JP7427900B2 - 分散液およびその製造方法、並びに、複合体 - Google Patents

分散液およびその製造方法、並びに、複合体 Download PDF

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Description

本発明は、分散液および分散液の製造方法、並びに、複合体に関し、特には、繊維状ナノ構造体の分散液およびその製造方法、並びに、繊維状ナノ構造体を含む複合体に関するものである。
従来、フィルム状の導電性複合体を製造する方法として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある)などの導電性物質を含む分散液を基材上にキャストした後、乾燥および剥離する方法が知られている。
具体的には、例えば特許文献1には、安定した導電性を有する導電性複合体を製造する方法として、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーと、カルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブ、好ましくは単層カーボンナノチューブ(CNT)とを含有する分散液を基材上にキャストした後、乾燥および剥離してフィルム状の導電性複合体を得る技術が開示されている。そして、特許文献1では、カルボキシ基で修飾されたセルロースナノファイバーとして、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)の存在下、共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いてセルロース類を酸化させることにより得られた改質セルロース類を用いている。
特開2013-211108号公報
ところで、コスト削減の観点からは、単層CNTの含有量が少量であっても優れた導電性を発揮し得る複合体が求められている。
しかし、上記従来の導電性複合体には、単層CNT含有量の低減と導電性の向上とを両立させる点で更なる改善の余地があった。
そこで、本発明は、単層CNT含有量が少量でも高い導電性を有する複合体を作製可能な分散液およびその製造方法、並びに当該分散液を用いて形成した複合体を提供することを目的とする。
本発明者は、単層CNT含有量を低減しつつ導電性を向上させた複合体を得ることを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者は、上記従来の導電性複合体では、TEMPOの存在下でセルロース類を酸化する際に共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用しているため、得られるセルロースナノファイバーでは、セルロースの構成単位であるβ-グルコース単位の6位の1級水酸基がカルボン酸ナトリウム塩(カルボキシル基のナトリウム塩)に酸化されていることに着目した。更に、本発明者は、セルロースナノファイバーのカルボン酸ナトリウム塩基のナトリウムイオン部分をナトリウム以外の金属のイオンに変更し、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバー(以下、「TOCN-M」と称することがある)とすれば、複合体の形成に用いる、単層CNTと含金属酸化セルロースナノファイバーとを含有する分散液中で単層CNTを良好に分散させ、単層CNTの含有量が少なくても優れた導電性を発揮する複合体を得ることが可能となることを新たに見出し、本発明を完成させた。
本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の分散液は、分散媒と、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーと、単層カーボンナノチューブと、を含むことを特徴とする。
このように、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを含む分散液では、単層カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。したがって、当該分散液を複合体の形成等に使用すれば、単層カーボンナノチューブ含有量が少量であっても、当該複合体に優れた導電性を発揮させることができる。
本発明の一態様において、含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径が100nm以下であることが好ましい。含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径が100nm以下であれば、単層カーボンナノチューブを更に良好に分散させることができる。また、当該分散液を用いて形成した複合体の透明性やバリア性を向上させることができる。
なお、本発明において、含金属酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維径」は、原子間力顕微鏡を使用して含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均を算出することにより求めることができる。具体的には、含金属酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維径」は、例えば本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて求めることができる。
本発明の別の態様において、前記ナトリウム以外の金属は銀(Ag)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、および銅(Cu)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記ナトリウム以外の金属がAg、K、Zn、およびCuから選択される少なくとも1種であれば、単層カーボンナノチューブを更に良好に分散させることができると共に、複合体の導電性を更に向上させることができる。
本発明の更に別の態様において、前記単層カーボンナノチューブの含有量が固形分換算で10質量%以下であることが好ましい。単層カーボンナノチューブの含有量を固形分換算で10質量%以下とすれば、コストを削減しつつ、優れた導電性を確保することができる。
本発明の更に別の態様において、前記分散媒は水とすることができる。
また、本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の分散液の製造方法は、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーと、単層カーボンナノチューブと、分散媒とを混合して粗分散液を調製する工程と、前記粗分散液を分散処理して上述した分散液を得る工程と、を含む。ここで、分散処理は超音波分散処理でナノ分散化することを含む。
上記方法によれば、本発明の分散液を容易に製造することができる。
更に、本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合体は、上述した分散液を用いて形成される。
このように、上述した分散液を用いて複合体を形成すれば、単層カーボンナノチューブを良好に分散させ、複合体の導電性を更に向上することができる。
本発明によれば、単層カーボンナノチューブの含有量を低減しつつ、高い導電性を有する複合体を作製可能な分散液およびその製造方法、並びに当該分散液を用いて形成した複合体を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ここで、本発明の分散液は、例えば本発明の製造方法により製造することができる。そして、分散液は、本発明の複合体の形成等の種々の用途に好適に用いられる。以下、分散液およびその製造方法、並びに当該分散液を用いて形成した複合体について順次説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されない。
(分散液)
本発明の分散液は、分散媒と、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーと、単層カーボンナノチューブ(CNT)と、を含み、任意にその他の添加剤を更に含有し得る。
<分散媒>
本発明の分散液に用いる分散媒は、用途に応じて任意に選択することができるが、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーと、単層CNTとを良好に分散させる観点から、メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;水;などの極性溶媒であるのが好ましく、特に水が好ましい。
<含金属酸化セルロースナノファイバー(TOCN-M)>
本発明の分散液は、含金属酸化セルロースナノファイバーを含む。含金属酸化セルロースナノファイバーとしては、セルロースを酸化して得られ、且つ、塩の形で含有する金属がナトリウム以外のものであれば、例えば、特開2016-141777号公報に開示されているもの等、任意の含金属酸化セルロースナノファイバーを使用することができ、特に、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有するカルボキシル化セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。ナトリウム以外の金属のイオンとカルボキシル基とがイオン結合してなるカルボキシル化セルロースナノファイバーを使用すれば、単層CNTを良好に分散させ、単層CNTの含有量が少量であっても高い導電性を有する複合体を作製可能な分散液を得ることができるからである。
ここで、カルボキシル化セルロースナノファイバーとしては、特に限定されることなく、セルロースの構成単位であるβ-グルコース単位の6位の1級水酸基を選択的に酸化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを挙げることができる。そして、β-グルコース単位の6位の1級水酸基を選択的に酸化する方法としては、いわゆるTEMPO触媒酸化法等のN-オキシル化合物を酸化触媒として用いた酸化法が挙げられる。TEMPO触媒酸化法では、天然セルロースを原料として用い、水系溶媒中においてTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル)またはその誘導体を酸化触媒として酸化剤を作用させることにより天然セルロースを酸化させる。そして、酸化処理後の天然セルロースを、任意に洗浄した後に水などの水系媒体に分散させることにより、平均繊維径が例えば100nm以下、好ましくは10nm以下であり、且つ、カルボン酸塩型の基を有するセルロースナノファイバー(カルボキシル化セルロースナノファイバー)の水分散液を得ることができる。なお、天然セルロースの酸化処理の際に共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合等、ナトリウムを塩の形で含有するカルボキシル化セルロースナノファイバーが得られた場合には、例えば特開2016-141777号公報に記載の方法などを用いてカルボキシル化セルロースナノファイバーのカルボン酸ナトリウム塩基のナトリウムイオン部分をナトリウム以外の金属のイオンで置換すれば、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有するカルボキシル化セルロースナノファイバーを得ることができる。
ここで、ナトリウム以外の金属としては、特に限定されることなく、長周期表における第1族~第14族かつ第3周期~第6周期の金属(但し、ナトリウムを除く)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、錫、バリウムおよび鉛よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、アルミニウム、カリウム、カルシウム、鉄、コバルト、銅、亜鉛および銀よりなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。中でも、上記ナトリウム以外の金属は銀(Ag)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、および銅(Cu)から選択される少なくとも一種であることが特に好ましい。銀(Ag)、カリウム(K)、亜鉛(Zn)、および銅(Cu)から選択される少なくとも一種を使用すれば、単層CNTを更に良好に分散させることができると共に、本発明による分散液を用いて得られる複合体の導電性を更に向上させることができるからである。
本発明の分散液中の含金属酸化セルロースナノファイバーは、数平均繊維径が100nm以下、好ましくは2nm以上10nm以下、より好ましくは2nm以上5nm以下となるレベルで高度に分散していることが好ましい。
また、分散液中の含金属酸化セルロースナノファイバーは、数平均繊維長が50nm以上2000nm以下であることが好ましく、70nm以上1500nm以下であることがより好ましく、100nm以上1000nm以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において、含金属酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維長」は、原子間力顕微鏡を使用して含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上について繊維長を測定し、測定した繊維長の個数平均を算出することにより求めることができる。具体的には、含金属酸化セルロースナノファイバーの「数平均繊維長」は、例えば本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて求めることができる。
更に、分散液中の含金属酸化セルロースナノファイバーは、平均重合度が100以上2000以下であることが好ましく、300以上1500以下であることがより好ましく、500以上1000以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において、含金属酸化セルロースナノファイバーの「平均重合度」は、粘度法を用いて求めることができる。具体的には、含金属酸化セルロースナノファイバーの「平均重合度」は、例えば本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて求めることができる。
そして、本発明の分散液中における含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度は、固形分換算で、0.005%以上が好ましく、0.01%以上がより好ましく、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が上記下限値以上であれば、分散液中の固形分濃度が薄すぎず単層CNTの分散が効率的に進行する。また、含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が上記上限値以下であれば、攪拌がスムーズで単層CNTの分散が効率的に進行する。分散液中のTOCN-Mの含有量は、分散液を遠心分離し、TOCN-Mと単層CNTを分離することによって、求めることができる。
<単層カーボンナノチューブ(CNT)>
単層カーボンナノチューブ(CNT)としては、任意の公知のものを用いることができる。特に、参照することにより本明細書に援用する日本国特許第4621896号公報、及び日本国特許第4811712号公報に記載されている、スーパーグロース法により得られる単層CNT(以下、「SGCNT」ということがある)が好ましい。
更に本発明の分散液における上記単層CNTの含有量は、固形分換算で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。ここで、分散液における単層CNTの含有量とは、分散液中の固形分に占める単層CNTの割合をいう。単層CNTの含有量は、分散液を遠心分離し、TOCN-Mと単層CNTを分離することによって、求めることができる。分散液中の単層CNTの固形分換算含有量が上記下限値以上であれば、本発明の分散液を用いて形成した複合体に優れた導電性を発揮させることができる。また、分散液中の単層CNTの固形分換算含有量を上記上限値以下とすれば、高コストの単層CNTの使用量を抑え、原料コストを低減することができる。また、単層CNTの固形分換算含有量が10質量%以下の場合には、分散液中にナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを含有させた際の複合体の導電性の向上効果が特に優れる。
さらに、本発明の分散液は、結着材(バインダー)の含有量が固形分換算で50質量%以下であることが好ましく、結着材を含まないことがより好ましい。ここでいう結着材の例としては、導電性ポリマー、カルボジイミド含有ポリマー、オキサゾリン基含有ポリマー、エポキシ基含有ポリマー等の重合体を挙げることができる。バインダーの含有量が上記上限値以下であれば、複合体の導電性を更に高めたり、強度を更に強めたりすることができる。なお、TOCN-Mを含有する分散液をキャストすると、繊維が自己組織化して規則的に並ぶため、バインダー等を使用しなくても緻密な自立フィルムを形成することができる。
<その他>
本発明の分散液には、その使用目的に応じて各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、発泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料等を挙げることができる。
また、本発明の分散液は、フィルム等の基材に塗布、乾燥して、成膜することができる。
(分散液の製造方法)
本発明に係る分散液の製造方法に格別な制限はなく、上記ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバー(TOCN-M)と、上記単層カーボンナノチューブ(CNT)と、上記分散媒とを混合して粗分散液を調製した後、粗分散液を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の装置を用いることにより、TOCN-Mと単層CNTとを分散液中でナノ分散させればよい。
ここで、粗分散液は、(1)分散媒中にTOCN-Mと単層CNTとを添加することにより調製してもよいし、(2)分散媒中にTOCN-Mを分散させてなるTOCN-M分散液中に単層CNTを添加し、任意に追加の分散媒を更に添加することにより調製してもよいし、(3)分散媒中に単層CNTを分散させてなる単層CNT分散液中にTOCN-Mを添加し、任意に追加の分散媒を更に添加することにより調製してもよいし、(4)TOCN-M分散液と単層CNT分散液とを混合し、任意に追加の分散媒を更に添加することにより調製してもよい。中でも、TOCN-Mおよび単層CNTを良好に分散させる観点からは、上記(2)~(4)の何れかの調製方法が好ましく、(4)の調製方法がより好ましい。なお、TOCN-MはpHが2以下となるとゲル化し、分散しにくくなるため、分散液の製造に際して、pHは2超に維持することが好ましい。
なお、TOCN-M分散液や単層CNT分散液は、特に限定されることなく、攪拌子を用いて分散液を直接攪拌する方法や、キャビテーション効果が得られる分散方法や、解砕効果が得られる分散方法などの既知の方法を用いて調製することができる。ここで、「キャビテーション効果が得られる分散方法」とは、液体に高エネルギーを付与した際、液体中で圧力差が生じて該液体中に生じた真空の気泡が破裂することにより生じた衝撃波を利用した分散方法である。キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理、及び高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。
粗分散液の超音波分散処理は、特に限定されることなく、既知の超音波分散処理装置を用いて行うことができる。超音波処理の際は、分散液の周りを冷却しながら行うことで、TOCN-Mや単層CNTのダメージを抑制できるので好ましい。
(複合体)
本発明の複合体は、上記分散液を用いて形成する。具体的には、本発明の複合体は、ろ過や乾燥などの方法を用いて上記分散液から分散媒を除去することにより形成することができる。中でも、フィルム状の複合体は、分散液をそのままシャーレ等の容器内で乾燥することにより、或いは、分散液の塗膜を乾燥することにより、調製することが好ましい。乾燥は、40℃、80%RHの恒温恒湿槽内で、急激に水を蒸発させず徐々に水を蒸発させることによって、皺のないフィルム状の複合体を形成できる。
そして、本発明の複合体は、少ない単層CNT含有量でも高い導電性を有するため製造コストを低減することができる。本発明の複合体は高い導電性を有するため、例えば、導電性フィルムとして好適に使用することができる。なお、本発明の複合体は、導電性に特に優れるものであるが、熱伝導性も有し得るため、熱伝導フィルムとして使用することもできる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
なお、実施例において、含金属酸化セルロースナノファイバー分散液は、例えば、特開2016-141777号公報等に開示されている方法により製造すればよい。具体的には、含金属酸化セルロースナノファイバー分散液は、例えば本明細書の各実施例に記載の方法で調製した。また、含金属酸化セルロースナノファイバーの数平均繊維径、数平均繊維長、重合度、並びに複合体の導電性および熱伝導性は以下の方法を使用して評価した。
<数平均繊維径>
含金属酸化セルロースナノファイバー分散液を希釈して含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が0.0001質量%の分散液を調製した。その後、得られた分散液をマイカ上に滴下し、乾燥させて観察試料とした。そして、原子間力顕微鏡(Dimension FastScan AFM、BRUKER社製、Tapping mode)を使用して観察試料を観察し、含金属酸化セルロースナノファイバーが確認できる画像において、含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上の繊維径を測定し、平均値を算出した。
<数平均繊維長>
含金属酸化セルロースナノファイバー分散液を希釈して含金属酸化セルロースナノファイバーの濃度が0.0001質量%の分散液を調製した。その後、得られた分散液をマイカ上に滴下し、乾燥させて観察試料とした。そして、原子間力顕微鏡(Dimension FastScan AFM、BRUKER社製、Tapping mode)を使用して観察試料を観察し、含金属酸化セルロースナノファイバーが確認できる画像において、含金属酸化セルロースナノファイバー5本以上の繊維長を測定し、平均値を算出した。
<重合度>
調製した含金属酸化セルロースナノファイバーを水素化ホウ素ナトリウムで還元し、分子中に残存しているアルデヒド基をアルコールに還元した。その後、還元処理を施した含金属酸化セルロースナノファイバーを0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させ、粘度法にて重合度を求めた。具体的には、「Isogai, A., Mutoh, N., Onabe, F., Usuda, M., "Viscosity measurements of cellulose/SO2-amine-dimethylsulfoxide solution", Sen'i Gakkaishi, 45, 299-306 (1989).」に準拠して、重合度を求めた。
なお、水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元処理は、アルデヒド基が残存していた場合に銅エチレンジアミン溶液への溶解過程でベータ脱離反応が起こって分子量が低下するのを防止するために行ったものである。
<導電性>
複合体の導電性は、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ-GX」)で測定した。
<熱伝導性>
複合体の熱伝導性は、熱拡散測定装置(ハドソン研究所製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)で測定した。
(実施例1)
まず、銅イオンで金属イオン交換した含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu))水分散液を以下の方法により調製した。
(i)50gのカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液1を撹拌し、そこへ第2の金属の塩の水溶液として濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。
(ii)その後、酢酸銅(II)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収し、回収したカルボキシル化セルロースナノファイバーを濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液および多量の蒸留水で順次洗浄した(洗浄工程)。
(iii)次に、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行い、金属置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.14%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu))水分散液を得た(分散工程)。
次に、サンプル管瓶(ラボランNo.7)に単層カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、SGCNT)0.00016gを入れ、そこへ、上記方法により調製したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)10.613gを入れ、さらに蒸留水4.409gを入れて粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間、合計1時間の超音波処理を行ってTOCN-CuとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させた。そのTOCN-Cu/SGCNTナノ分散液をプラスチックシャーレ(IWAKI社製、商品名「無処理ディッシュ1010-060」)に流し込み、40℃のオーブンで5日間乾燥した後、乾燥物をシャーレから取り出し、厚み5μmのTOCN-CuとSGCNTとの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=1.07/98.93)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00073gとし、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を10.179gとし、蒸留水を4.820gとした以外は実施例1と同様にして、厚み2μmのTOCN-CuとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=4.87/95.13)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.0018gとし、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を9.640gとし、蒸留水を5.369gとした以外は実施例1と同様にして、厚み2μmのTOCN-CuとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=11.77/88.23)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.0026gとし、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を8.9330gとし、蒸留水を6.0653gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間超音波処理を行った。その後更に同じ操作(冷水交換と30分間の超音波処理)を2回繰り返し、合計2時間の超音波処理を行ってTOCN-CuとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させた後は実施例1と同様にして、厚み3μmのTOCN-CuとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=17.21/82.79)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.0050gとし、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を7.1772gとし、蒸留水を7.9000gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間超音波処理を行った。その後更に同じ操作(冷水交換と30分間の超音波処理)を6回繰り返し、合計4時間の超音波処理を行ってTOCN-CuとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させた後は実施例1と同様にして、厚み4μmのTOCN-CuとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=33.23/66.77)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.0075gとし、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を5.4118gとし、蒸留水を5.81498gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間超音波処理を行った。その後更に同じ操作(冷水交換と30分間の超音波処理)を11回繰り返し、合計6.5時間の超音波処理を行ってTOCN-CuとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させた後は実施例1と同様にして、厚み8μmのTOCN-CuとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Cu=49.75/50.25)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00035gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液として、銅イオンに代えてカリウムイオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-K)水分散液(固形分濃度0.05466質量%)10.4432gを用いた以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。カリウムイオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-K)水分散液(固形分濃度0.05466質量%)の調製は、以下の方法により行った。
(1)水素置換した酸化セルロースナノファイバー分散液の調製:
(i)100mLのカルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液1に対し、攪拌下で1Mの塩酸1mLを加えてpHを1に調整した。そして、60分間攪拌を継続した(水素置換工程)。
(ii)その後、塩酸の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収し、回収したカルボキシル化セルロースナノファイバーを1Mの塩酸および多量の蒸留水で順次洗浄した(第一の洗浄工程)。
(iii)次に、100mLの蒸留水を加え、水素置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーが分散した濃度0.1%の水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液1を得た(第一の分散工程)。なお、水素置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーの表面のカルボキシル基は、Biomacromolecules (2011年,第12巻,第518-522ページ)に従いFT-IR(日本分光製、FT/IR-6100)で測定したところ、90%以上がカルボン酸型に置換されていた。
(2)含金属酸化セルロースナノファイバー分散液の調製:
(i)50gの水素置換カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液1(濃度0.1%)を撹拌し、そこへ第2の金属の塩の水溶液として濃度0.1%の酢酸カリウム(I)水溶液12gを加え、室温で3時間撹拌を継続した(金属置換工程)。
(ii)その後、酢酸カリウム(I)水溶液の添加によりゲル化したカルボキシル化セルロースナノファイバーを遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により回収し、回収したカルボキシル化セルロースナノファイバーを濃度0.1%の酢酸カリウム(I)水溶液および多量の蒸留水で順次洗浄した(第二の洗浄工程)。
(iii)次に、50mLの蒸留水を加え、超音波ホモジナイザー(nissei製、Ultrasonic Generator)を使用し、容器の周りを氷で冷やしながら、V-LEVEL4、TIP26Dで超音波処理(2分間)を行い、金属置換されたカルボキシル化セルロースナノファイバーを分散させた。その後、遠心分離機(SAKUMA製、M201-1VD、アングルローター50F-8AL)を使用して遠心分離(12000G(120×100rpm/g)、10分間、12℃)により未解繊成分を取り除き、透明な液体である濃度0.05466%の含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー水分散液を得た(第二の分散工程)。
そして、粗分散液を実施例1と同様に処理して、厚み1μmのTOCN-KとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-K=5.78/94.22)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00047gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液として、銅イオンに代えて亜鉛イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Zn)水分散液(固形分濃度0.04805質量%)17.7890gを用いた以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。亜鉛イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Zn)水分散液(固形分濃度0.04805質量%)の調製は、実施例1における銅イオンで金属イオン交換した含金属カルボキシル化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu))水分散液(固形分濃度0.14質量%)の調製方法において、第2の金属の塩の水溶液として、濃度0.1%の酢酸銅(II)水溶液18gに代えて、濃度0.1%の酢酸亜鉛(II)水溶液12g
を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。
そして、粗分散液を実施例1と同様に処理し、厚み1μmのTOCN-ZnとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Zn=5.21/94.79)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00086gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液として、銅イオンに代えて銀イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Ag)水分散液(固形分濃度0.02質量%)31.97794gを用いた以外は実施例1と同様にして、粗分散液を調製した。銀イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Ag)水分散液(固形分濃度0.02質量%)の調製は、実施例7におけるカリウムイオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-K)水分散液(固形分濃度0.05466質量%)の調製において、第2の金属の塩の水溶液として、濃度0.1%の酢酸カリウム12gに代えて、濃度0.1%の酢酸銀12gを用いた以外は、実施例7と同様にして行った。
そして、粗分散液を実施例1と同様に処理してTOCN-AgとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させ、そのTOCN-Ag/SGCNTナノ分散液31.76gを200mlのビーカーに移し、そこへTOCN-Ag水分散液(固形分濃度0.02質量%)を75.97g加え、攪拌子を入れ30分間攪拌して分散液を得た。その分散液を実施例1と同様に処理して、厚み1μmのTOCN-AgとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Ag=3.81/96.19)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1における単層カーボンナノチューブに代えて、多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製、製品名「NC7000」)0.00110gを用い、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を15.27457gとし、蒸留水を7.25330gとした以外は実施例1と同様にして、厚み9μmのTOCN-CuとNC7000の複合体(キャストフィルム、NC7000/TOCN-Cu=4.89/95.11)を得た。この複合体は、強度がなく割けやすかった。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1における単層カーボンナノチューブに代えて、多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製、製品名「NC7000」)0.00234gを用い、銅イオンで金属イオン交換したTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Cu)水分散液(固形分濃度0.14質量%)を14.48991gとし、蒸留水を8.03918gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間超音波処理を行った。その後更に同じ操作を2回繰り返し、合計2時間の超音波処理を行ってTOCN-CuとNC7000を分散液中で完全にナノ分散させた後は実施例1と同様にして、厚み8μmのTOCN-CuとNC7000の複合体(キャストフィルム、NC7000/TOCN-Cu=10.34/89.66)を得た。この複合体には強度がなく、割けやすかった。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00097gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液としてセルロースの構成単位であるβ-グルコース単位の6位の1級水酸基がカルボン酸ナトリウム塩(カルボキシル基のナトリウム塩)に酸化されているTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Na)水分散液(固形分濃度2.2質量%)0.89560gを用い、蒸留水を18.67029gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液を実施例1と同様に処理して、厚み6μmのTOCN-NaとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Na=4.69/95.31)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.00240gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液として、セルロースの構成単位であるβ-グルコース単位の6位の1級水酸基がカルボン酸ナトリウム塩(カルボキシル基のナトリウム塩)に酸化されているTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Na)水分散液(固形分濃度2.2質量%)0.93991gを用い、蒸留水を21.58504gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液を実施例1と同様に処理して、厚み7μmのTOCN-NaとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Na=10.40/89.60)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1において、単層カーボンナノチューブを0.0053gとし、TEMPO酸化セルロースナノファイバー水分散液として、セルロースの構成単位であるβ-グルコース単位の6位の1級水酸基がカルボン酸ナトリウム塩(カルボキシル基のナトリウム塩)に酸化されているTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN-Na)水分散液(固形分濃度2.1質量%)を0.4695g用い、蒸留水を14.5159gとした以外は実施例1と同様にして粗分散液を調製した。その粗分散液について、冷水を入れた卓上型超音波洗浄器(BRNSONIC社製、B5510J-MT型)にて超音波処理を30分間行い、30分後温まった水を冷水に交換し、更に30分間超音波処理を行った。その後更に同じ操作(冷水交換と30分間の超音波処理を)を2回繰り返し、合計2時間の超音波処理を行ってTOCN-NaとSGCNTを分散液中で完全にナノ分散させた後は実施例1と同様にして、厚み5μmのTOCN-NaとSGCNTの複合体(キャストフィルム、SGCNT/TOCN-Na=34.96/65.04)を得た。その複合体の導電性および熱伝導性を上記方法により測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007427900000001
まず、CNTの種類に着目し、TOCN-Cuの比率が同程度の実施例2と比較例1、および実施例3と比較例2を比較すると、単層CNTを用いた実施例2、3はいずれも多層CNTを用いた比較例1、2と比べて、導電性が上昇し抵抗率が低下しており、単層CNTを用いることで、当該分散液を用いて形成した複合体に優れた導電性を発揮させることが可能であることがわかる。さらに、TOCN-Mと単層CNTとの比率に着目し、比率が同程度となる実施例2、7、8、9と比較例3、実施例3と比較例4、実施例5と比較例5とをそれぞれ比較すると、いずれの実施例においても、対応する比較例と比べて、導電率が上昇し、抵抗率が低下しており、分散液の製造にあたり、ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーを用いることで、単層CNTの含有量を低減しつつ、当該分散液を用いて形成した複合体に優れた導電性を発揮させることが可能であることがわかる。
特に、実施例2、7、8、9を詳細に比較すると、特に実施例2、実施例7において導電率が上昇し抵抗率が低下しており、ナトリウム以外の金属としては、銅(Cu)のほかカリウム(K)を塩の形で含有する含金属酸化セルロースナノファイバーが特に好ましいことがわかる。
本発明によれば、単層CNT含有量を低減しつつ導電性を向上させた複合体を提供することが可能な分散液およびその製造方法、並びにCNTの含有量が少量であっても優れた導電性を発揮し得る複合体を提供することができる。

Claims (6)

  1. 分散媒と、
    ナトリウム以外の金属を塩の形で含有する含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーと、
    単層カーボンナノチューブと、
    を含む、分散液であって、
    前記ナトリウム以外の金属はAg、Zn、およびCuから選択される少なくとも一種である、分散液
  2. 前記含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーの数平均繊維径が100nm以下である、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記分散液中の固形分に占める前記単層カーボンナノチューブの割合が10質量%以下である、請求項1または2に記載の分散液。
  4. 前記分散媒は水である、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
  5. Ag、Zn、およびCuから選択される少なくとも一種の金属を塩の形で含有する含金属カルボキシル化セルロースナノファイバーと、単層カーボンナノチューブと、分散媒とを混合して粗分散液を調製する工程と、
    前記粗分散液を分散処理して請求項1~のいずれか一項に記載の分散液を得る工程と、
    を含む、分散液の製造方法。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載の分散液を用いて形成した、複合体。
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