JP2011117770A - 車両用制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】GPS受信装置が無くても大気圧センサの異常検出を行うことができるようにする。
【解決手段】前後加速度センサの検出信号に基づいて検出される勾配角度θや車輪速度センサの検出信号に基づいて演算される推定車体加速度dVに基づいて高度変化量を算出し、高度変化量から気圧変化量を推定する。そして、気圧変化量のセンサ値と推定値とを比較することにより、大気圧センサの異常を検出する。これにより、GPS受信装置が無くても大気圧センサの異常検出を行うことが可能となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、大気圧センサで検出される大気圧に基づいて車両制御を行う車両用制御装置に関し、例えばブレーキブースタの失陥(ブレーキ失陥)を検出したときに、ドライバによるブレーキ操作部材の操作力を助勢してマスタシリンダ(以下、M/Cという)発生させるブレーキ液圧(以下、M/C圧という)を加圧する車両用ブレーキ制御装置に適用すると好適である。
従来より、バキュームブースタの負圧を利用し、ドライバによるブレーキペダルの踏力を助勢してM/Cに出力することにより大きなM/C圧を発生させると共に、バキュームブースタによる助勢力の不足分を液圧制御ユニットでM/C圧を増圧することで補償するという助勢制御を行うブレーキシステムがある。このブレーキシステムでは、バキュームブースタの負圧を負圧センサにて検出すると共に、大気圧を大気圧センサにて検出し、負圧センサ値と大気圧との差から正確な負圧を求めることで正確なブースト負圧を求め、求めたブースト負圧に基づいて液圧制御ユニットを制御してM/C圧の増圧量を設定している。このため、ブースト負圧を求めるために大気圧センサにて正確な大気圧が検出されていることが重要であり、大気圧センサが故障していると的確な助勢制御を行うことができなくなる。
このような大気圧センサの故障検出を行える装置として、特許文献1に記載された大気圧センサ異常検出装置がある。この大気圧センサ異常検出装置は、衛星より受信した電波から現在地情報を算出し、ナビゲーション装置に記憶されている地図データおよび現在地情報から現在地の標高を算出すると共にその標高に対応する大気圧を検出し、大気圧センサで検出した実測大気圧と標高に対応する大気圧とを比較することで、大気圧センサの異常検出を行うようにしている。
特開2004−183607号公報
しかしながら、衛星からの電波を受信して現在地情報を取得するGPS(Global Positioning System)受信装置はナビゲーション装置に搭載されているが、一般的にナビゲーション装置は高価であり、すべての車両に装備されているものではない。このため、他の手法によって、大気圧センサの異常検出を行えるようにすることが望まれる。特に、車両に既に搭載されているセンサ類、もしくは、ナビゲーション装置ではない他のシステムに搭載されているセンサ類のみで大気圧センサの異常検出を行えるようにすると、部品の共有化も図れるため、より好ましい。
本発明は上記点に鑑みて、大気圧センサで検出する大気圧に基づいて車両制御を行う車両制御装置において、GPS受信装置が無くても大気圧センサの異常検出を行うことができるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、気圧変化量演算手段(140)にて、大気圧検出手段(200)が検出した基準地点での大気圧検出値である基準気圧を記憶し、記憶した基準気圧と現在の大気圧検出値の差から気圧変化量のセンサ値を演算すると共に、気圧変化量推定値演算手段(130)にて、路面勾配検出手段(520)で検出した路面勾配(θ)と車速検出手段(220)で検出した車両の速度(V)から車両の高度変化量である高度推定変化量を推定し、高度推定変化量に基づいて基準地点からの高度変化に伴う気圧変化量の推定値を演算する。そして、異常判定手段(170、180)により、気圧変化量のセンサ値と推定値との差と、大気圧センサが異常であることを示す基準値となる異常判定閾値とを比較することで、大気圧センサの異常を判定することを特徴としている。
このように、路面勾配と車両の速度(V)から車両の高度変化量である高度推定変化量を推定し、高度推定変化量から気圧変化量を推定するようにしている。そして、気圧変化量のセンサ値と推定値とを比較することにより、大気圧センサ(76)の異常を検出している。これにより、GPS受信装置が無くても大気圧センサの異常検出を行うことが可能となる。
請求項2に記載の発明では、開始判定手段(110)にて、気圧変化量推定値演算手段による気圧変化量の推定値の演算開始の許可を判定し、所定期間毎に気圧変化量推定値演算手段で演算された気圧変化量の推定値を0にさせ、気圧変化量推定値演算手段による気圧変化量の推定値の演算を改めて開始させることを特徴としている。
このように、気圧変化量のセンサ値と推定値を所定期間毎に0にリセットし、これらの比較が所定期間を周期として繰り返し行われるようにしている。このため、高度変化量から算出した気圧変化量の推定値に誤差が生じても、その誤差をリセットすることができるため、大気圧センサが正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまうことを防止することができる。
請求項3に記載の発明では、気圧変化量推定値演算手段は、単位時間当たりの高度変化量を高度推定変化量として推定すると共に、該高度推定変化量から単位時間当たりの気圧変化量を気圧推定変化量として推定し、該気圧推定変化量を積分することで、気圧変化量の推定値を演算することを特徴としている。
このように、例えば、単位時間当たりの高度変化量である高度推定変化量から単位時間当たりの気圧変化量を気圧推定変化量として推定し、該気圧推定変化量を積分することで、気圧変化量の推定値を演算することができる。
請求項4に記載の発明では、路面勾配検出手段は、車速検出手段が検出した車両の速度から該車両の前後方向加速度の推定値である推定加速度(dV)を算出すると共に、前後加速度検出手段が検出した前後方向加速度と推定加速度に基づいて路面勾配を算出することを特徴としている。
このように、前後加速度検出手段が検出した前後方向加速度と推定加速度に基づいて路面勾配を算出することができる。
請求項5に記載の発明では、オフセット量演算手段(120)にて、前後加速度センサのオフセット量を演算し、路面勾配検出手段では、前後加速度検出手段が検出した前後方向加速度からオフセット量を差し引いた値と推定加速度に基づいて路面勾配を算出することを特徴としている。
このように、路面勾配検出手段では、前後加速度検出手段が検出した前後方向加速度からオフセット量を差し引いた値と推定加速度に基づいて路面勾配を算出することで、前後加速度センサのオフセット補正を行うことができ、より正確に気圧変化量の推定値を演算することが可能となる。したがって、より正確に大気圧センサの異常検出を行うことが可能となり、さらに大気圧センサが正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性を少なくすることができる。
請求項6に記載の発明では、異常判定閾値を演算する異常判定閾値演算手段(160)を有すると共に、前後加速度センサのオフセット量を演算するオフセット量演算手段(120)と、車速検出手段で検出される車両の速度および該車両の速度から推定した推定加速度のゲインばらつき量を演算するゲインばらつき量演算手段(150)の少なくとも一方を有し、異常判定閾値演算手段は、オフセット量とゲインばらつき量の少なくとも一方に基づいて異常判定閾値を補正することを特徴としている。
このように、オフセット量とゲインばらつき量の少なくとも一方に基づいて異常判定閾値を補正することができる。そして、オフセット量やゲインばらつき量に応じて異常判定閾値を補正することにより、外乱要因によって気圧変化量のセンサ値や推定値に誤差が生じても、それに対応した異常判定閾値を設定することが可能となる。したがって、さらに大気圧センサが正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性を少なくすることができる。
請求項7に記載の発明では、異常判定閾値を演算する異常判定閾値演算手段(160)と、気候もしくは気候の変化を判定する気候判定手段(855、865)とを有し、異常判定閾値演算手段は、気候判定手段による判定結果に基づいて異常判定閾値を補正することを特徴としている。
このように、気候判定手段による判定結果に基づいて異常判定閾値を補正することもできる。例えば、請求項8に記載したように、雨天であることを検出する雨天検出手段(855)を気候判定手段に対して備え、異常判定閾値演算手段にて、雨天時には異常判定閾値を雨天ではない時に比べて低下させるよう補正することができる。また、請求項9に記載したように、ハンドル操作量を検出すると共に、ハンドル操作量が閾値より小さければ気候の変化があると判定する気候変化判定手段(865)を気候判定手段に対して備え、異常判定閾値演算手段にて、気候変化判定手段にて気候の変化があると判定されると、気候の変化があると判定されなかった場合に比べて異常判定閾値を低下させるよう補正することもできる。
このような車両用制御装置としては、例えば、請求項10に記載したように、ブレーキ操作部材の操作に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(13)と、負圧が供給されると共に、該負圧を利用することでブレーキ操作部材の操作力を助勢してマスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を高めるバキュームブースタ(12)と、負圧を検出する負圧検出手段(77)と、マスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を加圧するブレーキ液圧制御用アクチュエータ(50)と、を備えた車両に搭載され、大気圧検出手段で検出された大気圧と負圧検出手段で検出された負圧とに基づいて、ブレーキ液圧制御用アクチュエータを用いてマスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を制御する車両用ブレーキ制御システムに適用することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本発明の第1実施形態にかかる車両運動制御装置が適用された車両用ブレーキ制御システム1の全体構成を示した図である。 ブレーキECU70の信号の入出力の関係を示すブロック図である。 大気圧センサ76の異常検出処理の詳細を示したフローチャートである。 センサ信号読取処理の詳細を示したフローチャートである。 気圧変化量演算開始判定の詳細を示したフローチャートである。 オフセット量演算処理の詳細を示したフローチャートである。 高度変化量の演算方法を説明するための模式図である。 気圧変化量推定値演算を行うブレーキECU70内の機能ブロックを示したブロック線図である。 気圧変化量推定値演算処理の詳細を示したフローチャートである。 気圧センサ変化量演算処理の詳細を示したフローチャートである。 車速に応じて変化するタイヤ側面の模式図である。 (a)は、ゲインばらつき量演算処理の詳細を示したフローチャートであり、(b)は、(a)におけるステップ730中のマップの拡大図である。 異常判定演算処理の詳細を示したフローチャートである。 図13−aに続くフローチャートである。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態の車両運動制御装置が適用された車両用ブレーキ制御システム1の全体構成を示したものである。本実施形態では、このブレーキ制御システム1によって、助勢制御を含む車両運動制御を行う場合について説明する。
図1において、ドライバがブレーキペダル11を踏み込むと、バキュームブースタ12にて踏力が倍力され、M/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。具体的には、エンジンの吸気負圧を利用してバキュームブースタ12の大気圧室に発生させられている大気圧と負圧室に発生させられる負圧との差圧を利用して、ドライバによるブレーキペダルの踏力を助勢してマスタピストン13a、13bを押圧している。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生し、このM/C圧がブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を通じて各W/C14、15、34、35に伝えられる。なお、M/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられ、システム内のブレーキ液が常時適量となるようにされている。
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有している。第1配管系統50aは、左前輪FLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御し、第2配管系統50bは、右前輪FRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御する。
第1配管系統50aと第2配管系統50bとは、同様の構成であるため、以下では第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては説明を省略する。
第1配管系統50aは、上述したM/C圧を左前輪FLに備えられたW/C14及び右後輪RRに備えられたW/C15に伝達し、W/C圧を発生させる主管路となる管路Aを備える。
また、管路Aは、連通状態と差圧状態に制御できる第1差圧制御弁16を備えている。この第1差圧制御弁16は、ドライバがブレーキペダル11の操作を行う通常ブレーキ時(車両運動制御が実行されていない時)には連通状態となるように弁位置が調整されており、第1差圧制御弁16に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
この第1差圧制御弁16が差圧状態のときには、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのみブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持される。
そして、管路Aは、この第1差圧制御弁16よりも下流になるW/C14、15側において、2つの管路A1、A2に分岐する。管路A1にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、管路A2にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。第1、第2増圧制御弁17、18は、第1、第2増圧制御弁17、18に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18及び各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁21、22はノーマルクローズ型となっている。
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間には還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ60によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。モータ60は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
そして、調圧リザーバ20とM/C13の間には補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、助勢制御等の車両運動制御時において、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を加圧する。なお、ここでは第1配管系統50aについて説明したが、第2配管系統50bも同様の構成であり、第1配管系統50aに備えられた各構成と同様の構成を第2配管系統50bも備えている。具体的には、第1差圧制御弁16と対応する第2差圧制御弁36、第1、第2増圧制御弁17、18と対応する第3、第4増圧制御弁37、38、第1、第2減圧制御弁21、22と対応する第3、第4減圧制御弁41、42、ポンプ19と対応するポンプ39、リザーバ20と対応するリザーバ40、管路A〜Dと対応する管路E〜Hがある。
このような構成により、バキュームブースタ12による助勢のみでは不足しているときには、ポンプ19、39を駆動して各車輪のW/C圧を加圧(以下、このような加圧をポンプ加圧という)することで、所望の制動力を発生させることができる。
また、ブレーキECU70は、ブレーキ制御システム1の制御系を司る本発明の車両運動制御装置に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。図2は、ブレーキECU70の信号の入出力の関係を示すブロック図である。
図2に示すように、ブレーキECU70は、各車輪FL〜RRに備えられた車輪速度センサ71〜74、前後加速度センサ75、バキュームブースタ12の大気圧室と負圧室それぞれに備えられた大気圧センサ76および負圧センサ77からの検出信号およびCAN通信78からの各種車両情報を受け取り、各種物理量の演算や助勢制御等の車両運動制御を実行する。
例えば、ブレーキECU70は、各検出信号に基づいて各車輪FL〜RRの車輪速度を求めると共に、各車輪速度に基づいて推定車体速度(車速)を演算したのちこれを微分することで推定車体加速度(車体加速度)を演算したり、前後加速度センサ値や大気圧センサ値および負圧センサ値の算出を行う。そして、大気圧センサ値と負圧センサ値に基づいてブースト負圧を算出し、このブースト負圧に基づいて従来と同様の手法によって助勢制御を行ったり、推定車体加速度に基づく気圧変化量の演算等を行うことで、大気圧センサ76の異常検出を行ったりする。また、CAN通信78を通じて得たワイパー作動や舵角情報を基に気候変化を推定し、大気圧センサ76の異常検出を補正する。
助勢制御については、従来と同様の手法であるため、詳細については記載しないが、バキュームブースタ12の大気圧室に発生させられる大気圧と負圧室に発生させられる負圧をそれぞれ大気圧センサ76と負圧センサ77からの検出信号に基づいて算出したのち、大気圧と負圧との差圧を演算し、バキュームブースタ12の差圧に基づく助勢では足りない分をポンプ加圧を補償する。このため、ブレーキECU70では、助勢制御を実行する場合には、助勢制御を行うための制御量、すなわち制御対象輪のW/Cに発生させるW/C圧を求め、その結果に基づいて、各制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42への電流供給制御およびポンプ19、39を駆動するためのモータ60の電流量制御を実行する。これにより、ドライバの踏力を倍力した所望の制動力を発生させることが可能となる。
例えば、助勢制御時に各車輪FL〜RRのW/C14、15、34、35をポンプ加圧する場合には、第1、第2差圧制御弁16、36を差圧状態にしてモータ60を駆動することによってポンプ19、39を作動させる。これにより、第1差圧制御弁16、36の下流側(W/C側)のブレーキ液圧は第1、第2差圧制御弁16、36で発生させられる差圧により高くなる。これにより、各W/C14、15、34、35に所望のW/C圧を発生させることができ、所望の制動力を発生させることが可能となる。
続いて、上記のように構成されるブレーキ制御システム1に備えられたブレーキECU70が車両運動制御として助勢制御を実行するに際して行われる大気圧センサ76の異常検出処理について説明する。
図3は、大気圧センサ76の異常検出処理の詳細を示したフローチャートである。この大気圧センサ76の異常検出処理は、図示しないイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わったときに、所定の制御周期毎に実行される。以下、この図を参照して大気圧センサ76の異常検出処理の詳細について説明する。
まず、ステップ100では、各センサ信号の読取を行うセンサ信号読取を行う。図4は、このセンサ信号読取の詳細を示したフローチャートである。この図に示されるように、ステップ200では大気圧センサ76の検出信号から大気圧センサ値Ptmを算出する。次に、ステップ210では、車輪速度センサ71〜74の検出信号から各車輪の車輪速度(車輪速度センサ値)Vwを算出する。そして、ステップ220では、ステップ210で算出された各車輪の車輪速度Vwに基づいて周知の手法を用いて推定車体速度Vを演算する。なお、ここでは車輪速度センサ71〜74の検出信号に基づいて推定車体速度を検出しているが、車速センサの検出信号を用いて測定しても構わない。その後、ステップ230では、ステップ220で演算した推定車体速度Vを時間微分することにより、推定車体加速度dVを演算し、ステップ240では、前後加速度センサ75の検出信号に基づいて前後加速度センサ値Gを算出する。このようにして、センサ信号読取処理が完了する。
次に、ステップ110に進み、気圧変化量演算開始判定を行う。この処理は、気圧変化量を開始して良い条件であるか否かの判定を行うと共に、既に行っていた気圧変化量の演算を一旦終了して新たに気圧変化量の演算を行うべき状態であるか否かの判定を行う。図5は、気圧変化量演算開始判定の詳細を示したフローチャートである。
まず、ステップ300では、推定車体加速度dVの絶対値|dV|が閾値未満であり、尚且つ、推定車体速度Vが閾値1を超えかつ閾値2未満の範囲内にあるか否かを判定する。後述するように高度変化量に基づいて気圧変化量を演算しているが、高度を演算するに際し、車両に発生している前後加速度が大きすぎると誤差成分が含まれている場合があり、正確な値を演算できない可能性がある。例えば、ABS制御中のように前後加速度が大きく変動する場合には、大気圧センサ76の異常検出を行わない方が好ましい。また、車輪速度センサ71〜74の検出信号に基づく推定車体速度Vの演算では、低速域や高速域において誤差が発生し易いことから、これらの場合を除く方が好ましい。このため、推定車体加速度dVの絶対値|dV|が閾値よりも大きい場合や、推定車体速度Vが低速域を規定する閾値1と高速域を規定する閾値2の間の範囲内の場合にのみ、気圧変化量推定値演算が開始されるようにしている。
このステップ300で肯定判定されるとステップ310に進み、気圧変化量演算開始を許可し、例えば図示しない許可判定フラグをセットする。これと同時に、気圧変化量演算が開始されてからの経過時間を計測するために、ブレーキECU70に内蔵された図示しない経過時間カウンタのカウント値Kを1つインクリメントする。そして、ステップ320でカウント値Kが閾値を超えたか否かを判定し、超えていなければ気圧変化量演算開始を許可したままとして処理を終了する。一方、ステップ300もしくはステップ320で否定判定された場合にはステップ330に進み、気圧変化量演算開始を禁止すべく、例えば図示しない許可判定フラグをリセットすると共に、カウント値Kを0にリセットする。
すなわち、後述するように大気圧センサ76の異常判定は、気圧変化量のセンサ値と推定値とを比較して行うが、その異常判定を行っている期間が一定期間に達すると、各比較対象が一旦リセットされるようにしている。このようにすれば、一定期間を周期として改めて気圧変化量のセンサ値と推定値の比較が行われることになる。気圧変化量のセンサ値と推定値との差は、積算によって大きくなった推定値の誤差により大きくなることがあるため、大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性がある。しかしながら、このように一定期間ごとにリセットして改めて気圧変化量のセンサ値と推定値の比較を行うようにすることで、大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまうことを防止することができる。このようにして、気圧変化量演算開始判定が完了する。
続いて、ステップ120に進み、オフセット量演算を行う。具体的には、前後加速度センサ75のオフセット量を演算する。図6は、このオフセット量演算処理の詳細を示したフローチャートであり、この図を参照して説明する。
ステップ400では、推定車体加速度dVの絶対値|dV|が0[G]以下かつ推定車体速度Vが0[km/h]以下であるか否かを判定する。つまり、前後加速度センサ75とは別の車輪速度センサ71〜74にて車両が停止している状態であることを判定している。ここで、車両が停止していればオフセット演算を行うためにステップ410に進み、前後加速度センサ値Gの積算値であるGオフセット1積算値(=Σ(G))を演算する。このとき演算するGオフセット1積算値は、今回の制御周期におけるGオフセット1積算値であり、前回の制御周期までのGオフセット1積算値に対して今回の制御周期に算出された前後加速度センサGを加算することによって求められる。また、積算回数カウンタのカウント値Iを1つインクリメント(I=I+1)とする。
逆に、車両が停止していなければ、オフセット量を演算するのに適していないため、ステップ420に進み、Gオフセット1積算値を0にリセットすると共に、積算回数カウンタのカウント値IをI=0にリセットする。
次に、ステップ430に進み、積算回数カウンタのカウント値Iが閾値を超えているか否かを判定することにより、積算回数が所定回数に達したことを判定する。これにより、所定回数算出した前後加速度センサ値Gに基づいて、より正確なオフセット量が検出できるようにしている。
そして、ステップ430で肯定判定されれば、ステップ440に進み、Gオフセット1積算値を積算回数で割ることにより、仮のオフセット量であるGオフセット1aveを演算する(Gオフセット1ave=Gオフセット1積算値/I)。さらに、Gオフセット1aveを所定回数積算し、その積算したGオフセット1aveに基づいてより正確なオフセット量を求めるべく、Gオフセット1aveの積算値であるGオフセット2積算値(=Σ(Gオフセット1ave))を演算する。すなわち、Gオフセット1aveを演算したときに車両が坂路で停車していた場合には、前後加速度センサ75の検出信号に重力加速度成分が含まれることになるため、Gオフセット1aveの演算を複数回行うことで、坂路による誤差を除去できるようにする。このとき演算するGオフセット2積算値は、今回のGオフセット1aveの積算値であり、前回までのGオフセット1aveの積算値に対して今回算出されたGオフセット1aveを加算することによって求められる。また、積算回数カウンタのカウント値Jを1つインクリメント(J=J+1)とする。
この後、ステップ450に進み、積算回数カウンタのカウント値Jが閾値を超えていて、積算回数が所定回数に達しており、かつ、オフセット補正未完了であるか否かを判定する。オフセット補正未完了か否かについては、後述するオフセット量値有効フラグがオンされているか否かに基づいて判定している。ここで否定判定されれば、処理を終了し、次の演算周期のときに再び上記処理が繰り返される。また、肯定判定されれば、ステップ460に進んでGオフセット2積算値を演算回数で割ることにより最終的なオフセット量を演算する(オフセット量=Gオフセット2積算値/J)。そして、ステップ470に進み、オフセット量値有効フラグをオンして処理を終了する。このようにして、前後加速度センサ75のオフセット量が演算され、オフセット補正演算が完了する。
その後、ステップ130に進み、気圧変化量を推定する気圧変化量推定値演算処理を行う。気圧は、高度と密接に関係しており、高度が高くなるほど気圧が低くなるという関係を有している。このため、気圧変化量は、高度変化量と対応した値となることから、高度変化量を推定することで、気圧変化量を推定することが可能となる。以下、具体的な気圧変化量推定の考え方について、図7および図8を参照して説明する。
図7は、高度変化量の演算方法を説明するための模式図である。この図に示されるように、任意の地点Aから地点Bに移動した時の高度変化量は、単位時間当たりの高度変化量を時々刻々と算出しておき、それを積分することによって演算することができる。そして、単位時間当たりの高度変化量については、勾配角度と推定車体速度とから演算することができる。例えば、演算周期が0.2秒の場合、0.2秒当たりの推定車体速度が0.2秒間に進む走行距離、つまり単位時間当たりの走行距離となるため、0.2秒当たりの推定車体速度V[m/s]に対して勾配角度θの正弦値(sinθ)を乗算することにより単位時間(例えば0.2秒)当たりの高度変化量を演算することができる。そして、勾配角度θについては、推定車体加速度dVが勾配成分を含んでいない値になっているのに対して、前後加速度センサ値Gが勾配成分を含む値となっていることから、これらの差で表される加速度偏差ΔG(=G−dV)が勾配成分のみの加速度(勾配G)となり、この加速度偏差ΔGを用いて勾配角度θを演算することができる。すなわち、sinθが加速度偏差ΔGを重力加速度(1G)で割った値になるため、加速度偏差ΔGのsin-1の値を演算することで、勾配角度θを演算することができる。
図8は、このような気圧変化量推定値演算を行うブレーキECU70内の機能ブロックを示したブロック線図である。この図に示されるように、まず、前後加速度センサ値Gから推定車体速度dVを差し引くことで勾配G、つまり加速度偏差ΔGを求め、続いてsin-1(ΔG)を演算し、更にその値の正接値(tan(sin-1(ΔG)))を演算する。さらに、その正接値に対して単位時間当たりの推定車体速度Vを掛け合わせることにより、単位時間当たりの高度変化量を演算することができる。そして、この単位時間当たりの高度変化量を積算することで、任意の地点Aから地点Bまでの高度変化量が演算され、1000m当たり10kPa気圧変化があることから、演算された高度変化量を0.01倍することで気圧変化量を推定することができる。
なお、このようにして気圧変化量を推定することが可能であるが、大気圧センサ76が正常であったとしても、推定値の誤差が大きくなってくると、大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性がある。このため、例えば一定時間ごとに区切って気圧変化量を推定し、一定期間を周期として大気圧センサ76の検出信号に基づいて検出した気圧変化量(以下、センサ値という)と推定によって求められた気圧変化量(以下、Δ推定値という)とを比較するということを繰り返すことで誤判定を防止するのが好ましい。このため、上述したステップ110の気圧変化量演算開始判定において、経過時間カウンタのカウント値Kが所定の閾値に達する毎に、その比較対象となる気圧変化量のセンサ値と推定値とをリセットするようにしている。
図9は、気圧変化量推定値演算の詳細を示したフローチャートである。この図に示すように、まず、ステップ500において、気圧変化量演算開始が許可されているか否かを判定する。例えば、上述したステップ310でセットされる許可判定フラグに基づいて判定される。ここで、否定判定されれば、気圧変化量演算開始が許可されていないため、ステップ510に進んで気圧変化量の推定値であるΔ推定値を0として処理を終了し、肯定判定されればステップ520に進む。
ステップ520では、加速度偏差ΔG(=G−dV)を演算する。このとき、前後加速度センサ値Gをそのまま用いても良いが、ここではステップ120のオフセット補正演算処理で演算したオフセット量を加味した補正後の加速度センサ値G(以下、前後加速度センサ値G(補正後)という)を用いるようにする。具体的には、前後加速度センサ値Gからオフセット量分を除去することで、前後加速度センサ値G(補正後)を演算している。
さらに、この前後加速度センサ値G(補正後)から推定車体加速度dVを差し引くことで勾配G、つまり加速度偏差ΔGを求める。これにより、オフセット量を除去した補正後の前後加速度センサ値Gに基づいた加速度偏差ΔGを演算することが可能となる。
続いてsin-1(ΔG)を演算することにより勾配角度θを求めたのち、その値の正接値(tan(sin-1(ΔG)))を演算する。さらに、その正接値に対して制御周期Tでの移動距離、つまり推定車体速度Vと制御周期Tを掛け合わせた値を掛けることにより演算すれば、制御周期Tにおける高度推定変化量であるΔ高度推定変化量を演算することができる。そして、演算されたΔ高度推定変化量に対して高度を気圧に変換するための変換係数(=0.01倍)を掛けることで、制御周期Tでの気圧変化量の推定値であるΔ気圧推定変化量を演算することができる。
そして、ステップ530に進み、気圧変化量推定値演算が開始されてから前回の制御周期までに演算されていたΔ気圧推定変化量の積算値に対してステップ520で演算されたΔ気圧推定変化量を足し込むことで、任意の地点からのΔ気圧推定変化量の積分値が求められ、この値が気圧変化量推定値演算が開始されてから今回の制御周期までのΔ推定値となる。このようにして、気圧変化量推定値演算が完了する。
続いて、図3のステップ140に進み、気圧センサ変化量演算処理を行う。ここでは、気圧変化量推定値演算が開始されてからの大気圧センサ76で検出された大気圧の変化量であるΔセンサ値を求める。図10は、この気圧センサ変化量演算処理の詳細を示したフローチャートである。
まず、ステップ600において、図9のステップ500と同様、気圧変化量演算開始が許可されているか否かを判定する。ここで、否定判定されれば、気圧変化量演算開始が許可されていないため、ステップ610に進んで大気圧センサ値Patmを保持値PatmHoldとして記憶しておく。そして、肯定判定されたときに、ステップ620に進んでそのときの制御周期に算出した大気圧センサ値Patmから記憶しておいた保持値PatmHoldを差し引くことにより、気圧変化量のセンサ値であるセンサ値ΔPatmを算出する。すなわち、気圧変化量演算開始が許可される直前の大気圧センサ値Patmを保持値PatmHoldとして記憶してあり、これが基準地点で計測した基準気圧になる。このため、気圧変化量演算開始が許可されてから制御周期毎に算出された大気圧センサ値Patmから保持値PatmHoldを差し引くことにより、気圧変化量演算開始が許可されてから、つまり基準地点から大気圧センサ76が検出した大気圧センサ値Patmの気圧変化量を演算することができる。このようにして、気圧センサ変化量演算が完了する。
この後、図3のステップ150に進み、ゲインばらつき量演算を行う。車体速度に応じて車輪速度センサ71〜74の検出信号にばらつきが生じることから、その検出信号に基づいて演算している車輪速度Vwや推定車体速度Vおよび推定車体加速度dVなどにばらつきが生じるというゲインばらつきが発生する。ゲインバラツキ量演算では、このゲインばらつき量、つまり車輪速度センサ71〜74から算出した車輪速度Vw等のゲインばらつき最大誤差から真の値を差し引いた値を演算する。
例えば、車輪速度センサ71〜74は、電磁ピックアップ式のように、車輪回転に応じたパルス信号を出力することから、検出信号に含まれるパルス数を測定することによって車輪速度Vwを演算している。しかしながら、タイヤは走行速度が高くなるほど遠心力が強く働き、図11に示すタイヤ側面の模式図のように、主に荷重により変形していたサイドウォールの変形量が減少して、タイヤ半径が大きくなり、タイヤ1回転当たりに進む距離が多くなる。これが車体速度変化に伴う車輪速度Vwの誤差(ばらつき)となって現れ、当然、車輪速度Vwから演算している推定車体速度Vおよび推定車体加速度dVなどにも誤差として現れるのである。この誤差は、車体速度が大きくなるほど大きくなる。このため、予め実車走行実験などから算定した車体速度−ゲインばらつき量のマップを用意してブレーキECU70に記憶しておき、このマップから推定車体速度Vに対応するゲインばらつき量を導出すると共に、このゲインバラツキ量を積算することにより、今回の走行におけるゲインばらつき量を演算して、大気圧センサ76の異常検出の判定値の補正に用いるようにする。なお、ここではばらつき要素としてタイヤ変形に依る場合を想定しているが、前後加速度センサ75の温度による出力ばらつき等をばらつき要素として考慮してゲインばらつき量を設定することもできる。
図12(a)は、ゲインばらつき量演算の詳細を示したフローチャートである。この図に示されるように、まず、ステップ700で図9のステップ500と同様、気圧変化量演算開始が許可されているか否かを判定する。ここで、否定判定されれば、気圧変化量演算開始が許可されていないため、ステップ710において今回の制御周期のときのゲインばらつき量であるΔゲインばらつき量を0にすると共に、ステップ720においてゲインばらつき値が有効であることを示すゲインばらつき値有効フラグをオフして処理を終了する。そして、肯定判定されたときに、ステップ730に進んで、予め用意しておいたマップを用いて、図4のステップ220で算出した推定車体速度Vおよび推定車体加速度dVと対応するゲインばらつき量diffV、つまりばらつきを考慮した設計値に対する実力値を導出することにより、今回の制御周期でのゲインばらつき量diffVを求める。
図12(b)は、このマップの拡大図である。同じ車体速度であっても車体加速度が異なることから、ゲインばらつき量が異なってくる。例えば、同じ車体速度の場合、車体加速度が大きいほどゲインばらつき量が大きくなる。また、同じ車体加速度であっても車体速度が大きいほどゲインばらつきが大きくなる。このため、推定車体速度Vと推定車体加速度dVとに基づいて、演算周期毎のゲインばらつき量diffVを求める。
その後、ステップ740に進み、気圧変化量推定値演算が開始されてから前回の制御周期までに演算されていたゲインばらつき量diffVの積算値であるΔゲインばらつき量(=Σ(diffV))に対してステップ730で演算されたゲインばらつき量diffVを足し込むことで、気圧変化量推定値演算が開始されてから今回の制御周期までのΔゲインばらつき量を演算することができる。そして、ステップ750に進んでゲインばらつき値有効フラグをオンし、処理を終了する。このようにして、ゲインばらつき量演算が完了する。
続いて、図3のステップ160に進み、異常判定閾値演算処理を実行する。異常判定閾値演算処理では、ステップ120で演算されたオフセット量やステップ150で演算されたΔゲインばらつき量、さらには天候を考慮して、大気圧センサ76が異常であるか否かの判定に用いる異常判定閾値を演算する。図13−aおよび図13−bは、この異常判定演算処理の詳細を示したフローチャートである。
まず、ステップ800では、オフセット量値有効フラグがオン、かつ、ゲインばらつき値有効フラグがオンされているか否かを判定する。ここで否定判定されれば、ステップ805に進み、異常判定閾補正値をオフセット補正やゲインばらつき量に基づく補正を行わない場合に想定される値、例えば300kPaに設定する。そして、肯定判定されればステップ810に進む。
ステップ810では、図3のステップ150で演算したΔゲインばらつき量とステップ120で演算したオフセット量の関係から、レベル設定を行う。レベル設定とは、異常判定閾補正値の補正レベルを設定するものであり、レベル設定で設定されるレベルが高い程、異常判定閾補正値がより多く補正される値となるようにする。本実施形態では、例えば、Δゲインばらつき量とオフセット量との関係に対応するレベルの境界線を段階的に表したマップを予めブレーキECU70に記憶しておき、そのマップに基づいてレベル設定を行っている。
そして、ステップ815〜825に進み、ステップ810でレベル1〜4のいずれが設定されたかを判定する。そして、レベル1が設定されていればステップ830で異常判定閾補正値として判定閾値5を設定し、レベル2が設定されていればステップ835で異常判定閾補正値として判定閾値4を設定し、レベル3が設定されていればステップ840で異常判定閾補正値として判定閾値3を設定し、レベル4が設定されていればステップ845で異常判定閾補正値として判定閾値2を設定する。
この後、ステップ850に進み、外乱が無い場合に想定される判定閾値1に対して、先ほど設定された異常判定閾補正値(判定閾値2〜5または300kPa)を足し合わせることで、今回の制御周期における異常判定閾値を演算する。
さらに、ステップ855以降では、気候を考慮した異常判定閾補正値の補正を行う。すなわち、気候に応じて大気圧センサ76で検出された大気圧が変動することを加味して異常判定閾補正値の補正を行う。
具体的には、ステップ855では、ワイパー駆動が有るか否かを判定する。ワイパー駆動がある場合とは、図示しないワイパースイッチがオンからオフ、オフからオンに変化したことを意味している。変化があった時点は、今回の制御周期内であっても良いし、今回の制御周期から規定時間前までの期間内であっても良い。
このワイパー駆動がある場合とは、雨天であることを示している。雨天の場合、気圧が小さく検出される。このため、ステップ850で演算された異常判定閾値を雨天用に補正するために、ステップ860に進んで異常判定閾補正値として判定閾値6を設定する。補正係数6は、大気圧センサ76で検出された大気圧が低い値で検出されていることを想定して設定される値である。
一方、ステップ855で否定判定された場合にはステップ880に進み、経過時間カウンタのカウント値Lをインクリメントし、ステップ882へ進む。そして、ステップ882でカウント値Lと閾値を比較することで今回の判定期間が終了したか否かを判定し、超えていなければステップ884へ進む。一方、ステップ882で肯定判定された場合はステップ886へ進む。ステップ886では、次の判定期間に向けて、ハンドル操作量を0クリアし、カウンタ値Lを0とし、ステップ884へ進む。ステップ884では、推定車体速度Vから車両が停止中か否かを判定する。走行中であればステップ884は肯定判定となり、ステップ886に進みハンドル操作量を積算する。
ハンドル操作量とは、所定期間内のハンドル操作頻度を表す値であり、例えば舵角センサ等の検出信号から求められる舵角と直進位置に対応する舵角との偏差(以下、舵角偏差という)の絶対値を求め、気圧変化量演算開始からの期間内における舵角偏差の絶対値の積分値を演算することでハンドル操作量を求めることができる。
ステップ886でハンドル操作量を求めた後はステップ865へと進む。一方、車両が停止中であれば、ステップ884は否定判定され、ハンドル操作量の積算を行わずにステップ865へ進む。ステップ865では、所定期間におけるハンドル操作量が閾値を超えているか否かを判定する。
ここで、所定期間におけるハンドル操作量は、車両が移動した距離に対応した値となる。すなわち、ハンドル操作が多いほど車両が近い範囲内に留まっていることを示しており、ハンドル操作量が少ないほど車両がより遠方まで移動していることを示している。そして、車両が近い範囲内に留まっていれば気候変化の可能性が少ないが、より遠方まで移動した場合には気候変化の可能性が生じてくる。したがって、ステップ865で肯定判定されればステップ870に進み、異常判定閾補正値として判定閾値7を設定する。この判定閾値7は、気候変化の可能性があるために、大気圧センサ76で検出された大気圧が低い値で検出されている可能性があることを想定して設定される値である。ただし、判定閾値7は、判定閾値6のように雨天であることを想定した値よりも補正量が小さくなるように、判定閾値6と比較して小さな値とされている。
また、ステップ865で否定判定された場合には異常判定閾補正値を0にしてステップ875に進み、ステップ860、870の処理が完了した後もステップ875に進む。そして、ステップ875において、ステップ850で設定された異常判定閾値とステップ860もしくはステップ870で設定された異常判定閾補正値を足し合わせることにより、最終的な異常判定閾値を演算する。このようにして、大気圧センサ76の異常判定に用いられる閾値である異常判定閾値を演算することができる。
異常判定閾値が設定されると、図3のステップ170に進み、ステップ140で演算したセンサ値ΔPatmとステップ130で演算したΔ推定値との差の絶対値|ΔPatm−Δ推定値|がステップ160で演算された異常判定閾値を超えているか否かを判定する。
そして、ステップ180で肯定判定されれば、気圧変化量のセンサ値ΔPatmとΔ推定値との差が大気圧センサ76に異常が発生していると考えられるほど大きな値になっているということであるため、ステップ180に進んで大気圧センサ76が異常であることを確定する。これにより、ブレーキECU70は、大気圧センサ76が異常である場合の車両運動制御を実行する。例えば、バキュームブースタ12による助勢を行わず、ポンプ加圧のみによってドライバのブレーキペダル踏み込みによる踏力を増大させたW/C圧を発生させるような助勢制御を行う。また、図示しないインストルメントパネルに備えられた表示器にて大気圧センサ76が異常であることを表示し、ドライバに大気圧センサ76の異常を報知する。
また、ステップ180で否定判定されれば、大気圧センサ76に異常が発生していないため、そのまま処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態では、前後加速度センサ75の検出信号に基づいて検出される勾配角度θや車輪速度センサ71〜74の検出信号に基づいて演算される推定車体加速度dVを用いて高度変化量を算出し、高度変化量から気圧変化量を推定するようにしている。そして、気圧変化量のセンサ値と推定値とを比較することにより、大気圧センサ76の異常を検出している。これにより、GPS受信装置が無くても大気圧センサ76の異常検出を行うことが可能となる。
また、気圧変化量のセンサ値ΔPatmとΔ推定値を一定期間毎にリセットし、これらの比較が一定期間を周期として繰り返し行われるようにしている。このため、Δ高度変化量を積算した高度変化量に基づいて算出した気圧変化量の推定値に積算による誤差が生じても、その誤差をリセットすることができるため、大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまうことを防止することができる。
つまり、気圧変化量のセンサ値と推定値を一定期間毎にリセットせずに、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わってからのトータルの気圧変化量と推定値との差を閾値と比較することもできる。しかしながら、この場合には、推定値の誤差が大きくなってくると、大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性がある。このため、本実施形態のように、一定期間ごとにリセットすることで誤判定を抑制することが可能となる。
また、前後加速度センサ75のオフセット補正を行うようにしている。これにより、より正確に気圧変化量の推定値を演算することが可能となり、より正確に大気圧センサ76の異常検出を行うことが可能となる。したがって、さらに大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性を少なくすることができる。
また、オフセット量やゲインばらつき量に応じて異常判定閾値を補正しているため、外乱要因によって気圧変化量のセンサ値ΔPatmやΔ推定値に誤差が生じても、それに対応した異常判定閾値を設定することが可能となる。したがって、さらに大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性を少なくすることができる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、車輪速度センサ71〜74や前後加速度センサ75の検出信号に基づいて高度変化量を演算し、この高度変化量に基づいて気圧変化量を演算するようにしているが、さらに前後加速度センサ75のオフセット量を演算して前後加速度センサ値Gを補正したり、オフセット量やゲインばらつき量および天候を加味して異常判定閾値を演算したりしている。これらについては必ずしも大気圧センサ76の異常判定に適用しなければならない訳ではなく、選択的に適用すれば良いが、これらを適用することにより、より大気圧センサ76が正常なのにも関わらず異常であると誤判定してしまう可能性を少なくすることが可能となる。
また、上記実施形態では、オフセット量やゲインばらつき量および天候を加味して異常判定閾値を可変にしているが、これらに基づいて気圧変化量のΔ推定値を可変にしても構わない。すなわち、オフセット量やゲインばらつき量に応じて補正レベルを設定し、その補正レベルに応じて気圧変化量のΔ推定値を補正する補正係数を掛けることで、気圧変化量のΔ推定値を補正しても構わない。この場合、気圧変化量のΔ推定値に対して補正係数を掛けるのではなく、ステップ520で演算されているΔ高度推定変化量に対して補正係数を掛けるようにしても構わない。
また、上記実施形態では、ステップ520において制御周期Tにおける高度推定変化量であるΔ高度推定変化量から制御周期Tにおける気圧変化量の推定値であるΔ気圧推定変化量を演算し、Δ気圧推定変化量を積算することにより気圧変化量のΔ推定値を求めた。これに対して、例えばΔ高度推定変化量を積算することで高度推定変化量を演算しておき、高度推定変化量を気圧変換することで、気圧変化量のΔ推定値を求めることもできる。この場合、高度推定変化量に対して補正係数を掛けるようにしても、オフセット量やゲインばらつき量および天候を加味して気圧変化量のΔ推定値を補正することができる。
さらに、上記実施形態では、オフセット量およびゲインばらつき量に対応する補正レベルや天候に応じた異常判定閾補正値を外乱が無い場合に想定される異常判定閾値(判定閾値1)に対して足し合わせることによって最終的な異常判定閾値を演算している。これに対して、補正レベルや天候に応じた補正係数を外乱が無い場合に想定される異常判定閾値に掛け合わせることにより、最終的な異常判定閾値を演算しても良い。
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。すなわち、ステップ110の処理を実行する部分が開始判定手段、ステップ120の処理を実行する部分がオフセット量演算手段、ステップ140の処理を実行する部分が気圧センサ変化量演算手段、ステップ150の処理を実行する部分がゲインばらつき量演算手段、ステップ160の処理を実行する部分が異常判定閾値演算手段、ステップ170、180のの処理を実行する部分が異常判定手段、ステップ200の処理を実行する部分が大気圧検出手段、ステップ220の処理を実行する部分が車速検出手段、ステップ240の処理を実行する部分が前後加速度検出手段、ステップ855、865の処理を実行する部分が気候判定手段(そのうちステップ855の処理を実行する部分は雨天検出手段、ステップ865の処理を実行する部分は気候変化判定手段)に相当している。
1…ブレーキ制御システム、50…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、70…ブレーキECU、75…前後加速度センサ、76…大気圧センサ、77…負圧センサ

Claims (10)

  1. 大気圧センサ(76)に基づいて大気圧(Patm)を検出する大気圧検出手段(200)と、
    車両の速度(V)を検出する車速検出手段(220)と、
    路面勾配(θ)を検出する路面勾配検出手段(520)と、
    前記大気圧検出手段の基準地点での大気圧検出値である基準気圧を記憶し、記憶した前記基準気圧と現在の大気圧検出値の差から気圧変化量のセンサ値を演算する気圧センサ変化量演算手段(140)と、
    前記路面勾配検出手段で検出した路面勾配と前記車速検出手段で検出した車両の速度から車両の高度変化量である高度推定変化量を推定し、前記高度推定変化量に基づいて前記基準地点からの高度変化に伴う気圧変化量の推定値を演算する気圧変化量推定値演算手段(130)と、
    前記気圧変化量のセンサ値と前記気圧変化量の推定値との差と、前記大気圧センサが異常であることを示す基準値となる異常判定閾値とを比較することで、前記大気圧センサの異常を判定する異常判定手段(170、180)と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置。
  2. 前記気圧変化量推定値演算手段による前記気圧変化量の推定値の演算開始の許可を判定する開始判定手段(110)を有し、
    該開始判定手段(110)は、所定期間毎に前記気圧変化量推定値演算手段で演算された前記気圧変化量の推定値を0にさせ、前記気圧変化量推定値演算手段による前記気圧変化量の推定値の演算を改めて開始させることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
  3. 前記気圧変化量推定値演算手段は、単位時間当たりの高度変化量を前記高度推定変化量として推定すると共に、該高度推定変化量から単位時間当たりの気圧変化量を気圧推定変化量として推定し、該気圧推定変化量を積分することで、前記気圧変化量の推定値を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御装置。
  4. 車両に搭載される前後加速度センサ(75)に基づいて車両に加わる前後方向加速度(G)を検出する前後加速度検出手段(240)を有し、
    前記路面勾配検出手段は、前記車速検出手段が検出した車両の速度から該車両の前後方向加速度の推定値である推定加速度(dV)を算出すると共に、前記前後加速度検出手段が検出した前記前後方向加速度と前記推定加速度に基づいて路面勾配を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
  5. 前記前後加速度センサのオフセット量を演算するオフセット量演算手段(120)を有し、
    前記路面勾配検出手段は、前記前後加速度検出手段が検出した前記前後方向加速度から前記オフセット量を差し引いた値と前記推定加速度に基づいて路面勾配を算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用制御装置。
  6. 前記異常判定閾値を演算する異常判定閾値演算手段(160)を有すると共に、
    前記前後加速度センサのオフセット量を演算するオフセット量演算手段(120)と、前記車速検出手段で検出される車両の速度および該車両の速度から推定した推定加速度のゲインばらつき量を演算するゲインばらつき量演算手段(150)の少なくとも一方を有し、
    前記異常判定閾値演算手段は、前記オフセット量と前記ゲインばらつき量の少なくとも一方に基づいて前記異常判定閾値を補正することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
  7. 前記異常判定閾値を演算する異常判定閾値演算手段(160)と、
    気候もしくは気候の変化を判定する気候判定手段(855、865)とを有し、
    前記異常判定閾値演算手段は、前記気候判定手段による判定結果に基づいて前記異常判定閾値を補正することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
  8. 前記気候判定手段は、雨天であることを検出する雨天検出手段(855)を有し、
    前記異常判定閾値演算手段は、前記雨天時には前記異常判定閾値を雨天ではない時に比べて低下させるよう補正することを特徴とする請求項7に記載の車両用制御装置。
  9. 前記気候判定手段は、ハンドル操作量を検出すると共に、前記ハンドル操作量が閾値より小さければ気候の変化があると判定する気候変化判定手段(865)を有し、
    前記異常判定閾値演算手段は、前記気候変化判定手段にて気候の変化があると判定されると、気候の変化があると判定されなかった場合に比べて前記異常判定閾値を低下させるよう補正することを特徴とする請求項7または8に記載の車両用制御装置。
  10. ブレーキ操作部材の操作に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ(13)と、
    負圧が供給されると共に、該負圧を利用することで前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を高めるバキュームブースタ(12)と、
    前記負圧を検出する負圧検出手段(77)と、
    前記マスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を加圧するブレーキ液圧制御用アクチュエータ(50)と、を備えた車両に搭載され、
    前記大気圧検出手段で検出された大気圧と前記負圧検出手段で検出された負圧とに基づいて、前記ブレーキ液圧制御用アクチュエータを用いて前記マスタシリンダに発生させるブレーキ液圧を制御する車両用ブレーキ制御システムに適用されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
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