JP5689769B2 - 水系電極組成物用水分散体 - Google Patents
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Description
これは、PVDFが化学的、電気的に安定であり、NMPがPVDFを溶解する経時安定性のある溶媒であることに拠っている。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
水分散体は上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを1種含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の水分散体は、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマー以外のその他のポリマー成分(例えば、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマー以外のアルカリ可溶性ポリマー、水溶性ポリマー、水溶性オリゴマー)を含んでいてもよい。その場合、その他のポリマー成分の含有割合は、溶媒を除いた水分散体の全量100質量%に対して、0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは、0〜10質量%である。
上記水分散体におけるアルカリ可溶性ポリマーと溶媒との含有割合としては、アルカリ可溶性ポリマー/溶媒(質量比)=0.5〜60/40〜99.5であることが好ましい。より好ましくは、0.8〜45/55〜99.2である。
上記溶媒中の水の含有割合は、水分散体に含まれる溶媒の全量100質量%に対して、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは、90〜100質量%である。特に好ましくは、水分散体に含まれる溶媒が水のみからなることである。
これらのことから、本発明の水分散体は、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーと水のみからなることが最も好ましい。
pH5未満の状態における25℃での粘度としては、0.1〜40mPa・sが好ましく、より好ましくは、0.2〜20mPa・sである。pH8に中和した状態における25℃での粘度としては、120〜20,000mPa・sが好ましく、より好ましくは、150〜10,000mPa・sである。
また、未中和の状態における水分散体のpHとしては、好ましくは、1〜4である。
上記水分散体として、このような粘度範囲のものを用いることにより、電極組成物の粘度を調整する機能を充分に発揮することができる。
上記pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。
ここで、透明溶液とは、ポリマー濃度2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものを意味する。すなわち、上記水分散体は、pH8の状態に調整した後の2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものである。全光線透過率が90%未満である場合には、pH8の状態でポリマー粒子が可溶化しているとはいえず、これは、電極組成物を調製した場合に均一な電極組成物を調製できないことを意味し、結果、安定した電池性能を発揮する電極を形成することができないおそれがある。全光線透過率として好ましくは、95%以上であり、より好ましくは、97%以上である。
また、上記水分散体をpH8の状態に調整した後の2質量%水溶液は、ヘイズが10以下であることが好ましく、より好ましくは、5以下である。
上記全光線透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を用いて、測定することができる。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;テトラヒドロフラン)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120(製品名、東ソー社製)
カラム:TSK−gel GMHXL(製品名、東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
測定方法:未中和のアルカリ可溶性ポリマーを溶離液に測定対象物の固形分が0.1質量%となるように溶解し、フィルターを用いてろ過したものを測定サンプルとする。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体及びそれらの酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。これらエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、リチウム塩が好ましい。これら金属塩としては、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエステルが挙げられ、好ましくは、例えば、一般式(1);
CH2=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)で表される化合物である。
これらの中でも、後述する乳化重合時の安定性等の観点からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(1)におけるR’がアルキル基であると、得られるアルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低くなるため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
また、末端にハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有するポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。その場合、アルキレンオキサイド末端に疎水基を有することで、疎水基が会合することにより電極組成物の粘性を変えることができる。
上記アルキレンオキサイド末端の疎水基として好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数10〜20のアルキル基である。これらその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
乳化重合法は、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。重量平均分子量が50万以上のアルカリ可溶性ポリマーは、乳化重合法により簡便に製造することができるため、アルカリ可溶性ポリマーの製造方法として乳化重合法を選択することは生産コストの上でもメリットがある。
なお、重合方法として特に乳化重合を行う場合には、これら重合開始剤の中でも水溶性の開始剤が好ましく使用される。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合反応に供する単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜1重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.5重量部である。
また、乳化重合を行う際、得られる共重合体(アルカリ可溶性ポリマー)に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
上記エマルションの平均粒子径としては、特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは30〜500nmである。エマルションの粒子径がこの範囲であることにより、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集したりする可能性を低くすることができる。
すなわち、アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物であって、本発明の水分散体を用いてなる水系電極組成物もまた、本発明の1つである。
上記電極活物質の含有量としては、電極組成物の全量100質量%に対して、85〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは、90〜98質量%である。
また、上記水系電極組成物は水を含むものであるが、水系電極組成物における水の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、30〜300質量%であることが好ましい。水の含有量がこの範囲であると、適当な粘度のスラリーを作製することができる。より好ましくは、50〜200質量%である。
これら正極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
LixNi1−y−zCoyMzOa (2)
上式において、0.9≦x≦1.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.7、0<a≦2である。ただし、y、zは、0≦1−y−zを満たすものであり、y及びzが共に0となることはない。また、上記MはMnまたはAlであり、好ましくはMnである。
更にはNiの組成比を大きくした三元系活物質が好ましい。すなわち、上記一般式(2)において、0≦y≦0.2であることがより好ましい。
これら負極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
特に水系電極組成物において電極活物質として正極活物質を用いる場合には、フッ素含有重合体を(メタ)アクリル変性した構造を有する重合体のエマルションが、フッ素含有重合体が持つ化学的、電気的に安定な性質を有しつつ、フッ素含有重合体の欠点である低い結着性や得られる塗膜の密着性の低さ、塗膜の硬脆さをアクリルで変性することにより改善されているので、好ましい。
また、PVDFやPTFEを(メタ)アクリル変性した構造を有するエマルションも、PVDFやPTFE自体は結晶性を有するポリマーであるが、それらフッ素系ポリマーにアクリルが入り込んだ「IPN構造」を有するような粒子とすることにより結晶性が低下し、エマルションの造膜温度も低くなっているため、好ましい。
そのような(メタ)アクリル変性したフッ素含有重合体のエマルションは、例えば、PVDFやPTFEの水分散粒子存在下に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、カルボン酸やスルホン酸等官能基を有する不飽和単量体等を乳化重合することにより得ることができる。
ケッチェンブラックは中空シェル構造を持ち、導電性ネットワークを形成しやすい。そのため、従来のカーボンブラックに比べると半分程度の添加量で同等性能を発現することができるため、好ましい。また、アセチレンブラックは高純度のアセチレンガスを用いることで生成されるものであり、カーボンブラックの不純物が非常に少なく、表面の結晶子が発達しているため、好ましい。
上記分散剤としては、特に制限されず、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、スチレンとマレイン酸との共重合体(ハーフエステルコポリマー塩を含む)等の高分子分散剤などの種々の分散剤を用いることができる。分散剤を用いる場合の分散剤の使用量としては、導電助剤100質量%に対して1〜20質量%含有させることが好ましい。分散剤の含有量がこのような範囲であると、電極活物質や導電助剤を混合した場合の分散性を充分に確保することが可能となる。分散剤の使用量としてより好ましくは、3〜15質量%である。
このように分散剤を併用して、水系電極組成物における電極活物質及び導電助剤の均一分散安定性を向上させることで、電極活物質粒子間の接触抵抗を低減することができ、良好な電極膜の電気伝導度を達成することが可能となる。
なお、ここでいうその他の成分は、上述のアルカリ可溶性ポリマー、正極活物質、導電助剤、水分散樹脂以外の成分を指し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
なお、ここでいうその他の成分は、上述のアルカリ可溶性ポリマー、負極活物質、導電助剤、水分散樹脂以外の成分を表し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
水系電極組成物の粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。また、水系電極組成物のチクソ値は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、6rpmと60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値として求めることができる。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
なお上記混練工程としては、本発明の水分散体及び電極活物質を加える限り、その他の成分を加えてもよく、その場合の混練工程の一例としては、水分散体に、場合により分散剤を添加し、更に必要に応じて導電助剤を混合して混練することで分散させ、その溶液に電極活物質を加えて更に混練することで分散、スラリー化させる工程が好適な実施形態として挙げられる。
このような本発明の水系電極組成物を用いて形成される電極もまた、本発明の1つである。そして更に、この電極を用いて構成される二次電池もまた、本発明の一つである。
上記集電体としては、特に制限されないが、例えば、アルミ集電体、銅箔等が挙げられる。
二次電池の電気容量は後述する実施例において行われるような充放電測定装置を用いた評価により測定することができる。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水(115部)、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。
次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩(1.5部)をイオン交換水(92部)に溶解した。ここに、重合体の単量体として、アクリル酸エチル(59.9部)とメタクリル酸(40部)とジアリルフタレート(0.1部)の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。単量体を含む前記プレエマルションの5%を反応容器に投入して攪拌後、亜硫酸水素ナトリウム(0.017部)を投入した。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)をイオン交換水(23部)に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。この重合開始剤水溶液5%を、前記反応容器に投入し20分間初期重合を行った。反応容器内の温度を72℃に保ち、残りのプレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水(8部)で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、固形分30%(ポリマー濃度30%)のエマルションを得た。この得られたエマルションをポリマー濃度2質量%に調整したものを水分散体(1)とした。水分散体(1)のpHは2.9で、粘度は3mPa・sであった。また、当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和してポリマー濃度2質量%に調整した水溶液(1)の全光線透過率は、97.0%で、粘度は2300mPa・sであった。なお、水分散体のpH、粘度、及び、水溶液の全光線透過率、粘度は、次のようにして測定した。
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
<水分散体、水溶液の粘度>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<水溶液の全光線透過率>
ヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業社製)を用いて、セルに溶液を入れて測定し、全光線透過率を求めた。なお、水の全光線透過率を100%とした。
重合体の単量体としてアクリル酸エチル(65部)、メタクリル酸(35部)を用いた以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルションを得た。この得られたエマルションをポリマー濃度2質量%に調整したものを水分散体(2)とした。水分散体(2)のpHは3.3で、粘度は3mPa・sであった。また、当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和してポリマー濃度2質量%に調整した水溶液(2)の全光線透過率は99.0%で、粘度は200mPa・sであった。
水(20.88部)、水分散体(1)(0.67部/固形分0.2部)を混合した水分散液に、正極活物質としてセルシードNMC(日本化学工業社製、N:M:C=1:1:1品)(36.8部)、導電助剤としてデンカブラックHS−100(デンカ社製)(2.4部)を混合して、混練した。混練後、更に水分散樹脂であるアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(アルケマ社製、VDF:アクリル=70:30、「アクリル変性VDFポリマー」とも称する。)(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、正極組成物(1)を得た。
得られた正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pHを次のようにして測定、評価した。正極組成物(1)の特性を表1に示した。また、下記するようにして正極組成物(1)を用いてコイン電池を作製し電池評価を行ったところ、放電容量が142mAh/gで、100サイクルの維持率は95%であった。
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<正極組成物のチクソ値>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、6rpm及び60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値を求め、チクソ値とした。
<正極組成物のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
アプリケーターを用いて、正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し、室温で5分プレスをして、80℃で減圧乾燥し電極シートを作製した。作製した電極シートを用いて、下記のようにコインセル(CR2032)を作製し、充放電測定装置ACD−001(製品名、アスカ電子社製)を用いて下記条件により電池評価を行った。
コインセル
正極 :表1の正極組成物
負極 :Li箔
電解液 :1mol%/L LiPF6 EC/EMC=1/1(キシダ化学社製)
電池評価条件
充電条件:0.2C CC Cut−off 4.3V
放電条件:0.5C CC Cut−off 2.7V
水(20.87部)、水分散体(1)(0.53部/固形分0.16部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.15部/固形分0.04部)を混合した水分散液を用いた以外は、正極組成物(1)と同様にして正極組成物を作製し、正極組成物(2)を得た。
得られた正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(2)の特性を表1に示した。正極組成物(2)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が145mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
水(20.39部)、水分散体(2)(1.06部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水分散液に、セルシードNMC(36.6部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、正極組成物(3)を得た。
得られた正極組成物(3)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(3)の特性を表1に示した。正極組成物(3)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が144mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
水(42.83部)、水分散体(2)(1.06部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水分散液に、LiFePO4(中国品)(36.0部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(2.5部/固形分1.2部)を加えて混合分散し、正極組成物(4)を得た。
得られた正極組成物(4)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(4)の特性を表1に示した。正極組成物(4)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が140mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
水(14.05部)、水溶液(1)(8.0部/固形分0.16部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.15部/固形分0.04部)を混合した水溶液に、セルシードNMC(36.8部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、比較正極組成物(1)を得た。
得られた比較正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(1)の特性を表1に示した。
水(28.27部)、水溶液(2)(16.0部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水溶液に、LiFePO4(中国品)(36.0部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(2.5部/固形分1.2部)を加えて混合分散し、比較正極組成物(2)を得た。
得られた比較正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(2)の特性を表1に示した。
NMP(27.8部)、カイナーHSV900(ポリフッ化ビニリデン系樹脂、アルケマ社製)(1.2部)のポリマー溶液にセルシードNMC(36.4部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練し、比較正極組成物(3)を得た。
得られた比較正極組成物(3)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(3)の特性を表1に示した。比較正極組成物(3)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が146mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
なお、表1中、各成分の配合組成の欄の数値は、各成分の固形分の配合割合(質量%)を表している。また、比較例3におけるチクソ値は、粘度が>10,000(6rpm)のため、測定できなかった。また、pHは、未測定であることを表している。
本発明の水分散体は、電極活物質と混練して電極組成物を調製することにより、粒子の分散性と粘度調整機能を有することが実証された。そして、初期放電容量、サイクル特性に関しても、バインダーにPVDFを用いた溶剤系の電極組成物である比較例3と比較しても同等の電池性能が発揮できていることが確認された。
また、本発明の水分散体を一度アルカリ水溶液を用いて中和して水溶性ポリマーとし、その溶液を電極活物質などと共に混練して電極組成物を調製する比較例1〜2と対比すると、実施例1〜4の結果から、本発明の水分散体を用いて電極組成物を調製することで、電極組成物のpHを10未満と低減させることができることを確認した。
なお、上記実施例においては、水分散体として特定のものが用いられ、また、電極活物質、導電助剤、水分散樹脂、分散剤としても特定のものが用いられているが、電極組成物のバインダーとして本発明の水分散体を用いることによって、それを用いて調製される電極組成物のpHが低く保たれ、また、その電極組成物から形成される電極が電池性能に優れたものとなる機構は、本発明における水分散体を用いた場合には全て同様である。
従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
Claims (7)
- 水系電極組成物に用いるアルカリ可溶性ポリマーを含有する水分散体であって、
該アルカリ可溶性ポリマーは、
ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するものであり、
該水分散体は、
ポリマー濃度を2質量%としたときに、
25℃における粘度が、pH5未満の状態で50mPa・s以下、pH8に中和した状態で100mPa・s以上となり、かつ、pH8の状態で全光線透過率が90〜100%となるものである
ことを特徴とする水分散体。 - 前記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、下記一般式(1);
CH2=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の水分散体。 - アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物であって、
請求項1又は2に記載の水分散体を用いてなることを特徴とする水系電極組成物。 - 前記電極活物質は、正極活物質であり、
前記水系電極組成物は、更に、pH7の状態でエマルションの形態である別のポリマーを含むことを特徴とする請求項3に記載の水系電極組成物。 - 請求項3又は4に記載の水系電極組成物を用いて形成されることを特徴とする電極。
- 請求項5に記載の電極を用いて構成されることを特徴とする二次電池。
- アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物の製造方法であって、
該製造方法は、請求項1又は2に記載の水分散体と電極活物質とを混練する工程を含むことを特徴とする水系電極組成物の製造方法。
Priority Applications (1)
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