JP7143628B2 - 樹脂成形体、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)を含む樹脂成形体、及びその製造方法に関する。
近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料である天然高分子を用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。例えば、生分解性を有する環境に優しい天然高分子材料としては、セルロース等の植物材料が知られている。植物や木材の主成分であるセルロースは、地球上に最も大量に蓄積された天然高分子材料である。セルロースは、木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になり、高結晶性で、かつナノメートルオーダーの繊維径を持つ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成している。さらに、多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このセルロース繊維を、繊維径がナノメートルオーダーになるまで微細化(ナノファイバー化)して利用する方法が知られている。例えば、N-オキシル化合物を酸化触媒として用い、セルロースの水酸基の一部を酸化して、カルボキシ基およびアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基とする方法が知られている。この方法によれば、最大繊維径1000nm以下、かつ数平均繊維径が2nm~150nmである、セルロースI型結晶構造を有する微細化セルロース(以下、「CSNF」と言うこともある。)が得られる(例えば、特許文献1参照)。
微細化セルロースの適用例としては、例えば、基材と、その上に形成され、少なくとも微細化セルロース、無機層状化合物および水溶性高分子を含む層とを備え、酸素等のガスバリア性を有する包装材料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
一方、ナノサイズの粒子(以下、「微粒子」と言う。)は、バルクには見られない性質を有する。例えば、粒子が小さくなると、粒子の総表面積が大きくなるため、粒子の触媒性能が高くなる。粒子がナノサイズになると融点が低下するため、その粒子を低温で焼成することが可能となる。さらに、粒子の大きさにより、粒子の光学特性にも大きな変化が起こる。屈折率が小さい酸化物等は、可視光の波長領域の1/10以下のサイズになると光の散乱が非常に小さくなるため、液体等に均一に分散させると透明になる。金属微粒子の場合には、粒子中の自由電子の集団振動が特定の波長と共鳴し、その波長の光を吸収することにより、様々な色調が現れる。これらの特徴により、微粒子は光学フィルター、色材、触媒、抗菌剤等にも利用できる。
金属微粒子は、その形状および粒子径を制御することで、その触媒活性や光学特性を制御することが可能である。金属微粒子では、自由電子の振動を起こすことにより生じる電場と外部電場(光等)が共鳴する現象が起こる(局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance;LSPR))。この表面プラズモン共鳴により、特定の波長域の光の吸収が起こる。共鳴波長域は、ロッド形状や平板形状であれば、長軸/短軸のアスペクト比に依存し、共鳴波長が大きく変化するため、金属微粒子を光学フィルター、遮熱フィルム、色材等に応用できる。
微細化セルロースの機能化を検討する中、微細化セルロースと金属微粒子が複合化した新規材料である、平板状銀微粒子と微細化セルロースの複合体(平板状銀/微細化セルロース複合体)が開発された。例えば、特許文献3では、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を含有する
ことを特徴とする増粘発色抗菌剤を開示している。特許文献4では、少なくとも1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子が、微細化セルロースと複合体を形成することで、近赤外領域において透過率が最小となることを特徴とする近赤外線遮蔽材料を開示している。
近年、情報の書き込みや消去の繰り返し表示が可能な表示材料が数多く開発されており、その表示方法としては、主に熱や磁気、光が用いられている。このような表示材料の設計は、例えば、低分子材料の結晶性や、液晶材料の配向、分子骨格を制御することにより緻密に行われている。また、このような表示材料は、カード上にて表示されることが多く、ポイントカードやIDカード等に使用され普及している。しかし、これらの活用には専用装置が必要である。このため、より簡便な方法で使用でき、安価かつ視認性の高い表示材料が求められている。
特開2008-1728号公報 特開2012-149114号公報 特開2015-67573号公報 特開2014-101461号公報
特許文献3、特許文献4では、平板状金属微粒子と微細化セルロースが複合化した平板状銀/微細化セルロース複合体(複合体)と樹脂とを複合化した樹脂成形体についての詳細な記載はない。複合体を含有する樹脂成形体を作製する場合、複合体と樹脂との相溶性に課題があり、光学フィルター、遮熱フィルム等を作製するのが困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、特定の波長領域を吸収または反射する性質を有し、高い耐水性や耐湿性を有し、強度が高く、寸法安定性が良好で、抗菌性を有し、含水率により特異な光学特性を示す樹脂成形体、及びその製造方法、並びに樹脂組成物を提供することを目的とする。
セルロース繊維を高濃度で微細化し、微細化セルロースを高濃度で得るのにはエネルギーが必要であるため、微細化セルロースは低濃度の分散液で得るのが一般的である。樹脂と複合化する際、微細化セルロース分散液の濃度が低く、微細化セルロース分散液中の溶媒が過多であると、樹脂組成物の濃度が低くなり、例えば、シート状の成形体を作製する際に、溶媒を除去するのにエネルギーが必要となり、生産性が悪い。微細化セルロースを遠心分離で濃縮する場合、超遠心分離機で濃縮する必要がある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)を樹脂と複合化する場合、複合体に結合する金属の密度が高いため、沈降係数が大きくなり、短時間で低い重力加速度で複合体を分離すると共に、複合体に結合する微細化セルロースを濃縮することが可能であり、効率よく樹脂と複合化して成形体を得ることが可能となることを知見した。
本発明は、本発明者らによる上記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための本発明の一態様に係る樹脂成形体は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、複合体とを少なくとも含み、
上記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部があればその残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものである。
上記樹脂成形体においては、上記合成樹脂と混合される複合体含有物の固形分率が、1質量%以上50質量%以下であり、金属の固形分率が、0.01質量%以上、50.00質量%以下であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、その透過率スペクトルにおいて、400nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有してもよい。
上記樹脂成形体においては、その最大強度が40N/mm以上で、且つ破断伸度が4%以上であってもよい。
上記樹脂成形体においては、その線膨張係数が100×10-5/K以下であってもよい。
上記樹脂成形体においては、その上記樹脂成形体中の微細化セルロースの含有量は、上記合成樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の範囲内であってもよい。
上記樹脂成形体においては、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、親水性繊維とを少なくとも含み、
当該樹脂成形体の含水率が25%以上の当該樹脂成形体のヘイズをHZとし、
上記含水率が8%以下の当該樹脂成形体のヘイズをHZとした場合、HZとHZが以下の(1)式及び(2)式を満たすことが好ましい。
HZ-HZ≧15(%) ・・・(1)
HZ≦5(%) ・・・(2)
上記樹脂成形体においては、上記水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方がアニオン性又はノニオン性であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、上記平板状金属微粒子の厚みhの平均値が、1nm以上50nm以下の範囲であり、粒子径dの平均値、2nm以上1000nm以下の範囲であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、上記平板状金属微粒子の粒子径dの平均値が、当該平板状金属微粒子の厚みhの平均値の2倍以上であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、上記金属が金、銀、銅の少なくともいずれかを含むことが好ましいを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形体である。
上記樹脂成形体においては、上記微細化セルロースは、繊維状であり、かつ短軸の数平均軸径が1nm以上50nm以下、長軸の数平均軸径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、上記微細化セルロースが、アニオン変性された微細化セルロースであってもよい。
上記樹脂成形体においては、上記微細化セルロースが、少なくとも一部のグルコピラノースがカルボキシメチル化されたカルボキシメチル化セルロースであってもよい。
上記樹脂成形体においては、上記微細化セルロースは、少なくとも一部のグルコピラノースのC6位のOH基が選択的に酸化されていてもよい。
上記樹脂成形体においては、上記微細化セルロースは、短軸の数平均軸径が1nm以上10nm以下、長軸の数平均軸径は0.2μm以上2μm以下であり、カルボキシ基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であることが好ましい。
上記樹脂成形体においては、上記樹脂成形体の厚みは、1μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。
また、上記課題を解決するための本発明の一態様に係る樹脂成形体の製造方法は、上述の樹脂成形体を、支持体上にウェット塗工により形成することである。
また、上記課題を解決するための本発明の一態様に係る樹脂組成物は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、複合体とを少なくとも含み、
上記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものである。
本発明の一態様によれば、特定の波長領域を吸収または反射する性質を有し、高い耐水性や耐湿性を有し、強度が高く、寸法安定性が良好で、抗菌性を有し、含水率により特異な光学特性を示す樹脂成形体を提供できる。また、本発明の一態様によれば、情報の書き込みや消去の繰り返し表示が可能な表示材料に用いることが可能な樹脂成形体を提供できる。
更に、本発明の一態様の樹脂成形体に含有させる複合体は、微細化セルロース単独と比較して濃縮しやすく、効率良く樹脂と混合や分散が可能となり、生産性よく強度が高く、寸法安定性の高い樹脂成形体を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の一例を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る複合体の一例を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る複合体を、ウラニル染色して透過型電子顕微鏡(TEM)により拡大して観察した結果を示す図(透過型電子顕微鏡像)である。 本発明の一実施形態に係る複合体を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示し、(A)は走査型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。 本発明の一実施形態に係る複合体を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により拡大して観察した結果を示し、(A)は走査透過型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。 本発明の一実施形態に係る複合体を走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大して観察した結果を示し、(A)は走査型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。 本発明の一実施形態に係る複合体を透過型電子顕微鏡(TEM)によって断面方向から観察した結果を示す図(透過型電子顕微鏡像)である。 実施例1の微細化セルロース水分散液の透過率を測定した結果を示す図である。 実施例1の微細化セルロース水分散液の粘度特性の評価結果を示す図である。 実施例1の複合体の走査透過型電子顕微鏡(STEM)像である。 実施例8の複合体の走査透過型電子顕微鏡(STEM)像である。
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法などは、実際の寸法関係とは異なる場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形体の一例を模式的に示す図である。本実施形態の樹脂成形体は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)とを少なくとも含み、
上記複合体は、平板状の金属微粒子(平板状金属微粒子)と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものであることを特徴とする樹脂成形体である。
ここで、本発明者らが平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)と樹脂との複合化を検討した結果、複合体と樹脂との相溶性が良好であり、特定の波長領域を吸収または反射する性質を有し、高い耐水性や耐湿性を有し、強度が高く、寸法安定性が良好であり、含水率により特異な光学特性を示すことを見いだした。更に、本実施形態の樹脂成形体に含有させる複合体は、微細化セルロース単独と比較して濃縮しやすく、効率良く樹脂と混合や分散が可能となり、生産性よく強度が高く、寸法安定性の高い樹脂成形体を得ることができる。
セルロース繊維を高濃度で微細化し、微細化セルロースを高濃度で得るのには高いエネルギーが必要であるため、微細化セルロースは低濃度の分散液で得るのが一般的である。樹脂と複合化する際、微細化セルロース分散液の濃度が低く、微細化セルロース分散液中の溶媒が過多であると、樹脂組成物の濃度が低くなり、例えば、シート状の成形体を作製する際に、溶媒を除去するのにエネルギーが必要となり、生産性が悪い。微細化セルロースを遠心分離で濃縮する場合、超遠心分離機で濃縮する必要がある。しかし、平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)の場合、複合体に結合する金属の密度が高く、沈降係数が大きくなるため短時間で低い遠心加速度で、複合体を濃縮すると同時に複合体に結合する微細化セルロースを濃縮することが可能であり、より生産性よく、強度が高く、寸法安定性の高い成形体を得ることが可能となる。
更に、本発明の一態様によれば、製造工程や表示方法が簡便であり、情報の書き込みや消去の繰り返し表示が可能な表示材料に用いることが可能な樹脂成形体を得ることができる。
なお、ここで言う樹脂成形体とは、水性ディスパージョンや水性エマルジョンを有する合成樹脂と複合体とを含有する樹脂組成物を用いて形成したフィルム状、シート状、構造体等の種々の形態を指す。また、樹脂組成物とは、合成樹脂と複合体とを含有するものであり、加熱や光による構造形成や反応をする前の状態を指すものとする。
特に限定されないが、本実施形態に係る樹脂成形体1は、複数の樹脂ユニットが凝集して形成されていることが好ましい。そして、個々の樹脂ユニットは、合成樹脂凝集体と、合成樹脂凝集体の表面を覆うようにして存在する複合体とを少なくとも含んでいると考えられる。さらに、合成樹脂凝集体は、合成樹脂が数個から数十個凝集して形成されている。換言すると、本実施形態に係る樹脂成形体は、合成樹脂が凝集して形成された合成樹脂凝集体と、合成樹脂凝集体の表面を覆うように形成された複合体と、を含んだ樹脂ユニットを備えていることが好ましい。
以下、上述した合成樹脂11と複合体12の詳細について説明する。
[複合体]
本発明を適用した一実施形態である複合体について説明する。本発明者らは、金属微粒子と微細化セルロースとを有する複合体(以下、「金属/微細化セルロース複合体」と言う。)
図2は、本発明を適用した一実施形態である複合体の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、本実施形態の複合体12は、平板状の金属微粒子(平板状金属微粒子)21と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロース22とが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロース22について少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状金属微粒子21に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子21の表面23、裏面24、および側面25の少なくともいずれかより露出するように複合化されたものである。
本実施形態の樹脂成形体においては、複合体を含有するため、特定の波長領域を選択的に吸収または反射する樹脂成形体を得られると共に、樹脂成形体の強度が向上し、寸法安定性を付与することができる。
更に、水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂11の疎水領域と含水による膨潤率が異なることにより、疎水領域間の界面上で入射光の散乱を生じさせることができる。また、合成樹脂11と適度な相互作用を有することにより、合成樹脂11の粒子の凝集サイズを調整したり、合成樹脂11の凝集界面同士を十分に結着させることである。
図3は、本実施形態の複合体12を、ウラニル染色して透過型電子顕微鏡(TEM)により拡大して観察した結果を示す図である。図4は、本実施形態の複合体12を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示し、(A)は走査型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。図5は、本実施形態の複合体12を走査透過型電子顕微鏡(STEM)により拡大して観察した結果を示し、(A)は走査透過型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。図6、本実施形態の複合体12を走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大して観察した結果を示し、(A)は走査型電子顕微鏡像であり、(B)は(A)の模式図である。
図3~6に示すように、それぞれの微細化セルロース22は、金属微粒子21に取り込まれている部分(一端部)22aと、金属微粒子21の表面に露出している部分(他端部)22bとから構成されている。そして、この金属微粒子21に取り込まれている一端部22aの存在により、金属微粒子21とそれぞれの微細化セルロース22とが不可分の状態となっている。すなわち、金属微粒子21と微細化セルロース22とは、微細化セルロース22の少なくとも一部(すなわち、一端部22a)が金属微粒子21に取り込まれることにより、少なくとも一部同士が物理的に結合して、不可分の状態にある。
ここで、複合体12において、微細化セルロース22の少なくとも一部分(すなわち、一端部22a)が金属微粒子21に取り込まれるとは、金属微粒子21の成長段階において、金属微粒子ユニットの粒界に沿って、微細化セルロース22の一端部22aが挟み込まれる状態と同義である。
また、複合体12において、「不可分」の状態とは、例えば、遠心分離機等の物理的方法によって、金属微粒子21と微細化セルロース22とに分離することが不可能であることをいう。
なお、複合体12は、全ての微細化セルロース22の全部分(全体)が金属微粒子21に取り込まれており、金属微粒子21の表面に露出している部分が存在しない構成も含む。このような構成の複合体12においても、図5に示すように、微細化セルロース22のうち、金属微粒子21に取り込まれている部分(一端部)22aの存在を確認できる。
微細化セルロース22は、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであるセルロースであり、その調製方法については特に限定されない。通常、微細化セルロースは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を有する。そのため、本実施形態の複合体12における微細化セルロースとしては、上述の繊維状のものが好ましい。繊維状の微細化セルロースを用いることにより、より形状や大きさが制御された複合体12となる。微細化セルロース22の詳細は後述する。
複合体12の観察は、例えば、以下の方法で行うことができる。
本実施形態の複合体を高速冷却遠心分離等により精製し、透過型電子顕微鏡用グリッドにキャストし、ウラニル染色して、透過型電子顕微鏡で観察することにより、図3に示すような透過型電子顕微鏡像が得られる。この透過型電子顕微鏡像によれば、平板状金属微粒子21と、その表面に露出している微細化セルロース22の他端部22bを観察することができる。
本実施形態の複合体を高速冷却遠心分離等により精製し、得られた複合体をシリコンウェハ板上にキャストし、白金蒸着処理を施した後、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)で観察することにより、図4、図6に示すような走査型電子顕微鏡像が得られる。この走査型電子顕微鏡像によれば、平板状金属微粒子21と、その表面に露出している微細化セルロース22の他端部22bを観察することができる。
また、本実施形態の複合体の製造方法によって製造された複合体を高速冷却遠心分離等により精製し、得られた複合体をグリッドにキャストし、上記の走査透過型電子顕微鏡で観察することにより、図5に示すような走査透過型電子顕微鏡像が得られる。この走査透過型電子顕微鏡像によれば、平板状金属微粒子21と、平板状金属微粒子21に取り込まれている微細化セルロース22aの一端部を観察することができる。
また、本実施形態の複合体を高速冷却遠心分離等により精製し、得られた複合体をグリッドにキャストし、非蒸着のまま、上記の走査型電子顕微鏡観察で観察した後、エネルギー分散型X線分析による元素マッピングを行い、平板状金属微粒子21と微細化セルロース22による炭素の検出により、平板状金属微粒子21と微細化セルロース22の複合化を確認できる。
一般に、金属表面と溶媒は、強い親和力は無く、そのままでは粒子は凝集沈殿してしまう。しかし、本実施形態の複合体は、金属イオンと微細化セルロースの存在下で還元することにより、金属原子が生成し、核発生、成長を経て金属微粒子が生成する。この過程で金属微粒子と微細化セルロース繊維が相互作用し、金属微粒子の形態や凝集に影響を及ぼし、形状やサイズの制御された複合体12が得られると考えられる。
このようにして得られた複合体12において、上記微細化セルロース22のそれぞれは、少なくとも一部又は全部が上記平板状金属微粒子21に取り込まれるとともに、残部が当該平板状金属微粒子21の表面に露出する。本実施形態の複合体は、分散安定性の面から、上記平板状金属微粒子21と上記微細化セルロース22とが不可分であることが好ましい。
(金属微粒子)
複合体における金属微粒子の形状および粒子径を制御することで、その触媒活性や光学特性を制御することが可能である。金属微粒子の表面の自由電子は、光等の外部電場により集団的に振動を起こすことがある。電子は電荷を持った粒子であるため、電子が振動を起こすと周囲に電場を発生する。自由電子の振動を起こすことにより生じる電場と外部電場(光等)が共鳴する現象が起きる現象を局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance;LSPR)と言う。このLSPRにより、特定の波長域の光の吸収が起こる。共鳴波長域は、ロッド形状や平板形状であれば、長軸/短軸のアスペクト比に依存し、共鳴波長が大きく変化するため、金属微粒子を光学フィルター、遮熱フィルム、色材等に応用できる。
このような異方形状を有する金属ナノ粒子の中でも、特に応用が期待されているのが銀ナノ粒子である。例えば、粒子径が数nm~数十nmの球状銀ナノ粒子は、上記LSPRにより、波長400nm付近に吸収を持つため、黄色味を呈することが知られている。しかしながら、異方成長した銀ナノ粒子はこの限りではなく、例えば、平板状の銀ナノ粒子は、吸収ピークがレッドシフトすることが知られている。この際、平板状銀ナノ粒子のアスペクト比(すなわち、粒子径/粒子厚み)が大きくなるほど、吸収ピークがより長波側にシフトすることが確認されている。すなわち、平板状銀ナノ粒子は、任意の波長を吸収する光学材料として用いることができる。また、可視光領域で吸収波長を制御すれば、黄色以外にも赤色、青色など鮮やかな色調を呈する平板状銀ナノ粒子を得ることができ、機能性色材としての利用が期待できる。さらに、平板状銀ナノ粒子のアスペクト比によっては、可視光領域外の近赤外線領域にまで吸収ピークをシフトさせることも可能である。
なお、本明細書において、可視光とは波長領域がおよそ400nmから700nmである電磁波を指し、近赤外線とは赤外線の中でも可視光に近い波長領域(およそ700nmから2500nm)の電磁波を指すものとする。この近赤外線は可視光に近い性質を有しており、特に太陽光に含まれる波長領域物700nmから1200nm付近の光は、物体表面に吸収され熱エネルギーに変換されやすいことが知られている。
このような近赤外線吸収材料は、熱線を遮蔽できるため、付加価値の高い機能性材料である。例えば、建築物や自動車の窓に近赤外線吸収材料を含む層を設けることによって、遮熱効果をもたらすことが可能となる。すなわち、冷房効率上昇による節電効果が見込めるため、夏場の電力不足問題の改善にも貢献することができる。
本実施形態の複合体において、平板状金属微粒子とは、平板状の金属微粒子のことであり、本実施形態において、微粒子とは、体積粒子径が10μm以下の粒子のことである。本実施形態の複合体において「平板状」とは、板状の粒子である。
ここで、図2に示すように、複合体12の平板状金属微粒子の表面23または裏面24の形状を、直径d(円相当径)の円形とする。なお、この直径dは、複合体12の粒子径である。複合体12の平板状金属微粒子の厚みhに対する直径dを、複合体12のアスペクト比(d/h)とする。複合体12の平板状金属微粒子の「平板状とは」、板状の粒子のことを示し、アスペクト比(d/h)の平均値は1.1以上である。
なお、複合体12の表面23および裏面24の形状は、特に限定されないが、通常、六角形や三角形等の多角形である。表面23および裏面24が多角形や楕円形等である場合、表面23または表面24の面積が同等となる円径と仮定して、直径d(円相当径)を算出する。
また、複合体12の表面23と裏面24は、どちらの面積が大きくもよく、両面は平行でなくてもよい。
光学特性を制御する観点から、平板状金属微粒子21の形状は平板であり、その粒子径d、厚みh、アスペクト比が以下の範囲内であることが好ましい。なお、平板状金属微粒子21の粒子径d、厚みhおよびアスペクト比は、複合体12の粒子径d、厚みhおよびアスペクト比と等しい。
平板状金属微粒子21の粒子径dの平均値は、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上500nm以下であることがより好ましく、20nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
平板状金属微粒子21の厚みhの平均値、すなわち表面23と裏面24の距離hの平均値は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましい。
なお、上記の平均値は、例えば、100個の粒子を測定して求める。
平板状金属微粒子21のアスペクト比(dの平均値/hの平均値)は、1.1以上であり、2.0以上であることが好ましく、2.0以上100以下であることがより好ましく、2.0以上50以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の複合体12は、粒子径dの平均値を任意に変化させ、そのアスペクト比を制御することにより、色調を変化させることができる。また、複合体12は、金属微粒子21と微細化セルロース22を含んでいればよく、他の成分を含んでいてもよい。
本実施形態における金属微粒子の形状、大きさの評価は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査透過型電子顕微鏡を用いて行うことができる。
平板状の金属微粒子の粒子径dおよび厚みhの測定方法、並びに、アスペクト比の算出方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)粒子径の測定法
複合体12を含む分散液を透過型電子顕微鏡観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査透過型電子顕微鏡で観察することにより、図5に示すような走査透過型電子顕微鏡像が得られる。この走査透過型電子顕微鏡像中の平板状金属微粒子を、円形で近似した際の径を、平面方向の粒子径として算出する。上記の平均値は、100個の粒子を測定して求める。
(2)厚みの測定法
図7に示すように、複合体12を含む分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム26上にキャストして風乾し、包埋樹脂27で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡で観察することにより、図7に示すような透過型電子顕微鏡像が得られる。なお、図7は、平板状金属微粒子21を透過型電子顕微鏡によって断面方向から観察した結果を示す図(透過型電子顕微鏡像)である。この透過型電子顕微鏡中の平板状金属微粒子の厚みを、平面方向と垂直な厚みとして算出する。上記の平均値は、100個の粒子を測定して求める。
(3)アスペクト比の算出方法
上述のようにして求めた、平板状金属微粒子21の厚みhの平均値に対する直径d(円相当粒子径)の平均値、平板状金属微粒子21のアスペクト比(dの平均値/hの平均値)として算出する。
上述の平板状金属微粒子の粒子径および厚みの測定方法、並びに、アスペクト比の算出方法は一例であり、本実施形態における平板状金属微粒子の粒子径および厚みの測定方法、並びに、アスペクト比の算出方法は、特にこれらに限定されない。
平板状金属微粒子21を構成する金属または金属化合物は、特に限定されず、用途に合わせて任意の金属または金属化合物を用いることができる。平板状金属微粒子21を構成する金属または金属化合物としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。中でも、金、銀、銅の少なくともいずれかを含むことが好ましく、特に、少なくとも銀を含む場合、複合体12は可視光領域から近赤外領域の波長の光を遮蔽することができ、抗菌性を付与することもできる。複合体12に含まれる金属の割合は特に限定されない。
(微細化セルロース)
微細化セルロースは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであればよく、その調製方法については特に限定されない。通常、微細化セルロースは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を有するため、本実施形態の複合体の製造方法に用いられる微細化セルロースとしては、以下に示す範囲にある繊維状のものが好ましい。繊維状の微細化セルロースを用いることにより、より形状やサイズの制御された複合体を製造することができる。
本実施形態の樹脂成形体1における複合体12に含有する微細化セルロース22は、生成する金属微粒子の成長を制御することにより、粒子径や形状を制御することができる。また、樹脂成形体中では、樹脂成形体の強度の向上と共に、寸法安定性を付与することができる。
更に、水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂11の疎水領域と含水による膨潤率が異なることにより、疎水領域間の界面上で入射光の散乱を生じさせることができる。また、合成樹脂11と適度な相互作用を有することにより、合成樹脂11の粒子の凝集サイズを調整したり、合成樹脂11の凝集界面同士を十分に結着させることである。また、微細化セルロースの短軸径が大きすぎると含水率に関わらず光の界面による散乱が生じ、樹脂成形体1のヘイズが上昇してしまうため、微細化セルロース22の短軸径は十分に小さいことが好ましい。
微細化セルロースの原料として用いられる植物セルロースの種類は、特に限定されない。微細化セルロースの原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ等を用いることができる。また、微細化セルロースの原料としては、例えば、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロース、さらには、レーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロース等を用いることもできる。好適には、結晶形I型を有する天然セルロースが機械特性、熱特性、薬品耐性等の材料特性が高いため望ましい。
セルロースの微細化処理法としては、特に限定されないが、例えば、グラインダーによる機械処理の他、セルロースの化学変性と機械処理を併用して微細化する方法が挙げられる。
また、バクテリアセルロースも微細化セルロースとして用いることができる。さらに、各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させた後、電解紡糸することによって得られる微細再生セルロース繊維を用いてもよい。
セルロースの化学変性方法は特に限定されないが、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(以下、「TEMPO」と言う。)等のN-オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理等を機械処理と併用して微細化する方法が挙げられる。
本実施形態に用いる微細化セルロースは、アニオン変性された微細化セルロースであることが好ましい。アニオン変性された微細化セルロースは、特に限定されないが、例えば、カルボキシル化セルロース(「以下、酸化セルロース」と言う)、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル化セルロースなどのアニオン変性セルロースを解繊することによって得ることができる。アニオン変性された微細化セルロースは、導入されたカルボキシ基、カルボキシメチル基、リン酸基などの官能基が、金属微粒子生成における基点となり、複合体の形状やサイズを制御しやすい。
カルボキシメチル化セルロースは、セルロース原料を公知の方法で得ることができる。例えば、セルロース原料にモノクロロ酢酸等のエーテル化剤と触媒である、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属を加え、水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが主成分の溶媒下で反応させることで得られる。
カルボキシメチル化セルロースは、少なくとも一部のグルコピラノースがカルボキシメチル化されていればよく、好ましくはカルボキシメチルセルロースの置換度が0.01以上0.60以下であることが好ましい。
特に特許文献4の方法に示されるように、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物を用いた酸化反応では、結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の一級水酸基が高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換された酸化セルロースを得られる。このように結晶表面に導入されたカルボキシ基を有するセルロース間には静電的な反発力が働くため、水性媒体中でミクロフィブリル単位にまで分散したセルロースシングルナノファイバー(以下、「CSNF」と言う。)を得ることができる。そのため、CSNFを用いると複合体の形状やサイズを制御しやすい。
N-オキシル化合物を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。
このCSNFを用いれば、充分に形状や大きさの制御された複合体を製造できる。繊維状であり、短軸径が均一であるCSNFは、複合体の大きさや形状の制御に好適である。CSNFは、繊維表面に規則的にカルボキシ基を有する。このカルボキシ基は、複合体を製造する際、金属イオンが配位して複合体生成の起点となると考えられるため、複合体製造に好適である。
CSNFは、セルロースのミクロフィブリル表面のC6位の水酸基が選択的に酸化されるため、セルロースはI型結晶を維持し、結晶化度の低下がほとんどないため、セルロース本来の高い弾性率を維持することができる。また、TEMPO酸化反応条件により導入されるカルボキシ基量によってイオン性は制御できるため、また、TEMPO酸化反応条件により導入されるカルボキシ基量は制御できるため、樹脂成形体1に適用される合成樹脂11に応じてカルボキシ基に由来する電荷量を調整することが可能である。また、セルロースは、グルコースユニット当たり3つの水酸基を有し、ナノレベルまで解繊されることによりミクロフィブリル表面に多数の水酸基が露出された構造を取るため、高い親水性を有し、そのため水への膨潤率が極めて高くなる。
そのため、CSNFを用いることにより、樹脂成形体1は、高強度、高弾性率、低線膨張係数、高耐熱性の特性を有する。更に、イオン性の制御が可能であるため、含水率による光学特性の制御においても、CSNFを用いることが好ましい。
微細化セルロースの粘度特性は、次の通りであることが好ましい。微細化セルロースの0.5質量%分散液(25℃)が、せん断速度が1s-1のときに30mPa・s以上2000mPa・s以下、せん断速度が100s-1のときに20mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは、微細化セルロースの0.5質量%分散液の粘度(25℃)が、せん断速度が1s-1のときに100mPa・s以上1000mPa・s以下、せん断速度が100s-1のときに30mPa・s以上80mPa・s以下である。
微細化セルロースの粘度特性が上記の範囲内であると、微細化セルロースが低粘度化されているため、高濃度で用いることができ、複合体を生産性よく製造することができる。また、粘度特性が上記の範囲内であれば、結晶構造や表面構造を維持し、金属微粒子との複合化の起点となるカルボキシ基を規則的に有するため、安定に形状が制御された複合体を製造できる。さらに、粘度特性が上記の範囲内であれば、後述する工程bにおいて、金属塩と微細化セルロースを均一に混ぜることができ、工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができる。
微細化セルロースは、短軸の数平均軸径が1nm以上50nm以下、長軸の数平均軸径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、短軸の数平均軸径が1nm以上10nm以下、長軸の数平均軸径が0.2μm以上2μm以下であることがより好ましい。
微細化セルロースの短軸の数平均軸径が1nm未満では、高結晶性の剛直な微細化セルロース構造をとることができず、大きさや形状が十分に制御された複合体を得るのが難しくなる。また、高い強度、寸法安定性が良好な樹脂成形体1を得るのが難しくなる。一方、微細化セルロースの短軸の数平均軸径が50nmを超えると、微細化セルロースの分散液の粘度が高くなり操作性が悪くなり、後述する工程bにおいて、金属塩と微細化セルロースを均一に混ぜるのが難しくなり、工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなり、大きさや形状が十分に制御された複合体を得るのが難しい。また、樹脂成形体1の強度も低下することがある。
微細化セルロースの長軸の数平均軸径が0.1μm未満では、形状や大きさが制御された複合体を得るのが難くなる。一方、微細化セルロースの長軸の数平均軸径が10μmを超えると、微細化セルロースの分散液の粘度が高くなり、操作性が悪くなるため、後述する工程bにおいて、金属塩と微細化セルロースを均一に混ぜるのが難しくなり、工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなり、大きさや形状が十分に制御された複合体を得るのが難しい。合成樹脂11と複合体含有物を混合するのが難しくなる。
微細化セルロースの短軸の数平均軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロースの長軸の数平均軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
本実施形態で用いる微細化セルロースの短軸径、長軸径について、測定方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によって測定できる。固形分濃度が0.001質量%以上0.01質量%以下の範囲内となるように水中に微細化セルロースを分散させたものをマイカ上に展開して自然乾燥させる。その後、その微細化セルロースを透過型電子顕微鏡にて観察することにより微細化セルロースの短軸径、長軸径を確認(測定)することができる。
微細化セルロースの結晶化度は、70%以上であることが好ましい。
微細化セルロースの結晶化度が70%未満では、剛直な微細化セルロース構造をとることができず、安定に複合体を製造するのが難しくなり、また、樹脂成形体1の強度が低下することがある。
微細化セルロースにおけるカルボキシ基量は、その微細化セルロースの乾燥質量1g当たり0.1mmol以上3.0mmol以下であることが好ましく、0.5mmol以上2.0mmol以下であることがより好ましい。
微細化セルロースにおけるカルボキシ基量が0.1mmol/g未満では、分散性が悪く、0.1mmol/g以上であると、カルボキシ基による静電反発により分散安定性が良好となる。一方、微細化セルロースにおけるカルボキシ基量が3.0mmol/g以下であると、微細化セルロースの結晶構造が充分に保持され、形状制御性能が良好であると共に、樹脂成形体1の水分率により光学特性を制御しやすい。
セルロース繊維がミクロフィブリル単位まで分散すると、波長660nmの光線透過率が高くなる。微細化セルロースが、固形分濃度1%の分散体において、光路長1cm、波長が660nmの光線透過率が分散媒をリファレンスとして80%以上であることが好ましい。
微細化セルロースは、特に限定されないが、以下の方法で製造されたものを用いることができる。
(酸化工程)
微細化セルロースの原料として用いられる天然セルロースとしては、例えば、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプが挙げられる。具体的には、漂白および未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめとして、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース並びにこれらの混合物を用いることができる。また、これらを物理的、化学的処理した物質のいずれを用いてもよい。材料調達の容易さおよび価格の面から各種木材パルプを原料とすることが好ましい。
N-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いたセルロースの酸化方法としては、水系の比較的温和な条件で、可能な限りセルロースの結晶構造を保ちながら、アルコール性一級炭素を選択的に酸化することが可能である。上記N-オキシル化合物としては、例えば、TEMPO、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等が挙げられる。これらの中でも、TEMPOが好ましい。
N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量であればよく、特に限定されない。通常、N-オキシル化合物の使用量は、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、0.01質量%~5.0質量%程度である。
N-オキシル化合物を用いたセルロースの酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次、共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、そのオキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物等、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、共酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
共酸化剤の使用量は、セルロースの酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、1質量%~200質量%程度である。
N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物をさらに併用してもよい。これにより、セルロースの酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。
このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。
この化合物の使用量は、セルロースの酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分の全量に対して、1質量%~50質量%程度である。
セルロースの酸化反応時の反応系のpHは、9~11であることが好ましい。
pHが9以上であると、反応を効率よく進めることができる。上記pH領域の範囲外となると、N-オキシル化合物による酸化効率が大幅に低下することが知られている。上記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより、反応系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液等の有機アルカリ等が挙げられる。これらの中でも、コスト等の面から、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
セルロースの酸化反応の反応温度は、4℃以上50℃以下であることが好ましく、30℃以上50℃以下であることがより好ましい。
通常のN-オキシル化合物による酸化反応自体は4℃以上50℃以下の領域でも充分に進行するが、30℃以上50℃以下の温度領域で酸化反応を行うと、セルロース繊維の結晶構造が維持されたまま得られる微細化セルロースの分散液が低粘度化することが判明した。これはセルロースミクロフィブリルの長軸方向に周期的に非晶領域が存在するため、N-オキシル化合物による酸化反応がその非晶領域に進行し、さらに生成したグルクロン酸ユニットがその反応温度領域においてpH9~11の条件下で不安定であるため分解されてしまい、その結果、短繊維化が進行するためであると考えられる。なお、反応温度が50℃を超えると、副反応により次亜塩素酸ナトリウムが自己分解するため酸化反応自体が停止してしまう。
セルロースの酸化処理における酸化の程度は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定できる。しかし、少なくとも酸化反応の際に用いる水酸化ナトリウムの添加量が、原料となる天然セルロースの乾燥質量当たり1.0mmol/g以上5.0mmol/g以下であることが好ましい。水酸化ナトリウムの添加量が1.0mmol/g未満では、導入されるカルボキシ基量が少なくなってしまい、CSNFとして分散するために必要なミクロフィブリル間の充分な静電反発力が得られない。一方、水酸化ナトリウムの添加量が5.0mmol/gを超えると、非晶領域以外の分解が進行し、ミクロフィブリル表面構造が失われる上、酸化処理前後の収率が著しく低下してしまう。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系に第一級アルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。添加する第一級アルコールとしては、反応をすばやく終了させるために、メタノール、エタノール、プロパノール等の低分子量の第一級アルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性等から、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(微細化工程)
微細化工程は、酸化セルロースを軽微な機械処理によって解繊して、微細化セルロースの分散液を得る工程である。
セルロースを微細化する方法では、まず、セルロースに溶媒を加えて懸濁させる。
溶媒としては、特に限定されないが、微細化セルロースを分散させる溶媒と同様のものが用いることができ、これらの中でも水が特に好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロースの分散性を向上するために、懸濁液のpHを調整してもよい。pHの調整に用いられるアルカリ水溶液としては、酸化セルロースの酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロースを微細化する。
物理的解繊処理としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突等の機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を、例えば、TEMPO酸化セルロースに行うことにより、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。
上記のようにして得られた微細化セルロースは、結晶構造が維持されているため、安定に複合体を製造できる。
得られた分散液は、そのまま、または必要に応じて希釈、濃縮、溶媒置換等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
微細化セルロースの分散液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpHの調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されず、用途に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。他の成分としては、具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉等が挙げられる。水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分を微細化セルロース分散液と混合してから複合体を製造してもよい。
[複合体の製造方法]
本実施形態の複合体は、特に限定されないが、例えば以下の方法で製造することができる。
a)少なくとも1種類の微細化セルロースを含有する溶液または分散液を調製し、微細化セルロース含有液を準備する、微細化セルロース含有液準備工程と、
b)少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の微細化セルロースとを含有する溶液または分散液を調製し、金属塩および微細化セルロース含有液を準備する、金属塩および微細化セルロース含有液準備工程と、
c)上記金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して複合体分散液を得る、反応液調製工程と、
を有する。
複合体製造に用いる微細化セルロースはアニオン変性された微細化セルロースであることが好ましい。アニオン変性により導入された官能基に金属イオンが配位した状態で金属イオンが還元され、それを基点に金属微粒子が生成するため、複合化及び形状制御をしやすくなる。
(工程a:微細化セルロース分散液準備工程)
本実施形態の複合体の製造方法において、工程aでは、少なくとも1種類の微細化セルロース分散液を準備する。
少なくとも1種類の微細化セルロース分散液における微細化セルロース分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、0.01質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
微細化セルロース分散液の固形分濃度が0.01質量%未満では、複合体の形状の制御が難しい。一方、微細化セルロース分散液の固形分濃度が90質量%を超えると、微細化セルロース分散液の粘度が高くなり、工程b(金属塩および微細化セルロース含有液準備工程)において、金属塩と微細化セルロースとを均一に混ぜるのが難しくなり、工程c(反応液調製工程)において、均一に還元反応を進行させることができなくなる。
微細化セルロースを分散させる溶媒としては、微細化セルロースが充分に溶解または分散するものであれば、特に限定されない。環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属微粒子および微細化セルロースの分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
少なくとも1種類の微細化セルロース分散液のpHは、特に限定されないが、pH2以上pH12以下であることが好ましい。
(工程b:金属塩および微細化セルロース含有液準備工程)
本実施形態の複合体の製造方法において、工程bでは、少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の微細化セルロースとを含有する溶液または分散液を調製し、金属塩および微細化セルロース含有液を準備する。
少なくとも1種類の金属塩と少なくとも1種類の微細化セルロースを含有する溶液または分散液を調製する方法は、特に限定されない。例えば、少なくとも1種類の微細化セルロースを含有する溶液または分散液(微細化セルロース分散液)と、少なくとも1種類の金属塩を含有する溶液(金属塩含有溶液)とを用意し、微細化セルロース分散液を攪拌しながら、微細化セルロース分散液に金属塩含有溶液を添加して調製することができる。また、微細化セルロース分散液に、直接、固体の金属塩を加えてもよく、金属塩含有溶液に微細化セルロース分散液を添加してもよい。
金属塩としては、硝酸銀、塩化銀、酸化銀、硫酸銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、塩化金酸、塩化金ナトリウム、塩化金カリウム、塩化白金、酸化白金および酸化白金からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。これらの金属塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
金属塩含有溶液を準備する場合、金属塩含有溶液に用いる溶媒は、金属塩が充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属塩の溶解性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
また、金属塩含有溶液中の金属塩の濃度も特に限定されない。
金属塩および微細化セルロース分散液における金属塩の濃度は、特に限定されないが、0.002mmol/L以上20.0mmol/L以下であることが好ましい。特に、微細化セルロースとしてCSNFを用いる場合、繊維表面に存在するカルボキシ基に金属イオンが配位するため、金属塩の濃度(金属イオンの濃度)が、カルボキシ基量未満となるように調製することが好ましい。金属塩の濃度(金属イオンの濃度)が微細化セルロース表面に存在するカルボキシ基量を上回ってしまうとCSNFが凝集することがある。
金属塩および微細化セルロース含有液に用いる溶媒は、微細化セルロースが充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
複合体の分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
金属塩および微細化セルロース分散液における微細化セルロースの固形分濃度は、特に限定されないが、0.01質量%以上90質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
微細化セルロースの固形分濃度が0.01質量%未満では、複合体の形状の制御するのが難しい。一方、微細化セルロースの固形分濃度が90質量%を超えると、微細化セルロース分散液の粘度が高くなり、工程bにおいて、金属塩と微細化セルロースとを均一に混ぜるのが難しくなり、工程cにおいて、均一に還元反応を進行させることができなくなる。複合体を導電材料として用いる場合、微細化セルロースの固形分濃度が高くなると低温で焼結させることが難しくなり、微細化セルロースの除去工程が必要となる。
金属塩および微細化セルロース含有液の溶媒としては、微細化セルロースが充分に溶解または分散するものであれば、特に限定されない。
環境への負荷の面からは、溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属微粒子および微細化セルロースの分散性の観点からは、溶媒としては、水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。
金属塩および微細化セルロース含有液のpHは、特に限定されないが、pH2以上pH12以下であることが好ましい。
また、金属塩および微細化セルロース含有液の温度は、特に限定されないが、溶媒に水を用いる場合には4℃以上100℃以下であることが好ましい。
(工程c:反応液調製工程)
本実施形態の複合体の製造方法において、工程cでは、金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元し、反応液を調製して複合体分散液を得る。
金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、還元剤、紫外線、電子線、液中プラズマ等を用いる方法を採用することができる。金属イオンの還元に用いる還元剤としては、公知の還元剤を用いることができる。
還元剤としては、例えば、金属ヒドリド系、ボロヒドリド系、ボラン系、シラン系、ヒドラジンおよびヒドラジド系の還元剤が挙げられる。一般に、液相還元法では、還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸およびアスコルビン酸アルカリ金属塩、ヒドラジン等が用いられる。
金属塩および微細化セルロース含有液における還元剤の添加量(還元剤の濃度)は、特に限定されないが、金属塩および微細化セルロース含有液における金属塩の濃度と等量以上となるようにすることが好ましく、0.002mmol/L以上2000mmol/L以下であることがより好ましい。
金属塩および微細化セルロース含有液における還元剤の濃度が、金属塩および微細化セルロース含有液における金属塩の濃度以下であると、未還元の金属イオンが金属塩および微細化セルロース含有液中に残存してしまう。
還元剤を用いて、金属塩および微細化セルロース含有液中の金属イオンを還元させる場合の還元剤の添加方法は特に限定されないが、予め還元剤を水等の溶媒に溶解または分散させてから、その溶液または分散液を金属塩および微細化セルロース含有液に添加してもよい。
また、金属塩および微細化セルロース含有液に対する還元剤の添加速度は、特に限定されないが、還元反応が均一に進行するような方法で添加することが好ましい。
なお、本実施形態の複合体の製造方法は、特に限定されないが、上述の工程a、工程b、工程cを少なくとも含むことが好ましい。各工程の間に他の工程が入ってもよい。
複合体12は、さらに、他の金属あるいは金属酸化物で被覆して安定性を向上させてもよい。被覆に用いられる金属または金属酸化物は、特に限定されない。このような金属または金属酸化物としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物が挙げられる。
特に限定されないが、樹脂成形体1を作製する際、上記複合体分散液から、必要に応じて複合体を分画、濃縮してもよい。溶媒が過多であると、後述する樹脂組成物の濃度が低くなり、例えば、樹脂成形体をシート化する際に、溶媒を除去するのにエネルギーが必要となり、生産性が悪い。複合体を濃縮することで、樹脂組成物の固形分濃度が高くなり、成形体を製造する際の溶媒量が減るため、効率的に成形体を製造することができる。分画・濃縮方法としては、例えば、遠心分離、ゲル濾過カラム、ゲル電気泳動法、凍結乾燥、限外ろ過、沈殿法等が挙げられる。複数の分画、濃縮方法を組み合わせても良い。以下、複合体分散液及び、分画または濃縮により回収された複合体を、複合体含有物と呼ぶ。
微細化セルロースを遠心分離で濃縮する場合、超遠心分離機で濃縮する必要がある。しかし、平板状銀/微細化セルロース複合体(複合体)を樹脂と複合化する場合、密度の高い金属が結合しているため、沈降係数が高くなり、微細化セルロース分散液単独の場合より、非常に効率的に濃縮することが可能である。このため、樹脂と複合化する際に溶媒の割合を下げることが可能であり、効率よく成形体を得ることが可能となる。
[合成樹脂]
本実施形態に係る樹脂成形体1は、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂11を含んでいる。ここで、水性ディスパージョンや水性エマルジョンはそれぞれ水性ディスパーションや水性エマルションと呼ばれることがあり、水を含む水性分散媒中に分散された水性樹脂であれば、本実施形態に含まれるものとする。また、水性ディスパージョンと水性エマルジョンの樹脂としての総称として合成樹脂11という表現を用いるものとする。
この水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、主な分散媒として水を用い、ポリマーをサブミクロンから数ミクロンの粒径に分散させたものである。これらの分散媒を揮発させることによりポリマー同士が変形融合し、連続的な構造を形成する。
水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、樹脂としての水溶性モノマーや水溶性オリゴマーと比較して設計上の自由度が高いため、目的の性能や機能に合わせた材料選定ができるという利点がある。更に、乳化剤の添加や樹脂への親水性基の導入により分散媒中での分散安定性が付与されるが、合成樹脂11自体は疎水性であり、高い耐水性や耐湿性を有している。そのため、外部の湿度環境に左右されにくく、また樹脂成形体1として含水率を変化させた際も顕著な変形はなく、樹脂成形体1としての構造を維持することが可能である。
また、水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、合成樹脂11の重合度は高いが合成樹脂11が個々に独立した微粒子を形成しているため、塗液としての粘度は低い。そのため、本実施形態の構成材料である複合体含有物が高い粘度を有していても良好な混合性を得ることができる。
本実施形態における水性ディスパージョンや水性エマルジョンは前述のように、少なくとも水を含む水性分散媒中に樹脂粒子として分散されている。そして、その樹脂粒子は、ある程度粒子径に分布を持っている。樹脂成形体1の成形前の塗液段階や成形時は、混合する複合体含有物やその他の成分との相互作用や溶融温度等が変形融合する際の樹脂粒子の凝集形態に影響を及ぼす。このため、合成樹脂11の粒子径が樹脂成形体1の構造中の合成樹脂11からなる疎水領域のサイズを一義的に決定付ける要素には当たらない。但し、合成樹脂11の粒子径が小さすぎる場合は、その比表面積が大きいために樹脂粒子表面の電気的作用等により混合する複合体12における微細化セルロース22やその他の成分との相互作用が大きくなりやすく、合成樹脂11同士の融着が起こりにくくなる。その結果、合成樹脂11からなる疎水領域のサイズが小さくなる。この場合、疎水領域と親水領域とにおいて多数の界面が存在するため、含水率に関わらず光の界面による散乱が生じ、樹脂成形体1のヘイズが上昇してしまう。一方、合成樹脂11の粒子径が大きすぎる場合は、樹脂成形体1成形時に、合成樹脂11と、複合体12における微細化セルロース22を含むその他の成分とが均一に分散することが困難となる。そのため、水性ディスパージョンや水性エマルジョンの粒子径は、本実施形態の目的にあった適度な大きさである0.01μm以上10μm以下の範囲内が好ましい。
また、水性ディスパージョンや水性エマルジョンは、イオン性によってアニオン性、カチオン性、ノニオン性に大別される。本実施形態においてはいずれの使用も制限されないが、混合する複合体12の微細化セルロース22がアニオン性の場合、カチオン性の合成樹脂11を混合するとその荷電を阻害する可能性があるため、アニオン性またはノニオン性が好ましい。
水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂11としては、例えば、酢酸ビニル系、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、フェノール系、アミノ系、アミド系、ポリエステル系、エチレン系、ポリビニルアルコール系が用いられる。また、これらは単独でもよく、共重合したものや二種類以上併せて用いたものであってもよい。また、反応性の合成樹脂11を用いても構わない。その場合、例えば、硬化剤や硬化触媒、光重合開始剤、連鎖移動剤等を併用することができる。ここで、樹脂成形体1を構成する合成樹脂11と複合体12との間での相分離により生じる脆性を良化するため、合成樹脂11としては柔軟性を有することが好ましく、ウレタン系がより好ましい。ウレタン系においては、ウレタン構造を構成するポリオールの種類によってポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等が開発されており、いずれも用いることができる。
(樹脂成形体1の製造方法)
以下、本実施形態に係る樹脂成形体1の製造方法について説明する。
本実施形態における樹脂成形体1は、特に限定されないが、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、平板状金属/微細化セルロース複合体(複合体)とを少なくとも含み、上記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部(一部分)又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものである樹脂組成物により形成できる。
水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂11と、複合体含有物とを混合して樹脂組成物を得ることができる。このとき、複合体含有物を予め水や水性溶剤により分散させておくことにより、合成樹脂11との混合性を向上させることができる。ウェット塗工における塗液の固形分濃度を低下させない等の目的のため、複合体含有物をそのまま合成樹脂11中で分散処理を施してもよい。また、セルロース繊維を水性ディスパージョンや水性エマルジョンの樹脂粒子の分散媒中で微細化して微細化セルロース分散液を得ても良く、複合体を水性ディスパージョンや水性エマルジョンの樹脂粒子の分散媒中で調製しても、分散性やその後の樹脂成形体1の形成において問題のない場合において、公知の各種分散処理、複合体製造が可能である。
分散処理としては、例えば、ホモミキサー処理、回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、ナノジナイザー処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー処理、ボールミル処理、ニ軸混練機による混練処理、水中対向処理等がある。この中でも、微細化効率の面から回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理が好適である。なお、これらの処理のうち、二つ以上の処理方法を組み合わせて分散を行うことも可能である。
ここで、合成樹脂11と混合される複合体含有物の固形分率が、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。複合体含有物の固形分とは、微細化セルロースと金属微粒子の総量である。複合体の固形分率が1質量%より少なくなると、樹脂成形体1中の複合体含有物の含水に伴う膨潤が生じにくく、結果として白濁不透明性が低下することがある。また、50質量%より多くなると、合成樹脂11による疎水領域が複合体12における微細化セルロース21のマトリックス中に分散した状態となり、樹脂成形体1自体の含水率の制御が困難となる他、疎水領域の界面が相対的に減少するため、結果として白濁不透明性の低下を招くことがある。
複合体含有物中に含まれる金属の固形分率が、0.01質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。固形分率がこの範囲であれば複合体の光学特性を十分に発揮する。
樹脂組成物は、溶媒として少なくとも水を含むが、更に水以外の公知の溶媒を含んでも構わない。複合体12と混合する観点から、溶媒としては、親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が好ましい。これらの溶媒の中でも、エタノールが好ましい。
このように調製した合成樹脂11と複合体含有物とを混合した樹脂組成物を用いて樹脂成形体1を形成する方法としては、特に制限はないが、樹脂組成物は流動性を有しているため、樹脂基材やガラス基材といった支持体上にウェット塗工し硬化させることにより樹脂成形体1を得ることができる。
塗工方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
合成樹脂11と複合体含有物とを混合した樹脂組成物を塗工する基材の濡れ性や密着性を向上させる目的で、基材に前処理を施してもよい。前処理方法としては特に制限されることはなく、例えば、予めアンカー層を形成してもよいし、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等を施してもよい。
支持体上に塗工した樹脂組成物を乾燥させて、つまり、系内の余分な分散媒を除去することにより樹脂成形体1を形成することができる。さらに、樹脂成形体1の作製後に樹脂の反応進行やその他の特性向上を目的として、樹脂成形体1を追加熱してもよい。また、光反応性材料を用いる場合は、反応を進行させる波長の光を樹脂成形体1に照射しても構わない。
こうして形成した樹脂成形体1を図1に示す。
本実施形態で得られる樹脂成形体1の厚さTは、1μm以上500μm以下の範囲内が好ましく、10μm以上200μm以下の範囲内がより好ましく、20μm以上100μm以下の範囲内が特に好ましい。厚さTが1μm未満になると、樹脂成形体1の強度が極端に弱くなり、生産に不向きとなる。また、500μmを超えると乾燥速度に非常に時間がかかり生産性が極端に低下したり、樹脂成形体1の内部に余分な水分が残留するなどの問題が生じるため好ましくない。
複合体含有物を用いることにより、微細化セルロース単独を樹脂と混合して複合化するより効率的に、高濃度で樹脂組成物を得ることが可能となり、効率的に膜厚の厚い樹脂成形体を得ることができる。
樹脂成形体1を形成する支持体としては、視認性の向上などを目的として、金属光沢を有する層や様々な色を有する層を積層したものを用いても構わない。これらの金属光沢を有する層や様々な色を有する層は、支持体の樹脂成形体1を形成する側に予め形成しておくことが可能であり、または、支持体が透明である場合、支持体の樹脂成形体1を形成する側と反対側の面に形成することも可能である。
樹脂成形体1を形成するその他の支持体としては、吸水速度や透明度の制御のため、保湿性を有する保湿層を積層したものを用いても構わない。保湿層を構成する保湿剤には特に限定はなく、例えば、セルロース、セルロース誘導体、キチン、キトサン誘導体、デンプン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、カオリン、デキストリン、グリセリン、ポリグリセリン、D-ソルビトール、PVAなどを挙げることができ、特にグリセリンやソルビトールが好ましい。また、保湿層に用いる保湿剤は、1種類のみを用いることができ、2種類以上を組み合わせて用いても構わない。
(各種添加材料)
本実施形態では、樹脂成形体1に熱硬化性樹脂をさらに添加しても構わない。熱硬化性樹脂を用いると、塗工した樹脂組成物中に含まれた水等の分散媒を除去する工程と、合成樹脂11の粒子同士が融着する成形工程とを同時に進行させることができる。
また、樹脂成形体1に紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより樹脂の硬化を選択的に進行させることが可能であることから、光硬化性樹脂をさらに添加しても構わない。なお、硬化反応の過程で溶剤の除去や反応性を向上させる目的などで加熱工程を入れても構わない。
これらの熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を樹脂成形体1に添加することにより、水性ディスパージョンや水性エマルジョンからなる合成樹脂11の疎水領域間の結着性を高めたり、樹脂成形体1の力学物性や複合体含有物における微細化セルロース22の吸水速度を制御するなど、種々の目的に合った調整をすることができる。
また、耐水性や耐磨耗性を向上させるなどの目的により架橋構造を形成するため、樹脂成形体1は各種架橋剤を含んでもよい。加熱によって架橋構造を形成する架橋剤としては、限定されないが、例えば、オキサゾリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、グリオキザール、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などを用いることができる。また、それらの中の2種類以上を混合して用いることも可能である。これらの中で、カルボジイミドは大きなエネルギーを加えなくても効率的に架橋構造を形成することができるため好ましい。
さらに、樹脂成形体1に紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより樹脂の硬化を進行させる際に、光架橋剤や光重合開始剤等を用いてもよい。これらの種類は特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を挙げることができる。
また、合成樹脂11と複合体含有物とを混合した樹脂組成物に凝集や沈殿を生じない範囲において、粘度調整や乾燥速度の調整、異種材料との親和性向上等を目的として、付加したい機能に応じて、水をはじめ、様々な有機溶媒を混合させることができる。
このとき異種溶媒を混合することにより生じるショックを緩和するため、例えば、添加速度やpHの調整、攪拌方法、温度等を適宜選択することができる。
また、樹脂成形体1はその他添加物として、金属等を含んでもよい。樹脂成形体1に含まれる金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属またはこれらの合金、または酸化物、複酸化物、炭化物などを用いることができる。
樹脂成形体1は、成形性の向上や劣化抑制、光学材料の分散性の向上等の目的で、公知の添加剤を混合することができる。例えば、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤を含んでも構わない。
なお、凝集や沈殿が生成しない範囲においては、より樹脂組成物内の荷電反発を増大させる目的や分散体の粘度を制御する目的で、水溶性多糖類を含む各種添加物、各種樹脂を含んでもよい。例えば、化学修飾したセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、寒天、可溶化澱粉、グリセリン、ソルビトール、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子等を含めることができる。あるいは塗工性やぬれ性など機能性付与などの為に、各種溶剤を含んでもよい。例えば、アルコール類、セルソルブ類、グリコール類等を含めることができる。さらには意匠性を付与する目的で、各種染料や顔料、有機フィラー、無機フィラー等を含んでも構わない。また、反応性を向上させるなどの目的で、酸やアルカリを添加することによってpHを調整することができる。
(本実施形態の効果)
本実施形態である樹脂成形体1は、特定波長領域に吸収を有する複合体12を含むため、400nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長(λmax)を有することが好ましい。複合体12の効果により、特定波長を吸収または反射することができる。
透過スペクトルの測定方法は、特に限定されないが次のような方法で測定できる。リファレンスは空で測定をし、樹脂成形体の光線透過率を、波長220nmから2500nmまで分光光度計UV-3600(島津製作所製)にて測定した。得られた光線透過率から、光線透過率が極小となった波長を樹脂成形体のλmax(nm)とする。
また、本実施形態である樹脂成形体1は、複合体12の効果により、樹脂成形体の強度が向上する。樹脂成形体の最大強度が40N/mm以上で、且つ破断伸度が4%以上であることが好ましい。
最大強度と破断伸度は、特に限定されないが、例えば、次の方法で測定することができる。樹脂成形体1を15mm幅の短冊状に切り出し、小型卓上試験機EZ-LX(島津製作所社製)を用い、ロードセル1.000N、引張速度5mm/分の条件で、評価部50mmの間隔を空けて両端をチャックしながら長辺方向の伸度と強度を検出し、引張強度(N/mm)及び破断伸び(%)を測定できる。樹脂成形体は測定1日以上前に23℃、47~50%RHの恒温恒湿室にて調湿し、測定も同環境で行う。
更に、本実施形態である樹脂成形体1は、寸法安定性が高く、線膨張係数が低くなる。本実施形態の樹脂成形体の線膨張係数は、100×10-5/K以下であることが好ましく、より好ましくは10×10-5/K以下であることが好ましい。線膨張係数がこの範囲であると寸法安定性が高くなる。
線膨張係数は、特に限定されないが、次の方法で測定することができる。樹脂成形体を15mmの長さで4mm幅の短冊状に切り出し、両端を50mNの張力でチャックしながら15~180℃まで5℃/分で加熱した際の長辺方向の伸びを、熱機械的装置TMA/SS-6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定し、Tg以上の140℃から160℃までのサンプル伸びから線膨張係数を算出する。
本実施形態による樹脂成形体1の光学特性の制御については、樹脂成形体1の含水率を指標とすることが可能である。樹脂成形体1の含水率については、例えば乾燥状態の樹脂成形体1を水に浸漬することにより変化させることができる。水に十分に浸漬させて樹脂成形体1の含水率が飽和に達した際の表面のヘイズをHZとし、これを放湿させ含水率が常温常湿と平衡状態での含水率を示す際のヘイズをHZとしたとき、HZ-HZ≧15(%)を満たすことが好ましい。視認性を担保するためには、含水率の変化によりヘイズとして15%以上の差を有することが好ましく、30%以上の差を有することがより好ましい。さらに、樹脂成形体1のヘイズとしては、HZ≦5(%)とすることにより、常温常湿において透明性を有する樹脂成形体1として汎用的に用いることができる。換言すると、樹脂成形体1の含水率が25%以上の状態でのヘイズをHZとし、樹脂成形体1の含水率が8%以下の状態でのヘイズをHZとしたとき、HZ-HZ≧15(%)を満たすことが好ましい。
ここで、「樹脂成形体1が乾燥した状態」とは、樹脂成形体1の含水率が8%以下の状態をいう。または、樹脂成形体1の含水率が常温常湿よりも低い湿度の環境下で平衡に達した状態をいう。なお、上述の「常温常湿」とは、「23℃、50%RH」を意味し、「常温常湿の環境」とは、「23℃、50%RHの環境」を意味する。
本実施形態の樹脂成形体は、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報の書き込み及び消去が繰り返し可能となる。
より詳しくは、このような構成であれば、含水率の変化のみによって透明度を透明状態から白濁不透明状態まで可逆的に変化する。
この透明状態と白濁不透明状態との違いは次のように推測される。すなわち、透明状態の場合(即ち、樹脂成形体1が乾燥した状態にある場合)には、水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を含む合成樹脂11による疎水領域と、複合体の微細化セルロース22による親水領域とが相分離して分布している。ここで合成樹脂4と微細化セルロース22との屈折率が近く、また微細化セルロース22の繊維の短軸径が可視光の波長よりも小さいため、片側から入射した光は散乱されることなく反対側に透過するので透明に見える。一方、白濁不透明状態の場合(即ち、樹脂成形体1が湿った状態にある場合)には、複合体の微細化セルロース22が膨潤することで合成樹脂11の粒子と微細化セルロース22との界面において屈折率差が生じ、界面で何度も屈折し散乱されるため白濁して見える、等に由来している。微細化セルロース22の膨潤挙動を制御するのは微細化セルロース22の水分の取り込み量、すなわち微細化セルロース22の含水率のみであるため、この含水率を制御することにより、透明度を制御することが可能となる。
[樹脂成形体の利用方法]
本実施形態の樹脂成形体は、特に限定されないが、例えば、光学フィルター、遮熱フィルム、抗菌フィルム、パーソナルケア用品、化粧品、医療用材料等に応用できる。更に、含水率の変化による可逆的な透明度の変化を利用して、目視可能な各種情報書き込みおよび消去が繰り返し可能な標示材料を簡便かつ安価に提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(微細化セルロースの製造)
(試薬・材料)
・セルロース: 漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「MACHENZIE」)
・TEMPO: 市販品(東京化成工業社製、98%)
次亜塩素酸ナトリウム: 市販品(和光純薬社製、CL:5%)
・臭化ナトリウム: 市販品(和光純薬社製)
(酸化工程)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、懸濁液を調製した。
この懸濁液に、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。
この溶液に、2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下し、酸化反応を開始した。反応中の系内の温度を常に40℃に保った。また、反応中は系内のpHが低下するが、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加することで、pH10に保ち続けた。
セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.0mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し、反応を停止させた。
その後、反応後の混合物をガラスフィルターでろ過した後、十分な水の量による水洗、ろ過を繰り返すことにより、酸化セルロースを得た。
(微細化工程)
TEMPO酸化で得られた酸化セルロース1gを蒸留水99gに分散させた。
そして、酸化セルロースを含む分散液に、高圧ホモジナイザーを用いて微細化処理を施し、微細化セルロースの含有量が1質量%の微細化セルロース水分散液を得た。
(複合体の製造)
続いて、硝酸銀250mgを蒸留水50mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
水素化ホウ素ナトリウム250mgを蒸留水50mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
上記の微細化セルロース水分散液0.2Lを容器に入れ、攪拌翼で攪拌しながら、硝酸銀水溶液2.4gを室温(25℃)で添加して、微細化セルロースと硝酸銀を含む分散液を調製した。続いて、微細化セルロースと硝酸銀を含む分散液に水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して反応させ、複合体分散液を製造した。得られた複合体分散液中の複合体を複合体Aとする。
(複合体含有物の回収)
上記複合体A分散液を、200mLの遠心管に入れて希釈し、10,000×g(gは重力加速度)で遠心分離し、沈降した複合体を回収し、固形分濃度が10質量%の複合体A含有物を得た。
<樹脂組成物及び樹脂成形体1の作製>
(1)樹脂組成物の作製
合成樹脂I(ポリウレタンディスパージョン ハイドラン HW171、DIC製)と上述した手順にて作製した複合体A含有物とが固形分質量比にてこの順に70:30となるようにスターラーにて一晩混合し、合成樹脂Iと複合体Aの樹脂組成物を調製した。尚、樹脂組成物中の銀の固形分率は0.05質量%であった。
(2)樹脂成形体1の作製
調製した上記の樹脂組成物をPETフィルム(ルミラーT60-75μm:東レ)にアプリケーターにて塗工してオーブンにて120℃で10分間乾燥した後にPETフィルムを剥離することで、50μm厚の樹脂成形体1を作製した。
<実施例2>
実施例1にて、樹脂成形体の膜厚を20μm厚とした以外は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例3>
実施例1にて、樹脂成形体の膜厚を100μm厚とした以外は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例4>
合成樹脂Iと複合体A含有物とが固形分質量比にてこの順に90:10となるように調製した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例5>
合成樹脂Iと複合体A含有物とが固形分質量比にてこの順に50:50となるように調製した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例6>
合成樹脂Iと合成樹脂II(ポリウレタンディスパージョン エバファノール HA560、日華化学製)と複合体A含有物とが固形分質量比にてこの順に40:40:20となるように調製した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例7>
合成樹脂Iと合成樹脂III(ポリウレタンディスパージョン ハイドラン UV-100S、DIC製)と光重合開始剤I(Irgacure2959、BASF製)と複合体A含有物とが固形分質量比にてこの順に55:24:1:20となるように調製し、樹脂組成物をPETフィルム(ルミラーT60-75μm、東レ製)にアプリケーターにて塗工してオーブンにて120℃で10分間乾燥した後に、積算露光量500mJ/cmにて紫外線硬化した。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<実施例8>
複合体製造において、硝酸銀水溶液4.8gを添加して複合体Bを調製し、複合体A含有物の代わりに同量の複合体B含有物を用いた。その他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<比較例1>
組成物及び樹脂成形体1の作製において、複合体A含有物の代わりに同質量の水を用いた他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<比較例2>
複合体A含有物の代わりに同質量の水を用いた他は実施例6と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。
<比較例3>
複合体製造において、微細化セルロースの代わりに同質量の水溶性高分子であるゼラチンを用い、銀微粒子である生成物Cを得た他は実施例1と同様の条件にて樹脂成形体1を作製した。なお、この比較例3においては、ゼラチン水溶液中で銀微粒子を生成しているだけで、ゼラチンと銀が複合体を形成しているものではない。
<評価方法>
実施例1~8及び、比較例1~3について、微細化セルロースの評価結果を表1、図8、図9に、複合体の評価結果を表2に、複合体Aと複合体BのSTEM像を図10、図11に、樹脂成形体1の作製条件を後述の表3に、樹脂成形体1の評価結果を表4に示した。
実施例1で得られた酸化セルロース、微細化セルロースについて、カルボキシ基量、結晶化度、長軸の数平均軸径、光線透過率およびレオロジーの測定や算出を次のように行った。得られた微細化セルロースの評価結果を表1、図8、図9に示す。
[カルボキシ基量の測定]
分散処理前の酸化セルロースについて、カルボキシ基量を以下の方法にて算出した。
酸化セルロースの乾燥質量換算0.2gをビーカーに採り、イオン交換水80mLを添加した。
そこに、0.01mol/L塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、攪拌しながら、0.1mol/L塩酸を加えて、全体がpH2.8となるように調整した。
そこに、自動滴定装置(商品名:AUT-701、東亜ディーケーケー社製)を用いて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.05mL/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。
得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基の含有量を算出した。
[結晶化度の算出]
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
TEMPO酸化セルロースについて、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIII、Rigaku社製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、下記の式(2)を用い、以下に示す手法により、TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100・・・(2)
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
[微細化セルロースの長軸の数平均軸径の算出]
原子間力顕微鏡を用いて、微細化セルロースの長軸の数平均軸径を算出した。
まず、微細化セルロース水分散液を0.001%となるように希釈した後、マイカ板上に20μLずつキャストして風乾した。
乾燥後に原子間力顕微鏡(商品名:AFM5400L、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、DFMモードで微細化セルロースの形状を観察した。
微細化セルロースの長軸の数平均軸径は、原子間力顕微鏡による観察画像から100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求めた。
[微細化セルロース水分散液の光線透過率の測定]
微細化セルロース水分散液について、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないように微細化セルロース水分散液を入れ、光路長1cmにおける波長220nmから1300nmまでの光線透過率を分光光度計(商品名:NRS-1000、日本分光社製)にて測定した。
[レオロジー測定]
微細化セルロース0.5質量%の分散液のレオロジーをレオメータ(商品名:AR2000ex、ティー・エイ・インスツルメント社製)傾斜角1°のコーンプレートにて測定した。
測定部を25℃に温調し、せん断速度を0.01s-1から1000s-1について連続的にせん断粘度を測定した。せん断速度が1s-1と100s-1のときのせん断粘度を表1に示す。
[複合体のλmax測定]
実施例1~8の複合体含有物、比較例3の生成物Cについて、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルにサンプルまたはリファレンスを入れ、光路長1cmにおける波長220nmから1300nmまでの光線透過率を分光光度計UV-3600(島津製作所製)にて測定した。複合体含有物は適宜水で希釈し、気泡が混入しないように石英セルに入れて測定を行った。得られた光線透過率から、光線透過率が極小となった波長を分散液のλmax(nm)とした。結果を表2に示す。
[生成物の観察]
実施例1~8および比較例1、2の複合体を含む分散液を、支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、実施例1~8の複合体Aおよび複合体B、比較例3の生成物CをSTEMモードにて観察した。
[平均粒子径の算出]
実施例1~8の複合体含有物、比較例3の生成物Cの分散液を透過型電子顕微鏡観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾した後、走査透過型電子顕微鏡で観察した。走査透過型電子顕微鏡像中の平板状金属微粒子を、円形で近似した際の面積から円相当粒子径を、平面方向の粒子径として算出する。上記の平均値は、100個の粒子を測定して求めた。
[平均アスペクト比の算出方法]
実施例1~8の複合体含有物、比較例3の生成物Cの平均アスペクト比は、上述のようにして求めた平均粒子径を平均厚みで割った値とした。試料を含む分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャストして風乾し、包埋樹脂で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、透過型電子顕微鏡で観察することにより、断面方向から観察した平板状金属微粒子の透過型電子顕微鏡像を得た。この透過型電子顕微鏡中の平板状金属微粒子の厚みを、平面方向と垂直な厚みとして算出し、平均値は、100個の粒子を測定して求めた。
上述のようにして求めた、平板状金属微粒子の厚みの平均値に対する直径d(円相当粒子径)の平均値、平板状金属微粒子21のアスペクト比(dの平均値/hの平均値)として算出した。
[樹脂成形体1の引張特性]
得られた樹脂成形体1を15mm幅の短冊状に切り出し、小型卓上試験機EZ-LX(島津製作所社製)を用い、ロードセル1.000N、引張速度5mm/分の条件で、評価部50mmの間隔を空けて両端をチャックしながら長辺方向の伸度と強度を検出し、最大強度(N/mm)及び破断伸び(%)を測定した。尚、樹脂成形体は測定1日以上前に23℃、47~50%RHの恒温恒湿室にて調湿し、測定も同環境で行った。
[樹脂成形体1の線膨張係数]
樹脂成形体1を15mmの長さで4mm幅の短冊状に切り出し、両端を50mNの張力でチャックしながら15~180℃まで5℃/分で加熱した際の長辺方向の伸びを、熱機械的装置TMA/SS-6000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定し、20℃から40℃の線膨張係数と、Tg以上の140℃から160℃のサンプル伸びから線膨張係数を算出した。
[樹脂成形体1の光線透過率測定]
リファレンスは空で測定をし、樹脂成形体1の光線透過率を、波長220nmから2500nmまで分光光度計UV-3600(島津製作所製)にて測定した。得られた光線透過率から、光線透過率が極小となった波長を樹脂成形体1のλmax(nm)とした。
[樹脂成形体1のヘイズ]
得られた樹脂成形体1について、水に1分間浸漬させた後に表面の水分を拭き取り、直後に樹脂成形体1の形成時にPETと反対側の面についてHaze Mater NDH200(日本電色製)を用いてヘイズを測定した。このときの値をHZとした。さらに、水に浸漬させたサンプルを60℃のオーブンにて30分間乾燥させた後に23℃、50%RHの恒温恒湿槽にて2日間調湿した後に、同様にヘイズを測定した。このときの値をHZとした。このとき、以下の式(1)、式(2)を満たす場合は、「○」、満たさない場合は「×」とした。
HZ-HZ≧15(%) ・・・(1)
HZ≦5(%) ・・・(2)
[視認性]
ヘイズHZを測定したのと同様の条件下の樹脂成形体1について、水分を保持できる筆状の筆記具を用いて樹脂成形体1上に書き込みを行い、目視にて視認できるかを官能評価した。なお、視認性が極めて高かったものを「◎」、視認性が高かったものを「○」、使用できる程度に視認性が高かったものを「△」、視認性が低かったものを「×」として評価した。
[繰り返し耐久性]
樹脂成形体1を水への1分間の浸漬と60℃オーブンでの30分間の乾燥を100回繰り返した際の視認性を目視にて官能評価した。なお、上述した視認性の評価と同様に、視認性が極めて高かったものを「◎」、視認性が高かったものを「○」、使用できる程度に視認性が高かったものを「△」、視認性が低かったものを「×」として評価した。
Figure 0007143628000001
Figure 0007143628000002
Figure 0007143628000003
Figure 0007143628000004
図8は、実施例1の微細化セルロース水分散液の透過率を測定した結果を示す図である。図9は、実施例1の微細化セルロース水分散液の粘度特性の評価結果を示す図である。
表1、図8および図9の結果から、実施例1では、結晶性が高く、可視光領域で高い透過率を示し、低粘度の微細化セルロースを製造することができたことが分かった。
表2は、実施例1~実施例8で作製した複合体A、複合体B、及び比較例3で作製した生成物Cのλmaxと平均粒子径、平均厚み、平均アスペクト比を示した。
表3の条件で樹脂成形体1を作製した。表4は、表3に記載の条件で、樹脂成形体1を作製し、機械特性、線膨張係数、透過率の極小値(λmax)、ヘイズ、視認性を評価した結果である。
実施例1から実施例8においては、その組成により機械特性を制御し、且つ高い寸法安定性を示し、そのヘイズ特性、視認性から、含水率の変化による可逆的な透明度変化を利用して、目視可能な各種情報の書き込み及び消去が繰り返し可能となる。更に、複合体による特定波長領域を遮蔽する光学特性を示している。一方、比較例1から比較例3においては機械特性も良好でなく、ヘイズ特性、視認性も良好ではなかった。
本実施形態の樹脂成形体1は、金属/微細化セルロース複合体の光学特性を十分に発揮することができ、複合体により樹脂成形体の機械特性および寸法安定性が良好で、抗菌性を有する樹脂成形体を得られる。更に、含水率の変化による各情報の書き込みおよび消去が繰り返し可能な、表示材料を簡便且つ安価に作製することができる。
1・・・樹脂成形体
11・・・合成樹脂
12・・・平板状金属/微細化セルロース複合体
21・・・平板状金属微粒子
22・・・微細化セルロース
22a・・・微細化セルロース(金属微粒子の内部に取り込まれている部分)
22b・・・微細化セルロース(金属微粒子表面に露出している部分)
23・・・表面
24・・・裏面
25・・・側面
26・・・PET層
27・・・包埋樹脂層
d・・・粒子径
h・・・粒子の厚み

Claims (12)

  1. 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、複合体とを少なくとも含み、
    前記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部があればその残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものであり、
    樹脂成形体の破断強度が40N/mm以上で、且つ破断伸度が4%以上であることを特徴とする樹脂成形体。
  2. 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、複合体とを少なくとも含み、
    前記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部があればその残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものであり、
    樹脂成形体の線膨張係数が100×10-5/K以下であることを特徴とする樹脂成形体。
  3. 水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方を有する合成樹脂と、複合体とを少なくとも含み、
    前記複合体は、平板状金属微粒子と、少なくとも一つ以上の微細化されたセルロースとが複合化された、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体であり、それぞれの微細化セルロースについて少なくとも一部又は全部が平板状金属微粒子に取り込まれており、残部があればその残部が平板状金属微粒子の表面に露出するように複合化されたものであり、
    樹脂成形体の含水率が25%以上の当該樹脂成形体のヘイズをHZとし、
    前記含水率が8%以下の当該樹脂成形体のヘイズをHZとした場合、HZとHZが以下の(1)式及び(2)式を満たすことを特徴とする樹脂成形体。
    HZ-HZ≧15(%) ・・・(1)
    HZ≦5(%) ・・・(2)
  4. 前記合成樹脂と混合される複合体含有物の固形分率が、1質量%以上50質量%以下であり、金属の固形分率が、0.01質量%以上、50.00質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  5. 前記樹脂成形体の透過率スペクトルにおいて、400nm以上2500nm以下の波長領域で、透過率が極小となる極小波長を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  6. 前記樹脂成形体中の微細化セルロースの含有量は、前記合成樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  7. 前記水性ディスパージョン成分及び水性エマルジョン成分の少なくとも一方がアニオン性又はノニオン性であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形体。
  8. 前記平板状金属微粒子の
    厚みhの平均値が、1nm以上50nm以下の範囲であり、
    粒子径dの平均値が、2nm以上1000nm以下の範囲である
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  9. 前記平板状金属微粒子の粒子径dの平均値が、当該平板状金属微粒子の厚みhの平均値の2倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  10. 前記金属が金、銀、銅の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  11. 前記樹脂成形体の厚みは、1μm以上500μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  12. 複合体を準備する工程と、樹脂組成物調製工程と、樹脂成形体作製工程とを含み、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形体を、支持体上にウェット塗工により形成することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
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