JP2011105926A - ポリイミド前駆体及びポリイミド前駆体溶液 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、半導体素子の信頼性向上のための表面保護膜や層間絶縁膜の形成に使用されるポリイミド前駆体およびポリイミド前駆体溶液に関する。
近年、メモリやマイクロプロセッサーなどの主要デバイスの生産性向上に対応するように半導体素子の高集積化と大型化とが進められ、また、情報機器用デバイスの薄型パッケージングに対応するように封止樹脂パッケージの薄型化と小型化とが進められてきている。そして、これら事情に伴って、これらに使用される表面保護膜や層間絶縁膜に対しても耐熱サイクル性、耐熱ショック性などの大幅な性能向上が要求されるようになってきている。
一方、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜の形成にはポリイミド樹脂がしばしば使用されており(例えば、非特許文献1参照)、上述の表面保護膜や層間絶縁膜への性能向上の要求と相まって、ポリイミド樹脂にも大幅な性能向上が要求されるようになってきている。特に最近では、ポリイミド樹脂の低熱膨張化に対する要望が強くなってきている。シリコンウェハなどの低熱膨張基材との熱膨張差を小さくしてデバイス全体の反りを低減させることが主たる目的であるが、最近では、シリコンウェハの極端な薄型化に相まって、この効果が顕著に現れて始めてきているからである。
ポリイミド樹脂を低熱膨張化させる手法としては、ポリイミドの化学構造を剛直な構造にする手法が最も有効である。この手法を用いたものとして、p−フェニレンジアミンと3,3’、4,4’ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とから得られるポリイミド樹脂(例えば、非特許文献1参照)や主鎖にベンゾオキサゾール構造を有するポリイミド樹脂(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。ただし、このような手法によって得られたポリイミド樹脂は、シリコンウェハなどの無機基材に対する密着性が総じて悪い。密着性が悪いと半導体製造工程でポリイミド樹脂の剥離や膨れが発生して歩留まりが悪くなる。すなわち、ポリイミド樹脂に対して低熱膨張化と高密着性を両立させて付与することが重要となる。
永野、赤堀、日本ポリイミド研究会編「最新ポリイミド」、P548
低熱膨張化と高密着性を両立させる手法としては、剛直なポリイミド構造にシロキサン構造を導入する手法が有効である。この手法を用いたものとして、ジアミノベンズアニリドとシロキサン構造を有するジアミンを共重合させて得られたポリイミド樹脂(例えば、特許文献2参照)や、シロキサン構造を有する酸二無水物と側鎖にフッ素系置換基を有するベンジジン型ジアミンから得られたポリイミド樹脂(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかしながら、前者はアミド結合を有する点で、後者はフッ素原子を有する点で、耐熱性、加工性、環境適応性の観点から必ずしも好ましい手法であるとはいえない。
また、他の手法として、剛直な酸二無水物と剛直なジアミンから得られるポリイミドの末端に感光性基を付与した感光性ポリイミド樹脂が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この手法では光架橋助剤が多量に添加されているため、これにおいても耐熱性の観点から必ずしも好ましい手法であるとはいえない。
本発明は、半導体デバイスなどを構成する材料として、特に寸法安定性、密着性、耐熱性が必要とされる部位に好適に利用されるポリイミド前駆体及びその樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる状況に鑑み鋭意研究を続けた結果、次なる発明に到達した。すなわち本発明は以下の構成になるものである。
1.下記の一般式(化1)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R2はベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族環基を示す)で表される繰り返し単位と下記の一般式(化2)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R3はシロキサン構造を有する2価の有機基)で表される繰り返し単位を少なくとも含むポリイミド前駆体であって、前記式(化1)で表される繰り返し単位数をAとし、前記式(化2)で表される繰り返し単位数をBとした場合に、0.10≦{B/(A+B)}≦0.30の関係を満たしており、N−メチル−2−ピロリドン中に0.2g/dlの樹脂濃度となるように溶解させて25℃で測定した時の還元粘度が0.1〜5.0dl/gであることを特徴とするポリイミド前駆体。
1.下記の一般式(化1)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R2はベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族環基を示す)で表される繰り返し単位と下記の一般式(化2)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R3はシロキサン構造を有する2価の有機基)で表される繰り返し単位を少なくとも含むポリイミド前駆体であって、前記式(化1)で表される繰り返し単位数をAとし、前記式(化2)で表される繰り返し単位数をBとした場合に、0.10≦{B/(A+B)}≦0.30の関係を満たしており、N−メチル−2−ピロリドン中に0.2g/dlの樹脂濃度となるように溶解させて25℃で測定した時の還元粘度が0.1〜5.0dl/gであることを特徴とするポリイミド前駆体。
3.前記式(化2)のR3がシロキサン構造を有する2価の有機基であり、下記の一般式(化7)(式中、mは1〜30の整数を表す)に示される構造であることを特徴とする1.〜2.に記載のポリイミド前駆体。
本発明のポリイミド前駆体およびその前駆体溶液は、シリコンウェハなどの低熱膨張基材の上に塗布、熱環化した後に得られるポリイミドと基材との熱膨張係数の差を小さくでき、なおかつ良好な密着性と高い耐熱性が発現するので、耐熱サイクル性、耐熱ショック性など、半導体デバイスの性能向上の要求に応えることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記の一般式(化1)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R2はベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族環基を示す)で表される繰り返し単位と下記の一般式(化2)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R3はシロキサン構造を有する2価の有機基)で表される繰り返し単位を少なくとも含むポリイミド前駆体であって、前記式(化1)で表される繰り返し単位数をAとし、前記式(化2)で表される繰り返し単位数をBとした場合に、0.10≦{B/(A+B)}≦0.30の関係を満たしており、N−メチル−2−ピロリドン中に0.2g/dlの樹脂濃度となるように溶解させて25℃で測定した時の還元粘度が0.1〜5.0dl/gであることを特徴とする。
前記一般式(化1)および(化2)中のR1成分としては、ポリイミドに耐熱性を持たせるためにも、炭素数6〜30の芳香族環または芳香族複素環基であることが好ましい。R1の好ましい具体例としては、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラテトラカルボン酸、2,3’,3,4’―ビフェニルテトラテトラカルボン酸、2,2’,3,3’―ビフェニルテトラテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−オキシジフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’―テトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’―テトラカルボン酸、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、ジフェニルメロフェニックジアンハイドライド、2,2’−ジフェニル−3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’−ジフェノキシ−3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸などといったテトラカルボン酸由来の構造などが挙げられ、ポリイミドの線熱膨張係数を低くするためのより好ましい具体例として、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラテトラカルボン酸、2,2’−ジフェニル−3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’−ジフェノキシ−3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸由来の構造が挙げられる。
前記一般式(化1)中のR2成分としては、ベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族環基であれば特に限定されないが、ポリイミドの線熱膨張係数を低くするために、下記の一般式(化3)〜(化6)(式中、R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して単環または複数の環から構成される芳香族環基または複素環基を表す)のいずれかで表されるベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族基であることが好ましい。R2成分の特に好ましい具体例としては、前記一般式(化3)のうち特に下記一般式(化8)が、前記一般式(化4)のうち特に下記一般式(化9)が、前記一般式(化5)のうち特に下記一般式(化10)〜(化13)が、前記一般式(化6)のうち特に下記一般式(化14)〜(化16)が、それぞれ好ましい。特に(化10)の成分を使用したポリイミドは、従来はシリコンウエハ等の基材への密着性を発現させるのが非常に困難であったが、本願発明による密着性改良効果が著しく、低い線膨張係数と密着性を両立可能となるのでとりわけ好ましい実施様態である。
前記一般式(化2)中のR3成分としては、シロキサン構造を有する2価の有機基であれば特に限定されないが、ポリイミドに耐熱性を持たせるために、下記一般式(化7)(式中、mは1〜30の整数を表す)に示される構造であることが好ましい。特に好ましい具体例としては、下記一般式(化17)に示される構造が挙げられる。
前記一般式(化1)および(化2)中のX成分としては、水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基であることが好ましい。炭素数1〜30の1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロパンー1−イル基、プロパンー2−イル基、ブタンー1−イル基、ブタンー2−イル基、2―メチルプロパンー1−イル基、2―メチルプロパンー2−イル基、ベンジル基、2−ヒドロキシベンジル基、3−ヒドロキシベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基などが挙げられる。
本発明では、前記式(化1)で表される繰り返し単位数をAとし、前記式(化2)で表される繰り返し単位数をBとした場合に、0.10≦{B/(A+B)}≦0.30の関係を満たしていることが必要であるが、密着性と低線熱膨張係数をバランスよく両立させるためには、0.15≦{B/(A+B)}≦0.25となっていることがより好ましい。{B/(A+B)}<0.10となるとシリコンウェーハなどの基材への密着性が発現しないし、{B/(A+B)}>0.30となるとポリイミドの線熱膨張係数が高くなってしまい、なおかつ耐熱性を損ねる。
本発明では、ポリイミド前駆体中に占める前記式(化1)で表される繰り返し単位数(A)と前記式(化2)で表される繰り返し単位数(B)との総和(A+B)の割合は特に限定されるものではないが、ポリイミドの線熱膨張係数を低く、耐熱性を高くするためには、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
本発明のポリイミド前駆体を重合する方法としては、テトラカルボン酸又はその誘導体とジアミン類とを有機溶媒中で混合する重合法が挙げられるが、この重合法に特に限定されるわけではない。
本発明のポリイミド前駆体を重合する際のモノマー混合比(モル比)は、酸二無水物/ジアミンの表記方法で、好ましくは0.800〜1.200/1.200〜0.800、より好ましくは0.850〜1.150/1.15〜0.850、更に好ましくは0.900〜1.100/1.100〜0.900である。
本発明では、分子末端封鎖のためにジカルボン酸又はその誘導体、トリカルボン酸又はその誘導体、アニリンまたはその誘導体などの末端封止剤を用いることが出来る。本発明で好ましく用いられるのは、無水フタル酸、無水マレイン酸、エチニルアニリンであり、無水マレイン酸の使用がより好ましい。末端封止剤の使用量は、モノマー成分1モル当たり0.001〜1.0モル比である。
本発明のポリイミド前駆体を重合する際に使用する有機溶媒としては、原料モノマー及びポリイミド前駆体のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられ、これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。有機溶媒の使用量は、仕込みモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、通常は1〜50質量%であり好ましくは5〜30質量%の固形分を含むものであればよい。
重合反応は、有機溶媒中で撹拌及び/又は混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜50時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、モノマー等の添加順序には特に制限はないが、ジアミン類の溶液中にテトラカルボン酸又はその誘導体を添加するのが好ましい。
本発明では更に、ポリイミドの性能向上を目的として、添加物を加えても良い。これら、添加物は、その目的によって様々であり、特に限定されるものではない。
また、添加方法、添加時期においても特に限定されるものではない。添加物の例としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、等の金属酸化物、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩など、有機、無機の公知のフィラーが挙げられる。
また、添加方法、添加時期においても特に限定されるものではない。添加物の例としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、等の金属酸化物、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩など、有機、無機の公知のフィラーが挙げられる。
本発明では、反応によって得られたポリイミド前駆体樹脂を適当な貧溶媒を用いて反応溶液から再沈殿させても良い。貧溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、水などが挙げられるが、効率よく再沈殿させることができるものであれば、特にこれらに限定されない。また、再沈殿した後の残存反応溶媒を除去する溶媒についても特に限定されないが、再沈殿させた際に用いた溶媒を使用することが好ましい。
本発明では、N−メチル−2−ピロリドン中に0.2g/dlの樹脂濃度となるように溶解させて25℃で測定した時の還元粘度が0.1〜5.0dl/gであることが必要であるが、ポリイミド前駆体溶液のハンドリング性とポリイミドフィルムの耐熱性とをよりバランスよく両立させるためには、0.2〜4.0dl/gであることが好ましく、0.3〜2.0dl/gであることがより好ましい。還元粘度が0.1dl/gを下回るとポリイミドフィルムの耐熱性を著しく損ね、また還元粘度が5.0dl/gを上回るとポリイミド前駆体溶液の粘度が高くなってハンドリング性が著しく悪くなる。
本発明では、反応溶液をそのままポリイミド前駆体溶液として利用しても良いし、反応溶液から上記手法で再沈殿させたポリイミド前駆体を再び溶媒に溶解させてポリイミド前駆体溶液を得てもよい。後者の場合、ポリイミド前駆体を効率よく溶解させるものであれば、特に限定されるものではないが、例として、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等の有機溶剤が挙げられる。
本発明では、ポリイミド前駆体と有機溶剤を混合させる手段として、特に限定はしないが、例えば、通常の攪拌翼、高粘度用の攪拌翼を用いて混合攪拌する方法、多軸の押し出し機、あるいはスタティックミキサーなどを用いる方法、更には、ロールミルなどの高粘度用混合分散機を用いる方法を用いて混合攪拌することが挙げられる。
本発明で得られるポリイミド樹脂前駆体溶液中のポリイミド前駆体の組成としては、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%を含有することが挙げられる。この場合。その粘度はブルックフィールド粘度計による温度25℃での測定で0.1〜1000Pa・s、好ましくは0.5〜500Pa・s、より好ましくは1〜10Pa・sのものが、安定した送液が可能であることから好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂およびポリイミド前駆体樹脂組成物から、線膨張係数が低く、耐熱性が高く、シリコンウェハ等の基材に対して高度に密着する、ポリイミド樹脂およびポリイミド塗膜およびポリイミドフィルムなどのポリイミド成形体が得られる。
前記ポリイミド成形体を得る方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を基材に塗布した後に加熱イミド化する方法などが挙げられる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を基材に塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スピンコートなど回転塗布する方法、ドクターブレードやアプリケーター、コンマコーターなどスキージを利用する方法、スクリーン印刷法などの方法が挙げられる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を基材に塗布する際の基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコンウェハやセラミック板などの無機基板、銅箔やSUS箔などの金属基板、ポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムなどの有機基板などが挙げられる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を加熱イミド化する加熱条件としては、特に限定されるわけではないが、50℃〜150℃、好ましくは60℃〜130℃の温度で予備加熱した後に、20℃/分以下、好ましくはより10℃/分以下。より好ましくは5℃/分以下の昇温速度で昇温し、250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上の温度で最終加熱する条件などが好ましい例として挙げられる。
かかる条件により、シリコンウェハ等の基材に高度に密着しながら、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは270℃以上、さらに好ましくは300℃以上と高く、熱分解温度(5%重量減少温度)が400℃以上、好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上と高く、50−200℃における線膨張係数が0〜35ppm/℃、好ましくは0.1〜30ppm/℃以下、より好ましくは0.5〜25ppm/℃以下と低い、ポリイミド樹脂ならびにポリイミド塗膜ならびにポリイミドフィルムを得ることができる。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリイミド前駆体樹脂の還元粘度(ηsp/C)
樹脂濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローゼ型の粘度管により25℃で測定した。
1.ポリイミド前駆体樹脂の還元粘度(ηsp/C)
樹脂濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローゼ型の粘度管により25℃で測定した。
2.(化1)で表される繰り返し単位数(A)と(化2)で表される繰り返し単位数(B)との関係(B/(A+B))を算出する方法
得られたポリイミド前駆体樹脂をDMSO−d6に溶解させ、25℃の温度で核磁気共鳴(NMR)分析を行ってシロキサン構造を有する2価の有機基由来のプロトンとベンゾオキサゾール構造を有する2価の有機基由来の芳香族プロトンを同定することにより、そのピーク面積比からB/(A+B)を算出した。なお、測定装置はVARIAN社製400−MRを使用した。
得られたポリイミド前駆体樹脂をDMSO−d6に溶解させ、25℃の温度で核磁気共鳴(NMR)分析を行ってシロキサン構造を有する2価の有機基由来のプロトンとベンゾオキサゾール構造を有する2価の有機基由来の芳香族プロトンを同定することにより、そのピーク面積比からB/(A+B)を算出した。なお、測定装置はVARIAN社製400−MRを使用した。
3.ポリイミドフィルムの線熱膨張係数(CTE)
得られたポリイミドフィルムを、下記条件で伸縮率を測定し、50〜200℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
初荷重 ; 34.5g/mm2
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
得られたポリイミドフィルムを、下記条件で伸縮率を測定し、50〜200℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
初荷重 ; 34.5g/mm2
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
4.ポリイミドフィルムのガラス転移温度
得られたポリイミドフィルムを、下記条件でDSC測定し、ガラス転移点(Tg)をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100SA
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
得られたポリイミドフィルムを、下記条件でDSC測定し、ガラス転移点(Tg)をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100SA
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
5.ポリイミドフィルムの熱分解温度
得られたポリイミドフィルムを充分に乾燥させ、下記条件でTGA測定(熱天秤測定)して、150℃における試料の重量を100%とし、その点から試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度として規定した。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温狩猟温度 ; 800℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
得られたポリイミドフィルムを充分に乾燥させ、下記条件でTGA測定(熱天秤測定)して、150℃における試料の重量を100%とし、その点から試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度として規定した。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温狩猟温度 ; 800℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
5.ポリイミド樹脂塗膜の密着率
得られたポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハに対し、JIS K 5600に準拠して1mm×1mmの碁盤目(100マス)を作成し、セロテープ(登録商標)剥離試験を行い、その残膜率を密着率とした。
得られたポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハに対し、JIS K 5600に準拠して1mm×1mmの碁盤目(100マス)を作成し、セロテープ(登録商標)剥離試験を行い、その残膜率を密着率とした。
実施例などで使用する化合物の略称を下記する。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール
PBABO:2,2’ーpーフェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)
5,4−DAPBBO:2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール
4,5−DAPBBO:2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール
APDS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
MA :マレイン酸無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール
PBABO:2,2’ーpーフェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)
5,4−DAPBBO:2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール
4,5−DAPBBO:2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール
APDS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
MA :マレイン酸無水物
(実施例1)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール20.27g(0.090mol)、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.63g(0.010mol)、N―メチルー2−ピロリドン178.16gを導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物20.07g(0.092mol)、マレイン酸無水物1.57g(0.016mol)を導入し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、黄色のポリイミド前駆体樹脂溶液が得られた。得られたポリイミド前駆体樹脂の還元粘度は0.60dl/gであった。ここで、得られたポリイミド前駆体樹脂溶液5gを2−プロパノール200gに導入して固形のポリイミド前駆体樹脂を得、さらに、このポリイミド前駆体樹脂を2−プロパノールで洗浄した後に60℃で24時間、真空乾燥させたものをDMSO−d6に溶解させてNMR分析し、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン由来のメチルプロトンと5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール由来の芳香族プロトンとのピーク面積比を算出することにより、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの残基とピロメリット酸二無水物の残基で構成される繰り返し単位数(A)と1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの残基とピロメリット酸二無水物の残基で構成される繰り返し単位(B)の比率がB/(A+B)=0.10となっていることを確認した。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール20.27g(0.090mol)、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン2.63g(0.010mol)、N―メチルー2−ピロリドン178.16gを導入し、完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物20.07g(0.092mol)、マレイン酸無水物1.57g(0.016mol)を導入し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、黄色のポリイミド前駆体樹脂溶液が得られた。得られたポリイミド前駆体樹脂の還元粘度は0.60dl/gであった。ここで、得られたポリイミド前駆体樹脂溶液5gを2−プロパノール200gに導入して固形のポリイミド前駆体樹脂を得、さらに、このポリイミド前駆体樹脂を2−プロパノールで洗浄した後に60℃で24時間、真空乾燥させたものをDMSO−d6に溶解させてNMR分析し、1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン由来のメチルプロトンと5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール由来の芳香族プロトンとのピーク面積比を算出することにより、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの残基とピロメリット酸二無水物の残基で構成される繰り返し単位数(A)と1、3−(3−アミノプロピル)―1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの残基とピロメリット酸二無水物の残基で構成される繰り返し単位(B)の比率がB/(A+B)=0.10となっていることを確認した。
次に、φ8インチのシリコンウェハを2枚準備し、得られたポリイミド前駆体樹脂溶液をスピンコータを用いて2000rpm×30秒の条件で2枚それぞれに回転塗布した後、ホットプレート上で60℃×30分間乾燥させることにより、2枚のポリイミド前駆体樹脂付きシリコンウェハを得た。次に、得られた2枚のポリイミド前駆体樹脂付きシリコンウェハのうちの1枚からポリイミド前駆体樹脂を剥離し、金枠に固定した。次に、この金枠に固定したポリイミド前駆体樹脂塗膜と上記2枚のポリイミド前駆体樹脂付きシリコンウェハの残りの1枚を窒素雰囲気下のマッフル炉に投入し、100℃から350℃まで80分かけて昇温させ、さらに350℃の温度で60分加熱することにより、ポリイミドフィルムとポリイミド樹脂付きシリコンウェハを得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は5μm、線熱膨張係数は0.5ppm/℃、ガラス転移温度は380℃、熱分解温度は550℃であった。また、ポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハを用いて密着性評価を実施したところ、密着率は50%であった。
(実施例2〜10)
実施例1と同様な方法により、表1及び表2に示す配合割合でポリイミド前駆体溶液を調整し、さらに実施例1と同様な方法によりポリイミドフィルムとポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハを作成し、線熱膨張係数、ガラス転移温度、熱分解温度、密着率を評価した。その結果を表1及び表2示す。
実施例1と同様な方法により、表1及び表2に示す配合割合でポリイミド前駆体溶液を調整し、さらに実施例1と同様な方法によりポリイミドフィルムとポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハを作成し、線熱膨張係数、ガラス転移温度、熱分解温度、密着率を評価した。その結果を表1及び表2示す。
(比較例1〜3)
実施例1と同様な方法により、表3に示す配合割合でポリイミド前駆体溶液を調整し、さらに実施例1と同様な方法によりポリイミドフィルムとポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハを作成し、線熱膨張係数、ガラス転移温度、熱分解温度、密着率を評価した。その結果を表3示す。
実施例1と同様な方法により、表3に示す配合割合でポリイミド前駆体溶液を調整し、さらに実施例1と同様な方法によりポリイミドフィルムとポリイミド樹脂塗膜付きシリコンウェハを作成し、線熱膨張係数、ガラス転移温度、熱分解温度、密着率を評価した。その結果を表3示す。
本発明のポリイミド前駆体およびその樹脂組成物は、シリコンウェハなどの低熱膨張基材の上に塗布、熱環化した後に得られるポリイミドと基材との熱膨張係数の差を小さくでき、なおかつ良好な密着性と高い耐熱性が発現するので、耐熱サイクル性、耐熱ショック性など、半導体デバイスの性能向上の要求に応えることができ、電子機器の高機能化や小型化や薄型化の市場ニーズに応えることができる。従って、産業界に寄与することが大である。
Claims (4)
- 下記の一般式(化1)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R2はベンゾオキサゾール構造を有する2価の芳香族環基を示す)で表される繰り返し単位と下記の一般式(化2)(式中、R1は炭素数6〜30の4価の芳香族環または芳香族複素環基、Xは水素原子もしくは炭素数1〜30の1価の有機基、R3はシロキサン構造を有する2価の有機基)で表される繰り返し単位を少なくとも含むポリイミド前駆体であって、前記式(化1)で表される繰り返し単位数をAとし、前記式(化2)で表される繰り返し単位数をBとした場合に、0.10≦{B/(A+B)}≦0.30の関係を満たしており、N−メチル−2−ピロリドン中に0.2g/dlの樹脂濃度となるように溶解させて25℃で測定した時の還元粘度が0.1〜5.0dl/gであることを特徴とするポリイミド前駆体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド前駆体が有機溶剤に溶解していることを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
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