JP5984213B2 - 溶接性に優れる被覆管用オーステナイト系Fe−Ni−Cr合金 - Google Patents
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Description
なお、特許文献1には、塩化物の存在する高温乾食環境での耐食性を改善した材料として、Mo,WあるいはVを所定量添加したFe−Ni−Cr合金が開示されている。
上記知見に基く本発明は、C:0.005〜0.03mass%、Si:0.15〜1.00mass%、P:0.030mass%以下、S:0.0020mass%以下、Mn:2.5mass%以下、Ni:18〜40mass%、Cr:18〜30mass%、Mo:0.3〜4.0mass%、Co:0.09〜4.0mass%、Cu:0.03〜0.30mass%およびAl:0.03〜0.45mass%を含有し、さらに、Ti,NbおよびVのうちから選ばれる1種以上をTi:0.004〜0.50mass%、Nb:0.001〜0.50mass%およびV:0.001〜0.50mass%の範囲、かつ、それらのうちの1種以上を0.10〜0.50mass%の範囲で含有し、さらに、上記成分が下記(1)式;
γs=1.5Ni+Mn+1.5Co+4.6Cu−6.9Cr−16.3Mo−27.6Si−3.3Al≧−180 ・・・(1)
および(2)式;
(Ti+Nb+V)/C≧10 ・・・(2)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する被覆管用オーステナイト系Fe−Ni−Cr合金である。ただし、上記(1)式および(2)式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。
Lmax=78P+103S+76B+4.5Sn+42Pb≦2.5 ・・・(3)
を満たして含有することを特徴とする。ただし、上記(3)式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。
シーズヒーターが電気給湯器のような湿潤環境下で使用される場合、使用を開始した当初から著しい腐食が進行することがある。発明者らは、この問題が生じた被覆管を調査したところ、溶接部、即ち、溶接金属や熱影響部に著しい腐食が生じていることが確認された。さらに、被覆管の断面組織を観察したところ、腐食が生じた溶接部には、σ相やCr炭化物の第二相が析出していることが確認された。
σ相は、金属間化合物の1種であり、高温で高Crフェライト相の変質により生じ、主として粒界に析出して著しい硬化や脆化をもたらす。したがって、オーステナイト単相であれば、σ相の析出は起こらない。Fe−Ni−Cr合金に添加されているCrやMo,Si,Al等は、母材の耐食性を向上させる有用な元素であるが、フェライト相を安定化する元素であるため、多量に添加すると、溶接部におけるσ相の析出を促進する。これに対して、CやN,Mn,Ni,Co等は、オーステナイト相を安定化する元素であるため、適正量の添加によりσ相の析出を抑制することができる。したがって、CrやMoなどの元素の添加量は、母材の耐食性を確保するだけでなく、溶接部にσ相が析出しない、即ち、オーステナイト相の安定性が十分に確保できる範囲に制御する必要がある。
γs=1.5Ni+Mn+1.5Co+4.6Cu−6.9Cr−16.3Mo−27.6Si−3.3Al
(ただし、上記(1)式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。)
よって、本発明の被覆管用材料における成分組成は、σ相の析出を防止する観点から、上記パラメータγsの値が−180以上となるよう制御することとした。
Cr炭化物は、(Fe,Cr)23C6を主体とするものであり、その構成元素であるC,Crの含有量が高くなると、また、Cの固溶限を減少させるNiの含有量が高くなると、析出し易くなる。一方、TiやNb,V等の元素は、Crより優先的にCと結合して固着し、炭化物あるいは炭窒化物を形成する。そのため、これらの元素の添加は、Cr炭化物の形成を抑止する上では有効である。
しかし、本発明が対象としている被覆管用Fe−Ni−Cr合金の溶接部におけるCr炭化物の析出に対しては、上記CやCr,Ti,Nb,V等の元素やその他の元素がどのように影響するのかは、まだ十分に明らかとはなっていない。したがって、母材が被覆管としての耐食性を備えた成分系において、その影響を明らかにする必要がある。
以上の結果から、本発明においては、Cr炭化物の粒界析出を抑制する観点から、(Ti+Nb+V)/Cの値を10以上とする。
・タイプI:溶接部に発生した微小割れに起因する加工割れ
・タイプII:溶接部の表面に付着した異物に起因した凹凸が起点となる加工割れ
したがって、被覆管の曲げ加工時における割れを防止するためには、溶接部に発生した微小割れや、溶接部表面に付着した異物による凹凸等の欠陥を、被覆管製造工程における研摩で完全に除去してやる必要がある。しかし、研摩で完全に除去することは、生産性を大きく低下することになるため、欠陥はできる限り軽減かつ低減してやるのが望ましい。
そこで、上記2つのタイプの割れ防止策について、以下に検討した。
溶接部に発生するタイプIの微小割れは、溶接金属が凝固する際、低融点化合物を形成して延性の低下を招く元素、例えば、P,S,B,Sn,Pbなどの元素が関与している可能性が高いと考えられる。というのは、P,SはNiと低融点化合物を形成し、BはNi、Nb等と低融点の共晶生成物を形成し、SnはCu等と低融点化合物を形成し、Pbは単独あるいはNiと低融点化合物を形成し、高温における延性を低下させるため、溶接時に割れを生じさせると考えられるからである。
Lmax=78P+103S+76B+4.5Sn+42Pb
(ただし、上記式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。)
と極めてよい相関があり、図5に示したように、Lmaxの値を2.5以下に制御することによって、溶接部(溶接金属)に発生する最大割れ長さを0.5mm以下に抑制できることが明らかとなった。
次に、発明者らは、溶接部(溶接金属)表面の異物付着に起因する割れ防止策を検討するため、表面に付着している異物の成分分析を行った。その結果、上記異物は、Al,Ti,Si,Ca,Mg等の酸化物や窒化物を主体とするもので、母材中の非金属介在物に近い成分組成のものであることがわかった。そして、この結果から、溶接部表面の異物は、母材中に存在する非金属介在物に由来したものであることが推測された。すなわち、溶接時に母材金属は溶融するが、母材中に存在する非金属介在物は、一般に高融点であるため、溶融せずに溶融金属の表面に浮上して凝集し、その後、凝固する際、そのまま表面に残存して凹凸を形成する。あるいは、母材中の非金属介在物が、溶接時に新たに生成される介在物の核となって、さらに大きな介在物あるいはクラスターを形成し、凹凸を形成すると考えられるそして、このような凹凸が溶接部の表面に多数存在すると、曲げ加工時に応力集中が起き、割れの起点となるものと考えられる。
C:0.005〜0.03mass%
Cは、オーステナイト相を安定化する元素であるため、0.005mass%以上含有させる必要がある。しかし、Cを過剰に添加すると、溶接部の粒界にCr炭化物が析出してその周囲にCr欠乏層が生じ、耐食性の低下を引き起こすため、上限は0.03mass%とする。好ましくは0.01〜0.025mass%の範囲である。
Siは、溶接金属の溶け込み性を向上する効果がある。また、脱酸材としての作用もあるので、0.15mass%以上含有させる。しかし、Siの多量の添加は、オーステナイト相の安定性を低下させ、σ相の析出を促進する。また、介在物を形成し、曲げ加工時に溶接部の割れを引き起こす原因ともなるため、上限は1.00mass%とする。好ましくは0.15〜0.8mass%の範囲である。
Mnは、オーステナイト相を安定化する元素であり、また、脱酸元素としても有用な元素である。しかし、過剰の添加は、MnSを形成して耐食性を低下させるため、2.5mass%を上限とする。好ましくは1.0mass%以下である。なお、相安定性が確保できる場合には、さらに低減し、0.5mass%以下とするのがより好ましい。
Pは、溶接時に粒界に偏析し、粒界部の耐食性を低下させる元素である。また、Ni等と低融点の化合物を形成し、溶接部の割れを促進するため、0.030mass%以下に制限する。好ましくは0.025mass%以下である。
Sは、溶接金属の溶け込み性を改善する効果があるが、MnSを形成し、耐食性に悪影響を及ぼす元素でもある。また、粒界に偏析してNiと低融点化合物を形成し、溶接時の割れを促進するので、上限は0.0020mass%とする。好ましくは0.0015mass%以下である。
Niは、オーステナイト相を安定化する元素であるため、18mass%以上含有させる必要がある。しかし、多量の添加は、熱間強度の上昇による製造性の低下や原料コストの上昇を招く。また、含有量が多くなると、強固な酸化スケールを生成するようになり、酸洗性を低下させる。よって、Niの上限は40mass%とする。好ましくは20〜38mass%の範囲である。
Crは、被覆管の耐食性を向上させる重要な元素であり、18mass%以上の含有を必要とする。しかし、Cr添加量が多くなると、オーステナイト相の安定性が低下し、溶接部にσ相やCr炭化物が析出し易くなり、溶接部の耐食性の低下を引き起こすため、上限は30mass%とする。好ましくは20〜25mass%の範囲である。
Moは、湿潤環境下や高温大気環境下での母材の耐食性を向上する効果があるので、0.3mass%以上含有させる。しかし、過剰の添加は、オーステナイト相の安定性を低下させ、溶接部におけるσ相の析出を促進するため、上限は4.0mass%とする。好ましくは0.2〜2.8mass%の範囲である。
Coは、CやN,Niと同様、オーステナイト相の安定化に有効な元素である。しかし、CやNは、溶接性に悪影響を及ぼすため、多量の添加が制限されることから、Coを添加することによって相安定性を確保するのが望ましい。しかし、多量の添加は原料コストの上昇を招くので、上限を4.0mass%とする。好ましくは2.0mass%以下である。
Cuは、オーステナイト相を安定化する元素であり、特に溶接部の相安定性の向上に有効であるため、0.03mass%以上含有させる。しかし、Cuは、溶接時に割れを生じさせる有害元素でもあり、特にSnと共存すると、その悪影響は顕著となる。そこで、本発明においては、Cuの上限を0.30mass%とする。好ましくは0.20mass%以下である。
Alは、脱酸剤として、また、耐食性向上のために添加される元素あり、それらの効果を得るためには0.03mass%以上の添加が必要である。しかし、過剰の添加は、オーステナイト相の安定性を低下させ、また、母材中の介在物を増加させ、溶接部の曲げ加工性を害するようになるので、上限は0.45mass%とする。好ましくは0.35mass%以下である。
本発明のFe−Ni−Cr合金は、Ni,Mn,Co,Cu,Cr,Mo,SiおよびAlが前述した組成範囲を満たすことに加えてさらに、オーステナイト相の安定性を表わすパラメータγsが−180以上となるよう含有していることが必要である。図2に示したように、γsが−180未満となると、オーステナイト相の安定性が低下し、溶接部にσ相が析出するようになり、耐食性を低下するからである。したがって、溶接時の加熱によってもσ相が析出しないよう、γs≧−180の範囲に制限する必要がある。好ましいγsは−155以上である。
Ti:0.10〜0.50mass%以下
Tiは、C,Nを炭窒化物として固着し、Cr炭化物の析出を抑止することによって、溶接部の耐食性低下を効果的に防止する元素であり、斯かる効果を得るためには、少なくとも0.10mass%の添加が必要である。しかし、過剰の添加は、母材中の介在物の総量を増加し、ひいては、被覆管の表面欠陥や溶接部表面に付着した異物の個数を増加し、曲げ加工性を害するようになるので、上限は0.50mass%とする。好ましくは0.35mass%以下である。
Nbは、Tiと同様、Cを固着し、Cr炭化物の析出を抑止することで、溶接部の耐食性低下を効果的に防止する元素であり、斯かる効果を得るためには、少なくとも0.10mass%の添加が必要である。しかし、過剰の添加は、CやBと低融点化合物を形成し、溶接時の割れを助長するようになるため、上限は0.50mass%とする。好ましくは0.30mass%以下である。
Vは、Ti,Nbと同様、Crより優先的に炭化物を形成して、Cr炭化物の析出を抑止する効果がある。斯かる効果を得るためには、少なくとも0.10mass%の添加が必要である。しかし、0.50mass%を超える添加は、上記効果が飽和し、添加量に見合う効果が得られなくなるので、上限は0.50mass%とする。好ましくは0.30mass%以下である。
上記のように、Ti,NbおよびVは、いずれも溶接時の加熱による溶接部粒界へのCr炭化物の析出を抑止し、耐食性の低下を防止する効果がある。斯かる効果を得るためには、Ti,NbおよびVそれぞれの添加量を上述した範囲に制御した上で、さらに、図4に示したように、それらの元素の合計含有量とCとの比(Ti+Nb+V)/Cを10以上として含有させる必要がある。好ましくは12以上である。
B:0.0020mass%以下
Bは、C,Nbと低融点化合物を形成して溶接部の延性を低下し、割れの起点となるため、0.0020mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.0015mass%以下である。
Snは、積極的に添加する元素ではなく、Snめっきや半田付けを施した鋼板を含むスクラップ等から不可避的に混入してくる不純物元素であり、単独であるいはCuと低融点化合物を形成し、溶接時における割れを助長する有害な元素である。よって、Snは0.050mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.030mass%以下である。
Pbは、積極的に添加する元素ではなく、Pbを含む快切鋼や半田が施された鋼板を含むスクラップ等から不可避的に混入してくる不純物元素である。このPbは、溶接時に単独であるいはNi等と低融点の化合物を形成し、溶接部の割れを引き起こす原因となるので、0.0050mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.0030mass%以下である。
Caは、脱酸剤として、また、Sを固定し、熱間加工性や耐食性を改善するために添加される元素である。しかし、過剰の添加は、母材中に含まれるCa系介在物量を増加させ、溶接部表面の異物付着を増加させる原因となるため、添加する場合は0.0010mass%以下に制限するのが好ましい。
Mgは、溶接部に非金属介在物を形成し、溶接部の加工性を低下させる元素であるので、0.050mass%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは0.030mass%以下である。
Nは、オーステナイト相を安定化する元素であるため、0.003mass%以上含有させるのが好ましい。しかし、Nは、Ti,Al等と窒化物を形成する元素であり、多量の添加は、フリーなTiやAlを低減したり、有害な介在物を増大したりするので、上限は0.02mass%とするのが好ましい。より好ましくは0.010mass%以下である。
Oは、溶接金属の溶け込み性の改善に有効な元素である。しかし、酸化物系介在物を形成して母材中に含まれる介在物量を増加させ、溶接部表面の異物付着量を増大させ、加工時に溶接部の割れを引き起こす原因となるため、できる限り低減するのが望ましい。よって、本発明では、Oは0.0050mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.0030mass%以下である。
P,S,B,SnおよびPbは、NiやC,Mn,Nb等と低融点化合物を形成し、溶接部の割れを引き起こすため、前述した範囲内で、できる限り低減することが好ましい。さらに、これらの元素は、お互いに低融点化合物を形成して溶接時の割れを促進するため、図5に示したように、一括して制御するのが望ましい。そこで、本発明では、先述した各成分の影響度を考慮した下記式で表されるパラメータLmax;
Lmax=78P+103S+76B+4.5Sn+42Pb
を導入し、このLmaxが2.5mass%以下となるよう、上記各元素の含有量を制御するのが望ましい。より好ましいLmaxは2.0mass%以下である。
上記冷延焼鈍板の母材の耐食性を評価するため、板厚1mm×幅25mm×長さ50mmの試験片を採取し、ASTM G48 Method Cに準拠して25℃の6mass%FeCl3+1mass%HCl溶液に48hr浸漬する腐食試験を行った。上記腐食試験後、試験片表面に発生した孔食深さを、非接触段差測定機(ハイソメット;ユニオン光学(株)製)を用いて測定し、0.025mm以上を耐食性劣(×)、0.025mm未満を耐食性良(○)と評価した。
板厚1.0mmの冷延焼鈍板に、TIG溶接(溶接電流100A、溶接速度600mm/min)でビードオンプレート溶接を施した試験材を作製し、その試験材から溶接部を含む試料を切り出し、溶接部の熱影響部断面をKOHでエッチングし、光学顕微鏡を用いて組織観察することでσ相の析出有無を調査した。その結果、σ相が確認されたものを相安定性劣(×)、σ相が確認されなかったものを相安定性良(○)と評価した。
上記のビードオンプレート溶接した試験材から、溶接部を幅中央に含む、板厚1mm×幅25mm×長さ50mmの試料を切り出し、溶接部の耐食性を評価した。上記耐食性は、上記試料を、ASTM G48 Method Cに準拠して、25℃の6mass%FeCl3+1mass%HCl溶液に48hr浸漬する腐食試験をした後、溶接金属表面に発生した孔食深さを、非接触段差測定機(ハイソメット;ユニオン光学(株)製)を用いて測定し、その結果、孔食の最大深さが0.025mm以上のものを耐食性劣(×)、0.025mm未満を耐食性良(○)と評価した。
上記のビードオンプレート溶接した試験材から、溶接部を含む試料を切り出し、溶接部断面をJIS G0571に規定されたシュウ酸でエッチングし、熱影響部の粒界が溝状にエッチングされた割合(Cr炭化物による粒界被覆率(%))を測定し、60%以上を×、60%未満を○と評価した。
上記のビードオンプレート溶接した試験材から、溶接部を長さ方向1/2の位置に幅方向に平行となるように含む、板厚1mm×幅30mm×長さ100mmの試料を採取し、23mass%H2SO4+1.2mass%HCl+1mass%FeCl3+1mass%CuCl2の沸騰溶液中に16時間連続して浸漬した後、溶接部が外側の頂点になるようにして溶接方向と平行方向に曲げ半径R8mmの曲げ試験を行い、割れの発生の有無を調査し、割れが生じたものをCr炭化物が析出して鋭敏化したもの(×)、割れが生じなかったものをCr炭化物の析出がなく、鋭敏化なしのもの(○)と評価した。
板厚3mmの熱延板を用いて、バレストレイン試験を実施し、溶接部の割れ性を評価した。上記バレストレイン試験は、溶接電流120A、溶接速度120mm/minの条件でTIG溶接しながら、曲げ半径R300mmで0.5%の曲げ歪を溶接方向と平行方向に付与した。そして、溶接金属の凝固点直下で発生した割れの最大長さを測定し、溶接部の割れ性を評価した。
上記バレストレイン試験で発生した割れが、曲げ加工によりどの程度まで拡大するかを調べるため、バレストレイン試験で発生した割れを残したまま、溶接面とは反対の面を放電加工で減厚して1mmの板厚とし、割れが発生した部分が頂点となるようにして溶接方向と平行方向に曲げ半径R8mmの曲げ試験を行い、再度、割れ長さを測定し、最大割れ長さが0.4mm未満のものを○、0.4mm以上0.5mm未満のものを△、0.5mm以上のものを×と判定した。
板厚1.0mmの焼鈍板に、TIG溶接(溶接電流40A、溶接速度900mm/min)でビードオンプレート溶接を施し、溶接条件が安定した長さ200mmの溶接部の表面を、光学顕微鏡を用いて100倍で50視野(延べ測定面積40mm2)観察し、表面に付着した30μm以上の大きさの異物の個数を測定した。
上記ビードオンプレート試験した試験材から溶接部を幅中央に含む板厚1mm×幅30mm×長さ100mmの試料を採取し、溶接面側を外側にして溶接方向と直角方向に、曲げ半径R8mmの曲げ試験を各3回実施し、曲げ試験後、溶接部に発生した割れの有無を調査した。また、試料採取後にSiC研摩紙(#120)で、溶接部の溶接金属表面が平らになるよう研摩したものを用意し、同様の方法で試験を行い、割れ発生有無を調査した。その結果、いずれの条件においても割れの発生が認められなかったものを○、研摩無しでは割れが発生したが、研摩後では割れが発生しなかったものを△、いずれの条件においても割れが発生したものを×と評価した。
ビードオンプレート溶接した試験材の中で、溶接の影響を受けていない母材の任意の断面を200倍の光学顕微鏡で観察し、400μm×500μmの面積中に存在する30μm以上の介在物個数を測定し、上記測定個数の50視野(延べ測定面積10mm2)の個数を測定した。
Claims (3)
- C:0.005〜0.03mass%、Si:0.15〜1.00mass%、P:0.030mass%以下、S:0.0020mass%以下、Mn:2.5mass%以下、Ni:18〜40mass%、Cr:18〜30mass%、Mo:0.3〜4.0mass%、Co:0.09〜4.0mass%、Cu:0.03〜0.30mass%およびAl:0.03〜0.45mass%を含有し、さらに、Ti,NbおよびVのうちから選ばれる1種以上をTi:0.004〜0.50mass%、Nb:0.001〜0.50mass%およびV:0.001〜0.50mass%の範囲、かつ、それらのうちの1種以上を0.10〜0.50mass%の範囲で含有し、さらに、上記成分が下記(1)式および(2)式を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する被覆管用オーステナイト系Fe−Ni−Cr合金。
記
γs=1.5Ni+Mn+1.5Co+4.6Cu−6.9Cr−16.3Mo−27.6Si−3.3Al≧−180 ・・・(1)
(Ti+Nb+V)/C≧10 ・・・(2)
(ただし、上記(1)式および(2)式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。) - P,S,B,SnおよびPbを、B:0.0020mass%以下、Sn:0.050mass%以下およびPb:0.0050mass%以下、かつ、下記(3)式を満たして含有することを特徴とする請求項1に記載の被覆管用オーステナイト系Fe−Ni−Cr合金。
記
Lmax=78P+103S+76B+4.5Sn+42Pb≦2.5 ・・・(3)
(ただし、上記(3)式中の元素記号は、その元素の含有量(mass%)を表わす。) - Ca,Mg,NおよびOの含有量がそれぞれCa:0.0015mass%以下、Mg:0.050mass%以下、N:0.02mass%以下およびO:0.0050mass%以下であり、かつ、任意の断面における30μm以上の介在物個数が30個/10mm 2 以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆管用オーステナイト系Fe−Ni−Cr合金。
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