JP2011187613A - 半導体素子用絶縁膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸及び芳香族テトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上のアシル化合物とを反応して得られるポリアミド酸を含むポリイミド前駆体組成物を、イミド化して成膜したポリイミド膜からなる半導体素子用絶縁膜であって、前記ポリアミド酸は、前記アシル化合物を、前記芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応して得られるポリアミド酸であり、前記ポリイミド膜の熱膨張率が2〜24ppm/℃である半導体素子用絶縁膜。
【選択図】なし
Description
前記ポリアミド酸は、前記アシル化合物を、前記芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応して得られるポリアミド酸であり、
前記ポリイミド膜の熱膨張率が2〜24ppm/℃であることを特徴とする。
これに対し、前記アシル化合物を、前記芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応して得られるポリアミド酸は、分子量が適度に高く、そのままでも塗工に適した粘度である。また、このポリアミド酸は、アシル化合物を、芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応させたことで、分子末端がカルボキシル基又は酸無水物基でエンドキャップされた構造となると考えられる。ポリアミド酸の分子末端が、カルボキシル基又は酸無水物基でエンドキャップされることにより、ポリアミド酸の保管時に大気中の水分等を吸水しても、吸水した水分がカルボキシル基や酸無水物基でトラップされるため、粘度が経時変化し難く、ワニス安定性に優れる。更にまた、放熱フィラーとの混和性にも優れる。
そして、このポリイミド前駆体組成物を成膜して得られるポリイミド膜は、耐熱性に優れ、更には、適度な柔軟性、強度を有し、熱膨張率が2〜24ppm/℃と、半導体素子基板に近い熱膨張率を有している。
このため、本発明の半導体素子用絶縁膜は、ポリイミド前駆体組成物のワニス安定性が良好であるため、取り扱い性に優れ、工程管理が容易である。そして、ポリイミド膜の熱膨張率を基板の熱膨張率に近づけることができるため、基板界面の残留応力を低減でき、半導体素子の製造時や使用時において、半導体素子基板の反りや、絶縁膜のクラック等を抑制できる。
芳香族ジアミンとしては、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンゾオキサゾール、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル及び4,4’−ジアミノベンズアニリドから選ばれる1種以上を、70〜100モル%含有するものが好ましく用いられる。これらの芳香族ジアミンは、比較的剛直な構造を有し、熱膨張率を低くしつつ耐熱性に優れたポリイミド膜を形成できる。芳香族ジアミン全体に対する上記した芳香族ジアミン(以下、剛直構造ジアミンともいう)の割合が70モル%未満であると、耐熱性が低下する傾向にある。
アシル化合物としては、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上を、70〜100モル%含有するものが好ましく用いられる。これらのアシル化合物は、比較的剛直な構造を有し、棒状の剛直鎖を形成することができるので、熱膨張率を低くしつつ耐熱性に優れたポリイミド膜を形成できる。アシル化合物全体に対する上記したアシル化合物(以下、剛直構造アシル化合物とうもいう)の割合が70モル%未満であると、ポリイミド膜の熱膨張率が大きくなり、耐熱性が低下する傾向にある。
ポリイミド前駆体組成物は、上記芳香族ジアミンと上記アシル化合物とを反応させて得られるポリアミド酸を少なくとも含有する。本発明においては、前記ポリアミド酸は、上記アシル化合物を、上記芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応して得られるポリアミド酸を用いる。好ましくは、上記芳香族ジアミン1モルに対し、上記アシル化合物を1.01〜1.15モル、より好ましくは1.02〜1.08モル、特に好ましくは1.02〜1.05モル反応させて得られるポリアミド酸である。
本発明の半導体素子用絶縁膜は、上記ポリイミド前駆体組成物をイミド化して成膜して得られるポリイミド膜からなる。
図1を用いて、本発明の半導体素子用絶縁膜を備えたデバイスの製造工程の一例を示す。
・重量平均分子量測定
測定装置:島津製作所製LC−10AD(解析ソフト:CLASS−VP、GPC for CLASS−VP)
UV検出:測定波長 270nm
カラム:PL製 Plgel 5μm MIXED−C 300×7.5mm
PL製 Plgel 5μm Guard 50×7.5m 2本
カラム温度:36℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.5L/Lと、テトラヒドロフラン(THF)0.5L/Lと、リン酸5.8g/Lの混合液
流量:1ml/min(ポンプ流量誤差±2%)
標準ポリスチレン:東ソー標準キッド
樹脂濃度0.1Wt%
ポリイミド前駆体組成物の粘度が30〜40Paの範囲になるように、N−メチルピロリドン(NMP)とジメチルアセトアミド(DMAc)とを重量比で1:1の割合で混合した混合溶剤を適宜加えて調整し、25℃で48時間放置後の粘度を、東機産業株株式会社製E型回転粘度計、中粘度用M型を用い、25℃、50rpmまたは100rpmの条件で測定した。±10%以内の粘度変化の場合は○とし、±10〜12%の粘度変化の場合は△とし、それ以外を×とした。
ポリイミド前駆体組成物に、平均粒径10μmの窒化ホウ素を樹脂重量に対して25質量%添加した後、攪拌して分散させた。25℃で3時間放置した後の分散性を目視で観察し、均一分散維持の場合は○とし、僅かに沈降分離が見られる場合は△とし、沈降分離が確認できる場合は×とした。
測定装置:Seiko instruments製 EXSTAR TMA/SS6000
測定試料:4mm×20mm×10μm
測定条件:25℃→300℃→25℃→300℃→25℃サイクルの2回目の冷却時における熱膨脹率変化を記録した。
昇温速度:5℃/分
荷重:2g(空気雰囲気)
測定装置:Seiko instruments製 EXSTAR 6000
測定試料:2g〜500mg
測定条件:N2ガスを200ml/分の流量で供給しながら、昇温速度10℃/℃にて、室温から600℃まで昇温し、1%重量減衰開始温度を記録した。
測定装置:Seiko instruments製 EXSTAR TMA/SS6000
測定試料:9mm×20mm×10μm
測定条件:最小張力/圧縮力=50mN、張力/圧力ケ゛イン=1.2、力振幅初期=50mN、周波数=1Hz、温度変化プログラム=室温〜300℃、昇温速度=5℃/min
測定装置:島津製作所製 精密万能試験機オートグラフ 床置型AG−10kNX
測定試料:0.01mm×10mm×35mm
測定条件:引張速度10mm/分(25℃)
測定装置:FT/IR−470Plus−Irtron IRT−30 (ニコレー製)
加熱温度:開始温度100℃〜700℃(30min)
昇温速度:20℃/min
(GC部)
カラム:Ultra ALLOY−DTM 2.5m×0.15mm
温度:300℃
注入口:300℃
インターフェース:280℃
キャリアガス:50Kpa 全流量60mL/min
シリコン基板上に製膜後の膜厚が30〜40μmとなるように、ポリイミド前駆体組成物を塗布後、プリベークした。この上にさらに該ポリイミド前駆体組成物を重ね塗布した。この操作を繰り返して膜厚を調整後、熱イミド化して試料を作製し、京都電子工業株式会社製、迅速熱伝導率計(QTM−50)を用いて熱伝導率を測定した。
(合成例1)
攪拌シール、窒素ガス導入ライン、温度計を設置した1Lセパラブルフラスコ中に、3,3’−ジアミノー4,4’−ジヒドロキシビフェニル(和歌山精化社製)37.4g(0.173モル)、アミノ安息香酸47.5g(0.351モル)、ポリリン酸(密度=2.06、メルク社製)450gを混合した。
上記混合液を、窒素雰囲気下、100℃で1時間攪拌した。反応系に試薬が均一に分散したことを確認後、反応温度を150℃(内部温度)まで昇温し、150℃で6時間加熱攪拌した。
反応液を80℃まで冷却後、攪拌装置(スリーワンモーター型攪拌装置)を設置した5Lの水中に攪拌しながら添加し、析出した黄色結晶を濾別して回収した。
回収した黄色結晶をアンモニア水で処理し、水洗処理を行い、過剰ポリリン酸を除去した後、NMP:水(9:1)混合溶剤系を用い、再結晶処理した。そして再結晶物を水洗処理し、加熱真空乾燥処理を行い、結晶体を得た。
この結晶体を、展開溶剤としてメタノールを用い、高速液体クロマトグラフィーにて、HPLC面積比で評価したところ、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾールの純度が98.5%以上であった。また、総合収率は52%であった。
下式に示す方法で2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェンを合成した。
すなわち、ニトロフェナシルブロミド24.4gを、アセトン300mlに溶解して氷冷攪拌しながら、水に溶解した硫化ナトリウム・9水和物13gを滴下した。そして、そのまま1時間攪拌した後、氷水300mlを加えて、沈殿をろ過、乾燥してジケトスルフィド誘導体14.6gを得た。
得られたジケトスルフィド誘導体7.2gと40%グリオキサール水溶液3.5gを、メタノール100mlとジクロロメタン100mlの混合溶液中で攪拌しながら、28%ナトリウムメトキシド4mlを滴下し、沈殿をろ過してニトロベンゾイルチオフェン誘導体6.1gを得た。
得られたニトロベンゾイルチオフェン誘導体3.8gを、酢酸50mlに溶解・攪拌しながら、塩酸30mlに塩化スズ17.0gを溶解した溶液を滴下し、100℃に昇温して4時間加熱・攪拌した。放冷後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後沈殿を炉別し、エタノールから再結晶して、結晶体2.2gを得た。
この結晶体の融点は190〜192℃で、NMR(核磁気共鳴装置:日本電子社製、JNM.ECM型500Mを使用)7.75ppm(d−d)4Hベンゼン環、7.72ppm(s)2Hチオフェン環、6.79ppm(d−d)4Hベンゼン環、6.30ppm(s)4Hアミノ基の分析結果より、2,5−ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェンであることが確認できた。
(実施例1)
高粘度攪拌装置、窒素ガスラインを備えた500mLセパラブルフラスコ中に2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.54g(0.03モル)を秤量した。次いで、N−メチルピロリドン(NMP)とジメチルアセトアミド(DMAc)とを重量比で1:1の割合で混合した混合溶剤(以下、混合溶剤という)90gを加え、室温にて30分間攪拌した。
この混合反応液を氷冷攪拌下にて、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)を粉体のまま添加した。さらに、上記混合溶剤20gを用い反応容器内に付着した3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を洗浄しながら追加添加した。氷冷攪拌2時間後、25℃に昇温後24時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量、ワニス安定性、フィラー分散性を表1に記載する。
得られたポリアミド酸に、上記混合溶剤を適宜加え、ワニスを室温で充分攪拌してワニス粘度が30〜50Psになるように調整し、ポリイミド前駆体組成物を得た。
このポリイミド前駆体組成物を、カップリング剤処理を施したシリコン基板にスピナーを用い塗布し、90℃6分ホットプレートを用いプリベーク処理した。(塗工膜厚はキュア後膜厚が8μmとなるように調整した)。次いで、イナートオーブンを用い、50℃×60分→150℃×30分→250℃×60分×最終キュア温度(350又は400℃)×60分→冷却(室温)の温度プロセスで熱イミド化して成膜した。
そして、50%フッ化水素酸を用い、シリコン基板から成膜した膜を剥離し、十分水洗後130℃3時間加熱乾燥して評価用フィルムを得て、破断強度(MPa)、破断の伸び(%)、熱膨張率(ppm/℃)、弾性率(GPa)、1%重量減衰開始温度(℃)、脱ガス検知温度(℃)、分解ガスの種類を評価した。結果を表1にまとめて記す。
実施例1において、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.54g(0.03モル)の代わりに、p−フェニレンジアミン3.25g(0.03モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.54g(0.03モル)の代わりに、4,4’−ジアミノベンズアニリド6.82g(0.03モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.54g(0.03モル)の代わりに、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.18g(0.0291モル)と下式(2)に示すSiジアミン0.224g(0.0009モル)とを用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール12.54g(0.03モル)の代わりに、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾール9.16g(0.0219モル)と、2,5‐ビス(4−アミノベンゾイル)チオフェン2.61g(0.0081モル)とを用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)の代わりに、ピロメリット酸二無水物6.8g(0.0312モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例3において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)の代わりに、ピロメリット酸二無水物6.8g(0.0312モル)を用いた以外は実施例3と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例5において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)の代わりに、ピロメリット酸二無水物6.8g(0.0312モル)を用いた以外は実施例5と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)の代わりに、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物10.06g(0.0312モル)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
実施例1において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量を12.55g(0.03モル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
このポリイミド前駆体組成物の粘度は、100Psを超え、ワニスハンドリングが大幅に悪化した。また、実施例1の混合溶剤を加えて粘度を30Psまで低下させたところ、樹脂濃度が5.0重量%以下まで低下し、厚膜塗工が困難であった。また、ワニス安定性が悪化した。初期分解ガス成分もベンゼン環由来のガス(C6系ガス)を検知した。
実施例1において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量を12.55g(0.03モル)とし、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビベンゾオキサゾールの使用量を13.06g(0.0312モル)とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
このポリイミド前駆体組成物は、ワニス安定性が極めて悪かった。また、膜の破断伸びが低く、強度不足が懸念される。更には、脱ガス開始温度が低く、初期分解ガス成分もベンゼン環由来のガスを検知した。
実施例2において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量を12.55g(0.03モル)とし、p−フェニレンジアミンの使用量を3.25g(0.03モル)とした以外は実施例2と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
このポリイミド前駆体組成物の粘度は、100Psを超え、ワニスハンドリングが大幅に悪化した。また、実施例1の混合溶剤を加えて粘度を30Psまで低下させたところ、樹脂濃度5.0重量%以下まで低下し、厚膜塗工が困難であった。また、フィラー分散性も悪かった。初期分解ガス成分はベンゼン環由来のガスを検知した。
実施例2において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の使用量を12.55g(0.03モル)とし、p−フェニレンジアミンの使用量を3.38g(0.0312モル)とした以外は実施例2と同様にしてポリアミド酸を得てポリイミド前駆体組成物を調製した。このポリイミド前駆体組成物を用い、実施例1と同様にして成膜した。
このポリイミド前駆体組成物は、ワニス安定性が極めて悪かった。また、膜の破断伸びが低く、強度不足が懸念される。更には、脱ガス開始温度が低く、初期分解ガス成分もベンゼン環由来のガスを検知した。
市販の低熱膨張自己密着型樹脂ワニス(商品名:「SP−042」 東レ社製)を用い、ワニス安定性、フィラー分散性を評価した。また、この樹脂ワニスを用いて実施例1と同様にして成膜し、破断強度(MPa)、破断の伸び(%)、熱膨張率(ppm/℃)、弾性率(GPa)、1%重量減衰開始温度(℃)、脱ガス検知温度(℃)、分解ガスの種類を評価した。
この樹脂ワニスは、―15℃での保存が必要であった。
また、脱ガス開始温度が300℃と極めて低かった。
実施例1において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物9.18g(0.0312モル)の使用量を9.53g(0.0324モル)とした以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は38000であった。
次に、得られたポリアミド酸30gと、実施例1のポリアミド酸70gと混合した。2種類のポリアミド酸は主鎖構造が同一のため、完全に溶解し、均一ワニスになった。このワニスに窒化ホウ素4.8g(商品名「HP−40」、JFES社製、平均粒径10μm、ポリアミド酸の全質量に対して30質量%に相当)を添加し、攪拌してポリイミド前駆体組成物を調製した。窒化ホウ素はワニスに均一分散した。このポリイミド前駆体組成物から成膜したフィルムの熱伝導率は1.4(W/m/K)であった。
実施例1のポリイミド前駆体組成物を、最終膜厚が3μmになるようにスピナーを用いてシリコン基板に塗布した。この基板を90℃×6分、ホットプレートを用いてプリベークした。次に、この基板上に、実施例5のポリイミド前駆体組成物を、最終膜厚が2μmになるようにスピナーを用い塗布し、90℃×6分、ホットプレートでプリベークした。塗工およびプリベーク後の膜中のボイドおよび剥離(浮き)は見られなかった。この基板を、イナートオーブンを用い最終キュア温度400℃×60分の条件で熱イミド化して成膜た。膜を通常の方法でシリコン基板より剥離した。剥離した膜の破断強度は310Mpa、破断伸び39%で優れた膜機械特性を示した。また、2種類の膜は界面で剥離することなく一体化していた。
2:下部表面電極
3:レジスト膜
4:コンタクト電極
5:半導体素子用絶縁膜
6:上部表面電極
7:裏面電極
Claims (6)
- 芳香族ジアミンと、芳香族テトラカルボン酸及び芳香族テトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上のアシル化合物とを反応して得られるポリアミド酸を含むポリイミド前駆体組成物を、イミド化して成膜したポリイミド膜からなる半導体素子用絶縁膜であって、
前記ポリアミド酸は、前記アシル化合物を、前記芳香族ジアミンよりも1モル%以上多く反応して得られるポリアミド酸であり、
前記ポリイミド膜の熱膨張率が2〜24ppm/℃であることを特徴とする半導体素子用絶縁膜。 - 前記芳香族ジアミンは、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−5,5’−ビスベンゾオキサゾール、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル及び4,4’−ジアミノベンズアニリドから選ばれる1種以上を70〜100モル%含有する、請求項1に記載の半導体素子用絶縁膜。
- 前記アシル化合物は、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から選ばれる1種以上を70〜100モル%含有する、請求項1に記載の半導体素子用絶縁膜。
- 前記ポリイミド前駆体組成物は、絶縁性放熱フィラーを含有する、請求項1から3のいずれか記載の半導体素子用絶縁膜。
- 前記絶縁性放熱フィラーが、窒化ホウ素である、請求項4に記載の半導体素子用絶縁膜。
- 前記ポリアミド酸は、ポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上200,000以下であるポリアミド酸の割合が70〜100質量%で、ポリスチレン換算重量平均分子量が10,000以上50,000未満であるポリアミド酸の割合が0〜30質量%である、請求項1から5のいずれか記載の半導体素子用絶縁膜。
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