JP5814812B2 - 有機無機複合フィラーの製造方法 - Google Patents

有機無機複合フィラーの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5814812B2
JP5814812B2 JP2012020886A JP2012020886A JP5814812B2 JP 5814812 B2 JP5814812 B2 JP 5814812B2 JP 2012020886 A JP2012020886 A JP 2012020886A JP 2012020886 A JP2012020886 A JP 2012020886A JP 5814812 B2 JP5814812 B2 JP 5814812B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
inorganic
polymerizable monomer
particles
organic
composite filler
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012020886A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013159657A (ja
Inventor
達矢 山崎
達矢 山崎
佐藤 猛
猛 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Original Assignee
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TOKUYMA DENTAL CORPORATION filed Critical TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Priority to JP2012020886A priority Critical patent/JP5814812B2/ja
Publication of JP2013159657A publication Critical patent/JP2013159657A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5814812B2 publication Critical patent/JP5814812B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polymerisation Methods In General (AREA)

Description

本発明は、有機無機複合フィラーを製造するのに、高品質で製造時間を短縮することができる有機無機複合フィラーの製造方法に関する。
歯科用充填修復材は、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや使用時の操作が容易なことから、治療した歯牙を修復するための材料として急速に普及し、近年では、前歯の治療の大部分が充填修復材料によって行われているばかりでなく、高い咬合圧のかかる臼歯部等の修復にも使用されるようになってきた。
歯科用充填修復材料は、一般に重合性単量体(モノマー)、フィラー、及び重合開始剤を主成分として構成されるが、硬化前ペーストの操作性、並びに硬化体の審美性及び機械的物性等は、使用するフィラーの種類、形状、粒子径、及び充填量等によって大きく左右される。
例えば、従来、粒径が数μmを超える比較的大きな無機フィラーを配合した歯科用充填修復材料が知られていたが、該歯科用充填修復材料は、硬化体の機械的強度が高く、使用時において充填機離れが良いという特徴をもつものの、研磨性や耐摩耗性が悪く、臨床的に天然歯と同様な艶のある仕上がり面を得られないといった問題があった(問題1)。
この問題1を解決するために、平均粒径が1μm以下の微細な無機フィラーを用いる方法が提案され、表面滑沢性や素早い研磨性が大きく改善された。しかしながら、このような微細な無機フィラーを用いた歯科用充填修復材料は、そのフィラーの比表面積が非常に大きいために硬化前ペーストの粘稠度が高くなってしまい、ペーストの粘稠度を歯科医師が口腔内で使用可能なレベルに調製するためには配合量を少なく、または重合性単量体の配合量を多くせざるを得ず、操作性の低下や重合に伴なう収縮量の増加、さらには機械的強度の低下等を招いてしまうといった問題があった(問題2)。
この問題2を解決する方法として、有機無機複合フィラーの使用が提案されている。すなわち、有機無機複合フィラーは、微細な無機フィラーを有機樹脂フィラー中に含有させた複合フィラーであり、これを用いれば、微細無機フィラーを重合性単量と直接接触させることなくペーストに配合できるため、増粘作用の発現を小さく抑えながら、その十分量をペーストに含有させることが可能になる。
この有機無機複合フィラーの製造方法としては、微細無機フィラーと重合性単量体とを予め混練した硬化性組成物を重合硬化させた後に、硬化体を粉砕する方法が一般的である(例えば、特許文献1および2参照)。粉砕によって得られたフィラーは粒子径に幅広い分布を生じやすく、歯科用充填修復材料に用いるには不適当な粒径のフィラーを取り除くために、ふるい等の分級操作が必要であり、製造方法が煩雑であった(問題3)。
また、別の有機無機複合フィラーの製造方法としては、超微粒子充填材にレジンマトリックスモノマーのキャピラリー状態でのコーティングを施すことを特徴とした製造方法が開示されている(特許文献3参照)。
すなわち、この方法は、コロイダルシリカ等の超微粒子と重合性単量体とをキャピラリーミキサーで混合することにより、該超微粒子の凝集粒子の外周だけでなく間隙にまで重合性単量体を浸入させる状態で該超微粒子の重合性単量体によるコーティングを行い、次いで、重合性単量体を重合硬化させて有機無機複合塊状物を得、これを粉砕して有機無機複合フィラーを製造する方法である。
この方法によれば超微粒子が凝集している場合には、その内面の一次粒子まで重合性単量体により濡らすことができ、超微粒子同士が重合体により結合した有機無機複合フィラーを製造することができる。しかしながら、この方法では、上記キャピラリー状態での重合性単量体のコーティングは常圧下で実施されているため、前記重合性単量体の凝集粒子間隙への浸入の程度が今一歩浅く、凝集間隙の深部に位置する一次粒子まで十分に濡れさせることが困難であった。そのため、得られる有機無機複合フィラーの強度等が今一歩十分ではなかった(問題4)。
この問題3及び4を解決する方法として、無機粒子を噴霧乾燥(スプレードライ)により凝集させ、得られた無機凝集粒子に対して、減圧下で液状の重合性単量体と接触させた後、常圧に復圧させる処理を施す製造方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法によれば、スプレードライで得られた無機凝集粒子に重合性単量体を浸入させ重合硬化させることにより、粒度分布の狭い有機無機複合フィラーを製造することが可能であり、必ずしも分級等による粒度調整をする必要はなく、より簡便に製造できる。また、無機凝集粒子と重合性単量体との接触が減圧下で実施されているため、該重合性単量体は復圧時に無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙の深部まで浸入し、製造される有機無機複合フィラーの強度が向上し、さらには無機凝集粒子同士が結合することによる塊状物の生成が大きく抑制されるようになった。
特開昭59−101409号公報 特開2002−256010号公報 特開平10−258068号公報 特開平2008−37952号公報
このように従来では、「スプレードライ」−「減圧化でのフィラーの撹拌」−「モノマー溶液を投入」−「復圧によるモノマー液の含浸」−「重合硬化」の手順で、有機無機複合フィラーの製造を行っていた。
このような状況下、本発明は、特許文献4の技術をより高め、減圧操作を廃止し若しくは軽減することができ、無機凝集粒子の一次粒子間隙への重合性単量体の入り込みが従来と同等以上でありながら、従来より操作が少なく、短時間で有機無機複合フィラーを製造することができる方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の有機無機複合フィラーの製造方法は、無機粒子を噴霧乾燥させることにより無機凝集粒子を得て、該無機凝集粒子に、重合性単量体と重合開始剤を混合し調製した重合性単量体溶液を接触させ、該重合性単量体溶液を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させて得る有機無機複合フィラーの製造方法において、前記重合性単量体溶液の無機凝集粒子間隙への浸入を、無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物の攪拌下に遠心力を作用させて行い、かつ前記遠心力を作用させて行う装置として、前記無機凝集粒子と重合性単量体溶液を収納した容器を自転と公転による遠心力を同時に作用させる遠心運動型攪拌機を用いるようにした。
記有機無機複合フィラーの製造方法は、前記無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物が攪拌下に負荷される遠心力が、遠心加速度として100〜500Gであることが好ましい。
本発明の有機無機複合フィラーの製造方法は、無機粒子を噴霧乾燥させることにより無機凝集粒子を得て、該無機凝集粒子に、重合性単量体と重合開始剤を混合し調製した重合性単量体溶液を接触させ、該重合性単量体溶液を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させて得る有機無機複合フィラーの製造方法において、前記重合性単量体溶液の無機凝集粒子間隙への浸入を、無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物の攪拌下に遠心力を作用させて行い、かつ前記遠心力を作用させて行う装置として、前記無機凝集粒子と重合性単量体溶液を収納した容器を自転と公転による遠心力を同時に作用させる遠心運動型攪拌機を用いたので、無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙の深部まで重合性単量体溶液が浸入し、強度の大きな有機無機複合フィラーを得ることができる。
ここで、無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物に対して遠心力を負荷すれば、無機凝集粒子間隙に対して重合性単量体溶液はより浸入し易くなるが、この遠心力が単純に一方向のみから負荷されているような場合(例えば、回転ミキサーや遠心分離機を用いた場合)、容器壁面方向に押し付けられている無機凝集粒子の存在位置によって、上記重合性単量体溶液の浸入の程度が不均一化することが避けられない。これに対して、上記攪拌下に遠心力を作用させれば、無機凝集粒子間隙に対する重合性単量体溶液の浸入は均一化され、得られる有機無機複合フィラーはバラツキなく強度が向上する。
この無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物の攪拌下での遠心力の負荷は、容器を自転と公転させて夫々の遠心力を同時に作用させる遠心運動型攪拌機を用いることにより達成できる。こうした装置は、容器が同時に自転と公転するため、両回転の作用が合わさった強い遠心力が加わる他、夫々の異なる回転軌道の作用により、容器の収納物は攪拌される。また、係る攪拌は、容器の回転のみにより行なわれるため、収納される無機凝集粒子には、攪拌翼を用いた場合等の物理的打撃は何も加わらず、無機凝集粒子に強い解砕作用が働くようなこともない。よって、無機凝集粒子の凝集状態は良好に保たれる。
画して、この遠心運動型攪拌機を用いて処理することにより、無機凝集粒子の凝集間隙への重合性単量体溶液の浸入は、より深部まで安定的に行なうことができるものになり、高品質な有機無機複合フィラーの製造が可能になる。
本発明の実施形態における有機無機複合フィラーの製造方法において、無機凝集粒子の製造に用いられるスプレードライ装置の概略正面図である。 本発明の実施形態における有機無機複合フィラーの製造方法において、有機無機複合フィラーの製造に用いられる遠心運動型攪拌機の概略断面図である。 図2の遠心運動型攪拌機における回転容器の配置状態を示す斜視図である。
以下、本発明の有機無機複合フィラーの製造方法の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る有機無機複合フィラーの製造に使用するスプレードライ装置1の代表的態様を示す概略図であり、スプレードライ装置1はタンク本体2を設け、タンク本体2の天井壁には、原料供給口3が設けられ、原料供給口3にはアトマイザー1aが配設され、アトマイザー1aは液体やスラリー状のものをタンク本体2内の乾燥室2aに噴霧することができる。具体的に噴霧する方法としては、スラリーを高速気流によって細かく噴霧する方法(ノズル式アトマイザー)、またはスラリーを円盤状の回転体上に滴下し遠心力によって弾き飛ばして噴霧状にする方法(ディスク式アトマイザー)が挙げられる。
原料供給口3には上述のアトマイザー1aに接続されている配管4aを介して原料供給ポンプ5が接続され、原料供給ポンプ5は配管4bを介して原料タンク6と接続されている。原料タンク6には、無機凝集粒子の原料である、実質非凝集であるか低凝集状態の無機粒子と水などの揮発性の液状媒体と、必要に応じて疎水化剤等の添加剤とを混合し調整したスラリーが納められている。
タンク本体2の周側壁の上部には、配管4cを介して加熱装置7が接続され、加熱装置7は配管4dを介して送風機8と接続されている。加熱装置7に送られる気体は、原料によって異なるが、窒素などの不活性ガスや空気などが送風される。
タンク本体2の下部には、排出口9が設けられ、排出口9の下部には乾燥品収納容器10が設けられている。
次に、図2及び図3を参照にして、上記スプレードライ装置1により製造された無機凝集粒子を用いて、有機無機複合フィラーを製造するのに使用する遠心運動型攪拌機1の代表的態様について説明する。
遠心運動型攪拌機11はケーシング12を備え、ケーシング12内には、遠心力加重装置14が設けられている。遠心力加重装置14は中央に回転台15を設け、回転台15は制御モータ16によって回転軸17を中心に回転が可能である。回転台15は内側に位置する円形の平板15aと外周側の環状傾斜部15bとからなり、環状傾斜部15bは、平板15aの中心側から外側上方へ傾斜する環状面を有する。環状傾斜部15bには、1つの回転容器18が設けられ、回転容器18は回転台15の回転軸17から離して配置され、本実施形態では1つの回転容器18を配設したが、周方向へ2つ以上の有底円筒形状の回転容器18を配設してもよい。なお、図3は1つの回転容器18が自転公転している状態を示す。
各回転容器18には、制御モータ19が設けられ、該制御モータ19によって回転容器18は回転軸21を中心に回転が可能である。回転容器18の内部には、撹拌すべき材料を入れる収納容器22をセットすることができる。収納容器22にはキャップ23が設けられ、キャップ23には、ケーシング内を減圧して運転した場合において、該収納容器22内を減圧するための多数の通気孔23aが形成されている。通気孔23aは、ケーシング12内を減圧しない場合は、無くてもよい。
各回転容器18の中心軸は、回転台15の回転軸17側に向いて傾斜し、回転台15が回転すると、各回転容器18は自分自身が矢印dの方向に自転するとともに、回転台15の回転軸17を中心に矢印eの方向に公転するため(図3)、収納物は攪拌され、併せて自転と公転が同時に合わさった強い遠心力を受ける。
ケーシング12は外部と気密に形成され、天井部12aには減圧装置24と連結された配管25の一端が連結されている。したがって、減圧装置24を稼働させることによりケーシングの内部を減圧させることができる。
以下、図1のスプレードライ装置1と図2及び図3の遠心運動型攪拌機11を用いた有機無機複合フィラーの製造方法について説明する。
図1を参照にして、スプレードライ装置1には無機凝集粒子を得るための原料が、原料タンク6に収納される。
原料は、実質非凝集であるか低凝集状態の無機粒子を揮発性溶媒に分散させてスラリーを調製する。また原料であるスラリーには、有機無機複合フィラーの物性を落とさない範囲において、疎水化剤等の添加剤を添加しても良い。
無機凝集粒子を構成する無機一次粒子の平均粒子径は、凝集粒子の粒径や、該凝集粒子の間隙への重合性単量体の侵入しやすさ、さらには該有機無機複合フィラーを用いた歯科用充填修復材料の審美性等から0.01〜1μmであるのが好ましい。これらの効果をより良好に発揮させる観点からは、無機粒子の平均粒子径は0.02〜0.8μmであることがより好ましい。
無機一次粒子の材質は、特に限定されず、従来の歯科用硬化性組成物にフィラーとして使用されているものを用いることができる。具体的には、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属から選ばれる金属の単体、およびこれらの金属の酸化物や複合酸化物;フッ化物、炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、水酸化物、塩化物、亜硫酸塩、燐酸塩等からなる金属塩およびこれらの金属塩の複合物等が挙げられる。好適には、非晶質シリカ、石英、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化イッテルビウム等の金属酸化物;シリカ‐ジルコニア、シリカ‐チタニア、シリカ‐チタニア‐酸化バリウム、シリカ‐チタニア‐ジルコニア等のシリカ系複合酸化物、ホウ珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等のガラス、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム等の金属フッ化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の無機炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩等が採用できる。また、これらのうち金属酸化物及びシリカ系複合酸化物については、緻密なものにするために高温で焼成することが好ましいが、その効果を向上させるために、ナトリウム等の少量の周期律表第I族金属の酸化物を含有させるのが好ましい。
上記無機粒子の内、シリカ系複合酸化物粒子は、屈折率の調整が容易である他、表面にシラノール基を多量に有しており、シランカップリング剤等の疎水化剤による表面処理が行い易いために特に好ましい。また、上記例示した、シリカ‐ジルコニア、シリカ‐チタニア、シリカ‐チタニア‐酸化バリウム、シリカ‐チタニア‐ジルコニア等は、強いX線造影性を有していることからも好適である。更には、より耐摩耗性に優れた歯科用硬化性組成物硬化体が得られることから、シリカ−ジルコニアが最も好適である。
無機一次粒子の形状は、特に限定されず、球形状、略球形状あるいは不定形粒子を用いることができる。歯科用硬化性組成物硬化体の耐摩耗性、表面滑沢性の観点から、球形状又は略球形状が好ましい。
これら無機一次粒子は、平均粒子径、材質、形状が異なるもの複数種類を混合して使用してもよい。
上記の無機一次粒子から構成される無機凝集粒子は、有機無機複合フィラーの製造に使用する重合性単量体に対する濡れ性を向上させるために、疎水化剤により表面処理されていることが好ましい。
疎水化剤としては従来公知のものが何ら制限なく使用される。好適な疎水化剤を例示すれば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルートリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、κ−メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などが挙げられる。
無機凝集粒子の疎水化に用いる疎水化剤の量に特に制限はなく、得られる有機無機複合フィラーの機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すれば良いが、好適な範囲を例示すれば、無機粒子100重量部に対して、上記疎水化剤1〜30重量部の範囲である。
また、かかる表面処理方法は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。代表的な処理方法を例示すれば、無機粒子及び疎水化剤を、適当な溶媒中でボールミル等を用いて分散混合し、エバポレーターや風乾で乾燥した後、50〜150℃に加熱する方法;無機粒子及び疎水化剤をアルコール等の溶剤中で数時間程度加熱還留する方法;粒子表面に疎水化剤をグラフト重合させる方法等が挙げられる。こうした表面処理は、無機凝集粒子とする前に行っても良いし、無機凝集粒子とした後に行っても良いが、前記した無機凝集粒子を得るための噴霧乾燥を施すのであれば、この処理時に同時に行うのが効率的である。
スラリーに用いられる揮発性溶媒は、特に限定されず、公知のものを用いる事が出来る。具体的には、水や、エタノール、イソプロピルアルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒などを用いることが出来る。また、スラリーには、有機無機複合フィラーの物性を損なわない範囲において、その他の添加剤を添加しても何ら問題はない。
図1のスプレードライ装置1において、原料タンク6の原料は、原料供給ポンプ5によって圧送され、原料供給口3に供給される。原料供給口3ではアトマイザー1aからスラリー状の原料が乾燥室2aに噴霧される。
スラリーにおける無機粒子の濃度は、スラリーが原料供給口3において、高速気流(ノズル式アトマイザー)や円盤状回転体(ディスク式アトマイザー)により噴霧化可能であれば特に規定されないが、一般的には5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%である。また、円盤状回転体の回転速度は一般的に1000〜50000rpm、好適には5000〜30000rpmである。
液滴の径は、無機粒子の一次粒子径も勘案し、3〜100μm等の平均粒子径の無機凝集粒子が得られるように調製すればよい。液滴の径は、スラリー濃度、スラリー送液速度、噴霧方式などによって調整することができる。
そして、乾燥室2aでは、乾燥用の気体が送風機8によって加熱装置7に送風され、加熱された気体が供給される。乾燥に使用する気体の温度は、スラリーを調製するために用いた溶媒を揮発することが出来れば特に制限されないが、60〜300℃が一般的であり、より好ましくは80〜250℃である。
このように、無機凝集粒子を噴霧乾燥する場合においては、スラリーの微細粒子を熱風によって短時間で乾燥させて凝集させるため、凝集粒子を球状や略球状にすることが可能になる。さらにはスラリーの濃度を薄くすることによって、ドーナツ状やディンプル状にすることも可能である。
乾燥室2aの下部には無機凝集粒子が得られ、得られた無機凝集粒子は乾燥品収納容器10に回収される。
スプレードライ装置1での作業が終了したら、乾燥品収納容器10からの無機凝集粒子と、重合性単量体と重合開始剤などからなる重合性単量体溶液とを遠心運動型攪拌機11の収納容器22に収納する。
本発明に用いられる重合性単量体としては特に限定されず、重合性基として、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等を有する一般に公知のものが使用できる。本発明で使用される代表的なものを例示すれば、アクリル基及び/又はメタクリル基を有する重合可能なモノマーである。また、重合可能なビニルモノマーは、モノマーの重合性や得られた硬化体の機械的物性などの理由から、二官能以上、より好適には二官能〜四官能の重合性単量体であるのが好ましい。具体的に例示すれば次のとおりである。
(I)二官能重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン;上記の各種メタクリレートに対応するアクリレート;及びOH基含有ビニルモノマーと、芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。(上記OH基含有ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、あるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートを例示できる。また、上記のジイソシアネートとしては、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートを例示できる。)
(ii)脂肪族化合物系のもの
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレンジオールジメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;及びOH基含有ビニルモノマーと、脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。(上記のOH基含有ビニルモノマーとしては、芳香族化合物系のところで例示したものと同様のものを挙げることができ、脂肪族ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。)
(II)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート;及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(III)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等;(上記のジイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。)
中でも、得られる重合体の機械的強度や生体安全性等が良好でることから、(メタ)アクリル系の重合性単量体が好ましい。また、重合性の高さや硬化体の機械的物性が特に高くなる等の理由から、二官能以上、より好適には二官能〜四官能の重合性単量体であるのが好ましい。これら重合性単量体は、単独で使用しても、異種を混合して用いてもよい。
また、重合性単量体を無機凝集粒子の間隙により十分に侵入させるためには、該重合性単量体の粘度は低いことが好ましく、この粘度の調節のために揮発性の溶剤を用いることも可能である。重合性単量体、または溶剤で希釈された重合性単量体溶液の23℃で測定した粘度は凝集粒子の粒径やその間隙の大きさにあわせて適宜選択すればよいが、一般的には10ポイズ以下、好ましくは0.1〜7ポイズであり、より好ましくは0.2〜5ポイズである。
重合性単量体を複数混合して用いる場合、上記重合性単量体の粘度は、個々の重合性単量体が必ずしも上記の粘度を満足する必要はなく、混合して使用する状態で上記の粘度を満足していれば良い。
上記重合性単量体は後に硬化せしめられるため、予め該重合性単量体には重合開始剤が溶解される。重合開始剤としては公知の開始剤が用いられるが、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物で表される熱重合開始剤;カンファーキノン、9,10−フェナントレンキノン等のジケトン化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のリン系化合物で表される光重合開始剤を例示することができる。これらは単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
また、必要に応じてアミン化合物などの重合促進剤を併用することも可能である。好適に用いられるアミンとしては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−安息香酸エチル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン等の芳香族アミン;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の脂肪族アミンを挙げることができる。
さらに、必要に応じて2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のトリハロメチルトリアジン化合物;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のアリールヨードニウム塩等を添加することも出来る。
また、重合性単量体溶液には、得られる有機無機複合フィラーの物性を損なわない範囲において、その他の添加剤を添加しても何ら問題はない。
本発明において、収納容器22への無機凝集粒子と重合性単量体溶液との収納割合は、特に制限されるものではないが、無機凝集粒子同士の結合を防止する理由から、無機凝集粒子100質量部に対して重合性単量体溶液を1〜40質量部とするのが好ましい。
必要量の無機凝集粒子と重合性単量体溶液を、遠心運動型攪拌機11の収納容器22に収納した後、該収納容器22を遠心運動型攪拌機11の回転容器18にセット(固定)して、遠心力加重装置14を作動させて、撹拌を行う。
遠心運動型攪拌機11は、本実施形態では、株式会社シンキー製の自転・公転ミキサー「あわとり錬太郎(機種ARV−310)」を用いた。ただし、同種の遠心運動型攪拌機であれば、一般に市販されているものが使用できる。
遠心運動型攪拌機11は、回転台15が制御モータ16の作動によって、収納容器22を円運動させ、制御モータ19の作動によって収納容器22を自転させる。よって、収納容器22内の混練材は、回転台15による遠心力と自転による遠心力が同時に加わることによって撹拌される。詳しくは収納容器22の回転軸21は回転台15の回転軸17側の斜め上方へ傾斜し、傾斜したままの状態で収納容器22が回転台15の周方向に公転し、混練材の中のフィラーが効率良く撹拌される。
本発明の製造方法では、この回転台15による公転の遠心力と収納容器22による自転の遠心力が同時に加わることによって、無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物には強い遠心力加わり、その無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙の深部まで重合性単量体溶液を浸入させることができる。この無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙への重合性単量体溶液の浸入を良好に行なうためには、遠心力を作用させて行う装置の容器内に収容された無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物に負荷される遠心力が遠心加速度として100〜500G、より望ましくは300〜495Gであるように行なうのが好ましい。ここで、遠心加速度とは、下記式で求められる自転による遠心加速度と公転による遠心加速度を合計して求められた値である。
Figure 0005814812
Figure 0005814812
(上記式において、πは円周率、gは地球の重力加速度と定義する。)
上記遠心力が上記下限値以上であることにより、無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に対して重合性単量体溶液が十分に浸入するようになり、他方、この遠心力が上記上限値以下であることにより、無機凝集粒子の凝集状態が良好に保たれる。また、良好な撹拌状態を得る為には、自転による遠心力が遠心加速度として10G〜46G、より好ましくは25G〜45Gである事が望ましく、公転による遠心力が遠心加速度として90G〜454G、より好ましくは275G〜450Gである事が望ましい。
上記無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物に対する遠心力は、回転容器18(収納容器22)による自転の回転数、回転台15による公転の回転数を組合せることにより変動させることができる。上記遠心加速度の条件が満足される遠心力とするためには、回転容器18(収納容器22)の口径が8cm程度であり、且つ回転台15における回転軸17から回転容器18(収納容器22)の外端までの間隔が10cm程度の装置スケールであれば、回転容器18(収納容器22)の回転数は通常、450〜1010rpm、より好適には780〜1000rpmの範囲から採択でき、回転台15の回転数は、通常、900〜2020rpm、より好適には1560〜2000rpmの範囲から採択でき、所望の値になるよう適宜に組合せれば良い。
なお、無機凝集粒子への重合性単量体溶液の浸入にかかる作業時間は、約5〜30分である。より好ましくは約10〜20分が望ましい。また、必要であれば、ケーシング12の内部が減圧装置24によって減圧することで、無機凝集粒子の内部に重合性単量体溶液が更に浸入しやすくすることが可能である。
上述したように、従来では、「スプレードライ」−「減圧化でのフィラーの撹拌」−「モノマー溶液を投入」−「復圧による樹脂の含浸」(又はこれらのうちの「減圧化でのフィラーの撹拌」〜「復圧による樹脂の含浸」までの工程については複数回繰り返して行っていた)の手順で作業を行っていたが、本実施形態では、「スプレードライ」−「遠心運動型攪拌機による撹拌」のみの手順で行っている。
すなわち、無機凝集粒子を得るためのスプレードライについては、従来と本発明の実施形態とは同じ作業を行うが、従来の技術では減圧複圧操作を繰り返す必要があったが、本発明では無機凝集粒子への重合性単量体の浸入を遠心力によって行うことにより、作業の簡易化を図ることができ、作業時間が従来技術(特許文献4)の約1/3に短縮することも可能にできる。
有機無機複合フィラーを重合させるには、すなわち凝集粒子の間隙に重合性単量体を侵入させた後に硬化せしめる方法は、用いる重合性単量体や重合開始剤の種類によって異なるため、適宜最適な方法を選択すればよい。
熱重合開始剤を用いた場合には加熱によって重合を行い、光重合開始剤を用いた場合は対応する光を照射することによって重合することが一般的である。熱重合の場合、重合温度は用いる重合開始剤によって異なるため適宜最適な温度を選択すればよいが、一般的には30〜170℃、好ましくは50〜150℃である。
光重合の場合、光源は用いる重合開始剤の種類によって異なるため適宜最適な光源を選択すればよいが、一般的にはハロゲンランプ、LED、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、スプレードライ装置1によって無機凝集粒子を製造したが、これに代えて転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒等によって無機凝集粒子を製造しても良い。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。以下の実施例及び比較例に用いた無機粒子、重合性単量体、重合開始剤等の化合物の略称を以下に示す。
A)無機粒子
・F−1:一次粒子の平均粒子径200nmの、
ゾルゲル法で製造したシリカ−ジルコニア
・F−2:一次粒子の平均粒子径400nmの、
ゾルゲル法で製造したシリカ−ジルコニア
・F−3:一次粒子の平均粒子径80nmの、
ゾルゲル法で製造したシリカ−チタニア

B)重合性単量体
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2−4−
トリメチルヘキサン
・D2.6E:下記式で示される化合物
Figure 0005814812
(l+l)の平均が2.6の混合物
C)重合開始剤
・AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:N,N−ジメチル−p−安息香酸エチル
無機一次粒子の平均粒子径、無機凝集粒子および有機無機複合フィラーの平均粒子径、曲げ強さの測定、透明性の評価は以下の方法に従って測定した。
(1)無機一次粒子の平均粒子径
走査型電子顕微鏡(XL−30S FEG,フィリップス(PHILIPS)社製)を用い、有機無機複合フィラーの写真を5000〜100000倍で撮影した。画像解析ソフト(IP−1000PC、旭化成エンジニアリング社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、単位視野内における一次粒子の円相当径(粒子径)、最大長、最小幅と粒子数を求めた。観察対象の粒子数は100個以上であった。下記式により一次粒子の平均体積径を求め平均粒子径とした。
Figure 0005814812
(2)無機凝集粒子の平均粒子径(粒度)
0.1gの無機凝集粒子をエタノール10mlに分散させ、手を用いて十分振とうした。レーザー回折−散乱法による粒度分布計(「LS230」、ベックマンコールター製)を用い、光学モデル「フラウンフォーファー」(Fraunhofer)を適用して、体積統計のメディアン径を求めた。
(3)有機無機複合フィラーの平均粒子径(粒度)
有機無機複合フィラーをエタノールに分散させる際、超音波を20分間照射した以外は(2)無機凝集粒子の場合と同様に操作して、粒度を求めた。
(4)曲げ強さの測定
下記に示す配合比の重合性単量体、及び光重合開始剤よりなる有機マトリックスに、各実施例及び比較例において調製した所定量の有機無機複合フィラーと無機粒子を配合し、赤色光下にて乳鉢を用いて均一に攪拌、脱泡して、歯科用硬化性組成物を調製した。
(有機マトリックス)
D2.6E: 70質量部
3G: 20質量部
UDMA: 10質量部
CQ: 0.20質量部
DMBE: 0.35質量部
(フィラー)
有機無機複合フィラー: 180重量部
F−2: 84重量部
F−3: 36重量部
充填器を用いて、この歯科用硬化性組成物のペーストをステンレス製型枠に充填した。ペースト表面にポリプロピレンシートを圧接し、ポリプロピレンシートを通して光照射を行なった。照射は、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いた。可視光照射器の照射窓をポリプロピレンシートに密着させ、硬化体の全体に光が当たるように、場所を変えて一方の面から各30秒間ずつ3回光照射した。次いで、反対の面からも同様にして各30秒間ずつ3回光照射し、硬化体を得た。
#800の耐水研磨紙を用いて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整えた。この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の試験条件で、3点曲げ破壊強度を測定した。試験片5個について評価し、その平均値を曲げ強さとした。
(5)透明性の評価
前記(4)の方法で調製したペーストと同じ歯科用硬化性組成物のペーストを、7mmφ×1mmの孔を有する型に充填した。孔の両端のペースト表面にポリエステルフィルムを圧接した。ポリエステルフィルムを通して、可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)でペーストの両表面を30秒間光照射した。ペーストが硬化した後、型から取り出した。色差計(東京電色製、TC−1800MKII)を用いて、上記硬化体の三刺激値のY値(背景色黒及び白)を測定した。下記式、
コントラスト比=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値に基づいてコントラスト比を計算し、透明性の指標とした。
〔実施例1〕
(無機凝集粒子の調製)
水200gに対し、無機粒子F−1を100g添加し、循環型粉砕機SCミル(三井鉱山(株)製「SC50」)を用いて1時間分散処理を行なった。これに、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン4gと酢酸水(0.003gの酢酸を80gの水に加え、pH4に調製したもの)を添加しスラリーを調製した。スラリーにおける無機粒子の濃度は、26質量%であった。ディスク式噴霧乾燥機(坂本技研(株)製「スプレードライヤーTSR−2W」)を用いて、上記スラリーの噴霧乾燥を行なった。円盤状回転体(ディスク式アトマイザー)の回転速度は10000rpm、乾燥には200℃の空気を用いた。
上記噴霧乾燥によって、71gの無機凝集粒子が得られた。得られた無機凝集粒子の平均粒子径は40.0μmであった。
(有機無機複合フィラーの調製)
有機無機複合フィラーの調製には、遠心運動型攪拌機として、自転・公転ミキサー「あわとり錬太郎ARV−310(株式会社シンキー製)」を用いた。
まず、D2.6Eを70質量部、3Gを20質量部、UDMAを10質量部、AIBNを0.3重量部を混合溶解し重合性単量体溶液を調製した。この重合性単量体溶液の粘度は、3ポイズであった。この重合性単量体溶液1.78gと前記無機凝集粒子10.0gを該遠心運動型撹拌機の収納容器に入れた。
次いで、該遠心運動型撹拌機を回転台の回転数1000rpm、回転容器(収納容器:口径8cm、回転台の回転軸から回転容器の外端までの間隔10cm)の回転数500rpmの条件で運転し、収納容器内の撹拌を行なった。容器内に収容された無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物に負荷される遠心力(遠心加速度)を上記[数1]、で求められる自転による遠心加速度と[数2]で求められる公転による遠心加速度の合計により求めたところ、合わせて123Gであった(自転による遠心加速度は11G、公転による遠心加速度は112Gであった)。撹拌時間(無機凝集粒子への重合性単量体溶液の浸入にかかる作業時間)は10分で行なった。
該遠心運動型撹拌機によって無機凝集粒子に重合性単量体溶液を含浸させた混合物(粉体)をナス型フラスコに移し、フラスコ内を窒素で置換した状態にし、オイルバスにより100℃に加熱しながら1時間撹拌せしめて、該重合性単量体を重合硬化させ有機無機複合フィラーを8.7g得た。
(得られた有機無機複合フィラーの評価)
下記の表1に示すように、上記方法で得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は41.6μmであった。またこの有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが135MPa、透明性(コントラスト比)が0.44であった。
〔実施例2〕
有機無機複合フィラーの調製において、該遠心運動型撹拌機の運転条件を、回転台の回転数1600rpm、回転容器(収納容器)の回転数を800rpm(自転による遠心加速度を29G、公転による遠心加速度を286G、合計の遠心加速度を315G)に変更した以外は実施例1と同様に有機無機複合フィラーを調製した。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は39.5μmであった。またこの有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが141MPa、透明性(コントラスト比)が0.40であった。
〔実施例3〕
有機無機複合フィラーの調製において、該遠心運動型撹拌機の運転条件を、回転台の回転数2000rpm、回転容器(収納容器)の回転数を1000rpm(自転による遠心加速度を45G、公転による遠心加速度を447G、合計の遠心加速度を492G)に変更した以外は実施例1と同様に有機無機複合フィラーを調製した。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は36.3μmであった。またこの有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが143MPa、透明性(コントラスト比)が0.41であった。
〔比較例1〕
実施例1と同様の無機凝集粒子10.0gを三口フラスコに入れ、真空ポンプにより5ヘクトパスカルに減圧した。減圧下で無機凝集粒子を激しく羽根攪拌する中に、実施例1と同様の重合性単量体溶液1.78gを滴下した。この滴下は、重合性単量体溶液の1/3量を10分かけて滴下した後、滴下を中断して10〜20秒かけて常圧に復圧し、次いで、再び5ヘクトパスカルに減圧して、残余の重合性単量体を用いて、上記の減圧下での滴下と復圧操作を2回繰り返して、合計30分あまりをかけて実施した。滴下終了後、フラスコ内を窒素で置換した状態にし、オイルバスにより100℃に加熱しながら1時間撹拌せしめて、該重合性単量体を重合硬化させ有機無機複合フィラーを8.5g得た。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は、36.2μmであった。この有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが138MPa、透明性(コントラスト比)が0.43であった。
従来の方法(特許文献4)を用いた場合、充分な機械的強度のある有機無機複合フィラーが得られるものの、重合性単量体溶液の含浸に要する時間は30分であり、本実施形態における重合性単量体溶液の含浸に要する時間10分と比較して約3倍の時間を要する。
〔比較例2〕
比較例1の製造方法において、重合性単量体溶液の1/3量の滴下にかける時間を3分に変更し、重合性単量体溶液の含浸にかかる時間を合計で10分にした以外は、比較例1と同様に有機無機複合フィラーの製造を行った。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は153.3μmであった。この有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが72MPa、透明性が0.65であった。
従来の方法において、重合性単量体溶液の含浸に要する作業時間を短縮すると、十分な樹脂の含浸が得られず、所望の有機無機複合フィラーが得られなかった。
〔比較例3〕
有機無機複合フィラーの調製において、遠心運動型撹拌装置として自公転式ミキサー「VMX−N360(EME〔イーエムイー〕製)」を用い、該遠心運動型撹拌機の運転条件を回転台の回転数1100rpm、回転容器(収納容器)の回転数を0rpm(遠心加速度は135G)にした以外は、実施例1と同様に有機無機複合フィラーを調製した。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径は374.8μmであった。この有機無機複合フィラーを用いて調製した歯科用硬化性組成物は、曲げ強さが31MPa、透明性が0.89であった。
遠心運動型撹拌装置の運転を公転のみで行うと十分な撹拌が得られず、所望の有機無機複合フィラーを得る事が出来なかった。
実施例、比較例の結果を表1に示す。
Figure 0005814812
表1の実施例1〜3の結果から、運転時間が同じである場合は、公転、自転の回転速度が速くなるほど、平均粒子径が小さくなり、曲げ強さが大きくなり、透明性(コントラスト比)が小さくなるのが確認された。
また、実施例1〜3の結果から公転による遠心加速度112(G)以上で、自転による遠心加速度11(G)以上で、運転時間が10分以上であれば、好適な有機無機複合フィラーの製造が可能であることが確認された。
詳しくは、実施例1のように、遠心力が小さいとやや不透明であり、実施例3のように遠心力大きいと凝集粒子が崩れ、粒径が小さくなる。また、比較例1のように従来法では含浸に時間がかかり、比較例2のように時間を短縮すると十分な浸透が得られず、再凝集、物性の低下が生じ、比較例3のように、公転のみでは撹拌が不十分で不均一になりダマ(再凝集が発生したり物性の低下が生じるのが確認された。
1 スプレードライ装置
11 遠心運動型攪拌機
12 ケーシング
14 遠心力加重装置
18 回転容器
22 収納容器
24 減圧装置

Claims (2)

  1. 無機粒子を噴霧乾燥させることにより無機凝集粒子を得て、該無機凝集粒子に、重合性単量体と重合開始剤を混合し調製した重合性単量体溶液を接触させ、該重合性単量体溶液を無機凝集粒子の一次粒子の凝集間隙に浸入させ、次いで、この重合性単量体を重合硬化させて得る有機無機複合フィラーの製造方法において、
    前記重合性単量体溶液の無機凝集粒子間隙への浸入を、無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物の攪拌下に遠心力を作用させて行い、かつ前記遠心力を作用させて行う装置として、前記無機凝集粒子と重合性単量体溶液を収納した容器を自転と公転による遠心力を同時に作用させる遠心運動型攪拌機を用いることを特徴とする有機無機複合フィラーの製造方法。
  2. 前記無機凝集粒子と重合性単量体溶液の混合物が攪拌下に負荷される遠心力が、遠心加速度として100〜500Gであることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合フィラーの製造方法。
JP2012020886A 2012-02-02 2012-02-02 有機無機複合フィラーの製造方法 Active JP5814812B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012020886A JP5814812B2 (ja) 2012-02-02 2012-02-02 有機無機複合フィラーの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012020886A JP5814812B2 (ja) 2012-02-02 2012-02-02 有機無機複合フィラーの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013159657A JP2013159657A (ja) 2013-08-19
JP5814812B2 true JP5814812B2 (ja) 2015-11-17

Family

ID=49172199

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012020886A Active JP5814812B2 (ja) 2012-02-02 2012-02-02 有機無機複合フィラーの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5814812B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7018257B2 (ja) * 2016-06-28 2022-02-10 株式会社ジーシーデンタルプロダクツ 歯科用レジン硬化体の製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4269107B2 (ja) * 2004-03-31 2009-05-27 Dic株式会社 粘土鉱物含有ヒドロゲルの製造方法
JP2009067892A (ja) * 2007-09-13 2009-04-02 Kawamura Inst Of Chem Res 有機・無機複合体エマルジョンの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013159657A (ja) 2013-08-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5079928B2 (ja) 有機無機複合フィラー、及びその製造方法
JP5918248B2 (ja) 有機無機複合フィラー、及びその製造方法
US9320684B2 (en) Dental restorative material
JP6093213B2 (ja) 無機凝集粒子、有機無機複合フィラー、及びそれらの製造方法
KR102246612B1 (ko) 경화성 조성물
JP4732270B2 (ja) 有機無機複合フィラーの製造方法
WO2020050123A1 (ja) 複合材料、硬化性組成物、及び硬化性組成物の製造方法
JP7350248B2 (ja) 有機無機複合フィラーの製造方法、および歯科用硬化性組成物の製造方法
JP6219146B2 (ja) 歯科用硬化性組成物
JP5814812B2 (ja) 有機無機複合フィラーの製造方法
JP2023184612A (ja) 歯科用重合硬化性組成物
WO2017073664A1 (ja) 硬化性組成物、歯科用硬化性組成物および歯科用有機無機複合粒子
JP5398762B2 (ja) 有機無機複合フィラー
JP5891519B2 (ja) 粉液型歯科用修復材の製造方法
CN114828802B (zh) 牙科用固化性组合物
JP2017036224A (ja) 歯科切削加工用レジン系ブロック及びその製造方法
JP2022097349A (ja) 有機無機複合フィラー及びその製造方法並びに該有機無機複合フィラーを含有する歯科用硬化性組成物
JP5072333B2 (ja) 有機無機複合粉末の処理方法
JP2022184770A (ja) 有機無機複合フィラー、及び該有機無機複合フィラーを含有する歯科用硬化性組成物
JP2020125261A (ja) 歯科用重合硬化性組成物及び歯科用重合硬化性組成物調製用キット

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140904

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150612

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150616

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150805

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150915

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150918

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5814812

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250