JP2011094406A - 外ダイアフラム形式の角形鋼管柱 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の外ダイアフラム1形式の角形鋼管柱2は、H型断面梁が直交方向に接合可能とされる外ダイアフラム1を柱梁接合部に備えた外ダイアフラム1形式の角形鋼管柱2であって、前記外ダイアフラム1の張出し幅Hdを、鋼管の外径Dに対してHd=0.15D〜0.4Dとし、前記外ダイアフラム1の断面の面積Ad(=張出し幅Hd×板厚td)を、接合されるH型断面梁からの作用応力に対してせん断抵抗力にて耐え得る面積とされている。
【選択図】図1
Description
このような外ダイアフラム形式の柱梁接合構造においては、鉄骨柱は切断せずに、梁の接合箇所で外部から平板状の外ダイアフラムを溶接して鉄骨柱と梁の接合部を形成する。ただし、図2(a)に示すごとく、接合される梁材に生じる曲げモーメントに起因する作用応力に対し、外ダイアフラムの基端側に応力を伝達させ、外ダイアフラムの基端側近傍に引張降伏域を生じさせる構造とするため、(社)日本建築学会の基準では、外ダイアフラムと梁軸方向とのなす角度θを30°以内と規定している。
外ダイアフラム形式の角形鋼管柱の運搬性に関しては、ダイアフラムの張出し部の大きさによって、トラックに積載可能な鉄骨柱本数が制約されるため、全数の運搬時間を左右する。そして更に、積載可能な本数による運搬費用が柱梁接合構造物の建設費用に影響することとなる。また、外ダイアフラムの張り出しのため、外壁と干渉するため隅柱、側柱として用いることが難しいという設計上の課題もあり、採用されるケースが少なかった。
特許文献1は、閉鎖型断面の鉄骨柱と鉄骨梁とが結合されている鉄骨構造体の仕口において、環状体の開口が鉄骨柱の外周の寸法より大きくされ、鉄骨梁のフランジに対応する鉄骨柱の部分に環状体が嵌められ、環状体の内周面と鉄骨柱の外周面との間の隙間が溶融金属で埋められて、環状体と鉄骨柱とが互いに溶接され、鉄骨梁のウェブが二つの環状体の間の鉄骨柱に直接またはガセットプレートを介して固定され、鉄骨梁のフランジが環状体に溶接されている鉄骨構造体の仕口を開示する。
特許文献3は、鋼管柱の所定部分に、該鋼管柱に嵌合する内径を有し且つ所定の肉厚を有した厚肉鋼管を該厚肉鋼管の軸に垂直な面で所定の厚さに切断してなる一体環状のダイアフラムが、嵌合され、互いに隅肉溶接されているダイアフラム付鋼管柱を開示する。
例えば、特許文献1の鉄骨構造体の仕口は、角形鋼管の柱にその外周より大きい環状体が嵌められ、環状体と鋼管、環状体とフランジが溶接で接合された構造となっている。
しかしながら、梁から伝達される作用応力に対し、ダイアフラムのどの部分に応力が加わりどの部分で降伏変形するのか、その応力に耐えうるものとなっているか等の明確な記載がないため、本技術の実際の現場への採用に関しては慎重にならざるを得ない。また、本技術のように、4枚の矩形の板を接合しただけの外ダイアフラム構造では、冷間成形角形鋼管の角部が曲面のため、外ダイアフラムと鋼管の角部の溶接ができず、十分な耐震性を確保することができないといった問題も存在する。
しかしながら、この技術では張出し幅が厚肉鋼管の厚さ以下に限定される。冷間成形角形鋼管の厚さは、現状の製品では60mm以下なので、実際には、張出し幅を必要な強度を確保可能に大きくすることができず、梁材からの作用応力に耐えられる外ダイアフラムの製造は困難なのが実情である。
しかしながら、この外ダイアフラムは複雑な断面形状から鋳造によらなければ製造できない。鋳造で製造される外ダイアフラムは製造コストが高く、また溶接性や靭性にも劣るという問題がある。
しかしながら、この技術によるダイアフラムも、梁から伝達される作用応力に対し、ダイアフラムのどの部分に応力が加わりどの部分で降伏変形するのか、その応力に耐えうるものとなっているか等の明確な記載がないため、本技術の実際の現場への採用に関しては慎重にならざるを得ない。
すなわち、本発明の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱は、H型断面の梁材が直交方向に接合可能とされる外ダイアフラムを柱梁接合部に備えた外ダイアフラム形式の角形鋼管柱であって、前記外ダイアフラムの張出し幅Hdを、鋼管の外径Dに対してHd=0.15D〜0.4Dとし、前記外ダイアフラムの断面積Ad(=張出し幅Hd×板厚td)を、接合される梁材からの作用応力に対してせん断抵抗力にて耐え得る面積に設定していることを特徴とする。
その理由として、従来より、外ダイアフラムの梁方向の張り出し部を単に短縮した形状のアイデアはあったが、これでは地震などに対して安全とは言えないからである。そこで、本願出願人らは、コンピュータ・シミュレーション等を通じ、地震時などに作用する大きな力が外ダイアフラムに及ぼす状態(応力状況)と崩壊機構を解析した。
なお、図2(a)に示すような従来の外ダイアフラムに関しては、その崩壊はせん断降伏ではなく、外ダイアフラムの基端側の領域(領域A)に破壊に至る引張降伏が発生することを想定して形状が決められている。特許文献1〜特許文献5に開示された外ダイアフラムに関しても、崩壊に関する明確な説明はなく、従来の基準に則り、引張降伏が発生することを想定た形状決定が行われているものと考えられる。
本願出願人らが行ったコンピュータ・シミュレーション等に基づけば、外ダイアフラムの張り出し幅Hdは、鋼管の外形Dの0.15倍以上必要であることが知見された。
以上の構成を採用することにより、梁材からの作用応力に対して十分な耐力を有すると共に、張出し部が小さく運搬性及び建設時のハンドリング性に優れる外ダイアフラム形式の鋼管柱が実現できる。
また、前記外ダイアフラムの先端側に形成され且つ梁材が接続される外縁直線部は、前記梁材のフランジ幅より幅広とされているとよい。
前記外ダイアフラムの板厚tdを梁材のフランジ厚tfより厚くするとよい。
なお、前記外ダイアフラムが、炭素当量Ceq≦0.44%、P≦0.015%、S≦0.005%で、降伏応力Yp≧325N/mm2を満たす厚鋼板から切り出されたものであることは非常に好ましい。
そこで、本発明では、厚鋼板(JIS規格鋼材、または国土交通大臣認定鋼材)から切り出すものとする。強度クラスは降伏応力Yp=325MPa級(引っ張り強さTs=490MPa級)以上であり、降伏応力Yp=440MPa級(引っ張り強さTs=590MPa級)以下のものを採用するのが好ましい。
係る条件を満たす厚鋼板としては、JIS規格鋼材のSN490→Ceq≦0.46%、P≦0.020%、S≦0.008%、国土交通大臣認定鋼材のSA440→Ceq≦0.47%、P≦0.020%、S≦0.008%などが採用可能である。しかしながら、溶接割れの生じにくさ、HAZ靱性確保のため、Ceq≦0.44%、P≦0.015%、S≦0.005%の成分の厚鋼板から外ダイアフラムを切り出すこととする。なお、本願出願人らは、Ceq=0.46%では予熱なしで溶接した場合に溶接割れが生じることを確認している。
外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接は、完全溶け込み溶接を行うと外ダイアフラムの板厚が厚い場合、膨大な溶接量となり溶接作業時間が長くなるので溶接施工性が悪い。梁材からの梁方向の作用応力に対して、主に外ダイアフラムの外側張り出し部(図2(b)の領域B)にせん断応力が作用し、角形鋼管柱との溶接は完全溶け込み溶接でなくても十分耐えることが可能なため、部分溶け込み溶接とする。
加えて、前記外ダイアフラムにおいて、前記外ダイアフラムにおいて、梁材が取り付く部分である取り付け部位と、梁材が取り付かない部分である非取り付け部位とが存在する場合、前記非取り付け部位の張出し幅Hd’を前記取り付け部位の張り出し幅Hdより小さく設定するとよい。
図1を参照して、本発明に係る外ダイアフラム1形式の角形鋼管柱2及びこの角形鋼管柱2に梁部材5が直接接続されてなる柱梁接合部の構成(柱梁接合部の構造)について説明する。
すなわち、図1に示すごとく、外ダイアフラム1形式の柱梁接合部は、角形鋼管柱2の外壁面に外ダイアフラム1を配備した上で、角形鋼管柱2と外ダイアフラム1の基端とを溶接し、外ダイアフラム1の先端に梁部材5を溶接する。その後、溶接した梁部材5に梁材3をボルト等で接続する。なお、梁部材5とそれに接続された梁材3とを合わせたものを単に梁と呼ぶ場合もある。
さらに、図1(b)に示すように、外ダイアフラム1の断面の面積Adを、接合されるH型断面の梁からの作用応力に対してせん断抵抗力にて耐え得る面積としている。なお、外ダイアフラム1の断面の面積Ad=張出し幅Hd×板厚tdである。
外ダイアフラム1は角形角形鋼管柱2に嵌り込んだ上で上下に一対設けられる。上側の外ダイアフラム1aと下側の外ダイアフラム1bとの間隔は、それに取り付く梁部材5に接続されるH型梁材3の梁せいと同じとされる。
外ダイアフラム1の断面の面積Ad、特に、図2(b)に示される領域Bの断面積Adに関しては、以下に述べる式(1)を満たすことが必須である。
式(1)の導出に関しては、まず、外ダイアフラム1における降伏耐力Pyが、梁フランジの全断面が降伏する荷重Pmaxを上回るという状況(式(2)の関係)を考える。この状況は、接合される梁(梁部材5及び梁材3)に生じる曲げモーメントに起因する作用応力より、外ダイアフラム1の断面積Adで耐え得るせん断抵抗力が大きいようにすることを意味する。
なお、本特許では、上記式に限定されるものではなく、外リングの降伏耐力Pyが梁方向荷重に対し、Hd×tdの断面積に掛かるせん断破壊モードの考え方で構築されていればよい。また、本特許では支配的な破壊モードがせん断破壊モードとなるものであるが、一部領域で引張破壊モードなどの他のモードが含まれる複合的な破壊モードとなってもよい。
加えて、梁部材5が取り付く外ダイアフラム1の外縁直線部Lに関し、当該外縁直線部Lの長さを梁部材5のフランジ幅よりも長くしている。好ましくは、外ダイアフラム1の外縁直線部Lの長さは梁部材5の幅(フランジ幅)より幅方向両側に各20mm以上長くするとよい。
ところで、図1において例示した外ダイアフラム1の平面視での外形状は、略四角形であったが、それ以外の形状も採用することが可能である。
すなわち、外ダイアフラム1の外形状は、張り出し幅Hdと、断面積Adと、梁部材5の幅以上の外縁直線部Lを確保した形状が基本となり、他の部分の形状は、若干の変形の余地を有している。
本願発明者らは、外ダイアフラム1の形状・寸法を明らかとするために、コンピュータによるFEM解析を行うと共に様々な実験を重ね鋭意研究を行った(図4にFEM解析の一例を示す)。その結果を以下に述べる。
この実施例では、角形鋼管柱2の板厚tcf、鋼管径Dとしては、(1)降伏応力Yp=385N/mm2級の鋼板からなる板厚19mm、鋼管径400mmの角形鋼管柱2、(2)降伏応力Yp=385N/mm2級の鋼板からなる板厚28mm、鋼管径600mmの角形鋼管柱2、(3) 降伏応力Yp=440N/mm2級の鋼板からなる板厚40mm、鋼管径1000mmの角形鋼管柱2を考え、それらに対して、外ダイアフラム1の板厚tdと張り出し幅Hdを変化させ、そのときの外ダイアフラム1の耐力Pyが、接続される梁部材5及び梁材3の降伏耐力を上回る条件、言い換えるならば、外ダイアフラム1が安全上問題ない条件をシミュレーションにより算出した。
また、Hd/Dが大きくなると、Hd/tdが大きくなり、ハンドリング性や運搬性が劣る。加えて、外ダイアフラム1の破壊形態がせん断降伏する前に局部座屈するようになって、想定の破壊モードが得られないため、Hd/D≦0.40とする。
表1の結果を鑑みるに、式(1)を満たす(○となる)ためには、Hd/td≧0.15であることが必要不可欠である。また、同時にHd/D=0.45の際には、式(1)を満たしていないため、Hd/D≦0.40の条件も必要不可欠である。
以上、FEM解析モデルのシミュレーション結果から考えて、外ダイアフラム1の形状を鋼管の外径Dに対してHd=0.15D〜0.4Dとすると共に、外ダイアフラム1の断面積Adを、式(1)を満たすように構成することによって、外ダイアフラム1形式の柱梁接合構造においても張出し部を最小限に抑制でき、ハンドリング性及び運搬性に優れ、かつ十分な耐力を有する柱梁接合構造を構成可能となる。
例えば、図5に示すごとく、外ダイアフラム1において、H形断面梁が取り付く部分である取り付け部位と、H形断面梁が取り付かない部分(サイド側)である非取り付け部位とが存在する場合においては、非取り付け部位の張出し幅Hd’を取り付け部位の張り出し幅Hdより小さく設定するとよい。この場合、外ダイアフラム1の形状確保、溶接施工の容易さを鑑みれば、サイド側の張り出し幅Hd’は最低25mm以上とするのが好ましい。
本実施形態では、外ダイアフラム1に梁部材5が溶接により取り付けられた柱梁接合部を例示して説明を行った。しかしながら、外ダイアフラム1に直接、H形梁材3が現場溶接接合された柱梁接合部であっても、本発明の角形鋼管柱2は同様の作用効果を奏するものとなっている。
1a 上側の外ダイアフラム
1b 下側の外ダイアフラム
2 鋼管柱
3 梁材
3a 梁材の上フランジ
3b 梁材の下フランジ
5 梁部材
5a 梁部材の上フランジ
5b 梁部材の下フランジ
L 外縁直線部
Claims (7)
- H型断面の梁材が直交方向に接合可能とされる外ダイアフラムを柱梁接合部に備えた外ダイアフラム形式の角形鋼管柱であって、
前記外ダイアフラムの張出し幅Hdを、鋼管の外径Dに対してHd=0.15D〜0.4Dとし、
前記外ダイアフラムの断面積Ad(=張出し幅Hd×板厚td)を、接合される梁材からの作用応力に対してせん断抵抗力にて耐え得る面積に設定していることを特徴とする外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。 - 前記接合される梁材に生じる曲げモーメントに起因する作用応力より、外ダイアフラムの断面積Adで耐え得るせん断抵抗力が大きいように、前記断面積Adを設定していることを特徴とする請求項1に記載の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。
- 前記外ダイアフラムの先端側に形成され且つ梁材が接続される外縁直線部は、前記梁材のフランジ幅より幅広とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。
- 前記外ダイアフラムの板厚tdを梁材のフランジ厚tfより厚くしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。
- 前記外ダイアフラムが、炭素当量Ceq≦0.44%、P≦0.015%、S≦0.005%で、降伏応力Yp≧325N/mm2を満たす厚鋼板から切り出されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。
- 前記角形鋼管柱と外ダイアフラムとを部分溶け込み溶接で接合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の外ダイアフラム形式の鋼管柱。
- 前記外ダイアフラムにおいて、梁材が取り付く部分である取り付け部位と、梁材が取り付かない部分である非取り付け部位とが存在する場合、
前記非取り付け部位の張出し幅Hd’を前記取り付け部位の張り出し幅Hdより小さく設定していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の外ダイアフラム形式の角形鋼管柱。
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