JP2013256430A - 炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体とその分散液、炭素材料・セルロース複合体およびその成形体 - Google Patents

炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体とその分散液、炭素材料・セルロース複合体およびその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】カーボンナノチューブ等の炭素材料を簡単な操作かつ安価で分散させることができ、炭素材料を含有する水に不溶性の膜等の成形体の製造原料としても用いることができる、炭素材料の分散液およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による炭素材料分散液は、炭素材料と、セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを含有することを特徴とする。このような分散液は、炭素材料と、セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを混合し、当該炭素材料を当該水溶液中に分散させることにより製造することができる。また、このような炭素材料分散液から、酸を用いた処理などにより、セルロースと複合体化している四級オニウムを除去し、セルロース・炭素材料複合体を析出させることにより、当該複合体を含有する水に不溶性の膜等の成形体を製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は炭素材料の分散液および成形体に関する。より詳しくは、本発明は、炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体とを用いて調製される、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体およびそれを含有する分散液、ならびに当該分散液から得られる炭素材料・セルロース複合体およびそれを含有する成形体などに関する。
カーボンナノチューブなどの炭素材料は、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を持つことから、多くの分野から注目を集めている新素材である。かかる炭素材料に関し、単独での利用のみならず、これを他の材料に分散させた複合材料として利用することについても種々の検討が行われている。例えば、導電性塗料や放熱性塗料といった機能性塗料にも使用できる。また、導電性樹脂や放熱性樹脂などに用いれば、高強度かつ付加機能(導電性、放熱性)を持ち合わせた材料が考えられる。
一般的に、カーボンナノチューブなどの炭素材料は、凝集を生じやすい性質を備えているため、多数の炭素材料が凝集した状態で製造・販売されている。かかる凝集状態にある炭素材料は一時的に分散媒中に分散をさせてもすぐに再凝集する性質があるので、分散媒への安定的な分散が困難である。この分散の安定性をより簡単な方法で向上させることができれば、カーボンナノチューブなどの炭素材料を利用して上記のような複合材料を開発または製造する上で有効である。
そのため、代表的な炭素材料であるカーボンナノチューブについて、次に挙げるような分散方法(分散液の製造方法)が提案されている。
特開2011−213500号公報(特許文献1)には、カーボンナノチューブと分散剤とを分散媒中にて撹拌することで混合液を得る撹拌工程と、前記混合液に超音波を照射する超音波照射工程とを含み、前記撹拌工程は、減圧下で実施されることを特徴とするカーボンナノチューブ分散液の製造方法が開示されている。上記分散剤としては、界面活性剤や、セルロース系高分子などの水溶性高分子が例示されている。
特開2011−207632号公報(特許文献2)には、分散媒と分散剤、該分散媒に分散したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液を得る方法であって、周波数の異なる二種類以上の超音波を照射した後、遠心分離機を用いてカーボンナノチューブを分離することを特徴とするカーボンナノチューブ分散液の製造方法が開示されている。上記分散剤としては、水溶性樹脂や、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類が例示されている。
特開2010−254546号公報(特許文献3)には、平均外径が3nm以下であるカーボンナノチューブと分散剤を含んだ分散体であって、動的光散乱法によって測定した平均粒径が200nm以上1500nm以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ水性分散液が開示されている。上記分散剤としては、イオン性官能基を有する多糖類であるカルボキシメチルセルロースおよびその誘導体が例示されている。また、上記カーボンナノチューブ水性分散液の製造方法として、カーボンナノチューブ、分散剤および分散媒を混合して分散液とする際に、カーボンナノチューブ分散液の製造に必要な量の分散媒および分散剤の混合液の粘度をη0、超音波分散開始x分後のカーボンナノチューブ分散液の粘度をηx、分散開始後の最初の粘度の極大値をη1とし、分散液の粘度減少率Aを、A(%)=(η1−ηx)/(η1−η0)×100と定義したとき、Aが10%以上、70%以下となるまで超音波分散を行う方法が開示されている。
特開2009−242145号公報(特許文献4)には、アニオン性の官能基を有する非共役系ポリマー分散剤などと、酸とを含有するカーボンナノチューブ分散液を調製する工程、およびそのカーボンナノチューブ分散液を用いてカーボンナノチューブ膜を製造する工程を含む、カーボンナノチューブ膜の製造方法が開示されている。上記アニオン性の官能基を有する非共役系ポリマー分散剤としては、セルロースが化学修飾によってアニオン性官能基で修飾されたもの(カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)が例示されている。また、上記分散液の調製方法は、簡便性の点で分散剤、分散媒、酸およびカーボンナノチューブの混合物を超音波分散によって分散させる方法が好ましいとされている。
特開2007―320828号公報(特許文献5)には、単層カーボンナノチューブが凝集した集合体を含むカーボンナノチューブのバルク体と単層カーボンナノチューブを溶媒に可溶化させる可溶化剤とを溶媒中で混合した溶液を作成し、可溶化剤により可溶化して前記集合体から分離した単層カーボンナノチューブを溶液内で分散させ、単層カーボンナノチューブを分散させた溶液をフィルタで濾過して、単層カーボンナノチューブを含み近赤外蛍光を発するカーボンナノチューブ溶液を作成することを特徴とするカーボンナノチューブ含有物質の作成方法が開示されている。上記可溶化剤としては、カルボキシメチルセルロースが例示されている。
また、特開2011−42168号公報(特許文献6)には、少なくともリグニンおよびセルロース(ポリマー巨大分子)と、カーボンナノチューブとを含有する複合材や、a.リグニンおよびさらなる成分をイオン液体に溶解して溶液を得る工程;b.溶液を表面に適用してヒドロゲルを得る工程;ならびにc.ヒドロゲルを乾燥させて複合体を得る工程を含む、前記複合材の製造方法が開示されている。
なお、Chem.Commun.,2012,48,1808-1810(非特許文献1)には、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(TBPH)やテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)などのオニウムヒドロキシドの水溶液がセルロースを溶解することができることが記載されている。ただし、この文献には、上記方法により得られるセルロースの水溶液に炭素材料を分散させることについては記載されていない。
特開2011−213500号公報 特開2011−207632号公報 特開2010−254546号公報 特開2009−242145号公報 特開2007―320828号公報 特開2001−42168号公報
Chem.Commun.,2012,48,1808-1810
特許文献1〜5に記載の方法はいずれも、カーボンナノチューブを分散させるために超音波処理を行うことを前提としており、その超音波処理に関連して特定の要件を加えることにより、カーボンナノチューブの分散性を高めるなどの作用効果をもたらそうとしている。しかしながら、上記いずれの文献にも、超音波処理を行うことなくカーボンナノチューブを分散させることが可能になる技術的特徴は記載も示唆もされていない。また、特許文献6に記載の方法は、高価なイオン液体を必要とする。
本発明は、カーボンナノチューブ等の炭素材料を簡単な操作かつ安価で分散させることのでき、膜等の成形体の原料として使用することのできる、炭素材料の分散液およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロースと特定の四級オニウム化合物(水酸化四級アンモニウムまたは水酸化四級ホスホニウム)水溶液とを接触させることにより得られるセルロース・四級オニウム複合体水溶液に、カーボンナノチューブ等の炭素材料を添加して攪拌することにより、超音波処理を行うことなく、炭素材料を当該水溶液中に分散させることが可能であることを見出した。このようにして得られる分散液中では、炭素材料、セルロースおよび四級オニウムからなる水溶性の複合体が形成されているものと推測される。
また、上記のようにして調製された炭素材料の分散液を用いて膜などの成形体を製造する際に、酸で処理する工程を加えることにより、水に不溶性の成形体を得ることができることを見出した。この際の酸処理では、上記四級オニウムが離脱し、炭素材料およびセルロースからなる水に不溶性の複合体が形成されるものと推測される。
これらの知見などに基づき完成された本発明は、下記の事項を包含する。
[1]下記成分(1)および(2)を含有することを特徴とする炭素材料分散液:
(1)炭素材料
(2)セルロースと、水酸化四級アンモニウムおよび水酸化四級ホスホニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の四級オニウム化合物との複合体(セルロース・四級オニウム複合体)の水溶液。
[2]前記セルロース・四級オニウム複合体の水溶液中のセルロースの濃度が0.8重量%以上である、[1]に記載の分散液。
[3]前記炭素材料の濃度が12重量%以下である、[1]または[2]に記載の分散液。
[4]炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体とから形成されていることを特徴とする、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体。
[5]前記炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体との重量比が1:1000〜3:10の範囲である、[4]に記載の複合体。
[6]炭素材料とセルロースとから形成されていることを特徴とする、炭素材料・セルロース複合体。
[7]前記炭素材料とセルロースとの重量比が1:1000〜3:2の範囲である、[6]に記載の複合体。
[8][4]〜[7]のいずれかに記載の複合体を含有する成形体。
[9]粒子、繊維、フィルムまたは膜の形態をとる、[8]に記載の成形体。
[10]前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[9]のいずれかに記載の分散液、複合体または成形体。
[11]炭素材料と、セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを混合し、当該炭素材料を当該水溶液中に分散させる工程を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の炭素材料分散液の製造方法。
[12][1]〜[3]のいずれかに記載の炭素材料分散液から、乾燥により分散媒を除去する工程を含むことを特徴とする、[4]または[5]に記載の炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体の製造方法。
[13][1]〜[3]のいずれかに記載の炭素材料分散液と、セルロース・四級オニウム複合体の貧溶媒とを混合し、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする、[4]または[5]に記載の炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体の製造方法。
[14][1]〜[3]のいずれかに記載の炭素材料分散液から、セルロースと複合体化している四級オニウムを除去することにより、セルロース・炭素材料複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする、[6]または[7]に記載の炭素材料・セルロース複合体を含有する成形体の製造方法。
[15]前記セルロース・炭素材料複合体を析出させる工程が、前記炭素材料分散液と酸とを混合することにより、前記四級オニウムを溶出させる処理を含むものである、[14]に記載の成形体の製造方法。
[16]前記成形体が粒子、繊維、フィルムまたは膜の形態をとる、請求項[12]〜[15]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
[17]前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[11]〜[16]のいずれかに記載の製造方法。
本発明では、セルロース・四級オニウム複合体水溶液を用いることにより、基本的に攪拌工程のみによって、またカーボンナノチューブ等の炭素材料を修飾することなく(表面や末端に特定の官能基を導入することなく)、簡便かつ安価に炭素材料の分散液を製造することができる。
また、このような分散液からは、他のバインダー樹脂と混合しなくても、カーボンナノチューブ等の炭素材料を含有する様々な成形体を製造することができ、しかも酸処理によって水に不溶性の成形体とすることができる。炭素材料の特性(たとえば導電性)を備えつつ、柔軟性を有し、生体親和性が高いと考えられる天然由来の素材を用いた成形体は、高い実用性を有するものと期待される。
実施例1における、10wt%のセルロースが溶解したTBAH(40% solution)溶液にMWCNTを5wt%加えた場合(a)と、対照のためTBAH(40% solution)にMWCNTを5wt%加えた場合(b)それぞれについての、PETフィルムに塗工した様子(左)と光学顕微鏡で観察した様子(右)の写真。 実施例3で得られた、MWCNT-cellulose複合体を含有する複合フィルム(a)、およびMWCNTは含有せずcelluloseのみを含有する複合フィルム(b)の写真。(b)のフィルムは高い透明性を有しており、完全にセルロースがTBAH水溶液に溶解していたことが分かる。 実施例4で得られたMWCNT-cellulose複合体を含有する繊維の写真。 実施例5で得られたMWCNT-cellulose複合体を含有する粒子の繊維の写真。
−炭素材料分散液−
本発明の炭素材料分散液は、(1)炭素材料と、(2)セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを含有する。
本発明の炭素材料分散液の製造に用いられるセルロース・四級オニウム複合体水溶液は、炭素材料の分散性が十分なものとなるよう、所定の濃度以上のセルロースが溶解していることが適切である。適切な濃度の範囲は適宜調整することが可能であるが、セルロース・四級オニウム複合体水溶液中のセルロースの濃度は0.8重量%以上が好ましい。セルロースの濃度が所定の値より低いと、炭素材料の量を相対的に減らしたとしても、炭素材料がセルロース・四級オニウム複合体水溶液中に十分に分散しない場合がある。セルロースの濃度の上限値は特に限定されるものではないが、攪拌のしやすさ(セルロースの濃度が高いと当該水溶液の粘度も高くなる傾向にある)、炭素材料の分散性や、分散液から製造される成形体の物性などを考慮して適切に設定することが可能である。
なお、上述したセルロース・四級オニウム複合体水溶液が、セルロース、水酸化四級オニウムおよび水以外の成分をさらに含有する場合は、上記セルロースの濃度は、セルロース、水酸化四級オニウムおよび水の合計量を基準とする濃度に読み替えられる。
本発明の炭素材料分散液中の炭素材料の濃度は、本発明の炭素材料分散液の製造方法によって製造できる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、12重量%以下の割合である。すなわち、セルロース・四級オニウム複合体水溶液と、当該セルロース・四級オニウム複合体水溶液と炭素材料の合計量に対して12重量%以下の炭素材料とを混合すれば、良好な分散性を有する炭素材料分散液が得られる。炭素材料の濃度の下限値は、分散性の面からは特に設定されるべきものではないが、炭素材料分散液の用途を考慮して、たとえば所望の物性を有する成形体が製造できるよう、適切に設定することが可能である。たとえば、炭素材料分散液から透明導電性フィルムを製造する場合、一般的に、炭素材料の濃度が高いほど、導電性は高くなる一方透明性は低くなり、逆に炭素材料の濃度が低いほど、導電性は低くなる一方透明性は高くなるので、両者のバランスが所望のものとなるよう炭素材料の濃度を調整することができる。
なお、本発明の炭素材料分散液が、炭素材料およびセルロース・四級オニウム複合体水溶液以外の成分をさらに含有する場合は、上記炭素材料の濃度は、そのような炭素材料分散液中の、セルロース・四級オニウム複合体水溶液と炭素材料の合計量を基準とする濃度に読み替えられる。
本発明の炭素材料分散液中には、炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体とから形成される、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体が形成されていると推定される。すなわち、炭素材料と(すでにセルロース・四級オニウム複合体水溶液中に存在している)セルロース・四級オニウム複合体との間に何らかの相互作用が働くことにより、これらが複合体化しているものと考えられる。
炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を形成する炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体との重量比は、炭素材料の分散性が良好であれば特に限定されるものではないが、たとえば、1:1000〜3:10の範囲とすることができる。セルロース・四級オニウム複合体水溶液の濃度を考慮しながら、炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体と、上記の重量比の条件を満たすような量で混合することにより、良好な分散性を有する炭素材料分散液が得られる。なお、上記重量比の下限値は、分散性の面からは1:1000に限定されるべきものではないが(炭素材料がこれより少ない場合も良好な分散性は当然達成できる)、炭素材料分散液の用途を考慮して、たとえば所望の物性を有する成形体が製造できるよう、適切に設定することが可能である。
(炭素材料)
本発明における炭素材料としては、公知の炭素材料分散液と同様に、カーボンナノチューブ(カーボンナノホーンを含む)、グラフェン(グラファイトを含む)、フラーレン、カーボンブラックなどの炭素材料を用いることができる。
たとえば、カーボンナノチューブ(CNT)は、六角網目状のグラファイトシート(グラフェン)が円筒状をなした構造を有する物質であるが、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)であってもよいし、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であってもよい。また、フラーレンを内包したカーボンナノチューブであってもよい。
カーボンナノチューブのサイズは特に限定されるものではないが、たとえば、直径は通常1nm〜500nmの範囲であり、直径に対する長さの比(アスペクト比)は通常10〜10000の範囲であり、長さは通常0.1μm〜100μmの範囲である。カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法などにより製造されるカーボンナノチューブを用いることができる。
(セルロース・四級オニウム複合体水溶液)
本発明で用いるセルロース・四級オニウム複合体水溶液は、セルロース原料(セルロース精製物またはセルロースを含有する物質)と水酸化四級オニウム水溶液とを接触させることにより得られる、セルロースが水に可溶な状態で含まれている水溶液である。この水溶液中には、セルロースのいずれかの水酸基と、水酸化四級オニウムとが何らかの反応または相互作用により結合している(一つの推測として、セルロースの水酸基と水酸化四級オニウムの水酸化物イオンとの間に水素結合が生じている可能性がある)物質が溶解しており、この物質を本発明では「セルロース・四級オニウム複合体」と称している。
・セルロース原料
セルロース・四級オニウム複合体水溶液の製造で用いる「セルロース原料」は、セルロース精製物、すなわちセルロース粉末などとして一般的な製品やそれと同程度の純度を有するセルロースであってもよいし、その他のセルロースを含有する物質、すなわち植物原料(パルプ)から得られる紙製品等の加工品などであってもよいし、作物、植物廃棄物、その他の植物性の物質などであってもよい。なお、木質は通常、セルロース以外にも比較的多量のヘミセルロース、リグニン等を含有するが、本発明を適用することが可能である。セルロース原料は、必要に応じて適切なサイズに微細化、粉末化しておいてもよく、たとえば、製材の際に副製するおがくず、木質チップ等の形態でも利用できる。
・水酸化四級オニウム
本発明における四級オニウム化合物(水酸化四級オニウム)には、水酸化四級アンモニウムおよび水酸化四級ホスホニウムが包含される。これらは、どちらか一方を用いてもよいし、必要に応じて両方を併用してもよい。
セルロース・四級オニウム複合体水溶液の製造で用いる水酸化四級オニウム水溶液の濃度は、セルロースの溶解反応が進行する所定の範囲とすることが適切である。水酸化四級オニウム水溶液の濃度が所定の値より低いと(当該水溶液中の水の量が所定の値より多いと)、セルロースが溶解せずセルロース・四級オニウム複合体水溶液が得られない場合や、セルロースの溶解に長時間を必要とする場合がある。一方、水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度が高すぎると、粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。水酸化四級オニウム水溶液の適切な濃度は、たとえば、水酸化四級アンモニウムについては一般的に35〜70重量%、水酸化四級ホスホニウムについては一般的に40〜90重量%であるが、用いる水酸化四級オニウムの種類によって変化する場合もあるので、適切な範囲は必要に応じて適宜調整することができる。
なお、水酸化四級オニウム水溶液は製品(たとえば前記濃度が40重量%の製品)として入手することが可能である。必要に応じて、濃度を低めるために水で希釈したり、濃度を高めるために水を揮発させたりして、濃度を調整した上で前記製品を用いてもよい。
セルロース原料と水酸化四級オニウム水溶液とを接触させる際は、セルロース原料中のセルロースを構成するグルコピラノース単位の物質量に対する、水酸化四級オニウム水溶液中の水酸化四級オニウムの物質量の割合を、セルロースが十分に水に溶解するよう所定の値以上とする必要がある。水酸化四級オニウムの量が不足すると、セルロースが十分に溶解しないおそれがある。
なお、上記割合の下限値は用いる水酸化四級オニウム水溶液の濃度によって変動する可能性がある。たとえば、水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度が55重量%である場合は、上記のように下限値を1.5とすることができる。ところが、水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度が40重量%である場合は、上記割合が1.5ではセルロースの溶解性が悪く、下限値を2程度に引き上げることが適切である。セルロース原料の量および水酸化四級オニウム水溶液の濃度を勘案しながら、水酸化四級オニウムの量が不足してセルロースの溶解性に悪影響を与えることのないよう、水酸化四級オニウム水溶液の添加量を調整することが適切である。
一方、上記割合の上限値は特に設定する必要はなく、通常は水酸化四級オニウムが過剰であってもセルロースの溶解性に悪影響はないと考えられるが、コストやその他の条件を勘案して水酸化四級オニウムの濃度は適度な範囲に留めておくことが適切である。
本発明で用いる水酸化四級オニウムは、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基および/または置換もしくは非置換のアリール基を4つの置換基として有するものである。つまり、上記水酸化四級オニウムの4つの置換基は、それぞれ独立に、置換アルキル基、非置換アルキル基、置換アリール基または非置換アリール基であり得る。
また、上記水酸化四級オニウムの4つの置換基は、公知の水酸化四級オニウムが有する置換基の中から選択することが可能であるが、たとえば炭素原子数の合計が4〜60、好ましくは4〜24となるような置換基の組み合わせとすることが好ましい。
このような炭素原子数に係る条件を満たす水酸化四級オニウムのうち、水酸化四級アンモニウムの具体例としては、実施例で用いられているテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH、炭素原子数16)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH、炭素原子数4)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH、炭素原子数10)のほか、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド(炭素原子数24)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(炭素原子数8)、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(炭素原子数13)、トリメチルペンチルアンモニウムヒドロキシド(炭素原子数8)、トリブチルエチルアンモニウムヒドロキシド(炭素原子数14)が挙げられる。また、水酸化四級ホスホニウムの具体例としては、実施例で用いられているテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(TBPH、炭素原子数16)のほか、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数4)、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数10)、テトラヘキシルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数24)、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数8)、トリエチルベンジルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数13)、トリメチルペンチルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数8)、トリブチルエチルホスホニウムヒドロキシド(炭素原子数14)が挙げられる。
本発明で用いるセルロース・四級オニウム複合体水溶液の製造方法は、特に水酸化四級オニウムとして水酸化四級アンモニウムを用いる場合は、セルロース原料と接触した状態における、水酸化四級オニウム水溶液中に溶解しているアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物(本発明において「無機塩不純物」と称する場合もある。)の合計の濃度が、セルロースの溶解反応を阻害しない所定の値以下で行う必要がある。たとえば、水酸化四級アンモニウムを用いる場合は、前記無機塩不純物の濃度が1重量%以下で行うことが好ましい。水酸化四級オニウム水溶液中に溶解している無機塩不純物の濃度が所定の値より高いと、セルロースの溶解反応が阻害され、セルロース水溶液が得られないおそれがある。無機塩不純物は実質的に全く含まれないことが理想的である、つまり濃度は極力低い方がよいと考えられるため、無機塩不純物の濃度の下限値は設けなくてもよい(0としてもよい)が、必要であれば他の条件を考慮しながら設定してもよい。
なお、用いる水酸化四級オニウムの種類および濃度(ただし前述のようなセルロースを溶解させることができる濃度の下限値以上の範囲)を変化させても、また無機塩不純物の種類を変化させても、上記のような無機塩不純物の望ましい濃度には同じ傾向が見られるが、必要であれば、上記の変化に応じて濃度を調整してもよい。
無機塩不純物としては、たとえばKBr、LiBr、NaBrが挙げられるが、これらに限定されるものではない。複数種の無機塩不純物が混在する場合は、各無機塩不純物の濃度の合計により、上記の濃度の条件を考えるようにする。
なお、たとえば40%TBAH水溶液に対して5重量%添加する場合、NaClおよびKClは水に溶解するがTBAH水溶液とは分離し(2層になる)、LiCl、KI、CaCl2、MgCl2は沈殿が生じるため、これらの化合物は水酸化四級オニウム(アンモニウム)水溶液中に溶解する無機塩不純物とはなりにくい。
無機塩不純物について上記の条件を満たす水酸化四級オニウムは、特定の製品として入手することができる。たとえば、アルドリッチ社製の水酸化四級アンモニウム(TBAH等)水溶液には無機塩不純物(KBr等)が実質的に混在しておらず、上記の要件を満たす製品として好適である。また、上記の条件を満たさない水酸化四級オニウム水溶液(製品)について、所定の精製工程(膜精製、再結晶、抽出等)を施して無機塩不純物を除去し、上記の条件を満たすようにしたのちに用いることも可能である。
水酸化四級オニウム水溶液中に溶解している無機塩不純物は、主として水酸化四級オニウム水溶液に含まれているもの(たとえば製品の製造工程で混入したもの)が想定されるが、セルロース原料に含まれているもの(たとえばセルロース原料に元から含まれていたものや、必要により行われる前処理で混入したもの)であることも想定されうる。
・接触工程
セルロース原料と水酸化四級オニウム水溶液とを接触させる(すなわちセルロースと水酸化四級オニウムとを反応させる)工程は、これらを反応容器内で撹拌しながら混合することにより行うことができる。反応時間は、用いるセルロース原料および水酸化四級オニウム水溶液の態様に応じて、セルロースが溶解するのに十分な時間をかければよいが、一般的には1時間〜6時間程度である。反応温度は、通常は室温とすることができるが、必要であれば適切な速度で反応が進行するよう加熱または冷却をしてもよい。
(分散液の製造方法)
本発明の炭素材料分散液は、炭素材料と、セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを混合し、当該炭素材料を当該水溶液中に分散させる工程(混合・分散工程)を含む製造方法により製造することができる。このような混合・分散工程により、超音波処理を用いることなく、十分な分散性を達成することが可能である。
・混合・分散工程
炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体水溶液との混合は、一般的な攪拌装置を用いた攪拌処理に従って行えばよい。撹拌装置としては、特に限定されず、プロペラ式の撹拌羽根を有する撹拌装置の他に、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ニーダー等が挙げられる。攪拌条件(たとえばプロペラ式の撹拌装置の回転数や攪拌時間)は適宜調整することが可能である。
なお、本発明の分散液の製造方法における混合・分散工程は、基本的に超音波処理を含まないが、所望により上記攪拌処理に加えて超音波処理を含むことも排除されるものではない。また、本発明の分散液の製造方法は、必要に応じて、分散性をさらに向上させることなどを目的とした任意の工程をさらに含むことも可能である。
・任意工程
本発明の炭素材料分散液の製造方法は、必要に応じて、上述した混合・分散工程以外の工程を含んでいてもよい。
たとえば、混合・分散工程により得られた分散液を、遠心分離、フィルターろ過、ゲルろ過などによって分画することにより、炭素材料の分散性が向上した分散液を調製することが可能である。分散液を遠心分離することにより、未分散の炭素材料、過剰量の分散剤(セルロース・四級オニウム複合体水溶液)、カーボンナノチューブ等の炭素材料の合成時に混入する可能性のある金属触媒などは沈殿するので、遠心上清を炭素材料の分散性が向上した分散液として回収することができる。フィルターろ過やゲルろ過によっても同様に、未分散の炭素材料や不純物を除去することができる。このような分画工程の諸条件、たとえば遠心分離の回転数および時間、ろ過に用いるフィルターの孔径などは、適宜調整することが可能である。
以上のような製造方法により得られる本発明の炭素材料分散液の用途は特に限定されるものではないが、代表的には、次の述べるような成形体の原料としての用途が挙げられる。その他にも、従来の炭素材料分散液と同様の用途、たとえば、塗料、接着剤、潤滑剤、インク、電池用添加剤、コンクリート又はモルタル用添加剤、繊維バインダー用添加剤などの用途が挙げられる。
−成形体−
(炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体)
本発明の第1の成形体は、前述したような炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体である。
第1の成形体は、本発明の炭素材料分散液から、乾燥により分散媒を除去する工程(乾燥工程)を含む製造方法により得られる。乾燥工程に用いられる方法は特に限定されるものではなく、風乾、加熱、減圧などの公知の方法を用いることができる。これらの方法による乾燥条件、たとえば加熱の温度および時間などは、分散媒の種類などを考慮しながら適宜調整することが可能である。本発明の炭素材料分散液の分散媒は、必要に応じてその他の物質が混合される場合もあるが、水成分は水なので、水の乾燥に適した乾燥条件を採用することが好ましい。
また、第1の成形体は、本発明の炭素材料分散液と、セルロース・四級オニウム複合体の貧溶媒とを混合し、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を析出させる工程(貧溶媒処理工程)を含む製造方法によっても得られる。貧溶媒処理工程に用いられるセルロース・四級オニウム複合体の貧溶媒は、公知の他の水溶性化されたセルロースの貧溶媒と類似したものであるが、たとえばメタノールが挙げられる。このような貧溶媒で処理することにより、炭素材料分散液中の過剰な四級オニウム塩が除去されるとともに、セルロースと複合体化している四級オニウム塩の一部も除去され、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体が析出する。
(炭素材料・セルロース複合体を含有する成形体)
本発明の第2の成形体は、炭素材料・セルロース複合体を含有する成形体である。
第2の成形体は、本発明の炭素材料分散液から、セルロースと複合体化している四級オニウムを除去することにより、セルロース・炭素材料複合体を析出させる工程を含む製造方法により得られる。
上記のセルロース・炭素材料複合体を析出させる工程の好適な実施形態としては、前記炭素材料分散液と酸とを混合することにより、前記四級オニウムを溶出させる処理(酸処理工程)を含む工程が挙げられる。このような処理に用いられる酸は、前記四級オニウムを溶出させる能力があり、かつセルロースの主鎖の構造に悪影響を及ぼさないものが適切であり、たとえば、適度な濃度の塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。
第2の成形体に含まれる炭素材料・セルロース複合体を形成する炭素材料とセルロースとの重量比は特に限定されるものではないが、たとえば、1:1000〜3:2の範囲とすることができる。この重量比は、第2の成形体の製造に用いられる分散液に含まれる、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体についての、前述したような炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体との重量比に左右される。最終的に所望の物性を有する第2の成形体が製造できるよう、適切に設定することが可能である。
(成形体の製造方法)
本発明の第1の成形体および第2の成形体とも、その形態は特に限定されるものではないが、粒子、繊維、フィルム、膜などの形態が挙げられる。それぞれの形態の成形体は、炭素材料分散液を用いて成形体を製造するための公知の製造方法により製造することが可能である。
たとえば、適切な基材に炭素材料分散液を塗布し(塗布工程)、その後、前述したような方法を用いて塗膜を乾燥する(乾燥工程)ことにより、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有するフィルム状ないし膜状の成形体を製造することができる。さらに、前記塗布工程と乾燥工程の間に、前述した酸処理工程を行うことにより、炭素材料・セルロース複合体を含有するフィルム状ないし膜状の成形体を製造することができる。
前記基材は、炭素材料分散液が塗布でき、前記フィルムないし膜と積層体を形成した場合に所定の機能を発揮できるなど、目的とする用途に応じたものであれば、形状、サイズ(大きさ、厚さ)および材質は特に限定されるものではない。たとえば、フィルム、シート、板、紙、繊維、粒子状の物質などを基材とすることができる。また、基材の材質は、有機材料としては、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、あるいはこれらの樹脂および必要に応じた任意の成分を含有する樹脂組成物が挙げられ、無機材料としては、たとえば、ステンレス、アルミ、鉄、金、銀などの金属、ガラス、炭素材料などが挙げられる。たとえば、基材に樹脂フィルムを用いた場合は、接着性、延伸追従性、柔軟性に優れた導電性フィルムを得ることができる。
炭素材料分散液を塗布するための手段は特に限定されるものではないが、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、ドクターブレード(ナイフ)コーティング、キスコーティング、スリットコーティング、ダイコーティング、スリットダイコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ブレードコーティング、ワイヤーバーコーティング、押出コーティングなどのコーティング方法や、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、パット印刷などの印刷方法が挙げられる。
粒子状の成形体を製造する場合も公知の方法を用いることができる。たとえば、炭素材料分散液を、前述したような炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を析出させる貧溶媒、あるいは炭素材料・セルロース複合体を析出させる酸に滴下することにより、上記複合体を含有する粒子状の成形体が形成される。、
繊維状の成形体を製造する場合も公知の方法を用いることができる。たとえば、炭素材料分散液を紡糸ノズルから適切な凝固液(たとえばメタノール等の貧溶媒)中に押し出し、回収、洗浄等する工程を含む、溶液(湿式)紡糸法が挙げられる。
このようにして製造することのできる成形体のサイズ、すなわち、フィルムないし膜の大きさおよび厚さ(ウェット厚、ドライ厚)、繊維の幅および長さ、粒子の直径などは、特に限定されるものではなく、成形体の用途に応じて適宜調整すればよい。
[実施例1]
TBAH(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、40% solution, Aldrich)5gにセルロースを500mg加え、30℃で一晩攪拌して溶解させた後、表1に示す各量のMWCNT(多層カーボンナノチューブ)を加え、攪拌子で攪拌分散させた。得られた分散液をPETフィルムに塗工(バーコーター, No.50)した後、光学顕微鏡(1000倍)で分散状態を確認し、明確な凝集が観察されたものを分散性が不良である(×印)、明確な凝集が観察されなかったものを分散性が良好である(○印)と評価した。TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、40% solution, Aldrich)、BTMAH(ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、40% solution, Aldrich)、TBPH(テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、40% solution, Aldrich)についても同様の実験を行った。結果は表1に示す通りである。表中に示す量についてはいずれも、分散性は良好であった。TBAHを用いた場合、MWCNTは12wt%程度まで分散できることがわかる。なお、*印(TBAH, 13.7wt%)は、上記の光学顕微鏡による観察ではMWCNTは分散しているが、塗工できなかった(チキソ性が出て判別不能であった)ことを表している。
参考のため、10wt%のセルロースが溶解したTBAH(40% solution)溶液にMWCNTを5wt%加えた場合と、対照のためTBAH(40% solution)にMWCNTを5wt%加えた場合それぞれについて、PETフィルムに塗工した様子と光学顕微鏡で観察した様子の写真を図1に示す。
[実施例2]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gまたはTBPH(40% solution, Aldrich)5gに、表2に示す各量のセルロースを加え、30℃で一晩攪拌して溶解させた後、表2に示す各量のMWCNTを加え、攪拌子で攪拌分散させた。得られた分散液をPETフィルムに塗工(バーコーター, No.50)した後、光学顕微鏡(1000倍)で分散状態を確認し、明確な凝集が観察されたものを分散性が不良である(×印)、明確な凝集が観察されなかったものを分散性が良好である(○印)と評価した。結果は表2に示す通りである。TBAH水溶液を用いた場合、そこに溶解させるセルロースの濃度は0.8wt%程度以上必要であることがわかる。
[実施例3]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gにセルロース500mgを加え、30℃で一晩攪拌して溶解させた後、表3に示す各量のMWCNTを加え、攪拌子で攪拌分散させた。得られた分散液をPETフィルムに塗工(バーコーター, No.50)した後、1N HClによる処理、次いで純水による洗浄を行い、風乾した。形成されたフィルムの電気抵抗(1cm間)を簡易抵抗測定計で測定した。結果は表3に示す通りである。
この実施例において得られた、1N HClによる処理を行った後、水洗して得られたMWCNT-cellulose複合体を含有するフィルムの写真を図2(a)に示す。また、参考のために行った、MWCNTを加えなかった以外は上記と同様にして得られたcelluloseのみを含有するフィルムの写真を図2(b)に示す。
[実施例4]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gにセルロース500mgを加え、30℃で一晩攪拌して溶解させた後、SWCNT(単層カーボンナノチューブ)を加え、攪拌子で攪拌分散させた。その後、得られたSWCNT分散溶液をシリンジノズルから、20℃の1N-HCl中に押し出し、延伸を行った後に純水で水洗を行い、SWCNTを含んだセルロース繊維を得た。得られた繊維の写真を図3に示す。
[実施例5]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gにセルロース500mgを加え、30℃で一晩攪拌して溶解させた後、SWCNT(単層カーボンナノチューブ)を加え、攪拌子で攪拌分散させた。その後、得られたSWCNT分散溶液をシリンジで、20℃の1N-HCl中に滴下し、1h攪拌した後に純水で水洗を行い、SWCNTを含んだセルロース粒子を得た。得られた粒子の写真を図4に示す。
[実施例6]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gにセルロース500mgおよびカーボンブラック30mgを加え、30℃、24h攪拌してサンプルを調製した。また、対照としてセルロースを加えないサンプルを同様にして調製した。15ml遠沈管に上記各サンプルを入れ、8000rpm×10min.の条件で遠心分離した。上澄みを捨てて、1N HClを10ml添加し、30分振蘯した後、8000rpm×10min.で遠心分離した。上澄みを捨てて、沈降物に1M-Cuエチレンジアミン溶液を加え、30分振蘯した後、8000rpm×10min.で遠心分離した。上澄みを捨てて、純水を加えてろ過した。ろ過物を純水で3回水洗し、105℃で乾燥した後、重量を測定し、100(%)から、最初のカーボンブラックの重量(30mg)に対する前記ろ過物(非分散物)の重量の百分率(%)を引いた値を「分散割合」(%)として算出した。結果を表4に示す。
[実施例7]
TBAH(40% solution, Aldrich)5gにセルロース500mgおよびフラーレン30mgを加え、30℃、24h攪拌してサンプルを調製した。また、対照としてセルロースを加えないサンプルを同様にして調製した。15ml遠沈管に上記各サンプルを入れ、8000rpm×10min.の条件で遠心分離した。上澄みを捨てて、1N HClを10ml添加し、30分振蘯した後、8000rpm×10min.で遠心分離した。上澄みを捨てて、沈降物に1M-Cuエチレンジアミン溶液を加え、30分振蘯した後、8000rpm×10min.で遠心分離した。上澄みを捨てて、純水を加えてろ過した。ろ過物を純水で3回水洗し、105℃で乾燥した後、重量を測定し、100(%)から、最初のフラーレンの重量(30mg)に対する前記ろ過物(非分散物)の重量の百分率(%)を引いた値を「分散割合」(%)として算出した。結果を表5に示す。

Claims (17)

  1. 下記成分(1)および(2)を含有することを特徴とする炭素材料分散液:
    (1)炭素材料
    (2)セルロースと、水酸化四級アンモニウムおよび水酸化四級ホスホニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の四級オニウム化合物との複合体(セルロース・四級オニウム複合体)の水溶液。
  2. 前記セルロース・四級オニウム複合体の水溶液中のセルロースの濃度が0.8重量%以上である、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記炭素材料の濃度が12重量%以下である、請求項1または2に記載の分散液。
  4. 炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体とから形成されていることを特徴とする、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体。
  5. 前記炭素材料とセルロース・四級オニウム複合体との重量比が1:1000〜3:10の範囲である、請求項4に記載の複合体。
  6. 炭素材料とセルロースとから形成されていることを特徴とする、炭素材料・セルロース複合体。
  7. 前記炭素材料とセルロースとの重量比が1:1000〜3:2の範囲である、請求項6に記載の複合体。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載の複合体を含有する成形体。
  9. 粒子、繊維、フィルムまたは膜の形態をとる、請求項8に記載の成形体。
  10. 前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の分散液、複合体または成形体。
  11. 炭素材料と、セルロース・四級オニウム複合体の水溶液とを混合し、当該炭素材料を当該水溶液中に分散させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料分散液の製造方法。
  12. 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料分散液から、乾燥により分散媒を除去する工程を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体の製造方法。
  13. 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料分散液と、セルロース・四級オニウム複合体の貧溶媒とを混合し、炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の炭素材料・セルロース・四級オニウム複合体を含有する成形体の製造方法。
  14. 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素材料分散液から、セルロースと複合体化している四級オニウムを除去することにより、セルロース・炭素材料複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の炭素材料・セルロース複合体を含有する成形体の製造方法。
  15. 前記セルロース・炭素材料複合体を析出させる工程が、前記炭素材料分散液と酸とを混合することにより、前記四級オニウムを溶出させる処理を含むものである、請求項14に記載の成形体の製造方法。
  16. 前記成形体が粒子、繊維、フィルムまたは膜の形態をとる、請求項12〜15のいずれかに記載の成形体の製造方法。
  17. 前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンおよびカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項11〜16のいずれかに記載の製造方法。
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