JP2011068967A - ステンレス鋼製パネル溶接施工貯水槽 - Google Patents

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俊郎 足立
Akihiro Nonomura
明廣 野々村
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宏紀 冨村
Akinori Kono
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Abstract

【課題】TIG溶接による耐食性、とくに耐孔食性低下の小さいステンレス鋼素材を貯水槽パネルに用い、溶接ままの状態で上水を蓄える貯水槽への適用に好適で酸化スケール除去作業の省略による作業環境の改善とこれに要するコスト低減が可能となり、研磨やけによる耐候性低下が小さくパネルの耐候性に優れた溶接施工貯水槽を提供する。
【解決手段】貯水槽パネルの素材として、質量%で、C:0.02%以下、Si:0.1〜1%、Mn:0.4%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ni:0.3〜2%、Cu:0.8%以下、Cr:23〜26%、Mo:0.2〜0.8%未満、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.15〜0,4%、N:0.025%以下、Al:0.04〜0.3%、Ca:0.002%以下に制限し、残部Feおよび他の不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を用いることにより、TIG溶接部の耐孔食性に優れるとともに、パネル素材の表面仕上げを#300以上の研磨仕上げとしても研磨やけによる耐候性の低下が小さく、貯水槽パネルの溶接施工において貯水槽内面溶接部のスケール除去省略が図れる溶接施工貯水槽を得る。
【選択図】なし

Description

本発明はフェライト系ステンレス鋼製パネルを溶接して組み立てる貯水槽に関する。
溶接施工される貯水槽パネルの素材としてSUS304(18Cr−8Ni、SUS444(低C、低N、18〜19Cr−2Mo−Nb、Ti系鋼)およびSUS329J4L(25Cr−6Ni−3Mo−0.15N)が用いられている。SUS444は水道水等の希薄塩化物水溶液での耐食性向上を主目的に開発された鋼種であり、SUS329J4Lは耐孔食性が優れており、気相部での残留塩素による孔食対策として貯水槽最上部のパネルに用いられている。
ステンレス鋼製の貯水槽は、構成部材であるパネルをTIG溶接により組み立てるものが主流である。しかし、貯水槽パネルを溶接施工したままで、残留塩素が添加された上水環境で使用すると溶接部で孔食が生じやすい。SUS304、SUS444は無論のこと、耐孔食性に優れたSUS329J4Lであっても孔食による孔あきが生じることがある。
そのため、これらの鋼種においては溶接で生じた酸化スケールを除去ことが必須となっている。このスケールの除去には酸を用いるのが効果的であるものの、酸のヒューム発生による作業環境の悪化に加えて、使用した酸の除去や無害化のための作業が不可欠になるなど、環境上、施工上の問題点が多い。
また、貯水槽は屋外に設置されるケースが多いためパネルには防眩性が要求され、ステンレス鋼の表面仕上げとしては研磨仕上げとすることが要求される。研磨仕上げは、ステンレス鋼製造過程の研磨工程で研磨材を用いて鋼表面に一様な疵をつけるものであるが、研磨時の加熱でステンレス鋼表面が局部的に600〜700℃にまで昇温するため、鋼材表面に酸化スケールが生成し、耐食性、特に耐候性が損なわれることがある。この研磨における発熱を抑えるため、研磨材の種類など研磨条件の検討が行われてきたが、安定して十分な対策がとれていないのが実状である。現状では、鋼材の出荷前に耐候性を確認し、耐候性低下のないものを出荷するなどの対策が採られているが、その結果として歩留まり低下による素材コストの上昇を招いている。
特許文献1にはパネルをボルト締結で組み立てるパネル型貯水槽が開示されている。溶接施工しないことで溶接による耐食性低下がない利点はあるが、パネル同士の接合部のパッキンとの隙間腐食を回避するために希少元素であるMoの添加を0.8%以上としたパネル素材とすることが必要となっている。このMoは価格変動が激しいうえに供給が不安定なため、これまで、素材コストの異常な上昇ならびに素材の安定供給に問題が生じることが多多あった。また、ボルト締結型では必要な接合強度を得るためにボルト接合箇所を増加させることになり、貯水槽内部の補強材も増えるため施工が複雑、煩雑になり溶接接合型の貯水槽に比べて施工性に劣るという問題もある。
特許文献2には研磨によるステンレス鋼の耐候性低下を防いだ研磨仕上げ材の製造方法が開示されている。すなわち、研磨仕上げ後にステンレス鋼を還元雰囲気で熱処理し、酸化スケールを還元除去するものである。さらに還元雰囲気での熱処理では除去が不十分な場合、もしくはステンレス鋼の不動態化処理を目的とした酸化性処理液への浸漬処理も併せて開示されているが、逆に、研磨で生じた酸化スケールを除去することの困難さを示すものである。しかも、開示された処理を適用することによるステンレス鋼の製造コストの上昇は避けられない。
特開平8−74005号公報 特開2002−3938号公報
上述のように、貯水槽の施工はTIG溶接でパネルを接合する溶接施工貯水槽が主流であるが、貯水槽の溶接施工は隙間構造を回避するため、箱折したパネル端部同士をへり継手溶接して溶接した面を内面(水側)として組み立てる。すなわち外面には溶接部が出ないため外観を損なうことはないが、貯水槽パネルの溶接は槽内部の作業となるため溶接姿勢は窮屈で無理な姿勢が強要される。さらに、溶接で生じた酸化スケールの除去に酸を用いるため、人体に有害な環境での作業が余儀なくされている。
一方、パネル素材の仕上げが研磨仕上げの場合、ステンレス鋼素材の研磨工程で研磨焼けが生じ、ステンレス鋼の耐候性が阻害されることがあり、素材の製造においても研磨工程での歩留まり低下による製造コストの上昇を招いている。
本発明は、このような現状に鑑み、TIG溶接による耐食性、とくに耐孔食性低下の小さいステンレス鋼素材を貯水槽パネルに用い、溶接ままの状態で上水を蓄える貯水槽への適用に好適で酸化スケール除去作業の省略による作業環境の改善とこれに要するコスト低減が可能となるとともに、パネル素材は研磨やけによる耐候性低下が小さいため、研磨仕上げパネルの耐候性に優れた溶接施工貯水槽を開発し提供することを目的とする。
発明者らは上記目的を達成すべく詳細な研究を行った結果、以下のようなことを新たに知見した。
(i)貯水槽の溶接施工は隙間構造を回避するためにパネル端部同士をへり継手溶接し、溶接トーチ面が槽内面となる。TIG溶接はArガス雰囲気で行うが、Arガスはタングステン電極の酸化抑制に用いるのであって、被溶接材であるステンレス鋼の酸化を抑制するには不十分で溶接部には酸化スケールが生じる。溶接トーチ面での溶接部の耐食性低下は溶接スケールの発生に起因し、溶接スケールの組成や厚みで異なる。溶接部での孔食は400〜600℃に加熱された部位で発生し成長する。
(ii)TIG溶接トーチ面の孔食発生はスケール自身の耐食性に依存する。スケールの耐食性はスケール組成と強く関連し、Ti、Cr酸化物を一定量以上含む酸化スケールは耐食性がすぐれる。逆に、Fe酸化物を主体とする酸化スケールの耐食性は低く、ステンレス鋼に孔食が発生しやすい。
(iii)Tiを添加したフェライト系ステンレス鋼のCr含有量を23質量%以上確保するとともにNiを適量添加することにより、TIG溶接表面の溶接熱影響部で孔食が生じやすい400〜600℃に加熱される部位の酸化スケール中のTi、Crの酸化物濃度を増加させ、酸化スケールの耐食性を高めることで素地での腐食発生の耐食性を向上させることができ、TIG溶接表面の溶接熱影響部の耐孔食性向上に極めて有効である。その結果、溶接部耐食性改善手法としてこれまで行われてきたTIG溶接後の溶接スケール除去作業の省略が可能となる。
(iv)耐食性改善元素として知られるMoは、溶接部の耐食性改善には有効に作用しない。
Niは酸化スケールのCr濃度を高めることのほか、TIG溶接部の孔食の成長を抑制する。Cr含有量が23質量%レベルの鋼においてはその効果は0.3〜1%の添加で著しい。
(v)研磨材との摩擦により、ごく短時間ではあるが、ステンレス鋼表面は約700℃に到達するが、摩擦による加熱を受ける場合においても、23質量%以上のCr含有量を確保しNiを適量添加した鋼では、研磨材との加熱で生じる酸化スケールによる耐食性低下は小さく、素地の耐候性は必要なレベルが維持できるため研磨仕上げ材への適用に好適である。
本発明はこのような知見に基づいて成分設計された省Mo型フェライト系ステンレス鋼を用いた溶接施工貯水槽を提供するものである。
すなわち、貯水槽パネルの素材に質量%で、C:0.02%以下、Si:0.1〜1%、Mn:0.4%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ni:0.3〜2%、Cu:0.8%以下、Cr:23〜26%、Mo:0.2〜0.8%未満、Nb:0.1〜0.5%、Ti:0.15〜0.4%、N:0.025%以下、Al:0.04〜0.3%、Ca:0.002%以下であり、残部Feおよび他の不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を用いること、防眩性が要求される貯水槽のパネル素材の表面仕上げを#300以上の研磨仕上げとし、貯水槽パネルの溶接施工において貯水槽内面の溶接部のスケール除去を省略した溶接施工貯水槽である。
本発明の溶接施工貯水槽は、殺菌のために残留塩素が存在する上水を大量に使用する残留塩素環境における溶接部の耐食性が極めて優れている。溶接卜一チ面のTIG溶接部で形成した酸化スケールの無手入れのままで上水に曝して使用した場合でも、長期間優れた耐孔食性が維持される。すなわち溶接施工貯水槽をTIG溶接により製造する際に、溶接スケールの除去作業を省略しても高い信頼性が得られる。しかも、研磨仕上げのパネル外面の耐候性も優れている。
したがって本発明によれば、外面の耐候性と残留塩素が存在する上水の液相部、気相部でのTIG溶接部の耐孔食性が要求される貯水槽の提供ができ、しかもパネル素材と貯水槽溶接施工でのコスト低減が図れる。
本発明のフェライト系ステンレス鋼を構成する成分元素について説明する。
C、Nは鋼中に不可避的に含まれる元素である。C、Nの含有量を低減すると鋼は軟質になり加工性が向上するとともに炭化物、窒化物の生成が少なくなり、溶接性および溶接部の耐食性が向上する。このため本発明ではC、Nとも含有量は少ない方が良く、Cは0.02質量%まで、Nは0.025質量%まで含有が許容される。
Siは、Arガスをシールガスとして用いるTIG溶接では、溶接トーチ面の酸化スケールの耐食性を改善し溶接部耐孔食性改善に有効に作用する。また、Siはフェライト系鋼の母材および溶接部の硬質化に寄与するので、本発明の貯水槽のパネルとして使用する場合、Siの添加は有利となる。種々検討の結果、Siによる強度向上作用を十分に享受するには、0.1質量%以上のSi含有量を確保することが望まれる。しかし、1%を超えて多量に添加すると逆に孔食の成長を促進するため、本発明ではSi含有量を0.1〜1質量%の範囲にコントロールする。
Mnは、ステンレス鋼の脱酸剤として使用される。しかしMnは不動態皮膜中のCr濃度を低下させ、耐食性低下を招く要因となるので、Mn含有量は低い方が好ましく、0.4質量%以下の含有量に規定される。スクラップを原料とするステンレス鋼ではある程度のMn混入は避けられないので、過剰に含有されないよう管理が必要である。
Pは、母材および溶接部の靭性を損なうので低い方が望ましい。ただし、含Cr鋼の溶製において精錬による脱りんは容易ではないことから、P含有量を極低化するには原料の厳選などに過剰なコスト増を伴う。したがって本発明では一般的なフェライト系ステンレス鋼と同様に、0.04質量%までのP含有を許容する。
Sは、孔食の起点となりやすいMnSやCaSなどの硫化物を形成して耐候性を阻害することが知られている。本発明のパネル素材には適量のTiを必須添加するのでMnSの形成は回避できる。すなわち、TiはSとの親和力が強く、化学的に安定な硫化物を形成するので、耐食性低下の原因になるMnSの生成が十分に抑止される。しかし、脱酸材としてあるいは鋳造時のノズル詰まり対策としてAlを用いる場合、ステンレス鋼の耐候性を阻害するCaSの生成が回避できない場合がある。貯水槽パネル外観の耐候性を損なわないためにS量の上限は0.005質量%以下に規定される。
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、耐孔食性や耐隙間腐食性などの局部腐食性の向上をもたらす。TIG溶接した溶接部の耐食性はCr含有量に大きく依存することから、Crは本発明において特に重要な元素である。本発明者らの検討の結果、TIG溶接卜一チ面の溶接部に残留塩素環境で要求される耐食性を付与するには23質量%以上の含有量を確保すべきであることがわかった。耐食性改善効果はCr含有量が多くなるに伴って向上する。しかし、Cr含有量が多くなるとC、Nの低減が難しくなり、機械的性質や靭性を損ねかつコストを増大させる要因となる。
本発明では、Cr含有量が23質量%以上の鋼ではSiによる溶接部の孔食発生抑制ならびにNiの溶接部の孔食進行抑制効果が大きくなり、高濃度の残留塩素が形成する厳しい環境への適用においてもCr含有量のさらなる増加に頼ることなく、上述の問題を最小限に抑え、十分な耐食性を得ることができる。したがって本発明ではCr含有量を23〜26質量%とする。
Moは、Crとともに耐食性レベルを向上させるための有効な元素であり、その耐食性向上作用は高Crになるほど大きくなることが知られている。ところが、発明者らの詳細な検討によれば、TIG溶接したままの酸化スケールが形成された溶接部についてはMoによってもたらされる耐食性向上作用はあまり大きくないことがわかった。
本発明の主な用途である残留塩素を含む上水を大量に貯水する環境に対しては0.2質量%以上のMoを含有させることが効果的であるが、0.8質量%以上としても溶接部の耐孔食性の改善効果は小さい。更に、本用途ではパネルの板厚が1.5mmt以上と比較的厚いため、パネル同士の溶接では湯流れ性がよく深溶込み量で裏ビードが出やすい素材が好まれ、この場合にはMoは低いほうが良い。したがって、Moは0.2質量%以上、0.8質量%未満とする。
Nbは、Tiと同様にC、Nとの親和力が強く、フェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効な元素である。その効果を十分発揮させるには0.1質量%以上のNb含有量を確保することが望ましい。しかし、過剰に添加すると溶接高温割れが生じるようになり溶接部靭性も低下する。とくに貯水槽パネルは1mmをこえる板厚で用いられるため溶接部靭性が要求される。Nb含有量の上限は0.5質量%とする。
TiはTIG溶接において溶接部の耐食性向上に寄与する元素である。Arガスシールのおよぶトーチ面において、Alとの複合添加により溶接金属部、熱影響部の鋼表面にAl、Ti主体の化学的に安定な酸化皮膜を形成すること、ならぴに、Feの生成を抑えることで酸化スケールの耐食性を向上する。このようなTiの作用を十分に享受するには0.15質量%以上のTi含有量を確保することが望ましい。しかし、Ti含有量が多くなると素材の表面品質が低下したり、溶接ビードでの酸化物(スラグスポット)が多くなり溶接ビードの耐食性が低下するので、Ti含有量の上限は0.4質量%とする。
Alは、Tiとの複合添加によってTIG溶接における溶接金属部、溶接熟影響部の鋼表面でTiとともに優先酸化し、Feの生成も抑えるため、酸化スケールの耐食性を高める。その作用を十分に得るためには0.04質量%以上のAl含有量を確保する必要がある。一方、過剰のAl含有は素材の表面品質の低下や溶接性の低下を招くので、Al含有量は0.3質量%以下とする。
Niは、TIG溶接においてArガスシールが不十分な部位の溶接スケール中のCr濃度を高め、化学的に安定なCrの生成量を増加しスケールの耐食性を向上させる。さらに、溶接金属部(ビード部)および熱影響部の孔食の進行を抑えることでTIG溶接部の耐食性を向上させる。この作用はCr含有量が高いほど大きい。
また、貯水槽は容量が大きくなるとパネルの板厚を1.5〜3mmまで増加させるため溶接部の低温靭性が要求される。溶接部の低温靭性は鋼のCr量が高くなるほど低下するが、Niを0.3質量%以上添加することにより低温靭性の低下を抑制することができる。なお、酸化スケール中の金属元素比率でCr比率を向上させる手段としてはFe系の酸化物を出させないようにすることが有効である。Niの効果はTi、Alのそれとは異なり、母相中のFeの酸化を抑制し結果的に酸化スケール中のCr比率を上昇させるのに有効である。その効果を出すためには予備検討の結果、Niが0.3質量%以上必要である。
ただし多量のNi含有は鋼を硬質にし加工性を阻害するので、2質量%以下の範囲で行う。
板厚2mmの冷廷鋼板を、Arガス量を絞った下記の条件でTIG溶接にて突合せすると、Niを0.3質量%以上、Tiを0.15質量%以上、Alを0.04質量%以上それぞれ添加した鋼ではFeの酸化が抑制され、その結果酸化スケール中のCrが濃化し酸化スケールの耐食性が向上する。
Cuは、TIG突合せ溶接部の耐食性において、溶接熟影響部での孔食発生ならびに成長を抑制する。Cuの効果は鋼のCr量が多いほど大きくなる。しかし、Cuの溶接部耐孔食性改善効果は0.8質量%で飽和するため上限を0.8質量%とする。これを超えて添加すると孔食の発生数は減少するが孔食の成長を促進することが懸念される。
Caは、鋼には殆ど固溶せず不純物元素のSと硫化物を形成しやすい。CaSは化学的に不安定であり希薄塩化物水溶液であってもたやすく溶解し発銹の起点となる。貯水槽パネル用途では、表面仕上げが酸洗仕上げではなく研磨仕上げとなるため、CaSはそのまま鋼表面に露出する。CaSが溶解しても孔食に到ることはないが、CaSの溶解によって生じた鋼の新生面が不動態化するまでのごく僅かな時間であってもFeが溶け出すため赤さびとなって外観を損なってしまう。したがって、Caの許容量は0.002質量%とする。
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、熱間圧延にて板厚4mmの熱延板を作製した。その後、冷間圧延にて板厚1.5mmとし、1000〜1070℃での仕上げ焼鈍、酸洗、#320での乾式機械研磨を行い供試材とした。
Figure 2011068967
各供試材の鋼板について、図1に示すTIG溶接試験片を作製した。溶接条件は、溶け込み(溶接金属部)が裏面まで到達し、裏面に約4mm幅の「裏ビード」が形成される条件とした。この条件の場合、溶接熟影響部(HAZ)は板厚中央部でビード中心からの距離が約10mmの範囲となる。試験片の形状は120mm×120mm×1.5mmとし、溶接部が試験片の中央にくるように溶接材から切出した。
溶接の詳細な条件は、以下の通りである。
溶接条件 溶接芯線なしTIGパルス、突合せ溶接
溶接電流 ベース電流120〜145A、パルス電流120〜145A
溶接速度 300mm/min
トーチシール側のArガス流量 6L/min
電極径 φ2.4mm
アーク長 1mm
供試鋼のTIG溶接部耐食性評価では溶接スケールが生成した溶接ままの状態で試験を行ったが、鋼No.12のSUS444については溶接スケールを除去した試験片での試験も行なった。溶接スケールの除去は、質量%で硝酸8%+ふっ酸3%の混合液を50℃に加温して約5分間浸漬して行った。
気相部の残留塩素環境におけるTIG溶接部の耐孔食性評価として、強力な酸化剤である市販の塩素水を用いた結露試験を行った。図2に結露試験方法を模式的に示す。容量500mLの円筒型ガラス容器(試験容器)に試験液を400mL注ぎ、TIG溶接試験片にて蓋をする。
表2に試験条件を示す。試験容器の蓋とした溶接試験片の内面で結露させるため、湿度を70%RHの一定とし、温度を20℃と60℃の2水準で変化させた。各温度条件でそれぞれ1h保持した。これを1サイクルとし100サイクルまで繰返して行った。また、孔食深さの成長の有無を見るため、10および40サイクルにて孔食深さを測定した。
Figure 2011068967
結露試験後のTIG溶接試験片を温硝酸水溶液に浸漬して腐食生成物を除去した後、孔食を顕微鏡で観察し孔食深さを測定した。結果を表3に示す。表3中に表示した孔食深さの値は、ルーペ観察にて大きい孔食を10点選び、各々について光学顕微鏡による焦点深度法にて求め、その最大孔食深さである。
希薄塩化物水溶液中での孔食はそのまま進行することなく再不動態化するが、本発明で行った結露試験のように酸化剤を含む結露水で生じた気相部での孔食は必ずしも再不動態化しない。本試験ではTIG溶接試験片の溶接部に孔食が生じる。貯水槽パネルに要求される耐食性は孔食による漏水なきことであるので試験サイクルを変えて孔食深さを測定し、発生した孔食の成長あるいは再不動態化を判定した。
孔食が再不動態化するまでにはある程度の侵食を伴う。本試験は厳しい腐食環境であるため孔食の再不動態化までに孔食は0.4mm成長する。さらに、試験40サイクルと100サイクルの孔食深さを比較し、その差が0.05mm以内であれば孔食は再不動態化しているとみなせ合格とした。
Figure 2011068967
表3からわかるように、本発明で規定する化学組成を有する本発明例のものは、いずれも上記結露試験における耐食性評価が合格判定であった。すなわち、パネルのTIG溶接において溶接後の酸化スケール除去なしで残留塩素の結露環境で優れた耐食性を有することが確認された。以下、詳細に合金元素と関連させて述べる。
No.1鋼(23Cr−0.3Ni−0.5Mo)、No.2鋼(24Cr−0.5Ni−0.4Mo)、No.6鋼(26Cr−0.5Ni−0.5Mo)の対比からCr量増加による著しい効果が認められる。ついで、No.2鋼(24Cr−0.5Ni−0.4Mo)、No.3鋼(24Cr−0.9Ni−0.5Mo)、No.4(24Cr−1.5Ni−0.5Mo)の対比から、Ni添加量の増加とともに孔食の成長が抑制されることがわかる。
さらに、No.2鋼(24Cr−0.28Si−0.5Ni−0.4Mo)とNo.5鋼(24Cr−0.8Si−0.4Ni−0.5Mo)の比較から、Si増量による耐孔食性向上効果が認められる。
一方、比較鋼のN o.7鋼(24Cr−0.02Ni−0.6Mo)、No.8鋼(24Cr−0.5Ni−1Mo−0.04Ti)、No.10鋼(24Cr−0.5Ni−0.5Mo−1.2Cu)およびNo.11鋼(22C
r−0.4Ni−0.8Mo)は結露試験に合格しなかったが、Ni、Ti、CuおよびCr添加量が本発明で規定する添加量から外れていることによる。また、現行材のNo.12鋼(18Cr−1.8Mo)は、本試験条件が厳しかったこともあり、溶接スケールを酸洗除去したにも関わらず合格基準に達しなかった。
屋外に設置する貯水槽パネルに要求される特性として耐候性を評価した。前述の#320での乾式機械研磨条件は、ベルト研磨機を用い乾式で、ステンレス鋼表面を軽度に酸化させながら研磨を行った。耐候性評価は図3に示す条件のCCTを50サイクルまで行った。耐候性評価はJISG0595に規定されるRNに依り、RN7〜9(さび発生面積率0.41%以下)を合格とした。
結果を表3に示す。表3から明らかなように、本発明で規定する化学組成を有するパネル素材のものは、いずれもCCTにおける耐食性評価が合格判定であった。すなわち、本発明によるパネルは強度な乾式研磨においてもやけの発生による耐候性低下がほとんどないことが確認された。以下、合金元素と関連させて述べる。
比較鋼のNo.7鋼(24Cr−0.02Ni−0.6Mo)、No.8鋼(24Cr−0.5Ni−1Mo−0.04Ti)、No.9鋼(24Cr−0.5Ni−0.5Mo−0.0038Ca)、No.11鋼(22Cr−0.4Ni−0.8Mo)は結露試験に合格しなかったが、Ni、Ti、CrおよびCa添加量が本発明で規定する量から外れていることによる。
また、現行材のNo.12鋼(18Cr−1.8Mo)は、研磨焼けをうけやすいといえる。
TIG溶接試験片を示した図。 結露試験を模式的に示した図。 CCT条件を示した図
1 試験片
2 試験液
3 結露水

Claims (3)

  1. 貯水槽パネルの素材に質量%で、
    C:0.02%以下、
    Si:0.1〜1%、
    Mn:0.4%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.005%以下、
    Ni:0.3〜2%、
    Cu:0.8%以下、
    Cr:23〜26%、
    Mo:0.2〜0.8%未満、
    Nb:0.1〜0.5%、
    Ti:0.15〜0.4%、
    N:0.025%以下、
    Al:0.04〜0.3%、
    Ca:0.002%以下、
    残部Feおよび他の不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を用いることを特徴とする、ステンレス鋼製パネル溶接施工貯水槽。
  2. 請求項1の貯水槽パネル素材の表面仕上げが#300以上の研磨仕上げであることを特徴とする、ステンレス鋼製パネル溶接施工貯水槽。
  3. 請求項1および2の貯水槽パネルの溶接施工において貯水槽内面の溶接部のスケール除去を省略したことを特徴とする、ステンレス鋼製パネル溶接施工貯水槽の施工方法。
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