JP2021109837A - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】単一の充填修復材料で天然歯の色調と適合する修復が可能であり、深い窩洞に充填した場合においても、硬化直後及び後硬化後の両方において、天然歯との色調適合が良好である歯科用硬化性組成物を提供する。【解決手段】重合性単量体(A)、特定の粒径範囲及び粒形分布を有する無機球状フィラー(B)、及び重合開始剤(C)、平均粒子径100nm未満のフュームドシリカ(D)を含んで成り、前記無機球状フィラー(B)の屈折率:nFが前記重合性単量体(A)の重合体の屈折率:nPより大きく、前記重合開始剤(C)が、光増感化合物(C1)、第3級アミン化合物(C2)、及び光酸発生剤(C3)からなる歯科用硬化性組成物であり、1mm厚みの硬化体の硬化直後から37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比変化が0.08以内であることを特徴とする歯科用硬化性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、構造色を使用して外観色調を制御でき、かつ退色や変色の少ない歯科用硬化性組成物に関し、特に、歯科大規模直接修復用の歯科用充填修復材料として用いることのできる歯科用硬化性組成物に関する。
従来、無機または有機フィラーと、重合性単量体を含む硬化性組成物が、建築材料、記録材料、歯科用材料等の種々の分野において使用されている。特に歯科用充填修復材料は、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや、操作が容易なことから、齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復をするための材料として急速に普及している。
歯科用充填修復材料は、フィラーの配合割合が高く粘性の高いペーストタイプとフィラーの配合割合が低く流動性のあるフロアブルタイプの二種類が広く知られている。従来、歯牙の修復に用いられるものとしては、研磨が容易である点や機械的強度の観点から、一般にペーストタイプが用いられてきた。近年では、フィラーの微細化や樹脂の高強度化により、研磨性や機械的強度に優れるフロアブルタイプの歯科用充填修復材料が開発されており、前歯部の修復のみならず、高い咬合圧が加わる臼歯部に対しても使用されている。
フロアブルタイプは修復部にシリンジ等を用いて直接充填することが可能であるため術式が容易であるメリットがある。加えて、流動性が高いため、複雑な形状の窩洞や深い窩洞への充填が容易である。
臼歯部の直接修復のような深い窩洞の修復において、複数回に分けて材料を充填及び硬化させる方法が一般的である。これは、歯科充填修復材料の硬化に伴い重合収縮が生じて、歯牙から材料が脱離するリスクがあるためである。一方で、近年では、バルクフィルタイプと呼ばれる、重合収縮を低減した歯科用充填修復材料も開発されている。バルクフィルタイプは臼歯齲蝕部の直接修復のような大規模な症例に対しても、一括充填及び硬化が可能である。
近年では、臼歯部の直接修復においても、審美性な修復への要求が高まりつつある。そのため、上記バルクフィルタイプの材料においても、天然歯の色調を再現するため、色調が各々異なる複数種の材料を用意し、この中から、実際の歯牙及び隣接歯牙の色調と最も良く適合したものを選定して使うことが肝要である。
バルクフィルタイプは、深い窩洞に一括充填及び硬化させる使用の都合上、審美的修復に限度がある。なぜならば、天然歯は透明性の高いエナメル質と不透明で彩度の大きな象牙質からなり、部位によって色調が異なるが、バルクフィルタイプはこのような象牙質及びエナメル質の両方が窩洞内に露出するような深い窩洞を修復する必要があるためである。
これに対し、特許文献1には構造色を利用して発色する色材及びそれを用いた光硬化性組成物および歯科用修復充填材料で、環境光程度の弱い光に対しては高い安定性を有し且つ光照射器による活性光の照射により著しく短時間で重合を完了させるために、重合触媒系に光酸発生剤を有することで重合反応の進行を速くしたものが提案されている。該組成物はフィラーの粒子径に依存した発色(構造色)が発現し、A系統の歯に対しては赤色の発色を示す組成が、B系統の歯に対しては黄色の発色を示す組成が良好な色調適合性を示すことが分かっている。
国際公開第2018/164074号
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の組成物は、組成によっては、深い窩洞に充填した場合、硬化直後は良好な色調適合性であるが、24時間後に良好な色調適合性が得られにくくなるケースがあることが分かった。重合触媒系に光酸発生剤を有することで重合反応の進行が速くなったとはいえ、光照射器による活性光の照射により直ちに重合が完了するわけではない。活性光の照射直後に65%程度重合反応が進みほぼ硬化するが、その後更に24時間程度をかけてゆっくり重合反応が進んで硬化が完了する(以下、活性光の照射直後に硬化した後のゆっくり進む重合反応を後硬化ともいう)。この後硬化により、硬化直後と比較して硬化体の透明性が高くなり、良好な色調適合性が得られなくなると考えられる。すなわち、従来の特許文献1に記載の組成物は後硬化による透明性変化が大きく、充填直後或いは後硬化後のどちらか一方では色調適合性が十分でなくなる可能性があった。
従って、本発明の目的は、単一の充填修復材料で天然歯の色調と適合する修復が可能であり、深い窩洞に充填した場合においても、硬化直後及び後硬化後の両方において、天然歯との色調適合が良好である歯科用硬化性組成物や、該組成物を用いた歯科用充填修復材料を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を続けてきた。その結果、特定の粒子径を有する球状無機フィラー、及び光酸発生剤を含む重合触媒を含有した硬化性組成物において、フュームドシリカを用いることにより硬化性組成物の後硬化前後でのコントラスト比変化(ΔYb/Yw)を制御することができ、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、重合性単量体成分(A)、平均粒子径が230から1000nmの範囲内にある無機球状フィラー(B)、重合開始剤(C)、平均粒子径100nm未満のフュームドシリカ(D)を含んで成り、
前記無機球状フィラー(B)を構成する個々の粒子のうち90%以上が平均粒子径の前後5%以内に存在し、
重合性単量体成分(A)及び球状無機フィラー(B)は、下記式(1):
nP<nF (1)
(上記式中、nPは、重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率を表し、nFは、前記球状無機フィラー(B)の25℃における屈折率を表す)を満たし、
重合開始剤(C)は光増感化合物(C1)、第3級アミン化合物(C2)、及び光酸発生剤(C3)からなる歯科用硬化性組成物であり、
1mm厚みの硬化体の硬化直後から37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比変化が0.08以内であることを特徴とする歯科用硬化性組成物である。以下、37℃水中24時間浸漬後を後硬化後ともいう。
光酸発生剤(C3)は、アリールヨードニウム塩または置換基としてハロメチル基を有するs−トリアジン化合物であることが好ましい。
フュームドシリカ(D)を、重合性単量体成分(A)100重量部に対し、2〜40重量部含むことが好ましい、
また、回転粘度計で測定したせん断速度対せん断応力曲線のループ内部面積が10Pa/s以上5000Pa/s以下であることが好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、個体差や修復箇所により異なる天然歯牙の色調に応じた発色を示すため、色調の異なる複数種の歯科用硬化性組成物を用意する必要がなく、硬化直後及び後硬化後のコントラスト比変化が小さいため、深い窩洞のような大規模修復治療においても天然歯との調和が継続する修復が可能である。上記効果により、本発明の歯科用硬化性組成物は、特に歯科用充填修復材料として用いることができ、特に好適には、歯科大規模直接修復用の歯科用硬化性組成物として用いることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体成分(A)、平均一次粒子径が230から1000nmの無機球状フィラー(B)、重合開始剤(C)、及び平均一次粒子径が100nm未満であるフュームドシリカ(D)を含んで成る。
本発明においては、重合性単量体成分(A)及び無機球状フィラー(B)の屈折率は下記式(1)の条件を満たす。
nP<nF (1)
上記式(1)中、nPは重合性単量体成分(A)の重合体の25℃での屈折率を表し、nFは球状フィラー(B)の25℃での屈折率を示す。
これにより、該組成物において光の干渉現象により、球状フィラーの粒子径に応じた着色光が発現するようになり、天然歯に近い、色調適合性の良好な修復が可能となる。ここで、球状フィラー(B)の粒子径と光の干渉現象との関係は、ブラッグの回折条件に従うと考えられる。
天然歯牙は、個人差があり、修復する部位によっても色調が異なる。しかし、本発明の光の干渉現象を利用した硬化性組成物は様々な色調に対応できる。具体的には、下地となる歯牙の色度(色相及び彩度)が高い場合には、照射光などの外光が高色度の背景によって吸収され、光の干渉現象を利用した歯科充填用修復材料から生じる着色光(干渉光)以外の光が抑制されるため、着色光が観察できる。一方、下地となる歯牙の色度が低い場合には、照射光などの外光が低色度の背景で散乱反射し、光の干渉現象を利用した歯科充填用修復材料から生じる着色光(干渉光)よりも強いために打ち消され、弱い着色光となる。
従って、色度の高い天然歯牙に対しては、強い着色光が生じ、色度の低い天然歯牙に対しては、弱い着色光が生じるため、1種のペーストで幅広い色調適合性を示すことができる。このように、1種のペーストで色度の高低によらず天然歯牙と色調が適合する技術は、通常顔料等の着色物質の配合により調製されるペーストでは達成は困難である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、干渉現象によって着色光が発生することを特徴としているが、該着色光が発生するか否かは、色差計を用いて黒背景下、白背景下の双方の条件で分光反射率特性を測定することにより確認される。黒背景下では、上述した条件を満たす場合、特定の可視スペクトル(380−780nm)の光がその着色光に応じて特有の反射スペクトルが明瞭に確認されるが、これは、黒背景下においては、外光(例えばC光源、D65光源)が吸収或いは遮光されて干渉による着色光が強調されるためと考えられる。一方、白背景下では、可視スペクトルの実質的な全範囲にわたり、実質的に均一な反射率を示し、可視スペクトルの光は確認されず、実質的に無色である。これは、白背景下においては、外光の散乱反射光が強いため干渉による着色光が観察され難くなるためと考えられる。
本発明の色調適合性に優れるという効果を発現させる上では、屈折率の関係を、下記式(1)を満足するように選択する点が重要である。
nP<nF (1)
式(1)に示したように、本発明の硬化性組成物は、重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPと球状無機フィラー(B)の屈折率nFの関係がnP<nFにあり、球状無機フィラー(B)の屈折率nFが高く、重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPが低い場合、ブラッグ回折条件に従った干渉光が発現するが、逆の場合、短波長の光が干渉されやすくなり、得られる着色光は短波長化し青みを帯びた着色光となり、エナメル質から象牙質に渡って形成された天然歯の窩洞に対しては、歯牙との色調適合性が不良となり易い。
本発明の効果を発現させるためには、硬化直後から後硬化後のコントラスト比変化(ΔYb/Yw)を0.08以内とすることが重要である。ここでコントラスト比とは、色差計を用いて組成物の硬化体を測色した際、CIELAB色空間において光の三刺激値(X,Y,Z)の内、黒背景と白背景それぞれでのY値の比、すなわちYb/Ywを指すものである。ここで、Ybは黒背景で測色した際のYの値を指し、Ywは白背景で測色した際のYの値を指す。コントラスト比は硬化体の透明性の尺度であって、コントラスト比の値が大きいほど不透明であることを表わしている。コントラスト比変化ΔYb/Ywは硬化直後の硬化体のコントラスト比と後硬化後の硬化体のコントラスト比の差である。
硬化直後から後硬化後のコントラスト比変化(ΔYb/Yw)が0.08よりも大きい場合、深い窩洞に充填した場合に後硬化後の充填部位の明度が低くなるため、本発明の効果である硬化直後及び後硬化後の両方における良好な色調適合性が得られない、と考えられる。
また、天然歯エナメル質のコントラスト比(Yb/Yw)は0.4から0.5であるため、硬化体のコントラスト比も、修復する天然歯エナメル質のコントラスト比に近いほど、審美的な修復が可能となる。従って、修復部と天然歯のコントラスト比の調和を勘案すると、後硬化後のコントラスト比(Yb/Yw)は0.1から0.5が好ましく、0.2から0.48がより好ましく、0.3から0.45がさらに好ましい。
以下、本発明の歯科用硬化性組成物の各成分について説明する。
<重合性単量体成分(A)>
重合性単量体成分としては、公知のものが特に制限なく使用できる。重合速度の観点から、ラジカル重合性、或いはカチオン重合性の単量体が好ましい。特に好ましいラジカル重合性単量体としては(メタ)アクリル化合物である、以下に例示する(メタ)アクリレート類が挙げられ、また特に好ましいカチオン重合性単量体としては、エポキシ類、オキセタン類が挙げられる。
一般に、好適に使用される(メタ)アクリル化合物として、(メタ)アクリレート類を例示すれば、下記(イ)〜(ニ)に示されるものが挙げられる。
(イ)単官能重合性単量体
(イ−i)酸性基や水酸基を有さないもの
メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、
n-ブチル(メタ)アクリレート、
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
n-ラウリル(メタ)アクリレート、
n-ステアリル(メタ)アクリレート、
テトラフルフリル(メタ)アクリレート、
グリシジル(メタ)アクリレート、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、
イソボロニル(メタ)アクリレート、
トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど。
(イ−ii)酸性基を有するもの
(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、
N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、
N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、
6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、
O−(メタ)アクリロイルチロシン、
N−(メタ)アクリロイルチロシン、
N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、
N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、
N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、
p−ビニル安息香酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、
3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、
4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、
N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、
N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等
及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物、
11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、
10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、
12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、
6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、
4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、
4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、
4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、
4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、
4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、
4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、
4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、
6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、
6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、
4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、
4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物、
9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、
13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、
11−(メタ)アクリルアミドウンデカン−1,1−ジカルボン酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、
10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、
6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、
2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、
2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、
10−スルホデシル(メタ)アクリレート、
3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノプロピオネート、
3−(メタ)アクリロキシプロピルホスホノアセテート、
4−(メタ)アクリロキシブチル−3−ホスホノプロピオネート、
4−(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、
5−(メタ)アクリロキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、
5−(メタ)アクリロキシペンチルホスホノアセテート、
6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、
6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、
10−(メタ)アクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、
10−(メタ)アクリロキシデシルホスホノアセテート、
2−(メタ)アクリロキシエチル−フェニルホスホネート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸、
10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、
N−(メタ)アクリロイル−ω−アミノプロピルホスホン酸、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネートなど。
(イ−iii)水酸基を有するもの
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、
10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、
プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
グリセロールモノ(メタ)アクリレート、
エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、
N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、
N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなど。
(ロ)二官能重合性単量体
(ロ−i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン
及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;
ジ(メタクリルロキシエチル)ジフェニルメタンジウレタン等。
(ロ−ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、
ジエチレングリコールジメタクリレート、
トリエチレングリコールジメタクリレート、
テトラエチレングリコールジメタクリレート、
ネオペンチルグリコールジメタクリレート、
1,3−ブタンジオールジメタクリレート、
1,4−ブタンジオールジメタクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、
およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン等の、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(ハ)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールエタントリメタクリレート、
ペンタエリスリトールトリメタクリレート、
トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(ニ)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート;
ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これらの(メタ)アクリレート系重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。
さらに、必要に応じて、上記(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いても良い。
本発明において、重合性単量体成分(A)としては、歯科用硬化性組成物の硬化体の物性(機械的特性や歯質に対する接着性)調整のため、一般に、複数種の重合性単量体が使用されるが、この際、重合性単量体成分(A)の25℃における屈折率が1.38〜1.55の範囲となるように、重合性単量体の種類及び量を設定することが、球状無機フィラー(B)との屈折率差の観点から望ましい。即ち、球状無機フィラー(B)として屈折率の調整が容易なシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物を用いる場合、その屈折率nFはシリカ分の含有量に応じて1.45〜1.58程度の範囲となるが、重合性単量体成分(A)の屈折率を1.38〜1.55の範囲に設定することにより、重合性単量体成分(A)から得られる重合体の屈折率nPを、おおよそ1.40〜1.57の範囲に設定でき、式(1)を満足するようにすることが容易である。なお、重合性単量体成分(A)として重合性単量体を複数種類用いる場合があるが、この場合の重合性単量体成分(A)の屈折率は、複数種の重合性単量体を混合した混合物の屈折率が上記範囲に入っていれば良く、個々の重合性単量体は必ずしも上記範囲に入っていなくてもよい。
なお、重合性単量体や重合性単量体の硬化体の屈折率は、25℃にてアッベ屈折率計を用いて求めることができる。
<球状無機フィラー(B)>
歯科用充填修復材料には、無機粉体や有機粉体などの種々の充填材が含有されているが、本発明の硬化性組成物には、干渉による着色光を発現させる目的で、平均一次粒子径が230〜1000nmである球状無機フィラー(B)が配合される。本発明の歯科用硬化性組成物において特徴的なことは、構成する充填材が球状であり且つ、粒子径分布が狭い点である。干渉による着色光は、構成する粒子が規則的に集積された時に生じる。従って、本発明を構成する球状無機フィラー(B)は、形状が均一な球状であり且つ、粒子径分布が狭いため、干渉による着色光が生じる。これに対して、粉砕等によって製造される不定形粒子の場合、形状が不均一であり且つ、粒子径分布が広いため、規則的に集積されず、干渉による着色光は生じない。
上記したように、球状無機フィラー(B)は、その平均一次粒子径が230〜1000nmであり、且つ、球状無機フィラー(B)を構成する個々の粒子の90%(個数)以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在することが重要である。つまり、球状無機フィラー(B)は、複数の一次粒子から構成されており、該複数の一次粒子の平均粒子径の前後の5%の範囲に、全体の一次粒子の数のうち90%以上の数の一次粒子が存在していることを意味する。干渉による着色光の発現は、ブラッグ条件に則って回折干渉が起こり、特定波長の光が強調されることによるものであり、上記粒子径の粒子を配合すると、その粒子径に従ってその硬化性組成物の硬化体には、黄色〜赤色系の着色光が発現するようになる。干渉による着色光の発現効果を一層に高める観点から、球状無機フィラー(B)の平均一次粒子径は230〜800nmが好適であり、240〜500nmがより好適であり、260〜350nmが特に好適である。粒径150nm〜230nm未満の範囲の球状無機フィラーを用いた場合、得られる着色光は青色系であり、エナメル質から象牙質に渡って形成された天然歯の窩洞に対しては、歯質との色調適合性が不良となりやすく、さらに、100nmよりも小さい球状無機フィラーを用いた場合、可視光の干渉現象が生じ難い。一方、1000nmよりも大きい球状無機フィラーを用いた場合は、光の干渉現象の発現は期待できるが、本発明の硬化性組成物を歯科充填用修復材料として用いる場合には、球状無機フィラーの沈降や研磨性の低下が生じるため、好ましくない。
本発明の硬化性組成物は球状無機フィラー(B)の粒径に応じて、黒背景下で様々な着色光を発現する。従って、所望の色光が得られるように、球状無機フィラー(B)の平均一次粒子径を230〜1000nmの範囲から決定すればよい。粒径230nm〜260nmの範囲の球状無機フィラーを用いた場合、得られる着色光は黄色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。粒径260nm〜350nmの範囲の球状無機フィラーを用いた場合、得られる着色光は赤色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。象牙質の色相はこうした赤色系のものが多いため、本発明では、斯様に平均一次粒子径260nm〜350nmの範囲の球状フィラーを用いる態様において、多様な色調の修復歯牙に対して、幅広く適合性が良くなり最も好ましい。一方、粒径150nm〜230nm未満の範囲の球状無機フィラーを用いた場合、上記したように、得られる着色光は青色系であり、エナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞に対しては、歯質との色調適合性が不良となりやすいが、エナメル質の修復に有用で、特に切端部の修復に有用である。
斯様に黒背景下で赤色系の色相になる性状は、硬化体周辺が赤色系を呈した環境下であれば、その環境が赤黄色から赤茶色に様々に変化しても、明度,彩度及び色相のいずれも良好に調和する。具体的には、背景(下地環境)の色度(色相及び彩度)が高い場合には、照射光などの外光が高色度の背景によって吸収され、硬化体からの着色光以外の光が抑制されるため、着色光が観察できる。一方、背景(下地環境)の歯牙の色度が低い場合には、照射光などの外光が低色度の背景で散乱し、硬化体から生じる着色光よりも強いために打ち消され、弱い着色光となる。従って、色度の高い下地環境に対しては、強い着色光が生じ、色度の低い下地環境に対しては、弱い着色光が生じるため、赤色系の様々な周辺環境に対して幅広く調和する効果が発揮される。
本発明において、球状無機フィラー(B)及び後述する球状無機フィラー(B2)の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、それぞれの一次粒子径(最大径)を求めた平均値をいう。
また本発明において、球状とは、略球状であればよく、必ずしも完全な真球である必要はない。走査型電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、その単位視野内にあるそれぞれの粒子(30個以上)について最大径を測定し、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上、より好ましくは0.8以上のものであればよい。
本発明の歯科用硬化性組成物には、球状無機フィラー(B)は、前述した条件を満たしていれば、如何なる形態で含まれていても良い。例えば、球状無機フィラー(B)をそのまま粉体としてや、球状無機フィラー(B)または球状無機フィラー(B)を凝集させた凝集物と重合性単量体とを混合し、重合硬化させた後に、粉砕して調製した有機無機複合フィラーとして用いることができる。あるいはこれらを併用しても良い。
粉体の球状無機フィラー(B)と有機無機複合フィラーとを併用する場合、粉体の球状無機フィラー(B)と後述する有機無機複合フィラー中の球状無機フィラー(B2)とは同じであっても、異なる球状無機フィラーであっても良い。
球状無機フィラー(B)は、歯科用硬化性組成物の成分として一般に使用されるようなものが制限なく使用できる。具体的には、非晶質シリカ、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子(シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニアなど)、石英、アルミナ、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化イッテルビウム、ジルコニア、チタニア、コロイダルシリカ等の無機粉体が挙げられる。
このうちフィラーの屈折率の調整が容易であることから、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子が好ましい。
本発明においてシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子とは、シリカとチタン族元素(周期律表第4族元素)酸化物との複合酸化物であり、シリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア・ジルコニア等が挙げられる。このうちフィラーの屈折率を調整が可能である他、高いX線不透過性も付与できることから、シリカ・ジルコニアが好ましい。その複合比は特に制限されないが、十分なX線不透過性を付与することと、屈折率を後述する好適な範囲にする観点から、シリカの含有量が70〜95モル%であり、チタン族元素酸化物の含有量が5〜30モル%であるものが好ましい。シリカ・ジルコニアの場合、このように各複合比を変化させることにより、その屈折率を自在に変化させることができる。
なお、これらシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子には、少量であれば、シリカ及びチタン族元素酸化物以外の金属酸化物の複合も許容される。具体的には、酸化ナトリウム、酸化リチウム等のアルカリ金属酸化物を10モル%以内で含有させても良い。
こうしたシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子の製造方法は特に限定されないが、本願発明の特定の球状フィラーを得るためには、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物と加水分解可能な有機チタン族金属化合物とを含んだ混合溶液を、アルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法が好適に採用される。
これらのシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子は、シランカップリング剤により表面処理されても良い。シランカップリング剤による表面処理により、有機無機複合フィラーとしたときに後述する有機樹脂マトリックス(B1)との界面強度に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はなく、得られる硬化性組成物の硬化体の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、球状無機フィラー(B)100質量部に対して0.1〜15質量部の範囲である。
上述のように、天然歯牙に対する良好な色調適合性を発現する、干渉、散乱等による着色光は、下記式(1):
nP<nF (1)
(上記式中、nPは重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率を表し、nFは球状無機フィラー(B)の25℃における屈折率を表す)を満たす場合に得られる。
すなわち、球状無機フィラー(B)の屈折率は、重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の屈折率より高い状態にあるということである。球状無機フィラー(B)の屈折率nF(25℃)と、重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nP(25℃)との差は、0.001以上であるのが好ましく、0.002以上であるのがより好ましく、0.005以上であるのが最も好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の硬化体のコントラスト比(Yb/Yw)が、前述した0.10〜0.50の範囲にある場合に、干渉による着色光が鮮明に発現し、色調適合性が向上することから、球状無機フィラー(B)の屈折率nFと重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPとの屈折率差は0.1以下、より好ましくは0.05以下とし、透明性をできるだけ損なわないようにすることが好ましい。
本発明における球状無機フィラー(B)の配合量は、重合性単量体成分(A)100質量部に対して、50質量部〜600質量部である。シリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子を50質量部以上配合することにより、干渉、散乱等による着色光が良好に発現するようになる。また、複合酸化物粒子として、重合性単量体成分(A)の重合体との屈折率差が前記0.1を上回るものを用いる場合において、硬化体の透明性が低下して、着色光の発現効果も十分に発現しなくなる虞がある。これらを勘案すると、球状無機フィラー(B)の配合量は、重合性単量体成分(A)100質量部に対して100質量部〜600質量部が好適であり、200質量部〜600質量部が特に好適である。
球状無機フィラー(B)の内、屈折率の調整が容易なシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物の屈折率は、シリカ分の含有量に応じて1.45〜1.58程度の範囲となる。即ち、球状無機フィラー(B)としてシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物を用いる場合、重合性単量体成分(A)の屈折率を前述した範囲(1.38〜1.55の範囲)に設定しておくことにより、重合性単量体成分(A)から得られる重合体の屈折率nPを、おおよそ1.40〜1.57の範囲に設定できるので、前述した条件(式(1))を満足するように、球状無機フィラー(B)を容易に選択することができる。即ち、適当な量のシリカ分を含むシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物(例えばシリカ・チタニア或いはシリカ・ジルコニアなど)を使用すればよい。
<有機無機複合フィラー>
球状無機フィラー(B)を有機無機複合フィラーの形態で用いる場合、有機無機複合フィラー中に含まれる有機樹脂マトリックスを有機樹脂マトリックス(B1)と、球状無機フィラー(B)を球状無機フィラー(B2)という。
球状無機フィラー(B)を有機無機複合フィラーの形態で用いる場合において、有機無機複合フィラーを構成する、球状無機フィラー(B2)と有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率差、球状無機フィラー(B2)と重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率差を、後述する式(2)、(3)を満足するようにすることで、硬化性組成物に有機無機複合フィラーを添加する場合においても、ブラッグの回折条件に従った光の回折干渉が起こり、球状無機フィラー(B2)の平均一次粒子径が球状無機フィラー(B)と同じであると、球状無機フィラー(B)を単独で用いる場合と同じ波長の着色光が発現する。
有機無機複合フィラーを構成する球状無機フィラー(B2)は、粉体で用いる球状無機フィラー(B)と同じでも異なっていても良いが、粉体で用いる球状無機フィラー(B)同様、球状であり、平均一次粒子径が230nm〜1000nmの範囲内にあって、球状無機フィラー(B2)を構成する個々の粒子の数のうち90%以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在するが、更に、球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2は、下記式(2)で示される有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1と球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2との関係及び、下記式(3)で示される重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPと球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2との関係を満足することが重要である。
nMB1<nFB2 (2)
(式(2)中、nMB1は有機無機複合フィラーを構成する有機樹脂マトリックス(B1)の25℃における屈折率を表し、nFB2は、球状無機フィラー(B2)の25℃における屈折率を表す。)
nP<nFB2 (3)
(式(3)中、nPは、重合性単量体成分(A)の重合体の25℃における屈折率を表し、nFB2は、有機無機複合フィラーを構成する球状無機フィラー(B2)の25℃における屈折率を表す。)
これにより、球状無機フィラー(B)を有機無機複合フィラーの形態で用いた場合でも、歯科用硬化性組成物、特に、染料物質、顔料物質を用いなくても光の干渉による着色光が明瞭に確認でき、天然歯に近い修復が可能な色調適合性の良好な歯科用充填修復材料として用いることができる硬化性組成物を得ることができる。
前記したように干渉による着色光は、下記式(2)及び(3)を満足する場合に天然歯牙と色調適合性良く発現する。
nMB1<nFB2 (2)
(式(2)中、nMB1は有機無機複合フィラーを構成する有機樹脂マトリックス(B1)の25℃における屈折率を表し、nFB2は、球状無機フィラー(B2)の25℃における屈折率を表す。)
nP<nFB2 (3)
(式(3)中、nPは、重合性単量体成分(A)の重合体の25℃における屈折率を表し、nFB2は、有機無機複合フィラーを構成する球状無機フィラー(B2)の25℃における屈折率を表す。)
即ち、球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2は、重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nP及び、有機無機複合フィラーを構成する有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1より高い状態にあることが重要である。球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2と重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPとの屈折率差及び球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2と有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1との差は、0.001以上であるのが好ましく、0.002以上であるのがより好ましく、0.005以上であるのが最も好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の硬化体のコントラスト比(Yb/Yw)が、前述した0.10〜0.50の範囲にある場合に、干渉による着色光が鮮明に発現し、色調適合性が向上することから、球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2と重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPとの屈折率差及び球状無機フィラー(B2)の屈折率nFB2と有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1との屈折率差は0.1以下、より好ましくは0.05以下とし、透明性をできるだけ損なわないようにすることが好ましい。
球状無機フィラー(B2)の有機無機複合フィラーへの含有量は、30質量%以上95質量%以下が好ましい。有機無機複合フィラーへの含有量が30質量%以上であると、硬化性組成物の硬化体の着色光が良好に発現するようになり、機械的強度も十分に高めることができる。また、球状無機フィラー(B2)を、95質量%を越えて有機無機複合フィラー中に含有させることは操作上困難であり、均質なものが得難くなる。球状無機フィラー(B2)の有機無機複合フィラーへのより好適な含有量は、40〜90質量%である。
粉体で用いる球状無機フィラー(B)同様、球状無機フィラー(B2)の内、屈折率の調整が容易なシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物の屈折率は、シリカ分の含有量に応じて1.45〜1.58程度の範囲となる。即ち、球状無機フィラー(B2)としてシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物を用いる場合、重合性単量体成分(A)の屈折率を前述した範囲(1.38〜1.55の範囲)に設定しておくことにより、重合性単量体成分(A)から得られる重合体の屈折率nPを、おおよそ1.40〜1.57の範囲に設定できるので、前述した条件(式(3))を満足するように、球状無機フィラー(B2)を容易に選択することができる。即ち、適当な量のシリカ分を含むシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物(例えばシリカ・チタニア或いはシリカ・ジルコニアなど)を使用すればよい。
有機無機複合フィラーにおいて、有機樹脂マトリックス(B1)は、前述の重合性単量体成分(A)として記載したものと同じ重合性単量体を用いて得られる単独重合体又は複数種の共重合体が、なんら制限なく採択可能である。上述したように、球状無機フィラー(B2)として屈折率の調整が容易なシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物を用いる場合、その屈折率は、シリカ分の含有量に応じて1.45〜1.58程度の範囲となるため、有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1を、おおよそ1.40〜1.57の範囲に設定することにより、前述した条件(式(2))を満足させることができる。
有機樹脂マトリックス(B1)は、重合性単量体成分(A)から得られる重合体と同じでも異なっていても良いが、有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMB1と重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率nPとの屈折率差は、得られる硬化性組成物の透明性の観点から0.005以下が好ましい。屈折率差が0.005より大きい場合、不透明となり干渉による着色光が弱くなる。さらに、屈折率差によって光の拡散性を付与でき、硬化性組成物と歯牙との色調適合性が向上できるという観点から屈折率差は0.001〜0.005の範囲がより好ましい。
本発明において、有機無機複合フィラーは、球状無機フィラー(B2)、重合性単量体、及び重合開始剤の各成分の所定量を混合し、加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕する、有機無機複合フィラーの一般的製造方法や、国際公開第2011/115007号パンフレットや国際公開第2013/039169号パンフレット記載の、球状無機フィラー(B2)が凝集してなる無機凝集粒子を、重合性単量体、重合開始剤及び有機溶媒を含む重合性単量体溶媒に浸漬した後、有機溶媒を除去し、重合性単量体を加熱あるいは光照射等の方法で重合硬化させる、無機一次粒子が凝集した無機凝集粒子の各無機一次粒子の表面を覆うと共に、各無機一次粒子を相互に結合する有機樹脂相を有し、各無機一次粒子の表面を覆う有機樹脂相の間に凝集間隙が形成されている有機無機複合フィラーの製造方法に従って製造すれば良い。重合開始剤は、公知の重合開始剤が特に制限なく用いられるが、より黄色度の低い硬化体を得ることができることから、熱重合開始剤を用いるのが好適であり、さらにその構造中に芳香族環を有していない化合物からなるものを用いるのがより好ましい。
本発明において有機無機複合フィラーの平均粒子径は、特に制限されるものではないが、歯科用硬化性組成物の硬化体の機械的強度や該組成物の未硬化ペーストの操作性を良好にする観点から、2〜100μmが好ましく、さらには4〜50μmがより好ましく、5〜30μmであるのが特に好ましい。また、形状については、特に制限されるものではなく、球状無機フィラー(B2)、重合性単量体、及び重合開始剤の各成分の所定量を混合し、加熱あるいは光照射等の方法で重合させた後、粉砕して得られる不定形のものや、国際公開第2011/115007号パンフレットや国際公開第2013/039169号パンフレット記載の方法に従って製造される、球状または、略球状のものが挙げられる。
有機無機複合フィラーには、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を含有していても良い。添加剤として具体的には、顔料、重合禁止剤、蛍光増白剤等が挙げられる。これらの添加剤はそれぞれ、通常、有機無機複合フィラー100質量部に対して、通常0.0001〜5質量部の割合で使用できる。
また、有機無機複合フィラーは、洗浄やシランカップリング剤等による表面処理がなされていてもよい。
本発明における有機無機複合フィラーの配合量は、有機無機複合フィラーのみで構成する場合、重合性単量体成分(A)100質量部に対して50〜1000質量部であり、歯科用硬化性組成物のペーストの操作性や硬化体の機械的強度を良好にするためには、該有機無機複合フィラーは70〜600質量部、より好適には100〜400質量部を配合すればよい。また、該有機無機複合フィラー中の球状無機フィラー(B2)の配合量は、上記したように、30質量%以上95質量%以下が好ましく、より好適には40〜90質量%である。従って、干渉による着色光の発現に影響を及ぼす球状無機フィラーの配合量は、硬化性組成物中10質量%((50/150)×30%)以上、86.4質量%((1000/1100)×95%)以下である。粉体で用いる球状無機フィラー(B)と有機無機複合フィラーを併用する場合、無機フィラー成分の配合量が硬化性組成物中10質量%〜86質量%になるように配合することで干渉による着色光が良好に発現するようになる。無機フィラー成分の配合量はより好ましくは15質量%〜86質量%、さらに好ましくは20質量%〜86質量%である。さらに硬化性組成物のペーストの操作性や硬化体の機械的強度を良好にするためには、球状無機フィラー(B)と有機無機複合フィラーの配合割合(質量比)を90:10から10:90とすることが好ましく、より好ましくは80:20〜20:80、特に70:30〜30:70が好ましい。
<重合開始剤(C)>
重合開始剤(C)は光増感化合物(C1)、第3級アミン化合物(C2)、及び光酸発生剤(C3)の3成分を含んで成る。以下、これらの成分を説明する。
(光増感化合物(C1))
本発明における光増感化合物(C1)は、最大吸収波長を350nmから700nmに有し、重合に有効な活性種を生成させる機能を有する化合物である。活性種は、通常、光吸収し励起した光増感化合物と重合性単量体若しくは他の化合物との間でエネルギー移動または電子移動する結果として生じる。
光増感化合物(C1)としては公知の光増感化合物を何ら制限なく用いることが可能である。本発明で特に好適に使用される光増感化合物としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
以上の中でも、カンファーキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、アセナフテンキノン等のα−ジケトン化合物がより好ましい。
光増感化合物(C1)の使用量は特に制限されないが、通常は、重合性単量体(A)100重量部に対して0.01重量部から10重量部であり、0.03重量部から5重量部であることが好ましく、0.05重量部から2重量部であることがより好ましい。
(第3級アミン化合物(C2))
第3級アミン化合物(C2)としては公知の第3級アミン化合物が何ら制限なく使用できる。臭気等の観点から芳香族第3級アミン化合物が好ましい。本発明で好適に使用される芳香族第3級アミン化合物としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−(N,N−ジメチル)アミノ安息香酸メチル、p−(N,N−ジメチル)アミノ安息香酸エチル、p−(N,N−ジメチル)アミノ安息香酸アミル等が挙げられる。
また、第3級アミン化合物(C2)としては、脂肪族第3級アミン化合物を用いてもよい。具体的には、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
第3級アミン化合物(C2)の使用量は特に制限されないが、通常は、光増感化合物(C1)100質量部に対して、10質量部から1000質量部であり、50質量部から500質量部であることが好ましく、75質量部から300質量部であることが好ましい。
(光酸発生剤(C3))
光酸発生剤(C3)としては公知の光酸発生剤が何ら制限なく用いられる。本発明で好適に使用される光酸発生剤としては、アリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、置換基としてハロメチル基を有するs−トリアジン化合物、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられ、特にアリールヨードニウム塩系化合物又は置換基としてハロメチル基を有するs−トリアジン化合物であることが好ましい。
例えば、アリールヨードニウム塩系化合物では、ジフェニルヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、p−イソプロピルフェニル−p−メチルフェニルヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、p−tert−ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p−フェノキシフェニルフェニルヨードニウム等のカチオンと、ニトレート、アセテート、クロロアセテート、カルボキシレート、フェノラート等のアニオンとからなる塩が挙げられる。
また、置換基としてハロメチル基を有するs−トリアジン化合物としては、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基を少なくとも一つ有するs−トリアジン化合物であれば、公知の化合物が何ら制限なく用いることができる。例えば、下記一般式(1)で表される。
Figure 2021109837
一般式(1)中、R及びRは、トリアジン環と共役可能な不飽和結合を有する有機基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、Xはハロゲン原子である。一般式(1)中、Xで表されるハロゲン原子は、塩素、臭素、及びヨウ素のいずれでもよいが、塩素が一般的である。したがって、トリアジン環に結合した置換基(CX)としては、トリクロロメチル基が一般的である。
及びRは、トリアジン環と共役可能な不飽和結合を有する有機基、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれでもよいが、R及びRの少なくとも一方がハロゲン置換アルキル基である方がより良好な重合活性を得られやすく、ともにハロゲン置換アルキル基であると特に重合活性が良好である。
トリアジン環と共役可能な不飽和結合により結合した有機基としては、公知の如何なる有機基でもよいが、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜14の有機基である。このような有機基を具体的に例示すると、フェニル基、メトキシフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−クロロフェニル基、4−ビフェニリル基、ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基;ビニル基、2−フェニルエテニル基、2−(置換フェニル)エテニル基等の炭素数2〜14のアルケニル基;などが挙げられる。なお、上記置換フェニル基の有する置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等の炭素数1〜6のアルキルチオ基;フェニル基;ハロゲン原子;などが例示される。また、R及びRにおいて、アルキル基及びアルコキシ基は置換基を有するものであってもよく、このようなアルキル基としては炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基等の非置換のアルキル基;トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、α,α,β−トリクロロエチル基等のハロゲン置換アルキル基;などが例示される。さらに、アルコキシ基としては炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の非置換のアルコキシ基;2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ基、2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ基、2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ基、2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ基等のアミノ基により置換されたアルコキシ基;などが例示される。
上記のような一般式(3)で表されるトリハロメチル基置換s−トリアジン化合物を具体的に例示すると、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
光酸発生剤(C3)の使用量は特に制限されないが、通常は、光増感化合物(C1)100質量部に対して10質量部〜2000質量部であり、20質量部〜1000質量部であることが好ましく、50質量部〜800質量部であることがより好ましい。
<フュームドシリカ(D)>
本発明の歯科用硬化性組成物は、フュームドシリカ(D)を含んでいる。フュームドシリカ(D)を含んでいるので、硬化直後及び後硬化後のコントラスト比変化が小さく、本発明の歯科用硬化性組成物を用いて、深い窩洞のような大規模修復治療においても天然歯との調和が継続する修復が可能となる。
本発明において、フュームドシリカ(D)は、平均一次粒子径が100nm未満のフュームドシリカであることが重要である。フュームドシリカの平均一次粒子径が100nm以上の場合、球状無機フィラー(B)の規則構造を撹乱し、干渉光が減衰してしまうため好ましくない。従って、干渉光に影響を与えずコントラスト比変化を制御する観点から、平均一次粒子径100nm未満のフュームドシリカが好ましく、3nm以上50nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下のフュームドシリカがさらに好ましい。
本発明において、フュームドシリカ(D)は、公知のシランカップリング剤によって表面処理されていても良い。表面処理することで、フュームドシリカ(D)は重合性単量体成分(A)への分散性に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はないが、好適な範囲を例示すれば、フュームドシリカ(D)100質量部に対して5〜400質量部の範囲である。
フュームドシリカ(D)の配合量は特に制限されないが、好ましい範囲としては、重合性単量体成分(A)100重量部に対し、2〜40重量部であることが好ましい。重合性単量体成分(A)にフュームドシリカ(D)を2重量部以上分散させることにより、組成物の硬化直後から後硬化後の間のコントラスト比変化をより低減させることが可能となる。また、40重量部以下であると操作性に優れた歯科用硬化性組成物が得られる。以上を勘案すると、フュームドシリカ(D)の配合量は4〜30重量部がより好ましく、6〜20重量部がさらに好ましい。
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物には、その効果を阻害しない範囲で、上記(A)〜(D)成分の他、公知の他の添加剤を配合することができる。具体的には、重合禁止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明では前述したとおり、顔料などの着色物質を用いなくても、天然歯牙との色調適合性が良好な修復が単一のペースト(硬化性組成物)で可能になる。したがって、時間と共に変色する虞のある顔料は配合しない態様が好ましい。ただし、本発明においては、顔料の配合自体を否定するものではなく、球状フィラーの干渉による着色光の妨げにならない程度の顔料は配合しても構わない。具体的には、重合性単量体100質量部に対して0.0005〜0.5質量部程度、好ましくは0.001〜0.3質量部程度の顔料であれば配合しても構わない。
本発明の歯科用硬化性組成物はフロアブルタイプのコンポジットレジンとして用いることができる。フロアブルタイプのコンポジットレジンでかつバルクフィルタイプであるコンポジットレジンとして好適な操作性を付与するためには、回転粘度計を用いた組成物のせん断速度対せん断応力の測定において、ループ曲線(X)のループ内部面積が10Pa/s以上5000Pa/s以下であることが好ましい。なお、上記ループ曲線(X)はせん断速度毎秒0.01回転から毎秒5回転の範囲でせん断速度を走査して得る。
本発明の歯科用硬化性組成物の上記ループ曲線(X)のループ内部面積が10Pa/s以上5000Pa/s以下の場合、ペーストは深い窩洞に填入しやすく、かつ築盛しやすい性状となるため好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
本発明における各種物性測定方法は、それぞれ以下のとおりである。
(1)球状粒子(B)及び球状無機フィラー(B2)の平均一次粒子径
走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL−30S」)で粉体の写真を5000〜100000倍の倍率で撮り、画像解析ソフト(「IP−1000PC」、商品名;旭化成エンジニアリング社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(30個以上)および一次粒子径(最大径)を測定し、測定値に基づき下記式により数平均一次粒子径を算出した。
Figure 2021109837
(2)球状粒子(B)及び球状無機フィラー(B2)の平均粒子径粒子の存在割合
本発明において、球状粒子(B)の平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子の割合(%)は、上記写真の単位視野内における全粒子(30個以上)のうち、上記で求めた平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲外の一次粒子径(最大径)を有する粒子の数を計測し、その値を上記全粒子の数から減じて、上記写真の単位視野内における平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲内の粒子数を求め、下記式:
球状フィラー(B)の平均一次粒子径の前後5%の範囲内の粒子の割合(%)=[(走査型電子顕微鏡写真の単位視野内における平均一次粒子径の前後5%の粒子径範囲内の粒子数)/(走査型電子顕微鏡写真の単位視野内における全粒子数)]×100
に従って算出した。
(3)球状粒子(B)及び球状無機フィラー(B2)の平均均斉度
走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子について、その数(n:30以上)、粒子の最大径を長径(Li)、該長径に直交する方向の径を短径(Bi)を求め、下記式により算出した。
Figure 2021109837
(4)有機無機複合フィラーの平均粒子径(粒度)
0.1gの有機無機複合フィラーをエタノール10mlに分散させ、超音波を20分間照射した。レーザー回折−散乱法による粒度分布計(「LS230」、ベックマンコールター製)を用い、光学モデル「フラウンフォーファー」(Fraunhofer)を適用して、体積統計のメディアン径を求めた。
(5)屈折率の測定
<重合性単量体成分(A)の屈折率>
用いた重合性単量体(或いは重合性単量体の混合物)の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
<重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率(nP)>
用いた重合性単量体(或いは重合性単量体の混合物)の重合体の屈折率は、窩洞内での重合条件とほぼ同じ条件で重合した重合体を、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
即ち、CQ 0.2質量%、DMBE 0.3質量%、HQME 0.15質量%を混合した均一な重合性単量体(或いは重合性単量体の混合物)を、7mmφ×0.5mmの貫通した孔を有する型に入れ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。その後、光量500mW/cmのハロゲン型歯科用光照射器(Demetron LC、サイブロン社製)を用いて30秒間光照射し硬化させた後、型から取り出して、重合性単量体の重合体を作製した。アッベ屈折率計(アタゴ社製)に重合体をセットする際に、重合体と測定面を密着させる目的で、試料を溶解せず、かつ試料よりも屈折率の高い溶媒(ブロモナフタレン)を試料に滴下し測定した。
<有機樹脂マトリックス(B1)の屈折率nMb1
有機樹脂マトリックスの屈折率は、有機無機複合フィラー製造時の重合条件とほぼ同じ条件で重合した重合体を、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
即ち、AIBN 0.5質量%を混合した均一な重合性単量体(或いは重合性単量体の混合物)を、7mmφ×0.5mmの貫通した孔を有する型に入れ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。その後、窒素加圧下で一時間加熱して重合硬化後、型から取り出して、重合性単量体の重合体(有機樹脂マトリックス)を作製した。アッベ屈折率計(アタゴ社製)に重合体をセットする際に、重合体と測定面を密着させる目的で、試料を溶解せず、かつ試料よりも屈折率の高い溶媒(ブロモナフタレン)を試料に滴下し測定した。
<球状粒子(B)、球状無機フィラー(B2)、フュームドシリカ(D)の屈折率>
用いた球状粒子、球状無機フィラー及びフュームドシリカの屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて液浸法によって測定した。
即ち、25℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、球状無機フィラー又は無機粒子若しくはその表面処理物1gを無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら1−ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率を測定し、得られた値を無機充填材の屈折率とした。
(6)組成物の流動性の測定
<ループ内部面積>
実施例及び比較例で調製された歯科用硬化性組成物のペーストについて以下の手順に従い、Modular Compact Rheometer MCR302(Anton Paar製)を用いて測定した。
アルミ製ディスポーザブル試料台を装置本体に設置後、試料台の温度を23℃に調節する。試料台の温度が安定した後、試料台に組成物のペーストを0.6g試料台にとり、ペーストの厚みが1mmとなるように、装置本体に接続したパラレルプレート(φ20mm)で圧接する。この状態で2分間静置した後、測定ソフトウェアRheoCompass(Anton Paar製)を用いて、せん断速度を毎秒0.01回転から毎秒5回転の間で走査して、せん断速度とそれに対するせん断応力を記録する(これを行きの測定過程とする)。前記測定過程が終了した後、続けてせん断速度を毎秒5回転から毎秒0.01回転に走査して、せん断速度とそれに対するせん断応力を記録する(これを帰りの測定過程とする)。このようにして得られた、せん断速度とせん断応力を、せん断速度対せん断応力のXYグラフに起こすと、行きと帰りの測定過程の曲線はヒステリシス曲線となる。このヒステリシス曲線で囲まれた面積をループ内部面積(Pa/s)とし、組成物の流動性として評価した。
<押し出し評価>
実施例及び比較例で調製された歯科用硬化性組成物のペーストをテルモシリンジSS−01ESに1mL充填して、トクヤマディスペンシングチップ(株式会社トクヤマデンタル製)を取り付けたのち、ペーストを押し出した。その際、押し出しやすさの評価基準は以下の番号で示す。
1:難なく押し出すことが可能である。良好な吐出性である。
2:押し出すことが可能である。
3:実用を考慮する上で、押し出すことが可能な下限である。
4:僅かに抵抗感を感じる。やや押し出しにくい。
5:押し出しにくい。
<フロー性>
実施例及び比較例で調製された歯科用硬化性組成物のペースト0.1gを、直径5mmの半球状になるようにとる。このペーストを、37℃インキュベーター中に2分間静置し、垂れ広がったペーストの直径を測定する。
(7)目視による着色光の評価
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、10mm角程度の黒いテープ(カーボンテープ)の粘着面に載せ、目視にて着色光の色調を確認した。
(8)着色光の波長
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、1mm厚みの硬化体を型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、背景色黒、背景色白で分光反射率を測定し、背景色黒における反射率の極大点を着色光の波長とした。
(9)硬化性組成物のコントラスト比(Yb/Yw)、コントラスト比変化(ΔYb/Yw)の評価
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、1mm厚みの硬化体を型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、上記硬化体の三刺激値のY値(背景色黒及び白)を測定した。下記式、
コントラスト比(Yb/Yw)=背景色黒の場合のY値/背景色白の場合のY値
に基づいてコントラスト比(Yb/Yw)を計算し、これを硬化体の硬化直後のコントラスト比とした。
上記操作により、硬化体の硬化直後のコントラスト比を測定した後、該硬化体を褐色ガラス瓶中で蒸留水5mLに浸漬し、37℃インキュベーター内で24時間静置した。24時間経過後、硬化体を水中から取り出し、水気を除去した後に、上記と同様の方法で硬化体の三刺激値のY値(背景色黒及び白)を測定し、コントラスト比(Yb/Yw)を計算した。このコントラスト比を37℃水中24時間後(後硬化後)のコントラスト比とした。
得られた硬化直後のコントラスト比及び37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比から下記式により、1mm厚みの硬化体の硬化直後から37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比変化(ΔYb/Yw)を求めた。
ΔYb/Yw=硬化直後のコントラスト比−37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比
(10)色彩計による色調適合性の評価
右下6番の咬合面中央部にI級窩洞(直径4mm、深さ4mm)を再現した硬質レジン歯を用いて、欠損部に硬化性組成物を充填し硬化、研磨し、色調適合性を二次元色彩計(パパラボ社製、「RC−500」)にて評価した(以下、修復レジン歯と呼称する)。なお、硬質レジン歯としては、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(A4相当)と低彩度の硬質レジン歯(A1相当)及び、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(B4相当)と低彩度の硬質レジン歯(B1相当)を用いた。
硬質レジン歯を二次元色彩計にセットし、硬質レジン歯を撮影、画像解析ソフト(「RC Series Image Viewer」、パパラボ社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、硬質レジン歯の修復部と非修復部の測色値の色差(CIELabにおけるΔE)を求め、色調適合性の評価を行った。
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔL=L1−L2
Δa=a1−a2
Δb=b1−b2
なお、L1:硬質レジン歯の修復部の明度指数、a1,b1:硬質レジン歯の修復部の色質指数、L2:硬質レジン歯の修復部の明度指数、a2,b2:硬質レジン歯の修復部の色質指数、ΔE:色調変化量である。
上記操作にて、硬化直後の修復レジン歯の色調適合性を評価した後、該修復レジン歯を37℃イオン交換水中にて24時間保管した。この保管後の修復レジン歯の色調適合性についても同様に評価を行った。
(11)目視による色調適合性の評価
右下6番の咬合面中央部にI級窩洞(直径4mm、深さ4mm)を再現した硬質レジン歯を用いて、欠損部に硬化性組成物を充填し硬化、研磨し、色調適合性を目視にて確認し、5段階で評価した。なお、硬質レジン歯としては、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(A4相当)と低彩度の硬質レジン歯(A1相当)及び、シェードガイド(「VITA Classical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇の中にあって、高彩度の硬質レジン歯(B4相当)と低彩度の硬質レジン歯(B1相当)を用いた。
5:修復物の色調が硬質レジン歯と見分けがつかない。
4:修復物の色調が硬質レジン歯と良く適合している。
3:修復物の色調が硬質レジン歯と類似している。
2:修復物の色調が硬質レジン歯と類似しているが適合性は良好でない。
1:修復物の色調が硬質レジン歯と適合していない。
上記操作にて、硬化直後の修復レジン歯の色調適合性を評価した後、該修復レジン歯を37℃イオン交換水中にて24時間保管した。この保管後の修復レジン歯の色調適合性についても目視にて評価を行った。
実施例及び比較例で用いた重合性単量体、重合開始剤、無機粒子等は以下のとおりである。
[重合性単量体]
・1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン(以下、「UDMA」と略す。)
・トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、「3G」と略す。)
・2,2−ビス[(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン(以下、「bis−GMA」と略す。)
[重合開始剤]
・カンファーキノン(以下、「CQ」と略す)。
・p−(N,N−ジメチル)アミノ安息香酸エチル(以下、「DMBE」と略す)。
・ジフェニルヨードニウム−2−カルボキシレートモノハイドレート(以下、「DPIC」と略す)。
・アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と略す。)
[重合禁止剤]
・ヒドロキノンモノメチルエーテル(以下、「HQME」と略す。)
[ヒュームドシリカ]
・レオロシールQS−102(平均一次粒子径12nm、株式会社トクヤマ製)
[重合性単量体成分の製造]
表1に示すような重合性単量体を混合し、マトリックスM1、M2を調製した。
Figure 2021109837
[球状粒子、球状無機フィラーの製造]
球状粒子及び球状無機フィラーの調製は、特開昭58−110414号公報、特開昭58−156524号公報等に記載の方法で、加水分解可能な有機ケイ素化合物(テトラエチルシリケートなど)と加水分解可能な有機チタン族金属化合物(テトラブチルジルコネートやテトラブチルチタネートなど)とを含んだ混合溶液を、アンモニア水を導入したアンモニア性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなど)溶液中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法を用いて調製し、次いで乾燥、必要に応じて粉砕し、焼成する方法を用いて調製した。
不定形無機フィラーの調製は、特開平2−132102号公報、特開平3−197311号公報等に記載の方法で、アルコキシシラン化合物を有機溶剤に溶解し、これに水を添加して部分加水分解した後、更に複合化する他の金属のアルコキサイド及びアルカリ金属化合物を添加して加水分解してゲル状物を生成させ、次いで該ゲル状物を乾燥後、必要に応じて粉砕し、焼成する方法を用いて調製した。
実施例及び比較例で用いた球状無機フィラー及び不定形フィラーを表2に示す。
Figure 2021109837
[不定形の有機無機複合フィラーの製造]
表1に示すマトリックス中に、熱重合開始剤(AIBN)を質量比で0.5%予め溶解させておき、表2に示す球状無機フィラー、不定形無機フィラーを所定量(表3)添加混合し、乳鉢でペースト化した。これを、95℃窒素加圧下で一時間加熱することによって、重合硬化させた。この硬化体を、振動ボールミルを用いて粉砕し、さらにγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン0.02質量%によって、エタノール中、90℃で5時間還留することで表面処理を行い、下記表3に示す不定形の有機無機複合フィラーCF1及びCF2を得た。
Figure 2021109837
実施例1〜5
赤色光下にて、マトリックスM1に対して、CQを0.3重量%、DMBEを1.0重量%、DPICを1.0重量%、HQMEを0.15重量%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表2、表3に示した各フィラーを計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用硬化性組成物を製造した。得られた歯科用硬化性組成物について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4、5、6に示した。
比較例1〜3、及び比較例5
赤色光下にて、マトリックスM1又はM2に対して、CQを0.3重量%、DMBEを1.0重量%、DPICを1.0重量%、HQMEを0.15重量%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表2、表3に示した各フィラーを測りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用硬化性組成物を製造した。得られた歯科用硬化性組成物について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4、5、6に示した。
比較例4
赤色光下にて、マトリックスM1又はM2に対して、CQを0.3重量%、DMBEを1.0重量%、HQMEを0.15重量%加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表2、表3に示した各フィラーを測りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用硬化性組成物を製造した。得られた歯科用硬化性組成物について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4、5、6に示した。
Figure 2021109837
Figure 2021109837
Figure 2021109837
実施例1から5の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満足している場合、硬化した歯科用硬化性組成物は、フィラー粒径に応じた着色光を示し、且つ、硬化直後と37℃水中24時間後(後硬化後)のコントラスト比変化が小さいので、深い窩洞に充填した際も硬化直後及び37℃水中24時間後(後硬化後)の両方において、色調適合性が良好であることが分かる。
実施例1及び2と比較例1の結果から理解されるように、本発明で規定する球状無機フィラーの粒子径の条件を満たしていないと、歯科用硬化性組成物の硬化体は黒背景下で青色の着色光を示し、色調適合性に劣っていることが分かる。
また、実施例1及び2と比較例2の結果から理解されるように、本発明で規定する球状無機フィラーの条件を満たしていないと、歯科用硬化性組成物の硬化体は黒背景下で着色光を示さず、色調適合性に劣っていることが分かる。
更に、実施例1及び2と比較例3の結果から理解されるように、本発明で規定するフィラー及び重合性単量体の重合後の屈折率の関係性を満たしていないと、歯科用硬化性組成物は黒背景下で青色光を示すようになり、色調適合性に劣っていることが分かる。
実施例5と比較例4の結果から理解されるように、本発明で規定する重合開始剤の条件を満たしていないと、硬化反応が緩やかになり、硬化直後と37℃水中24時間後(後硬化後)のコントラスト比変化は大きくなり、硬化直後の色調適合性に劣っていることが分かる。
実施例3と比較例5の結果から理解されるように、フュームドシリカを含んでいないと、硬化直後と37℃水中24時間後(後硬化後)のコントラスト比変化が大きくなり、後硬化後の色調適合性に劣っていることが分かる。

Claims (4)

  1. 重合性単量体(A)、平均粒子径が230から1000nmの範囲内にある無機球状フィラー(B)、及び重合開始剤(C)、平均粒子径100nm未満のフュームドシリカ(D)を含んで成り、
    前記無機球状フィラー(B)を構成する個々の粒子のうち90%以上が平均粒子径の前後5%以内に存在し、
    前記重合性単量体(A)及び前記無機球状フィラー(B)が下記式(1):
    nP<nF (1)
    (式(1)中、nPは前記重合性単量体(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率を表し、nFは前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率を表す)を満たし、
    前記重合開始剤(C)が、光増感化合物(C1)、第3級アミン化合物(C2)、及び光酸発生剤(C3)からなる歯科用硬化性組成物であり、
    1mm厚みの硬化体の硬化直後から37℃水中24時間浸漬後のコントラスト比変化が0.08以内であることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  2. 前記光酸発生剤(C3)として、アリールヨードニウム塩または置換基としてハロメチル基を有するs−トリアジン化合物を含む請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. フュームドシリカ(D)を、重合性単量体成分(A)100重量部に対し、2〜40重量部含む請求項1又は2記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 回転粘度計で測定したせん断速度対せん断応力曲線のループ内部面積が10Pa/s以上5000Pa/s以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
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