WO2023127300A1 - 非水系二次電池用バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物および非水系二次電池電極 - Google Patents

非水系二次電池用バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物および非水系二次電池電極 Download PDF

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Abstract

単量体(a1)に由来する構造単位と単量体(a2)に由来する構造単位と第3構造単位と内部架橋剤に由来する構造単位とを有し、単量体(a1)はエチレン性不飽和結合を有するノニオン性化合物、単量体(a2)はエチレン性不飽和結合およびアニオン性官能基を有する化合物、内部架橋剤は独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物、第3構造単位が下記式(Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基)で表される非水系二次電池用バインダー重合体とする。

Description

非水系二次電池用バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物および非水系二次電池電極
 本発明は、非水系二次電池用バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物、および非水系二次電池電極に関する。
 本願は、2021年12月28日に、日本に出願された特願2021-214135号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 非水系二次電池は、小型化および軽量化が可能であるため、ノート型パソコン、携帯電話、電動工具、電子・通信機器などの電源として広く使用されている。近年、非水系二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車の電源などにも使用されている。非水系二次電池の代表例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。
 非水系二次電池は、金属酸化物などを活物質とした正極と、黒鉛などの炭素材料を活物質とした負極と、電解液とを含む。正極および負極は、集電体と、集電体上に形成された電極活物質層とを備える。電極活物質層には、通常、活物質同士、および活物質と集電体とを結着させて、電極活物質層を集電体上に固定するバインダーが含まれている。従来、非水系二次電池に用いられるバインダーとしては、特許文献1および特許文献2に記載のものが知られている。
 特許文献1には、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、及びアクリルエマルジョンからなる群より選択される少なくとも一種のポリマー水分散体100質量部と、曇点が70℃以下の化合物1~20質量部とを含有する二次電池電極用バインダー組成物が記載されている。
 また、α-(アリルオキシメチル)アクリレート(AOMA)化合物を環化重合させると、主鎖にテトラヒドロフラン(THF)環構造を有する重合体が得られることが知られている。
 特許文献2には、α-(アリルオキシメチル)アクリレートの重合体を含む医療用具用材料が記載されている。
 特許文献3には、α-(アリルオキシメチル)アクリレート化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を含む電子部品が記載されている。
特開2014-239070号公報 特開2016-214840号公報 特開2021-130773号公報
 近年、非水系二次電池においては、高出力化、高容量化、長寿命化等が強く求められている。このため、非水系二次電池に用いられるバインダーにおいては、より一層、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、これを用いた非水系二次電池のサイクル特性を向上できるものが要求されている。
 本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるバインダーの材料として使用できる非水系二次電池用バインダー重合体、これを含む非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池用バインダーおよび非水系二次電池電極用スラリーを提供することを目的とする。
 また、本発明は、本発明の非水系二次電池用バインダー重合体を含み、集電体から電極活物質層が剥離しにくく、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られる非水系二次電池電極、およびこれを備える非水系二次電池を提供することを目的とする。
 本発明は以下の態様を含む。
 本発明の第一の態様は、以下の非水系二次電池用バインダー重合体を提供する。
[1] 単量体(a1)に由来する第1構造単位と、
 単量体(a2)に由来する第2構造単位と、
 第3構造単位と、
 内部架橋剤(a4)に由来する第4構造単位と、を有し、
 前記単量体(a1)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ有するノニオン性化合物であり、
 前記単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ、およびアニオン性官能基を有する化合物であり、
 前記内部架橋剤(a4)は、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、
 前記第3構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である、ことを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003


(式(1)中、Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基である。)
 本発明の第一の態様の非水系二次電池用バインダー重合体は、以下の[2]から[6]の特徴を有することが好ましい。以下の特徴は2つ以上を組み合わせることも好ましい。
[2] 前記式(1)中のZが、直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基である、[1]に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
[3] 前記式(1)中のZが、メチル基、n-プロピル基、及びn-へキシル基からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]または[2]に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
[4] 前記アニオン性官能基は、カルボキシ基、及びスルホ基のうち少なくともいずれかを有する化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
[5] 前記第1構造単位及び前記第2構造単位を合計で80質量%以上含む、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
[6] 前記第1構造単位100質量部に対する、前記第3構造単位の含有量は、0.050質量部以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
 本発明の第二の態様は、以下の非水系二次電池用バインダー組成物を提供する。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体と、水性媒体と、を含む、非水系二次電池用バインダー組成物。
 本発明の第三の態様は、以下の非水系二次電池用バインダーを提供する。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体を含む、非水系二次電池用バインダー。
 本発明の第四の態様は、以下の非水系二次電池電極用スラリーを提供する。
[9] [1]~[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体と、電極活物質と、水性媒体と、を含み、
 該水性媒体は、水、親水性の溶媒、及び水と親水性の溶媒とを含む混合物からなる群から選択される1つである、非水系二次電池電極用スラリー。
 本発明の第五の態様は、以下の非水系二次電池電極を提供する。
[10] [1]~[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用バインダー重合体を含む、非水系二次電池電極。
 本発明の第六の態様は、以下の非水系二次電池を提供する。
[11] [10]に記載の非水系二次電池電極を備える、非水系二次電池。
 本発明の第七の態様は、以下の非水系二次電池用バインダー重合体の製造方法を提供する。
[12] 単量体(a1)と、単量体(a2)、単量体(a3)、内部架橋剤(a4)とを、共重合することを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体の製造方法であって、
 前記単量体(a1)は、エチレン性不飽和結合を有し、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有しないノニオン性化合物であり、
 前記単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合およびアニオン性官能基を有し、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有しない化合物であり、
 前記単量体(a3)が、下記一般式(2)で表される化合物であり、
 前記内部架橋剤(a4)が、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物である、ことを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体の製造方法。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004

(式(2)中、Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基である。)
 本発明によれば、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるバインダーの材料として使用できる非水系二次電池用バインダー重合体を提供できる。
 さらに、本発明によれば、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られる非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池用バインダーおよび非水系二次電池電極用スラリーを提供できる。
 また、本発明によれば、集電体から電極活物質層が剥離しにくく、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られる非水系二次電池電極、およびこれを備えるサイクル特性に優れる非水系二次電池を提供できる。
 以下、本発明の非水系二次電池用バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物、非水系二次電池用バインダー、非水系二次電池電極用スラリー、非水系二次電池電極および非水系二次電池の好ましい例について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、数、種類、位置、量、比率、材料、構成などについて、付加、省略、置換、変更などが可能である。
 ここで、本明細書において使用する下記の語句について説明する。
「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「エチレン性不飽和結合」とは、特に断りがない限り、ラジカル重合性を有するエチレン性不飽和結合を指す。
 エチレン性不飽和結合を有する化合物を用いた重合体において、前記エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する構造単位とは、その化合物中のエチレン性不飽和結合以外の部分の化学構造と、前記重合体中における前記構造単位のエチレン性不飽和結合に対応する部分以外の部分の化学構造とが、同じである構造単位を意味してよい。前記化合物のエチレン性不飽和結合は、重合体を形成する際に、単結合へと変化してもよい。例えば、メチルメタクリレートの重合体において、メチルメタクリレート由来の構造単位は、-CH-C(CH)(COOCH)-によって表される。
 なお、イオン性の官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物の重合体の場合、例えば、後述する第2構造単位のように、カルボキシ基のようなイオン性の官能基を有する構造単位については、前記官能基の一部がイオン交換されていても、またはイオン交換されていなくても、同じイオン性化合物に由来する構造単位としてよい。例えば、-CH-C(CH)(COONa)-で表される構造単位も、メタクリル酸由来の構造単位と考えてよい。
 また、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物については、前記化合物の重合体の構造単位として、構造単位内部に1つ以上のエチレン性不飽和結合が残っていてもよい。独立した複数のエチレン性不飽和結合とは、互いに共役ジエンを形成しない複数のエチレン性不飽和結合を意味する。例えば、ジビニルベンゼンの重合体の場合、ジビニルベンゼン由来の構造単位は、エチレン性不飽和結合を有さない構造(ジビニルベンゼンの2つのエチレン性不飽和結合に対応する部分が両方とも重合体の鎖に取り込まれた形態)であってもよく、1個のエチレン性不飽和結合を有する構造(一方のエチレン性不飽和結合に対応する部分のみが重合体の鎖に取り込まれた形態)でもよい。
 更に、重合後、重合体中のエチレン性不飽和結合に対応する鎖状構造以外の部分、例えばカルボキシ基等の官能基が、化学反応によりモノマーの化学構造と対応しなくなっている場合は、重合体の構造単位を、重合体中のエチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する構造単位とする。例えば、酢酸ビニルを重合した後、けん化した場合においては、重合体の化学構造を基準に考えて、重合体の構造単位を、酢酸ビニル由来の構造単位ではなく、ビニルアルコール由来の構造単位とする。
 本実施形態において、化合物名に付す「類」とは、当該化合物構造を含む化合物群を意味し、置換基を有する当該化合物も含む。例えば、α-アリルオキシメチルアクリレート類とは、α-アリルオキシメチルアクリレート構造を含む化合物群を指す。
<1.非水系二次電池用バインダー重合体(P)>
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー重合体は、非水系二次電池のバインダーに用いられる重合体であり、以下「バインダー用重合体」という場合がある。本実施形態のバインダー用重合体(P)は、以下に示す単量体(a1)に由来する第1構造単位と、以下に示す単量体(a2)に由来する第2構造単位と、以下に示す単量体(a3)に由来する第3構造単位と、以下に示す内部架橋剤(a4)に由来する第4構造単位と、を有する。 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)、内部架橋剤(a4)のいずれにも該当しないその他の単量体(a5)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
[第1構造単位]
 本実施形態のバインダー用重合体(P)における第1構造単位は、単量体(a1)に由来する。
 単量体(a1)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ有するノニオン性(アニオン性官能基及びカチオン性官能基のいずれも有さない)化合物である。単量体(a1)は、1種類の化合物のみであってもよく、2種類以上の化合物を含んでいてもよい。
 単量体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステル、及びエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物のうち少なくともいずれかであることが好ましく、両方を含むことがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましい。
 単量体(a1)は、ヒドロキシ基及びシアノ基のいずれも有さないことが好ましく、極性官能基を有さないことがより好ましい。
 単量体(a1)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物を含む場合、単量体(a1)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族化合物の合計含有率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
 単量体(a1)に用いられる(メタ)アクリル酸エステルに含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、耐電解液性に優れる電極活物質層を形成できるバインダー用重合体(P)となるため、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましい。
 単量体(a1)に用いられるエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物としては、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられる。単量体(a1)が芳香族ビニル化合物を含む場合、スチレン、α-メチルスチレンの少なくともいずれかを含むことがより好ましく、水性媒体への分散性に優れるバインダー用重合体(P)となるため、スチレンを含むことがさらに好ましい。
 (メタ)アクリル酸エステル、及びエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物のうち少なくともいずれか以外の単量体(a1)としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する脂肪族炭化水素化合物、エチレン性不飽和結合を有する脂環式炭化水素化合物等が挙げられる。
 単量体(a1)の組成については、バインダー用重合体(P)のガラス転移点を調整するため、あるいは分子設計に応じた重合速度を調整するために、本発明で規定する範囲内で、好ましい化合物及びその量を適宜調整することが好ましい。
[第2構造単位]
 本実施形態のバインダー用重合体(P)における第2構造単位は、単量体(a2)に由来する。
 単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ、およびアニオン性官能基を有する化合物である。単量体(a2)は、1種類の化合物のみであってもよく、2種類以上の化合物を含んでいてもよい。
 単量体(a2)の有するアニオン性官能基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、及びリン酸基等が挙げられる。単量体(a2)は、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成できるバインダー用重合体(P)となるためカルボキシ基、及びスルホ基のうち少なくともいずれかを有する化合物を含むことが好ましく、カルボキシ基を有する化合物と、スルホ基を有する化合物の両方を含むことがより好ましい。
 単量体(a2)は、1分子中に、同種のアニオン性官能基を複数有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、バインダー用重合体(P)は、1つの構造単位中に同種のアニオン性官能基を複数含んでもよい。単量体(a2)は、1分子中に、2種類以上の異なるアニオン性官能基を有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、バインダー用重合体(P)は、1つの構造単位中に2種類以上の異なるアニオン性官能基を含んでもよい。また、単量体(a2)は、異なるアニオン性官能基を含む2種類以上の化合物を含んでいてもよい。すなわち、バインダー用重合体(P)は、異なるアニオン性官能基を含む2種類以上の構造単位を含んでもよい。
 単量体(a2)としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、単量体(a2)は、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成できるバインダー用重合体(P)となるため、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
 単量体(a2)に由来する構造単位の少なくとも一部は、塩基性物質との塩を形成していてもよい。塩を形成している単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、パラスチレンスルホン酸ナトリウム(p-スチレンスルホン酸ナトリウムともいう)等が挙げられる。
 単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合を有するスルホン酸及びその塩のうち少なくともいずれかを含むことが好ましく、エチレン性不飽和結合を有するスルホン酸塩を含むことがより好ましい。スルホン酸としては、スルホ基を有する芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、パラスチレンスルホン酸を含むことがより好ましい。スルホン酸塩としては、スルホ基を有する芳香族ビニル化合物の塩を含むことが好ましく、パラスチレンスルホン酸塩を含むことがより好ましく、バインダー用重合体(P)を製造する際に良好な重合安定性が得られるため、パラスチレンスルホン酸ナトリウムを含むことがさらに好ましい。
[第3構造単位]
 本実施形態のバインダー用重合体(P)における第3構造単位は、下記一般式(1)で表される構造単位である。第3構造単位は、1種のみであってもよいし、2種以上含まれていてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005

(式(1)中、Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基である。)
 バインダー用重合体(P)は、一般式(1)で表される第3構造単位を有するため、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるものとなる。このような効果の得られる作用機能は、必ずしも定かではないが、発明者らは、以下に示すことによるものである推定している。
 すなわち、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池電極は、以下のことにより、電極活物質同士、および電極活物質と集電体とが密着するものと推定される。
 バインダー用重合体(P)が、主鎖に一般式(1)で表される第3構造単位の有する環構造(テトラヒドロフラン環)を含むため、バインダー用重合体(P)の電極活物質に対する密着性が良好である。
 その結果、バインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池電極は、電極活物質層が集電体に強固に付着されたものとなる。よって、この非水系二次電池電極を備える非水系二次電池は、優れたサイクル特性を有するものになると推定される。
 このような本実施形態のバインダー用重合体(P)の奏する効果は、特に、バインダー用重合体(P)を、負極に備えられる負極活物質層の材料に適用した際に、より効果的に得られる。
 第3構造単位は、単量体(a3)に由来する。単量体(a3)は、一般式(1)で表され第3構造単位を有する重合体を形成できる化合物であればよく、特に制限されない。 本実施形態において、単量体(a3)に該当する化合物が、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a4)、単量体(a5)から選ばれるいずれか1つ以上の化合物に該当する場合は、単量体(a3)に該当する化合物であるとする。
 単量体(a3)としては、下記一般式(2)で表されるα-アリルオキシメチルアクリレート類を用いることが好ましい。単量体(a3)である一般式(2)で表される化合物は、環化重合させることによって、バインダー用重合体(P)の有する一般式(1)で表される第3構造単位をより簡便に形成できるため、好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006

(式(2)中、Zは、一般式(1)と同様である。)
 式(1)および式(2)中のZは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、アンモニウム基である。すなわち、一般式(2)中のZは、一般式(1)中のZと同様である。
 単量体(a3)としては、1種類の化合物のみを用いてもよいし、例えば、式(2)中のZが異なる2種類以上の化合物を用いてもよい。
 式(2)中のZが炭素数1~30の有機基であるα-アリルオキシメチルアクリレート類は、前記有機基が炭素数1~30の1~6価の有機基であるであることが好ましい。炭素数1~30の1~6価の有機基であるα-アリルオキシメチルアクリレート類は、α-アリルオキシメチルアクリル酸と、炭素数1~30の有機基を有する1~6価のアルコールとの脱水反応、又はα-アリルオキシメチルアクリル酸のエステルと、炭素数1~30の有機基を有する1~6価のアルコールとのエステル交換反応により製造できる。
 式(2)中のZが炭素数1~30の2~6価の有機基である場合、これを環化重合させて得られた一般式(1)で表される第3構造単位は、式(1)中のZの有する炭素数1~30の有機基を介して、1~5個の別の構造単位と結合されているものであってもよい。具体的には、例えば、一般式(1)で表される第3構造単位は、一般式(1)で表される1~5個の別の第3構造単位と、式(1)中のZを共有して結合されているものであってもよい。この場合、バインダー用重合体(P)の有するテトラヒドロフラン環を含む主鎖は、-CO-O-Z´(-O-CO-)n1(式中のZ´は、式(1)中のZであって、炭素数1~30の有機基からなる連結基である。n1は、1~5の整数であって、式(1)中のZを共有する別の第3構造単位の数である。)で表される架橋構造を有する。
 式(2)中のZが金属原子、又は、アンモニウム基であるα-アリルオキシメチルアクリレート類は、α-アリルオキシメチルアクリル酸と、金属水酸化物またはアンモニウム化合物との中和反応により製造できる。
 式(2)中のZが金属原子、又は、アンモニウム基であるα-アリルオキシメチルアクリレート類は、目的物であるα-アリルオキシメチルアクリレート類に対応する構造を有するα-アリルオキシメチルアクリル酸エステルの加水分解反応により製造してもよい。
 式(1)および式(2)中のZが、炭素数1~30の有機基である場合、炭素数1~30の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~30の1~6価の炭化水素基であることがより好ましい。前記炭素数1~30の炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれの構造を有する炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい。炭素数1~30の炭化水素基が有してもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。バインダー用重合体(P)を製造する際に良好な重合安定性が得られるため、Zが炭素数1~30の炭化水素基である場合の炭化水素基は、置換基を有さなくてもよい。
 式(1)および式(2)中におけるZに該当する、炭素数1~30の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基;
 メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、3-メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシエトキシエチル基等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアルコキシ基で置き換えたアルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基;
 ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をヒドロキシ基で置き換えたヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基;
 ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアミノ基で置き換えたアミノ置換鎖状飽和炭化水素基;
 アセトアミドエチル基、N-メチルアセトアミドエチル基、プロピオアミドエチル基、ピロリドニルエチル基等の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部をアミド基で置き換えたアミド置換鎖状飽和炭化水素基;
 シクロヘキシル基、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基で置き換えた脂環式炭化水素基;
 テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロフルフリルオキシエチル基、テトラヒドロフルフリルオキシエトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキサニル基等の脂環式炭化水素基の炭素原子を酸素原子で置き換えた環状エーテル構造を有する環状エーテル構造含有基;
 フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、及びその水素原子の一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基で置き換えた芳香族炭化水素基;
 これらの炭化水素基を2つ以上組み合わせたもの等が挙げられる。なお、本実施形態において、鎖状構造には、直鎖状構造だけでなく、分岐鎖を有する構造も含まれる。
 式(1)および式(2)中におけるZは、バインダー用重合体(P)を製造する際により一層良好な重合安定性が得られ、上述した本実施形態のバインダー用重合体(P)の奏する効果がより顕著となるため、直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基であることが好ましい。その中でも特に、Zの分子量が大きくなりすぎることがなく、バインダー用重合体(P)中における第3構造単位の含有量が少なくても、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成できる効果が十分に得られるため、炭素数1~6の直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基であることが好ましく、メチル基、n-プロピル基、及びn-へキシル基からなる群から選択される1つであることがより好ましい。
 式(2)中のZが水素原子、又は、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であるα-アリルオキシメチルアクリレート類としては、例えば、α-アリルオキシメチルアクリル酸、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(一般式(2)におけるZがメチル基である化合物)、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル(一般式(2)におけるZがn-プロピル基である化合物)、α-アリルオキシメチルアクリル酸i-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸s-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸t-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル(一般式(2)におけるZがn-へキシル基である化合物)、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸3-メトキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシプロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルアミノエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ジエチルアミノエチル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸アセトアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸N-メチルアセトアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸プロピオアミドエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ピロリドニルエチル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルオキシエトキシエチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸(5-メチル-5-m-ジオキサニル)メチル;
 α-アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル等が挙げられる。
 これらの式(2)で表されるα-アリルオキシメチルアクリレート類の中でも、バインダー用重合体(P)を製造する際に良好な重合安定性が得られるため、式(2)中のZが置換基を有していてもよい1価の炭化水素基であることが好ましく、具体的には、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、及びα-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシルの少なくともいずれかであることが好ましく、式(2)中のZがメチル基であるα-アリルオキシメチルアクリル酸メチルがより好ましい。
[第4構造単位]
 本実施形態のバインダー用重合体(P)における第4構造単位は、内部架橋剤(a4)に由来する。
 本実施形態において、内部架橋剤(a4)は、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物である。本実施形態において、内部架橋剤(a3)は、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)を含む単量体のラジカル重合において、架橋構造を形成可能な化合物である。内部架橋剤(a4)としては、一種の化合物のみを用いてもよいし、異なる二種類以上の化合物を用いてもよい。
 内部架橋剤(a4)としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート等の2つのエチレン性不飽和結合を有する化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤(a4)は、バインダー用重合体(P)を製造する際に良好な重合安定性が得られるため、ジビニルベンゼン及び、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。
[その他の単量体(a5)]
 その他の単量体(a5)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)、内部架橋剤(a4)のいずれにも該当しない。その他の単量体(a5)としては、エチレン性不飽和結合及び極性官能基を有する化合物、エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤(以下、「重合性界面活性剤」ということがある。)、エチレン性不飽和結合を有しシランカップリング剤としての機能を有する化合物等が挙げられるがこれらに限られない。
 エチレン性不飽和結合及び極性官能基を有する化合物における極性官能基としては、ヒドロキシ基及びシアノ基のうち少なくともいずれかを含むことが好ましく、ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
 エチレン性不飽和結合及び極性官能基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを含むことが好ましい。
 その他の単量体(a5)の一例である重合性界面活性剤としては、エチレン性不飽和結合を有し、かつ界面活性剤としての機能を有する化合物を用いることができる。
 重合性界面活性剤としては、例えば、以下の化学式(3)~(6)で表される化合物等が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 式(3)中、Rはアルキル基である。pは10~40の整数である。Rは炭素数10~40のアルキル基であることが好ましく、炭素数10~40の直鎖無置換アルキル基であることがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 式(4)中、Rはアルキル基である。qは10~12の整数である。Rは炭素数10~40のアルキル基であることが好ましく、炭素数10~40の直鎖無置換アルキル基であることがより好ましい。式(4)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-10)などが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 式(5)中、Rはアルキル基である。MはNHまたはNaである。Rは炭素数10~40のアルキル基であることが好ましく、炭素数10~40の直鎖無置換アルキル基であることがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 式(6)中、Rはアルキル基である。MはNHまたはNaである。Rは炭素数10~40のアルキル基であることが好ましく、炭素数10~40の直鎖無置換アルキル基であることがより好ましい。
 その他の単量体(a5)の一例であるエチレン性不飽和結合を有し、シランカップリング剤としての機能を有する化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
〔バインダー用重合体(P)中における各構造単位の含有量〕
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、第1構造単位及び第2構造単位を合計で80質量%以上含むことが好ましく、85質量%以上含むことがより好ましく、87質量%以上含むことがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)に含まれる第1構造単位及び第2構造単位の含有率を高めることにより、バインダー用重合体(P)を製造する際により良好な重合安定性が得られるとともに、集電体から電極活物質層がより一層剥離しにくい電極を形成できるためである。バインダー用重合体(P)は、第1構造単位及び第2構造単位を合計で90質量%以上含んでもよく、95質量%以上含んでもよい。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、単量体(a2)に由来する第2構造単位の含有量が、1.0質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、3.0質量部以上であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)を製造する際により良好な重合安定性が得られるとともに、集電体から電極活物質層がより一層剥離しにくい電極を形成できるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、単量体(a2)に由来する第2構造単位の含有量が、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、7.5質量部以下であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)を製造する際により良好な重合安定性が得られるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、単量体(a3)に由来する第3構造単位の含有量が、0.050質量部以上であることが好ましく、0.100質量部以上であることがより好ましく、0.150質量部以上であることがさらに好ましい。集電体から電極活物質層がより剥離しにくい電極を形成でき、よりサイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるバインダーの材料として使用できるバインダー用重合体(P)となるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、単量体(a3)に由来する第3構造単位の含有量が、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。分子量の十分に高いバインダー用重合体(P)が得られやすくなり、これを含む非水系二次電池用バインダー組成物のゲル分率が十分に高いものとなるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、内部架橋剤(a4)に由来する第4構造単位の含有量が、0.050質量部以上であることが好ましく、0.075質量部以上であることがより好ましく、0.50質量部以上であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)の劣化を抑制し、よりサイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるバインダーの材料として使用できるバインダー用重合体(P)となるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)は、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、内部架橋剤(a4)に由来する第4構造単位の含有量が、20質量部以下であることが好ましく、7.5質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)のゲル化を抑制できるためである。
 本実施形態のバインダー用重合体(P)がその他の単量体(a5)に由来する第5構造単位を含み、その他の単量体(a5)が重合性界面活性剤である場合、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、その他の単量体(a5)に由来する第5構造単位の含有量は、0.05質量部以上であることが好ましく、0.075質量部以上であることがより好ましい。それは、バインダー用重合体(P)を製造する際に良好な重合安定性が得られるためである。
 また、その他の単量体(a5)が重合性界面活性剤である場合、単量体(a1)に由来する第1構造単位100質量部に対する、その他の単量体(a5)に由来する第5構造単位の含有量は、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。それは、バインダー用重合体(P)の粒子径、粘度などを適切に調整できるためである。
〔バインダー用重合体(P)のガラス転移点Tg〕
 本実施形態のバインダー用重合体(P)におけるガラス転移点Tgは、示差走査熱量(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置(日立ハイテクサイエンス社製 EXSTAR DSC/SS7020)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素ガス雰囲気下でDSC測定を行い、DSCの温度微分として得られるDDSCチャートのピークトップ温度である。
 バインダー用重合体(P)のガラス転移点Tgは、-30℃以上であることが好ましく、-10℃以上であることがより好ましく、0℃以上であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池用バインダーを含む電極を備える非水系二次電池が、優れたサイクル特性を有するものとなるためである。
 バインダー用重合体(P)のガラス転移点Tgは、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)の成膜性が向上し、バインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池用バインダーを含む電極を備える非水系二次電池が、優れたサイクル特性を有するものとなるためである。
〔バインダー用重合体(P)の製造方法〕
 バインダー用重合体(P)は、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)、内部架橋剤(a4)を含み、必要に応じて他の単量体(a5)を含む単量体を共重合することにより得られる。バインダー用重合体(P)を合成するために用いられる単量体((a1)~(a5)の成分)を、総称して単量体(a)と呼ぶことがある。
 単量体(a)を共重合する方法としては、例えば、水性媒体(b)中で単量体(a)を乳化重合する乳化重合方法が挙げられる。乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する場合、単量体(a)と水性媒体(b)の他に、重合性を有さない界面活性剤(c)、塩基性物質(d)、ラジカル重合開始剤(e)、連鎖移動剤(f)等の成分を用いることができる。
〔水性媒体(b)〕
 水性媒体(b)は、水、親水性の溶媒、及び水と親水性の溶媒とを含む混合物からなる群から選択される1つである。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びN-メチルピロリドン等が挙げられる。水性媒体(b)は、重合安定性の観点から、水であることが好ましい。水性媒体(b)として、重合安定性を損なわない限り、水に親水性の溶媒を添加した混合物を用いてもよい。
〔重合性を有さない界面活性剤(c)〕
 乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する場合、水性媒体(b)と単量体(a)とを含む溶液中に、重合性を有さない界面活性剤(c)を含有させて乳化重合してもよい。重合性を有さない界面活性剤(c)とは、すなわち化学構造中に重合性不飽和結合を有さない界面活性剤(c)である。界面活性剤(c)は、乳化重合中の溶液及び/または重合後に得られる分散液(エマルジョン)の分散安定性を向上させる。界面活性剤(c)としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
 アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩が挙げられる。
 ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
 上記の界面活性剤(c)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
〔塩基性物質(d)〕
 乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する場合、水性媒体(b)および単量体(a)を含む乳化重合させる溶液及び/または乳化重合後の分散液に、塩基性物質(d)を加えてもよい。塩基性物質(d)を加えることにより、単量体(a)に含まれる酸性成分が中和される。その結果、乳化重合中の溶液及び/または乳化重合後の分散液のpHが適正な範囲となり、乳化重合中の溶液及び/または乳化重合後の分散液の安定性が良好となる。
 乳化重合後の分散液は、バインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池用バインダーと、電極活物質とを含むスラリーを用いて電極を製造する場合、23℃でのpHが、1.5~10であることが好ましく、5.0~9.0であることがより好ましく、6.0~9.0であることがさらに好ましい。非水系二次電池用バインダーと、電極活物質とを含むスラリー中で、電極活物質が沈降することを抑制できるためである。
 乳化重合させる溶液及び/または乳化重合後の分散液に添加する塩基性物質(d)としては、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。これらの塩基性物質(d)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
〔ラジカル重合開始剤(e)〕
 乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する際に用いられるラジカル重合開始剤(e)としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。ラジカル重合開始剤(e)としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;アゾ化合物;tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。ラジカル重合開始剤(e)としては、過硫酸塩及び有機過酸化物を用いることが好ましい。
 本実施形態において、乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する際には、ラジカル重合開始剤(e)とともに、重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合してもよい。
 ラジカル重合開始剤(e)の添加量(還元剤を併用する場合には、還元剤を含む)は、単量体(a)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましい。乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する際に、単量体(a)のバインダー用重合体(P)への転化率を高くできるためである。ラジカル重合開始剤(e)の添加量は、単量体(a)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。バインダー用重合体(P)の分子量を高くすることができ、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池電極の電解液に対する膨潤率を下げることができるためである。
〔連鎖移動剤(f)〕
 乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造する際に用いられる連鎖移動剤(f)は、乳化重合によって得られるバインダー用重合体(P)の分子量を調整するために用いられる。連鎖移動剤(f)としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
〔乳化重合法〕
 バインダー用重合体(P)を製造する際に用いられる乳化重合法としては、例えば、乳化重合に使用する各成分を反応容器内に連続供給しながら乳化重合する方法等が挙げられる。乳化重合の温度は、特に限定はされないが、例えば、30~90℃であり、50~85℃であることが好ましく、55~80℃であることがさらに好ましい。乳化重合は攪拌しながら行うことが好ましい。また、乳化重合中の溶液中における単量体(a)及びラジカル重合開始剤(e)の濃度が均一となるように、単量体(a)及びラジカル重合開始剤(e)を乳化重合中の溶液に連続供給することが好ましい。
<2.非水系二次電池用バインダー>
 本実施形態の非水系二次電池用バインダーは、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む。非水系二次電池用電極バインダーは、バインダー用重合体(P)とともに、その他の成分を含んでいてもよい。具体的には、非水系二次電池用電極バインダーは、例えば、バインダー用重合体(P)以外の重合体、界面活性剤等を含んでいてもよい。
 非水系二次電池用バインダーは、後述する非水系二次電池の製造方法において、加熱を伴う工程を行っても揮発せずに残る成分からなる。具体的には、非水系二次電池用バインダーを構成する成分は、バインダー用重合体(P)を含む非水系二次電池用バインダー組成物を1g秤量し、直径5cmのアルミニウム皿上に載置して乾燥器内に入れ、乾燥機内の空気を循環させながら、1気圧(1013hPa)、温度105℃で1時間乾燥させた後に残る成分である。
 非水系二次電池用バインダーに含まれるバインダー用重合体(P)の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。バインダー用重合体(P)を含むことによる効果が顕著となるためである。
<3.非水系二次電池用バインダー組成物>
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物は、本実施形態のバインダー用重合体(P)、及び水性媒体(B)を含む。本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物は、バインダー用重合体(P)が水性媒体(B)中に分散しているものであることが好ましい。非水系二次電池用バインダー組成物は、バインダー用重合体(P)および水性媒体(B)とともに、その他の成分を含んでいてもよい。具体的には、非水系二次電池用バインダー組成物は、例えば、バインダー用重合体(P)の合成に用いた上記の成分等を含んでいてもよい。
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物は、乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造することによって得られた分散液であってもよい。また、本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物は、乳化重合法以外の方法によって得られたバインダー用重合体(P)を水性媒体(B)中に分散させることにより得られた分散液であってもよい。この場合、バインダー用重合体(P)を水性媒体(B)中に分散させる方法としては、公知の方法を用いることができる。
〔水性媒体(B)〕
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物における水性媒体(B)は、水、親水性の溶媒、またはこれらの混合物である。親水性の溶媒としては、バインダー用重合体(P)の合成に用いる水性媒体(b)として例示した親水性の溶媒と同じものが挙げられる。水性媒体(B)は、バインダー用重合体(P)の合成に用いた水性媒体(b)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
 非水系二次電池用バインダー組成物が、乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造することによって得られた分散液である場合、水性媒体(B)は、バインダー用重合体(P)の合成に用いた水性媒体(b)であってもよい。また、水性媒体(B)は、バインダー用重合体(P)の合成に用いた水性媒体(b)に、新たな水性媒体を添加したものであってもよい。また、水性媒体(B)は、乳化重合法によってバインダー用重合体(P)を製造することによって得られた分散液に含まれる水性媒体(b)の一部または全部を、新たな水性溶媒に置き換えたものであってもよい。この場合に使用する新たな水性媒体は、バインダー用重合体(P)の合成に用いた水性媒体(b)と同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
〔非水系二次電池用バインダー組成物の不揮発分濃度〕
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物の不揮発分濃度は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。非水系二次電池用バインダー組成物中に含まれる有効成分の量を多くするためである。非水系二次電池用バインダー組成物の不揮発分濃度は、非水系二次電池用バインダー組成物に含まれる水性媒体(B)の含有量によって調整できる。
 非水系二次電池用バインダー組成物の不揮発分濃度は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。非水系二次電池用バインダー組成物の粘度の上昇が抑制されて、非水系二次電池電極用スラリーが作製しやすくなるためである。
〔ゲル分率〕
 本実施形態の非水系二次電池用バインダー組成物は、後述する方法により測定したゲル分率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。耐溶剤性に優れる非水系二次電池電極を形成できる非水系二次電池用バインダー組成物となるためである。
<4.非水系二次電池電極用スラリー>
 次に、本実施形態の非水系二次電池電極用スラリーについて詳述する。非水系二次電池電極用スラリーは、本実施形態のバインダー用重合体(P)と、電極活物質と、水性媒体と、を含む。非水系二次電池電極用スラリーに含まれるバインダー用重合体(P)と電極活物質は、水性媒体中に分散していることが好ましい。非水系二次電池電極用スラリーは、バインダー用重合体(P)と、電極活物質と、水性媒体の他に、増粘剤、導電助剤、バインダー用重合体(P)の合成に用いた上記の成分等を含んでいてもよい。
〔バインダー用重合体(P)の含有量〕
 非水系二次電池電極用スラリーに含まれるバインダー用重合体(P)の含有量は、電極活物質100質量部に対して、0.50質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましい。バインダー用重合体(P)を含むことによる効果を十分に発現させるためである。
 非水系二次電池電極用スラリーに含まれるバインダー用重合体(P)の含有量は、電極活物質100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましい。非水系二次電池電極用スラリーに含まれる電極活物質の含有量を多くできるためである。
〔電極活物質〕
 非水系二次電池電極用スラリーに含まれる電極活物質は、リチウムイオン等の電荷キャリアとなるイオンを、挿入(Intercaration)/脱離(Deintercalation)可能な材料である。電荷キャリアとなるイオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンであることがより好ましく、リチウムイオンであることがさらに好ましい。
 非水系二次電池電極用スラリーを用いて製造する非水系二次電池電極が負極である場合、電極活物質は負極活物質である。負極活物質としては、炭素材料、ケイ素を含む材料、チタンを含む材料のうち、少なくともいずれかを含むことが好ましい。負極活物質として用いられる炭素材料としては、例えば、石油コークス、ピッチコークス、石炭コークス等のコークス、有機高分子の炭素化物、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛が挙げられる。負極活物質として用いられるケイ素を含む材料としては、例えば、ケイ素単体、酸化ケイ素等のケイ素化合物が挙げられる。負極活物質として用いられるチタンを含む材料としては、例えば、チタン酸リチウム等が挙げられる。これらの負極活物質として用いられる材料は、単独で使用してもよいし、混合あるいは複合化して使用してもよい。
 負極活物質は、炭素材料、ケイ素を含む材料のうち、少なくともいずれかを含むことが好ましく、炭素材料を含むことがより好ましい。非水系二次電池電極用スラリーに含まれるバインダー用重合体(P)による負極活物質間、及び負極活物質と集電体との間の結着性を向上させる効果が大きいものとなるためである。
 非水系二次電池電極用スラリーを用いて製造する非水系二次電池電極が正極である場合、電極活物質は正極活物質である。正極活物質としては、負極活物質よりも標準電極電位が貴な物質を用いる。具体的には、正極活物質として、Ni-Co-Mn系のリチウム複合酸化物、Ni-Mn-Al系のリチウム複合酸化物、Ni-Co-Al系のリチウム複合酸化物などのニッケルを含むリチウム複合酸化物、コバルト酸リチウム(LiCoO)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)、オリビン型燐酸鉄リチウム、TiS、MnO、MoO、V等のカルコゲン化合物等が挙げられる。これらの正極活物質として用いられる物質は、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
〔水性媒体〕
 本実施形態の非水系二次電池電極用スラリーに含まれる水性媒体は、水、親水性の溶媒、及び水と親水性の溶媒とを含む混合物からなる群から選択される1つである。親水性の溶媒としては、バインダー用重合体(P)の合成に用いる水性媒体(b)として例示した親水性の溶媒と同じものが挙げられる。非水系二次電池電極用スラリーに含まれる水性媒体は、バインダー用重合体(P)の合成に用いた水性媒体(b)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
〔増粘剤〕
 非水系二次電池電極用スラリーに含まれてもよい増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、セルロース類のアンモニウム塩、セルロース類のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩のうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。非水系二次電池電極用スラリー中の電極活物質が分散しやすくなるためである。
 非水系二次電池電極用スラリーに含まれる増粘剤の含有量は、電極活物質100質量部に対して0.50質量部以上であることが好ましく、0.80質量部以上であることがより好ましい。非水系二次電池電極用スラリーを用いて作製した非水系二次電池電極に含まれる電極活物質間、及び電極活物質と集電体との間の結着性が良好となるためである。 非水系二次電池電極用スラリーに含まれる増粘剤の含有量は、電極活物質100質量部に対して3.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましい。非水系二次電池電極用スラリーの塗工性が良好となるためである。
〔導電助剤〕
 本実施形態の非水系二次電池電極用スラリーに含まれてもよい導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、デンカブラック(登録商標)(デンカ株式会社製)、ケッチェンブラック(登録商標)(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)等が挙げられる。炭素繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。カーボンナノチューブとしては、気相法炭素繊維であるVGCF(登録商標、昭和電工株式会社製)が好ましい例として挙げられる。
〔非水系二次電池電極用スラリーの製造方法〕
 本実施形態の非水系二次電池電極用スラリーを製造する方法としては、例えば、本実施形態のバインダー用重合体(P)と、電極活物質と、水性媒体と、必要に応じて含有される増粘剤と、必要に応じて含有される導電助剤と、必要に応じて含有されるその他の成分とを混合する。非水系二次電池電極用スラリーの原料である各成分の混合順序は、特に限定されるものではなく、適宜決定できる。各成分を混合する方法としては、攪拌式、回転式、振とう式等の混合装置を使用する方法が挙げられる。
<5.非水系二次電池電極>
 次に、本実施形態の非水系二次電池電極(以下、「電極」ということがある。)について詳述する。本実施形態の電極は、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む。本実施形態の電極は、集電体と、集電体上に形成された電極活物質層と、を備える。本実施形態の電極の形状としては、例えば、積層体、捲回体などが挙げられ、特に限定されない。 集電体上における電極活物質層の形成範囲は、特に限定されず、集電体上の全面に電極活物質層が形成されていてもよいし、集電体上の一部の面にのみ電極活物質層が形成されていてもよい。集電体が板、箔等の形状である場合、電極活物質層は、集電体の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形成されていてもよい。
〔集電体〕
 集電体は、厚さ0.001mm以上0.5mm以下の金属シートであることが好ましい。金属シートを形成している金属としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等が挙げられる。本実施形態の電極が、リチウムイオン二次電池の負極である場合、集電体は、銅箔であることが好ましい。
〔電極活物質層〕
 電極活物質層は、本実施形態のバインダー用重合体(P)及び電極活物質を含む。電極活物質層は、導電助剤、増粘剤等を含んでいてもよい。電極活物質、導電助剤、増粘剤は、いずれも、非水系二次電池電極用スラリーの成分として例示したものと同じものを使用できる。
〔非水系二次電池電極の製造方法〕
 本実施形態の電極は、例えば、以下に示す方法により製造できる。まず、集電体上に、本実施形態の非水系二次電池電極用スラリーを塗布する。続いて、非水系二次電池電極用スラリーを乾燥させる。このことにより、集電体上にバインダー用重合体(P)を含む電極活物質層を形成し、電極シートとする。その後、必要に応じて、電極シートを適当な大きさに切断する。以上の工程を行うことにより、本実施形態の電極が得られる。
 非水系二次電池電極用スラリーを集電体上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法、スクイーズ法等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、非水系二次電池電極用スラリーの粘性等の諸物性及び乾燥性を考慮すると、ドクターブレード法、ナイフ法、またはエクストルージョン法から選ばれるいずれかの方法を用いることが好ましい。表面が滑らかで、厚さのばらつきが小さい電極活物質層が得られるためである。
 非水系二次電池電極用スラリーを集電体の両面に塗布する場合、片面ずつ逐次塗布してもよいし、両面同時に塗布してもよい。また、非水系二次電池電極用スラリーは、集電体上に連続的に塗布してもよいし、間欠的に塗布してもよい。
 非水系二次電池電極用スラリーの塗布量は、電池の設計容量、及び非水系二次電池電極用スラリーの組成などに応じて適宜決定できる。
 集電体上に塗布した非水系二次電池電極用スラリーを乾燥させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風、減圧あるいは真空環境、(遠)赤外線、低温風から選ばれる方法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。
 非水系二次電池電極用スラリーを乾燥させる際の乾燥温度及び乾燥時間は、非水系二次電池電極用スラリー中の不揮発分濃度、集電体への塗布量等によって適宜調整できる。乾燥温度は、40℃以上350℃以下であることが好ましく、生産性の観点から、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。乾燥時間は、1分以上30分以下であることが好ましい。
 集電体上に電極活物質層が形成された電極シートは、電極として適当な大きさ及び形状にするために切断されてもよい。電極シートの切断方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スリット、レーザー、ワイヤーカット、カッター、トムソン等を用いることができる。
 本実施形態においては、電極シートを切断する前または後に、必要に応じて電極シートをプレスしてもよい。それにより、電極活物質を集電体により強固に結着させることができるとともに、電極の厚みが薄くなることにより非水系二次電池を小型化できる。
 電極シートのプレス方法としては、一般的な方法を用いることができる。プレス方法としては、特に、金型プレス法またはロールプレス法を用いることが好ましい。
 金型プレス法を用いる場合、プレス圧は、特に限定されないが、0.5t/cm以上5t/cm以下とすることが好ましい。
 ロールプレス法を用いる場合、プレス荷重は、特に限定されないが、0.5t/cm以上8t/cm以下とすることが好ましい。プレスによる上記効果を得つつ、電極活物質へのリチウムイオン等の電荷キャリアの挿入及び脱離容量の低下を抑制できるためである。
〔剥離強度〕
 本実施形態の非水系二次電池電極は、後述する方法により測定した集電体に対する電極活物質層の剥離強度が、10.0mN/mm以上であることが好ましく、12.5mN/mm以上であることがより好ましく、15.0mN/mm以上であることがさらに好ましい。非水系二次電池電極を用いた非水系二次電池のサイクル特性および耐久性がより良好なものとなるためである。
<6.非水系二次電池>
 次に、本実施形態にかかる非水系二次電池の好ましい一例として、リチウムイオン二次電池について説明する。なお、本発明の非水系二次電池の構成は、以下に示す例に限定されるものではない。
 本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、必要に応じて備えられるセパレータ等の公知の部品とが、外装体に収容されたものである。
 リチウムイオン二次電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等、いずれの形状であってもよい。
〔正極・負極〕
 本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極のうちの一方または両方が、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む本実施形態の電極活物質層を備える。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極及び負極のうち、少なくとも負極が、バインダー用重合体(P)を含む電極活物質層を備えることが好ましい。
 本実施形態のリチウムイオン二次電池が、正極及び負極のうち一方の電極のみが本実施形態のバインダー用重合体(P)を含む電極活物質層を備えるものである場合、本実施形態のバインダー用重合体(P)を含まない電極として、本実施形態のバインダー用重合体(P)に代えて、ポリフッ化ビニリデンなど公知のバインダーを含むものを用いる。
〔電解液〕
 電解液としては、イオン伝導性を有する非水系の液体を使用する。電解液としては、電解質を有機溶媒に溶解させた溶液、イオン液体等が挙げられ、前者が好ましい。製造コストが低く、内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池が得られるためである。
 電解質としては、アルカリ金属塩を用いることができ、電極活物質の種類等に応じて適宜選択できる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、脂肪族カルボン酸リチウム等が挙げられる。また、電解質として、その他のアルカリ金属塩を用いることもできる。
 電解質を溶解する有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)等の炭酸エステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルなどのカルボン酸エステルが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、有機溶媒として、直鎖カーボネート系溶媒を組合せたものを用いることが好ましい。
〔外装体〕
 外装体としては、例えば、アルミニウム箔と樹脂フィルムとからなるアルミラミネート材で形成されたものなどを適宜使用でき、これに限られない。
 以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の内容の理解をより容易にするためのものである。本発明は、これらの実施例のみに制限されるものではない。
 以下の実施例では、本発明の非水系二次電池電極の一例としてリチウムイオン二次電池の負極を作製し、非水系二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池を作製し、比較例にかかるリチウムイオン二次電池の負極、及びリチウムイオン二次電池と比較して、本発明の効果を確認した。
 また、以下の実施例及び比較例で用いられる水は、特に断りがなければ、イオン交換水である。
<1.バインダー重合体の製造>
 冷却管、温度計、攪拌機、滴下ロートを有するセパラブルフラスコに、水150質量部を入れて、80℃に昇温した。このセパラブルフラスコに、表1~表3に示す単量体(a1)と、単量体(a2)と、単量体(a3)と、内部架橋剤(a4)と、重合性界面活性剤(a5)と、ラジカル重合開始剤(e)とを、表1~表3に示す割合で3時間かけて80℃で攪拌しながら連続供給することにより、乳化重合し、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3のバインダー重合体を含む水系エマルジョンを得た。
 得られた水系エマルジョンを室温まで冷却し、水160質量部と25質量%のアンモニア水とを添加した。このことにより、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の粒子状のバインダー重合体が、水性媒体(b)中に分散している、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の非水系二次電池用バインダー組成物を製造した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 表1~表3に示す塩基性物質(d)としてのアンモニアの量は、アンモニア水に含まれるアンモニアの量(質量部)である。
 表1~表3に示す水性媒体(b)としての水の量は、非水系二次電池用バインダー組成物に含まれる水の全量(質量部)である。
 表1~表3に示す重合性界面活性剤(a5)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬株式会社製、アクアロンKH-10)である。
 重合開始剤(e2)は、tert-ブチルパーオキシベンゾエート(化薬アクゾ株式会社製、カヤブチルB)である。
 重合開始剤(e3)は、tert-ブチルハイドロパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社製、カヤブチルH-70)である。
<2.バインダー重合体、非水系二次電池用バインダー組成物の評価>
 実施例1~実施例10、比較例1~比較例3のバインダー重合体について、それぞれ以下に示す方法により、ガラス転移点Tgを測定した。その結果を表1~表3に示す。
 また、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の非水系二次電池用バインダー組成物について、それぞれ以下に示す方法により、不揮発分濃度およびゲル分率を測定した。その結果を表1~表3に示す。
〔ガラス転移点Tg〕
 非水系二次電池用バインダー組成物を、離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布し、50℃で5時間乾燥させる方法により、バインダー重合体からなる厚み2mmのフィルムを得た。
 得られたフィルムから縦2mm、横2mmの正方形の試験片を切り出した。試験片をアルミパンに密封し、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製 EXSTAR DSC/SS7020)を用いて、窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分で、上記試験片の示差走査熱量(DSC)測定を行った。DSC測定の温度範囲は-40℃~200℃とした。そして、DSCの温度微分として得られるDDSCチャートのピークトップ温度を測定し、この温度をバインダー重合体のガラス転移点Tg(℃)とした。
〔不揮発分濃度〕
 非水系二次電池用バインダー組成物を1g秤量し、直径5cmのアルミニウム皿上に載置し、乾燥器内に入れた。乾燥機内の空気を循環させながら、1気圧(1013hPa)、温度105℃で1時間乾燥させ、残った成分の質量を測定した。乾燥前の非水系二次電池用バインダー組成物の質量(1g)に対する、乾燥後に残った上記成分の質量割合(質量%)を算出し、不揮発分濃度とした。
〔ゲル分率〕
 非水系二次電池用バインダー組成物を、離型PETフィルム上に塗布し、160℃で1時間乾燥させる方法により、バインダー重合体からなる直径5mmのスポットフィルムを得た。得られたスポットフィルム0.1000~0.2000gを秤量(A2)し、予め質量(A1)を測定した300メッシュの金網籠に投入した。
 その後、スポットフィルムが入っている金網籠を、THF(テトラヒドロフラン)20gの入れられたガラス瓶に入れ、金網籠内のスポットフィルムがTHFに浸漬するようにして、20℃で24時間静置した。ガラス瓶からスポットフィルムが入っている金網籠を取り出し、金網籠に付着しているTHFをキムワイプで拭き取った。その後、スポットフィルムが入っている金網顎を乾燥機内に入れ、160℃で10分間乾燥させた。続いて、乾燥機内からスポットフィルムが入っている金網籠を取り出し、23℃で20分間冷却し、質量(A3)を測定した。
 その後、下記式を用いてゲル分率を算出した。式中の(A1)は、300メッシュの金網籠の質量(g)である。(A2)は、金網籠に投入したスポットフィルムの質量(g)である。(A3)は、THFに浸漬させて乾燥させた後のスポットフィルムが入っている金網籠の質量(スポットフィルムと金網籠の合計質量(g))である。
 ゲル分率(%)=100-{A2-(A3-A1)/A2}×100
<3.非水系二次電池の製造>
 実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の非水系二次電池用バインダー組成物をそれぞれ用いて、以下に示す方法により、負極を作製し、それを用いて実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の非水系二次電池であるリチウムイオン二次電池を作製した。
[正極の作製]
 正極活物質としてのLiNi0.6Mn0.2Co0.294質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック3質量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合し、混合物を得た。得られた混合物に、N-メチルピロリドンを50質量部加えてさらに混合し、正極スラリーを得た。
 正極集電体として、厚さ15μmのアルミニウム箔を用意した。正極集電体の両面に、正極スラリーを、ダイレクトロール法により塗布した。正極集電体への正極スラリーの塗布量は、後述するロールプレス処理後の厚さが片面当たり125μmになるように調整した。
 正極集電体上に塗布された正極スラリーを、120℃で5分間乾燥し、ロールプレス(サンクメタル社製、プレス荷重5t/cm、ロール幅7cm)を用いてロールプレス法によりプレスを行うことにより、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極シートを得た。得られた正極シートを縦50mm、横40mmの長方形に切り出し、導電タブをつけて正極とした。
[負極(非水系二次電池電極)の作製]
 負極活物質としての人造黒鉛(G49、江西紫宸科技有限公司製)100質量部と、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3において製造したいずれかの非水系二次電池用バインダー組成物3.9質量部(不揮発分(バインダー重合体)1.5質量部)と、CMC(カルボキシメチルセルロース-ナトリウム塩、日本製紙ケミカル株式会社製、サンローズ(登録商標)MAC500LC)の2質量%水溶液62質量部とを混合し、さらに水28質量部を添加し、自転公転ミキサー(ARE-310、株式会社シンキー製)を用いて混合し、負極スラリー(非水系二次電池電極用スラリー)を得た。
 負極集電体として、厚さ10μmの銅箔を用意した。負極集電体の両面に、負極スラリーを、ダイレクトロール法により塗布した。負極集電体への負極スラリーの塗布量は、後述するロールプレス処理後の厚さが片面当たり170μmになるように調整した。
 負極集電体上に塗布された負極スラリーを、90℃で10分間乾燥させ、ロールプレス(サンクメタル社製、プレス荷重8t/cm、ロール幅7cm)を用いてロールプレス法によりプレスを行うことにより、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極シートを得た。得られた負極シートを縦52mm、横42mmの長方形に切り出し、導電タブをつけて負極とした。
〔負極活物質層の剥離強度〕
 実施例1~実施例10、比較例1~比較例3の負極を得るために製造した負極シートから、それぞれ幅25mm、長さ70mmの試験片を切り出した。得られた試験片について、それぞれ温度23℃、相対湿度50質量%の雰囲気中で、剥離試験機(テンシロン(登録商標)、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、以下に示す方法により、負極活物質層の剥離強度を測定した。その結果を表1~表3に示す。
 試験片の負極活物質層上の全面に、両面テープ(NITTOTAPE(登録商標)No5、日東電工株式会社製)を設置した。そして、試験片の負極活物質層と、幅50mm、長さ200mmの金属板とを、試験片の幅方向中心と金属板の幅方向中心とが一致するように両面テープを介して貼り合わせ、10分間放置した。
 その後、試験片の負極活物質層から負極集電体(銅箔)を、試験片の長さ方向一端から20mm剥がして180°折り返した。そして、負極集電体の試験片から剥がした部分を、剥離試験機の上側チャックで掴んだ。また、金属板の長さ方向端部のうち、負極集電体を剥がした側の端部を、剥離試験機の下側チャックで掴んだ。その状態で、剥離試験機によって、上側チャックと下側チャックとの間を広げる方向に、100±10mm/minの速度で上側チャックを引っ張り、負極活物質層から負極集電体を剥離させた。
 そして、負極活物質層から剥離した負極集電体の長さが10~45mmの範囲内であるときの剥離力の平均値(mN)を算出し、試験片の幅(25mm)で割った数値を負極活物質層の剥離強度(mN/mm)とした。
 負極活物質層の剥離強度を測定する際に、実施例1~実施例10、比較例1~比較例3のいずれの試験片においても、両面テープと金属板との間での剥離、及び両面テープと負極活物質層との間での界面剥離は起こらなかった。
[非水系二次電池の作製]
 正極と負極との間にポリオレフィン系の多孔性フィルムからなるセパレータ(ポリエチレン製、厚み25μm)を介在させて、正極活物質層と負極活物質層とが互いに対向するように積層し、アルミラミネート材からなる外装体(電池パック)の中に収納した。その後、外装体中に電解液を注液し、真空含浸を行い、真空ヒートシーラーでパッキングすることにより、リチウムイオン二次電池を得た。
 電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比でEC:EMC:DEC=30:50:20の割合で含有する混合溶媒に、1.0mol/Lの濃度でLiPFを溶解させた溶液99質量部と、ビニレンカーボネート1質量部とを混合したものを用いた。
<4.非水系二次電池の評価>
 実施例1~実施例10、比較例1~比較例3のリチウムイオン二次電池について、それぞれ以下に示す方法により、内部抵抗および100サイクル後の放電容量維持率を評価した。その結果を表1~表3に示す。
〔内部抵抗(DCR)〕
 25℃の条件下で、以下の手順で、リチウムイオン二次電池の内部抵抗(DCR(Ω))を測定した。すなわち、レストポテンシャルから電圧3.6Vになるまで0.2Cで定電流充電し、充電状態を初期容量の50%(SOC50%)にした。その後、0.2C、0.5C、1Cおよび2Cの各電流値で60秒間放電を行った。これらの4種の電流値(1秒間での値)と電圧の関係からSOC50%での内部抵抗DCR(Ω)を決定した。
[100サイクル後の放電容量維持率]
 45℃の条件下で、以下に示す工程(i)~(iv)の一連の操作1回分を1サイクルとして、充放電を行った。工程(i)及び(ii)における、電流の時間積分値を充電容量とし、工程(iv)における、電流の時間積分値を放電容量とした。そして、1サイクル目の放電容量、及び100サイクル目の放電容量を測定し、下記の式により、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。
 放電容量維持率(%)=100×(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)
(i)電圧4.2Vになるまで、電流1Cで充電する(定電流(CC)充電)。
(ii)電圧4.2Vで、電流0.05Cになるまで充電する(定電圧(CV)充電)。(iii)30分静置する。
(iv)電圧2.75Vになるまで電流1Cで放電する(定電流(CC)放電)。
<5.評価結果>
 表1~表3に示すように、実施例1~実施例10のリチウムイオン二次電池は、比較例1~比較例3のリチウムイオン二次電池と比較して、いずれも容量維持率が高いことが確認できた。しかも、実施例1~実施例10のリチウムイオン二次電池は、いずれも負極活物質層の剥離強度が十分に高いものであった。これは、実施例1~実施例10のリチウムイオン二次電池の負極に含まれるバインダー重合体が、表1または表2に示す単量体(a1)と、単量体(a2)と、単量体(a3)と、内部架橋剤(a4)とを乳化重合してなる共重合体であることによるものと推定される。
 また、表1~表3に示すように、実施例1~実施例10及び比較例1~比較例3のリチウムイオン二次電池は、内部抵抗の観点では実用上十分に低い値であることが確認できた。
 本発明によれば、集電体から電極活物質層が剥離しにくい電極を形成でき、サイクル特性に優れる非水系二次電池が得られるバインダーを提供できる。

Claims (12)

  1.  単量体(a1)に由来する第1構造単位と、
     単量体(a2)に由来する第2構造単位と、
     第3構造単位と、
     内部架橋剤(a4)に由来する第4構造単位と、を有し、
     前記単量体(a1)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ有するノニオン性化合物であり、
     前記単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合を1個のみ、およびアニオン性官能基を有する化合物であり、
     前記内部架橋剤(a4)は、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、
     前記第3構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である、ことを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001


    (式(1)中、Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基である。)
  2.  前記式(1)中のZが、直鎖又は分岐状の鎖状飽和炭化水素基である、請求項1に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
  3.  前記式(1)中のZが、メチル基、n-プロピル基、及びn-へキシル基からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1または請求項2に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
  4.  前記アニオン性官能基は、カルボキシ基、及びスルホ基のうち少なくともいずれかである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
  5.  前記第1構造単位及び前記第2構造単位を合計で80質量%以上含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
  6.  前記第1構造単位100質量部に対する、前記第3構造単位の含有量は、0.050質量部以上である、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体。
  7.  請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体と、水性媒体と、を含む、非水系二次電池用バインダー組成物。
  8.  請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体を含む、非水系二次電池用バインダー。
  9.  請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体と、電極活物質と、水性媒体と、を含み、
     該水性媒体は、水、親水性の溶媒、及び水と親水性の溶媒とを含む混合物からなる群から選択される1つである、非水系二次電池電極用スラリー。
  10.  請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用バインダー重合体を含む、非水系二次電池電極。
  11.  請求項10に記載の非水系二次電池電極を備える、非水系二次電池。
  12.  単量体(a1)と、単量体(a2)、単量体(a3)、内部架橋剤(a4)とを、共重合することを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体の製造方法であって、
     前記単量体(a1)は、エチレン性不飽和結合を有し、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有しないノニオン性化合物であり、
     前記単量体(a2)は、エチレン性不飽和結合およびアニオン性官能基を有し、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有しない化合物であり、
     前記単量体(a3)が、下記一般式(2)で表される化合物であり、
     前記内部架橋剤(a4)が、独立した複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物である、ことを特徴とする非水系二次電池用バインダー重合体の製造方法。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002

    (式(2)中、Zは、水素原子、炭素数1~30の有機基、金属原子、又はアンモニウム基である。)
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