1.4×10−3S/cm、初期容量146mAh/g、50サイクル後の容量維持率95%であった。

(実施例4)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四ツロセパラブルフラスコに、イオン交換水871.75質量部を投入した。内温90℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、過硫酸カリウム0.55部を、イオン交換水10.45質量部に混合した開始剤水溶液を投入し、5分攪拌後、メタクリル酸99質量部、アクリル酸エチル120.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の混合溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃に保ち、1時間攪拌を続けた。次いで、冷却して反応を終了させ、樹脂粒子分散体bを得た。得られた樹脂粒子分散体bは、不揮発分19.5%、不揮発分2%での粘度は10mPa・s以下であった。
次に、樹脂粒子分散体b(15.4部/不揮発分3部)に、イオン交換水(127.8部)を加えて攪拌し、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を添加し、pH7、不揮発分2%に調整することで水溶性高分子B水溶液を得た。得られた水溶性高分子Bは、重量平均分子量90万、粘度2400mPa・s、全光線透過率98%であった。
この水溶性高分子B水溶液(20部/不揮発分0.4部)に、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(0.8部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.2部)を添加し、水系電極バインダー(4)を得た。水溶性高分子Bに対する2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの固形分比は、水溶性高分子B/2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン=100/10であった。
次に、実施例1において、水系電極バインダー(1)の代わりに、水系電極バインダー(4)を用いた以外は、実施例1と同様の手法で正極水系組成物(4)を得た。この正極水系組成物(4)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率1.5×10−3S/cm、初期容量147mAh/g、50サイクル後の容量維持率95%であった。

(実施例5)
実施例4において、イオン交換水871.75質量部の代わりに、イオン交換水868.15質量部とシード粒子として実施例4で作製した樹脂粒子分散体bを33.1質量部を投入した。それ以降は実施例4と同様の手法で重合し、樹脂粒子分散体cを得た。得られた樹脂粒子分散体cは、不揮発分19.5%、不揮発分2%での粘度は10mPa・s以下であった。
次に、樹脂粒子分散体c(15.4部/不揮発分3部)に、イオン交換水(127.8部)を加えて攪拌し、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を添加しながら、pH7、不揮発分2%に調整することで水溶性高分子C水溶液を得た。得られた水溶性高分子Cは、重量平均分子量110万、粘度2700mPa・s、全光線透過率98%であった。
この水溶性高分子C水溶液(20部/不揮発分0.4部)に、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(0.8部/不揮発分0.04部)とイオン交換水(1.2部)を添加し、水系電極バインダー(5)を得た。水溶性高分子Cに対する2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの固形分比は、水溶性高分子C/2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン=100/10であった。
次に、実施例1において、水系電極バインダー(1)の代わりに、水系電極バインダー(5)を用いた以外は、実施例1と同様の手法で正極水系組成物(5)を得た。この正極水系組成物(5)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率1.5×10−3S/cm、初期容量147mAh/g、50サイクル後の容量維持率96%であった。

(比較例)
実施例1において、水系電極バインダー(1)の代わりに、実施例1で得られた水溶性高分子A水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の手法で正極水系組成物(6)を得た。この正極水系組成物(6)をアプリケーターを用いてアルミ泊に塗工し、100℃×10分、150℃×60分乾燥を行った。得られた正極は、導電率0.3×10−3S/cm、初期容量143mAh/g、50サイクル後の容量維持率88%であった。
上記実施例の結果から、本発明における水溶性高分子およびイソチアゾリン系化合物を含む二次電池用水系電極バインダーは、導電性を向上させる効果があり、かつ初期容量がより大きくなることがわかる。また、充放電サイクル特性も良好であることから、本発明の二次電池用水系電極バインダーを用いることで、高容量化可能な優れた電池特性を発揮することができるといえる。

Claims (10)

  1. 水溶性高分子および下記一般式(1)で示されるイソチアゾリン系化合物を含む二次電池用水系電極バインダーであって、
    該水溶性高分子は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体由来の構造単位を5〜95質量%含み、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とし、かつ、該イソチアゾリン系化合物の含有量が、水溶性高分子100質量部に対して、0.001〜30重量部であることを特徴とする二次電池用水系電極バインダー。
    Figure 2014130702
    (式中、XおよびYは、それぞれ、水素、ハロゲン又は炭化水素基を、Rは水素又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
  2. 前記水溶性高分子は、水溶性高分子が有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を5〜95質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用水系電極バインダー。
  3. 前記水溶性高分子は、乳化重合によって合成した高分子を中和することにより得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用水系電極バインダー。
  4. 前記水溶性高分子は、界面活性能を有する化合物の含有量が全単量体成分100質量%に対して0.5質量%以下である条件下で、水溶液中でエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を重合することにより得られる樹脂粒子分散体を中和することにより得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池用水系電極バインダー。
  5. 前記イソチアゾリン系化合物が、下記化学式(2)及び/または(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用水系電極バインダー。
    Figure 2014130702
    Figure 2014130702
    (式中、Rは水素又は置換されていてもよい炭化水素基をそれぞれ示す。)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用水系電極バインダー、導電助剤、及び、水を必須成分として含むことを特徴とする導電性付与剤。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用水系電極バインダー、電極活物質、及び、水を必須成分として含むことを特徴とする二次電池用電極水系組成物。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用水系電極バインダー、及び、電極活物質を含有することを特徴とする二次電池用電極。
  9. 請求項6に記載の導電性付与剤、又は、請求項7に記載の二次電池用電極水系組成物を用いて形成されることを特徴とする二次電池用電極。
  10. 請求項8又は9に記載の二次電池用電極を用いて構成されることを特徴とする二次電池。
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