JP7259218B2 - 光熱変換材料、光熱変換組成物、および光熱変換成形体 - Google Patents
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Description
微細化セルロースは、ガスバリア性包装材料への適用(特許文献2参照)や樹脂と複合化することによる樹脂の強度向上等(特許文献3参照)の利用が検討されている。
特に、異方性の金属微粒子の共鳴波長は、例えば、平板状であれば粒子径/厚みのアスペクト比に依存して大きく変化する。
そのため、金属/微細化セルロース複合体においても、そのアスペクト比を制御することにより、可視光領域から近赤外領域等、特定の波長領域の光を吸収することが可能である。
光熱変換材料は、図1に示すように、金属微粒子11と微細化セルロース12とを含有する複合体1を備えている。
複合体1は、金属微粒子11と、微細化セルロース12と、を有する複合体(金属/微細化セルロース複合体)である。
図1に示すように、複合体1は、金属微粒子11と、少なくとも一つ以上の微細化された微細化セルロース12とが複合化された、金属微粒子11と微細化セルロース12との複合体であり、光熱変換材料として用いることができる。
本実施形態においては、図1に示すように、複合体1は、平板状の金属微粒子(平板状金属微粒子)11と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子11と微細化セルロース12との複合体であり、それぞれの微細化セルロース12について少なくとも一部(一部分)または全部が平板状金属微粒子11に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子11の表面に露出するように複合化されたものであることが好ましい。
後述する光熱変換成形体2は、複合体1を含有するため、特定の波長領域の光を選択的に遮蔽できる光熱変換成形体2を得られると共に、光熱変換成形体2の強度が向上し、寸法安定性、ガスバリア性を付与、向上することができる。
図3(a)は、複合体1を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した観察画像であり、(a)図3(b)は図3(a)の模式図である。
図4(a)は、複合体1を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により拡大して観察した観察画像であり、図4(b)は図4(a)の模式図である。
図5(a)は、複合体1を走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大して観察した観察画像であり、図5(b)は図5(a)の模式図である。
複合体1の観察は、例えば、以下の方法で行うことができる。
複合体1を高速冷却遠心分離等により精製し、透過型電子顕微鏡用グリッドにキャストし、ウラニル染色して、透過型電子顕微鏡で観察することにより、図2に示すような透過型電子顕微鏡像が得られる。この透過型電子顕微鏡像によれば、平板状金属微粒子11と、その表面に露出している微細化セルロース12の他端部12bを観察することができる。
このようにして得られた複合体1において、微細化セルロース12のそれぞれは、少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子11に取り込まれるとともに、残部が平板状金属微粒子11の表面に露出する。複合体1は、分散安定性の面から、平板状金属微粒子11と微細化セルロース12とが不可分であることが好ましい。
金属微粒子の粒子径や形状を制御することで、遮蔽する波長領域を制御することが可能である。金属微粒子の表面の自由電子は、光等の外部電場により集団的に振動を起こすことがある。電子は電荷を持った粒子であるため、電子が振動を起こすと周囲に電場を発生する。自由電子の振動を起こすことにより生じる電場と外部電場(光等)が共鳴する現象を局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance;LSPR)と言う。このLSPRにより、特定の波長域の光の吸収や反射が起こり、遮蔽することが可能である。金属微粒子は、色材として一般的に用いられる有機顔料と比較し、安定性が高く、長期間にわたり安定して特定の波長領域を遮蔽することが可能である。
特に、近赤外線領域に吸収を有する場合に、透明性と高い光熱変換特性を両立できるため、複合体分散液の透過率スペクトルにおいて、700nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長(λmax)を有することが好ましい。複合体分散液とは、少なくとも複合体1と溶媒を含む分散液のことである。複合体分散液は、複合体が溶媒に分散していればよく、例えば、複合体調製反応後の分散液のことを言う。また、必要に応じて純水等の溶媒で希釈してもよく、少なくとも一部の複合体が分散していれば溶媒を置換しても構わない。
複合体1の平板状金属微粒子11の厚みhに対する粒子径dを、複合体1のアスペクト比(d/h)とする。複合体1の平板状金属微粒子11の「平板状」とは、粒子が板状であることを示し、板状とは、アスペクト比(d/h)の平均値である平均アスペクト比が1.1以上であることを示している。
なお、複合体1の表面13および裏面14の形状は、特に限定されないが、通常、六角形や三角形等の多角形である。表面13および裏面14が多角形や楕円形等である場合、表面13または表面14の面積が同等となる円形と仮定して、粒子径d(円相当粒子径、円相当径、直径)を算出する。
また、複合体1の表面13と裏面14は、どちらの面積が大きくてもよく、両面は平行でなくてもよい。
平板状金属微粒子11の粒子径dの平均値は、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上500nm以下であることがより好ましく、20nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
平板状金属微粒子11の厚みhの平均値、すなわち表面13と裏面14の距離hの平均値は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましい。
なお、上記の平均値は、例えば、100個の粒子を測定して求める。
平板状金属微粒子11の粒子径dおよび厚みhの測定方法、並びに、アスペクト比の算出方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
複合体1を含む分散液を透過型電子顕微鏡観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査透過型電子顕微鏡で観察することにより、図4に示すような走査透過型電子顕微鏡像が得られる。この走査透過型電子顕微鏡像中の平板状金属微粒子11を、円形で近似した際の径を、平面方向の粒子径(粒子径d)として算出する。上記の平均値は、100個の粒子を測定して求める。
図6に示すように、複合体1を含む分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム16上にキャストして風乾し、包埋樹脂17で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡で観察することにより、図6に示すような透過型電子顕微鏡像が得られる。なお、図6は、平板状金属微粒子11を透過型電子顕微鏡によって断面方向から観察した結果を示す図(透過型電子顕微鏡像)である。この透過型電子顕微鏡中の平板状金属微粒子11の厚みhを、平面方向と垂直な厚みhとして算出する。上記の平均値は、100個の粒子を測定して求める。
上述のようにして求めた、平板状金属微粒子11の厚みhの平均値に対する粒子径d(円相当粒子径、円相当径、直径)の平均値を、平板状金属微粒子11の平均アスペクト比(dの平均値/hの平均値)として算出する。
複合体1に含まれる金属の割合は特に限定されない。
微細化セルロース12は、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであればよく、その調製方法については特に限定されない。通常、微細化セルロースは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を有するため、本実施形態の複合体1の製造方法に用いられる微細化セルロース12としては、以下に示す範囲にある繊維状のものが好ましい。繊維状の微細化セルロース12を用いることにより、より形状やサイズの制御された複合体1を製造することができる。
透明性や強度向上、寸法安定性向上、複合体1における平板状金属微粒子11の形状制御の観点から、微細化セルロース12の短軸径は十分に小さいことが好ましい。
また、バクテリアセルロースも微細化セルロース12として用いることができる。さらに、各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させた後、電解紡糸することによって得られる微細再生セルロース繊維を用いてもよい。
セルロースの化学変性方法は特に限定されないが、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(以下、「TEMPO」と言う。)等のN-オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理等を機械処理と併用して微細化する方法が挙げられる。
化学変性された微細化セルロースは、導入されたカルボキシ基、カルボキシメチル基、リン酸基などの官能基が、金属微粒子生成における基点となり、複合体の形状やサイズを制御しやすい。
例えば、セルロース原料にモノクロロ酢酸等のエーテル化剤と触媒である、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属を加え、水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが主成分の溶媒下で反応させることで得られる。カルボキシメチル化セルロースは、少なくとも一部のグルコピラノースがカルボキシメチル化されていればよく、好ましくはカルボキシメチルセルロースの置換度が0.01以上0.60以下であることが好ましい。
N-オキシル化合物を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。
微細化セルロース12の短軸の数平均軸径が1nm未満では、高結晶性の剛直な微細化セルロース構造をとることができず、大きさや形状が十分に制御された複合体1を得るのが難しくなる。また、強度、寸法安定性が良好な光熱変換成形体2を得るのが難しくなる。
一方、微細化セルロース12の短軸の数平均軸径が50nmを超えると、微細化セルロース12の分散液の粘度が高くなり操作性が悪くなり、後述する工程bにおいて、金属塩と微細化セルロース12を均一に混ぜるのが難しくなり、後述する工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなり、大きさや形状が十分に制御された複合体1を得るのが難しい。また、光熱変換成形体2の透明性が低下し、強度も低下することがある。
微細化セルロース12の長軸の数平均軸径が0.1μm未満では、形状や大きさが制御された複合体1を得るのが難くなる。一方、微細化セルロース12の長軸の数平均軸径が10μmを超えると、微細化セルロース12の分散液の粘度が高くなり、操作性が悪くなるため、後述する工程bにおいて、金属塩と微細化セルロース12を均一に混ぜるのが難しくなり、後述する工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなり、大きさや形状が十分に制御された複合体1を得るのが難しい。また、樹脂と、複合体分散液から複合体を濃縮した複合体含有物を混合するのが難しくなる。複合体含有物の詳細については後述する。
微細化セルロース12におけるカルボキシ基量が0.1mmol/g未満では、分散性が悪く、0.1mmol/g以上であると、カルボキシ基による静電反発により分散安定性が良好となる。一方、微細化セルロース12におけるカルボキシ基量が3.0mmol/g以下であると、微細化セルロース12の結晶構造が充分に保持され、形状制御性能が良好となる。
微細化セルロース12の原料として用いられる天然セルロースとしては、例えば、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプが挙げられる。具体的には、漂白および未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめとして、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース並びにこれらの混合物を用いることができる。また、これらを物理的、化学的処理した物質のいずれを用いてもよい。材料調達の容易さおよび価格の面から各種木材パルプを原料とすることが好ましい。
N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量であればよく、特に限定されない。通常、N-オキシル化合物の使用量は、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、0.01質量%~5.0質量%程度である。
共酸化剤の使用量は、セルロースの酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、1質量%~200質量%程度である。
このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。
この化合物の使用量は、セルロースの酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、1質量%~50質量%程度である。
反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液等の有機アルカリ等が挙げられる。これらの中でも、コスト等の面から、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
通常のN-オキシル化合物による酸化反応自体は、4℃以上50℃以下の領域でも充分に進行するが、30℃以上50℃以下の温度領域で酸化反応を行うと、セルロース繊維の結晶構造が維持されたまま得られる微細化セルロース12の分散液が低粘度化することが判明した。これはセルロースミクロフィブリルの長軸方向に周期的に非晶領域が存在するため、N-オキシル化合物による酸化反応がその非晶領域に進行し、さらに生成したグルクロン酸ユニットがその反応温度領域においてpH9~11の条件下で不安定であるため分解されてしまい、その結果、短繊維化が進行するためであると考えられる。なお、反応温度が50℃を超えると、副反応により次亜塩素酸ナトリウムが自己分解するため酸化反応自体が停止してしまう。
微細化工程は、酸化セルロースを軽微な機械処理によって解繊して、微細化セルロース12の分散液を得る工程である。
セルロースを微細化する方法では、まず、セルロースに溶媒を加えて懸濁させる。
溶媒としては、特に限定されないが、微細化セルロース12を分散させる溶媒と同様のものが用いることができ、これらの中でも水が特に好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース12の分散性を向上するために、懸濁液のpHを調整してもよい。pHの調整に用いられるアルカリ水溶液としては、酸化セルロースの酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
物理的解繊処理としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突等の機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を、例えば、TEMPO酸化セルロースに行うことにより、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。
得られた分散液は、そのまま、または必要に応じて希釈、濃縮、溶媒置換等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
微細化セルロース12の分散液は、必要に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpHの調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されず、用途に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。
他の成分としては、具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉等が挙げられる。水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分を微細化セルロース分散液と混合してから複合体1を製造してもよい。
複合体1の製造工程(複合体作製工程)は、特に限定されないが、例えば以下に示す工程aと工程bと工程cを備えている。
工程aは、少なくとも1種類の微細化セルロース12を含有する溶液または分散液を調製し、微細化セルロース含有液を準備する、微細化セルロース含有液準備工程である。
工程bは、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の微細化セルロース12とを含有する溶液または分散液を調製し、金属塩および微細化セルロース含有液を準備する、金属塩および微細化セルロース含有液準備工程である。
工程cは、金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して複合体分散液を得る、反応液調製工程である。
複合体1の製造方法において、工程aでは、少なくとも1種類の微細化セルロース分散液を準備する。
微細化セルロース分散液の固形分濃度が0.01質量%未満では、複合体1の形状の制御が難しい。一方、微細化セルロース分散液の固形分濃度が90質量%を超えると、微細化セルロース分散液の粘度が高くなり、工程b(金属塩および微細化セルロース含有液準備工程)において、金属塩と微細化セルロース12とを均一に混ぜるのが難しくなり、工程c(反応液調製工程)において、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
平板状金属微粒子11および微細化セルロース12の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
複合体1の製造方法において、工程bでは、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の微細化セルロース12とを含有する溶液または分散液を調製し、金属塩および微細化セルロース含有液を準備する。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属塩の溶解性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
また、金属塩含有溶液中の金属塩の濃度も特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
複合体1の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
微細化セルロース12の固形分濃度が0.01質量%未満では、複合体1の形状の制御するのが難しい。一方、微細化セルロース12の固形分濃度が90質量%を超えると、微細化セルロース分散液の粘度が高くなり、工程bにおいて、金属塩と微細化セルロース12とを均一に混ぜるのが難しくなり、工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなる。複合体を導電材料として用いる場合、微細化セルロース12の固形分濃度が高くなると低温で焼結させることが難しくなり、微細化セルロース12の除去工程が必要となる。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
平板状金属微粒子11および微細化セルロース12の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
また、金属塩および微細化セルロース含有液の温度は、特に限定されないが、溶媒に水を用いる場合には4℃以上100℃以下であることが好ましい。
複合体1の製造方法において、工程cでは、金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して複合体分散液を得る。
金属塩および微細化セルロース含有液における還元剤の濃度が、金属塩および微細化セルロース含有液における金属塩の濃度以下であると、未還元の金属イオンが金属塩および微細化セルロース含有液中に残存してしまう。
また、金属塩および微細化セルロース含有液に対する還元剤の添加速度は、特に限定されないが、還元反応が均一に進行するような方法で添加することが好ましい。
微細化セルロースを遠心分離で濃縮する場合、超遠心分離機で濃縮する必要があるが、平板状銀/微細化セルロース複合体(複合体)は、密度の高い金属が結合しているため、沈降係数が高くなり、微細化セルロース分散液単独の場合より、非常に効率的に濃縮することが可能である。このため、光熱変換組成物の溶媒の割合を下げることが可能であり、効率よく成形体を得ることが可能となる。
以下、本実施形態に係る光熱変換成形体2の製造方法について説明する。光熱変換成形体2は、特に限定されないが、光熱変換組成物を基材等にコーティングし、溶媒除去、必要に応じて硬化反応により形成することができる。光熱変換成形体2は、光熱変換組成物を基材上に成膜した後、剥離することにより自立膜として得ることもできる。
本実施形態に係る光熱変換組成物とは、少なくとも複合体1を含む光熱変換組成物である。
また、光熱変換組成物中に含まれる金属の固形分率が、0.0001質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。金属の固形分率がこの範囲であれば光熱変換特性を十分に発揮する。
これらの溶媒の中でも、エタノールが好ましい。
塗工方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
加熱時の温度により架橋反応の反応性が異なり、温度は100℃以上、好ましくは120℃以上の雰囲気で処理することが好ましい。但し、160℃以上で処理するとセルロース繊維の分解が進行し、成形体の特性低下が黄変を招くため、160℃未満であることが好ましい。
光硬化性樹脂と光重合開始剤を含む光熱変換組成物を塗工した場合は加熱により溶媒を除去した後、重合反応を進行させる波長の光、例えば紫外光(UV)や可視光(Vis)、赤外光(IR)を照射することにより硬化させる。
尚、加熱や光照射による重合反応の進行や架橋構造の形成を、硬化といい、熱による硬化を熱硬化、光による硬化を光硬化ということとする。
図7は、本実施形態に係る光熱変換成形体2を模式的に示す図である。光熱変換成形体2は、複合体1を含む成形体である。光熱変換成形体2は、複合体1を含む光熱変換組成物を用いて製造することができる。
少なくとも複合体1を含む光熱変換組成物は微細化セルロース12を含むため、樹脂を含有せずに光熱変換成形体2を光熱変換組成物を用いて製造することができる。複合体1を含む光熱変換組成物および光熱変換成形体2は、その特性を制御するために樹脂21を含んでも構わない。樹脂21は、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができるが、特に、水溶性高分子や水性エマルジョン、水性ディスパージョン、光硬化性材料を硬化して得られる樹脂等を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂等に混練しても構わない。
水溶性高分子は、85℃において、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロピルアルコールのいずれかを50質量%含むアルコール水溶液、および水のうち少なくとも1種を含む溶媒100質量部に対して、1質量部以上溶解する、分子量1000以上の化合物である。
水溶性高分子としては、例えば、タンパク質、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
タンパク質としては、ゼラチン、カゼイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ビニル系樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン・ビニルアセテート共重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリレート共重合体等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
水溶性高分子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
中でも、PVA系重合体に含まれる水酸基とセルロース繊維の水酸基をもとに良好な反応性を有するカルボン酸またはカルボン酸無水物を有する架橋剤が好ましい。PVA系重合体やセルロース繊維の水酸基と架橋剤に含まれるカルボン酸の反応により、強固な架橋構造が形成される。前記架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボン酸またはカルボン酸無水物を有する架橋剤を用いる場合、光熱変換組成物中の水酸基の官能基数に対して、カルボン酸の官能基数が1%以上50%未満であることが好ましく、更に5%以上20%未満である場合に好適に用いることができる。すなわち、カルボン酸を含む架橋剤が少なすぎる場合に架橋構造が十分に発達せず、架橋剤の効果が低下する。多すぎる場合は反応が進行せずに余剰となった架橋剤が特性低下を招く恐れがある上、成形体内の水酸基同士による水素結合が低下するため、種種の特性低下を生じる。
また、複合体1を含む光熱変換組成物に、光硬化性材料及び光重合開始剤を含むことができる。光熱変換組成物をコーティング等した後、溶媒を除去し、光照射することにより硬化した樹脂を含む成形体を得ることができる。
光硬化性材料としては、光ラジカル硬化系、光カチオン硬化系等の材料を用いることが好ましい。
光ラジカル硬化系としては、例えば、アクリル系材料が挙げられ、アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような(メタ)アクリレート化合物や、ジイソシアネートとアルコールおよびアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるようなウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
また、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。なお、ここでいう多官能とは、分子内に2個以上の光照射により活性を持つ官能基を有することを意味する。
水性ディスパージョンや水性エマルジョンはそれぞれ水性ディスパーションや水性エマルションと呼ばれることがあり、水を含む水性分散媒中に分散された水性樹脂である。この水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、主な分散媒として水を用い、ポリマーをサブミクロンから数ミクロンの粒径に分散させたものである。これらの分散媒を揮発させることによりポリマー同士が変形融合し、連続的な構造を形成する。
また、反応性の合成樹脂を用いても構わない。その場合、例えば、硬化剤や硬化触媒、光重合開始剤、連鎖移動剤等を併用することができる。
また、光熱変換成形体2中に含まれる金属の固形分率が、0.0001質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。金属の固形分率がこの範囲であれば光熱変換特性を十分に発揮する。
また、複合体1の光熱変換特性により、厚みのある光熱変換成形体2においても、赤外線ランプ等の各種ランプの照射効果を更に促進し、塗膜の内部まで乾燥や熱硬化が可能である。また、光硬化性の樹脂を含む場合、UV光等の光照射の前後に赤外線等のランプを照射する際に、均一な反応促進や応力緩和による耐傷擦性の改善やカールの抑制等の効果を、更に向上することができる。
次に光熱変換成形体2の光熱変換特性を測定して結果を示す。
リファレンスとして、PET基材に膜厚約1μmのCSNF層を設けた成形体を作製した。
図9は、複合体1の一例(複合体B、λmax=729nm)を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により拡大して観察した結果を示す図である。は、の複合体AのSTEM写真である。
各光熱変換成形体2の透過率を220nmから2500nmの波長領域における透過率を測定した結果、図10に示す結果を得た。各光熱変換成形体2のPET基材のCSNF層及び複合体A層、複合体B層の反対側に熱電対を耐熱性のテープを用いて貼り付け、温度を測定しながら、約1200nmにピークを有する近赤外線ランプを照射した。
その結果、CSNF層を設けた成形体と比較して複合体層を設けた光熱変換成形体2は顕著に温度が上昇していることが判明した。特に、近赤外線ランプのピーク波長に近い領域に吸収を有する複合体A層を設けた光熱変換成形体2において温度が最も高くなった。
以上のように複合体層を基材上に設けることで、PET基材の温度が顕著に上昇することが判明し、複合体1の顕著な光熱変換特性が示された。
本実施形態に係る光熱変換成形体2は、特定波長領域に吸収を有する複合体1を含むため、400nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長(λmax)を有することが好ましい。特に、700nm以上2500nm以下の近赤外線領域にλmaxを有すると、複合体1は顕著な光熱変換特性を発揮すると共に、高い可視光透過性を有する光熱変換成形体2を得られる。
複合体1を含むことにより、赤外線照射の効果だけでなく、複合体1の光熱変換特性により、塗膜の温度が上昇することにより反応性が向上し、架橋密度が向上して耐傷付き性が向上する。
最大強度と破断伸度は、特に限定されないが、例えば、次の方法で測定することができる。光熱変換成形体2を15mm幅の短冊状に切り出し、小型卓上試験機EZ-LX(島津製作所社製)を用い、ロードセル1.000N、引張速度5mm/分の条件で、評価部50mmの間隔を空けて両端をチャックしながら長辺方向の伸度と強度を検出し、引張強度(N/mm2)及び破断伸び(%)を測定できる。光熱変換成形体2は測定1日以上前に23℃、47~50%RHの恒温恒湿室にて調湿し、測定も同環境で行う。
線膨張係数は、特に限定されないが、次の方法で測定することができる。光熱変換成形体2を15mmの長さで4mm幅の短冊状に切り出し、両端を50mNの張力でチャックしながら15~180℃まで5℃/分で加熱した際の長辺方向の伸びを、熱機械的装置TMA/SS-6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定し、Tg以上の140℃から160℃までのサンプル伸びから線膨張係数を算出する。
次に、複合体1の顕著な効果の用途について詳細に述べる。
一方、有機化合物の近赤外吸収材料は、着色する場合があり、耐久性が低く、樹脂や添加物により分解されることがある。また、金属酸化物の近赤外吸収材料は、還元されることにより着色することがある。また、チタン、クロム、ニッケル等の金属蒸着膜は、金属光沢があり視認性が劣る。
熱エネルギーを直接利用する方法としては、例えば、フォトサーマル治療用材料や繊維製品としての利用が挙げられる。
また、複合体1を、光熱変換成形体2の高機能化に利用することができる。
また、複合体1を熱応答性材料と組み合わせることで、例えば、光記録体、感光性材料、フォトサーマル治療用材料、近赤外光応答自己修復材料、レーザー照射剥離材料、細胞培養基材として利用することができる。
また、複合体1を繊維製品に用いることで、寒い季節でも暖かい衣服を提供することができる。
通常、光熱変換組成物を用い、厚みのある光熱変換成形体2を作製する場合、塗膜を熱風により加熱乾燥する方法では、塗膜の表面側が乾燥しやすいが、塗膜の基材23側は乾燥しにくい。一方、赤外線等のランプ照射による加熱であれば、光熱変換成形体2を均一に乾燥することが可能となる。このとき、複合体1の光熱変換特性により、ランプ照射による乾燥、すなわち溶媒除去や、熱硬化及び光硬化が促進される。
複合体1は、樹脂と複合化させることにより、複合体1の光熱変換特性に加えて、複合体1に結合する微細化セルロース12の効果により、機械特性と、高温で光熱変換成形体2が膨張・収縮することを防ぐ寸法安定性と、を向上させることができる。
更に、本実施形態に係る光熱変換成形体2に含有させる複合体1は、低い遠心加速度で遠心分離して濃縮することが可能であり、微細化セルロース12単独と比較して濃縮しやすく、高濃度で複合体含有物を得られるため、生産性良く溶媒を除去して、強度が高く、寸法安定性の高い光熱変換成形体2を得ることができる。
熱応答性材料としては、例えば、温度により膨潤と収縮を引き起こすポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)等の温度により膨潤・収縮、分散・凝集、ゾルゲル転移を引き起こす高分子や、加熱により気化する水等の溶媒、熱により架橋反応を起こす架橋剤、熱により立体構造が変化するタンパク質等が挙げられる。
特に限定されないが、温度により可逆的に変化する熱応答性材料を用いることで繰り返し使用が可能となる。
フレキシブルディスプレイを製造する過程においては、ガラス基板と、電子素子等を形成する耐熱性を有するプラスチック基板の間に設けられる犠牲層において、複合体1を用いることによりレーザーを照射し、効率よく樹脂の熱変形、熱分解、剥離等が可能である。
複合体1を細胞培養の足場材料に適用することで、レーザー照射により発生した熱により足場材料の変質を誘導し、損傷なく培養細胞を剥離することができる。
(1-1 サンプルの作製)
(1-1-1 微細化セルロース12の製造)
以下に微細化セルロース12の製造に用いた試薬・材料を示す。
セルロース: 漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「MACHENZIE」)
TEMPO: 市販品(東京化成工業社製、98%)
次亜塩素酸ナトリウム: 市販品(和光純薬社製、CL:5%)
臭化ナトリウム: 市販品(和光純薬社製)
この懸濁液に、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。
この溶液に、2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下し、酸化反応を開始した。反応中の系内の温度を常に40℃に保った。また、反応中は系内のpHが低下するが、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加することで、pH10に保ち続けた。
セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し、反応を停止させた。
その後、反応後の混合物をガラスフィルターでろ過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を繰り返すことにより、酸化セルロースを得た。
そして、酸化セルロースを含む分散液に、高圧ホモジナイザーを用いて微細化処理を施し、微細化セルロースの含有量が1質量%の微細化セルロース(CSNF)水分散液を得た。
続いて、硝酸銀500mgを蒸留水100mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
水素化ホウ素ナトリウム500mgを蒸留水100mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
上記の微細化セルロース水分散液1Lを容器に入れ、攪拌翼で攪拌しながら、硝酸銀水溶液10gを添加して、微細化セルロースと硝酸銀を含む分散液を調製した。続いて、微細化セルロースと硝酸銀を含む分散液に水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して反応させ、複合体分散液を製造した。得られた複合体分散液中の複合体1を複合体Aとする。
上記複合体A分散液を、1Lの遠心管に入れて希釈し、10,000×g(gは重力加速度)で遠心分離し、沈降した複合体を回収し、固形分濃度が10質量%、銀濃度が0.4質量%の複合体A含有物を得た。
(1-1-4-1 光熱変換組成物の作製)
PVA(クラレ社製PVA-117、平均重合度1,700、けん化度99.0mol%)と、架橋剤としてメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(International Specialty Products社製GANTREZ AN119、平均分子量130,000)を熱水に溶解した。PVAと架橋剤と複合体Aの固形分重量比がこの順に77:13:10となるように混合し、固形分濃度15質量%の組成物を得た。尚、組成物中の銀の固形分率は0.05質量%であった。
調製した上記の溶液をPET基材(ルミラーT60-75μm:東レ)にアプリケーターにて塗工して近赤外線乾燥機SIR-760(トーコー製)(ランプのピーク約1200nm)にて5分間乾燥した後にPET基材を剥離することで、40μm厚の光熱変換成形体2を作製した。
得られた酸化セルロース、微細化セルロースについて、カルボキシ基量、結晶化度、長軸の数平均軸径、光線透過率およびレオロジーの測定や算出を次のように行った。
分散処理前の酸化セルロースについて、カルボキシ基量を以下の方法にて算出した。
酸化セルロースの乾燥重量換算0.2gをビーカーに採り、イオン交換水80mLを添加した。
そこに、0.01mol/L塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、攪拌しながら、0.1mol/L塩酸を加えて、全体がpH2.8となるように調整した。
そこに、自動滴定装置(商品名:AUT-701、東亜ディーケーケー社製)を用いて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.05mL/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。
得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基の含有量を算出した。
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
TEMPO酸化セルロースについて、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIII、Rigaku社製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、下記の式(2)を用い、以下に示す手法により、TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100・・・(2)
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
原子間力顕微鏡を用いて、微細化セルロースの長軸の数平均軸径を算出した。
まず、微細化セルロース水分散液を0.001%となるように希釈した後、マイカ板上に20μLずつキャストして風乾した。
乾燥後に原子間力顕微鏡(商品名:AFM5400L、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、DFMモードで微細化セルロースの形状を観察した。
微細化セルロースの長軸の数平均軸径は、原子間力顕微鏡による観察画像から100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求めた。
微細化セルロース水分散液について、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないように微細化セルロース水分散液を入れ、光路長1cmにおける波長220nmから1300nmまでの光線透過率を分光光度計(商品名:NRS-1000、日本分光社製)にて測定した。
微細化セルロース0.5質量%の分散液のレオロジーをレオメータ(商品名:AR2000ex、ティー・エイ・インスツルメント社製)傾斜角1°のコーンプレートにて測定した。
測定部を25℃に温調し、せん断速度を0.01s-1から1000s-1について連続的にせん断粘度を測定した。せん断速度が1s-1と100s-1のときのせん断粘度を表1に示す。
得られた評価結果を表1、図11、図12に示す。図11は、実施例1の微細化セルロース水分散液の透過率を測定した結果を示す図である。図12は、実施例1の微細化セルロース水分散液の粘度特性の評価結果を示す図である。
表1、図11および図12の結果から、実施例1では、結晶性が高く、可視光領域で高い透過率を示し、低粘度の微細化セルロースを製造することができたことが分かった。
<実施例2>
PVAと複合体と架橋剤の固形分重量比がこの順に82:13:5となるように調製した他は実施例1と同様の条件にて光熱変換成形体2を作製した。
架橋剤として、イソブチレン無水マレイン酸共重合体(クラレ社製イソバン110、平均分子量170,000)を用いた他は実施例1と同様の条件にて光熱変換成形体2を作製した。
PVA(クラレ製PVA-105、平均重合度500、けん化度99.0mol%)を用いた他は実施例1と同様の条件にて光熱変換成形体2を作製した。
複合体作製工程において、硝酸銀水溶液の添加量を20.0gとして作製した複合体B含有物を用いた他は実施例1と同様の条件にて光熱変換成形体2を作製した。
複合体作製工程において、硝酸銀水溶液の添加量を30.0gとして作製した複合体C含有物を用いた他は実施例1と同様の条件にて光熱変換成形体2を作製した。
ウレタン樹脂ディスパージョンHW171(DIC製)と複合体Aの固形分比がこの順に90:10となるようにした以外は実施例1と同様に光熱変換成形体2を作製した。
アクリルアミドHEAA(KJケミカル製)、光重合開始剤Irgacure2959(BASF製)、複合体Aの固形分比がこの順に、89:1:10となるようにした以外は実施例1と同様に組成物を作製した。実施例1と同様にしてPET基材にアプリケーターを用いて塗工し、溶媒を除去した後、赤外線ヒーター付き紫外線照射コンベア装置(ヘレウス製)を用いて、IR照射と300mJ/cm2紫外線を照射して光熱変換成形体2を作製した。
複合体Aを添加せず、PVA117とAN119とCSNFの固形分重量比がこの順に、77:13:10の組成物とした他は実施例1と同様の条件にて成形体を作製した。
複合体Aを添加せず、PVA117とAN119の固形分重量比がこの順に、86:14の組成物とした他は実施例1と同様の条件にて成形体を作製した。
複合体Aを添加せず、HW171とCSNFの固形分比がこの順に90:10の組成物とした他は実施例7と同様に成形体を作製した。
複合体Aを添加せず、HW171のみの組成物となるようにした他は実施例7と同様に
成形体を作製した。
複合体Aを添加せず、アクリルアミドHEAA、光重合開始剤Irgacure2959、CSNFの固形分重量比がこの順に、89:1:10の組成物とした他は実施例8と同様に成形体を作製した。
複合体Aを添加せず、アクリルアミドHEAA、光重合開始剤Irgacure2959の固形分重量比がこの順に、99:1の組成物とした他は実施例8と同様に成形体を作製した。
表2に記載の条件で作製した光熱変換成形体2および成形体に対して、カルボキシ基量、結晶化度、長軸の数平均軸径、光線透過率およびレオロジーの測定や算出を次のように行った。
実施例1から実施例8の複合体Aから複合体Cの含有物について、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルにサンプルまたはリファレンスを入れ、光路長1cmにおける波長220nmから1300nmまでの光線透過率を分光光度計UV-3600(島津製作所製)にて測定した。複合体含有物は適宜水で希釈し、気泡が混入しないように石英セルに入れて測定を行った。得られた光線透過率から、光線透過率が極小となった波長を分散液のλmax(nm)とした。
実施例1から実施例8の複合体Aから複合体Cの含有物を適宜希釈し、支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、実施例1から実施例8の複合体Aから複合体CをSTEMモードにて観察した。
実施例1から実施例8の複合体Aから複合体Cの含有物を透過型電子顕微鏡観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査透過型電子顕微鏡で観察した。走査透過型電子顕微鏡像中の平板状金属微粒子を、円形で近似した際の面積から円相当粒子径を、平面方向の粒子径(粒子径d)として算出する。100個の粒子の粒子径dを測定し、その平均値を平均粒子径として求めた。
実施例1から実施例8の複合体Aから複合体Cの平均アスペクト比は、上述のようにして求めた平均粒子径を平均厚みで割った値とした。複合体を含む分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャストして風乾し、包埋樹脂で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡で観察することにより、断面方向から観察した平板状金属微粒子の透過型電子顕微鏡像を得た。この透過型電子顕微鏡中の平板状金属微粒子の厚みを、平面方向と垂直な厚みhとして算出し、100個の粒子の平面方向と垂直な厚みhを測定し、その平均値を平均厚みとして求めた。
平板状金属微粒子の厚みhの平均値(平均厚み)に対する平面方向の粒子径dの平均値(平均粒子径)を、平板状金属微粒子の平均アスペクト比(dの平均値/hの平均値)として算出した。
光熱変換成形体2を50mm×50mmに切り出し、熱電対を、基材23を剥離した側に、熱電対を耐熱性のテープを用いて貼り付けた。約1200nmにピークを有する近赤外線ランプSIR-760(トーコー製)を照射し、ランプの照射を開始してから30秒後のフィルム(光熱変換成形体2の基材23を剥がしたもの)の温度を測定した。実施例1(2)のみ実施例1で作成した光熱変換成形体2の、基材23を剥離せず、基材23に熱電対を貼り付けて基材23の温度を測定した。
得られた光熱変換成形体2を15mm幅の短冊状に切り出し、小型卓上試験機EZ-LX(島津製作所社製)を用い、ロードセル1.000N、引張速度5mm/分の条件で、評価部50mmの間隔を空けて両端をチャックしながら長辺方向の伸度と強度を検出し、最大強度(N/mm2)及び破断伸び(%)を測定した。尚、光熱変換成形体2は測定1日以上前に23℃、47~50%RHの恒温恒湿室にて調湿し、測定も同環境で行った。
成形体Iを15mmの長さで4mm幅の短冊状に切り出し、両端を50mNの張力でチャックしながら15~180℃まで5℃/分で加熱した際の長辺方向の伸びを、熱機械的装置TMA/SS-6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定し、20℃から40℃の線膨張係数と、Tg以上の140℃から160℃のサンプル伸びから線膨張係数を算出した。
リファレンスは空で測定をし、光熱変換成形体2の光線透過率を、波長220nmから2500nmまで分光光度計UV-3600(島津製作所製)にて測定し、波長660nmと波長1200nmにおける透過率の値を得た。得られた光線透過率から、光線透過率が極小となった波長を光熱変換成形体2のλmax(nm)とした。
スチールウール試験は、COLOR-RASTNESS RUBBING TES(テスター産業製)、ボンスター#0000を用い、50Hz、200gの荷重で10回擦り、傷を観察した。傷が5本以下であれば『〇』、傷が6本以上10本以下であれば『△』、傷が11本以上であれば『×』とした。
鉛筆引掻硬度試験機(テスター産業製)用い、500gの荷重にてHの鉛筆を用いて5回引掻試験を実施し、傷が2本以下であった場合は『〇』、傷が3本以上4本以下であった場合は『△』、傷が5本であった場合は『×』とした。
表3は、実施例1から実施例4、実施例7から実施例8で使用した複合体A(図8)、複合体B(図9)、複合体C(図13)に関するλmax、平均粒子径、平均厚み、平均アスペクト比の測定結果を示す。
表4は、表3に記載の条件で、光熱変換成形体2を作製し、光線透過率、光熱変換特性、機械特性、線膨張係数、耐擦傷性、鉛筆硬度を評価した結果である。
比較例1から比較例6においては、フィルムの温度は100℃程度であったのに対し、実施例1から実施例8においては、フィルムの温度が高く、高い光熱変換特性を有していることが判明した。特にランプのピークである1200nm付近に吸収を有する複合体Aを用いた場合に顕著な光熱変換特性を確認した。また、実施例1から実施例8においては、耐擦傷性、鉛筆硬度が良好であり、複合体の光熱変換特性によりフィルムの物性が良化したと考えられる。実施例1(2)では、基材の温度も顕著に上昇しているのが確認された。
また、実施例1は比較例1から比較例2に対して、実施例7は、比較例3から比較例4に対して、実施例8は比較例5から比較例6に対して、高温領域での線膨張係数が低くなった。複合体の光熱変換特性によりフィルムの乾燥や硬化が促進されたと考えられる。
また、フォトサーマル治療用材料としても利用できる。複合体1は、皮膚に接触させる、体内に入れることも可能である。複合体1は皮膚或いは生体内においても体外からの電磁波照射により発熱するため、皮膚や生体内の癌等の悪性腫瘍部位に複合体1を集積させ、熱により死滅させることでフォトサーマル治療に利用できる。
通常、厚みのある光熱変換成形体2を作製する場合、熱風による加熱乾燥では表面側のみが乾燥されるが、赤外線等のランプ照射による加熱であれば、光熱変換成形体2を均一に乾燥することが可能となる。このとき、複合体1の光熱変換特性により、ランプ照射による乾燥や熱硬化が促進される。
また、UV光等の光硬化において、光硬化前、或いは後に赤外線等のランプを照射することにより、塗膜加熱され、硬化促進や応力緩和によるカール抑制が可能であるが、本複合体を含有することにより、この効果が促進される。
基材上に複合体1と感熱発色色材とを混合して被覆或いは、基材上に感熱発色材料層を設け、その上に複合体層を設けることにより、レーザー光照射による光記録体として用いることができる。レーザー照射による光記録体として用いる場合、記録体が通常の状態で着色することなく、低出力なレーザーを用い、速い記録速度にて十分な記録濃度となる。
更に、有機化合物は、樹脂21に含有させる場合、樹脂21の種類等により退色や分解する等、安定性に問題がある場合がある。複合体1は安定性が高く、繰り返し使用が可能である。
複合体1の光熱変換特性により、近赤外線を照射してゲル-ゾル変化を起こす近赤外応答、自己修復材料を提供できる。フレキシブルディスプレイを製造する過程においては、ガラス基板と、電子素子等を形成する耐熱性を有するプラスチック基板の間に犠牲層において、複合体1を用いることによりレーザーを照射し、効率よく樹脂の熱変形、熱分解、剥離等が可能である。複合体1を細胞培養の足場材料に適用することで、レーザー照射により発生した熱により足場材料の変質を誘導し、損傷なく培養細胞を剥離することができる。
11・・・平板状金属微粒子
12・・・微細化セルロース
12a・・・微細化セルロース(金属微粒子の内部に取り込まれている部分)
12b・・・微細化セルロース(金属微粒子表面に露出している部分)
d・・・粒子径
h・・・厚み
2・・・光熱変換成形体
21・・・樹脂
23・・・基材
Claims (17)
- 金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化セルロースと、が複合化された複合体であり、
前記金属微粒子が平板状金属微粒子であり、
それぞれの前記微細化セルロースについて少なくとも一部又は全部が前記平板状金属微粒子に取り込まれており、残部があればその残部が前記平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化され、
前記金属微粒子は、
厚みの平均値が、1nm以上100nm以下の範囲であり、
粒子径の平均値が、2nm以上1000nm以下の範囲であり、
平均アスペクト比が1.1以上であり、
前記微細化セルロースは、繊維状であり、かつ短軸の数平均軸径が1nm以上50nm以下、長軸の数平均軸径が0.1μm以上10μm以下である、
光熱変換材料。 - 熱エネルギーを利用するために用いる請求項1に記載の光熱変換材料。
- 光硬化性材料または熱硬化性材料と組み合わせ使用し、前記光硬化性材料または前記熱硬化性材料の熱硬化や光硬化を促進させるために用いる請求項1に記載の光熱変換材料。
- 樹脂と組み合わせて使用し、光熱変換成形体を作製するための塗膜の溶媒除去を促進させるために用いる請求項1に記載の光熱変換材料。
- 熱応答性材料と組み合わせて使用し、光応答性を発現させるために用いる請求項1に記載の光熱変換材料。
- 透過率スペクトルにおいて、700nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光熱変換材料。 - 前記金属微粒子の
厚みhの平均値が、1nm以上50nm以下の範囲であり、
粒子径dの平均値が、2nm以上1000nm以下の範囲であり、
平均アスペクト比が4.0以上20.0以下である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光熱変換材料。 - 前記金属微粒子が金、銀、銅の少なくともいずれかを含む、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光熱変換材料。 - 前記複合体の表面の少なくとも一部が金属または金属酸化物で覆われている
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光熱変換材料。 - 前記微細化セルロースは、短軸の数平均軸径が1nm以上10nm以下、長軸の数平均軸径は0.2μm以上2μm以下であり、
少なくとも一部のグルコピラノースのC6位のOH基が選択的に酸化され、
カルボキシ基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下である
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の光熱変換材料。 - 請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光熱変換材料を含む光熱変換組成物。
- 請求項11に記載の光熱変換組成物を用いて製造され、
少なくとも水溶性高分子、水性ディスパージョン、水性エマルジョン、光硬化性樹脂の
いずれかを有する樹脂を含む、
光熱変換成形体。 - 前記樹脂が架橋構造を有し、
前記樹脂がポリビニルアルコール系重合体であり、
前記架橋構造が、架橋剤により形成されたものであって、
前記架橋剤が、分子量10,000以上5,000,000未満のポリマーである、
請求項12に記載の光熱変換成形体。 - 前記複合体の含有量が、重量換算で0.1%以上50%以下である
請求項12または請求項13に記載の光熱変換成形体。 - 破断強度が50N/mm2以上で、且つ破断伸度が10%以上である
請求項12から請求項13のいずれか一項に記載の光熱変換成形体。 - 線膨張係数が100×10-5/K以下である、
請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の光熱変換成形体。 - 透過率スペクトルにおいて、700nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有する
請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の光熱変換成形体。
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