JP2011108512A - リチウム空気二次電池及びリチウム空気二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウム空気二次電池及びリチウム空気二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 充電電圧を従来よりも低減し、このためにサイクル特性に優れたリチウム空気二次電池を提供する。
【解決手段】 カーボン正極3と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵、放出する物質からなる金属リチウム負極5と、カーボン正極3と金属リチウム負極5との間に非水電解液を配置してリチウム空気二次電池を構成する。そして、カーボン正極3に、FeO、Fe、Feのうち、いずれか一つの鉄酸化物と、MnO、MnO、Mn、Mnのうち、いずれか一つのマンガン酸化物と、を混合して熱処理することによって得られる電極活性触媒を添加する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウム空気二次電池及びリチウム空気二次電池の製造方法に関する。
金属空気電池は、リチウム系などの他の電池系を遥かに凌駕する理論エネルギー密度を有している。中でも亜鉛空気一次電池は、300mAh/g程度の大きな放電容量を有することから、主に補聴器などに用いられている。ただし、金属空気電池は、1V程度の電圧しか得られないため、非水電解液を用いるリチウム系電池のような、広範な利用は難しいと考えられる。
このため、近年では、2〜3Vの高電圧を示すリチウム空気二次電池の作製が試みられている。この試みでは、正極反応系として亜鉛空気電池と同様な酸素の電気化学的な還元(放電)・発生(充電)を用い、亜鉛に代えて負極に金属リチウムを用い、また、電解液として非水電解質が用いられている。このようなリチウム空気二次電池では、初回放電で1000mAh/g以上の大きな放電容量が得られている。
「An O2 cathode for rechargeable lithium batteries: Theeffect of a catalyst」, A. Debart, J.Bao, G. Armstrong, P. G. Bruce, Journal of Power Sources, Vol. 174, P.1177-1182(2007).
しかしながら、従来のリチウム空気二次電池では、充電時の電圧が高いため、電解液の分解が起こる。また、放電生成物(酸化リチウム)の析出、分解の可逆性が不十分であること等が原因で、サイクルを繰り返すと放電容量が著しく減少するという問題があった。このような問題を解消するため、リチウム空気二次電池用正極へ触媒を添加することにより電極の高活性化を行うことが試みられている。
非特許文献1に記載された実験では、白金や種々の金属酸化物を触媒として添加した正極を用いたリチウム空気二次電池を作製し、充放電を行っている。金属酸化物触媒としてMnOを添加した場合、初回放電容量は1000mAh/gで、50サイクル後も600mAh/gの容量を示している。また、Feを添加した場合、初回放電容量は2700mAh/gで、10サイクル後75mAh/g、Feを添加した場合、初回放電容量は約1200mAh/gで、10サイクル後800mAh/gの容量を示している。
しかしながら、上記した従来技術は、サイクルによる容量減少が著しく、二次電池としての実用化には更なるサイクル特性の改善が必要である。すなわち、従来のリチウム空気二次電池は、上述したように、充電電圧が大きく、その結果サイクルが困難であるという課題があった。
本発明は、上記の点に鑑みて行われたものであり、充電電圧を従来よりも低減し、このためにサイクル特性に優れたリチウム空気二次電池及びリチウム空気二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
以上述べた課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のリチウム空気二次電池は、電極活性触媒を添加した正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵、放出する物質からなる負極と、前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池であって、前記電極活性触媒は、FeO、Fe、Feのうち、いずれか一つの鉄酸化物と、MnO、MnO、Mn、Mnのうち、いずれか一つのマンガン酸化物と、を混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、触媒の添加により、正極のガス拡散性、導電性、濡れ性などが変化したため容量が減少するものの、酸化鉄と酸化マンガンの混合物が酸素発生に高い活性を有しており、充電時における放電生成物の分解が促進されたため、充電電圧を低減し、サイクル特性に優れたリチウム空気二次電池を提供することができる。
また、請求項2に記載のリチウム空気二次電池は、請求項1において、前記電極活性触媒が、前記一つの鉄酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、更に酸化ランタン(La)と、Ca、Sr、Baの中の一つの元素のアルカリ土類金属塩(MO(M=Ca、Sr、Ba))とを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、請求項1の発明と比較して、さらに充電電圧を低減し、サイクル特性に優れたリチウム空気二次電池を提供することができる。
また、請求項3に記載のリチウム空気二次電池は、請求項1において、前記電極活性触媒が、前記一つの酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、さらに、酸化ランタン(La)を混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、触媒活性を向上させて、より高いサイクル特性を得ることができる。
また、請求項4に記載のリチウム空気二次電池は、前記電極活性触媒が、前記一つの酸化物と前記一つの酸化マンガンに、更に酸化ランタン(La)と、Ca、Sr、Baの中の一つの元素の炭酸塩(CaCO、SrCO、BaCO)の金属塩とを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、触媒活性を向上させて、より高いサイクル特性を得ることができる。
また、請求項5に記載のリチウム空気二次電池は、請求項2において、前記電極活性触媒が、前記アルカリ土類金属塩の混合物をNFe+NMn=NLa+N(NM’:金属イオンM’のモル数)となるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、充電電圧の低減、サイクル特性の向上のため、電極活性触媒の生成条件を最適化することができる。
また、請求項6に記載のリチウム空気二次電池は、請求項2において、前記電極活性触媒が、前記アルカリ土類金属塩の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が、2:1もしくは1:2になるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、充電電圧の低減、サイクル特性の向上のため、電極活性触媒の生成条件を最適化することができる。
また、請求項7に記載のリチウム空気二次電池の製造方法は、電極活性触媒を添加した正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵、放出する物質からなる負極と、前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池の製造方法であって、FeO、Fe、Feのうち、いずれか一つの鉄酸化物と、MnO、MnO、Mn、Mnのうち、いずれか一つのマンガン酸化物と、を混合して熱処理することにより得られた前記電極活性触媒を、前記正極に添加する添加工程を含むことを特徴とする。このような発明によれば、充電電圧を低減し、サイクル特性に優れたリチウム空気二次電池の製造方法を提供することができる。
また、請求項8に記載のリチウム空気二次電池の製造方法は、請求項7において、前記電極活性触媒が、前記一つの鉄酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、さらに、酸化ランタン(La)及びCa、Sr、Baのうちのいずれか一つの元素のアルカリ土類金属塩(MO(M=Ca、Sr、Ba))、酸化ランタン(La)、酸化ランタン(La)及びCa、Sr、Baの中の一つの元素の炭酸塩(CaCO、SrCO、BaCO)の金属塩、のいずれか1つを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、請求項1の発明と比較して、さらに充電電圧を低減し、サイクル特性に優れたリチウム空気二次電池を提供することができる。
また、請求項9に記載のリチウム空気二次電池の製造方法は、請求項8において、前記電極活性触媒は、前記アルカリ土類金属塩の混合物をNFe+NMn=NLa+N(NM’:金属イオンM’のモル数)となるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、触媒活性を向上させて、より高いサイクル特性を得ることができる。
また、請求項10に記載のリチウム空気二次電池の製造方法は、請求項8において、前記電極活性触媒が、前記アルカリ土類金属塩の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が、2:1もしくは1:2になるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする。このような発明によれば、請求項1の発明と比較して、さらに充電電圧を低減し、サイクル特性に優れたリチウム空気二次電池を提供することができる。
本発明においては、正極に高活性な触媒を添加することにより、放電生成物の良好な可逆性が得られ、充電電圧が低下するため、優れたサイクル特性を有するリチウム空気二次電池の作製が可能となる。
本発明の実施例1〜3に共通のリチウム空気二次電池セルの断面図である。 本発明の実施例1、2及び比較例1、2におけるリチウム空気二次電池の放電曲線である。 本発明の実施例2の酸化物粉末触媒のXRDパターンを示した図である。
先ず、本発明の実施形態に先立って、本発明に係わるリチウム空気二次電池の作製方法及びサイクル特性について以下に述べる。
正極活物質である酸素の電気化学的酸化還元反応が進行する、カーボン、触媒、バインダーからなる正極は、カーボン粉末、触媒粉末とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなバインダー粉末との混合物を、通気性のある金属メッシュ等の支持体上に圧着成形する、あるいは、上記のカーボン粉末と触媒粉末とバインダー粉末との混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散しスラリー状にしたものを、金属メッシュ上に塗布し乾燥する等の手段を用いて作製される。
作製された正極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解液と接する。また、電極の強度を高め電解液の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなくホットプレスを行うことによっても、より安定性に優れた電極が作製可能である。
正極での放電反応は次のように表すことができる。
2Li+O+2e → Li …式(1)
あるいは、
2Li+(1/2)O+2e → Li
…式(2)
式(1)、(2)中のリチウムイオンは、負極から電解質を介して正極表面まで移動してきたものである。また、酸素は、大気中から正極内部に取り込まれたものである。この放電反応により生成したLiまたはLiOが正極上に析出し、正極上の反応サイトを全て被覆した時点で放電反応は終了する。充電時においては、放電反応とは逆の反応が起こり、放電時に生成された放電生成物がすべて分解されると充電が終了する。
本発明によるリチウム空気二次電池の正極材料であるカーボンは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンファイバーなどを用いることができるが、結晶が成長しておらず、粒径が小さく、反応サイトが多く存在する高表面積カーボンを用いることが望ましい。
本発明の発明者らは、触媒として金属酸化物を添加した正極を用いて作製したリチウム空気二次電池の充放電特性について鋭意検討を行った結果、FeO、Fe、Feから選ばれる少なくとも1種の酸化鉄と、MnO、MnO、Mn、Mnから選ばれる少なくとも1種の酸化マンガンを混合したものを熱処理することにより得られる酸化物触媒を正極に添加した場合に充電電圧が低下し、サイクル特性が向上することを見出した。
そして、特に、酸化鉄と酸化マンガン中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が2:1もしくは1:2のときに得られるスピネル型酸化物(MnFe、FeMn)のときに優れた特性を示すことを見出した。
また、本発明の発明者らの実験によれば、FeO、Fe、Feから選ばれる少なくとも1種の酸化鉄と、MnO、MnO、Mn、Mnから選ばれる少なくとも1種の酸化マンガンを混合したものに、更に酸化ランタン(La)を混合して添加して触媒とした場合、もしくは更にLaといずれかのアルカリ土類金属酸化物(MO(M=Ca、Sr、Ba))を加え混合して触媒とした場合に、さらに良好なサイクル特性を有する正極が得られることが分かった。
特に、本発明の発明者の実験によれば、金属イオンのモル比がNFe+NMn=NLa+Nとなるように混合し、熱処理することによりペロブスカイト型酸化物のみが得られる場合にさらに充電電圧が低下し、サイクル特性が向上することが分かった。中でもアルカリ土類金属酸化物としてSrOを用いる場合が最も優れたサイクル特性を示す。また、アルカリ土類金属酸化物を添加するための出発原料として、CaCO、SrCO、BaCOのような金属塩を混合し、熱処理を行ってもサイクル特性の向上を図ることができることが分かった。
また、本発明の発明者の実験によれば、バインダーについては、上記PTFE粉末の他に、PTFE分散液やポリフッ化ビニリデン(PVdF)の粉末や分散液を用いることもできることが分かった。負極については、金属リチウム、またはリチウムイオンの吸蔵・放出が可能な物質(カーボン、Si、Sn、Li2.6Co0.4N)からなる負極などを用いることができる。しかしながら、負極材料として最初にリチウムを含まないカーボンなどの化合物については、電池作製前に予め化学的もしくは電気化学的にリチウムを含むCLiなどの化合物に化学変化させる必要がある。
さらに、非水電解液としては、リチウムイオンの移動が可能な非水電解液であればよく、有機電解液や、イオン液体を使用することができる。有機電解液については、LiClO、LiPF等の金属塩をプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)等の有機溶媒、もしくは、その混合溶媒に溶解したものを使用することができることが分かった。なお、セパレータや電池ケース等の電池構成材料等については、従来公知の各種材料が使用でき、特に制限はないことが分かった。
以下、本発明の実施例1〜3を説明する。
(実施例1)
表1は、混合酸化物触媒の生成の条件を示した表である。表1に示すように、実施例1では、FeO、Fe、Feの中の1種類の酸化鉄とMnO、MnO、Mn、Mnの中の1種類の酸化マンガンを、金属イオンのモル比(NFe:NMn)が8:2、2:1、6:4、4:6、1:2、2:8となるようにそれぞれ混合し、600℃以上で5時間熱処理を行うことにより混合酸化物触媒を得た。
Figure 2011108512
正極は、触媒、カーボン、バインダーとしてそれぞれ、酸化鉄と酸化マンガンの混合酸化物粉末、ケッチェンブラックEC600JD、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を用い、5:3:2の重量比で混合し、ロール成形し、厚さ0.5mmのシート状電極を作製し、直径23mmの円形に切り抜くことにより得た。また、比較の為に、触媒を添加せずにカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)とバインダー(PTFE)のみからなる正極(重量比6:4)を上記と同様に作製した。
図1は、実施形態1のリチウム空気二次電池セルの断面図であって、円柱型のセル構造の略図である。図示したリチウム空気二次電池セルは、正極接合具(SUS製)1、電極ケース2、カーボン正極3、セパレータ4、金属リチウム負極5、負極接合具(SUS製)6、負極支持体(SUS製)7、Oリング8、負極端子9によって構成されている。カーボン正極3に空気を取り込むための円形の空気孔3aの直径は16mmである。
実施例1では、表面をテフロン(登録商標)コーティングした電極ケース2(正極との接触部はコーティングなし)の片側に、カーボン、触媒、バインダーからなるカーボン正極3を配置し、テフロン(登録商標)製の留め具1をはめこむことによりカーボン正極3を固定する。次に、電極ケース2の正極の反対側に電解液を注入し、セパレータ4を挿入し、円形に切り抜いた金属リチウム負極5を負極接合具6に圧着させたものを、負極支持体7と共に、セパレータ4を電極ケース2で挟み込むようにはめ込む。さらにOリング8を電極ケース2に取り付け、負極端子9をはめ込む。
電解液としては、炭酸プロピレン(PC)溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1mol/lの濃度で溶解した溶液を使用した。
上記したリチウム空気二次電池では、電流密度0.1mA/cm(大気に曝される正極の面積で規格化)で、放電終止電圧2.0V、充電終止電圧4.5Vで充放電試験を行った。容量は、以後の比較のために正極に含まれるカーボン重量当たりの容量(mAh/g)で記した。
実施例1で作製されたリチウム空気二次電池の各サイクル(1st、20th、50th)における放電容量を表1に示す。表より、すべての電池においてリチウム空気二次電池としての作動を確認したが、FeOとMnOの混合比率によって放電特性に差異がみられた。
実施例1において良好な特性を示したときの混合酸化物触媒の生成の条件は、以下のとおりである。
(a)FeMnスピネル型酸化物のみが生成される、FeとMnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が2:1のとき。
(b)MnFeスピネル型酸化物のみが生成される、FeとMnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が1:2のとき。
上記2条件の初回充放電曲線をそれぞれ図2(a)、(b)に示す。また、比較のため、触媒未添加のカーボンのみで正極を作製した場合の初回充放電曲線を図2(c)に示す。図2中に示した(d)、(e)、(f)については、いずれも後述する実施例、あるいは比較例で説明する。
FeとMnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が2:1のときは、放電において平均電圧が約2.70Vであり、放電容量は1720mAh/gを示した。また、充電においては平均電圧が4.10Vであり、充電容量は1593mAh/gを示した。
FeとMnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が1:2のときは、放電において平均電圧が約2.70Vであり、放電容量は1487mAh/gを示した。充電においては平均電圧が4.10Vであり、充電容量は1383mAh/gを示した。また、カーボンのみの正極を用いたときは、放電において平均電圧が約2.70Vであり、放電容量は2031mAh/gを示した。充電においては平均電圧が4.30Vであり、充電容量は451mAh/gを示した。
実施例1では、図2及び表1により、各酸化鉄と酸化マンガンの組み合わせにおいては、FeとMnOが良好な特性を示し、スピネル型酸化物のみが生成されるFeとMnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が2:1、1:2のとき、さらに充電電圧が低く、良好なサイクル特性を示すことが明らかである。また、実施例1では、カーボンのみの正極と比較して、初回放電においては容量が減少したが、触媒を添加することにより充電電圧が低下し、サイクル特性も向上した。
このような現象は、触媒の添加により、正極のガス拡散性、導電性、濡れ性などが変化したため容量が減少するものの、酸化鉄と酸化マンガンの混合物が酸素発生に高い活性を有しており、充電時における放電生成物の分解が促進されたため、充電電圧が低下し、サイクル特性が向上するために起こったと考えられる。
(実施例2)
次に、本発明の実施形態の実施例2について説明する。
実施例2は、FeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)が6:4となるように混合した酸化物に、さらにLaとSrOを混合するものである。
Figure 2011108512
上記した表2に示すように、実施形態2では、LaとSrOは金属イオンのモル比(NLa:NSr)が10:0、8:2、6:4、4:6、2:8となるようにそれぞれ混合した。また、Fe+MnO(NFe:NMn=6:4)に対するLa+SrOの混合比(NFe+NMn):(NLa+NSr)は、1:2、1:1、2:1とし、600℃以上で5時間熱処理を行うことにより酸化物粉末触媒を得た。
なお、Fe+MnO(NFe:NMn=6:4)に対するLa+SrOの混合比が金属イオンのモル比(NFe+NMn):(NLa+NSr)で1:1のとき、ペロブスカイト型酸化物のみが生成される。
図3は、実施例2の酸化物粉末触媒のXRDパターンを示した図であって、より具体的には、FeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)6:4で混合した酸化物に、LaとSrOを金属イオンのモル比(NLa:NSr)を6:4で混合し、600℃以上で5時間熱処理を行うことにより得られたサンプルのXRDパターンを示している。このようにして得られた酸化物は、ペロブスカイト型酸化物(La0.6Sr0.4Fe0.6Mn0.4)であることが確認された。その他、電池の作製、測定法については実施例1と同様に行った。
表2は、実施例2で作製したリチウム空気電池の各サイクルにおける放電容量をも示している。表2中でも良好な特性を示した、Fe、MnO中の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が6:4の混合物と、La、SrO中の金属イオンのモル比(NLa:NSr)が6:4の混合物を、等モル混合し熱処理を行うことにより得られた酸化物を用いた場合、つまりLa0.6Sr0.4Fe0.6Mn0.4を用いた場合の初回充放電曲線を図2(d)に示す。
実施例2のリチウム空気電池では、放電の平均電圧が約2.70Vであり、放電容量は1674mAh/gを示した。また、充電においては平均電圧が3.95Vであり、充電容量は1821mAh/gを示した。
実施例2では、実施例1で最も良好な特性を示したFeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)を6:4で混合した酸化物に、LaとSrOを混合することで、更なる充電電圧の低下、サイクル特性の改善が可能となる。特に、両混合酸化物の混合モル比がNFe+NMn=NLa+NSrであり、LaとSrO中の金属イオンのモル比(NLa:NSr)が6:4のとき(La0.6Sr0.4Fe0.6Mn0.4のみが生成される)、充電電圧が3.95Vと最も低くなる。さらに、50サイクル後も1000mAh/g以上の容量を有するなど、非常に良好な特性を示した。
以上の現象は、混合酸化物がペロブスカイト型構造を形成することにより、混合原子価状態や酸素欠陥が格子内に導入され触媒活性が向上し、正極の特性が改善されたために起こったと考えられる。
なお、実施例2においては、FeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)が6:4となるように混合した酸化物に、さらにLaとSrOを混合した。しかし、SrOを混合しない場合についても、リサイクル特性は向上する。
以上の結果より、正極に添加する触媒として酸化鉄や酸化マンガンの混合物を用いることが好ましく、さらに酸化ランタンや酸化ストロンチウムを混合することによりサイクル特性が向上することが分かる。中でも、実施形態2では、混合酸化物の混合モル比がNFe+NMn=NLa+NSrとなるようなペロブスカイト型酸化物を用いることが好ましい。
(実施例3)
実施例3は、実施例2で最も良好な特性を示した、La0.6Sr0.4Fe0.6Mn0.4を、Sr以外のアルカリ土類金属酸化物(Ca、Ba)で置換するものである。
実施例3では、先ず、以下の条件(a)、(b)で得られる混合物を熱処理して酸化物触媒を作成する。
(a)FeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)が6:4で混合した酸化物に、LaとCaOを金属イオンのモル比(NLa:NCa)が6:4で混合した場合。
(b)FeとMnOを金属イオンのモル比(NFe:NMn)が6:4で混合した酸化物に、LaとBaOを金属イオンのモル比(NLa:NBa)が6:4で混合した場合。
上記(a)、(b)の条件で得られる混合物を600℃以上で5時間熱処理を行うことにより、それぞれ酸化物触媒が得られる。得られた酸化物触媒についてXRD測定を行ったところ、それぞれはLa0.6Ca0.4Fe0.6Mn0.4、La0.6Ba0.4Fe0.6Mn0.4であった。その他、電池の作製、測定法については実施例1と同様に行った。
実施例3で作製したリチウム空気電池の各サイクルにおける放電容量を表3に示す。
Figure 2011108512
上記に示すペロブスカイト構造を有する酸化物において、Ba、Sr、Caをそれぞれ置換することにより、遷移金属の混合原子価や酸素欠陥が格子内に導入され触媒活性が向上する。ただし、これらアルカリ土類金属の中ではSrを置換した場合が最も良い特性を示した。
なお、アルカリ土類金属イオンのソースとして炭酸塩(CaCO、SrCO、BaCO)の金属塩を用いた場合においてもサイクル特性は向上した。このため、実施例3で得られるペロブスカイト構造を有する酸化物におけるアルカリ土類金属の置換種としてはSrを用いることが好ましい。
(比較例1)
以上述べた本発明の実施例のうち、実施例1で得られたリチウム空気電池の性能を、公知の触媒であるFeを添加した正極を用いたリチウム空気電池と比較した。
比較例1では、触媒(Fe)、カーボン(ケッチェンブラックEC600JD)、バインダー(PTFE)を重量比5:3:2で混合し、その他、電池の作製、測定法については実施例1と同様に行った。比較例1で作製したリチウム空気二次電池の放電曲線を、図2(e)に示す。
図2(e)に示すように、上記の比較例1で作製したリチウム空気二次電池の充電電圧は、実施例1、2のいずれの電池よりも高い。
(比較例2)
また、本発明の実施例1で得られたリチウム空気電池の性能を、公知の触媒であるMnOを添加した正極を用いたリチウム空気電池と比較した。
比較例2では、触媒(MnO)、カーボン(ケッチェンブラックEC600JD)、バインダー(PTFE)を重量比5:3:2で混合し、その他、電池の作製、測定法については実施例1と同様に行った。比較例2で作製したリチウム空気二次電池の放電曲線を、図2(f)に示す。
比較例2のリチウム空気二次電池は、図2に示すように、実施例1〜3のいずれのものよりもサイクル特性の低下が著しい。これは、実施例1〜3に用いられている正極よりも活性が低く、充電時において放電生成物の分解が不十分であり反応サイトが失活したため、サイクル特性が低下したために起こったと考えられる。
以上の比較例1、比較例2の結果から、本発明は、酸素発生に対して高活性な酸化鉄や酸化マンガン、さらに酸化ランタンや酸化ストロンチウムをリチウム空気二次電池の正極に電極活性触媒として混合することにより、リチウム空気二次電池のサイクル特性が向上することが分かる。特に、混合酸化物の混合モル比がNFe+NMn=NLa+NSrとなるようなペロブスカイト型酸化物を正極に混合することにより、従来電池よりも高いサイクル特性を有するリチウム空気二次電池を作製することができるといえる。
以上のように、本発明によれば、高性能なリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として使用することができる。
1 正極接合具
2 電極ケース
3 カーボン正極
4 セパレータ
5 金属リチウム負極
6 負極接合具
7 負極支持体
8 Oリング
9 負極端子

Claims (10)

  1. 電極活性触媒を添加した正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵、放出する物質からなる負極と、前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池であって、
    前記電極活性触媒は、
    FeO、Fe、Feのうち、いずれか一つの鉄酸化物と、
    MnO、MnO、Mn、Mnのうち、いずれか一つのマンガン酸化物と、
    を混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 前記電極活性触媒は、
    前記一つの鉄酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、更に酸化ランタン(La)と、Ca、Sr、Baの中の一つの元素のアルカリ土類金属塩(MO(M=Ca、Sr、Ba))とを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  3. 前記電極活性触媒は、
    前記一つの酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、さらに、酸化ランタン(La)を混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  4. 前記電極活性触媒は、
    前記一つの酸化物と前記一つの酸化マンガンに、更に酸化ランタン(La)と、Ca、Sr、Baの中の一つの元素の炭酸塩(CaCO、SrCO、BaCO)の金属塩とを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  5. 前記電極活性触媒は、
    前記アルカリ土類金属塩の混合物をNFe+NMn=NLa+N(NM’:金属イオンM’のモル数)となるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項2に記載のリチウム空気二次電池。
  6. 前記電極活性触媒は、
    前記アルカリ土類金属塩の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が、2:1もしくは1:2になるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項2に記載のリチウム空気二次電池。
  7. 電極活性触媒を添加した正極と、金属リチウムまたはリチウムイオンを吸蔵、放出する物質からなる負極と、前記正極と前記負極との間に非水電解液を配置して構成されるリチウム空気二次電池の製造方法であって、
    FeO、Fe、Feのうち、いずれか一つの鉄酸化物と、MnO、MnO、Mn、Mnのうち、いずれか一つのマンガン酸化物と、を混合して熱処理することにより得られた前記電極活性触媒を、前記正極に添加する添加工程を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池の製造方法。
  8. 前記電極活性触媒は、
    前記一つの鉄酸化物と、前記一つのマンガン酸化物とに、さらに、
    酸化ランタン(La)及びCa、Sr、Baのうちのいずれか一つの元素のアルカリ土類金属塩(MO(M=Ca、Sr、Ba))、
    酸化ランタン(La)、
    酸化ランタン(La)及びCa、Sr、Baの中の一つの元素の炭酸塩(CaCO、SrCO、BaCO)の金属塩、
    のいずれか1つを混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項7に記載のリチウム空気二次電池の製造方法。
  9. 前記電極活性触媒は、
    前記アルカリ土類金属塩の混合物をNFe+NMn=NLa+N(NM’:金属イオンM’のモル数)となるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項8に記載のリチウム空気二次電池の製造方法。
  10. 前記電極活性触媒は、
    前記アルカリ土類金属塩の金属イオンのモル比(NFe:NMn)が、2:1もしくは1:2になるように混合して熱処理することによって得られたものであることを特徴とする請求項8に記載のリチウム空気二次電池の製造方法。
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