JP2020037534A - 複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料であって、物性微調整のために平均粒径が100nm未満の超微細無機粒子を用いた場合であっても、構造色を発現し、顔料等を用いることなく、歯科用コンポジットレジン修復において優れた色調適合性を示す複合材料を提供する。【解決手段】 無機粒子として、特定の平均一次粒子径を有し、粒度分布幅が極めて狭く、且つマトリックス樹脂よりも大きな屈折率を有する無機球状粒子と、超微細無機粒子と、を含み、動径分布関数で評価される無機粒子の分散動状態が、最近接粒子間距離が無機球状粒子の平均粒子径の1倍以上2倍以下となり、且つ、最近接粒子間距離と次近接粒子間距離との間における極小値が0.56以上1.10以下となる条件を満足するようにする。【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料に関する。詳しくは、染料や顔料を使用することなく外観色調を制御することが可能で、退色や変色の少ない複合材料に関し、特に、簡便且つ審美性に優れた修復が可能な歯科用充填修復材料として好適に使用できる複合材料に関する。
歯科用コンポジットレジン(以下、単に「CR」ともいう。)とは、齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復をするための材料の一種であり、重合性単量体と、無機フィラーとを含む硬化性組成物からなる。歯科用コンポジットレジン(CR)を用いた修復(CR修復)は、歯質の切削量を少なくでき、天然歯牙と同等の色調を付与できることや操作が容易なことから、急速に普及している。また、近年においては、機械的強度の向上や、歯牙との接着力の向上から、前歯部の修復のみならず、高い咬合圧が加わる臼歯部に対しても使用されている。
上記したように審美性の高い修復が可能であることがCR修復の優れた特徴の一つであるが、審美性の高い修復を行うためには、修復する歯牙(被修復歯牙)の色(色相及び色調)を判別し(このような色の判別は、「シェードテイキング」と呼ばれることもある。)、判別された色に適合する色のCRを選択して修復を行う必要がある。この場合、1色のCRを用いて修復が行われることもあるが、歯牙の部位による色の変化を忠実に再現するような高い審美修復を行う場合には、色の異なる複数のCRを積層して修復することもある。
このような審美修復を含めて、CR修復は、顔料物質や染料物質を、その種類や配合量を変えて添加することによって、色調が調製されたCRを1種類又は複数種類用いて行なうことが一般的である。ところが、顔料物質や染料物質を用いて色調調整を行ったCRには、CRの硬化体中におけるこれら物質が経年劣化によって退色または変色することにより、修復後から時間が経過するに従って変色し、修復部位の外観が天然歯と適合しなくなってしまうことがある。
一方、顔料物質や染料物質を用いずに着色する技術として、媒質中の微粒子による光の反射、干渉、散乱、透過など利用して発色を生じさせる技術があり、これら技術を応用して樹脂などの媒体中に無機粒子が分散した複合材料を所期の色に発色させる技術も知られている(特許文献1及び2参照)。
たとえば、特許文献1には、「平均粒子径が50nm〜1μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり、且つ、“平面内の動径分布関数:g(r)”で規定される特定の条件を満足するような短距離秩序構造を有する微粒子分散体」は、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体であることが開示されている。
また、特許文献2には、たとえば、「重合性単量体成分(A),平均粒子径が230nm〜1000nmの範囲内にある球状フィラー(B)及び重合開始剤(C)を含み、前記球状フィラー(B)を構成する個々の粒子のうち90%以上が平均粒子径の前後の5%の範囲内に存在し、前記球状フィラー(B)の25℃における屈折率nが前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率nよりも大きいという条件を満足する硬化性組成物」からなり、更に「厚さ1mmの硬化体を形成した状態で、各々色差計を用いて測定した、黒背景下での着色光のマンセル表色系による測色値の明度(V)が5未満であり、彩度(C)が0.05以上であり、且つ白背景下での着色光のマンセル表色系による測色値の明度(V)が6以上であり、彩度(C)が2未満となる硬化性組成物」が開示されている。そして、特許文献2には上記当該硬化性組成物からなるCRは、(1)染料物質や顔料物質を用いていないので前記経時変色の問題が起こり難く、(2)その硬化体は(使用する球状フィラーの平均粒子径に応じて)象牙色質と同様の色である黄色〜赤色に着色することができ、しかも(3)該硬化体が適度な透明性を有するため、被修復歯牙の色と調和し易く、煩雑なシェードテイキングやコンポジットレジンのシェード選択を行うことなく、1種類のコンポジットレジンで広範な色の被修復歯牙に対して天然歯に近い外観の修復を行うことができる、という優れた特徴を有することが記載されている。
なお、特許文献2には、使用する球状フィラーの平均粒子径が100nm未満では構造色の発現が起こり難いこと、及び同平均粒子径が150nm以上230nm未満の球状フィラーを用いた場合には、青色系の構造色が発現するが、修復窩洞深層部の象牙質面の色調とは調和し難いことも記載されている。
特許第5274164号 国際公開第2017/069274号パンフレット
前記特許文献1によれば、均質な粒径を有する微粒子が、特定の短距離秩序構造を有しつつ全体的にはアモルファス構造となるように分散することによって、光の入射角の変化に左右されない一定の色調の構造色を発色することができることが分かる。また、前記特許文献2には、前記硬化性組成物(或いは当該硬化性組成物からなるCR)の硬化体における干渉による着色光は、構成する粒子が比較的規則的に集積された部分で生じ、散乱による着色光は、構成する粒子が無秩序に分散された部分で生じると説明されており、当該系においても球状フィラーの分散状態における、長距離的な不規則性と短距離的な規則性のバランスが、前記効果を得る上で重要であることが推察できる。
しかしながら、特許文献2に開示されるCRにおいて、前記効果が得られる前記バランスの定量的な評価はされておらず、たとえば、CRの粘度を調整する目的や硬化体のコントラスト比を調製する目的で微細フィラーを添加したときに、前記効果がどのような影響を受けるのかは不明であった。また、引用文献2では、前記球状フィラー(B)として、“230〜1000nmの範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する集合体”を1種類しか用いておらず、平均一次粒子径の異なるこのような集合体を複数用いた場合に、前記効果がどのような影響を受けるのかは不明であった。さらに、頻度は極めて少ないものの各成分を混錬してCRを調製する際の条件によっては、所期の効果を奏するものが得られないことがあることが判明した。
そこで本発明は、前記特許文献2に開示された硬化性組成物の硬化体のような複合材料において、硬化性組成物の粘度調整用或いは硬化体のコントラスト比調整用の微細フィラーや複数の球状フィラー集合体を用いた場合にも前記効果を発現し得る複合材料及び当該複合材料を与える硬化性組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、球状粒子の分散状態の定量化の手法として前記特許文献1に開示されている“平面内の動径分布関数:g(r)”を用いた短距離秩序構造の規定方法を活用し、硬化性組成物の粘度調整用或いは硬化体のコントラスト比調整用の微細フィラーや複数の球状フィラー集合体を用いた場合について鋭意検討を行った。その結果、特許文献2に開示されるような系において前記効果が得られる短距離秩序構造を特定することに成功すると共に、極微細な無機フィラーを添加しても構造色発現効果にほとんど影響を与えないこと、更に、特定の条件を満足する場合には、複数の球状フィラー集合体を用いても各球状フィラー集合体で構造色を発色する短距離秩序構造型が保たれて、それぞれの集合体に起因する構造色が発色し、全体としてそれらが合成された色調で発色すること、を確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料であって、
前記無機粒子は、〔I〕100〜1000nmの範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体を構成する個々の無機球状粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群(Group of spherical Particle having Identical Diameter)”(G−PID)と、〔II〕平均一次粒子径が100nm未満の無機粒子からなる“超微細粒子群(Group of Super Fine Particle)”(G−SFP)と、を含んでなり、
前記無機粒子に含まれる前記“同一粒径球状粒子群”の数をaとしたときの各“同一粒径球状粒子群”を、その平均一次粒子径の小さい順にそれぞれG−PID(但し、mは、aが1のときは1であり、aが2以上のときは1〜aまでの自然数である。)で表したときに、前記aが2以上の場合における各G−PIDの個々の粒子を構成する物質は互いに異なっていてもよく、当該場合における各G−PIDの平均一次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なっており、
前記“超微細粒子群”(G−SFP)の平均一次粒子径は、前記G−PIDの平均一次粒子径よりも25nm以上小さく、
前記樹脂マトリックスの25℃における屈折率をn(MX)とし、前記各G−PIDを構成する無機球状粒子の25℃における屈折率をn(G−PIDm)としたときに、何れのn(G−PIDm)に対しても、
(MX)<n(G−PIDm)
の関係が成り立ち、
前記樹脂マトリックス中における、全“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の配列構造が、下記条件1及び条件2を満たす短距離秩序構造を有していることを特徴とする前記複合材料である。
[条件1] 前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心からの距離:rを、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rで、除して規格化した無次元数(r/r)をx軸とし、前記任意の無機球状粒子の中心から距離r離れた地点において他の無機球状粒子が存在する確率を表す動径分布関数:g(r)をy軸として、前記r/rとその時のrに対応する前記g(r)との関係を表した動径分布関数グラフにおいて、当該動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から最も近いピークのピークトップに対応するrとして定義される最近接粒子間距離:rが、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rの1倍以上2倍以下の値である。
[条件2] 前記動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から2番目に近いピークのピークトップに対応するrを次近接粒子間距離:rとしたときに、前記最近接粒子間距離:rと次近接粒子間距離:rとの間における前記動径分布関数:g(r)の極小値が0.56以上1.10以下の値である。
上記本発明の複合材料において、前記動径分布関数:g(r)は、前記複合材料の内部の面を観察平面とする走査型電子顕微鏡画像に基づいて決定される、当該観察平面内の前記無機球状粒子の平均粒子密度:〈ρ〉、及び当該観察平面内の任意の無機球状粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する無機球状粒子の数:dn、並びに前記領域の面積:da(ただし、da=2πr・drである。)に基づいて下記式(1):
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da} ・・・(1)
により計算されるものであることが好ましい。
また、前記本発明の複合材料においては、歯科用材料、特に歯科用充填修復材料として使用する場合の、硬化前組成物の取り扱い易さ、硬化体である本発明の複合材料の色調及びコントラスト比の観点から、樹脂マトリックス中に分散する“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の総量、及び“超微細粒子群”(G−SFP)の量が、樹脂マトリックス100質量部に対して、それぞれ、10質量部以上1500質量部以下、及び0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、前記無機粒子に含まれる全ての“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の、平均一次粒子径が230〜1000nmの範囲内にあり、“超微細粒子群”(G−SFP)平均一次粒子径が3nm以上75nm以下であることがより好ましい。さらに、前記n(MX)と前記n(G−PIDm)との差(n(G−PIDm) −n(MX))で定義されるΔnが、何れのn(G−PIDm)に対しても、0.001以上0.1以下であることが好ましい。
第二の本発明は、前記本発明の複合材料から成ることを特徴とする歯科用充填修復材料である。
第三の本発明は、前記本発明の複合材料を製造するための硬化性組成物であって、25℃における屈折率が1.40〜1.57となる硬化体を与える重合性単量体、100〜1000nmの範囲の所定の長さの平均一次粒子径を有する球状粒子群からなり、当該球状粒子群を構成する個々の粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に当該個々の粒子の90%(個数)以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、100nm未満で且つ前記1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の平均1次粒子径の中で最も小さい平均1次粒子径よりも25nm以上小さい平均一次粒子径を有する無機粒子からなる“超微細粒子群”(G−SFP)と、を含んでなる無機粒子、及び重合開始剤を含有し、前記“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する球状粒子の屈折率が、前記硬化体の25℃における屈折率よりも大きいことを特徴とする、前記硬化性組成物である。
上記本発明の硬化性組成物においては、前記短距離秩序構造を確実に得ることができるという理由から、前記1又は複数の各“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の少なくとも一部は、1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、25℃における屈折率が当該1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する球状粒子の屈折率よりも小さい樹脂とを含んでなり、前記1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)以外の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を含まない有機―無機複合フィラーとして、含まれることが好ましい。
本発明によれば、硬化前のCR等の硬化性組成物の粘度や硬化体のコントラスト比を調整する目的等で微細フィラーを添加した場合であっても、前記特許文献2に開示された硬化性組成物の硬化体と同様の効果を得ることができる。すなわち、(1)染料物質や顔料物質を用いていないので前記経時変色の問題が起こり難く、(2)その硬化体は(使用する球状フィラーの平均粒子径に応じて)青色系の透明感のある色調から象牙色質と同様の色である黄色〜赤色の色調といった幅広い色調範囲内で所望する色調に着色することができ、しかも(3)該硬化体が適度な透明性を有するようにすることもできるため、歯科用修復材として用いたときに、被修復歯牙の色と調和し易く、煩雑なシェードテイキングやコンポジットレジンのシェード選択を行うことなく、1種類のコンポジットレジンで広範な色の被修復歯牙に対して天然歯に近い外観の修復を行うことができる、という優れた効果を得ることができる。
また、本発明の複合材料は、前記効果を発現できるような球状フィラーの分散状態が電子顕微鏡観察によって確認できるので、たとえば原料の混錬条件等の製造条件と前記分散状態との相関を調べることにより、確実に効果を得られる製造条件を決定することができ、製造歩留まりを高くすることができる。
更に、複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を含む態様においては、各G−PIDは、その平均1次粒径に応じた色調の構造色を発色するので、配合するG−PIDの組み合わせにより、全体の発色色調をコントロールすることも可能である。
このような優れた効果が得られる機構は必ずしも明確ではないが、“超微細粒子群”(G−SFP)が無機球状粒子の分散状態に影響を与えない程に小さいことと、G−PIDを複数含む場合であって、その平均一次粒子径の大きさに一定の差があることから、異なるG−PIDに属する無機球状粒子が相互置換することなく、G−PIDごとに構造色を発現できる短距離秩序構造をもって分散できるようになったことによるものではないかと推定している。
本図は、実施例1の複合材料における観察平面の走査型電子顕微鏡画像(左図)と、当該画像から得られた座標データ(右図)を示す図である。 本図は、図1の座標データから決定されるパラメータに基づいて計算されたg(r)に関する動径分布関数グラフを示す図である。 本図は、実施例2の複合材料における動径分布関数グラフを示す図である。 本図は、実施例3の複合材料における動径分布関数グラフを示す図である。 本図は、実施例4の複合材料における動径分布関数グラフを示す図である。 本図は、比較例2の複合材料における動径分布関数グラフを示す図である。
本発明の複合材料は、樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料であって、次の特徴を有する。すなわち、
第一に、前記無機粒子は、(I)100〜1000nmの範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体を構成する個々の無機球状粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、(II)平均一次粒子径が100nm未満の無機粒子からなる“超微細粒子群”(G−SFP)と、を含んでなる。
第二に、前記無機粒子に含まれる前記“同一粒径球状粒子群”の数をaとしたときの各“同一粒径球状粒子群”を、その平均一次粒子径の小さい順にそれぞれG−PID(但し、mは、aが1のときは1であり、aが2以上のときは1〜aまでの自然数である。)で表したときに、前記aが2以上の場合における各G−PIDの個々の粒子を構成する物質は互いに異なっていてもよく、当該場合における各G−PIDの平均一次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なり、且つ前記“超微細粒子群”(G−SFP)の平均一次粒子径は、(最も平均一次粒子径が小さい)前記G−PIDの平均一次粒子径よりも25nm以上小さくなっている。
第三に、前記樹脂マトリックスの25℃における屈折率をn(MX)とし、前記各G−PIDを構成する無機球状粒子の25℃における屈折率をn(G−PIDm)としたときに、何れのn(G−PIDm)に対しても、n(MX)<n(G−PIDm)の関係が成り立つ。
そして第四に、前記樹脂マトリックス中における、全“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の配列構造が下記条件1及び条件2を満たす短距離秩序構造を有している。
[条件1] 前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心からの距離:rを、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rで、除して規格化した無次元数(r/r)をx軸とし、前記任意の無機球状粒子の中心から距離r離れた地点において他の無機球状粒子が存在する確率を表す動径分布関数:g(r)をy軸として、前記r/rとその時のrに対応する前記g(r)との関係をあらわした動径分布関数グラフにおいて、当該動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から最も近いピークのピークトップに対応するrとして定義される最近接粒子間距離:rが、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rの1倍以上2倍以下の値である。
[条件2] 前記動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から2番目に近いピークのピークトップに対応するrを次近接粒子間距離:rとしたときに、前記最近接粒子間距離:rと次近接粒子間距離:rとの間における前記動径分布関数:g(r)の極小値が0.56以上1.10以下の値である。
前記したように、本発明の複合材料は、基本的には前記特許文献2に開示されている硬化性組成物の硬化体の範疇に入るものであるが、前記効果を確実に得られるような“前記無機球状粒子の分散状態”が特定されている点、特許文献2の硬化性組成物では任意成分とされていた“その他添加剤”の一つである無機フィラーについて前記効果に悪影響を与えない粒径のものを含む点、及び前記“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を複数種含み得ることが確認されている点が新たな特徴となっている。したがって、樹脂マトリックスの原料となる重合性単量体、各々の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)、より具体的には、その平均一次粒子径や当該G−PIDにおける個数基準粒度分布、当該G−PIDを構成する無機球状粒子の形状、材質及び屈折率等、並びに硬化体を得るために使用する重合開始剤などについては前記特許文献2の硬化性組成物と特に変わる点はない。
そこで、まず“前記無機球状粒子の分散状態”の特定に関する前記第四の特徴点について説明した後に、本発明の複合材料で使用する各種原材料や製造方法等について説明する。
本発明の複合材料では、無機球状粒子の分散状態の定量化の手法として前記特許文献1に開示されている“平面内の動径分布関数:g(r)”を用いて短距離秩序構造を規定している。ここで、動径分布関数g(r)とは、前記特許文献1において使用されていることからも分かるように、任意のある粒子から、距離rだけ離れた地点における、他の粒子の存在確率を求めるための関数として良く知られたものであり、下記式(1)で定義されるものである。
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da} ・・・(1)
なお、上記式(1)において、〈ρ〉は、平面内の粒子の平均粒子密度を表し、dnは、平面内の任意の粒子の中心とし、半径がそれぞれr及びr+drである2つの円の間の領域の中に存在する粒子の数を表し、daは、前記領域の面積である2πr・drを表す。
前記動径分布関数:g(r)は、一般的には、x軸(距離軸)に前記距離rをとりy軸(縦軸)にそのrにおけるg(r)の値{前記式(1)による計算結果}をとった動径分布関数グラフ、或いは距離軸に前記rを粒子の平均粒子径で除して規格化した無次元数をとり、y軸(縦軸)にx軸の値に対応するrにおけるg(r)の値(前記式の計算結果)をとった動径分布関数グラフ(図1〜4参照)によって表されるものである。
本発明においては、〈ρ〉及びdnの確認が容易で、確実であるという理由から、本発明の複合材料の内部の面を観察平面とする走査型電子顕微鏡画像に基づいて決定した〈ρ〉、及びdn、並びに上記dnを決定する際に採用したdrの値に応じた:da(=2πr・dr)に基づいて前記式(1)により計算したg(r)を採用することが好ましい。
本発明の複合材料の内部の面を観察平面とする走査型電子顕微鏡画像に基づく、〈ρ〉、dn及びdaの決定は、次のようにして行うことができる。すなわち、先ず本発明の硬化性組成物を硬化させる等して本発明の複合材料を作製し、得られた複合材料の表面を研磨する等の手段により、複合材料内部における無機球状粒子の分散状態が観察可能な平面(観察平面)を表面に露出させる。次いで、当該観察平面を走査型電子顕微鏡により観測し、少なくとも平面内に500個以上の無機球状粒子を含有している領域の顕微鏡画像を取得する。その後、得られた走査型電子顕微鏡画像を画像解析ソフト(例えば「Simple Digitizer ver3.2」フリーソフト)を用いて、前記領域内の無機球状粒子の座標を求める。得られた座標データから任意の無機球状粒子の座標を1つ選択し、選択した無機球状粒子を中心に少なくとも200個以上の無機球状粒子が含まれる距離rを半径とする円を描き、当該円内に含まれる無機球状粒子の個数をカウントすることにより平均粒子密度<ρ>(単位:個/cm2)を決定することができる。
また、dnについては、無機球状粒子の平均粒子径をrで表したときに、その長さがr/100〜r/10程度の値となるdrを設定し、任意に選択した1つの無機球状粒子を中心粒子とし、その中心からの距離rを半径とする円と、当該円と同一の中心を有する、半径:r+drの円との間の領域内に含まれる無機球状粒子数をカウントすることによりdnを決定することができる。さらに、前記2つの円の間の領域の面積であるdaは、実際に設定したdrの長さに基づき、2πr・drとして決定される。
本発明の複合材料では、前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心からの距離:rを、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rで除して規格化した無次元数(r/r)をx軸とし、前記任意の無機球状粒子の中心から距離r離れた地点において他の無機球状粒子が存在する確率を表す動径分布関数:g(r)をy軸として、前記r/rとその時のrに対応する前記g(r)との関係をあらわした動径分布関数グラフにおいて、当該動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から最も近いピークのピークトップに対応するrとして定義される最近接粒子間距離:rが、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rの1倍以上2倍以下の値である必要がある(条件1)。rがrの1倍未満(r/r<1)である場合には、平面内の粒子同士の重なりが多くなり、また、rがrの2倍を越える(r/r>2)場合には選択した中心の無機粒子近傍に粒子が存在しなくなることによって、短距離の秩序性がなくなり、構造色を発現しなくなる。すなわち、短距離の秩序性を維持し、構造色を発現しやすくなるという観点から、r/rは、1.0以上、2.0以下、特に1.0以上、1.5以下であることが好ましい。
また、本発明の複合材料では、前記動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から2番目に近いピークのピークトップに対応するrを次近接粒子間距離:rとしたときに、前記最近接粒子間距離:rと次近接粒子間距離:rとの間における前記動径分布関数:g(r)の極小値が0.56以上1.10以下の値である必要もある(条件2)。前記極小値が0.56未満となる場合は、無機球状粒子の配列構造の長距離秩序性が高くなり、発現する構造色の光の入射角度依存性が高まるばかりでなく、複合材料の彩度が高くなってしまい、歯科充填材料として用いた場合における、色調適合性が得られ難くなる。他方、前記極小値が1.10を越える場合には、無機球状粒子の配列構造がランダム構造となってしまい、目的とする反射性能が得られ難くなり、所期の構造色が発現し難くなる。すなわち、構造色を発現させ、歯科充填材料としての色調適合性を得易くするという観点から、前記極小値は、0.56以上、1.10以下、特に0.56以上、1.00以下であることが好ましい。
本発明者等の検討では、前記特許文献2に開示される硬化性組成物(CR)においては、頻度は極めて少ないものの各成分を混錬して組成物(CR)を調製する際の条件によっては、所期の効果を奏するものが得られないことがあること、及びこのような(効果が得られない)系について前記動径分布関数:g(r)の評価を行うと、前記条件1及び/又は2を満足しないことが確認されている。このことは、本発明の複合材料における、前記同一粒径球状粒子群(G−PID)を構成する無機球状粒子の配列構造は、原料の混錬条件等の製造条件と相関していることを意味している。すなわち、手動混錬のように混錬条件にバラツキが生じ易い場合には、一定の確率で混練条件が十分でない場合が発生し、前記条件1又は条件2を満足せずに、目的の色調適合性が得られなくなり、製造時の歩留まりが低下してしまう。これに対し、混練機を用いて制御された条件で混練を行うと共に、脱泡処理を加えるなどして、複合材料中に気泡が含まれることを防止するなどすることにより、前記条件1及び2を確実に満足さることができるようになる。
次に、本発明の複合材料で使用する各種原材料や製造方法等について説明する。
<樹脂マトリックス>
本発明の複合材料における樹脂マトリックスは、無機球状粒子を分散して存在させることができる樹脂から成るものであれば特に限定されず熱可塑性樹脂等も使用可能であるが、無機球状粒子の分散状態の制御が容易であるという理由から重合性単量体を主成分とする硬化性組成物の硬化体から成ることが好ましい。さらに、歯科用充填修復材料として使用する際の取り扱い易さや物性(機械的特性や歯科用途では歯質に対する接着性)から、ラジカル重合性単量体或いはカチオン重合性単量体を主成分とする硬化性組成物の硬化体であることがより好ましい。また、屈折率に関する前記条件、すなわち、 n(MX)<n(G−PIDm) の条件を満足させやすいという観点から、25℃における硬化体の屈折率が1.40〜1.57、特に1.42〜1.57となるような上記硬化性組成物の硬化体であることが特に好ましい。
<重合性単量体>
前記樹脂マトリックスを得るために好適に使用できるラジカル重合性単量体としては(メタ)アクリル化合物を挙げることができ、好適に使用できるカチオン重合性単量体としては、エポキシ類、オキセタン類を挙げることができる。好適に使用できる(メタ)アクリル化合物を例示すれば、下記(イ)〜(ニ)に示されるものを挙げることができる。
(イ)単官能重合性単量体
(イ−i)酸性基や水酸基を有さないもの
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど。
(イ−ii)酸性基を有するもの
(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等、及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリルアミドウンデカン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、10−スルホデシル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノプロピオネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルホスホノアセテート、4−(メタ)アクリロキシブチル−3−ホスホノプロピオネート、4−(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、5−(メタ)アクリロキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、5−(メタ)アクリロキシペンチルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホノアセテート、2−(メタ)アクリロキシエチル−フェニルホスホネート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、N−(メタ)アクリロイル−ω−アミノプロピルホスホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネートなど。
(イ−iii)水酸基を有するもの
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなど。
(ロ)二官能重合性単量体
(ロ−i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;ジ(メタクリルロキシエチル)ジフェニルメタンジウレタン等。
(ロ−ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン等の、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(ハ)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(ニ)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これらの(メタ)アクリレート系重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。
さらに、必要に応じて、上記(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いても良い。
重合性単量体としては、樹脂マトリックスとなる硬化体の物性(機械的特性や歯科用途では歯質に対する接着性)調整のため、一般に、複数種の重合性単量体が使用されるが、この際、重合性単量体組成物(混合物)の25℃における屈折率が1.38〜1.55の範囲となるように、重合性単量体の種類及び量を設定することが、前記屈折率に関する条件を満足し易いという観点から望ましい。即ち、無機球状粒子として屈折率の調整が容易なシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物を用いる場合、その25℃における屈折率はシリカ分の含有量に応じて1.45〜1.58程度の範囲となるが、重合性単量体組成物の屈折率を1.38〜1.55の範囲に設定することにより、得られる硬化体の屈折率を、おおよそ1.40〜1.57の範囲に調整でき、前記条件を満足するようにすることが容易となる。なお、重合性単量体や重合性単量体の硬化体の屈折率は、25℃にてアッベ屈折率計を用いて求めることができる。
<無機粒子>
本発明の複合材において樹脂マトリックス中に分散する無機粒子は、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、“超微細粒子群”(G−SFP)と、を含んでなる。
<同一粒径球状粒子群:G−PID>
同一粒径球状粒子群:G−PIDは、100nm以上、1000nm以下(100〜1000nm)の範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体を構成する個々の無機球状粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、前記集合体を意味する。
ここでいう無機球状粒子の平均一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡によりG−PIDの写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、それぞれの一次粒子径(最大径)を求めた平均値を意味する。また、球状とは、略球状であればよく、必ずしも完全な真球である必要はない。走査型電子顕微鏡でG−PIDの写真を撮り、その単位視野内にあるそれぞれの粒子(30個以上)について最大径を測定し、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上、より好ましくは0.8以上のものであればよい。
本発明の複合材料では、構成無機粒子が球状であり且つ、粒子径分布(個数基準粒度分布)が狭い無機粒子の集合体であるG−PIDの各構成粒子が特定の短距離秩序構造を有して樹脂マトリックス中に分散することにより、ブラッグ条件に則って回折干渉が起こり、特定波長の光が強調されて、平均一次粒子径の応じた色調の着色光が生じる(構造色が発現する)。すなわち、構造色が発現するためには、G−PIDを構成する無機球状粒子の90%(個数)以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する必要がある。また、青色〜黄色〜赤色系の広い範囲内の特定の色調を有する構造色を発現するために、G−PIDを構成する無機球状粒子の平均一次粒子径は、100〜1000nmの範囲内にある必要がある。平均一次粒子径が100nmよりも小さい球状粒子を用いた場合には可視光の干渉現象が生じ難く、構造色も発現し難い。一方、1000nmよりも大きい球状粒子を用いた場合は、光の干渉現象の発現は期待できるが、本発明の硬化性組成物を歯科充填用修復材料として用いる場合には、球状粒子の沈降や研磨性の低下が生じるため、好ましくない。
平均一次粒子径が230〜800nmである場合には、黄色〜赤色系の構造色(着色光)が発現し易く、平均一次粒子径が150nm〜230nm未満である場合には青色系の構造色(着色光)が発現し易い。
歯科用充填修復材料として好ましい黄色〜赤色系の構造色(着色光)を発現するという理由からG−PIDの平均一次粒子径は、230〜800nmが好適であり、240〜500nmがより好適であり、260〜350nmが特に好適である。平均一次粒子径が230nm〜260nmの範囲のG−PIDを用いた場合、得られる着色光は黄色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。また平均一次粒子径が260nm〜350nmの範囲のG−PIDを用いた場合、得られる着色光は赤色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。象牙質の色相はこうした赤色系のものが多いため、平均一次粒子径260nm〜350nmの範囲のG−PIDのみを用いる態様において、多様な色調の修復歯牙に対して、幅広く適合性が良くなり最も好ましい。一方、粒径150nm〜230nm未満の範囲のG−PIDのみを用いた場合、上記したように、得られる着色光は青色系であり、エナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞に対しては、歯質との色調適合性が不良となりやすいが、エナメル質の修復に有用で、特に切端部の修復に有用である。
本発明の複合材料において樹脂マトリックス中に分散する無機粒子に含まれるG−PIDは1種であっても複数種であってもよい。含まれるG−PIDの数:aは、1〜5であることが好ましく、1〜3であることが特に好ましく、1又は2であることが最も好ましい。
但し、無機粒子にG−PIDが複数種含まれる場合には、各G−PIDの平均一次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なっている必要がある。すなわち、前記無機粒子に含まれるG−PIDの数を“a”(たとえば“3”)としたときの各G−PIDを、その平均一次粒子径の小さい順にそれぞれG−PID(但し、mは、aが1のときは1であり、aが2以上のときは1〜aまでの自然数である。)で表したときに、各G−PID(たとえば、a=3のときにおけるG−PID、G−PID及びG−PID)における個々の粒子を構成する物質は互いに異なっていてもよいが、当該場合における各G−PIDの平均一次粒子径をそれぞれdとすると、各dは、それぞれ互いに25nm以上異なっている(たとえば、a=3のとき、|d−d|≧25nm、|d−d|≧25nm、で且つ当然のことながら|d−d|≧25nmである)必要がある。この条件を満足することにより、たとえば、各G−PIDが、20個程度を越えないような少数の無機球状粒子が非常にゆるい結合力で凝集した凝集体のような形で分散することなどによって、G−PIDごとに構造色を発現できる短距離秩序構造をもって分散できるようになったことによるものと思われるが、結果として各G−PIDごとに(平均一次粒子径に応じた)特有の構造色を発現することが可能となる。これに対し、この条件を満足しない場合には、無機球状粒子全体の粒子径分布がブロードとなり、恐らく、各G−PIDを構成する無機球状粒子が相互置換して分散してしまい、前記個数基準粒度分布の条件を満足しない単一の無機球状粒子の集合体を用いた時と同様の現象が起こることによるものと思われるが、構造色を発現し難くなってしまう。
本発明の複合材料において複数のG−PIDを用いる場合、各G−PIDの平均一次粒子径dは、それぞれ互いに30nm以上、特に40nm以上異なっていることが好ましい。
<無機球状粒子>
G−PIDを構成する無機球状粒子としては、G−PIDを構成するための前記条件を満足するものであれば、その材質は特に限定されない。好適に使用できる材質を例示すれば、非晶質シリカ、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子(シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニアなど)、石英、アルミナ、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化イッテルビウム、ジルコニア、チタニア、コロイダルシリカ等のからなるものを挙げることができる。これらの中でも屈折率の調整が容易であることから、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物からなる粒子を使用することが好ましい。
ここで、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子とは、シリカとチタン族元素(周期律表第4族元素)酸化物との複合酸化物を意味し、シリカ分の含有量に応じてその25℃における屈折率を1.45〜1.58程度の範囲で変化させることができる。シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子の具体例としては、シリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア・ジルコニア等を挙げることができるが、これらの中でも、高いX線不透過性も付与できるという理由から、シリカ・ジルコニアを用いることが好ましい。シリカ・ジルコニアにおける複合比は特に制限されないが、十分なX線不透過性を付与することと、屈折率を後述する好適な範囲にする観点から、シリカの含有量が70〜95モル%であり、チタン族元素酸化物の含有量が5〜30モル%であるものが好ましい。
なお、これらシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子には、少量であれば、シリカ及びチタン族元素酸化物以外の金属酸化物の複合も許容される。具体的には、酸化ナトリウム、酸化リチウム等のアルカリ金属酸化物を10モル%以内で含有させても良い。
こうしたシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子の製造方法は特に限定されないが、球状フィラーを得るためには、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物と加水分解可能な有機チタン族金属化合物とを含んだ混合溶液を、アルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法が好適に採用される。
これらのシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物からなる無機球状粒子は、シランカップリング剤により表面処理されても良い。シランカップリング剤による表面処理により、後述するような有機無機複合フィラーとしたときに当該有機無機複合フィラーの有機樹脂マトリックスとの界面強度に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はなく、得られる硬化性組成物の硬化体の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、無機球状粒子100質量部に対して0.1〜15質量部の範囲である。
<樹脂マトリックスの屈折率と無機球状粒子の屈折率との関係>
本発明の複合材料においては、前記樹脂マトリックスの25℃における屈折率をn(MX)とし、前記各G−PIDを構成する無機球状粒子の25℃における屈折率をn(G−PIDm)としたときに、何れのn(G−PIDm)に対しても下記関係が成り立つ必要がある。
(MX)<n(G−PIDm)
上記関係を満足しない場合には、構造色が発現しても、樹脂マトリックス中で短波長の光が散乱されやすくなり、発現した構造色が確認し難くなる。発現した構造色の視認性や鮮明さ及び歯科用充填修復材料として使用したときの色調適合性の観点から、n(G−PIDm)とn(MX)との差であるΔn(=n(G−PIDm) − n(MX))は、0.001以上、0.1以下であることが好ましく、0.002以上、0.1以下であることが更に好ましく、0.005以上、0.05以下であることが最も好ましい。
前記したように、重合性単量体組成物の25℃における屈折率を1.38〜1.55の範囲)に設定することにより、樹脂マトリックスとなる硬化体の25℃における屈折率(n(MX))を、1.40〜1.57の範囲とすることができる。また、前記したように、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物は、シリカの含有量を変化させることにより、その25℃における屈折率(n(G−PIDm))を1.45〜1.58程度の範囲で変化させることができる。したがって、たとえばこれらの関係を利用することにより、容易にΔnを前記好適な範囲とすることができる。
<超微細粒子群:G−SFP>
超微細粒子群(G−SFP)は、平均一次粒子径が100nm未満の無機粒子からなる粒子集合体であり、本発明の複合材料の前駆体(硬化させて複合材料を得るための材料)となる硬化性組成物の粘度を調整する目的、或いは本発明の複合材料のコントラスト比を調整する目的などで配合される。ただし、G−SFPの平均一次粒子径は、無機粒子に配合される前記G−PIDの中で最も平均維持粒子径が小さいG−PIDの平均一次粒子径(d)よりも25nm以上小さい必要がある。このような条件を満足しない場合には無機球状粒子の分散状態に悪影響を与え、構造色が発現し難くなる。なお、G−SFPを構成する無機粒子の形状は特に限定されず、不定形であっても球状であってもよい。また、平均一次粒子径の下限は通常、2nmである。
構造色発現に対する影響が少ないという理由から、G−SFPの平均一次粒子径は、3nm以上75nm以下、特に5nm以上50nm以下であることが好ましい。また、同様の理由から、G−PIDの平均一次粒子径(d)よりも30nm以上、特に40nm以上小さいことが好ましい。
G−SFPを構成する無機粒子の材質としては、前記無機球状粒子と同様のものが特に制限なく使用できる。また、前記無機球状粒子と同様にシランカップリング剤による表面処理を行うこともできる。好適な態様も、平均一次粒子径及び形状を除いて、基本的には、前記無機球状粒子と同様である。
<本発明の複合材料と本発明の硬化性組成物との関係>
本発明の複合材料は、本発明の硬化性組成物を重合硬化させることによって好適に製造することができる。また、本発明の複合材料における各成分の配合割合は、本発明の硬化性組成物の組成によってほぼ一義的に決定される。さらに、本発明の複合材料における無機球状粒子の分散状態(分散構造)も、硬化直前の本発明の硬化性組成物における無機球状粒子の分散状態(分散構造)が、実質的にそのまま維持されるものと思われる。すなわち、硬化時に起こる重合収縮などの影響を受ける可能性はあるものの、その影響は微小であり、前記条件1及び2を満足するか否かが異なるほどの影響は与えない。
<本発明の硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、25℃における屈折率が1.40〜1.57となる硬化体を与える重合性単量体、100〜1000nmの範囲の所定の長さの平均一次粒子径を有する球状粒子群からなり、当該球状粒子群を構成する個々の粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に当該個々の粒子の90%(個数)以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、100nm未満で且つ前記1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の平均1次粒子径の中で最も小さい平均1次粒子径よりも25nm以上小さい平均一次粒子径を有する無機粒子からなる“超微細粒子群”(G−SFP)と、を含んでなる無機粒子、及び重合開始剤を含有し、前記“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する球状粒子の屈折率が、前記硬化体の25℃における屈折率よりも大きいことを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は歯科用硬化性組成物、特に光硬化性コンポジットレジンに代表される歯科用充填修復材料として特に好適に使用されるが、それに限定されるものではなく、その他の歯科用途にも好適に使用できる。その用途としては、例えば歯科用セメント、支台築造用の修復材料等が挙げられる。
<重合性単量体成分及び無機粒子成分>
前記本発明の硬化性組成物における前記重合性単量体は、本発明の複合体の樹脂マトリックスの原料として説明した重合性単量体と同じものである。また、前記G−PID及びそれを構成する無機球状粒子、並びにG−SFP及びそれを構成する無機粒子も本発明の複合体の構成成分として説明したものと同じである。
前記同一粒径球状粒子群:G−PIDの配合量は、通常、含まれる全G−PIDの総量(すなわち無機球状粒子の総量)で、重合性単量体成分100質量部に対して、10質量部〜1500質量部である。本発明の複合材料が適度な透明性を有し、構造色の発現効果も高いという理由から、G−PIDの前記配合量は、重合性単量体成分100質量部に対して50質量部〜1500質量部であることが好適であり、100質量部〜1500質量部であることが特に好適である。なお、複数種のG−PIDを含む場合の各G−PIDの配合量は、各G−PIDによる構造色の色調と、複合材料において所望する色調とを勘案して、総量が上記範囲内となる量で適宜配分すればよい。
前記超微細粒子群:G−SFPの配合量は、本発明の硬化性組成物の粘度および本発明の複合材料のコントラスト比などを勘案して適宜決定すればよいが、通常は重合性単量体成分100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好適には、0.2〜30質量部である。
<重合開始剤>
前記本発明の硬化性組成物における前記重合開始剤は、前記重合性単量体を重合硬化させる機能を有するものであれば特に限定されない。口腔内で硬化させる場合が多い歯科の直接充填修復用途を想定した場合には、化学重合開始剤及び/又は光重合開始剤を使用することが好ましく、混合操作の必要が無いという理由から光重合開始剤(組成)を使用することが好ましい。
化学重合開始剤としては、2成分以上からなり、これらの成分が接触せしめられた場合に、重合開始種(ラジカル)を生じる公知のものが制限なく使用できる。例えば、有機過酸化物/アミン類、有機過酸化物/アミン類/有機スルフィン酸類、有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類、アリールボレート類/酸性化合物、及びバルビツール酸誘導体/銅化合物/ハロゲン化合物等の各種組み合わせからなるものが挙げられる。この内、取扱いが容易な理由から、有機過酸化物/アミン類からなるものが特に好適である。
前記有機過酸化物としては、公知のハイドロパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、アルキルシリルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等が使用できる。
この有機過酸化物と該アミン化合物とからなる化学重合開始剤には、さらに、ベンゼンスルフィン酸や、p−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸や、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸類を配合するのも好適な態様である。
また、光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
更に、上記光重合開始剤、還元性化合物に加えて光酸発生剤を加えて用いる例がしばしば見られる。このような光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン誘導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。
これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の配合量は目的に応じて有効量を選択すればよいが、重合性単量体100質量部に対して通常0.01〜10質量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5質量部の割合で使用される。
<本発明の硬化性組成物における好ましい態様>
本発明の硬化性組成物においては、前記短距離秩序構造を確実に得ることができるという理由から、前記1又は複数の各“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の少なくとも一部は、1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、25℃における屈折率が当該1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の屈折率よりも小さい樹脂とを含んでなり、前記1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)以外の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を含まない有機―無機複合フィラー(Organic-Inorganic Hybrid Filler)、別言すれば“単一のG−PIDしか含まない有機―無機複合フィラー”として配合されることが好ましい。
ここで、有機−無機複合フィラーとは、(有機)樹脂マトリックス中に無機フィラーが分散した複合体から成る紛体又は、無機フィラーの一次粒子どうしが(有機)樹脂で結着された凝集体からなるフィラーを意味する。
前記の好ましい態様は、たとえば、平均一次粒子径が異なる3種類のG−IDP、すなわちG−PID、G−PID及びG−PIDを含む場合、そのうちの少なくとも1種の全部または一部は“単一のG−PIDしか含まない有機―無機複合フィラー”として配合するというものである。仮にG−PIDの全部をG−PIDのみを含む有機−無機複合フィラー(複合フィラー1)として本発明の硬化性組成物に配合した場合には、複合フィラー1内においては、G−PIDのみしか含まれていないため、G−PIDの構造色を発現するような前記短距離秩序構造が実現されているので、本発明の硬化性組成物を硬化させた本発明の複合体においても確実にG−PIDの構造色が発現する。すなわち、G−PIDを複合フィラー化せずに配合した場合には、同時に(複合化されずに)配合されたG−PID及びG−PIDと混錬されるため、ある程度の割合で、(G−PIDの構成粒子とG−PIDの構成粒子が相互置換して)G−PIDを構成する或る無機球状粒子の最近接粒子がG−PIDを構成する無機状粒子となり、当該或る無機球状粒子を中心とする領域においては、前記短距離秩序構造が破壊されることになるものと思われる。これに対し、G−PIDを全て複合フィラー1として配合した場合には上記のような粒子の相互置換は起こらず、前記短距離秩序構造が破壊されることはないので、構造色発現に関与しない無機球状粒子の割合を極力小さくすることができ、硬化後の本発明の複合体においても確実にG−PIDの構造色を発現することができる。同様に、G−PID及び/又はG−PIDをG−PIDのみを含む有機−無機複合フィラー(複合フィラー2)及び/又はG−PIDのみを含む有機−無機複合フィラー(複合フィラー3)として配合することにより、これらの構造色も確実に発現させることが可能となる。
このような効果が期待でき、さらに本発明の硬化性組成物の粘度を調整し易いという観点から、各G−PIDの10%〜90%、特に20%〜80%、更には30%〜70%は、“単一のG−PIDしか含まない有機―無機複合フィラー”で配合することが好ましい。
なお、G−PIDを“単一のG−PIDしか含まない有機―無機複合フィラー”以外の形態で配合する場合には、紛体(無機球状粒子集合体としてのG−PIDそのもの)の形態で配合するのが一般的であるが、複数種のG−PIDを含む有機−無機複合フィラーとして配合することも可能である。以下にこの場合も含めて有機―無機複合フィラーについて更に詳しく説明する。
<有機−無機複合フィラー>
前記したように、有機−無機複合フィラーとは、(有機)樹脂マトリックス中に無機フィラーが分散した複合体から成る紛体又は、無機フィラーの一次粒子どうしが(有機)樹脂で結着された凝集体からなるフィラーを意味する。
本発明の硬化性組成物で使用する有機−無機複合フィラーでは、無機フィラーとして無機球状粒子を使用し、(有機)樹脂マトリックスを構成する樹脂として、25℃における屈折率が前記無機球状粒子の屈折率よりも小さい樹脂が使用される。当該樹脂は、このような条件を満足するものであれば特に限定されないが、本発明の複合材料の樹脂マトリックスを製造する際に用いられる前記重合性単量体の硬化体であることが好ましい。このとき、本発明の硬化性組成物の重合性単量体成分とまったく同じ組成のものである必要はないが、25℃における屈折率が当該重合性単量体成分の25℃における屈折率と同等となるものを使用することが好ましい。また、前記樹脂(Resin)の25℃における屈折率をn(R)とし、前記無機球状粒子の25℃における屈折率をn(F)としたときに、何れの有機−無機複合フィラーにおいても、
(R)<n(F)
の関係が成り立つ必要がある。そして、この関係は、有機−無機複合フィラーが25℃における屈折率が異なる無機球状粒子を含む場合には、全ての無機球状粒子に対して成り立つ必要がある。前記n(F)とn(R)との差であるΔn(=n(F) − n(R))は、0.001以上0.01以下であることが好ましく、0.001以上、0.005以下であることが更に好ましい。
無機球状粒子の有機−無機複合フィラーへの含有量は、30質量%以上95質量%以下が好ましい。有機−無機複合フィラーへの含有量が30質量%以上であると、硬化性組成物の硬化体の着色光が良好に発現するようになり、機械的強度も十分に高めることができる。また、無機球状粒子を、95質量%を越えて有機無機複合フィラー中に含有させることは操作上困難であり、均質なものが得難くなる。無機球状粒子の有機−無機複合フィラーへのより好適な含有量は、40〜90質量%である。
有機−無機複合フィラーは、無機球状粒子、重合性単量体、及び重合開始剤の各成分の所定量を混合し、加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕するという、一般的な製造方法に従って製造することができる。このような製法によれば樹脂マトリックスに無機球状粒子が分散した複合体から成る不定形の有機−無機複合フィラーをえることができる。
また、国際公開第2011/115007号パンフレットや国際公開第2013/039169号パンフレットに記載されている方法、すなわち、無機球状粒子の凝集体から成る凝集粒子を、重合性単量体、重合開始剤及び有機溶媒を含む液状組成物に浸漬した後、有機溶媒を除去し、重合性単量体を加熱あるいは光照射等の方法で重合硬化させる方法によって製造することもできる。このような方法により、無機球状粒子の一次粒子が凝集した状態を実質的に保ったまま、樹脂が各一次粒子の表面少なくとも一部を覆うと共に、各一次粒子を相互に結合させ、外部に連通する微細な孔を多数有する多孔質性の有機−無機複合フィラーを得ることができる。
本発明において有機無機複合フィラーの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、硬化体の機械的強度や硬化性ペーストの操作性を良好にする観点から、2〜100μmであることが好ましく、5〜50μm、特に5〜30μmであることが好ましい。
有機−無機複合フィラーには、その効果を阻害しない範囲で(通常、有機無機複合フィラー100質量部に対して、通常0.0001〜5質量部となる量で)、顔料、重合禁止剤、蛍光増白剤等を添加することができる。また、有機−無機複合フィラーは、洗浄やシランカップリング剤等による表面処理がなされていてもよい。
本発明の硬化性組成物における有機―無機複合フィラーの配合量は、本発明の硬化性組成物中に含まれる、有機―無機複合フィラー化されていない同一粒径球状粒子群:G−PIDの配合量を勘案し、含まれる全G−PIDの総量(すなわち無機球状粒子の総量)が、前記した量となるように、有機―無機複合フィラー中に含まれる無機球状粒子の量から換算して決定すればよい。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、その効果を阻害しない範囲で、重合禁止剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を配合することができる。
本発明の硬化性組成物から得られる本発明の複合材料は、前述したとおり、顔料などの着色物質を用いなくても、構造色を発現する。したがって、本発明の硬化性組成物に、時間と共に変色する虞のある顔料を配合する必要は特にはない。しかし、顔料の配合自体を否定するものではなく、球状フィラーの干渉による着色光の妨げにならない程度の顔料は配合しても構わない。具体的には、重合性単量体100質量部に対して0.0005〜0.5質量部程度、好ましくは0.001〜0.3質量部程度の顔料であれば配合しても構わない。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例の複合材料は何れも、重合性単量体、無機粒子及び重合開始剤を含有する硬化性組成物を硬化させることによって得た。まず、実施例及び比較例で(複合材料の前駆体として用いた)硬化性組成物で使用した各成分について説明する。
1.重合性単量体
表1に示す組成の重合性単量体混合物であるM1及びM2を使用した。なお、表の重合単量体欄の略号は、夫々以下の化合物を表し、略号後の括弧内の数字は使用した質量部を表す。
・UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・bis−GMA:2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン
また、M1及びM2の粘度は、E型粘度計(東京精機:VISCONIC ELD)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
さらに硬化前(M1又はM2)の屈折率及び硬化後(硬化体)の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定した。このとき、硬化体試料は、夫々100質量部のM1又はM2に対して(光重合開始剤としての)カンファーキノン(CQ)0.2質量%、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(DMBE)0.3質量%及びヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)0.15質量%を添加して均一に混合したものを、7mmφ×0.5mmの貫通した孔を有する型に入れ、両面にポリエステルフィルムを圧接した後に、光量500mW/cmのハロゲン型歯科用光照射器(Demetron LC、サイブロン社製)を用いて30秒間光照射し硬化させてから型から取り出すことにより作成した。なお、硬化体試料をアッベ屈折率計にセットする際に、硬化体試料と測定面を密着させる目的で、試料を溶解せず、かつ試料よりも屈折率の高い溶媒(ブロモナフタレン)を試料に滴下した。
2.無機粒子
2−1.同一粒径球状粒子群(G−PID)
G−PIDとしては、表2に示すG−PID1〜G−PID11を使用した。なお、これら同一粒径球状粒子群は、特開昭58−110414号公報、特開昭58−156524号公報等に記載された方法(いわゆるゾルゲル法)にしたがって調製した。具体的には、先ず、加水分解可能な有機ケイ素化合物(テトラエチルシリケートなど)と加水分解可能な有機チタン族金属化合物(テトラブチルジルコネートやテトラブチルチタネートなど)とを、表2の組成欄に示すような組成となるように含んだ混合溶液を、アンモニア水を導入したアンモニア性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなど)溶液中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させた。次いで析出物を分離後、乾燥し、必要に応じて粉砕してから、焼成し、該焼成物を得た。
次いで、得られた焼成物100質量部に対し、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン4質量部とn−プロピルアミン3質量部を、塩化メチレン500質量部中で撹拌混合し、エバポレーターで塩化メチレンを除去した後、90℃で加熱乾燥を行い、同一粒径球状粒子群の表面処理物とした。
また、表2における平均粒子径(無機球状粒子については平均一次粒子径を意味する。)、±5%内粒子割合〔個数基準粒度分布において平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子数の全粒子数に占める割合(%)を意味する。〕、平均斉度及び屈折率は、次のようにして測定した。
(1)平均一次粒子径
走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL−30S」)で粉体の写真を5000〜100000倍の倍率で撮り、画像解析ソフト(「IP−1000PC」、商品名;旭化成エンジニアリング社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(30個以上)および一次粒子径(最大径)を測定し、測定値に基づき下記式により数平均一次粒子径を算出した。
(2)±5%内粒子割合〔個数基準粒度分布において平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子数の全粒子数に占める割合(%)〕
上記写真の単位視野内における全粒子(30個以上)のうち、上記で求めた平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲外の一次粒子径(最大径)を有する粒子の数を計測し、その値を上記全粒子の数から減じて、上記写真の単位視野内における平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲内の粒子数を求め、下記式:
±5%内粒子割合(%)=[(走査型電子顕微鏡写真の単位視野内における平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲内の粒子数)/(走査型電子顕微鏡写真の単位視野内における全粒子数)]×100
に従って算出した。
(3)平均均斉度
走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される同一粒径球状粒子群(G−PID)の粒子について、その数(n:30以上)、粒子の最大径を長径(Li)、該長径に直交する方向の径を短径(Bi)を求め、下記式により算出した。
(4)屈折率
アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて液浸法によって測定した。すなわち、25℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、同一粒径球状粒子群(G−PID)を無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら1−ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率を測定し、得られた値を同一粒径球状粒子群(G−PID)の屈折率とした。
2−2.有機−無機複合フィラー(CF1)の製造]
表2に示す同一粒径球状粒子群(G−PID5)100gを200gの水に加え、循環型粉砕機SCミル(日本コークス工業社製)を用いてこれらの水分散液を得た。
一方、4g(0.016mol)のγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと0.003gの酢酸とを80gの水に加え、1時間30分撹拌し、pH4の均一な溶液を得た。この溶液を上記同一粒径粒子群分散液に添加し、均一になるまで混合した。その後、分散液を軽く混合しながら、高速で回転するディスク上に供給して噴霧乾燥法により造粒した。
噴霧乾燥は、回転するディスクを備え、遠心力で噴霧化する噴霧乾燥機TSR−2W(坂本技研社製)を用いて行った。ディスクの回転速度は10000rpm、乾燥雰囲気空気の温度は200℃であった。その後、噴霧乾燥により造粒されて得られた粉体を60℃、18時間真空乾燥し、略球形状の凝集体を73g得た。
次いで、重合性単量体としてM1を10g、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.025g、さらに有機溶媒としてメタノールを5.0g混合した重合性単量体溶液(有機溶媒100質量部に対して重合性単量体36質量部を含有)に、上記凝集体50g浸漬させた。十分撹拌し、この混合物がスラリー状になったことを確認した後、1時間静置した。
上記の混合物を、ロータリーエバポレーターに移した。撹拌状態で、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件40℃(温水バスを使用)の条件下で、前記混合物を1時間乾燥し、有機溶媒を除去した。有機溶媒を除去すると、流動性の高い粉体が得られた。
得られた粉体を、ロータリーエバポレーターで撹拌しながら、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件100℃(オイルバス使用)の条件下で、1時間加熱することにより、上記粉体中の重合性単量体を重合硬化させた。この操作により、球形状の凝集体の表面が有機重合体で被覆された、略球形状の有機−無機複合フィラー(CF1)を45g得た。この有機−無機複合フィラーの平均粒子径は33μmであった。
2−3.超微細粒子(G−SFP)
G−SFPとしては、レオロシールQS−102(平均一次粒子径30nm、株式会社トクヤマ製)を使用した。
2−4.不定形無機粒子
表2に示す不定形無機粒子Fを使用した。不定形無機粒子Fは、特開平2−132102号公報、特開平3−197311号公報等に記載の方法に従い、アルコキシシラン化合物を有機溶剤に溶解し、これに水を添加して部分加水分解した後、更に複合化する他の金属のアルコキサイド及びアルカリ金属化合物を添加して加水分解してゲル状物を生成させ、次いで該ゲル状物を乾燥後、必要に応じて粉砕し、焼成することにより調製した。なお、平均粒子径(不定形粒子については破砕粒子の平均粒子径を意味する。)、±5%内粒子割合〕及び屈折率はG−PIDと同様にして測定した。
3.重合開始剤
重合開始剤としては、カンファーキノン(CQ)、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(DMBE)及びヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)の組み合わせからなる光重合開始剤を使用した。
実施例1
重合性単量体混合物M1:100質量部に対して、CQ:0.3質量部、DMBE:1.0質量部及びHQME:0.15質量部を加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、G−PID4:400質量部及び超微細粒子群(G−SFP):0.5質量部を計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、混練機プラネタリーミキサー(井上製作所製)を用いて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し重合硬化性組成物を製造した。得られた重合硬化性組成物の硬化体(複合材料)について、(1)目視による着色光の評価、(2)着色光の波長測定、(3)色彩計による色調適合性の評価、(4)目視による色調適合性の評価及び(5)無機球状粒子の動径分布関数の評価を行った。硬化体(複合材料)の組成(マトリックス欄についてはマトリックスとなる樹脂を与える重合性単量体混合物を記載している。)及び評価結果を表3、4及び5に示した。また、実施例1の複合材料は10回中10回の割合で、再現よく前記動径分関数の条件1及び条件2を満足する、均一な組成物を得ることが出来た。
なお、上記各評価及び測定は、以下に示す方法で行った。
(1)目視による着色光の評価
前記重合硬化性組成物(ペースト)を7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して評価試料を作成した。得られた評価資料を10mm角程度の黒いテープ(カーボンテープ)の粘着面に載せ、目視にて着色光の色調を確認した。
(2)着色光の波長
(1)と同様にして作成した評価資料について、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、背景色黒、背景色白で分光反射率を測定し、背景色黒における反射率の極大点を着色光の波長とした。
(3)色彩計による色調適合性の評価
右下6番の咬合面中央部にI級窩洞(直径4mm、深さ2mm)を再現した硬質レジン歯を用いて、欠損部に前記重合硬化性組成物(ペースト)を充填し硬化、研磨することによって模擬修復を行った。模擬修復後の色調適合性を二次元色彩計(パパラボ社製、「RC−500」)にて評価した。なお、硬質レジン歯としては、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(A4相当)と低彩度の硬質レジン歯(A1相当)及び、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(B4相当)と低彩度の硬質レジン歯(B1相当)を用いた。
硬質レジン歯を二次元色彩計にセットし、硬質レジン歯を撮影、画像解析ソフト(「RC Series Image Viewer」、パパラボ社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、硬質レジン歯の修復部と非修復部の測色値の色差(CIELabにおけるΔE)を求め、色調適合性の評価を行った。
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔL=L1−L2
Δa=a1−a2
Δb=b1−b2
なお、L1:硬質レジン歯の修復部の明度指数、a1,b1:硬質レジン歯の修復部の色質指数、L2:硬質レジン歯の修復部の明度指数、a2,b2:硬質レジン歯の修復部の色質指数、ΔE:色調変化量である。
(4)目視による色調適合性の評価
(3)と同様にして模擬修復を行った。修復後の色調適合性を目視にて確認した。評価基準を以下に示す。
5:修復物の色調が硬質レジン歯と見分けがつかない。
4:修復物の色調が硬質レジン歯と良く適合している。
3:修復物の色調が硬質レジン歯と類似している。
2:修復物の色調が硬質レジン歯と類似しているが適合性は良好でない。
1:修復物の色調が硬質レジン歯と適合していない。
(5)無機球状粒子の動径分布関数の評価
前記重合硬化性組成物(ペースト)を5mmφ×10mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、前記重合硬化性組成物(ペースト)の硬化体(複合材料)を得、当該硬化体中の球状粒子の分散状態を走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL−30S」)により観察することにより動径分布関数を求め、評価を行った。具体的には、前記硬化体をイオンミリング装置(日立社製、「IM4000」)で断面ミリングを2kV、20minの条件にて行い、観察平面とした。その後当該観察面について前記走査型電子顕微鏡により平面内に1000個の球状粒子を含有している領域の顕微鏡画像を取得し、得られた走査型電子顕微鏡画像を画像解析ソフト(「Simple Digitizer ver3.2」フリーソフト)を用いて、前記領域内の球状粒子の座標を求めた。得られた座標データから任意の球状粒子の座標を1つ選択し、選択した球状粒子を中心に少なくとも200個以上の球状粒子が含まれる距離rを半径とする円を描き、円内に含まれる球状粒子の個数を求め、平均粒子密度<ρ>(単位:個/cm2)を算出した。drは、r/100〜r/10(rは球状粒子の平均粒子径を示す。)程度の値であり、中心の球状粒子から距離rの円と距離r+drの円との間の領域内に含まれる粒子の数dn、及び前記領域の面積daを求める。このようにして求めた <ρ>、dn、daの値を用いて、下記式(2):
g(r) = {1/<ρ>}×{dn/da} (2)
を計算し、動径分布関数g(r)を求めた。動径分布関数とr/r(rは前記円の中心からの任意の距離を示し、rは球状粒子の平均粒子径を示す。)との関係を示すグラフを作成し評価した。
実施例2〜4
実施例1において、硬化体(複合材料)の組成を表3に示す他は同様にして硬化体(複合材料)の(1)目視による着色光の評価、(2)着色光の波長測定、(3)色彩計による色調適合性の評価、(4)目視による色調適合性の評価及び(5)無機球状粒子の動径分布関数の評価を行った。評価結果を表3、4及び5に示した。また、実施例2〜4の複合材料においても、10回中10回の割合で、再現よく前記動径分関数の条件1及び条件2を満足する、均一な組成物を得ることが出来た。
比較例1、3〜5
実施例1において、硬化体(複合材料)の組成を表3に示す他は同様にして硬化体(複合材料)の(1)目視による着色光の評価、(2)着色光の波長測定、(3)色彩計による色調適合性の評価、(4)目視による色調適合性の評価を行った。評価結果を表3、4及び5に示した。
比較例2
重合性単量体混合物M1:100質量部に対して、CQ:0.3質量部、DMBE:1.0質量部及びHQME:0.15質量部を加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、G−PID2:400質量部及び超微細粒子群(G−SFP):0.5質量部を計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、乳鉢を用いて混練し硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し重合硬化性組成物を製造した。得られた重合硬化性組成物の硬化体(複合材料)について、(1)目視による着色光の評価、(2)着色光の波長測定、(3)色彩計による色調適合性の評価、(4)目視による色調適合性の評価及び(5)無機球状粒子の動径分布関数の評価を行った。硬化体(複合材料)の組成(マトリックス欄についてはマトリックスとなる樹脂を与える重合性単量体混合物を記載している。)及び評価結果を表3、4及び5に示した。なお、比較例2の複合材料において、5回中1回の割合で良好な評価を得ることができなかった。表に示す評価結果は、この系についてのものである。
実施例1〜4の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満足していると、硬化した硬化性組成物は黒背景化で着色光を示し、色調適合性が良好であることが分かる。
図1及び図2に示す結果から理解されるように、実施例1で得られた硬化性組成物は最近接粒子間距離rが粒子径r0の1.03倍となる位置(r/rが1.03)において動径分布関数g(r)の第一の極大ピークが観測され、次近接粒子間距離rとの間の前記動径分布関数g(r)の極小値が0.60となっていることが確認され、本発明における短距離秩序構造を有していることが確認された。
図3に示す結果から理解されるように、実施例2で得られた硬化性組成物は最近接粒子間距離rが粒子径r0の1.24倍となる位置(r/rが1.24)において動径分布関数g(r)の第一の極大ピークが観測され、次近接粒子間距離rとの間の前記動径分布関数g(r)の極小値が0.62となっていることが確認され、本発明における短距離秩序構造を有していることが確認された。
図4に示す結果から理解されるように、実施例3で得られた硬化性組成物は最近接粒子間距離rが粒子径r0の1.41倍となる位置(r/rが1.41)において動径分布関数g(r)の第一の極大ピークが観測され、次近接粒子間距離rとの間の前記動径分布関数g(r)の極小値が0.88となっていることが確認され、本発明における短距離秩序構造を有していることが確認された。
図5に示す結果から理解されるように、実施例4で得られた硬化性組成物は最近接粒子間距離rが粒子径r0の1.04倍となる位置(r/rが1.04)において動径分布関数g(r)の第一の極大ピークが観測され、次近接粒子間距離rとの間の前記動径分布関数g(r)の極小値が0.80となっていることが確認され、本発明における短距離秩序構造を有していることが確認された。
比較例1、3〜5の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満足していないと、充填し硬化、研磨後に所望の色調が得られず(比較例1:nMX<nG−PIDmを満たしていない。)、硬化性組成物は黒背景化で着色光を示さず(比較例3:G−PIDの平均粒子径が80nm、比較例4:フィラーの形状が不定形、比較例5:G−PIDの個々の粒子の平均一次粒子径が、それぞれ互いに25nmより小さい値である。)、色調適合性に劣っていることが分かる。
比較例2の結果から理解されるように、組成物の混練状態が不均一となった場合、本発明で規定する無機球状粒子の配列構造の条件を満足せず、歯質との色調適合性に劣っていることが分かる。
図6に示す結果から理解されるように、比較例2で得られた硬化性組成物は最近接粒子間距離rが粒子径r0の1.58倍となる位置(r/rが1.58)において動径分布関数g(r)の第一の極大ピークが観測され、次近接粒子間距離rとの間の前記動径分布関数g(r)の極小値が0.18となっていることが確認され、本発明における短距離秩序構造を有していないことが確認された。
すなわち、第一の本発明は、樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料であって、
前記無機粒子は、
(I)100〜1000nmの範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体を構成する個々の無機球状粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群(Group of spherical Particle having Identical Diameter)”(G−PID)と、
(II)平均一次粒子径が100nm未満の無機粒子からなる“超微細粒子群(Group of Super Fine Particle)”(G−SFP)と、を含んでなり、
前記無機粒子に含まれる前記“同一粒径球状粒子群”の数をaとしたときの各“同一粒径球状粒子群”を、その平均一次粒子径の小さい順にそれぞれG−PID(但し、mは、aが1のときは1であり、aが2以上のときは1〜aまでの自然数である。)で表したときに、前記aが2以上の場合における各G−PIDの個々の粒子を構成する物質は互いに異なっていてもよく、当該場合における各G−PIDの平均一次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なっており、
前記“超微細粒子群”(G−SFP)の平均一次粒子径は、前記G−PIDの平均一次粒子径よりも25nm以上小さく、
前記樹脂マトリックスの25℃における屈折率をn(MX)とし、前記各G−PIDを構成する無機球状粒子の25℃における屈折率をn(G−PIDm)としたときに、何れのn(G−PIDm)に対しても、
(MX)<n(G−PIDm)
の関係が成り立ち、
前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心から距離r離れた地点において他の無機球状粒子が存在する確率を表す関数であって、前記複合材料の内部の面を観察平面とする走査型電子顕微鏡画像に基づいて決定される、当該観察平面内の前記無機球状粒子の平均粒子密度:〈ρ〉、及び当該観察平面内の任意の無機球状粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する無機球状粒子の数:dn、並びに前記領域の面積:da(ただし、da=2πr・drである。)に基づいて下記式(1)
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da} ・・・(1)
で定義される関数:g(r)を動径分布関数としたときに、前記樹脂マトリックス中における、全“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の配列構造が下記条件1及び条件2を満たす短距離秩序構造を有していることを特徴とする前記複合材料である。
[条件1] 前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心からの距離:rを、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rで、除して規格化した無次元数(r/r)をx軸とし、前記径分布関数:g(r)をy軸として、前記r/rとその時のrに対応する前記g(r)との関係をあらわした動径分布関数グラフにおいて、当該動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から最も近いピークのピークトップに対応するrとして定義される最近接粒子間距離:rが、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rの1倍以上2倍以下の値である。
[条件2] 前記動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から2番目に近いピークのピークトップに対応するrを次近接粒子間距離:rとしたときに、前記最近接粒子間距離:rと次近接粒子間距離:rとの間における前記動径分布関数:g(r)の極小値が0.56以上1.10以下の値である。

Claims (8)

  1. 樹脂マトリックス中に無機粒子が分散してなる複合材料であって、
    前記無機粒子は、
    (I)100〜1000nmの範囲内にある所定の平均一次粒子径を有する無機球状粒子の集合体からなり、当該集合体を構成する個々の無機球状粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に、当該集合体の個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記所定の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、
    (II)平均一次粒子径が100nm未満の無機粒子からなる“超微細粒子群”(G−SFP)と、
    を含んでなり、
    前記無機粒子に含まれる前記“同一粒径球状粒子群”の数をaとしたときの各“同一粒径球状粒子群”を、その平均一次粒子径の小さい順にそれぞれG−PID(但し、mは、aが1のときは1であり、aが2以上のときは1〜aまでの自然数である。)で表したときに、前記aが2以上の場合における各G−PIDの個々の粒子を構成する物質は互いに異なっていてもよく、当該場合における各G−PIDの平均一次粒子径は、それぞれ互いに25nm以上異なっており、
    前記“超微細粒子群”(G−SFP)の平均一次粒子径は、前記G−PIDの平均一次粒子径よりも25nm以上小さく、
    前記樹脂マトリックスの25℃における屈折率をn(MX)とし、前記各G−PIDを構成する無機球状粒子の25℃における屈折率をn(G−PIDm)としたときに、何れのn(G−PIDm)に対しても、
    (MX)<n(G−PIDm)
    の関係が成り立ち、
    前記樹脂マトリックス中における、全“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の配列構造が下記条件1及び条件2を満たす短距離秩序構造を有していることを特徴とする前記複合材料。
    [条件1] 前記複合材料中に分散する任意の無機球状粒子の中心からの距離:rを、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rで、除して規格化した無次元数(r/r)をx軸とし、前記任意の無機球状粒子の中心から距離r離れた地点において他の無機球状粒子が存在する確率を表す動径分布関数:g(r)をy軸として、前記r/rとその時のrに対応する前記g(r)との関係をあらわした動径分布関数グラフにおいて、当該動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から最も近いピークのピークトップに対応するrとして定義される最近接粒子間距離:rが、前記複合材料中に分散する無機球状粒子全体の平均粒子径:rの1倍以上2倍以下の値である。
    [条件2] 前記動径分布関数グラフに現れるピークのうち、原点から2番目に近いピークのピークトップに対応するrを次近接粒子間距離:rとしたときに、前記最近接粒子間距離:rと次近接粒子間距離:rとの間における前記動径分布関数:g(r)の極小値が0.56以上1.10以下の値である。
  2. 前記動径分布関数:g(r)は、前記複合材料の内部の面を観察平面とする走査型電子顕微鏡画像に基づいて決定される、当該観察平面内の前記無機球状粒子の平均粒子密度:〈ρ〉、及び当該観察平面内の任意の無機球状粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する無機球状粒子の数:dn、並びに前記領域の面積:da(ただし、da=2πr・drである。)に基づいて下記式(1):
    g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da} ・・・(1)
    により計算される、請求項1に記載の複合材料。
  3. 樹脂マトリックス中に分散する“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の総量、及び“超微細粒子群”(G−SFP)の量が、樹脂マトリックス100質量部に対して、それぞれ、10質量部以上1500質量部以下、及び0.1質量部以上50質量部以下である、請求項1又は2に記載の複合材料。
  4. 前記無機粒子に含まれる全ての“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の平均一次粒子径が230〜1000nmの範囲内にあり、“超微細粒子群”(G−SFP)平均一次粒子径が3nm以上75nm以下である、請求項1乃至3の何れかに記載の複合材料。
  5. 前記n(MX)と前記n(G−PIDm)との差(n(G−PIDm) − n(MX))で定義されるΔnが、何れのnG−PIDmに対しても、0.001以上0.1以下である、請求項1乃至4の何れかに記載の複合材料。
  6. 請求項1乃至5何れかに記載の複合材料から成ることを特徴とする歯科用充填修復材料。
  7. 請求項1に記載の複合材料を製造するための硬化性組成物であって、
    25℃における屈折率が1.40〜1.57となる硬化体を与える重合性単量体、
    100〜1000nmの範囲の所定の長さの平均一次粒子径を有する球状粒子群からなり、当該球状粒子群を構成する個々の粒子は、実質的に同一物質で構成されると共に当該個々の粒子の90%(個数)以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する、1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、100nm未満で且つ前記1又は複数の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の平均1次粒子径の中で最も小さい平均1次粒子径よりも25nm以上小さい平均一次粒子径を有する無機粒子からなる“超微細粒子群”(G−SFP)と、を含んでなる無機粒子、及び
    重合開始剤を含有し、
    前記“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する球状粒子の屈折率が、前記硬化体の25℃における屈折率よりも大きい
    ことを特徴とする、前記硬化性組成物。
  8. 前記1又は複数の各“同一粒径球状粒子群”(G−PID)の少なくとも一部は、1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)と、25℃における屈折率が当該1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を構成する無機球状粒子の屈折率よりも小さい樹脂とを含んでなり、前記1種の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)以外の“同一粒径球状粒子群”(G−PID)を含まない有機―無機複合フィラーとして、含まれることを特徴とする、請求項7に記載の前記硬化性組成物。
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