JP5630517B2 - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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本発明は、温水器の缶体など、溶接によって酸化皮膜を有する溶接すき間構造が形成される用途において、耐食性および酸化皮膜の除去性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
電気温水器の貯湯用缶体や貯湯槽などの温水環境にさらされる用途において、フェライト系ステンレス鋼は、コストパフォーマンスが良い、応力腐食割れが発生しないなどの特性から広く普及している。これらの温水容器は、通常、TIG溶接によって複数枚のステンレス鋼板を接合して成形される。成形の際には、溶接施工のやりやすさから、溶接すき間構造を有する形状となる場合が多い。例えば、図2に示すように、電気温水器の貯湯用缶体の鏡と呼ばれるお椀状の部材と胴と呼ばれる円筒状の部材の重ね隅肉溶接によって溶接すき間構造が形成される。この溶接すき間構造は、温水容器にとって最も腐食が発生しやすい部位である。
しかも、ひとたび腐食が発生すれば、溶接すき間構造という形状が原因で腐食の進行が停止することなく継続し、穴あき、漏水にまで至ってしまう可能性が高い危険な構造である。
溶接すき間構造を解消する方策としては溶接施工方法の改善などの対策が講じられてはいるが、温水容器の機能拡充にともなう形状の複雑化も相まって、溶接すき間構造の完全な解消は達成できていないのが現状である。そのため、従来から溶接すき間構造部の耐食性を改善したフェライト系ステンレス鋼が数多く開発されている。
特許文献1には、かしめ接合を行うことで溶接すき間構造を削減し、溶接すき間部および金属すき間部の耐食性を改善した温水器缶体が開示されている。
特許文献2にはCrを22%以上とし、Cuを0.1%未満に制限した、バックガスシール無しのTIG溶接で酸化皮膜を無手入れのまま上水の温水環境に使用しても優れた耐食性を呈する温水器缶体用のフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献3には、Crを22%以上とし、Niを添加することで溶接によって形成される酸化皮膜中のCr濃度を増加させ、酸化皮膜の耐食性を向上して、溶接すき間構造であっても溶接ままの状態で上水を使用した温水環境において優れた耐食性を呈し、かつ高強度を有するフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特開2005−15816 特開2009−167439 特開2011−184732
しかし、上記した特許文献1〜3に開示されたフェライト系ステンレス鋼はいずれも溶接すき間部に溶接によって形成された酸化皮膜を有したまま使用する技術思想で設計されており、酸化皮膜を除去した状態と比較すると溶接すき間部の耐食性は低下せざるを得ない。そのため、温泉地帯や新興国など使用する水質が悪く、腐食環境の厳しい地域では溶接すき間部の耐食性が不足する場合があった。また、酸化皮膜を除去する場合においても、ステンレス鋼の組成によって、酸化皮膜の除去性に差が出ることがあった。
従来技術の抱える上記のような問題点に鑑み、本発明は、温水器缶体など、溶接によって酸化皮膜のある溶接すき間構造が形成され、溶接すき間構造内部の耐食性を向上させるために酸処理や電解処理によって酸化皮膜が除去される用途において、耐食性および酸化皮膜の除去性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明では、上記課題を解決するために、溶接すき間構造において優れた耐食性を有するフェライト系ステンレス鋼の表面に形成される酸化皮膜の組成や特性、また、酸化皮膜の除去に及ぼす表面に存在する析出物の影響について鋭意研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
(1)酸化皮膜にAl、Si、Nb、Vが濃縮するとその除去性が低下した。
(2)1μm以上の粒径のTiNが表面に分散して存在すると酸化皮膜の除去性が向上した。
(3)Niの含有量の増加にともなって、溶接すき間構造部の耐食性が向上した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]成分組成が、質量%で、C:0.001〜0.030%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超28.0%以下、Ni:0.30〜5.00%、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.30%超0.80%以下、Nb:0.05%未満、V:0.001〜0.080%、N:0.005〜0.030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、粒径1μm以上のTiNが30個/mm以上の密度で、鋼表面に分布することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
[2]成分組成が、更に、質量%で、Cu:1.0%以下、Zr:1.0%以下、W:1.0%以下、B:0.1%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする前記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
本発明によれば、温水器缶体など、溶接によって酸化皮膜のある溶接すき間構造が形成され、溶接すき間構造内部の耐食性を向上させるために酸処理や電解処理によって酸化皮膜が除去される用途において、耐食性および酸化皮膜の除去性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られる。
重ね合わせ試験片の形状を説明する図である。 電気温水器貯湯用缶体の鏡と胴との溶接部形状を説明する図である。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.成分組成について
本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は全て質量%を意味する。
C:0.001〜0.030%
Cは鋼に不可避的に含まれる元素である。Cの含有量が多いと強度が向上する。十分な強度を得るためには0.001%以上の含有が好ましいが、0.030%を超えて含有すると加工性の低下が顕著となるうえ、Cr炭化物を析出して局所的なCr欠乏による耐食性の低下を起こしやすくなる。よって、C量は0.001〜0.030%の範囲とする。好ましくは、0.002〜0.018%の範囲である。より好ましくは0.003〜0.012%の範囲である。
Si:0.03〜0.30%
Siは脱酸に有用な元素であり、その効果は0.03%以上の含有で得られる。しかし、本発明では、酸化皮膜に濃縮したSiが化学的に極めて安定なSi酸化物を形成して酸化皮膜の除去性を低下させ、0.30%を超えると除去が困難になる。よって、Si量は0.03〜0.30%の範囲とする。好ましくは、0.05〜0.15%の範囲である。
Mn:0.05〜0.30%
Mnは鋼の強度を高める効果がある。その効果は0.05%以上の含有で得られるが、0.30%を超えて含有すると腐食の起点となるMnSの析出を促進し、耐食性を低下させる。よって、Mn量は0.05〜0.30%の範囲とする。好ましくは、0.08〜0.25%の範囲である。より好ましくは、0.08〜0.20%の範囲である。
P:0.05%以下
Pは鋼に不可避的に含まれる元素であり、過剰な含有は溶接性を低下させ、粒界腐食を生じやすくさせる。よって、P量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下である。
S:0.01%以下
Sは鋼に不可避的に含まれる元素であるが、0.01%超の含有はCaSやMnSなどの水溶性硫化物の形成が促進され耐食性を低下させる。よって、S量は0.01%以下とする。好ましくは0.004%以下である。
Cr:22.0%超28.0%以下
Crはステンレス鋼の表面に形成される不動態皮膜の主要構成元素であり、ステンレス鋼の耐食性を確保するために最も重要な元素である。本発明では、溶接すき間構造内部での優れた耐食性を確保するため、Crの含有量は多いほうが好ましく、22.0%超とする。一方で、28.0%を超えて含有すると、酸化皮膜の除去性が急激に低下し、酸処理などの酸化皮膜の除去による耐食性の向上が困難となる。よって、Cr量は22.0%超28.0%以下の範囲とする。好ましくは、22.3〜26.0%の範囲である。より好ましくは22.3〜25.0%の範囲である。
Ni:0.30%〜5.00%
Niはステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、不動態皮膜が形成できず活性溶解が起こる腐食環境において腐食の進行を抑制する元素である。
本発明では、溶接すき間構造の耐食性を向上させるための重要な元素であり、酸処理による酸化皮膜の除去では、酸化皮膜とともにその直下のステンレス鋼を溶解する。ここで酸処理によってステンレス鋼が過度に溶解された場合、溶解によって表面の凹凸が激しくなり、すき間内部にさらに細かいすき間形状が形成されすき間内部のイオンの滞留が顕著となる。ステンレス鋼から溶出したCrやFeのイオンは水酸化物として沈殿し、すき間内部のpHを低下させる。その結果、すき間内部の腐食環境がより厳しくなる。
そこでpHの低下を抑える効果があるNiを適度に含有することで、酸化皮膜除去によってステンレス鋼がわずかに溶解した段階で、Niイオン溶出によるpH低下抑制作用を発現させて、ステンレス鋼の過度の溶解を抑制し、表面形状を安定させる。それによって、すき間内部と外部との溶液の流れが滑らかになり溶出したイオンのすき間外部への拡散が促進されて、腐食環境が緩和される効果があると考えられる。その効果は0.30%以上の含有で得られる。
しかし、5.00%超の含有では、オーステナイト組織の生成を促進して、組織の複相化によるマクロセル形成によって耐食性が低下する。さらに、80℃程度の高温の温水器環境で問題となる応力腐食割れに対する感受性が増大する。よって、Ni量は0.30〜5.00%の範囲とする。好ましくは、2.00超〜4.00%の範囲である。
Mo:0.2〜3.0%
Moは不動態皮膜の再不動態化を促進し、ステンレス鋼の耐食性を向上する元素である。22.0%超のCrとともに含有することによってその効果はより顕著となる。Moによる耐食性向上効果は0.2%以上の含有で得られる。しかし、含有量が3.0%を超えると強度が増加し、圧延負荷が大きくなるため製造性が低下する。よって、Mo量は0.2〜3.0%の範囲とする。好ましくは、0.6〜2.4%の範囲である。より好ましくは0.7〜2.0%の範囲である。
Al:0.01〜0.15%
Alは脱酸に有用な元素であり、その効果は0.01%以上の含有で得られる。しかし、本発明では、酸化皮膜に濃縮し酸化皮膜の除去性を低下させる元素であり、0.15%を超えると酸化皮膜の除去が困難になる。よって、Al量は0.01〜0.15%の範囲とする。好ましくは、0.015〜0.08%の範囲である。より好ましくは0.02〜0.06%の範囲である。
Ti:0.30%超0.80%以下
TiはC、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素であり、固溶したTiが不動態皮膜を強固にすることでフェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。さらに、Nと結合してTiNを生成することで酸化皮膜の除去性を向上させる元素でもある。その効果は、含有量が0.30%超で顕著となる。しかし、0.80%を超えて含有すると酸化皮膜に濃縮したTiによる酸化皮膜の除去性の低下が顕著となる。よって、Ti量は0.30超0.80%以下の範囲とする。好ましくは、0.32〜0.60%の範囲である。より好ましくは0.35〜0.55%の範囲である。
Nb:0.05%未満
Nbは、C、Nと優先的に結合してCr炭窒化物の析出による耐食性の低下を抑制する元素であるが、本発明では、フェライト系ステンレス鋼とその表面に形成された酸化皮膜との界面近傍に濃縮し酸化皮膜の除去性を低下させる元素である。よって、含有量を制限する必要があり、Nb量は0.05%未満とする。好ましくは、0.03%以下である。
V:0.001〜0.080%
Vは耐食性を向上させる元素であり、フェライト系ステンレス鋼の溶接すき間構造における耐食性を高めるためには欠かせない元素である。その効果は、0.001%以上の含有で得られる。しかし、0.080%を超える含有は、Nbとともに鋼と酸化皮膜の界面に濃縮し除去性を低下させる。よって、V量は0.001〜0.080%の範囲とする。好ましくは、0.002〜0.060%の範囲である。より好ましくは0.005〜0.050%の範囲である。
N:0.005〜0.030%
Nは、Cと同様に鋼に不可避的に含まれる元素であり、固溶強化により鋼の強度を上昇させる効果がある。また、表面にTiNを生成して酸化皮膜の除去性を向上させる元素でもある。その効果は含有量が0.005%以上で得られる。しかし、Tiと結合する量以上の多量の含有は、Cr窒化物を析出して耐食性を低下させるため、0.030%以下の含有とする。よって、N量は0.005〜0.030%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.025%の範囲である。より好ましくは0.007〜0.015%の範囲である。
鋼表面に粒径が1μm以上のTiNが30個/mm以上の密度で分布
溶接などによってフェライト系ステンレス鋼の表面に形成される酸化皮膜は、通常、酸処理または電解処理によって除去される。フェライト系ステンレス鋼の酸化皮膜はSi、Al、Crなどの酸化物で形成されている。これらの酸化物は酸や電位に対して鋼そのものよりも安定で溶解しにくい。したがって、酸処理などによって酸化皮膜が除去される場合、酸化皮膜直下のCr欠乏領域が溶解して、酸化皮膜を剥離する形で除去が進行する。このとき、酸化皮膜がステンレス鋼の表面を一様に緻密に保護していると、酸や電解液がCr欠乏領域まで到達せず、酸化皮膜の除去性が低下する。粒径が1μm以上となる粗大なTiNが鋼表面に存在した場合、TiNが酸化皮膜を突き破って存在することが多く、TiN周囲が酸化皮膜の欠陥となり、そこを通して酸や電解液が鋼そのものまで浸透し除去性が向上する。よって、表面に粒径が1μm以上のTiNが30個/mm以上の密度で分布とした。
更に、耐食性向上、加工性改善の観点からCu、Zr、W、Bの中から選らばれる1種以上を選択元素として下記の範囲で含有してもよい。
Cu:1.0%以下
Cuはステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、その効果を得るには0.01%以上の含有が好ましい。しかし、過剰な含有は不動態維持電流を増加させて不動態皮膜を不安定とし、耐食性を低下させる作用がある。よって、Cuを含有する場合、その量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6%以下である。
Zr:1.0%以下
ZrはC、Nと結合して、鋭敏化を抑制する効果がある。その効果を得るには0.01%以上の含有が好ましい。しかし、過剰な含有は加工性を低下させるうえ、非常に高価な元素であるためコストの増大を招く。よって、Zrを含有する場合、その量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6%以下である。さらに好ましくは0.2%以下である。
W:1.0%以下
WはMoと同様に耐食性を向上する効果がある。その効果を得るには0.01%以上の含有が好ましい。しかし、過剰の含有は強度を上昇させ、製造性を低下させる。よって、Wを含有する場合は、その量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6%以下である。さらに好ましくは0.2%以下である。
B:0.1%以下
Bは二次加工脆性を改善する元素であり、その効果を得るには、0.0001%以上の含有が好ましい。しかし、過剰の含有は、固溶強化による延性低下を引き起こす。よってBを含有する場合は、その量は0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以下である。さらに好ましくは0.005%以下である。
2.製造方法について
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
以下に本発明のフェライト系ステンレス鋼の好適な製造方法を述べる。
上記化学組成のステンレス鋼を、1100℃〜1300℃に加熱後、仕上温度を700〜1000℃、巻取温度を500〜900℃として熱間圧延を施し、板厚を2.0〜5.0mmとする。こうして作製した熱間圧延鋼帯を、800〜1000℃の温度で焼鈍し酸洗を行い、次に、冷間圧延を行い、800〜900℃の温度で30秒以上の冷延板焼鈍を行い、酸洗を行う。熱延板焼鈍または冷延板焼鈍の後の酸洗では、酸洗減量を0.5g/m以上とすることで、表面に30個/mm以上のTiNを現出でき、酸化皮膜の除去性を向上させることができる。酸洗方法には、硫酸酸洗、硝酸酸洗、硝弗酸酸洗などの酸浸漬、および/または、中性塩電解酸洗、硝塩酸電解酸洗などの電解酸洗が含まれる。これらの酸洗方法を組み合わせてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
表1に示すステンレス鋼を真空溶製し、1200℃に加熱したのち、板厚4mmまで熱間圧延し、850〜950℃の範囲で焼鈍し、酸洗により熱延スケールを除去した。さらに、板厚0.8mmまで冷間圧延し、850℃〜900℃の範囲で1min以上焼鈍した。その後、硝酸15mass%−塩酸10mass%の混合酸中で電解酸洗を行い、焼鈍により生成した酸化皮膜を完全に除去して、供試材とした。電解酸洗時の電気量は、X8以外は80C/dm、X8は40C/dmとした。酸洗減量は、X8以外は0.6〜1.1g/m、X8は0.4g/mであった。
Figure 0005630517
作製した供試材の表面をSEMにより観察し、表面に存在するTiNの分布密度を求めた。SEMにより供試材表面の任意の100μm×100μmの範囲を10視野観察し、表面の析出物を観察した。観察された析出物のうち、立方晶に近い形状の析出物をTiNとみなした。析出物の粒径の測定方法は、SEMによって観察されたTiNの長径と短径をそれぞれ測定し、その平均を粒径とした。10視野について粒径が1μm以上のTiNの個数を数えて平均し、1mmあたりのTiNの密度を算出した。算出した値を表2に示す。
作製した供試材を50mm×40mmの大きさに切断し、2枚を重ね合わせ、50mmの一辺を端面から重ね隅肉溶接により接合し、溶接すき間構造をもった試験片を作製した。この重ね隅肉溶接により作製した2枚重ねの溶接試験片を以後、重ね合わせ試験片と称する。重ね合わせ試験片の形状を図1に示す。溶接は溶接速度60cm/min、溶接電流90Aの条件でTIG溶接によって行った。シールドガスは100%Arとし、ガス流量は20L/minとした。
重ね合わせ試験片を解体して観察したところ、重ね合わせの外面、内面のいずれも熱影響部にテンパーカラーと呼ばれる酸化皮膜が形成されていた。この酸化皮膜の除去性を評価するため、重ね合わせ試験片に対して、50℃に加熱した5%弗酸−7%硝酸の混合酸に20s浸漬し、試験片を解体して、重ね合わせの外面および内面における熱影響部のテンパーカラーの有無を目視により評価した。明らかにテンパーカラー残りが認められたものを有、明確にはテンパーカラーが認められなかったものを無として、評価結果を表2に示す。
本発明例であるNo.1〜19および比較例であるNo.21〜23ではテンパーカラー残りは認められなかった。比較例であるNo.20、No.24〜27ではテンパーカラー残りが認められた。
重ね合わせ試験片を、50℃に加熱した5%弗酸−7%硝酸の混合酸に20s浸漬した後、80℃の5%NaCl溶液に1か月浸漬する腐食試験を行った。腐食試験後、試験片を解体して、10%硝酸を用いて錆を除去し、重ね合わせの内面に発生した腐食のうち侵食深さが深いと考えられる10箇所を肉眼観察で選定し、侵食深さをレーザー顕微鏡により測定し、10点の侵食深さを平均した。測定した侵食深さを表2に示す。
Figure 0005630517
本発明例であるNo.1〜No.19では、いずれも侵食深さが200μm以下であり、比較例と比較して侵食深さが浅く、溶接により表面が酸化された溶接すき間構造においても優れた耐食性を示した。一方、テンパーカラー残りのあった比較例No.20、比較例No.24〜27、および、Cr、Ni、Moのいずれかが本発明の下限以下である比較例No.21〜23は、重ね合わせ内面の侵食深さが200μm以上と深く、耐食性が不十分であった。なお、比較例No.27は発明鋼X8を使用したが、酸洗減量が少なかったので表面に存在する粒径1μm以上となる粗大なTiNが少なく、溶接時に生成した酸化皮膜の除去が十分でなく耐食性が劣った。
本発明によれば、温水器缶体など、溶接によって酸化皮膜のある溶接すき間構造が形成され、溶接すき間構造内部の耐食性を向上させるために酸処理や電解処理によって酸化皮膜が除去される用途において好適な耐食性および酸化皮膜の除去性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られる。

Claims (2)

  1. 成分組成が、質量%で、C:0.001〜0.030%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.05〜0.30%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:22.0%超28.0%以下、Ni:0.30〜5.00%、Mo:0.2〜3.0%、Al:0.01〜0.15%、Ti:0.30%超0.80%以下、Nb:0.05%未満、V:0.001〜0.080%、N:0.005〜0.030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、粒径1μm以上のTiNが30個/mm以上の密度で、鋼表面に分布することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  2. 成分組成が、更に、質量%で、Cu:1.0%以下、Zr:1.0%以下、W:1.0%以下、B:0.1%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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