JP6733220B2 - 樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜 - Google Patents
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Description
近年、ポリイミド樹脂はその良好な耐熱性からディスプレイ基材への適用が期待されているが、製造工程で高温プロセスがあるためにポリイミド樹脂にも更なる耐熱性が求められるようになってきた。
特許文献1には、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンから製造されるポリイミド樹脂が記載されている。
本発明の目的は、耐熱性及び高温域における低熱膨張性に優れるポリイミド樹脂膜を形成することができる樹脂組成物、及びこれを用いたポリイミド樹脂膜を提供することである。
ポリイミド樹脂の耐熱性向上及び低熱膨張化のために、剛直な骨格を有し置換基の少ないモノマー同士を組み合わせた。しかしながら、剛直な骨格のポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂膜の形成が極めて困難となるという問題があった。
本発明者らは、鋭意研究を行い、4つのモノマーを組み合わせ、その比率を制御することで、本発明に至った。
1.(a)ポリイミド前駆体と、
(b)有機溶剤とを含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミド前駆体が、下記式(1)〜(4)で表される構造単位を有し、
前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位の合計に対し、前記式(1)で表される構造単位が98.5〜99.9モル%であり、
前記式(2)で表される構造単位及び前記式(4)で表される構造単位の合計に対し、前記式(2)で表される構造単位が50.0モル%以上である樹脂組成物。
2.前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が、5,000〜300,000である1に記載の樹脂組成物。
3.1又は2に記載の樹脂組成物が硬化したポリイミド樹脂膜。
4.100℃〜200℃における熱膨張係数が20ppm/K以下である3に記載のポリイミド樹脂膜。
5.100℃〜400℃における熱膨張係数が30ppm/K以下である3に記載のポリイミド樹脂膜。
6.375℃〜425℃における熱膨張係数が30ppm/K以下である3に記載のポリイミド樹脂膜。
7.5%重量減少温度が550℃以上である3〜6のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
8.破断点強度が400MPa以上である3〜7のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
9.弾性率が5GPa以上である3〜8のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミド前駆体はポリアミド酸であり、下記式(1)〜(4)で表される構造単位を有する。
また、式(2)で表される構造単位及び式(4)で表される構造単位の合計に対し、式(2)で表される構造単位が50.0モル%以上である。60%モル以上が好ましく、75〜99.9モル%がより好ましい。
R4の芳香族環としては、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ナフタレン、ジフェニルスルホン、2,2−ジフェニルプロパン等が挙げられる。
中でも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−テトラカルボン酸2,3:3’,4’−二無水物が好ましい。
R3の芳香族環としては、ビフェニル、キシレン、ナフタレン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルスルフィド、ベンゾフェノン、ビス(フェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(フェノキシ)ビフェニル、ビス(フェノキシ)ベンゼン、2,2−ジフェニルプロパン、ビス(フェノキシフェニル)プロパン、ビス(フェノキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
R3の複素環としては、ピリジン、トリアジン、ベンゾフラン、カルバゾール、フェノチアジン、チアジアゾール等が挙げられる。
中でも、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ポリイミド前駆体は、式(1)〜(4)で表される構造単位のみで構成されてもよく、その他の構造を含んでいてもよい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線により換算して算出することができる。
(b)有機溶剤は、ポリイミド前駆体を合成した際に残留している有機溶剤であってもよく、また、その他の有機溶剤を用いてもよい。
有機溶剤の含有量は、良好な薄膜を形成できる塗布性等の観点から、樹脂組成物中、5〜95質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
この際に、温度は、ポリイミド前駆体のポリアミック酸がポリイミドに閉環する温度以下で飛散させるようにすることが好ましい。一般には、150℃以下で、より低い温度にすることが好ましい。
上記範囲内であることにより、支持体等に良好に塗布することができる。
粘度は、例えば、E型粘度計VISCONICEHD(東機産業株式会社製)を用い、23℃で測定することができる。
これにより、樹脂組成物にネガ型の感光性を付与することができる。
光重合開始剤は、樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜10質量%用いることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、例えば、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、100質量%が、(a)ポリイミド前駆体、(b)有機溶剤、架橋剤、光重合開始剤、密着助剤及び酸発生剤からなってもよい。
樹脂組成物を加熱することで、ポリイミド前駆体がポリイミドになり、硬化し、耐熱性及び高温域における低熱膨張性に優れるポリイミド樹脂膜とすることができる。
支持体は、450℃以上、好ましくは500℃以上のガラス転移温度を持つ素材が好ましい。このような素材としては、例えば、ガラス及びシリコンウエハ等が挙げられる。
具体的には、0.3〜5.0mmが好ましく、0.5〜3.0mmがより好ましく、0.7〜1.5mmがさらに好ましい。
乾燥は、温度を変化させ、二段階以上の工程で実施してもよい。
また、加熱時間は、1分間〜6時間が好ましく、3分間〜4時間がより好ましく、15分間〜2時間がさらに好ましい。
加熱雰囲気は、大気中、窒素雰囲気下等が挙げられる。窒素雰囲気下が好ましい。
加熱を行う装置としては、昇温速度及び硬化中の雰囲気のコントロールが可能で、一定時間、特定の温度を保持することが可能な装置であればよい。
100〜400℃の範囲において、50ppm/K以下が好ましく、30ppm/K以下がより好ましく、20ppm/K以下がさらに好ましく、10ppm/K以下が特に好ましい。
375〜425℃の高温域において、50ppm/K以下が好ましく、30ppm/K以下がより好ましく、20ppm/K以下がさらに好ましく、15ppm/K以下が特に好ましい。
下限値に特に制限はないが、通常0ppm/K超である。
熱膨張係数が50ppm/K以下であることにより、ディスプレイ基材等として最適な高耐熱のポリイミド樹脂膜とすることができる。
5%重量減少温度は、550℃以上が好ましく、570℃がより好ましく、580℃がさらに好ましい。550℃以上であることにより、よりディスプレイ基材等として最適な高耐熱のポリイミド樹脂膜を得やすくなる。
上限値に特に制限はないが、通常700℃以下である。
400MPa以上であることにより、ポリイミド樹脂膜の耐衝撃性が向上し、ディスプレイ等に用いた場合、長期信頼性が確保でき、ディスプレイ等の製造工程において不良発生率を低下できる傾向にある。
破断伸びが5%以上であると、折り曲げても尤度(ゆうど)があるため、よりフレキシブル性を付加できる傾向がある。
弾性率が1GPa以上であると、熱膨張係数が小さくなる傾向にあるため、高温曝露時の変形が小さくなり、寸法ずれが生じにくくなる。これにより、各種半導体素子に用いた場合、その信頼性が向上する傾向がある。
(樹脂組成物の製造)
窒素雰囲気下の200mlフラスコに、p−フェニレンジアミン10.85g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.10g、N−メチルピロリドン(NMP)164gを入れ、15分間、40℃で加熱攪拌しモノマーを溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)13.19gと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)11.86gを加え、さらに30分間攪拌し、ポリイミド前駆体の樹脂溶液(樹脂組成物)を得た。
得られた樹脂組成物の粘度を、E型粘度計VISCONICEHD(東機産業株式会社製)を用い、23℃で測定した。結果を表1に示す。
ポリイミド前駆体0.5mgに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
測定装置:検出器 株式会社島津製作所製RID−20AD
ポンプ :株式会社島津製作所社製LC−20AD
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5×2本
溶離液 :THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速 :1.0ml/min、検出器:UV270nm
シャーレを精密に、天秤AUX−320(株式会社島津製作所製)で測定し、シャーレに樹脂組成物を入れ、樹脂組成物とシャーレの合計質量を、同様に測定した。
150℃で有機溶剤を飛散させ、その後、シャーレと処理後の樹脂組成物の合計質量を、同様に測定した。
処理前後のシャーレと樹脂組成物のそれぞれの合計質量からシャーレの質量を引いて、処理前の樹脂組成物質量から処理後の樹脂組成物質量を引いた値を、処理前の樹脂組成物質量で割り算をして算出した。
結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物を、6インチシリコンウエハ上に、スピンコートで塗布した後、130℃のホットプレートで2分間ベーク(乾燥)し、厚さ18μmになるように製膜した。
次いで、得られた膜を、硬化炉を用い、200℃で30分間、さらに昇温して450℃で60分間加熱硬化し、樹脂組成物中のポリイミド前駆体をイミド化し、ポリイミド樹脂膜を得た。
得られたポリイミド樹脂膜の膜厚は10μmであった。得られたポリイミド樹脂膜をシリコンウエハから剥離し、以下の評価に用いた。
耐熱性評価として、上記ポリイミド樹脂膜を5mm×15mmに切り出し、サーマルメカニカルアナライザー(株式会社リガク製)を用いて、25℃から500℃まで、毎分5℃ずつ昇温したときの、100〜200℃の範囲、100〜400℃の範囲、及び375〜425℃の範囲の熱膨張係数を測定した。結果を表1に示す。
p−フェニレンジアミンを8.08g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0.15g、NMPを173g、PMDAを9.88g、及びs−BPDAを8.89gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜を製造し、評価した。結果を表1に示す。
p−フェニレンジアミンを8.50g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0.08g、NMPを173g、PMDAを13.78g、及びs−BPDAを4.65gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜を製造し、評価した。結果を表1に示す。
p−フェニレンジアミンを7.26g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0g、NMPを173g、PMDAを0g、及びs−BPDAを19.74gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜を製造し、評価した。結果を表1に示す。
p−フェニレンジアミンを7.22g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0.07g、NMPを173g、PMDAを0.07g、及びs−BPDAを19.64gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜を製造し、評価した。結果を表1に示す。
p−フェニレンジアミンを9.94g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0g、NMPを170g、PMDAを20.06g、及びs−BPDAを0gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物をシリコンウエハ上に塗布したが、乾燥工程でうろこ状にひび割れが生じ、ポリイミド樹脂膜を形成することができなかった。そのため、耐熱性評価及び機械特性評価は行わなかった。
p−フェニレンジアミンを8.87g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0.34g、NMPを170g、PMDAを10.95g、及びs−BPDAを9.85gと変更した以外、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びポリイミド樹脂膜を製造し、評価した。結果を表1に示す。
比較例3では、モノマーとして、p−フェニレンジアミン及びPMDAのみを使用したため、樹脂膜を形成できなかった。
比較例4では、PMDAとs−BPDAの合計に対して、PMDAの比率が50モル%以上であったが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの比率を増やしたために、高温域での低熱膨張性が得られなかった。
Claims (12)
- (a)ポリイミド前駆体と、
(b)有機溶剤とを含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミド前駆体が、下記式(1)〜(4)で表される構造単位を有し、
前記式(1)で表される構造単位及び前記式(3)で表される構造単位の合計に対し、前記式(1)で表される構造単位が98.5〜99.9モル%であり、
前記式(2)で表される構造単位及び前記式(4)で表される構造単位の合計に対し、前記式(2)で表される構造単位が50.0モル%以上である樹脂組成物。
- 前記R 3 の芳香族環が、ビフェニル、キシレン、ナフタレン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルスルフィド、ベンゾフェノン、ビス(フェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(フェノキシ)ビフェニル、ビス(フェノキシ)ベンゼン、2,2−ジフェニルプロパン、ビス(フェノキシフェニル)プロパン又はビス(フェノキシフェニル)スルホンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記R 3 の複素環が、ピリジン、トリアジン、ベンゾフラン、カルバゾール、フェノチアジン又はチアジアゾールである、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記R 3 が、ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−若しくは2,4’−)ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−若しくは2,4’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−若しくは2,4’−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−若しくは2,4’−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ベンゾフェノンジアミン、4,4’−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル−6,6’−ジスルホン酸、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,7−ジアミノベンゾフラン、2,7−ジアミノカルバゾール、3,7−ジアミノフェノチアジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−チアジアゾール又は2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジンの残基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が、5,000〜300,000である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物が硬化したポリイミド樹脂膜。
- 100℃〜200℃における熱膨張係数が20ppm/K以下である請求項6に記載のポリイミド樹脂膜。
- 100℃〜400℃における熱膨張係数が30ppm/K以下である請求項6に記載のポリイミド樹脂膜。
- 375℃〜425℃における熱膨張係数が30ppm/K以下である請求項6に記載のポリイミド樹脂膜。
- 5%重量減少温度が550℃以上である請求項6〜9のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
- 破断点強度が400MPa以上である請求項6〜10のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
- 弾性率が5GPa以上である請求項6〜11のいずれかに記載のポリイミド樹脂膜。
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