JP2011094236A - 低温焼成用銅粉または導電ペースト用銅粉 - Google Patents

低温焼成用銅粉または導電ペースト用銅粉 Download PDF

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Abstract

【課題】導電フイラーとして銅粉を使用した導電ペーストで導電回路を形成する場合,導電ペーストの焼結開始温度を低下させる。
【解決手段】銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物が粒子表面に存在する低温焼成用銅粉、銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物の薄膜で粒子表面の全体を覆った低温焼成用銅粉、銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物が粒子表面に存在する導電ペースト用銅粉、銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物の薄膜で粒子表面の全体を覆った導電ペースト用銅粉である。
【選択図】図1

Description

本発明は,焼成温度の低い銅粉,特に導電ペーストの導電フイラーに用いるのに適した銅粉に関する。
各種基板の表面や内部或いは外部に導電回路や電極を形成する手段として導電ペーストが多く使用されている。そのさい,基板表面や内部等に導電ペーストを塗布または充填した状態で基板と共に適切な加熱処理が行なわれ,この加熱処理によって導電ペーストの揮発性媒体を気化させると共に導電フイラーとしての金属粉が互いに焼結して通電可能な回路が形成される。
このような導電ペーストの導電フイラー(金属粉)として,銀粉と銅粉の使用が一般化しているが,銅粉を導電フイラーとした導電ペースト(銅系ペースト)は,銀系ペーストに比べて,マイグレーションが起き難い,回路を微細化しやすい,耐半田性に優る,低コスト化が可能である,等の理由により,一層汎用化されつつある。このような利点をもつ銅系の導電ペーストは,粒径が0.1〜10μm程度の銅粉を適切な樹脂バインダーに分散させることによって得られる。
基板に形成する回路の形態,回路の形成方法,基板の材料等の要因によって,導電ペーストに要求される物理的および化学的性質も異なる。このため,各種の性能をもつ銅系ペーストを用途別に作製することが一般的に行われており,フイラーとしての銅粉についてもその粒子形状,粒度分布,粒子表面性状,粒子の成分組成等を適切に調整し,用途別に諸要求を満たすようにすると共に,導電ペーストの塗布条件や焼結条件も各ペースト毎に最適範囲の条件化を行っている。
このうち,銅系ペーストの焼結性については,特別の事例を除いては低温で焼結できるものが好ましい。基板の表面や内部において,低温の加熱で導電回路が焼成できれば,導電ペーストと共に加熱される基板の加熱温度も低くでき,基板に対する熱的影響が軽減されると共に,熱エネルギー的,設備的にも有利となり,さらにはセラミツク製基板と銅回路との間の熱膨張差に基づく歪み発生も低減できるからである。
他方,実際の焼結処理にあたっては,該ペーストを塗布したセラミック製電子部品を数10ppmの酸素を含む弱酸化性の不活性ガス雰囲気中で加熱処理することがある。一般に加熱処理は,ペースト中の樹脂や溶媒を気化させてから(この工程を脱バインダー工程と言う),残部の銅粉を基板の表面や内部で焼結させる(銅粉の焼結工程)という段階を経るが,脱バインダー工程においてペースト中の樹脂や溶媒の分解生成物(炭素質成分)が残留すると,後続の焼結工程での銅粉の焼結性を損なうので,脱バインダー工程では不活性ガス雰囲気中に微量の酸素を混入し,この酸素によって炭素質成分を炭酸ガスに燃焼させて排出させるという酸化・脱バイダー処理が行われることがあり,そのさい,雰囲気中に混入される酸素によって,銅粉の一部も酸化されることがある。
銅粉が酸化されると,粒子表面が酸化して焼結性に影響を与え,焼結が均一に進まないといった問題が生ずる。このために,銅粒子表面に耐酸化性皮膜を形成する表面処理が行われたり,酸化した銅を還元する還元処理工程を脱バインダー工程の後,最終の焼結前に挿入したりして対処している。
特開昭57−155386号公報 特開平11−025754号公報 特開昭60−035405号公報
ペースト用フイラー銅粉のうち,焼結性に優れ,比較的低温から焼結を開始するものでは,一般に耐酸化性が劣り表面が酸化し易い。すなわち,焼結性に優れるものは銅系ペーストの脱バイダー処理工程で表面が酸化しやすく,このために脱バインダー処理後に還元処理工程を設けることが必要となる。この還元処理工程が増設されることは,それだけ,処理工数の増加と設備増加につながり,費用的にも設備的にも負担となる。
したがって,焼結性に優れ,比較的低温から焼結を開始すると共に,耐酸化性にも優れる銅粉が要求される。本発明の課題はこの要求を満たすことにある。
前記課題を解決する銅粉として,本発明は,銅粉重量に対し1.5〜50重量%の銅酸化物が粒子表面に存在する低温焼成用または導電ペースト用の銅粉を提供する。さらに,本発明によれば,銅粉重量に対し1.5〜50重量%の銅酸化物の薄膜で粒子表面の全体を覆った低温焼成用または導電ペースト用の銅粉を提供する。
本発明によると,焼結開始温度が低下した銅粉が得られる。そして本発明の銅粉が粒子表面に有する銅酸化物は,導電ペーストの脱バインダー工程で炭素質物質の酸化剤として機能するので,導電ペーストの焼結性をさらに向上させることができる。
供試材銅粉と酸化膜付き銅粉のTMA曲線を対比して示した図である。
これまで銅系ペーストに用いる銅粉は,表面が酸化していると,該ペーストの印刷性,半田付け性,焼成後の導電性,密着性などを劣化させるので,できるだけ表面酸化しないことが重要であるとされていた。このために,銅粉の最終製造工程のあと直ちに酸化防止のための処置を施すのが通常であった。酸化防止の処置としては銅粉の粒子表面に耐酸化性皮膜を形成する方法が一般化している。耐酸化性皮膜には種々のものが知られているが,粒子表面を硼素の薄い融膜で被覆する方法や,シランカップリング剤で被覆する方法(特開昭57−155386号公報)などが知られている。
高品質の銅系ペーストを得るには,銅粉の酸化をできるだけ防止しなければならない,というこれまでの常識に反し,本発明者らは,銅粉の粒子表面に均一な銅酸化物の層(酸化膜)を積極的に形成することを試みた。その結果,酸化銅の皮膜が均一で且つ適切な量比である場合には,該ペーストの品質を劣化させるような実害はなく,かえって銅粉の焼結温度を著しく低下させることができる点で有利に作用することがわかった。しかも,銅系ペーストの焼成にさいしての前述の脱バインダー工程において,銅粒子表面に存在する銅酸化物が樹脂バインダーや溶媒の分解生成物(炭素質物質)を酸化させる酸化剤として働き,該炭素質物質を炭酸ガス等のガス成分に変えて系外に排除できると共に,表面の銅酸化物の一部は銅に還元されたような状態で次の焼結処理に供されることになる。
すなわち,脱バインダー工程で粒子表面に付着する分解生成物(炭素質物質)が粒子表面に均一に形成されている銅酸化物中の酸素と反応し,炭素質物質をガス化させると同時に銅酸化物の一部が還元されるような反応が進行し,この反応によって銅粒子表面は活性化された状態となる。このことが,次の焼結工程では粒子同士の接合を促す起因となり,焼結開始温度の低下に寄与するのではないかと考えられる。
銅粒子表面に対して銅酸化物の薄膜を均一に形成するには,空気,酸素ガス,オゾンガス等を銅粉に作用させる乾式法,或いは銅粉を水または有機溶媒中に懸濁させて酸化剤(空気等)をバブリングさせる湿式法によって行い得る。乾式法による場合は,銅粉を流動状態に維持しながら所定の温度で酸化剤ガスと反応させるのがよく,例えば攪拌用ミキサーやロータリーキルン内で銅粉を流動化しながら60〜150℃,好ましくは80〜100℃で酸化剤ガスと反応させることにより,その雰囲気中の酸素濃度または処理時間を調整することによって,銅粉に対し1.5〜50重量%の銅酸化物の薄膜を粒子表面に形成させるのが便宜である。別法として真空乾燥炉を使用し,炉内に減圧下に静置した銅粉に対し,酸化性ガスを適量通気する方法でも同様に銅酸化物の薄膜を形成できる。
銅酸化物の量が銅粉に対し1.0重量%未満では,粒子表面の全体に均一にその薄膜を形成するには酸素量が不足し,局部酸化の状態になったり酸化皮膜の厚みの不均一性が発生したりして,脱バインダー工程での炭素質物質の分解反応が不十分となったり,焼結開始温度を低下させる作用が不十分となったりするし,焼結開始温度にバラツキを生ずる原因にもなる。
他方,銅酸化物の量が銅粉に対し50重量%を超えるようになると,炭素質物質の分解に必要な酸素量が過剰になり,その分解反応に消費されなかった銅酸化物の残存量が多くなって焼結開始温度にバラツキを発生させたり,焼結体の導電性を低下させたりするようになるので,銅酸化物の量が銅粉に対し50重量%以下,好ましくは30重量%以下,さらに好ましくは15重量%以下とするのがよい。形成する銅酸化物の皮膜がCuOであるか,またはCu2Oであるかによって,銅粉に含有される酸素量は相違することになるが,銅酸化物の皮膜中の酸素量は銅粉に対し,一般に0.1〜5重量%,好ましくは0.3〜3重量%の範囲にあるのがよい。
銅酸化物を被覆する銅粉そのものは湿式還元法,アトマイズ法,機械粉砕法等によって製造された各種のものが使用でき,導電ペーストのフイラーとして適するものであれば平均粒径0.1〜10μmの粉体であればよい。いずれにしても銅粉の各粒子全体に銅酸化物皮膜が形成され,その皮膜も粒子表面の全体に均一に形成されているのが好ましい。
〔実施例1〕
粒度分布測定装置による銅粉の粒度分布測定において,D10=2.34μm,D50=3.12μm, D90=4.07μmの粒度分布をもち,平均粒径が 3.1μmの銅粉を供試材とした。ここで,D10,D50およびD90は,横軸に粒径D(μm)をとり,縦軸に粒径Dμm以下の粒子が存在する容積(Q%)をとった累積粒度曲線において,Q%が10%,50%および90%に対応するそれぞれの粒径Dの値を言う。供試材の銅粉は湿式還元法に製造されたものであり,粒子形状はほぼ球形である。
前記の供試材銅粉をヘンシエルミキサーに26Kg装填し,空気を2リットル/分の流量で通気しながら周波数20Hzで攪拌を付与し,ミキサー内を最初の240分は80℃,次いで100℃に昇温して合計1200分の酸化処理を行った。その結果,D10=2.17μm,D50=3.43μm, D90=5.63μmの粒度分布をもち,平均粒径が 2.0μmの酸化膜付き銅粉を得た。供試材(対照例)と酸化膜付き銅粉の比表面積 (BET法), タップ密度, 酸素含有量,炭素含有量を表1に示した。表1の酸化膜付き銅粉の酸素含有量=1.13重量%は,銅酸化物の全てがCu2Oとすると,銅酸化物の含有量は銅粉に対し10.1重量%となる。
Figure 2011094236
これらの供試材銅粉と酸化膜付き銅粉について,以下に述べる焼結開始温度の測定に供した。
〔焼結開始温度の測定〕:測定用の銅粉0.97±0.001gを採取し,これに 0.03 〜0.05g のターピネオールと4.5 重量%のエチルセルロースを加えてメノウ乳鉢で約5分混合し,この混合物を直径5mmの筒体に装填し,上部からポンチを押し込んで1623Nで10秒保持する加圧を付与し,高さ約10mm相当の円柱状に成形する。この成形体を,軸を鉛直方向にして且つ軸方向に10gの荷重を付与した条件で,昇温炉に装填し,窒素流量中で昇温速度10℃/分,測定範囲:常温〜1000℃に連続的に昇温してゆき,成形体の高さ変化(膨張・収縮の変化)を自動記録する。そして,成形体の高さ変化が始まったところの屈曲点を焼結開始温度とする。なお,前記の高さ変化の自動記録において,横軸に昇温してゆく温度(昇温速度が一定である場合には経過時間に対応する)を採り,縦軸に高さ変化の割合(膨張率または収縮率)を記録したものをTMA曲線と呼ぶ。
両粉体について得られたTMA曲線を図1に示した。図1のTMA曲線から計測される焼結開始温度は,供試材銅粉では746.2℃,酸化膜付き銅粉では406.2℃と算出され,後者の銅粉は前者に比べて焼結開始温度が340℃低下したことになる。

Claims (4)

  1. 銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物が粒子表面に存在する低温焼成用銅粉。
  2. 銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物の薄膜で粒子表面の全体を覆った低温焼成用銅粉。
  3. 銅粉重量に対し1.0〜50重量%の銅酸化物が粒子表面に存在する導電ペースト用銅粉。
  4. 銅粉重量に対し1.5〜50重量%の銅酸化物の薄膜で粒子表面の全体を覆った導電ペースト用銅粉。
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