JP6638783B2 - 光学フィルター - Google Patents

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Description

本発明は、金属と天然高分子とを含有する複合微粒子を含む光学材料及びこれを用いた光学フィルターに関する。
特定の波長範囲の光を透過する光学フィルターは、照明器具フィルター、各種光学機器に用いられている。医療・生物関係の分野で蛍光を利用して標本の細胞構造を観察する際に用いられる蛍光顕微鏡に光学フィルターが用いられる。カメラモジュールにおいては、ノイズとなる赤外線をカットする用途に用いられる。
例えば、プラズマディスプレー前面に配置される光学フィルターとして、590nm付近のネオンオレンジ色に近く色再現性を悪化させる波長を吸収するため、570から600nm付近に吸収極大波長を有する色素を配合したものがある(特許文献1)。しかし、色素を用いた光学フィルターは長期間使用すると劣化するという問題がある。
特許文献2では、基材の両面に機能膜を有する光選択透過フィルターであり、機能膜が無機材料からなる赤外線を遮断する光選択透過性フィルターが開示されている。しかし、真空成膜で製造する場合、コストが高くなるという問題がある。
近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料である天然高分子を用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。生分解性を有する環境に優しい天然高分子材料としては、セルロース等の植物材料が知られている。
植物や木材の主成分であるセルロースは、地球上に最も大量に蓄積された天然高分子材料である。木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性でナノメートルオーダーの繊維径をもつ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このセルロース繊維を、繊維径がナノメートルオーダーになるまで微細化(ナノファイバー化)して利用する方法が知られる。N−オキシル化合物を酸化触媒として、セルロースの水酸基の一部がカルボキシ基およびアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基に酸化された、最大繊維径1000nm以下かつ数平均繊維径が2から150nmである、セルロースI型結晶構造を有する微細セルロース繊維が知られる(特許文献3)。微細セルロースを用いた例として、例えば、酸素等のガスバリア性を有する包装材料として、基材上に、少なくとも微細セルロース繊維、無機層状化合物および水溶性高分子を含む包装材料も知られている(特許文献4)。
特開2001−228323号公報 特開2009−154489号公報 特開2008−1728号公報 特開2012−149114号公報
本発明の課題は、環境負荷の低い光学フィルターを提供することである。
本発明の一局面は、基材と、基材の少なくとも1つの面に形成された、光学材料を含むコーティング層とを備え、透過率が613nm以上716nm以下の波長領域で極小となり、光学材料は、金属と天然高分子とを含有する複合微粒子を含み、前記金属と前記天然高分子とは物理的に不可分であり、前記複合微粒子は平板状またはロッド状である、光学材料である。
また、複合微粒子が、体積が5×10−1nm以上5×1010nm以下であり、厚みが1nm以上50nm以下の範囲であってもよい。
また、金属が、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物を含んでもよい。
また、天然高分子が微細セルロース繊維を含んでもよい。
また、微細セルロース繊維の短軸の数平均軸径が1nm以上200nm以下であり、微細セルロース繊維の、長軸の数平均軸径が0.05μm以上50μm以下であってもよい。
また、微細セルロース繊維の数平均短軸径が1nm以上50nm以下で、微細セルロース繊維の数平均長軸径は0.1μm以上10μm以下であり、微細セルロース繊維に含まれるカルボキシ基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であってもよい。
また、微細セルロース繊維は、繊維表面にカルボキシ基が導入されていてもよい。
本発明により、環境負荷の低い天然高分子を含む光学フィルターを提供することが出来る。
本発明の光学材料を用いた光学フィルターの一実施形態の断面図である。
ここに、環境負荷の低い天然高分子を用い、分散性、耐熱性、耐光性に優れ、低エネルギー、且つ低コストに製造できる光学材料及び光学フィルターを開示する。
(光学材料)
本開示に係る光学材料は、金属と天然高分子とを含む複合微粒子を含み、両者が物理的に不可分であり、500nm以上の波長領域の光を遮蔽する光選択性を有する。この光選択性のある光学材料を含有する樹脂やコーティング層は、光選択性を有する光学フィルターに用いることができる。本開示において、遮蔽とは吸収または反射により光の透過率が低下することとする。本開示に係る光学材料を含有する分散液が、500nm以上700nm以下の波長領域で、吸収や反射により透過率が極小となる極小波長を有することが好ましい。500nm以上700nm以下の波長領域を遮蔽する光学材料により、プラズマディスプレー前面に配置される光学フィルターに用いることができる。
金属微粒子の表面の自由電子は、光等の外部電場により集団的に振動を起こすことがある(表面プラズモン)。電子は電荷を持った粒子であるため、電子が振動を起こすと周囲に電場を発生する。金属微粒子では、自由電子の振動を起こすことにより生じる電場と外部電場(光等)が共鳴する現象が起きる(表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR))。この表面プラズモン共鳴により、特定の波長域の光の吸収が起こる。この光吸収波長域は、粒子の大きさや形状により変化する。
一般に、金属微粒子は、そのアスペクト比が高いほど長波長に吸収を得やすい。そのため、本開示に係る光学材料においても、異方性を有することにより長波長領域に吸収を得ることなる。そのため、本開示に係る光学材料の形状は特に限定されないが、500nm以上の波長領域の光を遮蔽するためには、異方性を有することが好ましい。特に、平板状またはロッド状、より好ましくは体積が5×10−1nm以上5×1010nm以下、厚みが1nm以上50nm以下の平板状の複合微粒子である。本開示に係る光学材料の形状やサイズの観察は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査透過型電子顕微鏡にて行う。
本開示に係る光学材料の作製方法は、特に限定されるものではないが、一般的液相還元法にて、天然高分子の存在下、前駆体金属イオンの存在下で還元することにより、形状とサイズの制御された光学材料を得ることができる。この光学材料の製造においては、高温に加熱する必要もなく、複数の反応を経ずに低エネルギー、且つ低コストで光学材料を得ることができる。また、本開示に係る光学材料は、耐光性、耐熱性に優れる。
(天然高分子)
本開示に係る光学材料に用いる天然高分子は、動物、植物、微生物が生産する高分子である。天然高分子は、特に限定されるものではないが、一般に、多糖やポリペプチドが知られる。多糖としては、例えば、デンプン、セルロース、キチン・キトサン、セルロース、デキストラン、プルラン、カードラン、アルギン酸、ヒアルロン酸が挙げられる。ポリペプチドとしては、例えば、グルテン、ゼイン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロイン、セリシン、ケラチン等が挙げられる。中でもセルロースを用いることが好ましい。セルロースは、例えば以下に示す方法により微細化した微細セルロース繊維を用いることが好ましい。
(微細セルロース繊維とその製造方法)
本開示に係る微細セルロース繊維は、特に限定されるものではないが、その繊維径が以下に示す範囲内であることが好ましい。また、その調製方法については特に限定されない。すなわち短軸径において数平均短軸径が1nm以上200nm以下であれば好ましく、より好ましくは1nm以上50nm以下である。数平均短軸径が1nm以上では高結晶性の剛直な微細セルロース繊維構造をとるため、安定的に光学材料を製造できる。一方、200nm以上であると、安定的に光学材料を製造することが難しくなる。また、長軸径においては、数平均長軸径は0.05μm以上が好ましく、50μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上10μm以下である。長軸径の数平均長軸径がこの範囲であると、安定的に光学材料を製造することができる。
微細セルロース繊維の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細セルロース繊維の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細セルロース繊維の原料として用いることが出来る植物セルロースの種類も特に限定されず、例えば木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフを用いることができる。また、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロース、さらにはレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースを用いることもできる。
微細セルロース繊維の微細化処理法も特に限定されないが、例えばグラインダーによる機械処理の他、TEMPOなどのN−オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理などを機械処理と併用して微細化する方法が知られている。また、バクテリアセルロースも微細セルロース繊維として用いることが出来る。さらには各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させたのち、電解紡糸することによって得られる微細再生セルロース繊維を用いても良い。特に特許文献3の方法に示されるように、TEMPOをはじめとするN−オキシル化合物を用いた酸化反応では、結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の−CHOHが高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換される。このように結晶表面に導入されたカルボキシ基を有する微細セルロース繊維間には静電的な反発力が働くため、水性媒体中でミクロフィブリル単位にまで分散したセルロースシングルナノファイバー(CSNF)を得ることができる。N−オキシル化合物を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。この微細セルロース繊維を用いれば、安定的に本発明の光学材料を製造することができる。
微細セルロース繊維中のカルボキシ基の含有量は、微細セルロース繊維1g当たり0.1mmol以上3.0mmol以下の範囲内であることが好ましく、0.5mmol以上3.0mmol以下であることがより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g以上であると、分散安定性が良好である。3.0mmol/g以下であると、微細セルロース繊維の結晶構造が充分に保持され、安定的に光学材料を製造することができる。
以下、木材系天然セルロースから、N−オキシル化合物を用いた酸化反応により導入されたカルボキシ基を有する微細セルロース繊維の分散液を調製する方法の一例を説明する。この例の調製方法は、木材系天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて酸化して酸化セルロースを得る工程(酸化工程)と、該酸化セルロースを水性媒体中で微細化して微細セルロース繊維分散液を調製する工程(微細化工程)とを含む。
(酸化工程)
微細セルロース繊維の原料としては、特に限定されず、木材セルロースを用いる場合には、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプなど、一般的に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01質量%から5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、セルロース原料を水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロースの固形分に対して1質量%から200質量%程度である。
N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1質量%から50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は特に限定されないが、4℃以上50℃以下が好ましく、10℃以上50℃以下がより好ましい。4℃より低いと、試料の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。50℃より高いと副反応が促進して試料が低分子化し、光学材料を安定的に製造することが難しくなる。酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、1時間から5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは、9以上11以下が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9以上11以下に保つことが好ましい。反応系のpHを9以上11以下に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上述の範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(微細化工程)
酸化セルロースを微細化する方法としてはまず、酸化セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。水性媒体としては、前記と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。必要に応じて、酸化セルロースや生成する微細セルロース繊維の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
続いて懸濁液に物理的解繊処理を施して、酸化セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中の酸化セルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有する微細セルロース繊維の分散液を得ることができる。このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られる微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維の数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
上記のようにして、カルボキシ基が導入された微細セルロース繊維の分散液が得られる。得られた分散液は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
微細セルロース繊維の分散液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されず、用途に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉等が挙げられる。
(金属)
本開示に係る光学材料に含有される金属種は、特に限定されるものではなく、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。光学特性の制御の観点から、少なくとも銀を含む1種類以上が好ましい。金属微粒子は形状制御により可視光線から近赤外光線にわたる任意の波長光を吸収することが可能であり、各種組成物の用途に合わせて所望の波長領域に吸収することで光選択性を有する。複合微粒子の周りを、他の金属あるいは金属酸化物で被覆して、複合微粒子の安定性を向上させても良い。被覆に用いる金属種としては特に限定せず、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、白金、亜鉛、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物が挙げられる。
(光学材料の製造方法)
本開示に係る光学材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、一般的な湿式法である液相還元法で調製できる。金属表面と溶媒は、強い親和力は無く、そのままでは金属微粒子は凝集沈殿してしまう。天然高分子の存在により金属微粒子の特徴が大きく変化する。天然高分子と前駆体金属イオンの存在下で還元剤を添加することにより、前駆体金属イオンが還元されて金属原子が生成し、核発生、成長を経て金属微粒子が生成する過程で相互作用し、形状やサイズの制御された複合微粒子が生成する。この複合微粒子が500nm以上の波長領域を遮蔽する光学特性を有し、光学材料として用いることができる。例えば、球状の銀微粒子は通常400nm付近に吸収を有するが、銀と天然高分子とを含有する複合微粒子は、その異方性により500nm以上の波長領域を遮蔽する光学特性を有する。
天然高分子の分散に用いる溶媒は、天然高分子が充分に分散または溶解するものであれば、特に限定されない。環境への負荷の面から水を用いることが好ましい。微細セルロース繊維を用いる場合は、分散性の観点から水や親水性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましい。
光学材料の製造に用いる天然高分子の分散液の濃度は特に限定しないが、0.1%以上50%未満が好ましい。0.1%未満では金属微粒子の形状制御効果が不十分となり、50%以上では粘度が上昇し、均一な反応が難しくなる。天然高分子の分散液の添加する前駆体金属イオンの濃度も限定しない。前駆体金属イオン濃度、天然高分子濃度は生成する光学材料の光学特性に影響を与える。複合微粒子の光学特性は、その形状により大きく変化する。光選択性材料の具体的な作製法については実施例にて詳細を記した。
前駆体金属イオンは、特に限定されず、公知に用いられる前駆体金属イオンである塩化金酸、硝酸銀、シアン化銀、酢酸銀等を用いることができる。前駆体銀イオン現を用いる場合は、安全性の観点から硝酸銀を用いることが好ましい。
前駆体金属イオンの還元に用いる還元剤は、公知の還元剤を用いることができる。例えば、金属ヒドリド系、ボロヒドリド系、ボラン系、シラン系、ヒドラジン及びヒドラジド系の還元剤が挙げられる。一般に、液相還元法では、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、ヒドラジン等が用いられる。反応を行う際は、攪拌翼、マグネチックスターラー等、公知の方法で攪拌を行っても良い。
(光学フィルター)
こうして得られた光学材料の分散液から光学材料を分離し、特に限定されないが樹脂分散またはコーティング液として用いるなどにより、特定の波長領域の選択性を持つ光学フィルターとして利用できる。光学フィルターは、空の状態をリファレンスとして500nm以上の波長に、透過率が70%以下となる波長領域を有することが好ましい。
得られた光学材料を分画する方法としては、沈殿法、遠心分離、ゲル濾過カラム、ゲル電気泳動法等の公知の方法を用いることができる。複数の分画方法を組み合わせても良い。
光学材料を再分散させる方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、攪拌型分散機、高速度回転せん断装置、ミル型分散装置(ボールミル、ビーズミル、コロイドミル等)、高圧噴射装置、超音波分散装置等の液中分散装置が挙げられる。分散剤を添加して分散化してもよい。
光学材料を成形材料と複合化して成形することで光選択性を有する光学フィルターを製造することができる。光学材料と複合化する成形材料は、公知のプラスチック材料を用いることができる。
プラスチック材料は、特に限定されるものではなく、一般に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、ポリスチレン、ABS樹脂(A;アクリロニトリル、B;ブタジエン、S;スチレン)、AS樹脂、ポリエチレン、EVA樹脂、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
特に、再生可能な資源を用いたバイオマスプラスチックを用いることが好ましい。再生可能な資源を用いたバイオマスプラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリオレフィン、ポリアミドが挙げられる。
光学材料と樹脂とを複合化する際の複合化方法は、公知の方法を用いることができる。
成形の方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、射出成形法、圧縮成形法、積層成形法、トランスファ成形法、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイ成形法、押出ラミネート、ブロー成形法、真空成形法、スプラッシュ成形法、低圧積層成形法が挙げられる。
光学材料をコーティング液に混合し、基材にコーティングさせることで、光選択性を有する光学フィルターを製造できる。コーティング液は、水系または溶剤系の塗液であり、樹脂を溶解或いは分散しているものではり、コーティングによりコーティング層を形成できる。
環境負荷の観点から、水系のコーティング液を用いることが好ましい。例えば、水性アルキド樹脂や水溶性アクリル樹脂塗料、水性エポキシ樹脂、水性ウレタン樹脂、合成樹脂エマルジョンが挙げられる。
コーティング層の形成方法は、常温乾燥コーティング、加熱硬化コーティング、電着コーティング等の公知の方法を用いることができる。コーティング層の膜厚は特に限定されない。
光学材料を含有するコーティング液を塗工する基材は、特に限定されず、プラスチックやガラス等の公知のものを用いることができる。光選択性材料の特徴を活かすためには、透明基材であることが好ましい。
基材の材質としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、ポリエステル(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等。)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等。)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリルセルロース(トリアセチリルセルロース、ジアセチルセルロース等。)等が挙げられる。
基材の膜厚は、特に限定されないが、生産性や成形性の観点では、基材の膜厚は、5μm以上1000μm以下が好ましい。
本開示に係る光学材料を用いた光学フィルターの一実施形態の断面図を図1に示す。基材11におけるコーティング層14を設ける側の面には、表面処理を施し、表面処理層12を設けることが好ましい。これにより、接着層13を形成する塗工液の塗工性がより良好になる。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
光学フィルターは、接着層13を含むことが出来る。接着層13は、基材11とコーティング層14との密着性を高める役割を果たす。
接着層13の形成に用いる接着成分としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂等の接着樹脂が挙げられる。なかでも、接着樹脂としては、密着性が良好な点から、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
光学材料を含有する組成物は積層構造を有しても良い。また、光選択性材料を含有するコーティング層は、単層でなくてもよく、複層の層を設けても良い。
光学材料との複合組成物や光学材料を含有するコーティング層は、成形性の向上や劣化抑制、光学材料の分散性の向上等の目的で、公知の添加剤を混合することができる。例えば、熱安定剤、安定化助剤、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤を含んでも構わない。
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.00mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化パルプの解繊処理)
TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。該CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は4nm、数平均長軸径は1110nmであった。また、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行ったところ、該CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
(硝酸銀水溶液の調製)
硝酸銀を蒸留水50mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
(水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製)
水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水50mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
(光学材料の作製)
1%CSNF水分散液50gに対し、硝酸銀水溶液0.5gを室温(25℃)で攪拌しながら添加した。30分攪拌を続けたのち、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して光学材料を作製した。
<実施例1>
上述の方法でCSNF水分散液を作製し、CSNF水分散液に硝酸銀水溶液を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加して光学材料を製造した。
<実施例2>
上述の方法でCSNF水分散液を作製し、CSNF分散液に0.01MのNaOHを0.6g添加して硝酸銀水溶液を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加して光学材料を製造した。
<実施例3>
上述の方法でCSNF水分散液を作製し、CSNF分散液に0.01MのNaOHを1.2g添加して硝酸銀水溶液を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加して光学材料を製造した。
<実施例4>
上述の方法でCSNF水分散液を作製し、CSNF分散液に0.01MのNaOHを1.8g添加して硝酸銀水溶液を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加して光学材料を製造した。
<比較例1>
水に硝酸銀水溶液を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
<比較例2>
ポリビニルアルコールPVA124(クラレ社製)に硝酸銀を添加し、しばらくして還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
<比較例3>
CSNF水分散液に、還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
<比較例4>
CSNF水分散液に硝酸銀を添加した。
実施例1から4、比較例1から4にて調製した分散液から、25000rpmの遠心分離により沈殿物を得、ポリビニルアルコール水溶液に分散させ、コーティング液を調製した。PETフィルムにコロナ処理を施し、コーティング液をバーコーターを用いて塗工し、120℃で乾燥させた。
(複合微粒子生成の評価方法)
複合微粒子の生成は、走査透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて観察し、ロッド状、平板状等、金属と天然高分子の複合微粒子が生成している場合を『○』とし、複合微粒子が生成していない場合に『×』とした。
(光学特性の評価方法)
得られたフィルムを、空の状態をリファレンスとして、220nmから1400nmの波長領域の透過率を、分光光度計UV−3600(島津製作所社製)を用いて測定した。波長700nmの光の透過率が70%以下である場合に『△』、60%以下である場合に『○』とした。光選択性を有する場合、透過率が極小となった波長をλmaxとした。
Figure 0006638783
表1に示すように、実施例1から4では、複合微粒子が生成し、700nmにて透過率が70%以下となり、光選択性を有する光学フィルターが得られた。比較例1から4では、複合微粒子が観察されず、光選択性を有さなかった(表1における、光選択性が『×』である)。本実施例により、環境負荷の低い天然高分子を用い、分散性、耐熱性、耐光性に優れ、低エネルギー且つ低コストで製造できる光学材料及びこれを含む光学フィルターを提供することが出来た。
本発明は、光学材料およびこれを用いた光学フィルター等に有用である。
11 基材
12 表面処理層
13 接着層
14 コーティング層

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも1つの面に形成された、光学材料を含むコーティング層とを備え、
    透過率が613nm以上716nm以下の波長領域で極小となり、
    前記光学材料は、金属と天然高分子とを含有する複合微粒子を含み、前記金属と前記天然高分子とは物理的に不可分であり、前記複合微粒子は平板状またはロッド状である、光学フィルター。
  2. 前記複合微粒子が、体積が5×10 nm以上5×1010nm以下であり、厚みが1nm以上50nm以下の範囲である、請求項1に記載の光学フィルター。
  3. 前記金属が、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物を含む、請求項1または2に記載の光学フィルター。
  4. 前記天然高分子が微細セルロース繊維を含む、請求項1から3のいずれかに記載の光学フィルター。
  5. 前記微細セルロース繊維の短軸の数平均軸径が1nm以上200nm以下であり、前記微細セルロース繊維の、長軸の数平均軸径が0.05μm以上50μm以下である、請求項4に記載の光学フィルター。
  6. 前記微細セルロース繊維の数平均短軸径が1nm以上50nm以下で、前記微細セルロース繊維の数平均長軸径は0.1μm以上10μm以下であり、前記微細セルロース繊維に含まれるカルボキシ基量が0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下である、請求項4または5に記載の光学フィルター。
  7. 前記微細セルロース繊維は、繊維表面にカルボキシ基が導入されている、請求項4から6のいずれかに記載の光学フィルター。
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