JP4717594B2 - 溶接構造温水容器 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接部を温水に曝して使用する温水機器の容器であって、特に各溶接部での耐食性を高めた温水容器に関する。
電気温水器や貯湯槽などの温水容器は、一般にステンレス鋼からなる構成部材を溶接で接合して作られる。図1には、ステンレス鋼製温水容器の構造の一例を模式的に示してある。図1(a)に示すように、温水容器の本体(缶体)は例えば「胴」と呼ばれる円筒形の部材と「鏡」と呼ばれる上下のお椀型の部材をTIG溶接して作られる。胴および鏡はステンレス鋼板を素材として成形された部材である。胴にはステンレス鋼板の端面どうしを溶接した溶接部がある。鏡と胴の接合では、通常、鏡の側面(鋼板素材の板面に相当する)と胴の円筒端部(鋼板素材の端面に相当する)とを溶接する。こうすることにより胴や鏡の寸法精度の許容度が広がるとともに、溶接施工も容易になる。ただしこの場合、図1(b)、(c)に示すように、容器内部すなわち温水と接触する部位に隙間構造ができる。このような溶接部の板の重なりによって出来る隙間を本明細書では「溶接隙間」と呼ぶ。
缶体には配管と接続するための「口金」と呼ばれる部材が例えば図1(d)のように溶接で取り付けられる。口金は、ステンレス鋼管を成形したメカニカル継手の雄部材が採用されることが多い。図1の例では上下の鏡に各1個ずつの口金が取り付けられているが、使用される態様に応じてさらに多くの口金が取り付けられることがある。その取り付け位置も鏡だけとは限らず、胴に取り付けられることもある。
ステンレス鋼の溶接部ではCr酸化物の形成によりCr欠乏層が生じやすく、耐食性低下が問題となることがある。このため、温水容器には耐食性レベルの高い鋼が使用される。例えばSUS444(低C、Nの18Cr−2Mo−Nb、Ti系)などのフェライト系ステンレス鋼は、耐孔食性、耐隙間腐食性に優れ、しかもオーステナイト系ステンレス鋼で問題となる応力腐食割れの心配がないことから、上水を用いる電気温水器や貯湯槽などの温水機器に広く使用されている。
温水容器の缶体を構成するステンレス鋼板部材どうしの溶接箇所には前述のように温水に曝される部位に溶接隙間が形成されることが多い。ステンレス鋼の耐隙間腐食性は溶接状態や隙間構造の形態によって大きく変化しうるので、SUS444を用いた温水機器でも上水程度の希薄なNaCl環境で溶接部の腐食が問題となることがあった。
一方、温水容器には缶体と口金の間にも溶接部がある。口金は配管との接続を考慮して規格化されたメカニカル継手を採用することが一般的であるため、通常、規格品として流通しているオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316、SUS304など)の口金が使用される。缶体がSUS444(フェライト系)で、口金がSUS316またはSUS304(オーステナイト系)である場合、いわゆる異材溶接となるので、その溶接熱影響部ではSUS444側にガルバニック腐食や粒界腐食、SUS316、SUS304側に応力腐食割れが生じやすい状態となる。ただ、上記のような溶接隙間構造を有する缶体の場合、その隙間部での腐食の方が口金溶接部より深刻であり、隙間部で著しい腐食が進行した場合には早期に温水容器の寿命が尽きる。このため、溶接隙間部での安定した耐食性改善技術の確立が第一優先であるとされ、これまで種々の高耐食鋼の開発に力が注がれてきた。
特許文献1には鏡への胴の挿入深さを20mmまでとし隙間腐食の発生を避けた構造の温水器缶体が開示されている。これにより隙間部での腐食環境は緩和される。しかし、溶接時に生じるCrの酸化ロスを防止することは考慮されておらず、溶接状態により変化しやすい耐隙間腐食性を安定的に改善する手段にはなっていない。
溶接部での温水による腐食を軽減するには、溶接施工後に酸洗、研磨等の「後処理」を施して酸化スケールを除去することが有効である。しかし、そのような「後処理」は工程負荷を増大させ温水機器のコスト増に繋がるので好ましくない。したがって、後処理を施すことなく「溶接まま」の状態で使用しても、隙間構造を有する溶接部で安定した高耐食性が発揮されるステンレス鋼の開発が強く望まれてきた。
溶接部の耐食性を改善したステンレス鋼として、特許文献2にはAlとREM(希土類元素)を添加したものが開示されている。これは、還元性の雰囲気で焼鈍し、鋼表面にAl酸化物主体の皮膜を形成させることにより溶接時のCrの酸化を最小限にとどめ、溶接部での耐食性を向上させたものである。しかし、この鋼材では耐孔食性が向上するものの、隙間腐食については十分な検討がなされていない。また、希少で高価なREMの添加を必要とすることや、表面仕上げが限られること、疵が多発しやすいことなどの問題があり、実用化には至っていない。
特許文献3にはTiとAlを複合添加したステンレス鋼が開示されている。この鋼は溶接時にAl酸化物の形成を容易にしてCrの酸化ロスを抑制することにより溶接部(熱影響部を含む)での耐食性向上を図ったものである。しかし、この鋼の場合も、耐孔食性に関しては顕著な向上効果が認められるものの、耐隙間腐食性については必ずしも十分考慮されているとは言えない。発明者らの調査によれば、この鋼を用いて溶接部に隙間構造を有する温水機器を作った場合、その隙間部での耐食性は改善されるものの、その改善効果が不安定であることがわかった。Cr含有量をかなり高めたとしても、溶接部に隙間構造を有する温水機器において溶接ままの状態で安定的な高耐食性を期待するには不安が残る。
一方、溶接施工上の工夫により溶接部の耐食性を向上させることも可能である。例えば、耐食性低下の原因となるCrの酸化ロスを防ぐためには、Arなどを用いた不活性ガスシールを徹底的に行うことが有効である。しかしこれには、トーチサイドでアフターガスシールをステンレス鋼の表面が酸化しない温度まで行い、かつバックサイドでもバックガスシールを同温度まで厳密に行うことが必要となる。これでは製造性が悪く、大量生産現場に適用するには無理がある。
特開昭54−72711号公報 特開昭63−118011号公報 特開平5−70899号公報
このように、フェライト系ステンレス鋼を用いた温水機器においては、隙間構造を有する溶接部で高耐食性を安定的に実現することは必ずしも容易ではない。また、温水容器の信頼性を向上させるには隙間構造を有する溶接部だけでなく、温水と接触する部位全体についての耐食性を総合的に改善することが重要である。
そこで本発明は、溶接隙間部での安定した高耐食性を実現するとともに、それ以外の部位での耐食性をも顕著に改善した信頼性の高い温水容器を提供することを目的とする。
発明者らは詳細な検討の結果、フェライト系ステンレス鋼において、AlとTiの複合添加に加え、更にSiを一定量以上添加したフェライト系ステンレス鋼を用いることにより、缶体の溶接部での耐隙間腐食性が顕著に改善されることを突き止めた。その上で、口金についても缶体と同種のステンレス鋼で構成することにより、総合的に極めて信頼性の高い温水容器が構築できることを見出した。
すなわち上記目的は、缶体を下記組成(2)を満たすフェライト系ステンレス鋼、口金を下記組成(1)を満たすフェライト系ステンレス鋼でそれぞれ構成し、それらを溶接接合した温水容器によって達成される。
〔組成(1)〕
質量%で、C:0.025%以下、Si:0.2〜%、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.01%以下、Ni:2.0%以下、Cr:16〜28%、Mo:0.5〜2.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:0〜%、Al:0.02〜0.6%、N:0.025%以下、B:0〜0.003%、残部Feおよび不可避的不純物
〔組成(2)〕
質量%で、C:0.025%以下、Si:0.6超え〜2%、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.01%以下、Ni:2.0%以下、Cr:17〜28%、Mo:0.5〜2.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:0〜0.6%、Al:0.02〜0.6%、N:0.025%以下、B:0〜0.003%、残部Feおよび不可避的不純物。
この組成(2)は、前記組成(1)において特にSi、Cr、Cuの含有量範囲にさらなる限定を付したものであり、これにより温水に曝される溶接隙間において特に優れた耐食性が安定して発揮される。
缶体、口金の両方とも組成(2)を満たす鋼で構成することが特に好ましいが、溶接隙間での高い信頼性が望まれる缶体の部材のみを組成(2)を満たす鋼とし、口金には組成(1)を満たす範囲の鋼を許容するという組み合わせとすることでも、缶体、口金とも組成(1)の範囲を許容する場合に比べ温水容器の総合的な信頼性は一段と向上する。
ここで、缶体を構成する各部材および口金は、完全に同一組成の鋼(すなわち同一溶製チャージの鋼)で構成する必要はなく、溶接に供される各構成部材がそれぞれに規定される組成(1)または(2)を満たすものであればよい
温水容器の主要構成部材である缶体が「胴」、「鏡」といったステンレス鋼板を素材として成形された部材の溶接接合により構成され、かつその溶接部の温水と接触する部位に隙間構造を有するタイプの温水容器が好適な対象となる。また本発明では、温水が接触する溶接部を「溶接まま」の状態で使用するものが提供され、特に80℃の200ppmCl-+2ppmCu2+水溶液を当該容器内に6ヶ月間循環させたとき温水に接触する溶接部に侵食深さ0.1mm以上の腐食が発生しない高耐食性を有するものが提供される。
本発明によれば、溶接部において温水に対する優れた耐食性を安定して発揮し、かつ、異材溶接による腐食や応力腐食割れが生じない温水容器が提供された。特に、温水と接触する部位に溶接隙間が形成されているタイプの温水容器では信頼性の向上効果が一層大きい。また、本発明の温水容器は溶接後に工程負荷の大きい後処理を施すことなく「溶接まま」の状態で使用できる。溶接施工においても特殊な酸化防止手段を必要としない。しかも、その溶接部は強度が高いため、水道直結タイプの温水容器として耐えうる耐圧性を有する。さらに、この鋼は一般的なフェライト系ステンレス鋼の成分元素で構成されるので、特殊元素を多量に添加することによるコスト増を伴わない。したがって、本発明は温水機器の信頼性向上とコスト低減に寄与するものである。
一般的にステンレス鋼の耐隙間腐食性は、その鋼の耐孔食性レベルの上昇に伴って向上する傾向にあることから、耐孔食性を主体とした試験によって耐隙間腐食性を比較的良好に推定することができる。しかしながら、溶接部に形成される隙間(すなわち溶接隙間)においては事情が異なる。溶接部ではCrの酸化ロスによって周囲の母材部よりもCr濃度の低い領域が形成され、これによる耐食性の低下が生じる。その上で更に隙間構造が形成されると、「Cr欠乏+隙間形成」のダブル効果によって一般的な隙間部では通常生じないような著しい耐食性低下を引き起こすことがある。このことが溶接隙間での安定した耐食性改善を難しくしている一因になっていると考えられ、現に前記特許文献に示されるような溶接部の耐食性向上を意図して開発された鋼においても、温水に曝される溶接隙間では本来の優れた耐食性が発揮されない場合が生じた。
発明者らは、このような厳しい条件にある溶接隙間での耐食性を安定的に付与する上で、従来、溶接部の耐食性改善元素として考慮されていなかったSiの添加が極めて有効であることを突き止めた。
ところが、このような鋼により溶接部の耐隙間腐食性を顕著に改善すると、今度は、従来あまり問題視されず、ほとんど対策が取られてこなかった缶体と口金の溶接部における耐久性が温水容器の寿命を支配する要因として顕在化することがわかった。この問題は当初、異材溶接による耐食性低下であるから、両部材をフェライト系鋼種とすれば解決するものと考えられた。しかしながら、発明者らの検討の結果、缶体と口金の溶接部には特に腐食環境の厳しい溶接隙間は形成されていないにもかかわらず、単に両部材をフェライト系鋼種とするだけでは十分な改善には至らないことが明らかになった。そこで、詳細な検討を行ったところ、口金についても、特定組成範囲のフェライト系ステンレス鋼を適用しなければその溶接部の耐久性を顕著に改善することは難しいことがわかった。
以下、本発明の温水容器に適用する缶体および口金を構成するフェライト系ステンレス鋼の各成分元素について説明する。元素によっては缶体と口金で特に好ましい含有量範囲に違いが見られる場合もあるが、享受すべき基本的作用には共通事項が多いため各元素ごとに両部材を対象として説明する。なお、元素含有量における「%」は特に示さない限り「質量%」を意味する。
C、Nは、鋼中に不可避的に含まれるが、その含有量を低減することにより鋼は軟質になり加工性が向上するとともに、炭化物、窒化物の生成が少なくなり溶接性および溶接部耐食性が向上する。このため本発明ではCおよびNは少ない方が好ましい。C、Nとも概ね0.025%までの含有が許容されるが、0.01%以下とすることが望ましい。
Siは、一般的に鋼の脱酸元素として添加されるが、本発明では溶接部の耐食性を改善する上で重要な元素である。特に溶接隙間における安定した耐食性を実現するためには0.6%を超えるSi含有量を確保することが好ましい。0.6%を超えるSiを添加したとき、溶接隙間における耐食性レベルは、Cr含有量あるいはさらにMo含有量に応じた鋼本来の耐食性レベルを反映したものとなる。Si添加による溶接部での耐食性改善メカニズムについては、現時点では未解明であるが、Siを添加すると溶接酸化スケールの発生が抑制され、このことが何らかの要因になっているものと推察される。ただし、Siは鋼を硬質にする元素であり、溶接部の低温靱性を損なうという面もある。このため、Si含有量は2%以下の範囲で調整する。0.2%以上の含有が望ましいが、溶接隙間を有する缶体部材用としては、Si含有量を0.6超え〜2%の範囲とすることが好ましく、0.7%以上を確保することがさらに好ましい。口金部材用としてもSi含有量0.6超え〜2%のものを使用することが溶接部の耐食性確保の面で有利であるが、口金の加工性等を重視する場合、1%以下のSi含有量範囲とすることが望ましい。
Mnは、鋼中に不純物として存在するSと結合し、化学的に不安定な硫化物MnSを形成して耐食性を低下させる。さらに固溶Mnも耐食性にはマイナス要因となる場合がある。このためMnは1%以下の含有量に制限される。
Pは、母材および溶接部の靱性を損なうのでできるだけ少ないことが望ましいが、Cr含有鋼の脱Pは困難でありかつ製造コストの上昇を招く。本発明では0.045%程度までのP含有が許容される。
Sは、Mnと硫化物を形成し孔食の起点となるが、孔食の成長を促進する作用はない。しかし、Sは溶接部の高温割れに悪影響を及ぼすため少ない方が好ましく、0.01%以下に規制される。
Niは、フェライト系ステンレス鋼の靱性改善に有効な元素であるとともに、腐食の進行を抑制する作用がある。しかし、鋼を硬質にし加工性を阻害するので2.0%以下に規制される。
Crは、不動態皮膜の構成元素であり、耐孔食性、耐隙間腐食性および一般の耐食性を向上させる。これらの作用を温水機器用途において十分発揮させるには16%以上のCr含有が望まれる。溶接隙間を有する缶体部材用としては17%以上とすることが一層好ましい。Cr含有量の増加に伴い耐食性レベルが向上する反面、機械的性質や靱性が損なわれコスト増に繋がる。種々検討の結果、温水容器においては28%以下のCr含有量範囲で十分な耐食性を確保できることがわかった。機械的性質や靱性を重視する場合は25%以下のCr含有量とすることが望ましい。
Moは、Crとともに耐食性を高めるために有効な元素である。Moの耐食性改善作効果の発現にはCrが必須であり、Cr量が高い鋼ほど耐食性改善効果は大きくなる。上記Cr含有量範囲において温水環境での十分な耐食性レベルを確保するには、0.5%以上のMo含有が必要であり、0.6%以上とすることが望ましい。しかし、多量のMo含有は加工性低下やコスト増加を招く。本発明の鋼では、Siの添加等により溶接時のCr欠乏層形成が効果的に抑制されており、またMo自体は溶接時のCr欠乏層形成を抑制する作用をほとんど示さないので、Mo含有量は2.5%以下の範囲とすればよい。
Alは、本発明において重要な元素である。すなわち本発明では、AlとTiを複合添加することにより溶接時の加熱で鋼表面にAl酸化物皮膜を形成させ、Crの酸化ロスを防止する、というAlとTiの複合添加作用を利用する。Al含有量が0.02%未満では有効なAl酸化物皮膜が形成しない。一方、多量のAl添加は素材の表面品質の劣化や溶接性の低下を招く。検討の結果、Al含有量は0.6%以下とする必要があり、0.3%以下の含有量範囲で調整することが一層好ましい。
Cuは、適量の含有でフェライト系ステンレス鋼の孔食電位を上昇させるとともに、局部腐食の進行を抑える作用を呈する。しかし過剰に添加すると逆に耐食性を阻害する要因になるのでCu含有量は1%以下に制限される。溶接隙間を有する缶体用としては、Cu含有量は0.6%以下の範囲で調整することが好ましい。
Nbは、C、Nとの親和力が強く、フェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効であり、その作用を十分に得るには0.05%以上のNb含有が必要とする。しかし、過剰に添加すると溶接高温割れが生じるようになり、溶接部靱性も低下するのでNbの上限は0.5%とする。
Tiは、本発明において重要な元素である。すなわち上述のようにAlとの複合添加によってCrの酸化ロスを抑える。さらにNbと同様にC、Nを固定して粒界腐食を抑制する作用もある。これらの作用を有効に発揮させるには0.05%以上のTi含有が必要である。ただし多量のTi含有は素材の表面品質の低下や溶接性の低下を招くので、Ti含有量の上限は0.3%に規制される。
なお、耐酸化性や熱間加工性を向上させる目的でBを添加することもできる。その含有量としては、B:0.003%以下の範囲で許容される。この範囲の含有であれば、上述の元素による温水中での溶接部、特に溶接隙間における耐食性の改善効果をほとんど阻害しない。
缶体を構成するための鋼板素材を得るには、以上の組成に調整されたフェライト系ステンレス鋼を通常の手法で溶製し、板厚0.9〜1.1mm程度の冷延焼鈍鋼板を製造する。表面仕上げは酸洗肌とすればよい。この鋼板を用いて温水容器の主要部材である鏡および胴の各部材を通常の手法で作る。そして、例えば図1に示すように胴の端部と鏡の側面とを一般的なTIG溶接により接合し、温水容器を構築する。TIG溶接に際しては特に厳重な酸化防止手段を採用する必要はなく、トーチから供給されるイナートガスを利用すれば足りる。溶接部には鏡部材と胴部材の間に隙間構造が形成される。その隙間部を含めた溶接部は、特段の化学的あるいは機械的な表面除去加工(後処理)を施すことなく、そのまま温水に曝した使用に供することができる。
他方、口金を構成するための部材(メカニカル継手やねじ継手)は、例えば、上記組成に調整されたフェライト系ステンレス鋼の丸棒を熱間押し出し等によりパイプとし、それを常法により加工して作る。
口金は、例えばTIG溶接により缶体と接合する。その際、やはり酸化防止手段としてはトーチから供給されるイナートガスを利用すれば十分であり、その溶接部は、特段の後処理を施すことなく、そのまま温水に曝した使用に供することができる。
図1のような隙間構造を有する温水容器において、その隙間部分の耐食性を評価する方法として、80℃の200ppmCl-+2ppmCu2+水溶液を当該容器内に6ヶ月間循環させる腐食試験が適用できる。この試験により同時に缶体と口金の溶接部における耐食性も評価できる。この試験後において、各溶接部に侵食深さ0.1mm以上の腐食が発生しなげれば、温水容器として長期間の実用に耐えうる溶接隙間部での耐食性を有していると評価できる。
表1に示す組成のステンレス鋼を溶製し、熱間圧延にて板厚3mmの熱延板を得た。その後板厚1.0mmまで冷間圧延し、仕上焼鈍を施し、酸洗することにより、これらを缶体用の供試鋼板とした。
また、表2に示す組成のステンレス鋼(1部は表1の鋼を使用)からなる口金を用意した。これらは熱間押し出しにより製造した丸棒を素材として成形したものであり、パイプの内径13.0mm、肉厚5.0mmである。
Figure 0004717594
Figure 0004717594
表1に示した各鋼の供試鋼板を用いて、温水容器の缶体部材である胴と鏡を作製した。胴は円筒状の形状を有し、鏡はお椀状の形状を有する。胴は鋼板の端部どうしをTIG溶接して円筒状にしたものであり、その溶接部は隙間構造をもたない。
胴、上下の鏡および上下の口金をTIG溶接により接合して図1に示すような構造の温水容器を構築した。なお、胴と上下の鏡は同じ鋼No.どうしを組み合わせて缶体を構成した。この温水容器の大きさは、高さ1430mm、幅(胴部の外径)520mm、容量300L(リットル)である。胴と、上下の鏡との溶接部は、温水容器内部すなわち温水に接触する部分に隙間構造をもつ。いずれのTIG溶接に際しても、Arガスバックシールは行わず、酸化防止手段はTIG溶接のトーチから吹き出すArガスのみとした。缶体と上下の口金に使用した鋼の組み合わせは後述の表3に示してある。
各温水容器について、上下の口金に配管を接続し、80℃の試験液を常時10L/minの速度で下部の口金から導入し上部の口金から排出するようにして循環させた。試験液は山口県周南市上水で調整した200ppmCl-に酸化剤としてCu2+を2ppm添加したものを用いた。この試験液を6ヶ月間循環させた。Cu2+は温水中の残留塩素の酸化力にほぼ匹敵する能力を有しているが、時間経過により試験液中のCu2+濃度は減少することから、1週間毎に液の更新あるいはCu2+の投入を行った。Cl-はNaCl、Cu2 +はCuCl2・2H2O試薬により調整した。試験液の温度は容量300Lの試験容器内において80℃になるよう制御した。
試験液を6ヶ月循環した後の各温水容器を解体し、まず、最も腐食が問題視される胴と鏡の溶接隙間部およびその近傍について耐応力腐食割れ性を調べた。応力腐食割れが全く認められなかったものを○(良好)、認められたものを×(不良)と評価した。
耐効力腐食割れ性が○評価であった温水容器について、さらに胴と鏡の溶接隙間部における耐食性を調べた。溶接隙間部に浸食深さ0.1mm以上の腐食が認められなかったものを○(良好)、浸食深さ0.1mm以上の腐食が認められたもの×(不良)と評価した。
溶接隙間部の耐食性が○評価であった温水容器については、さらに、缶体(鏡)と口金の間の溶接部およびその近傍について耐久性を調べた。上部、下部いずれの口金取り付け部にも応力腐食割れが全く認められず、かつ浸食深さ0.1mm以上の腐食が認められなかったものを○(良好)、上部、下部の少なくとも一方に応力腐食割れが認められたか、または浸食深さ0.1mm以上の腐食が認められたものを×(不良)と評価した。
結果を表3に示す。
Figure 0004717594
表3からわるように、本発明で規定するフェライト系ステンレス鋼からなる缶体と口金とを組み合わせることにより、溶接隙間部および口金取り付け部のいずれにおいても優れた耐久性を呈し、信頼性の高い温水容器が構築できた。これに対し比較例No.4は本発明で規定するフェライト系ステンレス鋼を用いて缶体を構成したことにより胴と鏡の間の溶接隙間部では優れた耐久性が得られたものの、口金取り付け部において異材溶接の悪影響が出現し、トータルでの信頼性に劣った。比較例No.5は従来材のSUS444で缶体を構成したものであり、胴と鏡の間の溶接隙間部に板厚を貫通する腐食が生じた。比較例No.6はオーステナイト系のSUS316で缶体を構成したことにより、胴と鏡の間の溶接隙間部に応力腐食割れが生じた。
温水容器の構造を模式的に示した図。(a)は温水容器の外観を示した正面図、(b)および(c)は(a)の胴と鏡の間の破線丸印部分の構造を模式的に示した部分断面図、(d)は(a)の口金取り付け部の破線丸印部分の構造を模式的に示した部分断面図である。

Claims (5)

  1. 缶体を下記組成(2)を満たすフェライト系ステンレス鋼で構成し、かつ口金を下記組成(1)を満たすフェライト系ステンレス鋼で構成して、それらを溶接接合した温水容器。
    〔組成(1)〕
    質量%で、C:0.025%以下、Si:0.2〜%、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.01%以下、Ni:2.0%以下、Cr:16〜28%、Mo:0.5〜2.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:0〜%、Al:0.02〜0.6%、N:0.025%以下、B:0〜0.003%、残部Feおよび不可避的不純物
    〔組成(2)〕
    質量%で、C:0.025%以下、Si:0.6超え〜2%、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.01%以下、Ni:2.0%以下、Cr:17〜28%、Mo:0.5〜2.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:0〜0.6%、Al:0.02〜0.6%、N:0.025%以下、B:0〜0.003%、残部Feおよび不可避的不純物
  2. 缶体および口金をともに下記組成(2)を満たすフェライト系ステンレス鋼で構成し、それらを溶接接合した温水容器。
    〔組成(2)〕
    質量%で、C:0.025%以下、Si:0.6超え〜2%、Mn:1%以下、P:0.045%以下、S:0.01%以下、Ni:2.0%以下、Cr:17〜28%、Mo:0.5〜2.5%、Nb:0.05〜0.5%、Ti:0.05〜0.3%、Cu:0〜0.6%、Al:0.02〜0.6%、N:0.025%以下、B:0〜0.003%、残部Feおよび不可避的不純物
  3. 缶体は、ステンレス鋼板部材の溶接接合により構成され、その溶接部の温水に接触する部位に隙間構造を有する請求項1または2に記載の温水容器。
  4. 缶体を構成する前記ステンレス鋼板部材として「胴」および「鏡」を備えた請求項に記載の温水容器。
  5. 温水が接触する溶接部を「溶接まま」の状態で使用する請求項1〜4のいずれかに記載の温水容器。
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