JP4968679B2 - 柱梁接合部コア用の角形鋼管、及びその製造方法 - Google Patents
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特許文献1(特公昭49−17451 角形鋼管鉄骨構造)は、外周が略方形で内周が円形断面の短筒状のND接合部コア(短筒状仕口本体)であり、遠心鋳造により製造されるものである。
特許文献2(特開2001−248234 柱梁接合金物及び柱梁接合構造)は、角形断面管の内部隅角部に、接合される梁の梁成よりも長い範囲に亘って形成された厚肉部が一体的に鋳造成形されたものである。
例えば、特許文献3(特許2747447号 角鋼管柱)は、角形鋼管柱として、長手方向の一部に肉厚部を持つ特殊構造の角形鋼管を鋳造により製造するもので、その肉厚部を柱梁接合部とするものもある。
また、特許文献4(実開昭54−116910 内側隅部に膨出隅肉を有する角形鋼管柱)は図11に示すように、内側隅部に膨出隅部51aを持つ特殊断面の溝形鋼51を2丁合わせに溶接接合して角形鋼管柱52とするものである。この場合、柱における柱梁接合部もその他の部分も同一断面形状となるが、梁からの応力が集中し易い内側隅部の肉厚を大(膨出隅部51a)とすることで、梁からの応力を柱に伝達可能な耐力を持つものとなる。特許文献5(特許2915149号 角形鋼管柱)も特許文献4と基本的には同じある。
一方、角形鋼管柱として特許文献4、5のように、特殊断面の溝形鋼の2丁合わせ溶接で特殊断面の角形鋼管を製造する方法は、特殊断面の溝形鋼を製造する製造設備(圧延ロール)の費用が高く、大量の需要がある場合でなければ、コスト的に不利となる。
この場合、梁成に応じた高さ寸法に切断することで任意のコア高さに対応できるので、鋳造する方法と比較して有利である。
しかし、この方法の場合、素材の溝形鋼として市販の溝形鋼(JIS規格の溝形鋼)を使用することができない。すなわち、建築物の角形鋼管柱として一般に、日本鉄鋼連盟により規格化された建築構造用冷間成形角形鋼管が用いられているが、この建築構造用冷間成形角形鋼管の各サイズに対応する柱梁接合部コアの製造に使用できるサイズの溝形鋼は、市販の溝形鋼には存在しない。
接合部コアと角形鋼管柱との良好な突き合わせ溶接が可能なために、ND接合部コアの断面の外周が角形鋼管柱の断面の外周より大きいか少なくとも等しい必要があるが、例えば辺寸法が200mm×200mmの角形鋼管柱に対応するND接合コア用の角形鋼管を製造しようとする場合、角形鋼管柱の寸法公差αを考慮した場合、200mm+αの辺寸法が少なくとも必要であるから、辺寸法(ウエブ寸法)200mmの溝形鋼ではその条件を満たすことができない。
そこで、特許文献4、5と同様に特殊断面の溝形鋼を製造して、それを用いる必要が生じるが、特殊断面の溝形鋼を製造する必要があるのでは、製造設備の費用が高くつく。
(1)ND接合部コアと接合する柱断面より外周が大きく、且つ内周が小さいこと、
(2)ND接合部コアを介して梁から柱への応力伝達が可能な耐力を有すること、
である。
上記(1)の条件は図10(ロ)の通りであり、ND接合部コア1’の断面内に角形鋼管柱2の断面が含まれるものである。ND接合部コア1’の辺寸法をA、板厚をt、角形鋼管柱2の辺寸法をA0、板厚をt0で示す。
上記(2)の条件は辺寸法A、板厚t、内側隅角部のR(アール)、材質等が関係するが、強度計算により求められる。
この条件を満たす接合部コア用の角形鋼管を市販の形鋼を素材として製造できれば、接合部コアを安価に製造することができるので、実用的な価値が大きい。本願発明者は、このような背景のもとに、建築構造用冷間成形角形鋼管の各部寸法及び市販の山形鋼(JIS規格の山形鋼)の各部寸法を考慮して種々考察した結果、市販の山形鋼に所定の加工を施すとともにその加工山形鋼の1対を適切に組んで溶接接合することで、建築構造用冷間成形角形鋼管の呼び寸法(辺寸法)が一定のサイズ範囲のものであれば、その呼び寸法の全ての板厚に対応する接合部コアを、市販の山形鋼を素材として製造できるという着想を得た。
規格品の熱間圧延の山形鋼群から選択した特定サイズの山形鋼の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分を切り落として短くするとともに開先加工を行ってなる2本の加工山形鋼を、角形鋼管柱の断面の辺寸法より若干大きな辺寸法の方形に仮組みするとともに、その際、一方の加工山形鋼の前記加工された短辺の先端の開先部が他方の加工山形鋼の加工されていない長辺の先端部内面に対向するように仮組みし、前記短辺先端開先部と長辺先端部内面との間を溶接部として溶接接合したことを特徴とする。
規格品の熱間圧延の山形鋼群の中から選択して特定サイズの山形鋼の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分を切り落として短くするとともに開先加工を行ってなる2本の加工山形鋼を、方形の角を挟む2辺のうちの一方の辺が角形鋼管柱の断面の辺寸法より若干大きく他方の辺がさらに溶接時の縮み代だけ大きい方形に仮組みするとともに、その際、一方の加工山形鋼の前記加工された短辺の先端の開先部が他方の加工山形鋼の加工されていない長辺の先端部内面に対向するように仮組みし、前記短辺先端開先部と長辺先端部内面との間を溶接部として溶接接合することを特徴とする。
その場合、使用する山形鋼の呼び寸法(辺寸法)と同じ呼び寸法(辺寸法)の建築構造用冷間成形角形鋼管に対応する接合部コア用角形鋼管を製造することになるが、その呼び寸法の建築構造用冷間成形角形鋼管の全ての板厚を包含する接合コア用角形鋼管の製造が可能となる。
しかし、請求項4のように、裏当て金として平鋼の1つのコーナーを面取り又はR付けした裏当て金を用い、この裏当て金の前記面取り又はR付け部が開先部に面するように配して溶接接合することで、溶着金属で埋められるべき空間が拡大し、R付きの隅角部となる。この場合、平鋼の前記面取り又はR付け量を、山形鋼の内R又はそれに近似した量を与えることにより、得られた角形鋼管は構造的に対称な断面となり、断面性能が大きく向上する。このため、使用する山形鋼の板厚を無用に厚くする必要がなくなり、鋼材使用量を節約できる。
本発明は、角形鋼管柱として、日本鉄鋼連盟により規格化されている建築構造用冷間成形角形鋼管のうち断面が正方形である場合に適用する。この建築構造用冷間成形角形鋼管のサイズの一部(大サイズを省略)を表1に示す(200×200が最小サイズ)。
(1)ND接合部コアと接合する柱断面より外周が大きく、且つ内周が小さいこと、
(2)ND接合部コアを介して梁から柱への応力伝達が可能な耐力を有すること、
である。
以下に説明するような要領で、市販の山形鋼に所定の加工を施すとともにその加工山形鋼の1対を適切に組んで溶接接合することで、建築構造用冷間成形角形鋼管の呼び寸法(辺寸法)が一定のサイズ範囲のものであれば、その呼び寸法の全ての板厚に対応して上記(1)、(2)の条件を満たすND接合部コア用の角形鋼管1を製造することができる。
例えば、角形鋼管柱2として、表1のうち呼び寸法(辺寸法)が200mm×200mmの建築構造用冷間成形角形鋼管を用いる場合の柱梁接合コア用角形鋼管1を製造する場合、それと同じ呼び寸法(辺寸法)である200mm×200mmの等辺山形鋼10を素材として用いる。
なお、正方形断面の角形鋼管のサイズ表示として、例えば辺寸法200mm×200mm×板厚12mmのものを□200×12で示す。また、等辺山形鋼のサイズ表示として、例えば辺寸法200mm×200mm×板厚25mmのものをL200×25で示す。
図5に示すように、等辺山形鋼10の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分s(板厚tに相当する寸法)を切り落として短くするとともに開先加工を行う。この場合、一方の辺の先端を図5の1点鎖線の位置で切断することで、切り落として短くするのと開先加工とを同時に行うことができる。開先角度θは例えば20°程度とするとよい。等辺山形鋼10をこのように加工したものを加工山形鋼11と呼ぶ。
ルートギャップgは、素材の山形鋼10の一方の辺の端部を切り落とす際の切り落とし長さsを山形鋼板厚tに等しくした場合、g=f+d となる。
また、この仮組みに際して、前記長辺先端部内面の長辺先端から所定距離mの位置に裏当て金12を接合し、この裏当て金12に短辺11bの先端部を載せ、その状態で、短辺先端と長辺先端部内面とを溶接接合する。図3の横辺寸法Cは溶接縮みdにより縦辺寸法Aと等しく(C−d=A)なり、また縦辺寸法Aの溶接縮みは無視できるから、図1のような、縦横両辺とも寸法Aである正方形の角形鋼管1が得られる。図1等において溶接金属部をハッチングで示す。
このようにして、素材の山形鋼10の辺寸法Bより大きな辺寸法A(=B+f)の角形鋼管1を製造することが可能となる。図1〜図5は□200×12の角形鋼管柱2に対するものとして、□204×25の柱梁接合部コア用角形鋼管1を想定している。
市販の山形鋼の実寸法は、呼び寸法B(図3、5のB)に対して公差を持つので、
実寸法=呼び寸法B±公差・・・・<1>
となる。
一方、柱梁接合部コアとしての外形寸法Aと柱の外形寸法との関係は、
コア外形寸法A≧柱の外形寸法・・・・<2>
となる。
柱梁接合部コアが対象とする柱は角形鋼管であり、その外形寸法は<1>式により決まるので、<2>式を満足するには下記の条件が必要となる。
コア外形寸法A≧柱の呼び寸法A0+α・・・・<3>
JIS公差によれば、<3>式の条件αは、角形鋼管の辺寸法A0に対する公差が1.0%かつ±3mm(JIS G 3466)であることより、
α≧3.0mm……<4>
の条件を満たすことが必要となる。
ここで若干の余裕、例えば1mmの余裕を持たせると、オフセット量f(=α)は4mmとなる。
例えば、オフセット量f=4mm、溶接縮み代d=1.5mm、ルートギャップg=f+d=5.5mmで仮組みして溶接すれば、上記の条件を満たす柱梁接合部コア用角形鋼管1が得られる。図2に柱梁接合部コア用角形鋼管1の断面を角形鋼管柱2の断面と対比させて示す。
なお、梁から柱への応力伝達が可能な耐力を有するという前述の(2)の条件を満たすことについては、詳細は省略するが、強度計算により確認できる。
図3のように縦板(縦辺)11aと開先11cを設けた横板(横辺)11bとのレ形開先条件による溶接は角溶接と呼ばれる。
この角溶接でオフセット量fを増加させた場合、一定限界を超えると溶融池からの溶鋼の流れ出しが伴うようになる。このような溶鋼の流れ出しが発生する場合は、縦板11aに2点鎖線で示すように堰板(通常は冷却した銅板)13を介在させることにより溶接が可能である。
なお、縦板の板厚範囲が20から40mmの範囲では、堰板なしでも溶鋼流れ出しが生じない溶接が可能な条件は、SAW(サブマージドアーク溶接)では5〜6mm程度のオフセット量fが限界であり、MAG溶接(Metal Active Gas溶接:炭酸ガスアーク溶接、混合ガスアーク溶接など)では多層盛溶接でビードを形成するので、オフセット量fを10mm程度まで大きくすることが可能である。
しかし、図6のようにR付けした裏当て金12’をそのR付け部12a’が開先部に面するように配して溶接接合すると、溶着金属で埋められるべき空間が拡大し、図6のようなR付きの隅角部となる。
この場合、平鋼のR付け量を、山形鋼の内R又はそれに近似した量を与えることにより、得られた角形鋼管は構造的に対称な断面(内側隅部のR形状が概ね同じ)となり、断面性能が大きく向上する。このため、使用する山形鋼の板厚を無用に厚くする必要がなくなり、鋼材使用量を節約できる。
例えば、構造計算により例えばL200×23(板厚23mm)の山形鋼が必要となった場合、隅角部のRを改善しない方法(単なる平鋼の裏当て金を用いて溶接してRなし隅角部となる場合)ではL200×25(板厚25mm)の山形鋼で構成すべき断面(例えば図1の断面(t=25mm))が、隅角部をR付きとする方法により隅角部での荷重分担が可能となるため、L200×20(板厚20mm)の山形鋼(例えば図6の断面(t=20mm))で済むようになる。
なお、裏当て金にR付けする代わりに、面取りを施しても、概ね同様な効果が得られる。
これにより、山形鋼を素材として角形鋼管を製造する場合の歩留まり低下を解消することができる。
図8は切り落とし片11eを裏当て金12”として用いて溶接を行う場合を示す。
例えばL200×20(板厚20mm)の山形鋼の場合、隅角部は17mmの内R(r1=17mm)を有しており、辺の端部は12mmのR(r2=12mm)が付いている。この山形鋼の端部からの切り落とし片11eを用い、溶け込み深さ5mmの溶接を行った場合、L200×25(板厚25mm)の山形鋼で構成した角形鋼管と概ね同等の耐力が得られる(詳細計算は省略する)。
なお、これらの各サイズのなかで、□200×12の角形鋼管柱に対応する山形鋼としてL200×15(最も板厚が薄い場合)を用いた場合は、図9(イ)に溶接箇所の形状を角形鋼管柱2と対比させて示したように前述の条件(1)を満たさない(角形鋼管柱2の隅角部内R部分(Pで示した部分)が柱梁接合部コア(角形鋼管1)の内側隅角部からはみ出る)が、より板厚の厚いL200×20を用いれば、図9(ロ)のように条件(1)を満たす。角形鋼管柱のその他のサイズについては、溶接箇所の形状がすべて図9(ロ)と同様に角形鋼管柱の断面のすべてが柱梁接合部コア(角形鋼管1)の断面内に収まることを確認している。
1’ 柱梁接合部コア
2 角形鋼管柱
3 梁
10 等辺山形鋼
11 加工山形鋼
11a (加工山形鋼の)長辺
11b、11b’ (加工山形鋼の)短辺
11c 開先部
11e 切り落とし片
12、12’ 裏当て金
12a’ R付け面
A 柱梁接合部コアの辺寸法
A0 角形鋼管柱(建築構造用冷間成形角形鋼管)の辺寸法
B 使用する等辺山形鋼の辺寸法(=加工山形鋼の長辺の長さ)
B’加工山形鋼の短辺の長さ
C 2つの加工山形鋼を方形に仮組みする際にルートギャップを設ける側の辺の長さ
t0 角形鋼管柱の板厚
t 柱梁接合部コアの板厚(=山形鋼の板厚)
r1 山形鋼の隅部の内R(アール)
r2 山形鋼の端部のR(アール)
r01 角形鋼管柱の角部の外R(アール)
r02 角形鋼管柱の角部の内R(アール)
s (板厚相当分の)切り落とし長さ
Claims (5)
- 角形鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部とされる柱梁接合部コアに用いる角形鋼管であって、
規格品の熱間圧延の山形鋼群から選択した特定サイズの山形鋼の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分を切り落として短くするとともに開先加工を行ってなる2本の加工山形鋼を、角形鋼管柱の断面の辺寸法より若干大きな辺寸法の方形に仮組みするとともに、その際、一方の加工山形鋼の前記加工された短辺の先端の開先部が他方の加工山形鋼の加工されていない長辺の先端部内面に対向するように仮組みし、前記短辺先端開先部と長辺先端部内面との間を溶接部として溶接接合したことを特徴とする柱梁接合部コア用の角形鋼管。 - 前記長辺先端部内面の長辺先端から所定距離の位置に裏当て金を接合し、この裏当て金に短辺の先端部を載せて、短辺先端開先部と長辺先端部内面とを溶接接合したことを特徴とする請求項1記載の柱梁接合部コア用の角形鋼管。
- 角形鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部とされる柱梁接合部コアに用いる角形鋼管の製造方法であって、
規格品の熱間圧延の山形鋼群の中から選択して特定サイズの山形鋼の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分を切り落として短くするとともに開先加工を行ってなる2本の加工山形鋼を、方形の角を挟む2辺のうちの一方の辺が角形鋼管柱の断面の辺寸法より若干大きく他方の辺がさらに溶接時の縮み代だけ大きい方形に仮組みするとともに、その際、一方の加工山形鋼の前記加工された短辺の先端の開先部が他方の加工山形鋼の加工されていない長辺の先端部内面に対向するように仮組みし、前記短辺先端開先部と長辺先端部内面との間を溶接部として溶接接合することを特徴とする柱梁接合部コア用の角形鋼管の製造方法。 - 裏当て金として平鋼の1つのコーナーを面取り又はR付けした裏当て金を用い、この裏当て金の前記面取り又はR付け部が開先部に面するように配して溶接接合することを特徴とする請求項2記載の柱梁接合部コア用の角形鋼管の製造方法。
- 前記裏当て金として、山形鋼の一方の辺をその端部から概ね板厚相当分を切り落とした時のその切り落とし片を用いることを特徴とする請求項4記載の柱梁接合部コア用の角形鋼管の製造方法。
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