JP7075635B2 - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

歯科用硬化性組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7075635B2
JP7075635B2 JP2018134335A JP2018134335A JP7075635B2 JP 7075635 B2 JP7075635 B2 JP 7075635B2 JP 2018134335 A JP2018134335 A JP 2018134335A JP 2018134335 A JP2018134335 A JP 2018134335A JP 7075635 B2 JP7075635 B2 JP 7075635B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
curable composition
meth
less
filler
cured product
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018134335A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020011917A (ja
Inventor
宏 森▲崎▼
宏伸 秋積
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Original Assignee
TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TOKUYMA DENTAL CORPORATION filed Critical TOKUYMA DENTAL CORPORATION
Priority to JP2018134335A priority Critical patent/JP7075635B2/ja
Publication of JP2020011917A publication Critical patent/JP2020011917A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7075635B2 publication Critical patent/JP7075635B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、歯科用硬化性組成物に関する。詳しくは、使用の簡便性が高く且つ審美性に優れた歯科用充填修復材料として好適な歯科用硬化性組成物に関する。
歯科用コンポジットレジン(以下、単に「CR」ともいう。)とは、齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復をするための材料の一種であり、重合性単量体と、無機及び/又は有機のフィラーとを含む硬化性組成物からなる。歯科用コンポジットレジン(CR)を用いた修復(CR修復)は、歯質の切削量を少なくでき、天然歯牙色と同等の色調を付与できることや操作が容易なことから、急速に普及している。また、近年においては、機械的強度の向上や、歯牙との接着力の向上から、前歯部の修復のみならず、高い咬合圧が加わる臼歯部に対しても使用されている。
上記したように審美性の高い修復が可能であることがCR修復の優れた特徴の一つであるが、天然歯は、象牙質およびエナメル質からなり、各部位で色調(色相、彩度、明度)が異なるため、審美性の高い修復を行うためには、修復する歯牙(被修復歯牙)の状態に応じてきめの細かい対応が必要となる。たとえば、修復歯牙の損傷が軽く、窩洞が浅い場合でも、色調が各異なるCRを複数種用意し、この中から、実際の修復歯牙及びその隣接歯牙(以下、「修復歯牙の周辺」とも言う。)と色調が最も良く適合したものを選定して使うことが一般に行われている(非特許文献1参照)。また、窩洞が深いと、歯牙の色調は、単に歯面部(エナメル質部分)の色調だけでなく、透けて見える深層部(象牙質部分)までの色調も融合してグラデーションに富む状態で観取されるため、一定の深さごとに、充填する硬化性ペーストの色調を変え、積層充填して、この微妙な色調を再現している(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
このような要求に応えるため、顔料物質や染料物質を、その種類や配合量を変えて添加することによって、色調が調製された多くのCRが提供されている。ところが、顔料物質や染料物質を用いて色調調整を行ったCRには、CR硬化体中におけるこれら物質が経年劣化によって退色または変色することにより、修復後から時間が経過するに従って変色し、修復部位の外観が天然歯と適合しなくなってしまうことがある。
一方、顔料物質や染料物質を用いずに着色する技術として、媒質中の微粒子による光の反射、干渉、散乱、透過など利用した着色光(以下、単に「干渉光」ともいう。)により発色を生じさせる技術があり(以下、このような原理で発現する色を「構造色」ともいう。)、これら技術を応用して樹脂などの媒体中に無機粒子が分散した複合材料を所期の色に発色させる技術も知られている(特許文献1参照)。
すなわち特許文献1には、たとえば、「重合性単量体成分(A),平均粒子径が230nm~1000nmの範囲内にある無機球状フィラー(B)及び重合開始剤(C)を含み、前記無機球状フィラー(B)を構成する個々の粒子のうち90%以上が平均粒子径の前後の5%の範囲内に存在し、前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率nが前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率nよりも大きいという条件を満足する硬化性組成物」からなり、「厚さ1mmの硬化体を形成した状態で、各々色差計を用いて測定した、黒背景下での着色光のマンセル表色系による測色値の明度(V)が5未満であり、彩度(C)が0.05以上であり、且つ白背景下での着色光のマンセル表色系による測色値の明度(V)が6以上であり、彩度(C)が2未満となる硬化性組成物」が開示されている。そして、特許文献1には上記硬化性組成物からなるCRは、(1)染料物質や顔料物質を用いていないので前記経時変色の問題が起こり難く、(2)(使用する無機球状フィラーの平均粒子径に応じて)象牙色質と同様の色である黄色~赤色に着色することができ、しかも(3)硬化体が被修復歯牙の色と調和し易く、煩雑なシェードテイキングやコンポジットレジンのシェード選択を行うことなく、1種類のコンポジットレジンで広範な色の被修復歯牙に対して天然歯に近い外観の修復を行うことができる、という優れた特徴を有することが記載されている。なお、特許文献1に開示されている硬化性組成物は、深層部に象牙質が位置する窩洞の修復を主目的として黄色~赤色系の着色光を発現するように設計されたものであるため、無機球状フィラー(B)として平均粒子径が230nm以上のものを用いているが、青色系を含めて、その色調にこだわらなければ構造色自体は平均粒子径が100nm以上のものを用いることができる。
特許第6250245号 松村英雄、田上順次監修,「接着YEARBOOK 2006」,第1版,クインテッセンス出版株式会社,2006年8月,p.129-137 宮崎真至著,「コンポジットレジン修復のサイエンス&テクニック」,第1版,クインテッセンス出版株式会社,2010年1月,p.48-49
特許文献1に開示されている硬化性組成物は、CRとして使用した時に前記したような優れた特徴を発揮するものである。ところが、該硬化性組成物は、前記したように深層部に象牙質が位置する窩洞の修復を主目的として設計されたものであり、深層部に象牙質が存在しないようなIII級窩洞(前歯の隣接面窩洞で切縁隅角を含まない窩洞)やIV級窩洞(前歯の隣接面窩洞で切縁隅角を含む窩洞)の修復に用いた場合の色調適合性については検討されていない。
そこで、本発明者らが特許文献1に開示されている硬化性組成物の前歯部(III級窩洞やIV級窩洞)の修復における色調適合性について検討を行ったところ、干渉光により構造色は発現するものの、おそらく硬化体の透明性が高過ぎて、反射光や散乱光が観察者に到達し難くなることが原因と思われるが、修復部が黒っぽく見えてしまう(発現した構造色が目視で認識できない)ことがあること明らかとなった。このような現象は、修復部に層構造を導入し、下地部(修復歯牙の裏側近傍に相当する部分)に透明性の低いCRの硬化体を配置し、表層部(修復歯牙の前面側)に前記硬化性組成物からなるCRを配置するようにすれば解決できると考えられるが、操作が煩雑となることが避けられない。
本発明は、上記したような、構造色による色調調整を行うCRに特有の課題であって、これまで認識されていなかった課題を解決し、顔料物質や染料物質を用いることなく、III級窩洞やIV級窩洞の修復に用いた場合であっても高い色調適合性の得られるCRとして使用可能な歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、引用文献1に開示されている硬化性組成物について、その構造色発現機能を保持したまま、得られる硬化体の透明性を低下させることができれば前記課題を解決することができると考え、鋭意検討を行った。その結果、(1)平均一次粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にある不定形無機フィラーを配合することにより硬化体の透明性を低くすることができること、(2)その時の透明性は、上記不定形無機フィラーの平均一次粒子径およびその配合量により調整可能であること、(3)前記不定形フィラーの添加により透明性を低下させた場合には、その低下の度合いが強くなるに従って、発現する構造色が認識し難くなること、及び(4)前記(2)の知見に基づき不透明性を適度に調節した場合には、発現する構造色について視認性を保持でき、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、 重合性単量体成分(A)、平均一次粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にあり、個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する無機球状フィラー(B)、平均粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にある不定形無機フィラー(C)及び重合開始剤(D)を含んでなり、前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率:nFBは、前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率:nよりも大きく、厚さ1mmの硬化体について、背景を黒色及び白色とした色差計による三刺激値測定で決定されるY刺激値を夫々Y (黒色背景)及びY (白色背景)としたときの両者の比:Y /Y で定義されるコントラスト比が0.3~0.7である硬化体を与える、ことを特徴とする歯科用硬化性組成物である。

上記本発明の歯科用硬化性組成物においては、発現する構造色について有効な視認性を保持できるという観点から、本発明の歯科用硬化性組成物を硬化させて得られる厚さ1mmの硬化体について色差計を用いて測定した、黒背景下での分光反射率曲線において、600nm以上750nm以下の波長領域(黄色~赤色域)内における分光反射率の最大値:SRを、400nm以上500nm以下の波長領域(青色域)内における分光反射率の最大値:SRで除した値として定義される分光反射率比:SR/SRが0.8以上2.0以下の範囲、特に0.9以上1.5以下の範囲となるものであることが好ましい。また、黄色から赤色の構造色を高強度で発現するという観点から、前記無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径が230nm以上350nm以下、特に245nm以上300nm以下であることが好ましく、また、前記重合性単量体(A)100質量部に対する前記無機球状フィラー(B)と前記不定形無機フィラー(C)との合計配合量が100質量部以上1500質量部以下であり、当該合計配合量に占める前記不定形無機フィラー(C)の配合量の割合が5%以上50%以下であることが好ましい。また、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化体によってIII級窩洞やIV級窩洞を修復したときの修復部の色調適合性がより高くなるいという観点から、厚さ1mmの硬化体について、背景を黒色及び白色とした色差計による三刺激値測定で決定されるY刺激値を夫々Y(黒色背景)及びY(白色背景)としたときの両者の比:Y/Yで定義されるコントラスト比がに0.4~0.6である硬化体を与えるものであることが好ましい。
第二の本発明は、前記本発明の歯科用硬化性組成物からなるIII級窩洞及び/又はIV級窩洞修復用の歯科用充填修復材料であり、第三の本発明は、前記本発明の歯科用硬化性組成物の硬化体からなるIII級窩洞及び/又はIV級窩洞修復用歯科材料である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、退色の問題の原因となる染料物質や顔料物質を用いることなく、1種類のみで構造色により周囲に調和したと色調とすることができるという、前記特許文献1に開示された硬化性組成物と同様の効果を奏するばかりでなく、適度な不透明性を有するため、前歯欠損部の修復、特にIII級窩洞やIV級窩洞の修復においても、下地用のCRを用いることなく、1種類で天然歯牙との色調適合性の高い修復を行うことが可能となる。
本発明の最大の特徴は、前記特許文献1に開示されるような構造色を発現する硬化性組成物において、平均粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にある不定形無機フィラー(C)を配合することによって、得られる硬化体に、発現する構造色の視認性を保つことのできるような適度な不透明性を付与した点にある。このことによって、適度な不透明性を硬化体に付与し、たとえば厚さ1mmの硬化体について、背景を黒色及び白色とした色差計による三刺激値測定で決定されるY刺激値を夫々Y(黒色背景)及びY(白色背景)としたときの両者の比:Y/Yで定義されるコントラスト比を0.3~0.7、より好ましくは0.4~0.6の範囲とすることができる。しかも、このときの不透明性は前記したような干渉光による効果を保持できる程度のものであるので、III級窩洞やIV級窩洞の修復に対しても自然な色調を呈する審美修復が可能となる。
このように、本発明は、構造色を発現する硬化性組成物をベースとするものであり、そのベースとなる硬化性組成物の基本組成(各成分やその配合量など)や構造色を発現するために満たすべき条件などは前記特許文献1に開示されている硬化性組成物と基本的には同じである。すなわち、本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体成分(A)、平均一次粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にあり、個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する無機球状フィラー(B)、及び重合開始剤(D)を含み、更に、前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率:nFBは、前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率:nよりも大きい。このような条件を満足することにより、染料物質、顔料物質を用いなくても干渉光、延いてはこれに基づく構造色が明瞭に確認でき、窩洞の深さに関係なく、天然歯に近い、色調適合性の良好な修復が可能となる歯科用硬化性組成物、特に歯科用充填修復材料用の硬化性組成物となる。
ここで、無機球状フィラー(B)の粒径と光の干渉現象との関係は、ブラッグ回折条件に従うと考えられ、無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径に応じた色調の干渉光が発生する(構造色が発現する)。そして、干渉光の発生(構造色の発現)は、色差計を用いた分光反射率を測定することにより確認することができる。ただし、白背景下で測定した場合には、外光(例えばC光源、D65光源)の散乱反射光が強いため干渉による着色光が観察され難くなるので、黒背景下で測定を行う必要がある。黒背景下で測定した場合には、外光が吸収或いは遮光されて発生する干渉光の波長に対応する反射スペクトルを明瞭に確認することができる。なお、前記屈折率の条件を満たさないなどの理由、或いは不定形フィラーのみを添加して無機球状フィラー(B)を添加しないなどの理由により特定色の構造色が発現しない場合に黒背景下で分光反射率測定を行うと、相対的に青色系の反射が強く観測される傾向があり(比較例4~9の分光反射率比:SR/SR参照)、反射スペクトルを見ても青色系の波長領域の強度が黄色~赤色系の波長領域の強度より有意に高くなるのが通常である。これに対し、前記特許文献1に開示される硬化性組成物では、黄色から赤色の波長領域に極大を有するようになっている。本発明では透明性の低下(不透明性の増大)により構造色の発現性は低下するものの、不透明性は適度に制御されているため、黄色から赤色の波長領域の強度は青色系の波長領域の強度と同等以上のレベルとなり、高い色調適合性を得ることが可能となっている。
以下、本発明の歯科用硬化性組成物の各成分について説明する。
<重合性単量体成分(A)>
重合性単量体成分(A)としては、公知のものが特に制限なく使用できる。歯科用途として見た場合、重合速度の観点から、ラジカル重合性、或いはカチオン重合性の単量体が好ましい。特に好ましいラジカル重合性単量体としては(メタ)アクリル化合物である以下に例示する(メタ)アクリレート類が挙げられ、また特に好ましいカチオン重合性単量体としては、エポキシ類、オキセタン類が挙げられる。 一般に、好適に使用される(メタ)アクリル化合物として、(メタ)アクリレート類を例示すれば、下記(イ)~(ニ)に示されるものが挙げられる。
(イ)単官能重合性単量体
(イ-i)酸性基や水酸基を有さないもの
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど。
(イ-ii)酸性基を有するもの
(メタ)アクリル酸、N-(メタ)アクリロイルグリシン、N-(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸、O-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N-(メタ)アクリロイル-p-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-o-アミノ安息香酸、p-ビニル安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸、N-(メタ)アクリロイル-4-アミノサリチル酸等及びこれらの化合物のカルボキシル基を酸無水物基化した化合物、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデカン-1,1-ジカルボン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシデカン-1,1-ジカルボン酸、12-(メタ)アクリロイルオキシドデカン-1,1-ジカルボン酸、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキサン-1,1-ジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-メタクリロイルオキシ-2’-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸無水物、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-2,3,6-トリカルボン酸無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル-1,8-ナフタル酸無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,8-トリカルボン酸無水物、9-(メタ)アクリロイルオキシノナン-1,1-ジカルボン酸、13-(メタ)アクリロイルオキシトリデカン-1,1-ジカルボン酸、11-(メタ)アクリルアミドウンデカン-1,1-ジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、10-スルホデシル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロキシプロピル-3-ホスホノプロピオネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルホスホノアセテート、4-(メタ)アクリロキシブチル-3-ホスホノプロピオネート、4-(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、5-(メタ)アクリロキシペンチル-3-ホスホノプロピオネート、5-(メタ)アクリロキシペンチルホスホノアセテート、6-(メタ)アクリロキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロキシデシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロキシデシルホスホノアセテート、2-(メタ)アクリロキシエチル-フェニルホスホネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、N-(メタ)アクリロイル-ω-アミノプロピルホスホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2’-ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネートなど。
(イ-iii)水酸基を有するもの
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N-(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなど。
(ロ)二官能重合性単量体
(ロ-i)芳香族化合物系のもの
2,2-ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4-メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2(4-メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4-メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような-OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;ジ(メタクリルロキシエチル)ジフェニルメタンジウレタン等。
(ロ-ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン等の、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような-OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(ハ)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(ニ)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これら多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。さらに、必要に応じて、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート系単量体や、上記(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を用いても良い。
本発明において、重合性単量体成分(A)としては、硬化体の物性(機械的特性や歯質に対する接着性)調整のため、一般に、複数種の重合性単量体が使用されるが、この際、成分(A)の25℃における屈折率が1.38~1.55の範囲となるように、重合性単量体の種類及び量を設定することが望ましい。即ち、屈折率を1.38~1.55の範囲に設定することにより、重合性単量体成分(A)から得られる重合体の屈折率nを、おおよそ1.40~1.57の範囲に設定でき、 n<nFB という条件を満足させることが容易となる。なお、重合性単量体成分(A)として重合性単量体を複数種類用いる場合があるが、この場合の重合性単量体成分(A)の屈折率は、複数種の重合性単量体を混合した混合物の屈折率が上記範囲に入っていれば良く、個々の重合性単量体は必ずしも上記範囲に入っていなくてもよい。なお、重合性単量体や重合性単量体の硬化体の屈折率は、25℃にてアッベ屈折率計を用いて求めることができる。
<無機球状フィラー(B)>
歯科用硬化性組成物には、無機粉体、有機粉体等の種々の充填材が含有されているが、本発明の歯科用硬化性組成物には、干渉による着色光を発現させる目的で、平均一次粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にある無機球状フィラー(B)が配合される。無機球状フィラー(B)が球状であり、且つ、無機球状フィラー(B)を構成する個々の粒子の数のうち90%以上が平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在するような狭い粒子径分布を有することにより、粒子が短距離規則性を有するように分散して、平均一次粒子径に応じた特定波長の干渉光を発生することが可能となる。ここで、無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により粉体の写真を撮影し、その写真の単位視野内に観察される粒子の30個以上を選択し、それぞれの一次粒子径(最大径)を求めた平均値をいう。球状とは、略球状であればよく、必ずしも完全な真球である必要はない。走査型電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、その単位視野内にあるそれぞれの粒子(30個以上)について最大径を測定し、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上、より好ましくは0.8以上のものであればよい。
無機球状フィラー(B)の個数基準粒度分布は、前記平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子数の全粒子数に対する割合が90%以上となるものであればよいが、上記割合は、91%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
光の回折及び干渉による着色光の発現は、ブラッグ条件に則って回折及び干渉が起こり、特定波長の光が強調されることによるものであり、上記粒子径の粒子を配合すると、その歯科用硬化性組成物の硬化体には、着色光(干渉光)が発生し、その粒子径に応じた構造色が発現するようになる。
無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径は、100nm以上1000nm以下の範囲内であればよい。平均一次粒子径が100nm未満である球状粒子を用いた場合、可視光の干渉現象が生じ難い。一方、平均一次粒子径が1000nmを越える無機球状フィラーを用いた場合は、光の干渉現象の発現は期待できるが、歯科充填用修復材料として用いる場合には、無機球状フィラーの沈降や研磨性の低下が生じる。
なお、本発明者らの検討により、前記無機球状フィラー(B)を用いた場合に発現する構造色の色調は、使用する無機球状フィラーの平均一次粒子径に応じ、100nm~1000nmの範囲でその増大に伴い青色系~黄色系~赤色径という繰り返しサイクルで変化し、その強度は平均一次粒子径の大きいサイクルでは低下する傾向があることが判明した。したがって、強度の高い構造色を発現するという観点からは、平均一次粒子径は100nm以上500nm以下であることが好ましい。さらに黄色~赤色の構造色を強く発現するという観点からは、平均一次粒子径は、230nm以上350nm以下、特に245nm以上300nm以下であることが好ましい。
たとえば、平均一次粒子径230nm~260nmの範囲の球状粒子を用いた場合、得られる着色光は黄色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるB系(赤黄色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。平均一次粒子径260nm~350nmの範囲の球状粒子を用いた場合、得られる着色光は赤色系であり、シェードガイド(「VITAClassical」、VITA社製)におけるA系(赤茶色)の範疇にある歯牙の修復に有用で、特にエナメル質から象牙質に渡って形成された窩洞の修復に有用である。象牙質の色相はこうした赤色系のものが多いため、上記好適な範囲の平均一次粒子径を有する無機球状フィラー(B)を使用することにより、多様な色調の修復歯牙に対して、幅広く適合性が良くすることができる。
無機球状フィラー(B)としては、通常の歯科用硬化性組成物の成分として使用されるようなものが制限なく使用できる。具体的には、非晶質シリカ、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子(シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニアなど)、石英、アルミナ、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化イッテルビウム、ジルコニア、チタニア、コロイダルシリカ等の無機粉体が挙げられる。このうちフィラーの屈折率の調整が容易であることから、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子が好ましい。
ここで、シリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子とは、シリカとチタン族元素(周期律表第4族元素)酸化物との複合酸化物であり、シリカ・チタニア、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア・ジルコニア等が挙げられる。このうちフィラーの屈折率を調整が可能である他、高いX線不透過性も付与できることから、シリカ・ジルコニアが好ましい。その複合比は特に制限されないが、十分なX線不透過性を付与することと、屈折率を後述する好適な範囲にする観点から、シリカの含有量が70~95モル%であり、チタン族元素酸化物の含有量が5~30モル%であるものが好ましい。シリカ・ジルコニアの場合、このように各複合比を変化させることにより、その屈折率を自在に変化させることができる。
なお、これらシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子には、少量であれば、シリカ及びチタン族元素酸化物以外の金属酸化物の複合も許容される。具体的には、酸化ナトリウム、酸化リチウム等のアルカリ金属酸化物を10モル%以内で含有させても良い。
こうしたシリカ・チタン族元素酸化物系複合酸化物粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、加水分解可能な有機ケイ素化合物と加水分解可能な有機チタン族金属化合物とを含んだ混合溶液を、アルカリ性溶媒中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法が好適に採用される。
これらのシリカ・チタン族酸化物系複合酸化物粒子は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよい。シランカップリング剤による表面処理により、重合性単量体(A)の硬化体部分との界面強度に優れたものになる。代表的なシランカップリング剤としては、γ-メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。これらシランカップリング剤の表面処理量に特に制限はなく、得られる歯科用硬化性組成物の機械的物性等を予め実験で確認したうえで最適値を決定すればよいが、好適な範囲を例示すれば、粒子100質量部に対して0.1質量部~15質量部の範囲である。
本発明の歯科用硬化性組成物においては、干渉光を発生させる或いは構造色を発現させるために、前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率:nFBは、前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率:nよりも大きい必要がある。すなわち、 n<nFB の関係を満足する必要がある。nFBとnとの差:nFB-nは、0.001以上であるのが好ましく、0.002以上であるのがより好ましく、0.005以上であるのが最も好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物において、前記無機球状フィラー(B)は、そのままの形で配合されていても良いが、予め重合性単量体(A)等と混合し、重合させて得られる複合体からなる有機無機複合フィラーの形態で配合されていてもよい。
上記有機無機複合フィラーの製造方法は特に制限されず、例えば、無機球状フィラー(B)、重合性単量体、及び重合開始剤の各成分の所定量を混合し、加熱、光照射等の方法で重合させた後、粉砕する一般的な製造方法を採用することができる。あるいは、国際公開第2011/115007号又は国際公開第2013/039169号に記載された製造方法を採用することもできる。この製造方法では、球状無機フィラーが凝集してなる無機凝集粒子を、重合性単量体、重合開始剤、及び有機溶媒を含む重合性単量体溶媒に浸漬した後、有機溶媒を除去し、重合性単量体を加熱、光照射等の方法で重合硬化させる。国際公開第2011/115007号又は国際公開第2013/039169号に記載された製造方法によれば、無機一次粒子が凝集した無機凝集粒子の各無機一次粒子の表面を覆うとともに、各無機一次粒子を相互に結合する有機樹脂相を有し、各無機一次粒子の表面を覆う有機樹脂相の間に凝集間隙が形成されている有機無機複合フィラーが得られる。
<不定形無機フィラー(C)>
本発明の歯科用硬化性組成物には硬化体に適切な不透明性を付与することを目的として平均粒子径が100nm~1000nmの範囲である不定形無機フィラー(C)が配合される。ここで、不定形とは、SEM等で観察される一次粒子の形状が、不規則な多数の角及び面を有している事を意味し、不定形無機フィラー(C)とは、通常は破砕や粉砕によって得られる粒子からなるフィラーを意味する。また、不定形フィラー(C)の平均粒子径は、レーザー散乱法(例えば、測定装置としてベックマン・コールター社製LS230を用い、分散媒としてエタノールを使用)にて測定された、50%粒子径(D50)を意味する。具体的には、まず、分散媒としてエタノール5ml中に測定試料を0.01~1g加えた後、試料を懸濁した液を超音波分散器で約1~5分間分散処理し、0.04~2000μmの範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。そして、得られた粒度分布を基にして分割された粒度範囲に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径を平均粒子径(D50)とする。
本発明の効果を発現するためには不定形無機フィラー(C)の平均粒子径が100nm~1000nmの範囲である必要がある。不定形無機フィラーの平均粒子径が100nm未満の場合には、硬化体に適切な不透明性を付与することができない。一方、1000nmを越える場合には、硬化体の不透明性が高くなりすぎるために、干渉光が発生しないか発生したとしてもそれに起因する構造色を視認することができなくなってしまう。構造色の視認性を確保しつつ、硬化体に適切な不透明性を付与できるという点で、不定形無機フィラー(C)の平均粒子径は100以上1000nm以下であることが好ましく、200nm以上900nm以下、特に300nm以上700nm以下であることがより好ましい。
ここで、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化体に付与される、「不透明性」の指標としては、厚さ1mmの硬化体の状態で測定されるコントラスト比(Y/Y)を用いることができる。ここでYは、厚さ1mmの硬化体について、背景を黒色とした色差計による三刺激値測定で決定されるY刺激値を意味し、Yは背景を白色として同様に測定したときのY刺激値を意味する。コントラスト比(Y/Y)が0.3未満の場合には、たとえばIII級窩洞やIV級窩洞の修復に用いた場合の修復部位(充填部位)における硬化体の明度(色の濃淡)が低くなり、当該部位における透過光が強く、硬化体からの着色光が弱くなるため、良好な色調適合性が得られ難い。また、前記コントラスト比が0.7を超える場合には、硬化体の明度が高くなり、修復部位(充填部位)表面での反射光が強く、硬化体からの着色光が弱くなり、やはり良好な色調適合性を得ることができ難くなる。したがって、コントラスト比(Y/Y)が0.30以上0.70以下の範囲であるときには、前記した「適切な不透明性」であるといえる。III級窩洞やIV級窩洞の修復において、優れた色調適合性を有するためには、前記コントラスト比(Y/Y)は0.35以上0.65以下の範囲であるのが好ましく、0.40以上0.60以下の範囲であるのがより好ましい。
また、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化体では、不定形無機フィラー(C)を添加することによって不透明性が増大するものの、構造色の視認性は保たれる。すなわち、前記硬化体で発生する干渉光又は当該硬化体で発現する構造色は、厚さ1mmの硬化体について色差計を用いて測定した、黒背景下での分光反射率曲線で確認することができる。前記したように、構造色としては無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径の大きさに応じた色調(通常、青色系~黄色系~赤色系といった広い色調何位の中から目的に応じて選ばれる好ましい色調)の構造色が発現し、黒背景下での色差計を用い反射射率測定では、当該色調に対応する波長領域の反射が有意に高くなる。
本発明の歯科用硬化性組成物をたとえばIII級窩洞やIV級窩洞の修復に用いた場合には、硬化体が前記したような適切な不透明性を有することに加えて黄色~赤色に確認可能(視認可能な)な構造色を発現することが、色調適合性の高い審美修復を行う上で好ましい。このような観点から、本発明の歯科用硬化性組成物は分光反射率比:SR/SRが0.8以上2.0以下の範囲となる硬化体を与えるものであることが好ましい。ここで、上記SR及びSRとは、本発明の歯科用硬化性組成物を硬化させて得られる厚さ1mmの硬化体について色差計を用いて測定した、黒背景下での分光反射率曲線において、600nm以上750nm以下の波長領域(黄色~赤色域)内における分光反射率の最大値(SR)及び400nm以上500nm以下の波長領域(青色域)内における分光反射率の最大値(SR)を意味する。前記分光反射率比が0.8未満の場合には、黄~赤色の着色光が弱く、黄色味もしくは赤味を帯びた天然歯牙への色調適合性が得られ難くなる傾向がある。また、前記分光反射率比が2.0を超えた場合には黄~赤色の着色光が強すぎるため、やはり良好な色調適合性が得られ難くなる。III級窩洞やIV級窩洞の修復に用いたときに優れた色調適合性を有するためには、前記分光反射率比は、0.9以上1.5以下の範囲であることが、より好ましい。
上記不定形無機フィラー(C)の材質は特に制限されず、公知のものが使用可能である。具体的には、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、重金属(例えばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ガラスセラミックス、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム等の金属フッ化物、シリカや、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・アルミナ等の複合無機酸化物等が好適である。特に好適な例としては、X線造影性を有し、より耐磨耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主成分とする複合酸化物が挙げられる。
上記不定形無機フィラー(C)は、マトリックスとしての重合性単量体への分散性を改善する目的でその表面を適当な表面処理剤で処理してから用いることが好ましい。該処理の方法としては、略球状無機フィラーの表面処理方法として前記した方法同様、何ら制限無く使用可能である。
本発明における無機球状フィラー(B)及び不定形無機フィラー(C)の合計の配合量は、重合性単量体(A)100質量部に対して、100質量部以上1500質量部以下、特に100質量部以上1000質量部以下であることが好ましい。構造色が良好に発現するという観点から、無機球状フィラー(B)の配合量が不定形無機フィラー(C)の配合量よりも多くなるように配合することが好ましい。また、III級窩洞やIV級窩洞の修復に対して自然な色調を呈し、より審美的な修復が可能となるという理由から、無機球状フィラー(B)と不定形無機フィラー(C)との合計配合量に占める前記不定形無機フィラー(C)の配合量の割合が5%以上50%以下、特に10%以上40%以下となるように配合することが好ましい。
<重合開始剤(D)>
重合開始剤(D)は前記重合性単量体(A)を重合させる機能を有するものであれば特に限定されないが、口腔内で硬化させる場合が多い歯科の直接充填修復用途で使用される光重合開始剤又は化学重合開始剤を使用することが好ましく、混合操作の必要が無く簡便な点から、光重合開始剤(組成)を使用することが更に好ましい。
光重合に用いる重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、ベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4-メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ジアセチル、2,3-ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10-フェナントラキノン、9,10-アントラキノンなどのα-ジケトン類、2,4-ジエトキシチオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類等が使用できる。
なお、光重合開始剤には、しばしば還元剤が添加されるが、その例としては、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、N-メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2-メルカプトベンゾオキサゾール、1-デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物などを挙げることができる。
更に、上記光重合開始剤、還元性化合物に加えて光酸発生剤を加えて用いる例がしばしば見られる。このような光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換-S-トリアジン誘導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。
これら重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の配合量は目的に応じて有効量を選択すればよいが、重合性単量体100質量部に対して通常0.01~10質量部の割合であり、より好ましくは0.1~5質量部の割合で使用される。
<その他の添加剤>
本発明の歯科用複合修復材料には、その効果を阻害しない範囲で、上記(A)~(D)成分の他、公知の他の添加剤を配合することができる。具体的には、重合禁止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。また、粘度調整等を目的として、光の波長より十分に小さく色調や透明性に影響を与え難い粒径のフィラーを配合することができる。
本願発明では前述したとおり、顔料などの着色物質を用いなくても、天然歯牙との色調適合性が良好な修復が単一のペースト(歯科用硬化性組成物)で可能になる。したがって、時間と共に変色する虞のある顔料は配合しない態様が好ましい。ただし、本願発明においては、顔料の配合自体を否定するものではなく、無機球状フィラーの干渉による着色光の妨げにならない程度の顔料は配合しても構わない。具体的には、重合性単量体100質量部に対して0.0005~0.5質量部程度、好ましくは0.001~0.3質量部程度の顔料であれば配合しても構わない。
本発明の歯科用硬化性組成物は、所定量の前記成分(A)乃至(D)を量りとり、混合することにより調製することができる。このとき、無機球状フィラー(B)及び不定形無機フィラー(C)が重合性単量体(A)に分散する条件で混合することが好ましい。また、発現する構造色の視認性が低下させずに本発明の効果である良好な色調適合性が得られ易いという観点から、本発明の歯科用硬化性組成物は減圧条件下で脱泡することで、1000nm以上の気泡が実質的に含まれないように調製することが好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物は上記のような光硬化性コンポジットレジンに代表される歯科用充填修復材料として特に好適に使用されるが、それに限定されるものではなく、その他の用途にも好適に使用できる。その用途としては、例えば歯科用セメント、支台築造用の修復材料等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
先ず、実施例及比較例における各種物性測定方法について説明する。
(1)無機球状フィラーの平均粒子径
走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL-30S」)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(30個以上)及び一次粒子径(最大径)を測定し、測定値に基づき下記式により平均粒子径を算出した。
Figure 0007075635000001
(2)無機球状フィラー(B)における、平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子の割合
先ず、前記した写真の単位視野内に観察される個々の粒子(30個以上)について、その一次粒子径を測定すると共に、一次粒子径が前記(1)で求めた平均一次粒子径の95%未満となる粒子の数と、一次粒子径が前記平均一次粒子径の105%を越える粒子の数を計測し、その合計個数を求めた。次いで、写真の単位視野内に観察される全粒子数(30個以上)から前記合計個数を差し引くことにより個数基準粒度分布において前記平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子数を求め、最後に当該粒子数の全粒子数に占める割合(%)を求め、平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する粒子の割合(%)とした。
(3)均斉度
走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL-30S」)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内にある個々の粒子(30個以上)について、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で除した値の平均を均斉度とした。
(4)屈折率の測定
<重合性単量体成分(A)の屈折率>
用いた重合性単量体(或いは重合性単量体の混合物)の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定した。
<重合性単量体成分(A)の重合体の屈折率n
用いた重合性単量体成分(重合性単量体或いは重合性単量体の混合物)を、窩洞内での重合条件とほぼ同じ条件で重合して得た重合体試料について、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて25℃の恒温室にて測定して屈折率nを決定した。
即ち、重合性単量体成分(A)に当該成分の質量を基準としてCQ 0.3質量%、DMBE 1.0質量%、HQME 0.15質量%を混合して得た均一な組成物を、φ7mm×0.5mmの孔を有する型に入れ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。その後、光量500mW/cmのハロゲン型歯科用光照射器(Demetron LC、サイブロン社製)を用いて30秒間光照射し硬化させた後、型から取り出して、重合体試料を作製した。なお、屈折率測定に際しては、試料を装置にセットする時に、重合体と測定面を密着させる目的でブロモナフタレン(試料を溶解せず、かつ試料よりも屈折率の高い溶媒)を試料に滴下した。
<無機球状フィラーの屈折率をnFB及び不定形無機フィラーの屈折率>
用いた無機球状フィラー及び不定形無機フィラーの屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製)を用いて液浸法によって測定した。
即ち、25℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、無機球状フィラー若しくはその表面処理物1gを無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら1-ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率を測定し、得られた値を無機球状フィラー及び不定形無機フィラーの屈折率とした。
(5)硬化性組成物のコントラスト比(Y/Y)の評価
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC-1800MKII」)を用いて、上記硬化体の三刺激値のY値(背景色黒及び白)を測定した。得られた背景色黒のY値(Y)及び背景色白のY値(Y)に基づいてコントラスト比(Y/Y)を計算した。
(6)目視による着色光(干渉光)の評価
実施例及び比較例で調製された歯科用硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの孔を有する型にいれ、両面はポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、10mm角程度の黒いテープ(カーボンテープ)の粘着面に載せ、目視にて着色光の色調を確認した。
(7)分光反射率比(黒背景におけるSR/SR
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC-1800MKII」)を用いて、黒背景下で分光反射率を測定し、黄~赤色域(600-750nm)の反射率の最大値:SR及び青色域(400-500nm)の反射率の最大値:SRを求め、SRをSRで除することで分光反射率比を算出した。
(8)白背景の分光反射率による着色光(干渉光)の評価
実施例及び比較例で調製された硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの貫通した孔を有する型にいれ、両面にポリエステルフィルムを圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、「TC-1800MKII」)を用いて、白背景下で分光反射率を測定した。
(9)曲げ強さ
歯科用硬化性組成物のペーストについて、充填器を用いてステンレス製型枠に充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いて一方の面から30秒×3回、全体に光が当たるように場所を変えてポリプロピレンに密着させて光照射を行なった。次いで、反対の面からも同様にポリプロピレンに密着させて30秒×3回光照射を行い、硬化体を得た。#1500の耐水研磨紙にて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整え、試料片とした。得られた試験片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定し、荷重-たわみ曲線を得、以下に示す式により、曲げ強度:σ(Pa)及び曲げ弾性率:EB(Pa)を求めた。なお、試験片5個について評価し、その平均値を曲げ強さとした。
Figure 0007075635000002
Figure 0007075635000003
但し、前記式中の各記号の意味及び単位は以下に示すとおりである。
P:試験片破折時の荷重(N)
S:支点間距離(m)
W:試験片の幅(m)
B:試験片の厚さ(m)
F/Y:荷重-たわみ曲線の直線部分の勾配(N/m)。
(10)色調適合性の評価
右上1番のIV級窩洞(幅3mm、高さ3mm)を再現した歯牙修復用模型歯を用いて、欠損部に硬化性ペーストを充填し硬化、研磨し、色調適合性を目視にて確認した。なお、歯牙修復用模型歯としては、シェードガイド「VITAPAN Classical」におけるA系(赤茶色)の範疇の中にあって、高色相且つ高彩度の高色度模型歯(A4相当)と低色相且つ低彩度の低色度模型歯(A1相当)及び、シェードガイド「VITAPAN Classical」におけるB系(赤黄色)の範疇の中にあって、高色相且つ高彩度の高色度模型歯(B4相当)と低色相且つ低彩度の低色度模型歯(B1相当)を用いた。
◎:修復物の色調が歯牙修復用模型歯と良く適合している。
○:修復物の色調が歯牙修復用模型歯と類似している。
△:修復物の色調が歯牙修復用模型歯と類似しているが適合性は良好でない。
×:修復物の色調が歯牙修復用模型歯と適合していない。
次に、実施例及び比較例で用いた重合性単量体、重合開始剤等の略号と物質名等を以下に示す。
[重合性単量体]
・UDMA:1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・bis-GMA:2,2-ビス[(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン
[重合開始剤]
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:N,N-ジメチルp-安息香酸エチル。
[重合禁止剤]
・HQME:ヒドロキノンモノメチルエーテル。
表1に示すような重合性単量体を混合し、マトリックスM1、M2を調製した。
Figure 0007075635000004
[無機球状フィラー]
無機球状フィラーの調製は、特開昭58-110414号公報、特開昭58-156524号公報等に記載の方法で、加水分解可能な有機ケイ素化合物(テトラエチルシリケートなど)と加水分解可能な有機チタン族金属化合物(テトラブチルジルコネートやテトラブチルチタネートなど)とを含んだ混合溶液を、アンモニア水を導入したアンモニア性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなど)溶液中に添加し、加水分解を行って反応生成物を析出させる、いわゆるゾルゲル法を用いて調製した。
[不定形無機フィラー]
不定形シリカ-ジルコニアの調製は、特開平2-132102号公報、特開平3-197311号公報等に記載の方法で、アルコキシシラン化合物を有機溶剤に溶解し、これに水を添加して部分加水分解した後、更に複合化する他の金属のアルコキサイド及びアルカリ金属化合物を添加して加水分解してゲル状物を生成させ、次いで該ゲル状物を乾燥後、必要に応じて粉砕し、焼成して調製した。不定形バリウムガラスは市販のバリウムガラス(GM8235、ショット社製)を必要に応じて粉砕し、分級して調製した。不定形フッ化イッテルビウムは市販の三フッ化イッテルビウム(トライバッハ社製)を必要に応じて粉砕し、分級して調製した。
実施例及び比較例で用いた無機球状フィラーを表2に、不定形無機フィラーを表3に示す。
Figure 0007075635000005
Figure 0007075635000006
実施例1~17
100gの重合性単量体M1又はM2に対して、0.3質量%のCQ、1.0質量%のDMBE、0.15質量%のHQMEを加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表2および表3に示した各フィラーを計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、暗所にて十分に混練して均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用硬化性組成物を製造した。得られた歯科用硬化性組成物について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4及び表5に示す。表4中の括弧内の数値は、各成分の配合量(単位:質量部)を表す。
比較例1~9
100gの重合性単量体M1に対して、0.3質量%のCQ、1.0質量%のDMBE、0.15質量%のHQMEを加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表4に示した各フィラーを計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、暗所にて十分に混練して均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用硬化性組成物を製造した。得られた歯科用硬化性組成物について、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4及び表5に示す。
比較例10
100gの重合性単量体M2に対して、0.3質量%のCQ、1.0質量%のDMBE、0.15質量%のHQMEを加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製した。次に、乳鉢に表4に示した無機球状フィラーを計りとり、上記重合性単量体組成物を赤色光下にて徐々に加えていき、さらに二酸化チタン(白顔料)を0.070g、ピグメントイエロー(黄顔料)を0.002g、ピグメントレッド(赤顔料)を0.0006g、ピグメントブルー(青顔料)を0.0002g加えて暗所にて十分に混練して均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去し歯科用複合修復材料を製造した。目視評価で高色度模型歯のA系統に適合する色調(A4相当)であった。続いて、上記の方法に基づいて各物性を評価した。組成及び結果を表4及び表5に示す。
Figure 0007075635000007
Figure 0007075635000008
実施例1~17の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満たしていると、歯科用硬化性組成物は黒背景下で光の干渉による黄~赤色の着色光を示し、色調適合性が良好であり、高い曲げ強さを示すことが分かる。
比較例1~2の結果から理解されるように、平均粒子径が230および280nmの無機球状フィラーのみをフィラーとして配合した場合、黒背景下での光の干渉による黄色および赤色の着色光は明瞭に確認されるが、硬化体のコントラスト比が低いため、IV級窩洞に対しては良好な色調適合性が得られない。
比較例3の結果から理解されるように、平均粒子径が178nmの無機球状フィラーのみをフィラーとして配合した場合、黒背景下での光の干渉による着色光は青色であり、且つ硬化体のコントラスト比が低いため、IV級窩洞に対しては良好な色調適合性が得られない。
比較例4~9の結果から理解されるように、本発明で規定する条件を満足していないと、歯科用硬化性組成物は黒背景下で着色光を示さず(比較例4~8フィラーの形状が不定形)、着色光が弱く(比較例9:不定形無機フィラーの平均粒子径が100nm~1000nmを満たしていない)、色調適合性に劣っていることが分かる。
比較例10の結果から理解されるように、顔料を添加して色調を調整(高色度模型歯のA系統に適合する色調(A4相当))した歯科用硬化性組成物は、色差計((有)東京電色製、「TC-1800MKII」)を用いて、背景色黒、背景色白で分光反射率を測定したところ、背景色黒、背景色白ともに添加した顔料に応じた分光反射特性を示すことが観察された。高色度模型歯のA系統に適合する色調(A4相当)への色調適合性は比較的良好であったが、他の模型歯への色調適合性は低いものであった。

Claims (6)

  1. 重合性単量体成分(A)、平均一次粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にあり、個数基準粒度分布において全粒子数の90%以上が前記平均一次粒子径の前後の5%の範囲に存在する無機球状フィラー(B)、平均粒子径が100nm以上1000nm以下の範囲内にある不定形無機フィラー(C)及び重合開始剤(D)を含んでなり、
    前記無機球状フィラー(B)の25℃における屈折率:nFBは、前記重合性単量体成分(A)を重合して得られる重合体の25℃における屈折率:nよりも大きく、
    厚さ1mmの硬化体について、背景を黒色及び白色とした色差計による三刺激値測定で決定されるY刺激値を夫々Y (黒色背景)及びY (白色背景)としたときの両者の比:Y /Y で定義されるコントラスト比が0.3~0.7である硬化体を与える、ことを特徴とする歯科用硬化性組成物。
  2. 厚さ1mmの硬化体について色差計を用いて測定した、黒背景下での分光反射率曲線において、600nm以上750nm以下の波長領域内における分光反射率の最大値:SRを、400nm以上500nm以下の波長領域内における分光反射率の最大値:SRで除した値として定義される分光反射率比:SR/SRが0.8以上2.0以下の範囲である硬化体を与えることを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記重合性単量体(A)100質量部に対する前記無機球状フィラー(B)と前記不定形無機フィラー(C)との合計配合量が100質量部以上1500質量部以下であり、当該合計配合量に占める前記不定形無機フィラー(C)の配合量の割合が5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 前記無機球状フィラー(B)の平均一次粒子径が230nm以上350nm以下であることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の歯科用硬化性組成物。
  5. 請求項1乃至の何れかに記載の歯科用硬化性組成物からなるIII級窩洞及び/又はIV級窩洞修復用の歯科用充填修復材料。
  6. 請求項1乃至の何れかに記載の歯科用硬化性組成物の硬化体からなるIII級窩洞及び/又はIV級窩洞修復用歯科材料。
JP2018134335A 2018-07-17 2018-07-17 歯科用硬化性組成物 Active JP7075635B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018134335A JP7075635B2 (ja) 2018-07-17 2018-07-17 歯科用硬化性組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018134335A JP7075635B2 (ja) 2018-07-17 2018-07-17 歯科用硬化性組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020011917A JP2020011917A (ja) 2020-01-23
JP7075635B2 true JP7075635B2 (ja) 2022-05-26

Family

ID=69168689

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018134335A Active JP7075635B2 (ja) 2018-07-17 2018-07-17 歯科用硬化性組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7075635B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116367806A (zh) * 2020-10-28 2023-06-30 可乐丽则武齿科株式会社 具有良好的色调适应性的齿科用固化性组合物
WO2023085201A1 (ja) * 2021-11-15 2023-05-19 株式会社トクヤマデンタル 歯科用硬化性組成物

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6250245B2 (ja) 2015-10-21 2017-12-20 株式会社トクヤマデンタル 硬化性組成物及び歯科用充填修復材料

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006250245A (ja) * 2005-03-10 2006-09-21 Toyota Motor Corp ピストンリング

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6250245B2 (ja) 2015-10-21 2017-12-20 株式会社トクヤマデンタル 硬化性組成物及び歯科用充填修復材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020011917A (ja) 2020-01-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2016340522B2 (en) Curable composition and dental filling restorative material
JP7114090B2 (ja) 硬化性組成物
JP6762623B2 (ja) 歯科用硬化性組成物
RU2752386C2 (ru) Светоотверждаемая композиция
US11058608B2 (en) Curable composition for dental use, and method for producing same
JP7099721B2 (ja) 光硬化性組成物及び歯科用修復充填材料
JPWO2019189698A1 (ja) 歯科切削加工用レジン系ブロック
JP7075635B2 (ja) 歯科用硬化性組成物
JP7440932B2 (ja) 歯科切削加工用ブランク及びその製造方法
JP7422994B2 (ja) 歯科用硬化性組成物
JP6945818B2 (ja) 硬化性組成物
JP7422996B2 (ja) 歯科用硬化性組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210203

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211214

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220506

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220506

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7075635

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150