JP4148332B2 - 光硬化性歯科用修復材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンポジットレジン、硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等に使用される光硬化性歯科用修復材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
光硬化性歯科用修復材料とは、重合性単量体、光重合開始剤、及びフィラーを主成分とする光硬化性の複合材料であり、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや操作が容易なことから、治療した歯牙を修復するための材料として近年多用されている。
【0003】
該光硬化性歯科用修復材料の具体的用途としては、齲蝕等による歯牙の窩洞に直接充填して修復する充填用コンポジットレジン、天然歯の歯冠の一部または全体を代替しうる歯冠用硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等の歯冠用材料があり、これら用途に於いては修復後の機械的物性や審美性が優れていることが要求されている。具体的には、硬化体の強度が高く、表面滑沢性に優れ、更に修復後の歯牙と噛み合わさる歯牙(対合歯)を摩損させないこと(以下、対合歯非摩損性ともいう)が要求されている。
【0004】
この様な要求を満足させるためには光硬化性歯科用修復材料に、比較的大きな平均粒子径を有する無機の球状フィラーと微粉状無機フィラーとの混合物を高充填で配合すれば良いことが知られている。例えば、特開平8−12305号公報には、平均粒子径が0.1μmより大きく1μm以下の範囲にある略球状無機酸化物粒子(A)60〜99重量%と、平均粒子径が0.1μm以下の範囲にある無機酸化物微粒子(B)40〜1重量%とを高分散で混合してなるフィラーを用いた光硬化性歯科用複合修復材料の機械的強度、表面滑沢性、対合歯非摩損性が優れていることが記載されている。なお、該公報に記載されている光硬化性歯科用複合修復材料は、特に高強度の硬化体を得るために、全フィラー中の略球状無機酸化物粒子(A)の配合量が多めになっており、しかもフィラーは高度に分散されている。しかしながら、本発明者等が確認したところによると、全フィラー中の略球状無機酸化物粒子(A)の配合量が40%程度と比較的少なく、また、フィラー分散が特に高度でなくても、用途によっては実用的に十分な機械的強度を有し、且つ表面滑沢性及び対合歯非摩損性に優れる光硬化性歯科用複合修復材料となる(以下、上記公報に開示されている光硬化性歯科用複合修復材料を含め、このような光硬化性歯科用複合修復材料を単に「従来修復材」ともいう。)。
【0005】
しかしながら、上記従来修復材には、充填や築盛等の操作をしている間にペーストの粘度が上昇してしまい、操作が困難になってしまうという問題があることが分かった。
【0006】
上記の問題は、従来修復材に光重合開始剤として使用されているカンファーキノン、及びジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の第3級アミン化合物(還元剤)の組み合わせが、口腔内を照らすデンタルライトあるいは蛍光灯のような室内灯の光(これらの光を以後、「環境光」と呼ぶ)に感応してしまい硬化が開始するためと考えられ、光重合開始剤の添加量を減らしたり重合禁止剤を添加したりすることによって回避できると考えられる。
【0007】
しかしながら、この様な方法を適用した場合には、成形後のペーストを硬化させようとして光(以下、硬化目的で照射する光を照射光ともいう。)を照射しても充分な硬化が起こらずに強度が却って低下したり、硬化体の表面近傍に未重合モノマーが残ってしまう。特に、硬化体表面付近に存在する未重合モノマーの量(以下、表面未重合量ともいう。)が多い場合には、硬化体表面を研磨したときに研磨の不均一を誘発し、表面滑沢性が低下してしまうという新たな問題が起こることが分かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来修復材に於いて、その良好な機械的強度、表面滑沢性、及び対合歯非摩損性を保持したまま、環境光に対する安定性を改良することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく光重合開始剤の種類について鋭意研究した結果、前記カンファーキノン系光重合開始剤に代えて特定のビスアシルホスフィンオキサイド誘導体を用いた場合には、環境光に対する安定性を高めるためにその使用量を少なくしても機械的強度が殆ど低下せず、しかも表面未重合量を低く抑えることが出来ることを見出し、本発明を提案するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、重合性単量体〔I〕100重量部、光重合開始剤〔II〕0.01〜10重量部、並びに平均粒子径が0.1μmを越え1μmの範囲にある略球状無機粒子(A)(以下、単に球状フィラーAともいう。)40〜99重量%、及び平均粒子径が0.1μm以下である無機微粒子(B)(以下、単にフィラーBともいう。)60〜1重量%からなるフィラー〔III〕(以下、該混合フィラーを単にフィラーCともいう。)100〜1900重量部を含有してなる光硬化性歯科用修復材料において、光重合開始剤が下記一般式(1)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり、R6は、アルキル基、アルケニル基、又は置換もしくは非置換のアリール基である。)
で示されるビスアシルホスフィンオキサイドであることを特徴とする光硬化性歯科用修復材料である。
【0013】
上記本発明の光硬化性歯科用修復材料のうち、フィラーCが球状フィラーA60〜99重量%、及びフィラーB40〜1重量%からなる場合、並びに/又はフィラーCにおける、細孔径0.08μm以上の強凝集細孔の容積が0.1(cc/g−フィラー)以下であるものは、その機械的強度が特に高い。
【0014】
なお、上記ビスアシルホスフィンオキサイドを光重合開始剤として使用した光硬化性歯科用材料硬化体の強度の高いことは公知であるが(米国特許第4,792,632号)、該ビスアシルホスフィンオキサイドを前記従来修復材に適用した場合に環境光に対する安定性が向上し、しかも表面未重合量が低くなることは、本発明によって初めて明らかになったことである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の光硬化性歯科用修復材料は、重合性単量体〔I〕、光重合開始剤〔II〕、及びフィラー〔III〕を含んで成る。ここで、フィラーの種類、配合量、及び光重合開始剤の配合量は、前記の従来修復材と同じである。即ち、〔III〕のフィラーとしては、前記球状フィラーAとフィラーBとが特定の配合割合で配合された混合フィラー(フィラーC)が使用され、該フィラーC及び光重合開始剤の配合量は、重合性単量体100重量部に対してそれぞれ100〜1900重量部及び0.01〜10重量部である。基本的に上記のような組成を有することにより、本発明の光重合性歯科用修復材料は、硬化後の機械的強度、表面滑沢性、及び対合歯非摩損性が優れたものとなる。
【0016】
ここで、上記重合性単量体(モノマー)としては、一般的な光硬化性歯科用修復材料で使用可能な従来公知の重合性単量体が何ら制限無く使用できる。好適に使用できる重合性単量体としてはアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する重合可能なモノマーが挙げられ、この様な重合性単量体の具体例としては下記(I−1)〜(I−4)に示される各モノマーが挙げられる。
【0017】
(I−1) 単官能性ビニルモノマー
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等。
【0018】
(I−2) ニ官能性ビニルモノマー
(i) 芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、あるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0019】
(ii) 脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等。
【0020】
(I−3) 三官能性ビニルモノマー
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0021】
(I−4) 四官能性ビニルモノマー
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
【0022】
これらの重合性単量体は単独で用いることもできるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
本発明の光硬化性歯科用修復材料で使用するフィラーCは、平均粒子径が0.1μmより大きく1μm以下の範囲にある略球状の無機酸化物(球状フィラーA)40〜99重量%と、平均粒子径が0.1μm以下の無機酸化物の微粒子(フィラーB)60〜1重量%とからなる
球状フィラーAは、平均粒子径が0.1μmを越え1μm以下の範囲にある略球状無機粒子であれば公知のものが特に制限なく使用可能である。ここで略球状とは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上であることを意味する。フィラーAの形状が針状、板状、或いは破砕粒に多く見られるいわゆる不定形であったり、略球状であってもその平均粒子径が上記範囲外の時には、高い機械的強度、及び優れた表面滑沢性が得られない。また、フィラーAの平均粒子径が1μmを越えるときは硬化体の対合歯非摩損性が低下する。ここで、平均粒子径とは平均体積粒子径を意味する(フィラーBについても同様である)。
【0023】
球状フィラーAは、上記条件を満足するものであればその材質(成分)は特に限定されないが、非晶質シリカ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、石英、アルミナ等の無機酸化物であるのが一般的である。これら無機酸化物としては、高温で焼成する際に緻密なものを得やすくする等の目的で、少量の周期律表第I族の金属の酸化物を無機酸化物中に存在させた複合酸化物も用いることもできる。球状フィラーAの材質としては、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアとを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。
【0024】
また、球状フィラーAは、その平均粒子径が上記範囲内にあれば、必ずしも単一のフィラーである必要はなく、例えば特公平3−10603号に示されるように、平均粒子径や材質(成分)が異なるフィラーを混合したものであってよい。
【0025】
また、上記無機粒子の粒子径分布は特に限定されないが、粒子径の変動係数が0.3以内にあるような単分散性に優れたものである場合には、本発明の光硬化性歯科用修復材料の操作性が良好となる。
【0026】
球形フィラーAの製造方法は特に限定されないが、工業的には金属アルコキシドの加水分解によって製造するのが一般的である。また、球形フィラーAの表面安定性を保持するために表面のシラノール基を減ずるのが好ましく、そのためには、500〜1000℃の温度で焼成する手段がしばしば好適に採用される。
【0027】
本発明で使用されるフィラーBは、その平均粒子径が0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μmの範囲である無機微粒子であれば特に限定されない。フィラーBの平均粒子径が0.1μmを越える場合には、対合歯非摩損性が低下する。
【0028】
フィラーBの粒子の形状は、特に限定されず略球状、針状、板状、不定形状等任意の形状を取り得る。しかしながら、硬化体の強度や表面滑沢性の点からは、略球状の粒子を用いるのが好適である。また、その材質(成分)も特に限定されず、球状フィラーAと同様の材質のものが制限無く使用できる。
【0029】
なお、フィラーBは、平均粒子径が上記範囲にある限り必ずしも単一のフィラーからなるものである必要はなく、平均粒子径や材質(成分)の異なる2つあるいはそれ以上の混合フィラーであってもよい。
【0030】
一般に好適に使用されるフィラーBを具体的に例示すると、例えば超微粉末シリカ、超微粉末アルミナ、超微粉末ジルコニア、超微粉末チタニア、非晶質シリカ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、石英、アルミナ等の無機酸化物である。さらに、上記無機酸化物を高温で焼成する際に緻密なものを得やすくする等の目的で、少量の周期律表第I族の金属の酸化物を無機酸化物中に存在させた複合酸化物も用いることができる。
【0031】
本発明で使用するフィラーCは、上記球状フィラーAとフィラーBの混合物からなるが、当該両フィラーの配合割合は、球状フィラーAが40〜99重量%であり、フィラーBが60〜1重量%である。この様な配合割合でないと、硬化体の機械的強度と表面滑沢性及び対合歯非摩損性の両立ができない。フィラーCにおける、上記両フィラーの好適な配合割合は、球状フィラーA60〜99重量%、フィラーB40〜1重量%であり、特に好適な配合割合は、球状フィラーA60〜70重量%、フィラーB40〜30重量%である。
【0032】
なお、フィラーCには、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に平均粒子径が1μmを越える無機フィラーを少量添加することもできる。
【0033】
また、フィラーCは、重合性単量体への分散性を改良する目的でその表面を疎水化することが好ましい。かかる疎水化処理は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。代表的な疎水化処理方法を例示すれば、疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ−メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物による処理や、チタネート系カップリング剤を用いる方法、粒子表面に前記重合性単量体をグラフト重合させる方法がある。この様な処理は球状フィラーA及びフィラーBを混合した後に行っても良く、それぞれのフィラーについて予め行っておいても良い。
【0034】
本発明の光硬化性歯科用修復材料においては、上記フィラーCの配合量は重合性量体100重量部に対して、100〜1900重量部、好ましくは400〜1200重量部でなければならない。フィラーCの上記配合量が100〜1900重量部の範囲外では、硬化体の機械的強度が低くなる。
【0035】
上記フィラーCにおいては、その構成成分である球状フィラーAとフィラーBとの分散性が高い方が、得られる硬化体の強度の点から好ましい。このような分散性については、特開平8−12305号公報に記載されているように、フィラーCにおける、細孔径0.08μm以上の強凝集細孔の容積で評価することが出来る。
【0036】
ここで、細孔径及び強凝集細孔の容積は水銀圧入法で測定でき、細孔径は加圧時の細孔容積測定で求められた細孔分布から決定され、各径の強凝集細孔の容積は減圧時に測定された細孔容積曲線に基づき、減圧時の測定の際と加圧時の測定の際の細孔径のシフトを考慮して求められる値である。
【0037】
フィラーCにおいては、その細孔径0.08μm以上の強凝集細孔の容積が0.1(cc/g−フィラー)以下となる分散状態のときに、その得られる硬化体の機械的強度が特に高く、この様な分散状態のフィラーCを用いるのが好適である。この様な分散状態は、例えばフィラーCを純水等の媒体中で超高圧衝撃型乳化分散機ナノマイザーを用いて60MPaのような高い処理圧で分散させることによって実現することが出来る。
【0038】
本発明の光硬化性歯科用修復材料においては、光重合開始剤として前記一般式(1)で示されるビスアシルホスフィンオキサイドを使用することが極めて重要である。該ビスアシルホスフィンオキサイドを使用しない場合には、硬化体の機械的強度や表面滑沢性を損なわずに環境光に対する安定性を高めることが出来ない。
【0039】
上記ビスアシルホスフィンオキサイドは前記一般式(1)で示されるものであれば、公知の化合物が何ら制限なく用いられる。ここで、前記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又は置換もしくは非置換のアリール基であり、R6はアルキル基、アルケニル基、又は置換もしくは非置換のアリール基である。
【0040】
前記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5で示されるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子の各ハロゲン原子が好適に使用される。
【0041】
また、前記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5で示されるアルキル基、およびアルケニル基は特に限定されないが、一般的には炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のものが好適である。一般に好適に使用される該アルキル基の具体例を提示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基等が挙げられ、該アルケニル基としては、アリル基、3−ブテニル基、3−オクテニル基等が挙げられる。
【0042】
また、前記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5で示されるアルコキシ基、アルキルチオ基は特に限定されないが、一般的には炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基を含む基が好適である。一般に好適に使用される該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられ、該アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基等が挙げられる。
【0043】
さらに、前記一般式(1)中、R6で示されるアルキル基またはアルケニル基の炭素数も特に限定されないが、一般的には炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のものが好適である。一般に好適に使用される該アルキル基またはアルケニル基としては前記したものと同様な基が挙げられる。
【0044】
さらにまた、前記一般式(1)中、R6で示されるアリール基は、特に制限はないが、一般に好適なアリール基を例示すれば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メトキシフェニル基、ジクロロフェニル基等が挙げられる。本発明で好適に使用される上記ビスアシルホスフィンオキサイドを具体的に例示すると、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
当該ビスアシルホスフィンオキサイドは1種あるいは2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0046】
該ビスアシルホスフィンオキサイドの添加量は重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。添加量が重合性単量体100重量部に対して0.01未満の場合には、重合が十分に進行せず、10重量部よりも多い場合には、硬化体の諸物性、特に耐光性の低下や着色が大きくなるため好ましくない。
【0047】
なお、本発明においては、前記ビスアシルホスフィンオキサイドは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱重合用及び/又は他の光重合開始剤と併用する事もできる。但し、他の光重合開始剤と併用する場合には、環境光に対する安定性を損なわないために当該他の光重合開始剤の使用量は重合性単量体100重量部に対して5重量部、好ましくは3重量部以下である必要がある。併用可能な他の重合開始剤に何等制限はないが、好適に使用される他の重合開始剤としては次のようなものが挙げられる。
【0048】
即ち、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。
【0049】
また、紫外線または可視光線重合開始剤として、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4−メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3−ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナントラキノン、9,10−アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体が挙げられる。
【0050】
上記他の重合開始剤はそれぞれ単独で併用されるだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。
【0051】
さらに本発明の光硬化性歯科用修復材では、前記ビスアシルホスフィンオキサイドをアミン化合物と組み合わせて用いることにより、得られる硬化体の強度を更に高くすることもできる。
【0052】
好適に使用可能なアミン化合物を具体的に例示すれば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、アニリン等の1級のアミン化合物;N−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン等の2級アミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジベンジルアニリン、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N’−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N’−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N’−ジメチル−p−トルイジン、N,N’−ジエチル−p−トルイジン等の第3級アミン化合物が挙げられる。これらアミン化合物の中でも第3級アミン化合物が効果、操作性等の点で好適である。
【0053】
当該アミン化合物は1種あるいは2種以上を混合して用いてもよく、また添加量は、重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部添加するのがよい。
【0054】
また、本発明の光重合性歯科用修復材料には、その効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0055】
本発明の光硬化性歯科用修復材は、一般に、前記各必須成分及び必要に応じて各任意成分を所定量とり、これらを混合して真空脱泡し、一旦ペースト状組成物とした後、歯牙の形態に成形した後、硬化させて使用される。
【0056】
その一般的な成形、硬化方法としては、(1)修復すべき歯の窩洞に直接充填し、歯牙の形に形成した後に専用の光照射器にて強力な光を照射して重合硬化させる方法、(2)口腔外で支台模型上、または金属フレーム上に築盛し、歯牙の形に形成して重合硬化させてから歯科用接着剤等を用いて口腔内に装着して歯の修復を行う方法等が挙げられる。
【0057】
本発明の修復材料を硬化させるための光源としては、光重合開始剤であるビスアシルスルフィンオキサイドの光分解に有効な波長、即ち250〜500nmの範囲の波長光を放射するものが適当である。好適に用いられる光源用のランプとしては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、高化学蛍光管、キセノンランプ、ハロゲンランプを挙げることができる。照射時間はランプの輝度および照射距離に依存するが、この種の作業の常識となっている照射時間(1秒〜10分)で充分であるようにランプの輝度と照射距離は設定すればよい。
【0058】
光照射により硬化した硬化体は、そのままでも修復材料として使用可能であるが、加熱を行うと更に機械的強度が増大し、特に歯冠材料として好ましいものとなる。効果的な加熱温度は80〜120℃であって、1分以上の加熱時間を行うのが好適である。加熱の時期は光照射により硬化が起きた時点以降であれば、築盛されたペーストが流れて歯冠の形態が崩れることもない。
【0059】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0060】
なお、実施例、および比較例で用いた重合性単量体、光重合開始剤、アミン化合物は以下の通りである。
【0061】
(a)重合性単量体
ビスメタクリロイルエトキシフェニルプロパン(以下、D−2.6Eと略す。)
トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略す。)
1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2−4−トリメチルヘキサン(以下、UDMAと略す。)
(b)光重合開始剤
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(以下、BAPO−1と略す。)
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルフェニルホスフィンオキサイド(以下、BAPO−2と略す。)
カンファーキノン(以下、CQと略す。)
(c)アミン
4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(以下、DMBEと略す。)
ジメチルアミノ−p−トルイジン(以下、DMPTと略す。)
(d)フィラー
球状シリカ−ジルコニア、平均粒子径;0.52μm(以下、A−1と略す。)
球状シリカ、平均粒子径;0.91μm(以下、A−2と略す。)
球状シリカ、平均粒子径;1.89μm(以下、A−3と略す)
球状シリカ−チタニア、平均粒子径;0.08μm(以下、B−1と略す。)
微粉末シリカ、株式会社トクヤマ製、レオロシールQS−102、比表面積;200m2/g、平均粒子径約0.005μm(以下、B−2と略す。)
また、以下の実施例、比較例に示したフィラーの強凝集細孔容積、光硬化性組成物の調製、硬化特性(環境光安定性、硬化深度、表面未重合量、色調変化量)、硬化体の機械的強度(曲げ強度、破壊靭性値)および対合歯磨耗深さの測定は以下の方法に従った。
【0062】
(1)強凝集細孔容積
充分に乾燥させたフィラー約0.2gを計り採り、水銀圧入法細孔分布測定装置(カルロエルバ製、ポロシメーター2000)にて、加圧時及び減圧時の細孔径および細孔分布を測定した。この結果から、特開平8−12305号公報に記載の方法に従って0.08μm以上の細孔径を有する強凝集細孔の容積(以下、単に凝集細孔容積という。)を求めた。
【0063】
(2)光硬化性歯科用材料の調製
重合性単量体に対し所定量の光重合開始剤を加え暗所下にて均一に溶解して得た重合性単量体溶液と所定量のフィラーとをメノウ乳鉢に入れ、暗所にて十分に混練して真空脱法してペースト状の均一な硬化性組成物とした。
【0064】
(3)環境光安定性
ペースト状の硬化性組成物試料表面が10000ルックスになるように光源とと試料との距離を設定した。光源には、15W蛍光灯(松下電器製、商品名パルック)を用い、試料表面の照度は、照度計(東京硝子器械製、デジタルルックスメーター FLX−1330)を用いて測定した。
【0065】
作製したペースト状の硬化性組成物を白色練和紙に米粒大に数個採り、試料とした。これらの試料に上記蛍光灯の光を照射しながら、10秒ごとに試料を押しつぶし、試料内部が硬化し始めた時点を操作余裕時間とし、環境光安定性の指標とした。
【0066】
(4)硬化深度
調製した光硬化性歯科用材料を直径4mm、深さ10mmの円筒状の孔を有するステンレス製割型に填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接後、可視光線照射器(トクヤマ製、トクソーボックスライト)を用いて圧接面から3分間照射した。次いで、割型より重合硬化体を取り出し、未硬化部分をプラスチックスパチュラを用いて削り取り、マイクロメーターを用い重合硬化体の長さを測定し、その長さを硬化深度とした。
【0067】
(5)表面未重合量の測定
調製した光硬化性歯科用材料を直径6mm、深さ1.5mmの円筒状の孔を有するポリアセタール製割型に填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接後、可視光線照射器(トクヤマ製、トクソーボックスライト)を用いて、圧接面から1分間照射した。次いで割型より重合硬化体を取り出し、エタノールにて超音波洗浄を3分間行った。洗浄前後の重量差を測定し、洗浄によって除かれた重量を洗浄前の重量で除した値を表面未重合量とし、%で示した。該値は硬化体を研磨したときの表面滑沢性と相関しており、該値が小さいほど表面滑沢性が良好となる。
【0068】
(6)硬化体の機械的強度の測定
上記光硬化性歯科用材料を可視光線照射器(トクヤマ製、トクソーボックスライト、)を用いて、5分間照射した後、更に加熱重合器(トクヤマ製、TP−1000)にて100℃15分間重合させた。その後37℃水中に24時間浸漬した後に試料片として使用した。
【0069】
(6−1)曲げ強度
2×2×25mmの角柱状の試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG−5000D)にて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定した。
【0070】
(6−2)破壊靱性値
幅2×高さ4×長さ20mmの角柱状の試料片を作製し、その高さ方向にカッターで約2mmの亀裂を入れ、片側切り欠き入り3点曲げ試料片を作製する。この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG−5000D)に装着し、支点間距離16mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ試験を行い、その破壊強度から破壊靱性値を算出した。
【0071】
(7)対合歯磨耗深さ
調製した光硬化性歯科用材料を直径6mm、深さ6mmの円筒状の孔を有するステンレス製割型に填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接後、可視光線照射器(トクヤマ製、トクソーパワーライト)を用いて圧接面および底面に各30秒間照射した。硬化体を型から取り出し、加熱重合器(トクヤマ製、TP−1000)にて100℃15分間重合させた。この試験片の底面を回転させながら37℃注水下にて牛歯エナメル質底面に荷重100gで押しつけ、10000回転の磨耗を行った。表面粗さ計(東京精密製、サーフコム570A)で牛歯エナメル質平面上の段差を測定し、対合歯磨耗深さを求めた。該値は、硬化体の対合歯非磨損性と相関しており、該値が小さいほど対合歯非摩損性が良好となる。
【0072】
(8)色調変化量の測定
調製した光硬化性歯科用材料を直径7mm、深さ3mmの円筒状の孔を有するポリアセタール製型に填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接後、ペーストの色調を色差計(東京電色製、TC−1800MKII)を用いて測定した。その後、可視光線照射器(トクヤマ製、トクソーパワーライト)を用いて圧接面および底面に各30秒間照射し、同様に硬化体の色調を測定した。下式により硬化前後の色調変化量を求めた。
【0073】
△L*=L1 *−L2 *
△a*=a1 *−a2 *
△b*=b1 *−b2 *
△Eab *=(△L*2+△a*2+△b*2)1/2
ここで、Lは明度指数、a、bは色質指数、(L1 *,a1 *,b1 *)はペーストの色座標値、(L2 *,a2 *,b2 *)は硬化体の色座標値、△Eab *は硬化前後の色調変化量であり、△Eab *の値が大きい程変色の度合いが大きいことを意味する。
【0074】
実施例1
A−1(60g)とB−1(40g)とを純水中に導入し、超高圧衝撃型乳化分散機(特殊機化工業製、ナノマイザーNM−LA31)にて処理圧力60MPaで粒子を分散させた。γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いて表面処理を行った後に溶媒を留去し乾燥しフィラーCを得た。このフィラーCの細孔分布を測定した結果、0.08μm以上の細孔径を有する強凝集細孔の容積は0.02cc/gであった。一方、重合性単量体としてD−2.6E (70重量部)、3G(15重量部)および、UDMA(15重量部)を用い、これに重合開始剤としてBAPO−1(0.3重量部)を加え暗所下にて溶解し均一溶液を得た。前記単量体溶液(100重量部)にフィラー(450重量部)を加えペースト状の均一な硬化性組成物を得た。この組成物について環境光安定性、硬化深度、表面未重合量、曲げ強度、破壊靭性値、色調変化量および対合歯磨耗深さを測定した。その結果は、環境光安定性が60秒、硬化深度が4.3mm、表面未重合量が1.9%、曲げ強度が235MPa、破壊靭性値が2.3MPam1/2、△Eab *が5.5、対合歯磨耗深さが1.6μmであった。
【0075】
実施例2
表1に示すように、実施例1と同じ単量体およびフィラー組成を用い、BAPO−1のかわりにBAPO−2を用いて同様な測定を行った。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
実施例3〜4
実施例1と同じ単量体およびフィラー組成を用い、光重合開始剤BAPO−1に表1に示したアミンを加えて同様な測定を行った。結果をあわせて表2に示す。実施例5〜6
実施例2と同じ単量体およびフィラー組成を用い、光重合開始剤BAPO−2に表1に示したアミンを加えて同様な測定を行った。結果をあわせて表2に示す。実施例7〜8
実施例1と同じ単量体および光重合開始剤を用い、フィラー組成を表1に示したフィラーにかえて同様な測定を行った。結果をあわせて表2に示す。
【0079】
実施例9
実施例1でA−1とB−1の混合と分散を容量2リットルのボールミルを用いて2時間行った以外は同様に行った。結果をあわせて表2に示す。
【0080】
実施例10
実施例1でフィラー組成がフィラーA−1を50重量%、フィラーB−1を50重量%とした以外は同様に行った。結果をあわせて表2に示す。
【0081】
比較例1〜2
実施例1と同じ単量体およびフィラー組成を用い、BAPO−1のかわりに表1に示した光重合開始剤を用いて同様な測定を行った。結果をあわせて表2に示す。
【0082】
比較例1は光重合触媒としてCQを用いた例を示したが、表面未重合量、曲げ強度および破壊靭性値は良好であったものの、実施例と比較して色調変化量は増大し、環境光安定性は低下した。
【0083】
比較例2は光重合触媒としてCQを用い、添加量を減少させた例を示したが、実施例と比較して、環境光の安定性、色調変化量は良好であったものの、表面未重合量の増加、曲げ強度および破壊靭性値の低下を招いた。
【0084】
比較例3
実施例1と同じ単量体および光重合開始剤を用い、フィラー組成を表1に示したフィラーにかえて同様な測定を行った。結果をあわせて表2に示す。
【0085】
比較例3はフィラーAとして平均粒子径1.89μmの球状シリカを用いた例を示したが、硬化体の機械的強度は優れていたが、対合歯磨耗深さが大きかった。
【0086】
【発明の効果】
本発明の光硬化性歯科用修復材料は、従来修復材の“高い機械的強度、高い表面滑沢性、高い対合歯非摩損性、及び色調変化が少ない”と言う優れた特徴を保持したまま、更に環境光に対する安定性が高いという特徴を有する。
【0087】
即ち、本発明は、従来修復材の長所を保ったまま、使用に際しての操作性(作業性)を改良するという効果を奏する。
Claims (3)
- 重合性単量体〔I〕100重量部、光重合開始剤〔II〕0.01〜10重量部、並びに平均粒子径が0.1μmを越え1μm以下の範囲にある略球状無機粒子(A)40〜99重量%、及び平均粒子径が0.1μm以下である無機微粒子(B)60〜1重量%からなるフィラー〔III〕100〜1900重量部を含有してなる光硬化性歯科用修復材料において、光重合開始剤が下記一般式(1)
で示されるビスアシルホスフィンオキサイドであることを特徴とする光硬化性歯科用修復材料。 - フィラー〔III〕が平均粒子径が0.1μmを越え1μm以下の範囲にある略球状無機粒子(A)60〜99重量%、及び平均粒子径が0.1μm以下である無機微粒子(B)40〜1重量%からなる請求項1記載の光硬化性歯科用修復材料。
- フィラー〔III〕における、細孔径0.08μm以上の強凝集細孔の容積が0.1(cc/g−フィラー)以下である請求項1又は請求項2記載の光硬化性歯科用修復材料。
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