JP2011132541A - 接着剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱性、耐湿性の優れた接着剤組成物を提供する。本発明の接着剤組成物は熱膨張率や湿度膨張率が低いことにより高温高湿条件下で長時間使用されても特性の変化が少なく、高い信頼性が要求される用途に使用することができる。
【解決手段】 エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、無機フィラー、潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物であって、前記アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の配合量が、エポキシ樹脂の合計重量の0.01重量%以上20重量%以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、無機フィラー、潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物であって、前記アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の配合量が、エポキシ樹脂の合計重量の0.01重量%以上20重量%以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電子材料用途に適した接着剤組成物に関するものであり、具体的には、異方導電性接着剤、電子部品や半導体チップの封止剤、アンダーフィル樹脂硬化物等として使用することができる接着剤組成物に関するものである。
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の接着剤が使用されている。例えばICチップとフレキシブルプリント配線板(FPC)、ICチップとITO(Indium−Tin−Oxide)電極回路が形成されたガラス基板等の接合に、回路接続用の接着剤として異方導電性接着剤が使用されている。
異方導電性接着剤は絶縁性の接着剤組成物中に導電性粒子を分散させたフィルム状またはペースト状の接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて接続対象を接着する。すなわち、加熱、加圧により異方導電性接着剤中の接着剤組成物が流動し、それぞれの接続対象上の相対峙する電極間の間隙を封止すると同時に導電性粒子の一部が対峙する電極間に噛み込まれて電気的接続が達成される。異方導電性接着剤においては、厚み方向に相対峙する電極間の抵抗(導通抵抗)を低くするという導通性能と、面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。
このような異方導電性接着剤を構成する絶縁性の接着剤組成物としては、主にエポキシ系の熱硬化性樹脂組成物が用いられている。例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と硬化剤を組み合わせたものが広く使用されている。
また異方導電性接着剤は液晶表示装置(LCD)等の精密機器周辺の接続に使用されるため高い信頼性が要求されている。そこで導通/絶縁性能に加え、耐環境性が求められており、たとえば高温高湿試験やヒートサイクル試験等によりその性能を評価している。ここで異方導電性接着剤に使用されるエポキシ樹脂系の接着剤組成物は分子内に水酸基を含むため吸水性が高く、高温高湿試験で接続不良を生じる場合がある等、耐湿性に課題がある。また接着剤組成物は基板材料に比べると熱膨張率が高いため、ヒートサイクル試験下では基板と接着剤との熱膨張率の差に基づくストレスが接続部に生じ、接続部での接続抵抗が増大する場合がある。
そこで、熱膨張率の低減及び耐湿性向上のため、接着剤組成物中に無機フィラーを添加する方法が提案されている。特許文献1には、接着剤樹脂組成物100重量部に無機質充填剤を5〜200重量部含有することを特徴とする回路部材接続用接着剤が開示されている。また特許文献2には、エポキシ樹脂、潜在性硬化剤、無機フィラー及びポリエーテルスルホンからなり、該エポキシ樹脂と該潜在性硬化剤と該ポリエーテルスルホンの合計量100部あたり、該無機フィラーの含有量が5〜900重量部であるエポキシ樹脂系シート状接着剤組成物が開示されている。
一方、エポキシ樹脂の耐熱性を向上するために、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤を含有することを特徴とするシラン変性エポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、アルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られる樹脂であり、硬化剤と開環・架橋反応するエポキシ硬化部位と、加水分解・縮合反応するゾル−ゲル硬化部位を有している。これをエポキシ樹脂用硬化剤と混合して反応させることで、エポキシ−シリカハイブリッド硬化物が得られる。
接着剤組成物中に無機フィラーを添加する方法では、接着剤組成物中の樹脂成分と無機フィラーの界面での密着性が不十分であることから、熱膨張や湿度膨張の抑制効果が充分に得られないという問題がある。この対策として無機フィラーの表面をシランカップリング剤処理することが一般的に行われているが、無機フィラーの粒径が小さくなるとフィラー表面を均一に処理することが難しく、二次凝集を起こすことが多い。例えば異方導電性接着剤においては、粗大な無機フィラーを使用すると、粗大粒子が対向電極間に噛み込まれて接続不良が生じる場合があり、粒径の小さい無機フィラーを使用する必要があり、耐熱性・耐湿性向上と接続性能の両者を満足させることは難しかった。
アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を用いたエポキシ−シリカハイブリッド硬化物では、上記の様なフィラーと樹脂界面の問題は生じない。しかし、ゾル−ゲル硬化触媒としてオクチル酸錫等の金属系触媒を添加する必要があり、電子材料用途に使用する際にはマイグレーション等の問題を生じる可能性がある。またゾル−ゲル硬化反応を進行させるためには80℃〜120℃と比較的高温での加熱が必要となる。しかしこの温度ではエポキシ硬化剤とエポキシ基の反応が進行してしまい、必要な接着特性が得られない。これを防ぐためには反応温度が高い、いわゆる高温硬化型のエポキシ硬化剤を使用することが考えられるが、高温硬化型の硬化剤を使用すると、低温・短時間での接着を行えず、接着工程でのコストが高くなる。更に、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のゾル−ゲル硬化部位はゲル化しやすいため、接着剤組成物中の配合量を増やすことができない。このため、エポキシ−シリカハイブリッド硬化物のみでは、耐熱性・耐湿性向上効果に必要なシリカ含有量が得られない。
本発明は、上記の問題を解決し、接着性、導通/絶縁性能等の基本特性を損なうことなく、高温高湿条件下での熱膨張を抑制し、かつ耐湿性を向上することのできる接着剤組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の特性に着目し、これと無機フィラーとを組み合わせることで上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、(1)エポキシ樹脂、(2)ビスフェノール型エポキシ樹脂とアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、(3)無機フィラー、(4)潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物であって、前記アルコキシ基含有シラン変性樹脂の配合量がエポキシ樹脂の合計重量の0.01重量%以上20重量%以下であることを特徴とする接着剤組成物である(請求項1)。
アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂には、前述したように、エポキシ硬化部位とゾル−ゲル硬化部位が存在する。ここで、ゾル−ゲル硬化部位は一般式(a)で示される構造を持つ。(式中、Rはアルキル基を示し、nの平均繰り返し単位数は1〜10である。)
ゾル−ゲル硬化部位のアルコキシ基は、加水分解することで無機フィラー表面の水酸基と脱水縮合しやすいという性質を持ち、無機フィラーとの結合力が強い。このため、エポキシ樹脂、無機フィラー、潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物中にアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を添加することで、樹脂成分と無機フィラーの界面の密着力を向上することができ、その結果、無機フィラーの分散性と耐熱・耐湿特性を両立できる接着剤組成物を得ることができる。
このようなアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂としては、トリメトキシシラン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリエトキシシラン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が使用できる。エポキシ骨格としてはビスフェノールA型、F型、S型等が挙げられる。
アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の添加量は、エポキシ樹脂の合計重量の0.01重量%以上20重量%以下とする必要がある。0.01重量%以下であると、樹脂成分と無機フィラーとの密着性向上効果が得られない。また20重量%以上であると、ゲル化が起こりやすくなり、接着剤組成物の保存安定性が劣る。更に好ましい範囲は0.5重量%以上10重量%以下である。尚、エポキシ樹脂の合計重量とは、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂も含めたエポキシ樹脂全体の総量である。
無機フィラーの配合量が多いほど接着剤組成物の吸水率は低くなり、耐湿性を向上することができる。しかし無機フィラーの配合量が多すぎると接着性が低下し、また端子間に噛み込まれる無機フィラー量も多くなるため導通抵抗が高くなるという問題が生じる。このため無機フィラーの配合量はエポキシ樹脂の合計重量の0.5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。請求項2はこの好ましい態様に該当する。更に好ましい無機フィラーの配合量はエポキシ樹脂の合計重量の5重量%以上20重量%以下である。
更に、狭ピッチ電極間の接続を行うためには、回路接続用接着剤中の導電性粒子を配向させることが効果的であるが、接着剤中に無機フィラーを混合すると導電性粒子の配向が阻害される可能性がある。しかし平均粒径が500nm以下の無機フィラーを選択することで、このような配向の阻害という問題を生じることなく、耐湿性向上に必要な量の無機フィラーを配合することができる。
無機フィラーの配合量が多いほど接着剤の吸水率は低くなり、耐湿性を向上することができる。しかし無機フィラーの配合量が多すぎると接着性が低下し、また端子間に噛み込まれる無機フィラー量も多くなるため導通抵抗が高くなるという問題が生じる。このため無機フィラーの配合量はエポキシ樹脂の合計重量の0.5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。請求項2はこの好ましい態様に該当する。更に好ましい無機フィラーの配合量はエポキシ樹脂の合計重量の5重量%以上20重量%以下である。
無機フィラーの粒径は特に限定されないが、異方導電性接着剤等の電子材料用途での使用を考慮すると、平均粒径が1μm以下であり、かつ最大粒径が3μm以下であることが好ましい。平均粒径が小さくなるにつれて無機フィラーの表面積が大きくなり、エポキシ樹脂との相互作用を高めることができ、結果として少ない配合量で耐湿性向上、熱膨張率低減という効果を得ることができるからである。また最大粒径が3μm以下であれば粗大粒子による接続不良を生じることなく、安定的に接続できる。請求項3はこの好ましい態様に該当する。更に無機フィラーの平均粒径が500nm以下であると、耐湿性向上効果に優れ、好ましい。平均粒径の下限は特に制限しないが、作業性を考慮すると3nm以上とするのが好ましい。
本発明の無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、複合酸化物、等公知のものを使用することができる。無機フィラーとしてシリカフィラー又はアルミナフィラーを使用すると、熱膨張率低減効果と絶縁性向上効果が優れ、好ましい。請求項4はこの好ましい態様に該当する。
本発明に使用するエポキシ樹脂は、特に限定されないが、ビスフェノールA、F、S、AD等を骨格とするビスフェノール型エポキシ樹脂等の他、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が例示される。また高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
エポキシ樹脂の分子量は、接着剤組成物に要求される性能を考慮して適宜選択することができる。分子量が高くなるとフィルム形成性が高く、また接続温度における樹脂の溶融粘度を高くでき、異方導電性接着剤として使用した場合に導電性粒子の配向を乱さずに接続できる効果がある。一方、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上すると共に、樹脂の凝集力が高まるため接着力が高くなるという効果が得られる。従って、分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂を組み合わせて使用すると性能のバランスが取れて好ましい。高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂の配合割合は、適宜選択することができる。
本発明において使用される潜在性硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温ではほとんど硬化反応を起こさないが、加熱等により所定の条件とすると速やかに硬化反応を行う硬化剤である。潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド等、及びこれらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用出来る。
前記の潜在性硬化剤中でも、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができ、具体的にはイミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
さらに、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立をより充分に達成するため好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が特に好ましい。
前記エポキシ樹脂と潜在性硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂の合計重量に対し、5〜40重量%とするのが好ましい。潜在性硬化剤の割合が5重量%より少ない場合、硬化速度が低下し、硬化が不十分になる場合がある。また40重量%より多い場合、未反応の硬化剤が残留しやすくなり、耐熱、耐湿性を低下させる場合がある。
本発明の接着剤組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲で、前記の必須成分に加えて、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を添加することが可能である。また硬化促進剤、重合抑制剤、増感剤、シランカップリング剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等の添加剤を含有しても良い。
本発明の接着剤組成物は前記の各成分を混合することにより得ることができる。例えば前記エポキシ樹脂、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、潜在性硬化剤等を溶媒に溶解した溶液中に無機フィラーを分散させることで液状の接着剤組成物が得られる。またこの分散溶液をロールコーター等で塗工して薄い膜を形成し、その後溶媒を乾燥等により除去することによりフィルム状の接着剤が得られる。膜の厚みは特に限定されないが、通常10〜50μmである。
上記接着剤組成物と導電性粒子を混合することで異方導電性接着剤が得られる。導電粒子としては、金、銀、銅、ニッケル及びそれらの合金などの金属粒子、カーボン等が挙げられる。又、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック、金属酸化物等の核の表面に、金属やITO等を被覆して導電層を形成したものでも良い。
導電性粒子として、径と長さの比(アスペクト比)が5以上の導電性粒子を用いると、導電性粒子の配合量を増やすことなく導通抵抗を低くすることができ、良好な電気的接続を達成出来ると共に、面方向の絶縁抵抗をより高く保つことが出来、好ましい。導電性粒子のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定する。断面が円でない粒子の場合は、断面の最大長さを径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子は必ずしもまっすぐな形状を有する必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても問題なく使用できる。この場合は導電性粒子の最大長を長さとしてアスペクト比を求める。アスペクト比が5以上の導電性粒子としては、市販の針状導電性粒子を使用することができる。また微細な金属粒子を多数つなげて針状に形成したものも好ましく使用できる。アスペクト比が10〜100であると更に好ましい。
微細な金属粒子を形成する金属としては、Fe、Ni、Co等の強磁性を有する金属の単体又は強磁性金属を含む複合体が挙げられる。強磁性を有する金属を用いると、それ自体が有する磁性により配向し、また後述するように磁場を用いて導電粒子の配向を行うことができる。
異方導電性接着剤の形状をフィルム形状とし、上記のアスペクト比が5以上の導電性粒子をフィルムの厚み方向に配向させると、異方導電性がさらに向上するので好ましい。導電性粒子をフィルムの厚み方向に配向させる方法は特に限定されないが、前記のような強磁性を有する導電性粒子を用いる場合は、導電性粒子を樹脂用液中に分散し、得られた分散溶液を下地面と交差する方向に磁場を印加した下地上に塗布して、該導電性粒子を配向させ、下地上で溶媒の除去等により固化、硬化させて配向を固定する方法が好ましく例示される。フィルムの厚みは特に限定されないが、通常10〜50μmである。
導電性粒子の配合量は、回路接続用接着剤の全体積に対して0.01〜30体積%の範囲から選ばれ、用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による面方向の絶縁性能低下を防ぐためには、0.01〜10体積%とするのがより好ましい。
本発明は、耐熱性、耐湿性の優れた接着剤組成物を提供する。本発明の接着剤組成物は、高温高湿の環境下で長時間使用されてもその特性の変化が少なく、高い信頼性が要求される用途に使用することができる。
次に発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
(塗工溶液の作製)
エポキシ樹脂として平均分子量約60000のフェノキシ樹脂[東都化成(株)製YP−50]、平均分子量約2900のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート1007]、平均分子量約400のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂[大日本インキ化学工業(株)製エピクロン850]と、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂として、トリメトキシシラン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂[荒川化学工業(株)製コンポセランE201]、潜在性硬化剤としてマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤[旭化成エポキシ(株)製、ノバキュアHX3941]とを、重量比で40/20/39/1/35の割合で用い、これらをγ−ブチロラクトンに溶解し固形分60%の樹脂組成物溶液を作製した。ここに無機フィラーとして平均粒径20nmの球状シリカ粒子をエポキシ樹脂の合計重量に対して15重量%となるように加え、3本ロールによる混練を行って均一な溶液とした。更に導電性粒子として、3μmから11μmまでの鎖長分布を有する直鎖状ニッケル微粒子(平均粒径200nmのニッケル微粒子が直鎖状に連結したもの。アスペクト比:15〜55)を、固形分の総量(樹脂組成物+無機フィラー+ニッケル粉末)に対して1体積%となるように添加し、遠心ミキサーを用いて攪拌することで均一分散し、接着剤用の塗工溶液を調製した。
(塗工溶液の作製)
エポキシ樹脂として平均分子量約60000のフェノキシ樹脂[東都化成(株)製YP−50]、平均分子量約2900のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート1007]、平均分子量約400のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂[大日本インキ化学工業(株)製エピクロン850]と、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂として、トリメトキシシラン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂[荒川化学工業(株)製コンポセランE201]、潜在性硬化剤としてマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤[旭化成エポキシ(株)製、ノバキュアHX3941]とを、重量比で40/20/39/1/35の割合で用い、これらをγ−ブチロラクトンに溶解し固形分60%の樹脂組成物溶液を作製した。ここに無機フィラーとして平均粒径20nmの球状シリカ粒子をエポキシ樹脂の合計重量に対して15重量%となるように加え、3本ロールによる混練を行って均一な溶液とした。更に導電性粒子として、3μmから11μmまでの鎖長分布を有する直鎖状ニッケル微粒子(平均粒径200nmのニッケル微粒子が直鎖状に連結したもの。アスペクト比:15〜55)を、固形分の総量(樹脂組成物+無機フィラー+ニッケル粉末)に対して1体積%となるように添加し、遠心ミキサーを用いて攪拌することで均一分散し、接着剤用の塗工溶液を調製した。
(フィルム状異方導電性接着剤の作製)
上記で調整した塗工溶液を、離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間乾燥、固化させることによって、膜中の直鎖状粒子が磁場方向(フィルムの厚み方向)に配向した、厚み25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製した。
上記で調整した塗工溶液を、離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間乾燥、固化させることによって、膜中の直鎖状粒子が磁場方向(フィルムの厚み方向)に配向した、厚み25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製した。
(接続抵抗評価)
幅15μm、長さ100μm、高さ16μmの金メッキバンプが15μm間隔で726個配列されたICチップと、幅20μm、スペース10μmで同数のITO電極が形成されたガラス基板とを用意した。このICチップと回路基板との間に前記で得られ異方導電性接着剤フィルムを挟み、200℃に加熱しながら、1バンプ当たり20gfの圧力で20秒間加圧して熱接着させ、ICとガラス基板との接合体を得た。この接合体の726個の電極のうち、ITO電極、異方導電性接着剤、及び金バンプを介して接続された連続する32個の抵抗値を四端子法により求め、その値を32で除することによって1電極当たりの接続抵抗を求めた。この評価を10回繰り返し、接続抵抗の平均値を求めた。
幅15μm、長さ100μm、高さ16μmの金メッキバンプが15μm間隔で726個配列されたICチップと、幅20μm、スペース10μmで同数のITO電極が形成されたガラス基板とを用意した。このICチップと回路基板との間に前記で得られ異方導電性接着剤フィルムを挟み、200℃に加熱しながら、1バンプ当たり20gfの圧力で20秒間加圧して熱接着させ、ICとガラス基板との接合体を得た。この接合体の726個の電極のうち、ITO電極、異方導電性接着剤、及び金バンプを介して接続された連続する32個の抵抗値を四端子法により求め、その値を32で除することによって1電極当たりの接続抵抗を求めた。この評価を10回繰り返し、接続抵抗の平均値を求めた。
(耐熱・耐湿試験)
前記のICとガラス基板との接合体を温度85℃、湿度85%に設定した恒温恒湿槽内に投入し、100時間経過後に取り出し、再び前記と同様にして接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
(保存安定性評価)
上記で作製した異方導電性接着剤について、粘弾性測定装置(レオメトリック社製ARES)を用いて50℃から200℃までの溶融粘度を測定しその最低値を求めた。さらに、この試料を25℃の室温下に放置し、溶融粘度の最低値が10倍を越えるまでの時間を調べ、これをライフとした。
前記のICとガラス基板との接合体を温度85℃、湿度85%に設定した恒温恒湿槽内に投入し、100時間経過後に取り出し、再び前記と同様にして接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
(保存安定性評価)
上記で作製した異方導電性接着剤について、粘弾性測定装置(レオメトリック社製ARES)を用いて50℃から200℃までの溶融粘度を測定しその最低値を求めた。さらに、この試料を25℃の室温下に放置し、溶融粘度の最低値が10倍を越えるまでの時間を調べ、これをライフとした。
(実施例2)
導電性粒子として、平均粒径が5μmである、金被覆をした球状樹脂粒子を用い、磁場を印加せずに乾燥、固化させたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
導電性粒子として、平均粒径が5μmである、金被覆をした球状樹脂粒子を用い、磁場を印加せずに乾燥、固化させたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
フェノキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、シラン変性エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤の配合割合を40/20/40/0/35としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
フェノキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、シラン変性エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤の配合割合を40/20/40/0/35としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
フェノキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、シラン変性エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤の配合割合を40/20/15/25/35としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及び及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
フェノキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、シラン変性エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤の配合割合を40/20/15/25/35としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが25μmのフィルム状の異方導電性接着剤を作製し、接続抵抗評価、耐熱・耐湿試験及び及びライフ評価を行った。その結果を表1に示す。
表1の結果は、本発明(実施例)の異方導電性接着剤を用いて接着された場合は、高温高湿の環境下に長時間置かれた場合でも接続抵抗値の増加は小さく、優れた耐熱・耐湿性が達成できることを示している。一方、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を添加していない比較例1では、高温高湿試験後の抵抗値の増加率が大きい。またアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の配合量を、エポキシ樹脂の合計重量の25重量%とした比較例2においては、抵抗値の増加率が大きくなると共に、ライフが短くなっている。この結果から明らかなように、本発明例の接着剤組成物を用いることにより、優れた耐熱耐湿性を達成することができ、高い信頼性が得られる。
Claims (4)
- (1)エポキシ樹脂、(2)ビスフェノール型エポキシ樹脂とアルコキシシラン部分縮合物とを脱アルコール縮合反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、(3)無機フィラー(4)潜在性硬化剤、を必須成分とする接着剤組成物であって、前記アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の配合量が、エポキシ樹脂の合計重量の0.01重量%以上20重量%以下であることを特徴とする接着剤組成物。
- 前記無機フィラーの配合量が、エポキシ樹脂の合計重量の0.5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
- 前記無機フィラーの平均粒径が1μm以下であり、かつ最大粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
- 前記無機フィラーがシリカフィラー又はアルミナフィラーである請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
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