JP2011089054A - 複合体組成物および複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の複合体組成物は、繊維状フィラーを含み、所定の形状に成形して複合体を製造し得る組成物であって、繊維状フィラーは、酸化処理と熱分解抑制処理とが施された繊維で構成されたものであり、この熱分解抑制処理は、繊維状フィラーについてJIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をAとし、酸化処理が施された繊維を前記熱重量測定方法と同様の方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をBとしたとき、A<Bなる関係を満足させる処理である。図1の熱重量曲線aは重量減少率Aに対応しており、熱重量曲線bは重量減少率Bに対応している。
【選択図】図1
Description
(1) 繊維状フィラーを含む複合体組成物であって、
前記繊維状フィラーは、酸化処理と熱分解抑制処理とが施された繊維で構成されたものであり、
前記熱分解抑制処理は、前記繊維状フィラーについてJIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をAとし、
酸化処理が施された繊維について、前記熱重量測定方法と同様の方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をBとしたとき、
A<Bなる関係を満足させる処理であることを特徴とする複合体組成物。
前記樹脂材料は、可塑性樹脂および硬化性樹脂の少なくとも一方である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の複合体組成物。
厚さが10〜2000μmであることを特徴とする複合体。
本発明の複合体組成物は、繊維状フィラーを含み、所定の形状に成形することにより複合体を製造し得るものである。
本発明の複合体組成物に含まれる繊維状フィラーは、いかなる繊維であってもよいが、好ましくはセルロース繊維で構成されたものである。
まず、固形分率で0.05〜0.1重量%のセルロース繊維の分散体を調製し、該分散体を、カーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。また、大きな繊維径のセルロース繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察してもよい。
まず、酸化反応工程では、水中にセルロース原料を分散させた分散液を調製する。ここで、用いるセルロース原料は、あらかじめ叩解等の表面積を高める処理を施したものが好ましく用いられる。これにより反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるからである。さらに、セルロース原料として、単離、精製の後、ネバードライで保存していたものを使用するとミクロフィブリルの集束体が膨潤し易い状態になるため、やはり反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができ、好ましい。一例として、本工程の酸化反応におけるセルロースの分散媒は水であり、反応水溶液中のセルロース濃度は、試薬の十分な拡散が可能な濃度であれば任意であるが、通常、反応水溶液の重量に対して約5%以下である。
精製工程においては、未反応の次亜塩素酸や各種副生成物等の反応スラリー中に含まれる反応物繊維と水以外の化合物とを系外へ除去する。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までバラバラに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗とろ過を繰り返すことで高純度(99重量%以上)化を図る。
上述した精製工程においては、水を含浸した反応物繊維(水分散体)が得られるが、これを溶媒中に分散させ、分散処理を施すことにより、本発明に用いられる微細セルロース繊維が、水分散体の状態で得られる。
次に、セルロース試料を、酢酸によってpH4〜5に調製した2%亜塩素酸ナトリウム水溶液中でさらに48時間常温で酸化し、上記手法によって再び官能基量を算出する。ここで算出された官能基量を「官能基量2」とする。そして、この酸化によって追加された官能基量(=官能基量2−官能基量1)を算出する。この官能基量がアルデヒド基の量を示す。
以上のようにして、本発明に用いられるセルロース繊維が得られる。
本発明に用いられる樹脂材料としては、公知のものを用いることができ、特に限定されないものの、各種硬化性樹脂、各種可塑性樹脂、各種水溶性樹脂等を含むものが挙げられる。
上述したような繊維状フィラーおよび樹脂材料を含む複合体組成物においては、繊維状フィラーの配合量の重量分率が0.1〜99.9%であることが好ましく、0.1〜75%であることがさらに好ましい。なお、配合量は特に限定されるものではなく樹脂組成物を成形した際に必要とされる特性に応じて調整される。例えば、繊維状フィラーの特性を反映させたい場合は繊維状フィラーの配合量を増加させ、樹脂材料の特性を反映させたい場合は樹脂の配合量を増加させることが出来る。
まず、試料が加熱されているときに、その質量を連続的に測定可能な熱天びんを用意し、測定対象の繊維状フィラーを熱天びんの試験片容器に載せる。次いで、熱天びんの周囲に乾燥空気を流入させる。この際の乾燥空気の流量は毎分100〜300mlとする。なお、試料としては、繊維状フィラーを膜状に成形したものが用いられる。
本発明の複合体組成物は、成形されることにより、所定の形状を有する複合体となる。
[微細セルロース繊維の作製]
(作製例1)
まず、主に1000nmを超える繊維径のセルロース繊維からなり、乾燥重量で2g相当分の未乾燥のパルプと、0.025gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)と、0.25gの臭化ナトリウムとを、水150mlに分散させ、分散液を調製した。
(実施例1)
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液と水溶性アクリル樹脂(東亞合成製、ジュリマー AT−210、ガラス転移温度−7℃)とを混合し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、セルロースナノファイバーの含有量が25重量%で厚み30μmの透明なフィルムを得た。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液と水溶性アクリル樹脂(東亞合成製、ジュリマー AT−510、ガラス転移温度28℃)とを混合し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、セルロースナノファイバーの含有量が25重量%で厚み30μmの透明なフィルムを得た。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液と水溶性アクリル樹脂(サイテック社、アクリル共重合体Viacryl6286、ガラス転移温度30℃)とを混合し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、セルロースナノファイバーの含有量が25重量%で厚み30μmの透明なフィルムを得た。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液をシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液にテトラエトキシシランをセルロースナノファイバー固形分重量と同重量添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は88%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は11ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−14重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液にフェニルトリエトキシシランをセルロースナノファイバー固形分重量と同重量添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は89%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は13ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−14重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液に3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランをセルロースナノファイバー固形分重量と同重量添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は87%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は11ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−14重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランをセルロースナノファイバー固形分重量と同重量添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は90%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は12ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−13重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液にチタンアルコキサイドをセルロースナノファイバー固形分重量と同重量添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は88%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は12ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−13重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液(固形分量100重量部)にジブチルヒドロキシトルエン(酸化防止剤)1重量部を添加し、室温で30分間撹拌した。得られた混合溶液を離型処理したシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は89%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は9ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−8重量%であった。
水溶性アクリル樹脂(サイテック社、Viacryl6286、ガラス転移温度30℃)をシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、平均線膨張係数を評価した。全光線透過率は74%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は180ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率A)を測定したところ、−15重量%であった。
作製例1で得られた固形分濃度0.2%のセルロースナノファイバー分散水溶液をシャーレに注ぎ、温度50℃のオーブンで水分を蒸発させ、さらに120℃の真空オーブン中で乾燥し、厚み30μmの透明なフィルムを得た。得られたフィルムの光線透過率、熱線膨張係数を評価した。全光線透過率は91%であり、30℃〜150℃の範囲における平均線膨張係数は8ppmであった。また、JIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して180℃における重量減少率(重量減少率B)を測定したところ、−17重量%であった。
特性評価方法は、以下の通りである。なお、各実施例および各比較例で得られたフィルムについて、全光線透過率、熱膨張係数および湿度膨張係数を、それぞれ測定した。
分光光度計U3200(島津製作所製)で全光線透過率を測定した。
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から150℃まで上昇させた後、一旦0℃まで冷却し、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。
得られたフィルムに寸法測定の基準となる2点を描き、室温23℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置し、その後100℃の乾燥機に3時間入れて乾燥した。
上記測定の結果を表1に示す。
なお、実施例および比較例で使用した原料は、以下の通りである。
:ジュリマー AT−210 東亞合成製
:ジュリマー AT−510 東亞合成製
:Viacryl6286 サイテック社製
:テトラエトキシシラン 和光純薬製
:フェニルトリエトキシシラン アズマックス製
:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン 信越化学製
:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学製
:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学製
:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン 信越化学製
:チタンアルコキサイド(KR−ET 味の素ファインテクノ製)
:ジブチルヒドロキシトルエン(スミライザーBHT 住友化学製)
b 重量減少率Bの熱重量曲線
Claims (20)
- 繊維状フィラーを含む複合体組成物であって、
前記繊維状フィラーは、酸化処理と熱分解抑制処理とが施された繊維で構成されたものであり、
前記熱分解抑制処理は、前記繊維状フィラーについてJIS K 7120で規定された熱重量測定方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をAとし、
酸化処理が施された繊維について、前記熱重量測定方法と同様の方法に準拠して測定された180℃における重量減少率をBとしたとき、
A<Bなる関係を満足させる処理であることを特徴とする複合体組成物。 - 前記重量減少率Aおよび前記重量減少率Bは、A/B≦0.9なる関係を満足する請求項1に記載の複合体組成物。
- 前記繊維状フィラーは、セルロース繊維で構成されたものである請求項1または2に記載の複合体組成物。
- 前記セルロース繊維の平均繊維径は、4〜1000nmである請求項3に記載の複合体組成物。
- 前記セルロース繊維は、セルロース原料を化学的処理および機械的処理の少なくとも一方により微細化されてなるものである請求項3または4に記載の複合体組成物。
- 前記酸化処理が施されたセルロース繊維は、含まれるセルロース分子中の水酸基の一部が、アルデヒド基およびカルボキシル基の少なくとも一方で置換されてなるものである請求項3ないし5のいずれかに記載の複合体組成物。
- 前記酸化処理が施されたセルロース繊維は、天然セルロースを原料とし、N−オキシル化合物を酸化触媒として用いるとともに、水中において前記原料に共酸化剤を作用させることにより、前記原料に酸化処理を施して得られたものである請求項3ないし6のいずれかに記載の複合体組成物。
- 前記熱分解抑制処理は、セルロース繊維に含まれるセルロース分子中の水酸基の少なくとも一部をアセチル化する処理である請求項3ないし7のいずれかに記載の複合体組成物。
- 前記熱分解抑制処理は、セルロース繊維に対してカップリング剤およびカップリング剤の加水分解物の少なくとも一方を導入する処理である請求項3ないし7のいずれかに記載の複合体組成物。
- 前記カップリング剤は、アルコキシシランまたはアルコキシチタンである請求項9に記載の複合体組成物。
- 前記カップリング剤は、アクリル基またはメタクリル基を有するものである請求項9または10に記載の複合体組成物。
- 前記熱分解抑制処理は、セルロース繊維に対して酸化防止剤を導入する処理である請求項3ないし7のいずれかに記載の複合体組成物。
- 前記繊維状フィラーが含む繊維および前記酸化処理が施された繊維は、それぞれ平均繊維径が同じものである請求項1ないし12のいずれかに記載の複合体組成物。
- 当該複合体組成物は、さらに樹脂材料を含むものであり、
前記樹脂材料は、可塑性樹脂および硬化性樹脂の少なくとも一方である請求項1ないし13のいずれかに記載の複合体組成物。 - 前記樹脂材料は、アクリル樹脂を含むものである請求項14に記載の複合体組成物。
- 前記繊維状フィラーの含有率は、0.1〜99.9重量%である請求項1ないし15のいずれかに記載の複合体組成物。
- 請求項1ないし16のいずれかに記載の複合体組成物を成形してなる複合体であって、
厚さが10〜2000μmであることを特徴とする複合体。 - 180℃×2時間の条件で加熱処理した後において、全光線透過率が50%以上である請求項17に記載の複合体。
- 30℃から150℃における熱膨張係数が、−30〜50ppm/℃である請求項17または18に記載の複合体。
- 湿度膨張係数が、100ppm/湿度%以下である請求項17ないし19のいずれかに記載の複合体。
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