JPH0655654B2 - 光硬化性歯冠材料および該歯冠材料を用いる歯冠成形法 - Google Patents

光硬化性歯冠材料および該歯冠材料を用いる歯冠成形法

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JPH0655654B2
JPH0655654B2 JP18312687A JP18312687A JPH0655654B2 JP H0655654 B2 JPH0655654 B2 JP H0655654B2 JP 18312687 A JP18312687 A JP 18312687A JP 18312687 A JP18312687 A JP 18312687A JP H0655654 B2 JPH0655654 B2 JP H0655654B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は歯科医療の分野において、天然歯の歯冠の一部
または全体を代替しうる光硬化性歯冠材料および該歯冠
材料を用いる人工歯冠の成形方法に関する。
なお、本発明において歯冠材料とは、口腔外において歯
冠の一部または全体を模した形に成形加工された後口腔
内に装着される材料であつて、例えばインレー、アンレ
ー、クラウン、前装冠および義歯等の成形材料がこれに
相当する。
(従来技術) 歯科医療において、失われた天然歯冠の一部または全体
を、咀嚼機能回復のために、もとの天然歯冠と同一の形
態を有する人工材料を用いて補う治療法が一般的に行わ
れている。
従来より、この目的のためには、金属鋳造物(例えば、
インレー、アンレー、クラウン)や、陶材または硬質レ
ジンを前装した金属鋳造冠、さらに陶歯やレジン歯が使
用目的・使用部位に合せて選択され、使われてきたが、
最近では重合性単量体、フイラーおよび重合開始剤とか
らなるコンポジツトレジンも歯冠材料として用いられる
ようになつてきた。その理由としては、天然歯に近い色
調・透明感の再現が容易でかつ材料コストが安価な上、
成形方法が陶材や金属のそれに比べて簡易で経済的なメ
リツトが大きいと言う特長を有しかつ機械的強度は従来
の硬質レジンを凌く点が挙げられる。
コンポジツトレジンを歯冠の形態に成形する方法には
(1)粘度が低いスラリー状のコンポジツトレジンを鋳型
に流し込み加熱重合する方法,(2)粉・液型のコンポジ
ツトレジンを筆積み法で支台模型または金属フレーム上
に築盛し、加熱重合する方法,(3)形態保持性のあるペ
ースト状コンポジツトレジンを支台模型上、または金属
フレーム上に築盛し、光重合する方法(特開昭54−14
2895)があるが、作業性が最も優れている(3)が主流と
なりつつある。
光硬化(または光重合)性のコンポジツトレジン系歯冠
材料に使用される光重合開始剤としては紫外線に対して
活性な、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチル
エーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベン
ゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケター
ル、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール
類、ベンゾフエノン、4,4′−ジメチルベンゾフエノ
ン、4−メタクリロキシベンゾフエノンなどのベンゾフ
エノン類および可視光線に対して活性な、ジアセチル、
2,3−ペンタジオンベンジル、カンフアーキノン、
9,10−フエナントラキノン、9,10−アントラキ
ノンなどのα−ジケトン類、これらのα−ジケトン類と
還元剤、例えば第3級アミン、アルデヒド、メルカプタ
ン、バルビツール酸誘導体などとの組み合せが公知であ
る。
コンポジツトレジンのその他の成分である重合性単量体
としては多種類の多官能性メタクリレートおよび多官能
性アクリレート類が公知であり、またフイラーとしては
石英、ガラスなどの無機フイラーの他、粒径が0.1μ以
下の超微粒子シリカと有機高分子を複合化した有機複合
フイラーなどが知られている。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、上述のような組成を持つ光硬化性コンポ
ジツトレジンを用いて人工歯冠を成形するに当つては、
材料の性能に関する幾つかの問題点が存在する。
第1点は色調に関する。コンポジツトレジンの審美性は
金属材料のそれに比して格段に優れているが、陶材と比
べると決定的に劣つていると言う評価が一般的に定着し
ている。劣るとされている理由の1つに変色の問題があ
る。コンポジツトレジンの変色原因はいくつかあるが、
その中でも光重合開始剤に起因するものが最も技術的に
克服が困難な問題として残されている。即ち、前述した
公知の光重合開始剤の総べては下記の3つ期間のいずれ
かまたは総べてにおいて許容し難い変色を引き起こし、
歯冠材料としての審美性を損なわしめる。
(1)コンポジツトレジンの調合時からユーザーに渡つて
使用されるまでの貯蔵期間内の変色。
(2)成形作業期間内の変色。
(3)患者の口腔内に装着されて以後の期間内の変色。
(1)は光重合開始剤の保存安定性にかかわる問題で紫外
線重合開始剤、可視光重合開始剤ともにあてはまる問題
である。(2)は可視光重合開始剤の場合に深刻な問題
で、光反応の進行に伴つて重合開始剤本来の色が退色、
場合によつては濃色化するためにコンポジツトレジンが
変色する。また加熱が行われる場合には、紫外・可視を
問わずすべての光重合開始剤において問題となる。(3)
は残存している重合開始剤またはその光反応生成物が紫
外線によつて変色するか、または暗反応、例えば酸化に
よつて変色することに由来し、すべての光重合開始剤に
おいて問題となる。
第2点は、機械的強度に関する。コンポジツトレジンの
機械的強度は使用されるフイラーの種類、その表面処理
法、重合性単量体の種類、フイラーと重合性単量体の混
合比率および重合性単量体の重合率に依存する。これ等
の因子を最適化する事により高強度のコンポジツトレジ
ンを得ようとする試みは多数行われているが、臼歯部の
歯冠材料として用いるには、なお強度が不充分であり、
コンポジツトレジンの歯冠材料としての用途はもつぱら
前歯部に限定されている。
即ち、本発明の目的は色調安定性と機械的強度に優れた
光硬化性コンポジツトレジン歯冠材料を提供することに
ある。また本発明の他の目的は光硬化法による、色調安
定性と機械的強度に優れた歯冠成形法を提供することに
ある。
(問題を解決するための手段) 本発明者等は光硬化性コンポジツトレジンの色調安定性
および機械的強度に及ぼす光重合開始剤の影響を明らか
にすべく、各種開始剤の検討を続けてきた。また色調安
定性と機械的強度に優れた光硬化性歯冠材料の成形法に
ついても鋭意研究を続けてきた。その結果、アシルホス
フインオキサイドを光重合開始剤として用いた場合、コ
ンポジツトレジンの変色は如何なる公知技術よりも小さ
く、かつ機械的強度の点においても優れていることを見
い出し、本発明を完成させるに至つた。
即ち、本発明は (1) (a)少なくとも1種の多官能性メタクリレートまた
は多官能性アクリレートからなる重合性単量体、(b)フ
イラーとして特定のアルミナおよび(c)アシルホスフイ
ンオキサイドからなることを特徴とする光硬化性歯冠材
料および (2) 該歯冠材料を歯型模型上または金属フレーム上に
歯冠の形態を整えながら築盛し、該築盛体に紫外および
/または可視光線を照射して光硬化させることを特徴と
する該歯冠材料を用いる歯冠成形法である。
本発明の最大の特徴は光重合開始剤としてアシルホスフ
インオキサイドを用いる点にある。特開昭55-15471に開
示されるアシルホスフインオキサイドが本発明において
も好適に用いられるが下記のものは特に有利に用いられ
る。
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフエニルホスフイ
ンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフエニ
ルホスフインオキサイド、2,6−ジクロルベンゾイル
ゾフエニルホスフインオキサイド、2,3,5,6−テ
トラメチルベンゾイルジフエニルホスフインオキサイ
ド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフエニルホスフ
イン酸メチルエステル、2,6−ジメチルベンゾイルジ
フエニルホスフインオキサイド、ピバロイルホスホン酸
ジメチルエステル、ピバロイルホスホン酸ジエチルエス
テル、ピバロイルジフエニルホスフインオキサイド、p
−トルイルジフエニルホスフインオキサイド、4−(te
rtブチル)ベンゾイルジフエニルホスフインオキサイ
ド、テレフタロイル−ビス(ジフエニルホスフインオキ
サイド)、2−メチルベンゾイルジフエニルホスフイン
オキサイド、バーサトイルジフエニルホスフインオキサ
イド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフエニル
ホスフインオキサイド、1−メチルシクロヘキサノイル
ジフエニルホスフインオキサイド、ピバロイルフエニル
ホスフイン酸メチルエステル、ピバロイルフエニルホス
フイン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチ
ルベンゾイルフエニルホスフイン酸イソプロピルエステ
ル、2,4,6−トリメチルベンゾイルメチルホスフイ
ン酸メチルエステル。なかでも、2,4,6−トリメチ
ルベンゾイルジフエニルホスフインオキサイドは本発明
に最も適したアシルホスフインオキサイドである。これ
らのアシルホスフインオキサイドは重合性単量体(a)に
対し0.01〜10重量%の範囲で用いられるのが望まし
い。
本発明においてはアシルホスフインホスフインオキサイ
ドの他に、公知の光重合開始剤、例えばベンジルジメチ
ルケタール、α−ヒドロキシイソブチロフエノン、ジエ
トキシアセトフエノン、ベンゾフエノン、2−メチルチ
オキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−
クロルチオキサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベ
ンゾインイソプロピルエーテル、カンフアーキノン、ジ
アセチル、ベンジル、9,10−フエナントラキノンを
組み合せて使用する事もできる。その他過酸化物、アゾ
化合物、第2級アミン、第3級アミンと組み合せること
により重合活性の相乗効果を得ることができる。
本発明において使用される多官能性メタクリレートまた
は多官能性アクリレートは通常歯科用コンポジツトレジ
ンに用いられている(メタ)アクリレート系重合性単量
体〔メタクリレートおよびアクリレートを意味する〕が
好適に用いられる。例えばエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アク
リレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリ
レート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレ
ート、2,2−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシポリ
エトキシフエニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3
−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)
フエニル〕プロパン(Bis−GMAと称することがある)、
2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒ
ドロキシプロポキシ)フエニル〕プロパン、グリセリン
ジ(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリ
レート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレー
ト、トリス(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌ
レート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレー
トなどの3官能性(メタ)アクリレート、2,2,4−
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとグリセリ
ンジ(メタ)アクリレートとの付化合物ペンタエリスリ
トールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能性(メ
タ)アクリレートを挙げることができる。これらの多官
能性(メタ)アクリレートは単独または数種を混合して
重合性単量体として用いられるが、この他メチル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルア
ミノエチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メ
タ)アクリレートを40重量%以下の範囲で混合して使
用することも可能である。また、特開昭60-197609号等
に開示されている、歯牙に対して接着性のある、酸性基
を有するビニルモノマー〔4−メタクリルオキシエチル
トリメリテー、4−メタクリルオキシエチルトリメリテ
ート無水物、メタクリロキシエチルフエニルアシドホス
フエート、ビス(2−メタクリロキシエチル)アシツド
ホスフエート、2−メタクリロイルオキシエチルジハイ
ドロジエンホスフエート、10−メタクリロイルオキシ
デシルジハイドロジエンホスフエート等の単官能性・多
官能性(メタ)アクリレート〕も用いることができる。
本発明で用いられるフイラーは従来歯科用コンポジツト
レジンには使用が見い出されていなかつた屈折率が1.60
〜1.70の範囲にありその粒径の範囲が0.005〜0.1μm
で、その比表面積が30〜300m2/gである超微粒子ア
ルミナが好適に使用される。ところでα−アルミナの屈
折率は1.76〜1.768で通常の(メタ)アクリレートの屈
折率(1.50〜1.60)よりかなり高いため、これを用いて
得られるコンポジツトレジンは強く白濁し、審美性の点
で歯冠材料として不適当である。一方、屈折率が1.60〜
1.70の範囲にあるアルミナはγ,δ,χ,κ,ρ,η,
θの結晶相を単独または混合状態で含むものであり、α
−アルミナとは結晶学的に区別される。この種の低屈折
率アルミナを用いることにより歯冠材料の審美性を保持
し、かつ機械的強度に優れたコンポジツトレジンを得る
ことができる。一般にアルミナ粉末はラジカル重合を阻
害する傾向があることが知られている。したがつて、ア
ルミナをフイラーとしたコンポジツトレジンではシリカ
をフイラーとした場合に比べ重合率がやや低くなり、ア
ルミナによる物性向上効果が滅殺されるおそれがある
が、アシルホスフインオキサイドを光重合開始剤とする
本発明においてはこのようなことはなく、アルミナをフ
イラーとして用いることにより高物性が得られる。本発
明において、フイラーは該アルミナ単独であつても良い
が、その一部を他の公知の歯科用フイラーとの併用と
し、好ましくは粒径が0.1μm以上のシリカおよび/ま
たはガラス粉末と併用される。これらのフイラーは、シ
ランカツプリング剤、チタネート系カツプリング剤等の
表面処理剤を用いてあらかじめ表面処理を行つてから重
合性単量体中に練り込まれる。フイラーの適当な配合量
は重合性単量体100重量部当りフイラー100〜20
00重量部である。
本発明においては前記の3種類の必須成分の他通常各種
の添加剤、例えば重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、染
料、紫外線吸収剤などが添加される。これらの成分をす
べて混合して一旦ペースト状の光硬化性歯冠材料とした
後、歯冠の形態に成形が行われる。
次に、本発明の他の目的である光硬化による歯冠成形法
を説明する。
成形されるべき歯冠がインレー、アンレー、クラウンで
ある場合には、患者の口腔内印象から作製された窩洞歯
または支台歯の歯型模型(通常は石膏製)の上に、前装
冠である場合にはあらかじめ鋳造された金属フレーム上
に、本発明歯冠材料のペーストを歯冠形態を再現するよ
うに築盛する。この時、天然歯の色調にできるだけ近似
した色調を再現する目的で、透明度と色の異なる数種類
のペーストを適切に組み合せて積層する手法を採ること
ができる。築盛されたペーストは光照射により硬化させ
て成形されるが、照射の時期は築盛方法によつて適切に
選ばれるべきである。例えば、数種のペーストを積層す
る場合には、一層積層する毎に光照射を行つて硬化させ
る分割照射法が手法上便利である。
本発明の歯冠材料を硬化させるための光源としては、光
重合開始剤であるアシルホスフインオキサイドの光分解
に有効な波長、即ち250〜500nmの範囲の波長光を
放射するものが適当である。好適に用いられるランプと
して、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドラン
プ、高化学螢光管、キセノンランプ、ハロゲンランプを
挙げる事ができる。照射時間はランプの輝度および照射
距離に依存するが、この種の作業の常識となつている照
射時間(1秒〜10分)で充分であるようにランプの輝
度と照射距離は設定されるべきである。
硬化した本発明の成形物はこのままでも歯冠材料として
使用可能であるが、加熱を行うと更に機械的強度が増大
し、歯冠材料として好ましいものとなる。一般に多官能
性単量体を塊状重合させる場合には重合の比較的初期に
固化(ゲル化)が起こるため、生長ラジカルと未反応の
単量体の拡散が著しく遅くなり、重合率がある程度以上
には上がらなくなつてしまうことがある。前述のように
光照射と併せて加熱を行うと拡散が促進されるので高重
合率が得られ、機械的強度の向上に有効であると考えら
れる。効果的な加熱温度は60〜200℃であつて、1
分以上の加熱時間が必要である。200℃を超える温度
では酸化分解による変色が目立つようになるので好まし
くない。加熱の時期は光照射により硬化が起きた時点以
降である。もし加熱が光照射に先立つと築盛されたペー
ストが流れて歯冠の形態が崩れる危険性がある。
硬化作業が終了した成形物は必要に応じて研削器具で削
つて形態修整を行なつてから、磨きをかけて艶出しを行
ない歯冠成形物として完成する。
なお成形物が1本の義歯全体である場合には光透過性の
鋳型内に本発明の歯冠材料ペーストを充填し、鋳型の上
から光照射を行つて成形を行うことも可能である。
(効果) 本発明の光硬化性歯冠材料は光重合開始剤による着色が
ほとんどないため、前歯エナメル質切端部のようにほと
んど無色で半透明な色調を再現するのに非常に適してい
る。また、ペースト状態で保存中、歯冠成形時の光照射
および加熱時、口腔内を模した諸条件下においても色変
化はほとんど認められず、歯冠材料としての審美性を満
足するものである。この点において、色変化が大きい公
知技術を凌ぐものである。さらに本発明の歯冠材料を用
い本発明の成形法で成形された、インレー、アンレー、
クラウンなどは圧縮強度、硬度、耐磨耗性などの機械的
強度が優れており、従来のこの種の材料と比べより長期
間口腔内で機能することが可能となつた。
(実施例) 次に、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例
および比較例に示す諸量の定義及びその測定方法は、以
下の通りである。
(1) 変色試験 以下に示した期間内における変色度を示す尺度として、
サンプルの色度を変色試験期間の前後に測定し、これを
JIS−Z−8729に定められたL*a*b*表色系による
色空間座標上の点としてそれぞれ座標化し、この2点間
の距離(△E)を採用した。即ち、変色の程度△Eは次
式で定義される。
△E={(L1 *-L2 *)2+(a1 *-a2 *)2+(b1 *-b2 *)2}1/2 ここで(L1 *,a1 *,b1 *)は変色試験を行う前に測定
した色座標値で、(L2 *,a2 *,b2 *)は変色試験を行
つた後に測定した色座標値であり、△Eの値が大きい
程、変色の程度が大きいことを意味する。尚色度の測定
は色差計(日本電色製Σ80型)を用い、サンプルの背
後に標準白板を置いて測定した。
i)ペーストの貯蔵期間内の変色(△E1) ペーストを、遮光されたポリプロピレン製の容器に充填
し、これを50℃で30日間保存試験を行つた時の前後
における変色を測定した。ペーストの色度の測定は、厚
さ1mmのガラス板2枚の間に0.85mmのスペーサーを用い
てペーストををはさみ、直径約30mmの円板状に圧延
し、この状態でガラス越しに測定した。
ii)ペーストの光重合前後における変色(△E2) 上記と同じ方法でペーストの色度を測定した後所定の光
照射により重合を行つた。この硬化物をこの状態でガラ
ス越しに色度を測定し、重合前後における変色(△
)を測定した。
iii)硬化物の加熱による変色(△E3) △E2測定のサンプルよりガラス板をとりはずし、これ
を120℃で20分間乾燥空気中で加熱を行い、加熱前
後の変色(△E3)を測定した。
iv)所定の重合を行つた後の硬化物の変色(△E4)厚さ
0.85mm、直径約30mmの円板状の硬化物を70℃の水中
で14日間暗所保存し、その前後における変色(△
4)を測定した。
(2) 圧縮強度 所定の方法により重合した硬化物(直径4mm、高さ4mm
の円柱状)を37℃で24時間水中浸漬したものをサン
プルとし、インストロン万能試験機を用い測定した。
(3) 曲げ強度 所定の方法により重合させた硬化物(2mm×2mm×30
mmの角柱状)を37℃で24時間水中浸漬したものをサ
ンプルとし、インストロン万能試験機を用い測定した。
(4) ブリネル硬度 所定の方法により重合させた硬化物(直径10mm、厚さ
5mmの円板状)を37℃で24時間放置したものをサン
プルとしミクロブリネル硬度計を用い測定した。測定面
は#220のサンドペーパー研磨面である。
(5) 歯ブラシ摩耗量 所定の方法により重合させた硬化物(20mm×30mm×
2mmの板状)をサンプルとした。試験面は#1500の
エメリーペーパーで研磨した後、歯科用研磨デイスク
(3M社製ソフレツクスフアイン )を用いて研磨を行
つた。試験面の上を200gの荷重をかけた歯ブラシで
5000m滑走摩耗させた後、その損失重量を測定し、
体積に換算して摩耗量とした。
(6) 透明度(△L) 所定の方法により重合させた硬化物(直径30mm、厚さ
0.85mmの円板上)に成形したものをサンプルとして用い
た。色差計(日本電色製Σ80型)を用い試験片の背後
に標準白板を置いて色度を測定した場合の明度(L1
と、同じ試験片の背後に標準黒板を置いて色度を測定し
た場合の明度(L2)との差△L=L1−L2を測定し、
透明度の指標とした。この評価方法では△Lの値が大き
いほど透明度が高いことを意味する。
実施例1 2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフエ
ニル)プロパン(分子内にエトキシ基平均2.6個持つも
ので以下D−2.6Eと称する)50重量部、2,2,4
−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルと
グリセリンジメタクリレート2モルとの付加物(以下U
−4THと称する)25重量部、トリエチレングリコー
ルジメタクリレート(以下3Gと称する)25重量部お
よび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフエニルホス
フインオキサイド(以下TMDPOと称する)0.5重量部から
なる単量体溶液を調合した。
一方ランタンガラスセラミツクス(Schott GM31684
)粉末を、該粉末に対し1重量%のγ−メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシランで表面処理を行い無機フ
イラーを得た。前記単量体溶液100.5重量部、無機フイ
ラー300重量部を混合練和して均一にしたものを真空
脱泡し、光重合性組成物を得た。この組成物について△
1,△E2,△E3及び△E4を測定した結果を第1表に
示す。尚、光重合に用いた光源は管球型高圧水銀灯(2
000W、岩崎電機)を用い、管球より10cm離れた位
置にサンプルを据付け、90秒間光照射を行つた。△E
4の測定は△E3の測定を行つた後のサンプルをそのまま
用いた。
実施例2 平均粒径0.02μm(透過型電子顕微鏡により測定)比表
面積100m2/g(BET法により測定)屈折率1.65
(液浸法により測定)、結晶相がδ相とθ相が混在(X
線結晶構造解析より確認)しているアルミナ微粉(日本
アエロジル、Aluminum Oxide−C )を該微粉に対し、
25重量%のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シランで表面処理を行つてフイラーとした。このアルミ
ナフイラー150重量部及び実施例1で用いた単量体溶
液100.5重量部及が無機フイラー250重量部を混合練
和して均一にしたものを真空脱泡し、光重合性組成物を
得た。この組成物について実施例1と同様な方法で△E
1,△E2,△E3及び△E4を測定した結果を第1表に示
す。
比較例1〜3 実施例1と同じ単量体及びフイラー組成を用いTMDPOの
かわりに第1表に示した光重合触媒を用いて同様な測定
を行つた結果をあわせて第1表に示す。
実施例3−1〜3−3 実施例2で用いた光重合性組成物を、同様な方法で光重
合を行つた後、第2表に示したような加熱条件で重合を
追い込んだサンプルについて諸量を測定した結果を第2
表に示した。
実施例4 実施例3と同じ組成物を用い、光重合を行つた後、加熱
を行なわずに諸量を測定した結果を第2表に示した。
実施例5 実施例1と同じ組成物を用い、光重合を行つた後、加熱
を行なわずに諸量を測定した結果を第2表に示した。
実施例6 実施例5のサンプルを第2表に示した条件で加熱したも
のについて諸量を測定した結果をあわせて示した。
比較例4〜6 実施例1と同じモノマー組成及びフイラーを用い、TMDP
Oのかわりに第2表に示した光重合触媒を用いて同様に
諸量を測定した結果をあわせて示した。
実施例7 実施例の光重合性組成物に着色材を加え、硬化後の色度
及び透明度が第3表のようになるペーストを3種類用意
した。(それぞれの色調は歯頚部用、デンチン用、エナ
メル用として適当なものである。)金銀パラジウム合金
(GC社製、キヤストウエル )を鋳造し、上顎中切歯
のレジン前装冠として適当なメタルフレームを作成し
た。このフレームへ金属色を遮蔽するためのオペーカー
〔クルツアー(Kulzer)製、デンタカラー(Dentacolor
)オペーカー、A−20〕を塗布し、キセノンランプ
〔クルツアー(Kulzer)製、デンタカラー(Dentacolor
XS 〕で90秒光照射を行つた。ここに調整した歯頚
部用ペーストを築盛し、30秒光照射を行つた。その上
にデンチン用ペーストを築盛し、30秒光照射を行つた
後さらにまた、その上にエナメル用ペーストを築盛し、
90秒光照射を行つた。引き続きこれを乾燥器の中に入
れ、120℃で20分間加熱した。放冷後、カーボラン
ダムポイントやシリコンポイントで形態修正を行つた
後、バフ研磨を行うことにより、審美性と機械的強度が
良好な前装冠を得た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山内 淳一 岡山県倉敷市酒津青江山2045番地の1 株 式会社クラレ内 (56)参考文献 特開 昭54−142895(JP,A) 特開 昭55−15471(JP,A)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)少なくとも1種の多官能性メタクリ
    レートまたは多官能性アクリレートからなる重合性単量
    体、(b)フイラーとして屈折率が1.60〜1.70の範囲に
    あり、粒径の範囲が0.005〜0.1μmで、比表面積が30〜
    300m/gであるアルミナおよび(c)アシルホスフ
    インオキサイドからなることを特徴とする光硬化性歯冠
    材料。
  2. 【請求項2】アシルホスフインオキサイドが2,4,6
    −トリメチルベンゾイルジフエニルホスフインオキサイ
    ドである特許請求の範囲第1項記載の光硬化性歯冠材
    料。
  3. 【請求項3】(a)少なくとも1種の多官能性メタクリ
    レートまたは多官能性アクリレートからなる重合性単量
    体、(b)フイラーとして屈折率が1.60〜1.70の範囲に
    あり、粒径の範囲が0.005〜0.1μmで、比表面積が30〜
    300m/gであるアルミナおよび(c)アシルホスフ
    インオキサイドからなる光硬化性歯冠材料を歯型模型
    上、または金属フレーム上に歯冠の形態を整えながら築
    盛し、該築盛体に紫外および/または可視光線を照射し
    て光硬化させることを特徴とする歯冠成形法。
  4. 【請求項4】前記築盛体を光硬化させた後または光硬化
    させつつ同時に60〜200℃に加熱し、重合硬化を完了さ
    せる特許請求の範囲第(3)項記載の歯冠成形法。
  5. 【請求項5】アシルホスフインオキサイドが2,4,6
    −トリメチルベンゾイルジフエニルホスフインオキサイ
    ドである特許請求の範囲第(3)項記載の歯冠成形法。
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