JP2011105953A - 有機無機複合フィラー - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機無機複合フィラーにおいて、一次粒子の平均粒子径が0.01〜1μmで、粒度の小さい(凝集粒子の平均粒子径3〜18μm)ものにおいて、粒度分布幅が狭いものを提供する。
【解決手段】 平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子の100質量部を、減圧下で、液状の重合性単量体の10〜30質量部に接触させた後に復圧して、該重合性単量体を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させる方法により、粒度の変動係数が70%以下である、目的の有機無機複合フィラーを得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は新規な有機無機複合フィラーに関する。
歯科用充填修復材は、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや使用時の操作が容易なことから、治療した歯牙を修復するための材料として急速に普及し、近年では、前歯の治療の大部分が充填修復材料によって行われているばかりでなく、高い咬合圧のかかる臼歯部等の修復にも使用されるようになってきた。
歯科用充填修復材料は、一般に重合性単量体(モノマー)、フィラー、及び重合触媒を主成分として構成されるが、硬化前ペーストの操作性、並びに硬化体の審美性及び機械的物性等は、使用するフィラーの種類、形状、粒子径、及び充填量等によって大きく左右される。
例えば、従来、粒径が数μmを超える比較的大きな無機フィラーを配合した歯科用充填修復材料が知られていたが、該歯科用充填修復材料は、硬化体の機械的強度が高いという特徴をもつものの、研磨性や耐摩耗性が悪く、臨床的に天然歯と同様な艶のある仕上がり面を得られないといった問題があった。
この問題を解決するために、平均粒径が1μm以下の無機粒子、特にその形状が丸みを帯びた無機粒子及び/またはその凝集体からなる無機フィラーを用いることが提案され、表面滑沢性は大きく改善された。しかしながら、このような微小フィラーを用いた歯科用充填修復材料は、微小フィラーの比表面積が非常に大きいために硬化前ペーストの粘稠度が高くなってしまい、ペーストの粘稠度を歯科医師が口腔内で使用可能なレベルに調整するためには重合性単量体の配合量を多くせざるを得ず、操作性の低下や重合に伴なう収縮量の増加、さらには機械的強度の低下等を招いてしまうといった問題があった。
これらの問題を解決する方法として、微細無機フィラーを含む重合硬化性組成物を重合硬化させた後にこれを粉砕して得た有機無機複合フィラーを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。このような有機無機複合フィラーを使用することにより、微細フィラーを用いた時の特徴である優れた表面滑沢性や耐摩耗性を実現しながら、上記のような操作性の低下、重合収縮の増大、機械的強度の低下といった問題を解決することが可能となっている。
一般的に、上記の有機無機複合フィラーは、微小無機フィラーを含むペースト状の重合硬化性組成物を重合硬化させた後にこれを粉砕して得る(例えば、特許文献2)。このため、粒子径に幅広い分布を生じ、歯科用充填修復材料に用いるには不適当な粒径のフィラーを取り除くためにふるいを用いて分級することが必要であった(例えば、特許文献3)。しかしながら、この方法では、得られるフィラーの粒径がふるいの目開きの大きさによって決まってしまい、小さなフィラーを得ようとしても一般的には20μm程度までがせいぜいであり、これよりも小さなフィラーを狭い粒径幅で得ることは、特殊なふるいを用いることが求められ困難であった。しかも、ふるいをかける操作は煩雑であり、フィラーの回収率が低下するという問題も有することから、製造方法としても好ましくなかった。
また、別の有機無機複合フィラーの製造方法としては、超微粒子充填材にレジンマトリックスモノマーのキャピラリー状態でのコーティングを施すことを特徴とした製造方法が開示されている(特許文献4)。
すなわち、この方法は、コロイダルシリカ等の超微粒子と重合性単量体とをキャピラリーミキサーで混合することにより、該超微粒子の凝集粒子の外周だけでなく間隙にまで重合性単量体を浸入させる状態で該超微粒子の重合性単量体によるコーティングを行い、次いで、重合性単量体を重合硬化させて有機無機複合塊状物を得、これを粉砕して有機無機複合フィラーを製造する方法である。
しかして、この方法によれば超微粒子が凝集している場合には、その内面の一次粒子まで重合性単量体により、かなり良好に濡らすことができ、超微粒子同士が重合体により結合した有機無機複合フィラーを製造することができる。しかしながら、この方法では、上記キャピラリー状態での重合性単量体のコーティングは常圧下で実施されているため、前記重合性単量体の凝集粒子間隙への浸入の程度が今一歩浅く、凝集間隙の深部に位置する一次粒子まで十分に濡れさせることが困難であった。そのため、得られる有機無機複合フィラーの強度等が今一歩十分ではなかった。さらに、混合された重合性単量体の多くは、上記凝集粒子の間隙だけでなく、凝集粒子の外周をコーティングするため、該重合性単量体を重合硬化させるとやはり有機無機複合塊状物が製造されるものであった。したがって、有機無機複合フィラーとして使用するためには、やはりこの塊状物を粉砕しなければならず、前記ふるいによる分級操作が避けられなかった。
米国特許明細書第4,482,656号 特開昭59−101409号公報 特開2002−256010号公報 特開平10−258068号公報
有機無機複合フィラーの中に、粒子径が大きなものが含有されていると、歯科用充填修復材料に用いた時に、ペースト中に大きな粒子径のフィラーが混入することになり、ペーストがざらついて好ましくない。また、有機無機複合フィラーの中に、粒子径が小さすぎるものが含有されていると、複合化の効果が小さくなり、ペーストの粘度が高くなって流動性が小さくなってしまい、扱い辛いペーストになってしまう。ペーストの粘度を下げるには重合性単量体を多く使用すれば可能であるが、さすれば重合収縮率が大きくなってしまう。
こうした状況にあって、前記の如くに粒度分布幅が狭い有機無機複合フィラーを、ふるいを用いずに製造する効率的な方法がないために、有機無機複合フィラーにおいて、一次粒子の平均粒子径が0.01〜1μmで、粒度の小さい(凝集粒子の平均粒子径3〜18μm)ものは、歯科用充填修復材料に配合した場合においてペーストのざらつきが特に少なく、表面の滑沢性にも格別に優れ、機械的強度も良好である等から有用性が高いにも関わらず、斯様に粒度分布幅が狭いものは具体的に製造できていなかった。したがって、本発明は、このような新規な有機無機複合フィラーを製造することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、粒度の変動係数CVが小さい無機凝集粒子を用い、これを減圧下で液状の重合性単量体に接触させた後復圧し、該無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に重合性単量体を侵入させた後にこれを重合硬化させることによって、粉砕工程を経なくても、粒度分布幅が狭い有機無機複合フィラーを、簡単に新規に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が、有機マトリックス樹脂を介して凝集する、平均粒子径が3〜18μmの有機無機複合フィラーであって、粒度の変動係数が70%以下であることを特徴とする有機無機複合フィラーである。
さらに、本発明では、上記新規な有機無機複合フィラーの製造方法として、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子の100質量部を、減圧下で、液状の重合性単量体の10〜30質量部に接触させた後に復圧して、該重合性単量体を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させる方法も低供する。
本発明の有機無機複合フィラーは、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が、有機マトリックス樹脂を介して凝集しており、平均粒子径は3〜18μmであり、粒度の変動係数は70%以下である。このように粒度が小さく、粒度分布がシャープな有機無機複合フィラーは、従来の有機無機複合フィラーの製造方法(すなわち、有機無機複合塊状物を一旦製造し、これを粉砕してふるいにより分級する方法)では製造が困難であった新規な有機無機複合フィラーである。
このような本発明の有機無機複合フィラーは、歯科用材料や化粧用材料等の種々の用途においてフィラーとして制限なく使用できる。歯科用材料としては、具体的には、コンポジットレジン等の歯科用充填修復材;歯科用セメント;インレー、アンレー、歯冠およびブリッジのための間接修復材料;義歯用材料などが挙げられる。このうち、特に、コンポジットレジン等の歯科用充填修復材料に配合させる歯科用フィラーとして好適に使用できる。
本発明において、有機無機複合フィラーや、その原料である無機凝集粒子の粒度分布は、変動係数CVで評価する。変動係数CVは以下の式で定義される。
Figure 2011105953
(但し、SDは標準偏差、Xは算術平均径を表す。)
上式から明らかなように、変動係数CVは標準偏差に比例するため、CVが小さいほうが粒度分布はシャープであると言える。本発明において、有機無機複合フィラーの原料である無機凝集粒子の粒度分布は、上記変動係数CVが70%以下であるが、好ましくは68%以下である。
なお、本発明において、無機凝集粒子の粒度分布は、レーザー回折−散乱法を測定原理として体積統計することにより求める。また、平均粒子径は、上記粒度分布をもとに求めたメディアン径をいう。測定に供するサンプルは、0.1gの充填材をエタノール10mlに分散させ均一に調製して用いる。
以下、本発明の有機無機複合フィラーを、その製造方法に従って説明していく。
本発明の有機無機複合フィラーは、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子の100質量部を、減圧下で、液状の重合性単量体の10〜30質量部に接触させた後に復圧して、該重合性単量体を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させる方法により製造できる。この製造方法では、上記のように粒度の変動係数CVが小さい無機凝集粒子を原料として用いることに起因して、製造される有機無機複合フィラーの粒度の変動係数CVも、そのまま70%、好ましくは68%を上回らないように保たれたものになる。なお、上記無機凝集粒子や有機無機複合フィラーの粒度分布の下限は、特に制限されるものではなく小さいほど好ましいが、その製造可能な下限は一般には20%程度である。
このような無機凝集粒子を構成する無機粒子の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、凝集粒子の粒径や、該凝集粒子の間隙への重合性単量体の侵入しやすさ、さらには該有機無機複合フィラーを用いた歯科用充填修復材料の審美性等から0.01〜1μmである。これらの効果をより良好に発揮させる観点からは、無機粒子の平均粒子径は0.02〜0.8μmであることがより好ましく、0.04〜0.6μmであることが特に好ましい。
なお、本発明において、無機凝集粒子を構成する無機粒子(一次粒子)の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡で無機粒子の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される一次粒子から無作為に100個を選択し、それぞれについて粒子径を求め、平均の粒子径を計算によって算出した。
ここで、無機粒子の平均粒子径が0.01μmより小さい場合、凝集が著しくなり、凝集粒子の粒子径を制御することが困難になる。一方、無機粒子の平均粒子径が1μmより大きい場合、歯科用充填修復材料等に用いた時に、研磨性が低下し、滑沢な表面を得にくくなる。
無機粒子の種類としては、具体的には、非晶質シリカ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−チタニア−ジルコニア、石英、アルミナ、ガラス等の球形状粒子あるいは不定形状粒子を挙げることができる。歯科歯冠材料用、歯科充填修復材料用としてはシリカとジルコニア、シリカとチタニア、またはシリカと酸化バリウムとを主な構成成分とする複合酸化物が、X線造影性を有していることから好適に使用される。また、粒子の形状は、球形状であるのが、より耐摩耗性、表面滑沢性に優れた歯科用充填修復材料が得られるため好ましい。
これらの無機粒子の製造は、公知の如何なる方法であっても良いが、汎用的な無機粒子の製造方法である湿式法等では、激しく凝集した幅広い粒度分布の凝集粒子が得られるのが一般的であり、上記凝集粒子径の変動係数CVを満足した粒子は通常は得難い。また、乾式法によっても、上記湿式法ほどではないにしても、やはり緩やかに凝集し、その凝集粒子径の変動係数CVを上記値のものとして得るのは困難である。
また、ゾルゲル法の場合、製造される無機粒子は高度に分散されているため、これも、そのままでは前記粒度の凝集粒子を使用する本発明の原料には通常は適さない。以上の状況にあって、前記変動係数CVの値を有する粒度の揃った無機凝集粒子は、次の方法により得るのが好ましい。
すなわち、上記したような無機粒子を噴霧乾燥させて凝集させる方法である。この方法によれば、無機粒子として、前記した一次粒子の平均粒子径が0.01〜1μmのものを用いた場合、凝集粒子の平均粒子径(粒度)が3〜100μm、より製造のし易さからは5〜70μmの無機凝集粒子を適宜に製造できるが、本発明では、この中でも3〜18μmのものを製造し利用する。
ここで、噴霧乾燥に供する無機粒子は、得ようとする無機凝集粒子の平均粒子径以上の大きさに凝集してしまっている粒子を有意な量含むものでなければ、多少凝集しているものを使用しても、噴霧乾燥により、前記粒度の変動係数CVの値を満足する無機凝集粒子として製造することが可能であるが、こうした無機凝集粒子の安定的な製造という観点からは、高分散性の無機粒子を用いるのが好ましい。この観点から、無機粒子は、ゾルゲル法により製造したものを用いるのが好ましい。
上記ゾルゲル法により球状複合酸化物無機粒子を製造する方法は、例えば特開昭58−110414号公報、特開昭58−151321号公報、特開昭58−156524号公報、特開昭58−156526号公報等により公知である。
無機粒子に施す噴霧乾燥は、使用する無機粒子を水などの揮発性の液状媒体に分散させスラリー状にしたものを、例えば高速気流などにより微細な霧状に調製し、この霧状物を高温の気体と接触させることで液状媒体を揮発させ、液滴内に分散する無機粒子を実質的に一個の凝集粒子に集めて、乾燥した無機凝集粒子を作る方法をいう。噴霧乾燥法では、その噴霧形式や噴霧条件によって凝集粒子の粒径や粒度分布が制御可能である。この方法では粉砕工程などを伴なうことがないため粒度分布をシャープにすることが出来、非常に好ましい。
好適に用いられる噴霧乾燥法を説明すれば、無機粒子を水や、エタノール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒などの適当な溶媒に分散させてスラリーを調製し、このスラリーを高速の気流によって細かく噴霧する方法、またはスラリーを円盤状の回転体上に滴下し遠心力によって弾き飛ばして噴霧状にする方法が挙げられる。スラリーにおける無機粒子の濃度は、スラリーが高速気流や円盤状回転体により噴霧化可能であれば特に規定されないが、一般的には5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%である。また、円盤状回転体の回転速度は一般的に5000〜20000rpmである。液滴の径は、無機粒子の一次粒子径も勘案し、前記所望する3〜100μm等の平均粒子径の無機凝集粒子が得られるように調製すればよい。
これらの噴霧状にされたスラリーは高温の空気や不活性気体などによって直ちに乾燥すれば、前記変動係数CVの値を有する粒度の揃った無機凝集粒子が得られる。乾燥に使用する気体の温度は、スラリーを調製するために用いた溶媒を揮発することが出来れば特に制限されないが、60〜300℃が一般的であり、より好ましくは80〜250℃である。
なお、上記噴霧乾燥して得られる無機凝集粒子には、僅かであるがスラリーを調製するために用いた溶媒が残留することがある。このため、噴霧乾燥の後に真空乾燥することが好ましい。真空乾燥の時間は一般には1〜48時間であり、温度は20〜150℃であり、減圧度は0.01〜100ヘクトパスカル以下が一般的である。
上記噴霧乾燥して得られる無機凝集粒子の形状は、通常、球状、ドーナツ状またはディンプル状である。したがって、このような無機凝集粒子を使用して製造される有機無機複合フィラーの形状も、これらの形状になるのが一般的である。粉砕によって製造された有機無機複合フィラーの形状は一般的に不定形であり、角が立っている部分があるため、その点への応力集中によって曲げ強さが低下することが指摘されていた。これに対して、無機凝集粒子を噴霧乾燥する場合においては、スラリーの微細粒子を熱風によって短時間で乾燥させて凝集させるため、凝集粒子を球状や略球状にすることが可能であり、さらにはスラリーの濃度を薄くすることによって、ドーナツ状やディンプル状にすることも可能であり、前記した従来の有機無機複合フィラーにおける、形状に関する問題が解消でき好ましい。
上記製造方法では、このようにして得られた無機凝集粒子に対して、減圧下で液状の重合性単量体と接触させた後、常圧に復圧させる処理を施す。この処理により、該無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に、上記重合性単量体が浸入する。特に、上記無機凝集粒子と重合性単量体との接触は減圧下で実施されているため、該重合性単量体は復圧時に無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙の深部まで浸入し、製造される有機無機複合フィラーの強度が向上し、さらには有機マトリックス樹脂の不足部分に起因した小粒子の生成が抑えられる。また、このように接触させた重合性単量体は、復圧時に無機凝集粒子の凝集間隙に優先的に浸入していくため、凝集粒子の外周に付着する量が大幅に低減し、無機凝集粒子同士が結合することによる塊状物の生成が大きく抑制される。かくして、得られる有機無機複合フィラーは、粒度の広がりが抑えられ、その原料についての粒度の変動係数CVの小ささが良好に保持される。
無機凝集粒子と重合性単量体との接触は、減圧状態で行われる限り特に制限されるものではなく如何なる方法により実施しても良く、例えば、攪拌されている無機凝集粒子に重合性単量体を滴下する方法、無機凝集粒子と重合性単量体とを一度に混合して攪拌する方法、攪拌されている無機凝集粒子に重合性単量体を連続的または複数回に分けて断続的に混合する方法等が挙げられる。このうち、無機凝集粒子中に気泡の噛み込みが少なく、無機凝集粒子の深部まで重合性単量体が浸入しやすい点で、攪拌している無機凝集粒子に重合性単量体を滴下する方法により実施するのが好ましい。
無機凝集粒子と重合性単量体とを接触させる際の減圧度は、重合性単量体または溶剤で希釈された重合性単量体の粘度や、凝集粒子の粒径やその凝集状態にあわせて適宜選択すればよいが、一般的には100ヘクトパスカル以下、好ましくは0.01〜50ヘクトパスカル、最も好ましくは0.1〜10ヘクトパスカルである。
上記の減圧にした後に復圧する操作は、使用する重合性単量体の全量を無機凝集粒子と混合した後、一回実施することで行っても良い。重合性単量体を無機凝集粒子の間隙の深部に、より十分に浸入させる観点からは、前記した無機凝集粒子と重合性単量体との接触を、攪拌されている無機凝集粒子に重合性単量体を滴下したり、攪拌されている無機凝集粒子に重合性単量体を連続的または複数回に分けて断続的に混合する方法において、重合性単量体の一定量を無機凝集粒子に接触させるごとに実施して、複数回施すのが好ましい。この復圧の操作回数は、一般的には1〜10回であり、好ましくは2〜5回である。
無機凝集粒子と重合性単量体とを減圧下で接触させてから復圧させるまでの時間は、重合性単量体の粘度にも影響されるが、無機凝集粒子の間隙に重合性単量体を浸入し易くするためには、重合性単量体を混合したり、その滴下を開始してから、攪拌状態で3分以上は設けるのが好ましく、5分以上設けるのがより好ましい。
上記操作において、重合性単量体を無機凝集粒子の間隙により十分に侵入させるためには、該重合性単量体の粘度は低いことが好ましく、この粘度の調節のために揮発性の溶剤を用いることも可能である。重合性単量体、または溶剤で希釈された重合性単量体溶液の23℃で測定した粘度は凝集粒子の粒径やその間隙の大きさにあわせて適宜選択すればよいが、一般的には10ポイズ以下、好ましくは0.1〜7ポイズであり、より好ましくは0.2〜5ポイズである。
重合性単量体を複数混合して用いる場合、上記重合性単量体の粘度は、個々の重合性単量体が必ずしも上記の粘度を満足する必要はなく、混合して使用する状態で上記の粘度を満足していることが好ましい状態である。
無機凝集粒子に接触させる液状の重合性単量体の量は、少なすぎると該重合性単量体の一次粒子の凝集間隙への浸入量が十分でなくなり、得られる有機無機複合フィラーの強度が低下するだけでなく、粒度の変動係数CVも大きくなる傾向がある。また、この液状の重合性単量体の量が多すぎると、一次粒子の凝集間隙に浸入するだけでなく、無機凝集粒子の外周にも該重合性単量体がコーティングされるようになり、やはり得られる有機無機複合フィラーの粒度の変動係数CVが大きくなる傾向がある。こうした観点から、上記無機凝集粒子に接触させる液状の重合性単量体の量は、無機凝集粒子100質量部に対して10〜30質量部であることが必要であり、12〜25質量部が特に好ましい。
凝集粒子の間隙に重合性単量体を侵入させた後に硬化せしめる方法は、用いた重合性単量体や重合開始剤の種類によって異なるため、適宜最適な方法を選択すればよいが、熱重合開始剤を用いた場合には加熱によって重合を行い、光重合開始剤を用いた場合は対応する光を照射することによって重合することが一般的である。
熱重合の場合、重合温度は用いる重合開始剤によって異なるため適宜最適な温度を選択すればよいが、一般的には30〜170℃、好ましくは50〜150℃である。
光重合の場合、光源は用いる重合開始剤の種類によって異なるため適宜最適な光源を選択すればよいが、一般的にはハロゲンランプ、LED、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
本発明に用いられる重合性単量体としては特に限定されず、重合性基として、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等を有する一般に公知のものが使用できる。本発明で使用される代表的なものを例示すれば、アクリル基及び/又はメタクリル基を有する重合可能なモノマーである。また、重合可能なビニルモノマーは、モノマーの重合性や得られた硬化体の機械的物性などの理由から、二官能以上、より好適には二官能〜四官能の重合性単量体であるのが好ましい。具体的に例示すれば次のとおりである。
(I)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン;上記の各種メタクリレートに対応するアクリレート;及びOH基含有ビニルモノマーと、芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(上記OH基含有ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、あるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートを例示できる。また、上記のジイソシアネートとしては、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートを例示できる。)
(ii)脂肪族化合物系のもの
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;及びOH基含有ビニルモノマーと、脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(上記のOH基含有ビニルモノマーとしては、芳香族化合物系のところで例示したものと同様のものを挙げることができ、脂肪族ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。)
(II)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート;及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(III)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等;
(上記のジイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。)
これらの重合性単量体の中でも、その重合活性や粘度、さらに無機凝集粒子との屈折率差などの理由から、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジメタクリレートを用いるのが好ましい。
上記重合性単量体は後に硬化せしめられるため、予め重合性単量体に重合開始剤を溶解させておくことが好ましい。該重合開始剤としては公知の開始剤が用いられるが、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物で表される熱重合開始剤;カンファーキノン、9,10−フェナントレンキノン等のジケトン化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のリン系化合物で表される光重合開始剤を例示することができる。これらは単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
また、必要に応じてアミン化合物などの重合促進剤を併用することも可能である。好適に用いられるアミンとしては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−安息香酸エチル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン等の芳香族アミン;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の脂肪族アミンを挙げることができる。
さらに、必要に応じて2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のトリハロメチルトリアジン化合物;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のアリールヨードニウム塩等を添加することも出来る。
また、本発明の有機無機複合フィラーに種々の機能を付与するため、上記無機粒子または上記重合性単量体に紫外線吸収剤、顔料、染料、重合禁止剤等を添加しても構わない。
以上により、本発明の有機無機複合フィラーが効率的に製造できる。この有機無機複合フィラーは、原料として使用した、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子の性状が、良好に保持されているため、粒度分布がこれに近い狭い値のものになる。すなわち、製造される有機無機複合フィラーの粒度も変動係数CVが70%以下になる。また、上記原料として使用した、無機凝集粒子の平均粒子径は前記したように3〜18μmであるため、該有機無機複合フィラーの平均粒子径も同範囲の値になる普通である。
なお、有機無機複合フィラーの粒度分布や平均粒子径(粒度)を測定し評価する際においても、これらの物性値は前記した無機凝集粒子での測定方法と同様に操作して測定すればよい。有機無機複合フィラーの粒度分布や平均粒子径を測定する際のサンプルの調整において、0.1gの無機凝集粒子をエタノール10mlに分散させても、手による振動では均一な分散状態にはなり難いので、超音波を20分間程度あてて調製するのが一般的である。
上記製造方法では、原料の無機凝集粒子の形状が良好に保持される。したがって、この効果を利用すれば、原料の無機凝集粒子として、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子を用いることにより、従来の有機無機複合フィラーの製造方法(すなわち、有機無機複合塊状物を一旦製造し、これを粉砕してふるいにより分級する方法)では製造が困難であった新規な有機無機複合フィラーを得ることができる。すなわち、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が、有機マトリックス樹脂を介して凝集する、平均粒子径が3〜18μmの有機無機複合フィラーであって、粒度の変動係数が70%以下である有機無機複合フィラーを製造することができる。
このような粒径の小さい有機無機複合フィラーは、歯科用充填修復材料への充填用に用いた場合に特に有用である。すなわち、有機無機複合フィラーの粒径は、該複合フィラーと重合性単量体、重合開始剤を含んでなるペーストの操作性に大きな影響を及ぼし、平均粒子径が大きすぎるとペースト表面がざらつき、充填器や筆などでの成形が困難になり扱いづらく、また審美的にも艶が得られにくいなど好ましくない。しかして、上記有機無機複合フィラーは、粒径が小さいため、これらの性状に特に優れる。なお、有機無機複合フィラーの平均粒子径が3μmを下回るほどに小さくなると、粒子の比表面積が大きくなってペーストの粘稠度が増し、口腔内でペーストを歯牙の修復部位に充填するときに扱いが低下する。
本発明の有機無機複合フィラーにおいて、原料の凝集無機粒子を構成する無機粒子は、重合性単量体に対する濡れ性を向上させるため、シランカップリング剤等を用いて疎水化したものを用いるのが好ましい。該シランカップリグ剤としては従来公知のものが何ら制限なく使用される。好適なシランカップリング剤を例示すれば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルートリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、κ−メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
無機粒子をシランカップリング剤で処理する方法としては従来公知の方法が採用できるが、前記の無機凝集粒子を得るために噴霧乾燥を施す場合であれば、この処理時に、該無機粒子の表面処理も同時に行うのが効率的で好ましい。
既に説明した通り、本発明の有機無機複合フィラーは歯科用充填修復材料に配合される歯科用フィラーとして特に有用である。歯科用充填修復材料には有機無機複合フィラーに加えて、重合性単量体と重合開始剤を含んでなる。
上記重合性単量体としては、該用途に使用される公知のものが制限なく使用でき、例えば、前記した有機無機複合フィラーを調製するために用いられる重合性単量体と同じものを挙げることができる。該重合性単量体は、有機無機複合フィラー100質量部に対して10〜100質量部の範囲で配合させるのが一般的である。
また、上記重合開始剤も、該用途に使用される公知のものが制限なく使用でき、例えば、前記した有機無機複合フィラーを重合硬化せしめるための重合開始剤と同じものを挙げることができる。該重合開始剤は、上記重合性単量体100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で配合させるのが一般的である。
また、歯科用充填修復材料に、本発明の効果を損なわない範囲で他の無機フィラー添加することもできる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に示したペースト調製方法、曲げ強度、ペーストの流動性は以下の方法に従った。また、重合性単量体、無機粒子、重合開始剤等の化合物の略称を以下に示す。
(1)略称・略号
イ)重合性単量体
・AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン
・HD:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
・D2.6E:下記式で示される化合物
Figure 2011105953
*(l+l)の平均が2.6の混合物

・GMA:2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン
ロ)無機粒子
・F−1:1次粒子の平均粒子径0.2μmの、ゾルゲル法で製造した球状のシリカ−ジルコニア
・F−2:1次粒子の平均粒子径0.4μmの、ゾルゲル法で製造した球状のシリカ−ジルコニア
・F−3:1次粒子の平均粒子径0.07μmの、ゾルゲル法で製造した球状のシリカ−ジルコニア
・F−4:1次粒子の平均粒子径0.08μmの、ゾルゲル法で製造した球状のシリカ−チタニア
ハ)重合開始剤
・CQ:カンファーキノン
・TCT:2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン
・DMBE:N,N−ジメチル−p−安息香酸エチル
・TEOA:トリエタノールアミン
また、無機凝集粒子および有機無機複合フィラーの特性(平均粒子径、変動係数CV、形状)、ペースト状組成物の調製方法、ペーストの流動性の測定は以下の方法を用いた。
(1)無機凝集粒子を構成する無機粒子(一次粒子)の平均粒子径
走査型電子顕微鏡(XL−30S FEG,PHILIPS社製)を用い、無機粒子の写真を5000〜100000倍で撮影し、その写真の単位視野内に観察される一次粒子から無作為に100個を選択し、それぞれの粒子径を求め、体積平均(測定した粒子径の3乗平均の立方根)での平均粒子径を算出した。
(2)無機凝集粒子の平均粒子径(粒度)
0.1gの無機凝集粒子をエタノール10mlに分散させ、手でよく振動する。粒度分布計(LS230、ベックマンコールター製)を用い、光学モデルFraunhoferを適用して、体積統計のメディアン径を求めた。
(3)有機無機複合フィラーの平均粒子径(粒度)
有機無機複合フィラーをエタノールに分散させる際、超音波を20分あてること以外は(2)無機凝集粒子の場合と同様にして求めた。
(4)無機凝集粒子および有機無機複合フィラーの変動係数CV
(2)無機凝集粒子および(3)有機無機複合フィラーの各平均粒子径の測定で求められた平均粒子径とその標準偏差を用いて、下記式によってそれぞれ求めた。
Figure 2011105953
(但し、SDは標準偏差、Xは算術平均径を表す。)
(5)ペースト状組成物(歯科用充填修復材料)の調製方法
下記に配合比を示した重合性単量体、光重合開始剤よりなる有機マトリックスE1に、所定量の有機無機複合フィラー、無機充填材を配合し、赤色光下にて乳鉢を用いて均一に攪拌、脱泡して調製した。
D2.6E 70質量部
3G 20質量部
UDMA 10質量部
CQ 0.20質量部
DMBE 0.35質量部
TEOA 0.35質量部
TCT 0.20質量部
有機無機複合フィラー 180質量部
F−2 84質量部
F−3 36質量部
(6)曲げ強度の測定方法
ステンレス製型枠に硬化性組成物を充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いて一方の面から30秒×3回、全体に光が当たるように場所を変えてポリプロピレンに密着させて光照射を行なった。ついで、反対の面からも同様にポリプロピレンに密着させて30秒×3回光照射を行ない硬化体を得た。#800の耐水研磨紙にて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整え、この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定した。試験片5個について評価し、その平均値を曲げ強度とした。
(7)ペースト状組成物の流動性
ガラスプレート上にペースト状組成物の約0.1gを載せ、ガラスプレートを水平に保ったまま37℃で2分間自然に展開した。このときのペースト状組成物の長径と短径の平均値を流動性とした。
比較例1
無機粒子F−1の100gを200gの水に入れ、循環型粉砕機SCミルを用いて無機粉体を分散させた分散液を得た。
ついで、4g(0.016mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと0.003gの酢酸を80gの水に加え、1時間30分撹拌し、pH4の均一な溶液を得た。この溶液を上記分散液に添加し、均一に混合した。その後、軽く混合しながら上記分散液を高速で回転するディスク上に供給して遠心力で噴霧化する噴霧乾燥機(坂本技研(株)製スプレードライヤーTSR−2W)を用いて、ディスクの回転速度を10000rpm、空気の温度を200℃とし、噴霧乾燥法により乾燥した。その後、噴霧乾燥した無機粉体を60℃、18時間真空乾燥して無機凝集粒子を71g得た(以下、この無機凝集粒子の調製方法をG−1とも呼ぶ)。上記G−1法によって得られた無機凝集粒子の平均粒子径は40.0μmであり、変動係数CVは64%であった。
次いで、上記無機凝集粒子10.0gを激しく攪拌する中に、GMAを0.64g、3Gを0.43g、HDを0.71g、さらに重合開始剤としてAIBNを0.005g溶解した重合性単量体(23℃で測定した粘度1ポイズ)を、5ヘクトパスカルでの減圧下で滴下した。この滴下は、重合性単量体の1/3量を10分かけて滴下した後、滴下を中断して10〜20秒かけて常圧に復圧し、次いで、再び5ヘクトパスカルに減圧して、残余の重合性単量体を用いて、上記の減圧下での滴下と復圧操作を2回繰り返して、合計30分間あまりをかけて実施した。滴下終了後、反応容器内を窒素で置換し、60分撹拌した。その後、重合性単量体の侵入した無機凝集粒子を100℃に加熱して1時間撹拌せしめて、該重合性単量体を重合硬化させて有機無機複合フィラーを8.5g得た。
上記有機無機複合フィラーの平均粒子径は36.2μmであり、変動係数CVは66%であり、原料として使用した上記無機凝集粒子の平均粒子径と変動係数CVが良好に保持されていた。
比較例2
無機粒子F−2の70gと無機粒子F−3の30gを200gの水に投入し、循環型粉砕機SCミルを用いて、これら無機粒子を分散させた以外は、実施例1と同様の方法で無機凝集粒子を66g得た。得られた無機凝集粒子の平均粒子径は21.7μmであり、変動係数CVは64%であった。
次いで、上記無機凝集粒子10.0gに対して、表1に示したモノマー、重合開始剤を用いた以外は実施例1と同様にして有機無機複合フィラーを8.1g得た。
上記有機無機複合フィラーの平均粒子径は22.8μmであり、変動係数CVは49%であった。
比較例3
表1に示した実施例1と同様の無機凝集粒子、重合性単量体、重合開始剤を用いた以外は実施例1と同様にして有機無機複合フィラーを得た。該複合フィラーの平均粒子径は42.3μm、変動係数CVは68%であった。
実施例1
無機充填材F−2の70gと無機粒子F−3の30gを200gの水に入れ、循環型粉砕機SCミルを用いて無機粉体を分散させた分散液を得た。
ついで、4g(0.016mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと0.003gの酢酸を80gの水に加え、1時間30分撹拌し、pH4の均一な溶液を得た。この溶液を上記分散液に添加し、均一に混合した。その後、軽く混合しながら上記分散液を高速で流れる気流によって噴霧化する噴霧乾燥機(藤崎電機社製マイクロミストドライヤーMDL−050)を用いて、空気の温度を230℃とし、噴霧乾燥法により乾燥した。その後、噴霧乾燥した無機粉体を60℃、18時間真空乾燥して無機凝集粒子を51g得た(以下、この凝集粒子調製方法をG−2とも呼ぶ)。上記G−2法によって得られた凝集粒子の平均粒子径は4.0μmであり、変動係数CVは61%であった。
次いで、上記無機凝集粒子に対して表1に示したモノマー、重合開始剤を用いた以外は実施例1と同様にして有機無機複合フィラーを得た。該複合フィラーの平均粒子径は3.5μm、変動係数CVは59%であった。
実施例2、3
表1に示した無機凝集粒子、重合性単量体、重合開始剤を用いた以外は実施例4と同様にして有機無機複合フィラーを得た。
比較例4
比較例1と同じ無機凝集粒子を用い、表1に示した重合性単量体、重合開始剤を用いて乳鉢でペースト状混合物を調製した。このペースト状混合物を減圧下で脱泡した後、100℃で30分間重合硬化せしめた。硬化物を振動ボールミル(ジルコニアボール粒径:5mm)で粉砕し、粉砕物を篩にかけることで100μm以上の粒子を除去した。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は20.3μm、変動係数CVは92%であった。
比較例5
無機粒子(F−1)について、噴霧乾燥を行わずにそのまま使用する以外は比較例1と同じ操作により有機無機複合フィラーを7.9g得た。該有機無機複合フィラーの平均粒子径は23.6μm、変動係数CVは138%であった。
比較例6
比較例1において、無機凝集粒子への重合性単量体の滴下時に、減圧と復圧を行わずに常圧下で操作を続ける以外は、実施例1と同様にして有機無機複合フィラーを8.4g得た。この有機無機複合フィラーの平均粒子径は20.6μm、変動係数CVは82%であった。
実施例4〜6、比較例7〜13
表2に示した有機無機複合フィラーを用いてペースト状組成物を調製し、ペースト状組成物の流動性と曲げ強さを測定した。結果を表2に示した。
本発明の有機無機複合フィラーを用いて製造したペースト状組成物(歯科用充填修復材料)では、適度な流動性を保ちつつ、曲げ強さが向上していることが分かる。
Figure 2011105953
Figure 2011105953

Claims (4)

  1. 平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が、有機マトリックス樹脂を介して凝集する、平均粒子径が3〜18μmの有機無機複合フィラーであって、粒度の変動係数が70%以下であることを特徴とする有機無機複合フィラー。
  2. 平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子の100質量部を、減圧下で、液状の重合性単量体の10〜30質量部に接触させた後に復圧して、該重合性単量体を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させることを特徴とする請求項1記載の有機無機複合フィラーの製造方法。
  3. 平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子が凝集されてなる、平均粒子径が3〜18μmで、粒度の変動係数CVが70%以下である無機凝集粒子が、平均粒子径が0.01〜1μmである無機粒子を噴霧乾燥することにより凝集させて得られたものである請求項2記載の有機無機複合フィラーの製造方法。
  4. 請求項1記載の有機無機複合フィラー、重合性単量体および重合開始剤からなる歯科用充填修復材料。
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