JP2011116608A - ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】次の一般式(1):
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、yは、0.05〜0.2である。)
で表されるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を製造する方法であって、
(i)反応槽内の空間部に不活性ガスを供給しながら、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ該反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させ、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得る工程、および
(ii)得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、大気雰囲気中において300℃から500℃までの昇温速度を4℃/分以下として昇温し、最高到達温度を600〜900℃の温度として焼成し、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得る工程、を含むことを特徴とするニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法により提供。
【選択図】なし
Description
この解決策としては、コバルト、マンガン、鉄等の遷移金属元素又はアルミニウムを添加することで、リチウムイオン電池の正極材料として安全性やサイクル特性が良好なリチウムニッケル複合酸化物を得ることが一般的である。
この方法では、錯形成剤としてアンモニア化合物を用いた場合、錯形成せずに生成した微細な水酸化アルミニウムが水酸化ニッケル粒子の成長を阻害して、高密度でかつリチウムイオン電池正極材料原料用として好適な粒径(5μm以上の平均粒径)を有する粒子は得られない。また、アンモニア化合物以外の錯形成剤を用いた場合には、生成ニッケルアルミニウム複合水酸化物粒子中に錯形成剤が取り込まれるため、不純物を含むニッケルアルミニウム複合水酸化物が得られ、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いるリチウムニッケル複合酸化物として好ましくない。
この方法では、生成した水酸化ニッケル粒子中へのハロゲンの混入が避けられない。したがって、この水酸化ニッケルをリチウムイオン電池正極材料用の原料として用いた場合には、焼成時にハロゲンガスが発生して炉材を痛めるなどの弊害が生じる。
以上のように、従来の製造方法では、水酸化ニッケル粒子中への錯形成剤又はハロゲンの混入を避けることができない。
一般式: Ni(1−x−y)MxAly(OH)2
(式中、Mは、Co又はMnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、xは、0.01〜0.2、及び、yは、0.01〜0.15である。)
しかしながら、前記一般式におけるMとしてコバルトを選択した場合、得られるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子中に錯形成剤やハロゲンなどの混入はないものの、得られる粒子の粒径が季節により変動して、高密度でかつリチウムイオン電池正極材料原料用として好適な粒径を有する粒子が得られない場合が発生し、ときによりリチウムイオン電池正極材料用の原料として好適なニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子が得られないという新たな問題が明らかになった。
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、yは、0.05〜0.2である。)
で表されるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を製造する方法であって、
(i)反応槽内の空間部に不活性ガスを供給しながら、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ該反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させ、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得る工程、および
(ii)得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、大気雰囲気中において300℃から500℃までの昇温速度を4℃/分以下として昇温し、最高到達温度を600〜900℃の温度として焼成し、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得る工程、を含むことを特徴とするニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法が提供される。
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、及び、yは、0.05〜0.2である。)
本発明のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、次の一般式(1):
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、yは、0.05〜0.2である。)
で表される化合物であって、そのニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう。)は、下記(i)および(ii)の工程を含むことを特徴とする。
(i)反応槽内の空間部に不活性ガスを供給しながら、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ該反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させ、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得る工程
(ii)得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、大気雰囲気中において300℃から500℃までの昇温速度を4℃/分以下として昇温し、最高到達温度を600〜900℃の温度として焼成し、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得る工程
すなわち、反応槽内のコバルトの酸化は、反応槽内の空間部に存在する空気中の酸素が、反応槽の攪拌に伴い液中に巻き込まれることが原因で発生しているものであると考えられる。反応槽内の空間部には反応液中から遊離してきた非常に水に対する溶解性の高いアンモニアガスが存在し、それが気温の低下により反応槽のフタなどに凝縮した反応液からの水蒸気由来の水滴に吸収されて反応槽内の空間部が負圧になり、そのため、オーバーフロー口などの大気と繋がっている開口部から空気が流入することによるものと考えられる。
なお、気温の高い場合は、水蒸気の凝縮も発生せず、反応液中から遊離してくるアンモニアガスにより反応槽内の空間部が正圧になるため、空気の混入量が抑えられると考えられる。したがって、気温の低下により反応槽内の空間部への空気の混入量が増加することで、反応槽内の空間部の酸素濃度が上昇し、結果的に反応液中へ供給される酸素量が増加することにより、コバルトの酸化が促進される。
なお、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物中に含有されるコバルトの全量に対する3価のコバルトの比率は、前記複合水酸化物を分析して、3価のCo品位と全Co品位を得て、その比(3価のCoの質量%/全Coの質量%)から求められる。
なお、前記不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが挙げられるが、経済性から窒素を用いることが好ましい。
前記ニッケル化合物及びコバルト化合物としては、特に限定されるものではないが、硫酸塩又は塩化物が好ましく、ハロゲンによる汚染のない硫酸塩がより好ましい。
本発明の製造方法で用いるアルミン酸ナトリウム水溶液の濃度としては、特に限定されるものではなく、また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度も特に限定されるものではない。その際、いずれの濃度も反応液中の粒子濃度が過度に低下し生産性が悪化しない程度で、かつ結晶の再析出による配管詰まりを防止できる程度とすればよい。
本発明の製造方法で用いるアンモニウムイオン供給体の水溶液の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常の中和に用いられる濃度、例えば、アンモニア水を用いる場合は、アンモニア濃度として10〜30質量%でよい。
上記反応液のアンモニウムイオン濃度は、特に限定されるものではないが、5〜25g/リットルの範囲の一定値に保持されることが好ましい。すなわち、アンモニウムイオン濃度が5g/リットル未満では、所定の平均粒径まで水酸化ニッケル粒子を成長させることができない。一方、25g/リットルを超えると、濃度を維持するために添加するアンモニウムイオン供給体の必要量が多くなるとともに反応槽からのアンモニウムイオンの揮発量も増える。その際、前記アンモニウムイオン濃度の変動は、1g/リットル以下とすることが好ましく、変動が大きくなると粒径の変動が大きくなる虞がある。
ここで、(ii)の工程における焼成では、300℃から500℃までの昇温速度を4℃/分以下として昇温することが重要である。
前記最高到達温度で保持す時間は、酸化物への転換が十分に行われる時間とすればよいが、1〜10時間とすることが好ましい。1時間未満では、転換が十分に行われない場合があり、10時間を越えても生産性が低下するのみである。
上記焼成において用いられる焼成炉は、特に限定されるものではなく、一般的な焼成炉が用いられ、例えば、プッシャー炉やローラーハース炉が用いられる。
本発明の製造方法により得られるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、下記(1)の一般式で表され、その平均粒径は5〜20μmであるものである。
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、及び、yは、0.05〜0.2である。)
上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物において、5〜20μmの平均粒径を有する略球状粒子であることが重要である。これによって、これを用いて得られる正極材料の充填性が向上し、電池として高容量化が達成される。
すなわち、平均粒径が5μm未満では、得られる正極材料の充填性が極度に悪化して電池の容量が低下する。一方、粒子の平均粒径が20μmを超えると、粉末の粒径が粗いので電極を成形する際に成形性が悪化する。また、中間体であるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径も7μm以下では、得られる前記複合酸化物の平均粒径が5μm未満となるため好ましくない。
なお、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を用いて、リチウム塩と混合し、焼成する方法は、特に限定されず、通常行なわれている任意の方法でよい。そして、リチウムニッケル複合酸化物を合成することによって、電池として充放電サイクル特性と熱的安定性等の安全性に優れた高性能リチウムニッケル電池の正極材料が得られる。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)3価のコバルトの分析:塩化第二鉄溶液を使用し、ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として、二クロム酸カリウム溶液で滴定する方法、例えば「コバルト酸化物中の金属コバルト、コバルト(II)及びコバルト(III)の分別定量」(並木美智子、広川吉之助:分析化学、30、143(1981))に記載の方法に従った。
(3)アンモニウムイオン濃度の分析:JIS標準による蒸留法によって測定した。
(4)平均粒径の測定:レーザー回折式粒度分布計(商品名マイクロトラック、日機装製)を用いて行った。
(5)粒子形状の観察:走査型電子顕微鏡を用いて行った
(A)ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の調製
まず、室温が30℃の状況下で、下記のとおり、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液(ニッケルコバルト水溶液)、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を作製した。
ニッケルコバルト水溶液:工業用硫酸ニッケル6水和物21.8kgと工業用硫酸コバルト7水和物4.0kgを水に溶解した後、全量を60リットルに調整して、硫酸ニッケルと硫酸コバルトの混合溶液を得た。
アルミン酸ナトリウム水溶液:工業用アルミン酸ナトリウム500gを水に溶解した後、全量を10リットルに調整した。
水酸化ナトリウム水溶液:工業用水酸化ナトリウム12.5kgを水に溶解した後、全量を50リットルに調整した。
また、反応槽内の反応液のpHは、反応槽内に設置したpHコントローラーを用いて、上記水酸化ナトリウム水溶液の流量を調整して、制御した。なお、反応槽内のpHは、24時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが12.4となるように調整した。この後、反応槽内の反応液のpH、温度、アンモニウムイオン濃度及びスラリー濃度が一定値になるまで、この状態で40時間運転した。
この間に回収された反応液から、反応生成物をろ過により固液分離した。固液分離された反応生成物は、湿潤状態で8.3kgであった。さらに、反応生成物について、30リットルの水を用いた水洗−ろ過の操作を3回繰り返した後、100℃に設定した大気乾燥機を用いて36時間乾燥してニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。また、反応中の3価のコバルトを測定するための試料として、固液分離された反応生成物100gを採取し、乾燥時のコバルトの酸化を防止するため、80℃に保持した真空乾燥機に入れ、12時間かけて乾燥した。
次に、このニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を300mm×300mm高さ95mmのセラミック製こう鉢(ノリタケ製)に3.5Kg充填した。充填後のニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の厚みは、25mmであった。この充填こう鉢を電気マッフル炉(アドバンテック製 FUW263PA型)を用いて大気雰囲気中で常温から300℃までを10℃/分、300℃から500℃までを3.8℃/分、500℃から700℃までを5℃/分の速度で昇温し、700℃で2時間保持した後、冷却した。
冷却後に確認したところ、こう鉢周辺にわずかな吹きこぼれは認められたが、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は3.0Kgであり、収率は99%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径、粒子形状、及び化学組成について評価したところ、平均粒径が11.7μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。結果を表1に示す。
(A)ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の調製
まず、室温25℃とし、実施例1と同様に調整したニッケルコバルト水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を用いて以下の条件でニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を製造した。
蓋、攪拌機付きでオーバーフロー口までの容量が9リットルである反応槽に水を8リットル張った後、55℃に調整した恒温水槽の中に反応槽を入れ保温した。反応槽内の水が恒温水槽の温度と同一になったところで、反応槽内の空間部に0.015リットル/分(空間部1m3当たり5リットル/分)の割合で窒素を供給しつつ攪拌機を稼働させ、反応槽内の水を攪拌した。そして、この状態を維持しつつ、上記ニッケルコバルト水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、及び工業用アンモニア水(濃度25質量%)を連続的に反応槽内へ供給した。ここで、供給流量は、ニッケルコバルト水溶液が4.2ミリリットル/分、アルミン酸ナトリウム水溶液が1.3ミリリットル/分、及びアンモニア水が0.9ミリリットル/分であった。また、反応槽内の反応液のpHは、反応槽内に設置したpHコントローラーを用いて、上記水酸化ナトリウム水溶液の流量を調整して、制御した。なお、反応槽内のpHは、24時間ごとに反応槽内の液をサンプリングし、25℃で測定した際のpHが12.8となるように調整した。この後、反応槽内の反応液のpH、温度、アンモニウムイオン濃度及びスラリー濃度が一定値になるまで、この状態で100時間運転した。
この間に回収された反応液から、反応生成物をろ過により固液分離した。固液分離された反応生成物は、湿潤状態で6.0kgであった。さらに、反応生成物について、20リットルの水を用いた水洗−ろ過の操作を3回繰り返した後、100℃に設定した大気乾燥機を用いて36時間乾燥してニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得た。
また、反応中の3価のコバルトを測定するための試料として、固液分離された反応生成物100gを採取し、乾燥中のコバルトの酸化を防止するため80℃に保持した真空乾燥機で12時間で乾燥した。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径、粒子形状、及びコバルト品位評価した。さらに、真空乾燥した試料から3価のコバルト品位を分析して、その比率を求めた。得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、平均粒径が12.7μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.18であった。結果を表1に示す。
次に、このニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例1と同様のこう鉢に充填し、電気マッフル炉を用いて大気雰囲気中で常温から300℃までを10℃/分、300℃から500℃までを3.5℃/分、500℃から700℃までを5℃/分で昇温し、600℃で2時間保持した後、冷却した。
冷却後に確認したところこう鉢周辺にわずかな吹きこぼれは認められたが、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は3.0Kgであり、収率は99%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の平均粒径、粒子形状、及び化学組成について評価したところ、ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、平均粒径が11.4μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。結果を表1に示す。
室温を15℃とした以外は実施例1と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得るとともに評価した。得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、平均粒径が12.5μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.17であった。結果を表1に示す。
次に、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例2と同様に焼成してニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得た。冷却後に確認したところこう鉢周辺にわずかな吹きこぼれは認められたが、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は3.0Kgであり、収率は99%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物粒子を実施例1と同様に評価したところ、平均粒径が11.3μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。結果を表1に示す。
室温を10℃とした以外は実施例2と同様にしてニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得るとともに評価した。得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、平均粒径が12.4μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.17であった。結果を表1に示す。
次に、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例2と同様に焼成してニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得た。冷却後に確認したところ、こう鉢周辺にわずかな吹きこぼれは認められたが、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は3.0Kgであり、収率は99%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を実施例1と同様に評価したところ、平均粒径が11.4μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。結果を表1に示す。
まず、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得るとともに評価した。得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、平均粒径が12.5μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.17であった。結果を表1に示す。
次に、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例1と同様にこう鉢に充填し、電気マッフル炉を用いて大気雰囲気中で常温から300℃までを10℃/分、300℃から500℃までを5℃/分、500℃から700℃までを5℃/分で昇温し、700℃で2時間保持した後、冷却した。
冷却後に確認したところ、こう鉢周辺に多量の粉末が吹きこぼれており、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は2.3Kgであり、収率は76%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を実施例1と同様に評価したところ、平均粒径が11.3μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。
まず、反応槽内の空間部に窒素を供給しないこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得るとともに評価した。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子は、平均粒径が6.2μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.28であった。結果を表1に示す。
次に、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例1と同様にしてこう鉢に充填し、電気マッフル炉を用いて大気雰囲気中で常温から300℃までを10℃/分、300℃から500℃までを5℃/分、500℃から700℃までを5℃/分で昇温し、700℃で2時間保持した後、冷却した。
冷却後に確認したところ、こう鉢周辺に粉末が吹きこぼれており、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は2.7Kgであり、収率は89%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を実施例1と同様に評価したところ、平均粒径が4.9μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。
まず、室温を10℃とし、反応槽内の空間部に窒素を供給しないこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得るとともに評価した。
得られた0.25以下ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物は、平均粒径が6.0μmの高密度の球状粒子であり、反応生成物の3価のコバルトの比率は0.30であった。
次に、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を実施例2と同様に焼成してニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得た。冷却後に確認したところ、こう鉢周辺にわずかな吹きこぼれは認められたが、こう鉢内のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の重量は3.0Kgであり、収率は99%であった。
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を実施例1と同様に評価したところ、平均粒径が4.8μmの高密度の球状粒子であり、その組成は、Ni0.77Co0.13Al0.10Oで表された。
一方、本発明の要件の一部または全部を欠如する比較例1〜3では、収率が大きく低下したり、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物や酸化物の平均粒径が小さくなったりして、問題があった。特に、比較例1及び2では、300℃から500℃までの昇温速度が4℃/分を超えていたため、焼成時に吹きこぼれが発生して、収率が大きく低下していることがわかる。
さらに、比較例2及び3では、反応槽内の空間部に窒素を供給しなかったため、得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の平均粒径が小さく、焼成後のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物もリチウムイオン電池正極材料の原料として好適とは言えない小さな平均粒径となっている。
Claims (12)
- 次の一般式(1):
Ni(1−x−y)CoxAlyO …(1)
(式中、xは、0.05〜0.3、yは、0.05〜0.2である。)
で表されるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を製造する方法であって、
(i)反応槽内の空間部に不活性ガスを供給しながら、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液からなる原料溶液を、それぞれ該反応槽内に個別にかつ同時に供給して反応させ、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を得る工程、および
(ii)得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を、大気雰囲気中において300℃から500℃までの昇温速度を4℃/分以下として昇温し、最高到達温度を600〜900℃の温度として焼成し、上記ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得る工程、
を含むことを特徴とするニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。 - 前記(i)の工程において、ニッケル化合物とコバルト化合物を含む水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、及びアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を、それぞれ該反応槽内に定量的に連続供給するとともに、水酸化ナトリウム水溶液を、該反応槽内の反応液を所定のpHに保持するために添加量を調整して供給し、かつ、生成されるニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子中に含有されるコバルトの全量に対して3価のコバルトの比率(3価のCoの分析値%/全Co分析値%)が0.25以下になるように該反応槽内の空間部に不活性ガスを供給し、一方、生成されたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子は、オーバーフロー口を経て連続的に排出されることを特徴とする請求項1に記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽内の空間部に供給される不活性ガスの供給量は、空間部の容積1m3当たり2リットル以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、ニッケル化合物とコバルト化合物は、硫酸塩又は塩化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、アンモニウムイオン供給体は、アンモニア水、硫酸アンモニウム又は塩化アンモニウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽内における反応液の温度は、40〜60℃でかつ±1℃の温度範囲に制御されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽内における反応液のpHは、液温を25℃にして測定した基準で11.0〜13.5の範囲内の一定値に保持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽内に供給する原料溶液の合計流量は、反応槽の容積を1分当たりの供給量で割った値が300〜1200の範囲の一定値に保持されるように調整することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽内における反応液のアンモニウムイオン濃度は、5〜25g/リットルの範囲内の一定値に保持されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(i)の工程において、反応槽として攪拌機、蓋、オーバーフロー口及び温度制御手段を備えた容器を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(ii)の工程において、上部が開放された容器に充填した状態で焼成されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
- 前記(ii)の工程において、得られるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物は、5〜20μmの平均粒径を有する酪球状粒子であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の製造方法。
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