JP2011131711A - 車体後部の下部構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両後方からの荷重が掛かる場合に、スペアタイヤハウスの車両前方への変形及びスペアタイヤ前端の車両前方への移動を防ぐとともに、スペアタイヤの後部の跳ね上げを促進することが可能な車体後部の下部構造を提供する。
【解決手段】車体後部1のリヤフロア2に形成されるスペアタイヤハウス3と、車幅方向左右一対のサイドフレーム4を連結し、かつスペアタイヤハウス3の前方に配設されるリヤクロスメンバ5と、前後方向に延び、かつスペアタイヤハウス3の下面の車幅方向中央に配設される牽引フック14用のフック補強部材6とを備える車体後部1の下部構造において、フック補強部材6の前端がリヤクロスメンバ5に取付けられ、フック補強部材6が、リヤフロア2とともに閉断面を形成し、かつ前方側の閉断面より後方側の閉断面を大きくするように形成されており、フック補強部材6が、補強部材前部6bと補強部材後部6cとに分割されている、車体後部1の下部構造。
【選択図】図2

Description

本発明は、特に、車体後部のリヤフロアに形成されるスペアタイヤハウスを備える車両の車体後部の下部構造に関する。
一般的な車両では、車体後部のリヤフロアにスペアタイヤを収納するためのスペアタイヤハウスが設けられている。このような構造の車両において、車両後方からの荷重が加えられた場合、スペアタイヤの前端が車両前方へ向かって移動することに伴って、スペアタイヤハウスが変形し、かつ車両前方に移動することがある。特に、スペアタイヤハウスの車両前方には燃料タンクが配置されているので、変形したスペアタイヤハウスが燃料タンクに接触するおそれがあり、好ましくない。
このような場合に、スペアタイヤハウスとバックパネルとの間に十分なスペースを確保することによって、スペアタイヤハウス周辺で荷重を吸収する対策が考えられる。また、スペアタイヤハウスの車両前方に燃料タンクが配置される場合には、スペアタイヤハウスと燃料タンクとの間の距離を十分に確保することによって、スペアタイヤハウス周辺で荷重を吸収する対策が考えられる。
一方、スペアタイヤハウス及び燃料タンク以外の部品を配置するスペースも確保する必要があり、かつ車体部品のレイアウトには制限が多いため、スペアタイヤハウス後方の空間、スペアタイヤハウス及び燃料タンクの間の距離などを十分に確保できないことが多い。また、スペアタイヤハウス後方の空間、スペアタイヤハウス及び燃料タンクの間の距離などを十分に確保しようとすると、車体が大型化するという問題があり、このことは、特に小型車の場合に問題となる。
さらに、スペアタイヤハウスの前側上方には後部座席が配置されており、車両後方からの荷重が加えられる場合、スペアタイヤの前端が前側上方に移動することがある。このとき、スペアタイヤの前端が後部座席に接触するという問題がある。
そこで、例えば、特許文献1に開示された構造では、変形したスペアタイヤハウスが燃料タンクと接触するのを避けるため、スペアタイヤの前側を燃料タンクの配設位置よりも上方に持ち上げて、スペアタイヤを傾斜させた状態でスペアタイヤハウスに収納している。
また、特許文献2に開示された構造では、変形したスペアタイヤハウスが燃料タンクと接触するのを避け、かつスペアタイヤの前端が後部座席と接触するのを防止するために、車両後方からの荷重が加えられた場合、リヤフロアの車幅方向両端に配置されるサイドフレームが、リヤフロアのスペアタイヤハウス前方で、一般的に燃料タンクの上方に位置する後部座席を持ち上げるように変形する構成となっている。
さらに、特許文献3で開示された構造では、スペアタイヤがスペアタイヤハウスに前倒しの状態で傾斜配置され、車両後方からの荷重によってスペアタイヤの後部が、スペアタイヤの前部を中心に跳ね上げられ、かつ車両前方へ向かって縦方向に回動する構成となっており、スペアタイヤの前端による前方の構造物への荷重が低減されている。
特開平10−316050号公報 特開2006−205810号公報 特開2009−179181号公報
しかしながら、上述した特許文献1のように、スペアタイヤの前側を燃料タンクの配設位置よりも上方に持ち上げて、スペアタイヤを傾斜させた状態でスペアタイヤハウスに収納する構造のみでは、車両後方からの荷重が加えられた場合に、スペアタイヤの前端が前側上方に向かって移動しやすくなってしまう。そのため、依然としてスペアタイヤの前端が後部座席に接触するおそれがあった。
また、上述した特許文献2のように、車両後方からの荷重が加えられた場合、サイドフレームを、リヤフロアのスペアタイヤハウスの前方で、燃料タンク上方の後部座席を持ち上げるように変形させる構造では、スペアタイヤハウスの変形移動と、スペアタイヤ前端の車両前方への移動とを十分に抑えることができないという問題があった。
さらに、上述した特許文献3のように、縦方向の回動を促進するためにはスペアタイヤの傾斜を大きくすることが考えられるが、傾斜を大きくすると上下方向のラゲッジスペースが狭くなるという問題があった。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両後方からの荷重が加えられる場合に、スペアタイヤハウスの車両前方への変形及びスペアタイヤ前端の車両前方への移動を防ぐとともに、スペアタイヤの後部の跳ね上げを促進することが可能な車体後部の下部構造を提供することにある。
課題を解決するために、本発明の車体後部の下部構造は、車体後部のリヤフロアに形成されるスペアタイヤハウスと、車幅方向左右一対のサイドフレームを連結し、かつ前記スペアタイヤハウスの車両前方に配設されるリヤクロスメンバと、車両前後方向に延び、かつ前記スペアタイヤハウスの下面の車幅方向中央に配設される牽引フック用のフック補強部材とを備えている車体後部の下部構造において、前記フック補強部材の前端が前記リヤクロスメンバに取付けられ、前記フック補強部材が、前記リヤフロアとともに閉断面を形成し、かつ前方側の前記閉断面より後方側の前記閉断面を大きくするように形成されており、前記フック補強部材が、補強部材前部と補強部材後部とに分割されている。
本発明の車体後部の下部構造では、前記スペアタイヤハウスの上面に前記スペアタイヤを留めるためのスペアタイヤブラケットが設けられ、前後方向に沿った前記スペアタイヤブラケットの縦断面が上方に凸状のハット形状に形成され、前記スペアタイヤブラケットの頂部が、前記スペアタイヤの中心を留めることができるように構成され、前記スペアタイヤブラケットの前部が、前記フック補強部材を分割した位置より前方で前記スペアタイヤハウスに取付けられ、前記スペアタイヤブラケットの後部が、前記フック補強部材を分割した位置より後方で前記スペアタイヤハウスに取付けられている。
本発明の車体後部の下部構造では、前記フック補強部材の後端部には、前方側から前記補強部材の後端に向かって上方に傾く斜面が形成されている。
本発明の車体後部の下部構造では、前記フック補強部材の後端がバックパネルに取付けられている。
本発明の車体後部の下部構造では、前記リヤフロアには、下方に突出するビードが車幅方向に延設され、前記ビードの位置と、フック補強部材を分割した位置とが一致している。
本発明の車体後部の下部構造では、前記サイドフレームは、前記リヤクロスメンバより後方で、車両前後方向にフレーム前部とフレーム後部とに分割され、車両後方からの荷重を加えられた場合に、前記フレーム前部と前記フレーム後部との間の分割位置を基点として谷形折れをするように構成されている。
本発明の車体後部の下部構造では、前記補強部材後部の閉断面の面積は、車両後方に向かって大きくなり、前記補強部材後部の最大閉断面積部分に形成された略水平面部に、前記牽引フックが取付けられている。
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の車体後部の下部構造は、車体後部のリヤフロアに形成されるスペアタイヤハウスと、車幅方向左右一対のサイドフレームを連結し、かつ前記スペアタイヤハウスの車両前方に配設されるリヤクロスメンバと、車両前後方向に延び、かつ前記スペアタイヤハウスの下面の車幅方向中央に配設される牽引フック用のフック補強部材とを備えている車体後部の下部構造において、前記フック補強部材の前端が前記リヤクロスメンバに取付けられ、前記フック補強部材が、前記リヤフロアとともに閉断面を形成し、かつ前方側の前記閉断面より後方側の前記閉断面を大きくするように形成されており、前記フック補強部材が、補強部材前部と補強部材後部とに分割されている。
そのため、車両後方からの荷重が車体後部に掛かるとき、フック補強部材の補強部材後部が荷重を受けて車両前方へ移動し、補強部材前部へ荷重が伝わることになる。補強部材前部へ伝わった荷重はリヤクロスメンバに伝わり、更なる荷重をリヤクロスメンバが受けきれずに変形する場合、フック補強部材の後方側の閉断面積が前方側の閉断面積より大きくなっていることによって、補強部材前部は、リヤクロスメンバとの連結部を中心として変形するとともに、補強部材後部は、剛性が高く変形しながらもその形を保って後端が上方に移動することになる。従って、リヤフロア及びフック補強部材は谷形折れ(V字変形)を起こすことになる。
よって、スペアタイヤがスペアタイヤハウスに前倒しの状態で傾斜配置され、スペアタイヤの後部が、スペアタイヤの前部を中心に跳ね上げられ、車両前方へ向かって縦方向に回動する場合には、上述の谷形折れによってスペアタイヤの縦方向の回動を促進することができるとともに、車両後方からの荷重を確実に吸収することができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記スペアタイヤハウスの上面に前記スペアタイヤを留めるためのスペアタイヤブラケットが設けられ、前後方向に沿った前記スペアタイヤブラケットの縦断面が上方に凸状のハット形状に形成され、前記スペアタイヤブラケットの頂部が、前記スペアタイヤの中心を留めることができるように構成され、前記スペアタイヤブラケットの前部が、前記フック補強部材を分割した位置より前方で前記スペアタイヤハウスに取付けられ、前記スペアタイヤブラケットの後部が、前記フック補強部材を分割した位置より後方で前記スペアタイヤハウスに取付けられているので、特に、スペアタイヤハウスに前倒しの状態でスペアタイヤが傾斜配置された場合に、フック補強部材の分割位置を基点として発生するフック補強部材の谷形折れによって、スペアタイヤの後部を、スペアタイヤの前部を中心として確実に跳ね上げることができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記フック補強部材の後端部には、前方側から前記補強部材の後端に向かって上方に傾く斜面が形成されているので、車両後方からの荷重が車体後部に掛かり、ある程度の変形が進んだ後、谷形折れの発生したフック補強部材の後端部の斜面が、当該斜面が車両後方からの荷重に対して垂直な状態に移動することとなる。よって、フック補強部材には、更に谷形折れを促すように荷重が掛かることとなり、スペアタイヤの後部を、スペアタイヤの前部を中心としてさらに確実に跳ね上げることができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記フック補強部材の後端がバックパネルに取付けられているので、最初に車両後方からの荷重が車体後部に掛かった際に、バックパネルからフック補強部材に荷重が確実に伝わることとなり、フック補強部材の谷形折れをより確実に、早く起こすことができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記リヤフロアには、下方に突出するビードが車幅方向に延設され、前記ビードの位置と、フック補強部材を分割した位置とが一致しているので、フック補強部材の前後部の分割位置を基点に谷形折れが起こるとき、ビードによりリヤフロアが谷形折れしやすくなり、スペアタイヤブラケットを含むリヤフロア、及びフック補強部材を確実に谷形折れさせることができる。したがって、リヤフロアからスペアタイヤブラケットへの変形荷重が効率よく伝達されることになり、スペアタイヤの後部を十分に跳ね上げることができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記サイドフレームは、前記リヤクロスメンバより後方で、車両前後方向にフレーム前部とフレーム後部とに分割され、車両後方からの荷重を加えられた場合に、前記フレーム前部と前記フレーム後部との間の分割位置を基点として谷形折れをするように構成されているので、車両後方からの荷重が車体後部に掛かり、ある程度の変形が進んだ後、サイドフレームは、フレーム前部及びフレーム後部の分割位置を中心に折れ変形を起こすが、この場合、リヤフロア及びフック補強部材の折れ変形と同じ方向に変形しやすくなる。その際、サイドフレームがフレーム前部及びフレーム後部の分割位置を基点としてあらかじめ若干下向きに湾曲して形成され、あるいは、当該分割位置の上側に凹みやビードが形成されていれば、サイドフレームの谷形折れを誘導することができる。
本実施形態の車体後部の下部構造では、前記補強部材後部の閉断面の面積は、車両後方に向かって大きくなり、前記補強部材後部の最大閉断面積部分に形成された略水平面部に、前記牽引フックが取付けられているので、車両後方からの荷重に伴って生じるリヤフロア及びフック補強部材の谷形折れをより確実に、早く起こすことができる。また、牽引フックの取付剛性を確保できるとともに、牽引フックによって補強部材後部の剛性を補強することができる。その結果、上記効果をより確実に発揮でき、スムーズな谷形折れを起こし、スペアタイヤの後部の跳ね上げを確実に起こすことができる。
本発明の第1実施形態に係る下部構造が適用される車両の車体後部を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部において、スペアタイヤハウス周辺の構成部材の配置関係を前側斜め下方から見た斜視図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部において、スペアタイヤハウス周辺の構成部材の配置関係を示す下面図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部において、スペアタイヤハウス周辺の構成部材の配置関係を示す側面図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部において、スペアタイヤハウス周辺の構成部材の配置関係を前側斜め上方から見た斜視図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部において、一部を図3のA−A断面で示した図である。 図3のB−B断面図である。 本発明の第1実施形態の下部構造が適用された車体後部を示すものであって、(a)は車両後方からの荷重が車体後部に掛かる前の状態の側面図、(b)は掛かった状態の側面図である。 本発明の第2実施形態の下部構造が適用された車体後部において、スペアタイヤハウス周辺の構成部材の配置関係を示す下面図である。 本発明の第2実施形態の下部構造が適用された車体後部を示すものであって、(a)は車両後方からの荷重が車体後部に掛かる前の状態の側面図、(b)は掛かった状態の側面図である。
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図10は本発明の実施形態に係る車体後部の下部構造を示すものである。本発明の実施形態では、ハッチバック式の車両を用いて説明するが、本発明と同様の作用及び効果が得られる構造であれば、セダン、クーペ、ハードトップ、SUV、ステーションワゴン、ミニバンなどその他の種類の車両であってもよい。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る車両の車体後部1の下部構造を、図1〜図8を参照して説明する。
本発明の第1実施形態に係る車両の車体後部1の下部には、図1〜図6に示すように、水平方向に広がるリヤフロア2が設けられており、リヤフロア2の中央部には、横置き配置のスペアタイヤSを収納可能とするための収納凹部たるスペアタイヤハウス3が形成されている。リヤフロア2の車幅方向左右両端には、それぞれ前後方向に延びるサイドフレーム4が配設されている。このような一対のサイドフレーム4を連結するリヤクロスメンバ5が、スペアタイヤハウス3の前方におけるリヤフロア2の下面側に配設されている。また、スペアタイヤハウス3の下面には、車両前後方向に延びるフック補強部材6が、車幅方向中央に配設されている。従って、第1実施形態における車体後部1の下部構造は、リヤフロア2と、スペアタイヤハウス3と、サイドフレーム4と、リヤクロスメンバ5と、フック補強部材6とを備えている。
さらに、スペアタイヤハウス3の前方におけるリヤフロア2の下面側には、燃料タンク7が配設されており、スペアタイヤハウス3の前方におけるリヤフロア2の上面側には後部座席8が配設されている。リヤフロア2の後端にはバックパネル9が配設され、バックパネル9の後面には、バンパーメンバ10が取付けられている。バンパーメンバ10は、バックパネル9の後面から車両後方に突出する車幅方向左右一対のバンパー取付部10aを備えており、一対のバンパー取付部10aは、車幅方向に間隔を空けるとともに、それぞれサイドフレーム4と前後方向に沿ってほぼ一直線上に配置されている。また、一対のバンパー取付部10aの後端には、車幅方向に延びるバンパー部10bが設けられている。
スペアタイヤハウス3の上面には、スペアタイヤSを留めるスペアタイヤブラケット11が設けられている。スペアタイヤブラケット11の前後方向に沿った縦断面はハット形状に形成されている。ハット形状のスペアタイヤブラケット11の頂部11aは、スペアタイヤSの中心を留めることができる構成となっている。さらに頂部11aは、その前方側を下げるように傾斜して形成されている。このような頂部11aに留められたスペアタイヤSは、その後部を上方に持ち上げて傾斜させた状態でスペアタイヤハウス3に収納されることとなる。ハット形状のスペアタイヤブラケット11の前部11bは、スペアタイヤSの中心位置より前方でスペアタイヤハウス3に取付けられ、さらにスペアタイヤブラケット11の後部11cは、スペアタイヤSの中心位置より後方でスペアタイヤハウス3に取付けられている。さらに、スペアタイヤハウス3の上面には、傾斜したスペアタイヤSの後部を支持するスペーサ12が配設されている。
ここで、第1実施形態におけるサイドフレーム4及びフック補強部材6の詳細を説明する。サイドフレーム4は、リヤクロスメンバ5の後方で、前後方向の分割位置4aでフレーム前部4bとフレーム後部4cとに分割されており、車両後方からの荷重が加えられた場合に、フレーム前部4bとフレーム後部4cとの間の分割位置4aを基点として、下方へ向かう凸形状の谷形に折れる変形(以下、「谷形折れ」という)をするように構成されている。なお、サイドフレーム4の前後方向の分割位置4aは、スペアタイヤSの中心位置と一致している。
フック補強部材6の前端部は、リヤクロスメンバ5に連結されている。また、フック補強部材6の後端部には、前方側から補強部材6の後端に向かって上方に傾く斜面6dが形成されており、フック補強部材6の後端はバックパネル9に取付けられている。
フック補強部材6は、スペアタイヤSの中心位置とスペアタイヤブラケット11の後端との間に位置する前後方向の分割位置6aで、補強部材前部6bと補強部材後部6cとに分割されている。リヤフロア2には、上方に向かって突条に形成されたビード13(図7を参照)が、車幅方向に延設されている。このビード13の前後位置と、フック補強部材6の前後方向の分割位置6aとは一致している。
また、フック補強部材6は、横断面ハット形状に形成され、リヤフロア2の下面に取付けられた状態では、リヤフロア2と相俟って閉断面形状を有している。フック補強部材6の後方側の閉断面積は、フック補強部材6の前方側の閉断面積より大きく形成されている。詳細には、フック補強部材6の閉断面の高さは、前方側から後方側に向かって次第に大きくなるように形成され、かつフック補強部材6の閉断面の幅は、前方側から後方側に向かって次第に大きくなるように形成されている。特に、フック補強部材6の閉断面積は、スペアタイヤSの中心に対応する位置で急激に変化している。
特に、フック補強部材6のうち補強部材後部6cの閉断面積は、車両後方に向かって大きくなっており、補強部材後部6cの最大閉断面積部分には、略水平面部6dが形成されている。この略水平面部6dには、前端部を溶接により固着した牽引フック14が取付けられ、この牽引フック14の後端部は、補強部材後部6cから車両後方へ向かって斜め下方に突出させた状態で配置されている。このような構成によって、補強部材後部6cは、剛性が高められており、補強部材前部6bよりも高い剛性を有している。
本発明の第1実施形態に係る車体後部1の下部構造が適用された車両において、図8(a)に示す状態は、車両後方から車両前方へ向かって荷重Fが車体後部1のリヤバンパーメンバ9に入力される前の状態である。
そして、図8(b)に示すように、車両後方から車両前方へ向かって荷重Fが車体後部1のバンパーメンバ10からバックパネル9及びリヤフロア2に入力された場合、この荷重Fはバンパー取付部10aを経てサイドフレーム4と、スペアタイヤハウス3と、フック補強部材6の後部とに伝わる。これに伴い、スペアタイヤハウス3が変形しながら、リヤフロア2及びフック補強部材6が、ビード13の配設位置と、補強部材前部6b及び補強部材後部6cの間の分割位置6aで、谷形折れをすることになる。それと共に、サイドフレーム4は、分割位置4aのフレーム前部4bの後端及びフレーム後部4cの前端が下がり、谷形折れを生じる。
これらリヤフロア2及びフック補強部材6と、サイドフレーム4とが同方向に折れ変形する際には抵抗力が発生するから、車両後方から車体後部に掛かった荷重Fが吸収されることになる。また、荷重Fによってスペアタイヤハウス3が変形すると、前倒しに傾斜配置されたスペアタイヤSの後部が前部を中心に上方へ跳ね上げられて、車両前方へ向かって縦方向に大きく回動することになる。
以上のように本発明の第1実施形態によれば、フック補強部材6の前端がリヤクロスメンバ5に取付けられ、フック補強部材6が、リヤフロア2とともに閉断面を形成し、かつ前方側の閉断面より後方側の閉断面を大きくするように形成されており、フック補強部材6が、補強部材前部6bと補強部材後部6cとに分割されているので、車両後方からの荷重が車体後部に掛かるとき、フック補強部材6の補強部材後部6cが荷重を受けて車両前方へ移動し、補強部材前部6bへ荷重が伝わることになる。補強部材前部6bへ伝わった荷重はリヤクロスメンバ5に伝わり、更なる荷重をリヤクロスメンバ5が受けきれずに変形する場合、フック補強部材6の後方側の閉断面積が前方側の閉断面積より大きくなっていることによって、補強部材前部6bは、リヤクロスメンバ5との連結部を中心として変形するとともに、補強部材後部6cは、剛性が高く変形しながらもその形を保って後端が上方に移動することになる。従って、リヤフロア5及びフック補強部材6は谷形折れ(V字変形)を起こすことになる。
よって、スペアタイヤSがスペアタイヤハウス3に前倒しの状態で傾斜配置されていることに伴って、スペアタイヤSの後部が、スペアタイヤSの前部を中心に跳ね上げられ、車両前方へ向かって縦方向に回動する際に、上述の谷形折れによってスペアタイヤの縦方向の回動を促進することができるとともに、車両後方からの荷重Fを確実に吸収することができる。
本発明の第1実施形態によれば、スペアタイヤブラケット11の頂部11aが、スペアタイヤSの中心を留めることができるように構成され、スペアタイヤブラケット11の前部11bが、フック補強部材6の分割位置6aより前方で前記スペアタイヤハウスに取付けられ、スペアタイヤブラケット11の後部11cが、フック補強部材6の分割位置6aより後方でスペアタイヤハウス3に取付けられているので、スペアタイヤハウス3に前倒しの状態で傾斜配置されたスペアタイヤSについて、フック補強部材6の分割位置6aを基点として発生するフック補強部材6の谷形折れによって、スペアタイヤSの後部を、スペアタイヤSの前部を中心として確実に跳ね上げることができる。
本発明の第1実施形態によれば、フック補強部材6の後端部には、前方側から補強部材6の後端に向かって上方に傾く斜面6dが形成されているので、車両後方からの荷重Fが車体後部1に掛かり、ある程度の変形が進んだ後、谷形折れの発生したフック補強部材6の後端部の斜面6dが、当該斜面が車両後方からの荷重Fに対して垂直な状態に移動することとなる。よって、フック補強部材6には、更に谷形折れを促すように荷重Fが掛かることとなり、スペアタイヤSの後部を、スペアタイヤSの前部を中心としてさらに確実に跳ね上げることができる。
本発明の第1実施形態によれば、フック補強部材6の後端がバックパネル9に取付けられているので、最初に車両後方からの荷重Fが車体後部1に掛かった際に、バックパネル9からフック補強部材6に荷重Fが確実に伝わることとなり、フック補強部材6の谷形折れをより確実に、早く起こすことができる。
本発明の第1実施形態によれば、リヤフロア2には、下方に突出するビード13が車幅方向に延設され、ビード13の位置と、フック補強部材6の分割位置6aとが一致しているので、フック補強部材6の分割位置6aを基点に谷形折れが起こるとき、ビードによりリヤフロア2が谷形折れしやすくなり、スペアタイヤブラケット3を含むリヤフロア2、及びフック補強部材6を確実に谷形折れさせることができる。したがって、リヤフロア2からスペアタイヤブラケット3への変形荷重が効率よく伝達されることになり、スペアタイヤSの後部を十分に跳ね上げることができる。
本発明の第1実施形態によれば、サイドフレーム4は、リヤクロスメンバ5より後方で、車両前後方向にフレーム前部4bとフレーム後部4cとに分割され、車両後方からの荷重Fが加えられた場合に、フレーム前部4bとフレーム後部4cとの間の分割位置4aを基点として谷形折れをするように構成されているので、車両後方からの荷重Fが車体後部1に掛かり、ある程度の変形が進んだ後、サイドフレーム4は、フレーム前部4b及びフレーム後部4cの分割位置4aを中心に折れ変形を起こすが、この場合、リヤフロア2及びフック補強部材6の折れ変形と同じ方向に変形しやすくなる。その際、サイドフレーム4がフレーム前部4b及びフレーム後部4cの分割位置4aを基点としてあらかじめ若干下向きに湾曲して形成され、あるいは、当該分割位置4aの上側に凹みやビードが形成されていれば、サイドフレーム4の谷形折れを誘導することができる。
本発明の第1実施形態によれば、補強部材後部6cの閉断面の面積は、車両後方に向かって大きくなり、補強部材後部6cの最大閉断面積部分に形成された略水平面部6dに、牽引フック14が取付けられているので、車両後方からの荷重Fに伴って生じるリヤフロア2及びフック補強部材6の谷形折れをより確実に、早く起こすことができる。また、牽引フック14の取付剛性を確保できるとともに、牽引フック14によって補強部材後部6cの剛性を補強することができる。その結果、上記効果をより確実に発揮でき、スムーズな谷形折れを起こし、スペアタイヤSの後部の跳ね上げを確実に起こすことができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。第2実施形態における基本的な構成は、第1実施形態の構成と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号及び名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図9で示すように、フック補強部材6の車幅方向に沿った横断面ハット形状に形成され、フック補強部材6は、スペアタイヤSの中心位置とスペアタイヤブラケット11の前端との間に位置する前後方向の分割位置6eで、補強部材前部6fと補強部材後部6gとに分割されている。リヤフロア2には、上方に向かって突条に形成されたビード21が、車幅方向に延設されている。このビード21の前後位置と、フック補強部材6の前後方向の分割位置6eとは一致している。
本発明の第2実施形態に係る車体後部1の下部構造が適用された車両において、図10(a)に示す状態は、車両後方から車両前方へ向かって荷重Fが車体後部1のリヤバンパーメンバ9に入力される前の状態である。
そして、図10(b)に示すように、第1実施形態と異なり、車両後方から車両前方へ向かって荷重Fが車体後部1のバンパーメンバ10からバックパネル9及びリヤフロア2に入力された場合、スペアタイヤハウス3が変形しながら、リヤフロア2及びフック補強部材6が、ビード21の配設位置と、補強部材前部6f及び補強部材後部6gの間の分割位置6eで、谷形折れをすることになる。
以上のように本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、本実施形態の変形例として、スペアタイヤブラケット11と、スペーサ12とを一体に形成してもよい。本実施形態と同様の効果が得られる。
1 車体後部
2 リヤフロア
3 スペアタイヤハウス
4 サイドフレーム
4a 分割位置
4b フレーム前部
4c フレーム後部
5 リヤクロスメンバ
6 フック補強部材
6a,6e 分割位置
6b,6f 補強部材前部
6c,6g 補強部材後部
6d 略水平部
11 スペアタイヤブラケット
11a 頂部
11b 前部
11b 後部
13,21 ビード
14 牽引フック
S スペアタイヤ
F 荷重

Claims (7)

  1. 車体後部のリヤフロアに形成されるスペアタイヤハウスと、
    車幅方向左右一対のサイドフレームを連結し、かつ前記スペアタイヤハウスの車両前方に配設されるリヤクロスメンバと、
    車両前後方向に延び、かつ前記スペアタイヤハウスの下面の車幅方向中央に配設される牽引フック用のフック補強部材と
    を備えている車体後部の下部構造において、
    前記フック補強部材の前端が前記リヤクロスメンバに取付けられ、
    前記フック補強部材が、前記リヤフロアとともに閉断面を形成し、かつ前方側の前記閉断面より後方側の前記閉断面を大きくするように形成されており、
    前記フック補強部材が、補強部材前部と補強部材後部とに分割されている、車体後部の下部構造。
  2. 前記スペアタイヤハウスの上面に前記スペアタイヤを留めるためのスペアタイヤブラケットが設けられ、
    前後方向に沿った前記スペアタイヤブラケットの縦断面が上方に凸状のハット形状に形成され、
    前記スペアタイヤブラケットの頂部が、前記スペアタイヤの中心を留めることができるように構成され、
    前記スペアタイヤブラケットの前部が、前記フック補強部材を分割した位置より前方で前記スペアタイヤハウスに取付けられ、
    前記スペアタイヤブラケットの後部が、前記フック補強部材を分割した位置より後方で前記スペアタイヤハウスに取付けられている、請求項1に記載の車体後部の下部構造。
  3. 前記フック補強部材の後端部には、前方側から前記補強部材の後端に向かって上方に傾く斜面が形成されている、請求項1または2に記載の車体後部の構造。
  4. 前記フック補強部材の後端がバックパネルに取付けられている、請求項3に記載の車体後部の構造。
  5. 前記リヤフロアには、下方に突出するビードが車幅方向に延設され、前記ビードの位置と、フック補強部材を分割した位置とが一致している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車体後部の下部構造。
  6. 前記サイドフレームは、前記リヤクロスメンバより後方で、車両前後方向にフレーム前部とフレーム後部とに分割され、車両後方からの荷重を加えられた場合に、前記フレーム前部と前記フレーム後部との間の分割位置を基点として谷形折れをするように構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車体後部の構造。
  7. 前記補強部材後部の閉断面の面積は、車両後方に向かって大きくなり、前記補強部材後部の最大閉断面積部分に形成された略水平面部に、前記牽引フックが取付けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車体後部の下部構造。
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