JP6920420B2 - オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6920420B2
JP6920420B2 JP2019510035A JP2019510035A JP6920420B2 JP 6920420 B2 JP6920420 B2 JP 6920420B2 JP 2019510035 A JP2019510035 A JP 2019510035A JP 2019510035 A JP2019510035 A JP 2019510035A JP 6920420 B2 JP6920420 B2 JP 6920420B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
less
austenitic stainless
stainless steel
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019510035A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2018181570A1 (ja
Inventor
佳奈 浄▲徳▼
佳奈 浄▲徳▼
雄介 及川
雄介 及川
平田 弘征
弘征 平田
純平 犬塚
純平 犬塚
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Stainless Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Stainless Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Stainless Steel Corp filed Critical Nippon Steel Stainless Steel Corp
Publication of JPWO2018181570A1 publication Critical patent/JPWO2018181570A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6920420B2 publication Critical patent/JP6920420B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D8/00Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment
    • C21D8/02Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of plates or strips
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C38/00Ferrous alloys, e.g. steel alloys
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C38/00Ferrous alloys, e.g. steel alloys
    • C22C38/18Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium
    • C22C38/40Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel
    • C22C38/58Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with more than 1.5% by weight of manganese

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法に関するものである。
石油精製プラントでは、近年の硫黄排出規制の強化に伴い、水素化脱硫装置、または、水素化分解装置の導入が進められている。水素化脱硫装置は、重油に水素を吹き込んで硫黄分を除去する装置である。また、水素化分解装置は、水素化脱硫装置と同様に、重油に水素を吹き込んで硫黄分を除去するとともに、重油を分解し軽質油を製造する装置である。これらの装置は、高温高圧下で稼働するため、その使用材料に、オーステナイト系ステンレス鋼が多く使用されている。
前述した装置に使用される材料における大きな課題の一つとして、反応生成物であるポリチオン酸(H)による「応力腐食割れ」(以下、SCC(Stress Corrosion Cracking)と表記する。)の改善がある。SCCが発生する機構は、以下のメカニズムが一般的に知られている。具体的には、溶接時の入熱、または高温長時間運転時の加熱によって、ステンレス鋼の結晶粒界にCr炭化物が析出し、その近傍でCrが欠乏するCr欠乏層が形成され、Cr欠乏層において割れが伝播していくというものである。
したがって、前述したSCCの抑制対策としては、Cr炭化物の析出を極力抑制しうる元素が含有された素材を使用することが有効である。例えば、Ti、または、Nbのような、Crと比較し炭化物を形成しやすいC固定化元素を含有させた、所謂安定型オーステナイト系ステンレス鋼を素材として使用することが適当である。具体的には、Tiを含有するSUS321、Nbを含有するSUS347といった鋼種である(JIS規格に準拠する)。
しかしながら、上述の安定型オーステナイト系ステンレス鋼であっても、溶接の際に、入熱の影響を受ける溶接熱影響部(以下、HAZ(Heat Affected Zone)と表記する。)で、比較的軽度のCr欠乏層を生じる。そして、ポリチオン酸によるSCCの場合、上述した比較的軽度なCr欠乏層であっても割れを生じうる。
この課題に対して、例えば特許文献1では、Cを0.03%以下に低減し、Nを0.08〜0.40%、Nbを0.05〜0.30%添加し、Nb/C≧4、N/C≧5とすることにより、耐粒界腐食性、耐粒界SCC性を向上させたステンレス鋼が開示されている。
また、非特許文献1では、Cを0.02%以下に低減した上で、0.1%未満の適正なNを含有させ、さらに、C固定化元素としては適正な量のNbとして、0.2〜0.5%かつNb/C≧15を添加したSUS347系のオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。このオーステナイト系ステンレス鋼は、高温強度を確保しつつも、良好な耐ポリチオン酸SCC性を有している。
特許文献2では、Cの含有量を低減した上で、適正なNを含有させ、さらに、C固定化元素を含有させたオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。このオーステナイト系ステンレス鋼は、耐ポリチオン酸SCC性を確保しつつ、PおよびSといった特定の不純物元素を所定以下に低減することで、溶接割れである、HAZの耐液化割れ性、および長時間時効後の耐脆化割れ性に優れていることを特徴としている。
特開昭50−67215号公報 国際公開第2009/044802号
工藤赳夫ら 住友金属、38(1986)、p.190 R. LOMBRYら Colloque de Metallurgie Vol.24th (1981) p.121
ところで、脱硫装置に用いる素材の中で、反応器またはインターナル等に、例えば45mmといった厚鋼板が用いられる。厚鋼板を製造する場合、鋳片または鋼片(以下、総称して「鋳片」ということがある。)から最終製品までの圧下率が限定されるため、薄鋼板またはシームレス鋼管を製造する際に用いられるような圧下率の高い加工を施すことはできない。その結果、必ずしも再結晶に十分なレベルの加工度を確保できるとは限らない。
特許文献1および2、ならびに非特許文献1では、上記のような厚鋼板特有の問題について、十分に検討がなされているとは言えない。
また、脱硫装置に用いる素材として、これら高耐食オーステナイト系ステンレス鋼を溶接して使用する際には、溶接部に亀裂を生じる溶接割れと呼ばれる現象が発生することがあり、特に高温割れの発生が懸念される。
高温割れには、液化割れ、延性低下割れ等がある。そして、液化割れは、溶接時の入熱により、粒内に析出していたNbC等の炭化物が固溶し、C固定化元素もしくはC、またはP、S等の粒界偏析傾向の高い元素が粒界に偏析し、融点の低い化合物が形成することに起因する。その結果、2パス目以降の溶接熱サイクルによって、粒界が液化して割れが発生する現象が液化割れである。
一方、延性低下割れは、溶接時の高温HAZにおいて、溶接熱サイクル中、および高温での使用中にP、S等の粒界脆化元素の偏析が生じることに起因する。この結果、外部応力、または加熱による熱膨張収縮で生じる残留応力が発生した際に、NbC等が多量に析出した粒内よりも、脆化した粒界に応力集中が生じる。そして、粒界を起点として割れが発生する。この現象が延性低下割れである。
本発明者らがHAZで発生する割れについて検討を行った結果、割れの形態は、液化割れ、または長時間時効後の脆化割れではなく、前述した延性低下割れであることがわかった。特許文献1および2、ならびに非特許文献1では、延性低下割れについては一切検討がなされていない。
本発明は耐ポリチオン酸SCC性に優れ、かつ溶接時の割れを抑制し、良好な耐溶接割れ性を有する、オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その要旨は、下記に示すオーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法にある。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.04%未満、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.03%以下、
N:0.02〜0.35%、
O:0.03%以下、
Nb:0.05〜0.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Ni:6.0〜30.0%、
Al:0.05%以下、
Ti:0〜0.4%、
V:0〜0.4%、
Ta:0〜0.2%、
Hf:0〜0.2%、
Zr:0〜0.2%、
Cu:0〜3.0%、
Mo:0〜5.0%、
W:0〜5.0%、
Co:0〜1.0%、
B:0〜0.012%、
Ca:0〜0.02%、
Mg:0〜0.02%、および、
REM:0〜0.1%、を含有し、
残部:Feおよび不純物、
であり、圧延方向に垂直な断面において、最大結晶粒径が0.3mm未満である、板厚6.0mm以上のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
(2)前記鋼板の化学組成が、さらに、質量%で、
Ti:0.005〜0.4%、
V:0.005〜0.4%、
Ta:0.003〜0.2%、
Hf:0.003〜0.2%、
Zr:0.003〜0.2%、
Cu:0.02〜3.0%、
Mo:0.05〜5.0%、
W:0.05〜5.0%、
Co:0.03〜1.0%、
B:0.0001〜0.012%、
Ca:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.02%、および、
REM:0.001〜0.1%、
から選択される1種以上を含有する、(1)に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
(3)石油脱硫装置に使用される、(1)または(2)に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
(4)前記化学組成を有するオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
(a)(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(b)前記鋼板を1100〜1250℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延し、
当該工程において、加熱後、二次熱間圧延終了までの間に850〜1100℃の温度域で3分以上保持する工程と、
(c)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
(5)前記化学組成を有するオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
(A)(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(B)前記鋼板を1100〜1250℃で中間熱処理する工程と、
(C)前記鋼板を950〜1100℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延する工程と、
(D)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐ポリチオン酸SCC性に優れ、かつ溶接時の割れを抑制し、良好な耐溶接割れ性を有する、オーステナイト系ステンレス厚鋼板を提供できる。
本発明者らは、耐ポリチオン酸SCC性の確保と溶接時の延性低下割れの抑制を両立しうるオーステナイト系ステンレス厚鋼板を得るために、以下の検討を行なった。具体的には、延性低下割れを生じた厚鋼板溶接材と、延性低下割れを生じなかった厚鋼板溶接材について、割れ発生部の金属組織、およびその製造条件について、検討を行ない、以下の知見(a)〜(c)を得た。
(a)割れが生じているのは、粗大な結晶粒の粒界である。これは、結晶粒が微細である場合、粒界に掛かる応力が分散され、粒界破壊に至らないのに対し、結晶粒が粗大である場合、応力が粗大な粒の粒界に集中し、粒界破壊に至るためであると考えられる。
(b)溶接割れ部を多数観察した結果、最大結晶粒径が0.3mm未満であれば、割れが生じない。
(c)最大結晶粒径が0.3mm未満を満足する厚鋼板を得るための適切な製造条件を調べる必要がある。本発明者は、化学組成および製造条件が異なる種々の厚鋼板を作製し、得られた厚鋼板の組織観察を行うことで、後述する適切な製造条件を知見した。
粗大粒は、加工熱処理による再結晶が完了せず、鋳造ままの粗大粒組織が一部残存している場合に生じるものである。粗大粒の最大粒径を抑制するためには、再結晶をできる限り促進させることが必要となる。その場合、加工ひずみをより多く蓄積する、または固溶化熱処理を高温長時間化するなどの一般的な促進策を適用することが考えられる。
ところで、C固定化元素としてNbを含有したSUS347系の場合、熱間加工による再結晶が、Nbを含有していない非含有材より大きく遅延する場合がある。例えば非特許文献2では、加工−保持温度が1050℃以下の場合に、再結晶が途中で停止する現象がある。その理由として、上述の温度では、Nb析出物の析出が再結晶に先行し、再結晶を抑止するためと考えられている。
当該課題に対しては、十分な加工ひずみと熱処理を行うことができれば再結晶を完了できるが、本発明のような厚鋼板を製造する場合、鋳片から最終製品までの圧下率が限定され、必ずしも再結晶に必要なレベルの加工度を確保できるとは限らない。さらに、固溶化熱処理の温度については、Nb含有鋼の場合、高温熱処理を行うとNb炭化物が固溶したまま製品となり、高温使用時にこれがNb炭化物として微細析出することで、長時間時効後の脆化割れの原因となることから上限を設けざるを得ない。加えて、時効時間の長時間化については著しく作業性および経済性を阻害するにもかかわらず、効果はあまり大きくはない。
そこで、発明者らは、上記制約下で、オーステナイト系ステンレス鋼の再結晶を促進する製造条件について詳細に検討した結果、以下に示す(i)、および(ii)に記載の製造方法が有効であることを知見した。
(i)熱間圧延を分割して2段階とし、1段階目の熱間圧延後に高温熱処理を行う。
前述したように、再結晶を促進するために最終の固溶化熱処理を高温化することはできない。そのような制約をクリアするため、熱間圧延を分割して2段階とし、1段階目の熱間圧延後に高温熱処理を行い鋳片の粗大結晶を再結晶させる。この場合、2段階目の加工熱処理では、初期粒径が小さくなるため、比較的低温の熱処理でも再結晶は進行する。
(ii)2段階目の熱間圧延時に、Nb析出物の析出を概ね完了させる。
高温加熱で固溶したNbが熱処理時に析出すると、再結晶が遅延する。これを回避するためには、熱処理により再結晶を行う前の2段階目の熱間圧延時において、Nb析出物が十分に析出するよう温度および時間の条件を適切に制御することで、Nb析出物の析出を概ね完了させることが肝要である。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.04%未満
Cは、過剰に含有させるとCr炭化物の析出を促進し、耐粒界腐食性および耐ポリチオン酸SCC性が低下するため、極力低減することが望ましい。そのため、C含有量は、0.04%未満とする。C含有量は0.03%以下であるのが好ましく、0.02%以下であるのがより好ましい。一方で、過度の低減は、精錬コストの上昇に繋がるため、C含有量は0.005%以上であるのが好ましい。
Si:1.5%以下
Siは、脱酸剤として含有させる元素である。しかし、過剰に含有させると液化割れ感受性を増大させるとともに、オーステナイト相の安定性を低下させる。そのため、Si含有量は、1.5%以下とする。Si含有量は、1.0%以下であるのが好ましく、0.75%以下であるのがより好ましい。一方、脱酸の効果を得るためには、Si含有量は、0.02%以上であるのが好ましく、0.1%以上であるのがより好ましく、0.2%以上であるのがさらに好ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、オーステナイト相を安定化させるとともに、Sによる熱間加工性劣化の低減に有効な元素である。しかし、Mnを過剰に含有させると、靭性および耐食性等の劣化を引き起こす。そのため、Mn含有量は2.0%以下とする。Mn含有量は、1.8%以下であるのが好ましく、1.6%以下であるのがより好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Mn含有量は0.5%以上であるのが好ましい。
P:0.04%以下
Pは、原料等から不可避的に混入する不純物である。Pは溶接熱サイクル中およびその後の高温での使用中に溶接部の粗大粒(粗粒HAZ)の粒界に偏析し、溶接後の液化割れだけでなく延性低下割れの原因にもなるため、低減することが好ましい。そのため、P含有量は0.04%以下とする。P含有量は0.03%以下であるのが好ましい。
S:0.03%以下
Sは、原料等から不可避的に混入する不純物である。SもPと同様に、粒界に偏析し、粗粒HAZ部における溶接後の液化割れ、および延性低下割れの原因となる。そのため、S含有量は0.03%以下とする。S含有量は、0.015%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましく、0.001%以下であるのがさらに好ましい。
N:0.02〜0.35%
Nは、オーステナイト相を安定化させ、オーステナイト相に固溶するとともに、粒内に微細な窒化物として析出し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。そのため、N含有量は、0.02%以上とする。しかし、Nを過剰に含有させると、Cr窒化物が粒界に析出し、HAZでの耐ポリチオン酸SCC性が低下する。そのため、N含有量は、0.35%以下とする。N含有量は、0.04%以上が好ましく、0.06%以上がより好ましい。また、N含有量は、0.3%以下であるのが好ましく、0.2%以下であるのがより好ましく、0.1%以下であるのがさらに好ましい。
O:0.03%以下
Oは、不可避的に混入する不純物である。非金属介在物の代表である酸化物を構成する元素であり、過剰な含有は靭性を阻害する。また粗大なクラスター状酸化物が生成すると表面疵の原因となる。そのため、O含有量は0.03%以下とする。O含有量は0.01%以下であるのが好ましく、0.007%以下であるのがより好ましく、0.005%以下であるのがさらに好ましい。
Nb:0.05〜0.5%
Nbは、C固定化元素として含有される。具体的には、鋼中のCと結合して炭化物を析出させることによって、粒界へのCr炭化物析出が抑制され、耐粒界腐食性および耐ポリチオン酸SCC性を高める効果を有する。また、粒内に析出した微細なNb炭化物は、クリープ強度の向上にも寄与する。そのため、Nb含有量は0.05%以上とする。
しかしながら、Nbを過剰に含有させた場合、炭化物が粒内に過剰に析出してしまい、粒内の変形を妨げてしまう。そして、粒内の変形が妨げられた結果、不純物元素が偏析した粒界に応力集中を生じ、HAZ部の高温割れを助長する。また、鋳片加熱時に固溶したNbの再析出により、再結晶が妨げられる。そのため、Nb含有量は0.5%以下とする。
Nb含有量は、0.10%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。また、Nb含有量は、0.4%以下であるのが好ましく、0.35%以下であるのがさらに好ましい。加えて、Cとの関係でNb/C≧10であることが好ましく、Nb/C≧15であるのがより好ましい。
但し、上記式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
Cr:15.0〜25.0%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性を確保するために必要な元素である。そのため、Cr含有量は、15.0%以上とする。しかしながら、多量に含有させると、高温でのオーステナイト相の安定性を低下させ、クリープ強度の低下を引き起こす。そのため、Cr含有量は25.0%以下とする。Cr含有量は、16.0%以上であるのが好ましく、17.0%以下であるのがより好ましい。
Ni:6.0〜30.0%
Niは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、長時間使用後のクリープ強度を維持するために必須な元素である。また、耐酸性および耐塩化物SCC性を向上させる元素でもある。そのため、Ni含有量は、6.0%以上とする。しかしながら、Niは、高価な元素であるため、含有量が多いとコストが上昇する。そのため、Ni含有量は30.0%以下とする。Ni含有量は7.0%以上であるのが好ましく、9.0%以上であるのがより好ましい。また、Ni含有量は、13.0%以下であるのが好ましい。
Al:0.05%以下
Alは、鋼の脱酸のために用いられる元素であり、鋼中の酸素を低減するためにSiと併せて含有させる。しかしながら、AlはNとの親和力が比較的大きな元素であり、過剰に含有させるとAlNを生じて母材の靭性を劣化させる。その程度はN含有量にも依存するが、Alが0.05%を超えると靭性低下が著しくなるため、Al含有量は、0.05%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、0.003%以上であるのが好ましい。
Ti:0〜0.4%
V:0〜0.4%
Ta:0〜0.2%
Hf:0〜0.2%
Zr:0〜0.2%
Ti、V、Ta、HfおよびZrは、C固定化元素として重要であり、鋼中のCと結合した炭化物が粒内に析出することによって、粒界へのCr窒化物析出が抑制され、耐食性を高める効果を有する。また、粒内に析出した微細な炭化物は、クリープ強度の向上にも寄与する。そのため、この効果を得るために、これらの元素から選択される1種以上を、必要に応じて含有させても良い。
しかしながら、これらの元素を過剰に含有させた場合、炭窒化物の過剰な析出により靭性を阻害する。したがって、Ti含有量は、0.4%以下とする。また、V含有量は、0.4%以下とする。Ta含有量は、0.2%以下とする。Hf含有量は、0.2%以下とする。Zr含有量は、0.2%以下とする。一方で、上記の効果を得るためには、Ti含有量は、0.005%以上であるのが好ましい。また、V含有量は、0.005%以上であるのが好ましい。Ta含有量は、0.003%以上であるのが好ましい。Hf含有量は、0.003%以上であるのが好ましい。Zr含有量は、0.003%以上であるのが好ましい。
Cu、Mo、WおよびCoは高温強度を高める作用を有している。そのため、この効果を得るために、上記の元素を必要に応じて、1種以上含有させても良い。
Cu:0〜3.0%
Cuは、高温で微細に析出して高温強度を向上させることに有効である上に、オーステナイト相を安定化させる作用を有するので、必要に応じて含有させる。しかし、Cuを過度に含有させた場合、熱間加工時、および溶接時に液相Cuが粒界に析出し、熱間加工性、または耐液化割れ性を著しく低下させる。そのため、Cu含有量を3.0%以下とする。Cu含有量は2.0%以下であるのが好ましい。一方で、上記の効果を得るためには、Cu含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのが好ましい。
Mo:0〜5.0%
W:0〜5.0%
MoおよびWは、マトリックスに固溶して高温強度を向上させる効果を有し、特に高温でのクリープ強度の向上に有効な元素であるので、必要に応じて含有させる。しかし、両元素とも含有量が高い場合、オーステナイト相の安定性を低下させ、クリープ強度を低下させる。加えて、粗粒HAZでの延性低下割れ感受性が高くなる。
そのため、MoおよびWの含有量は、それぞれ、Mo:5.0%以下、W:5.0%以下とする。また、Mo含有量は、1.5%以下であるのが好ましく、W含有量は、3.0%以下であるのが好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Mo:0.05%以上、W:0.05%以上から選択される1種以上を含有させるのが好ましい。
Co:0〜1.0%
Coは、オーステナイト相の安定性を高めて、高温強度を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させる。しかし、Coは非常に高価な元素であるため、多量に含有させるとコスト上昇を招く。そのため、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は、0.8%以下であるのが好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Co含有量は0.03%以上であるのが好ましい。
B:0〜0.012%
Ca:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%
REM:0〜0.1%
B、Ca、MgおよびREMは熱間加工性を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させる。しかしながら、これら元素を過剰に含有させた場合、逆に熱間加工性、および靭性の低下を引き起こす。そのため、これら元素の含有量はそれぞれ、B:0.012%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、およびREM:0.1%以下とする。
また、B含有量は、0.005%以下、Ca含有量は、0.01%以下、Mg含有量は、0.01%以下、REM含有量は、0.05%以下であるのが好ましい。上記効果を得るために、B:0.0001%以上、Ca:0.0001%以上、Mg:0.0001%以上、およびREM:0.001%以上、から選択される1種以上を含有させるのが好ましい。
REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
本発明の鋼板において残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
2.金属組織
本発明では、溶接時の延性低下割れを回避しうる金属組織の要件を、圧延方向に垂直な断面における最大結晶粒径が0.3mm未満と規定する。0.3mm以上の粗大粒が無い場合には、粗大粒の粒界への応力集中が少なく、割れを抑制することができる。更に、最大結晶粒径が0.15mm未満であるのが好ましい。
なお、最大結晶粒径は、圧延方向に垂直な断面を樹脂に埋め込み研磨してエッチングした後、複数の観測視野の観測領域の合計が1mm以上となるように観測領域を選択し、その観察視野で観察した各々の粒の最大結晶粒径を記録していき、その中の最大の値として求める。
3.板厚
本発明における延性低下割れの課題は、素材厚との関係で大きな圧下率を確保し難い板厚6.0mm以上の厚鋼板の場合に生じる。したがって、本発明においては、板厚6.0mm以上の厚鋼板を対象とする。板厚は10.0mm以上であるのが好ましく、21.0mm以上であるのがより好ましい。板厚は、26.0mm以上であるのがさらに好ましく、35.0mm以上であるのが一層好ましい。上限に関し、特に規定は設けないが、80.0mm以下が好ましい。
4.製造方法
以上の観点から、以下に示す2通りの工程で圧延を行うことによって、本発明の厚鋼板において再結晶を促進させることができる。以下各工程について説明する。
4−1.下記(a)〜(c)の工程による製造方法
(a)一次熱間圧延工程
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼板は、粗大な粒組織の再結晶を促進するため、熱間圧延を2回に分けて行う。1段階目の熱間圧延の鋳片または鋼片の加熱温度は、加熱によるNbの固溶を抑制し、低温圧延によってひずみをより蓄積させるために、比較的低温が好ましい。しかしながら、温度が低すぎると加工時に熱間加工割れを生じる可能性が出てくるため、1000〜1200℃で実施するのが好ましく、1050〜1150℃であるのがより好ましい。つまり、一次熱間圧延の圧延終了温度は、1200℃以下であるのが好ましい。また、圧下率は、再結晶を促進させるために30%以上とする。
(b)二次熱間圧延工程
前述の通り、再結晶を促進させるために、本工程において、1100〜1250℃の温度域まで鋼板を加熱する。そのため、加熱温度は、1100℃以上とする。一方、加熱温度が1250℃超では強度が低下し、自重による曲がり等の原因となるため、1250℃以下とする。
熱間圧延は低温で行うほど、ひずみ蓄積量が増大し、再結晶が促進される。そのため、圧延終了温度を1050℃以下とし、1000℃以下であるのが好ましい。二次熱間圧延温度は、850〜1150℃で実施するのが好ましく、900〜1050℃で実施するのがより好ましい。
さらに、圧延時の加工度が低すぎる場合、ひずみ蓄積量が少なく、再結晶が生じにくい。そのため、二次熱間圧延における圧下率は、30%以上とする。二次熱間圧延における圧下率は、40%以上であるのが好ましい。
なお、二次熱間圧延工程においては、加熱後、圧延終了までの間に850〜1100℃の温度域で3分以上保持する。前述したように、最終熱処理で再結晶を完了させるためには、熱処理前にNb析出物の析出を概ね完了させることが肝要である。そこで、850℃以上かつ析出温度以下の1100℃以下で、3分以上保持することによってNb析出物析出を行わせる。
当該製造条件では加工を加えているため、析出に要する時間が短縮されており、3分でもかなりの析出が見込める。なお、保持温度が低温すぎる場合は、拡散が進まず析出を生じにくくなる。このため、保持温度を850℃以上とする。
(c)固溶化熱処理工程
Nbの再固溶を防止しかつ再結晶を促進するために、固溶化熱処理の温度は950〜1150℃とする。
4−2.下記(A)〜(D)の工程による製造方法
(A)一次熱間圧延工程
上述の方法と同様に、1段階目の熱間圧延の鋳片加熱温度は、加熱によるNbの固溶を抑制し、低温圧延によってひずみをより蓄積させるために、比較的低温が好ましい。しかしながら、温度が低すぎると加工時に熱間加工割れを生じる可能性が出てくるため、1000〜1200℃で実施するのが好ましく、1050〜1150℃であるのがより好ましい。つまり、一次熱間圧延の圧延終了温度は、1200℃以下であるのが好ましい。また、圧下率は、再結晶を促進させるために30%以上とする。
(B)中間熱処理工程
前述の通り、再結晶を促進させるために、一次熱間圧延後で、かつ後述する二次熱間圧延前に、鋼板を1100〜1250℃に加熱する。本発明においては、一次熱間圧延後、二次熱間圧延前における上記の加熱を中間熱処理と記載する。
(C)二次熱間圧延工程
Nb析出物の析出を促進するために、本工程において、950〜1100℃の温度域まで鋼板を加熱したうえで熱間圧延を行う。
熱間圧延は低温で行うほど、ひずみ蓄積量が増大し、再結晶が促進される。そのため、圧延終了温度を1050℃以下とし、1000℃以下であるのが好ましい。二次熱間圧延温度は、850〜1100℃で実施するのが好ましく、900〜1050℃で実施するのがより好ましい。
さらに、圧延時の加工度が低すぎる場合、ひずみ蓄積量が少なく、再結晶が生じにくい。そのため、二次熱間圧延における圧下率は、30%以上とする。二次熱間圧延における圧下率は、40%以上であるのが好ましい。
(D)固溶化熱処理工程
Nbの再固溶を防止しかつ再結晶を促進するために、固溶化熱処理の温度は950℃〜1150℃とする。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼を電気炉にて溶製し、厚さ150mmの連続鋳造鋳片を得た。
Figure 0006920420
熱間圧延は二回に分けて行い、一次熱間圧延は、1100℃で加熱後、圧延終了温度950℃の条件にて実施し、厚さ90mmの一次熱間圧延鋼板を得た。圧下率は40%とした。その後、二次熱間圧延は、1200℃で1時間加熱後、圧延終了温度950℃の条件にて実施し、厚さ45mmの熱間圧延鋼板を得た。圧下率は50%とした。1100℃〜800℃までの保持時間は5.3分となるようにし、直後に水冷を行った。固溶化熱処理は、1100℃の温度で5分間均熱後、水冷を行った。
得られた鋼板について、最大結晶粒径の評価を行った。最大結晶粒径は、鋼板の圧延方向に直角な断面を、凹凸を除去した後樹脂に埋め込み鏡面研磨したものに、王水浸漬エッチングを行った後、合計観測域の面積が1.23mmになるまでランダムに観察を行い、粒の最大結晶粒径を求めた。
延性低下割れ感受性は、ロンジバレストレイン試験による総割れ長さにより評価した。この試験は溶接を行っている最中に曲げを行ってひずみを付加し、その際にHAZ部に生じた割れの長さを測定するもので、溶接方向と平行にひずみをかけるロンジバレストレイン試験は、HAZ部における溶接高温割れ性評価法として広く用いられているものである。
具体的には、まず上記により製造した固溶化熱処理後の鋼板(板厚方向3枚取り)から、厚さ12mm、幅50mm、長さ300mmの試験片を採取し、曲げブロック上に片持ばり式に固定し、試験片の長手方向にGTAW(Gas Tungsten Arc Welding)によりビードオンプレート溶接を行った。
その後、溶融池が試験片長手方向の中央部に達した時に、試験片の片側を曲げブロックの曲率に沿って試験片を変形させ、溶接ビードとHAZ表面に割れを発生させた。その後、HAZにて発生した割れの長さを測定し、総割れ長さを求めた。なお、溶接条件は溶接電流200A、溶接電圧16V、溶接速度15cm/分、負荷歪2%とした。HAZ表面に割れ長さが1.5mm以下の場合に、HAZ割れ感受性が低く、耐高温割れ性に優れると判断し、これを目標とした。
次に、耐ポリオチオン酸SCC性の確認のため、上記溶接材を700℃で1000時間の鋭敏化熱処理を行った後、Wackenroder溶液(蒸留水中にSOガスを吹き込んで作製したHS0飽和水溶液に多量のHSガスを吹き込んだ溶液)中での浸漬試験を行った。評価は溶接線を中央にした厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmの短冊状のものを半径5mmで拘束したUベンド試験片を用い、Wackenroder溶液に室温で48時間浸漬し、割れ発生の有無を光学顕微鏡にて観察し、割れが発生しなかったものを耐ポリチオン酸SCC性に優れると判断した。
上記測定結果を表2に併せて示す。なお、表2の「耐ポリチオン酸SCC性に関する評価データ」欄のうち、「○」は48時間の浸漬にて割れの発生しなかったもの、「×」は48時間の浸漬にて割れの発生が認められたものを意味する。
Figure 0006920420
試験No.1〜10は本発明の規定を満足する本発明例に係る鋼である。表2から分かるように、本発明例の鋼板は最大結晶粒径が0.3mm未満であり、HAZ総割れ長さも1.5mm以下であることから、良好な耐HAZ割れ性を示し、優れた耐高温割れ性を有する。
一方で、本発明の成分範囲を満たさない試験No.11〜18の鋼は、以下に示す理由で特性を満足しなかった。Nbの含有量が本発明の規定以上である、試験No.18は再結晶が促進されず、大きな結晶粒が残存した。それぞれSi、またはPの含有量が本発明の規定以上である、試験No.12、および17は、HAZ総割れ長さが、1.5mm超となり、耐高温割れ性が不良であり、高温割れを生じた。それぞれC、またはNが、本発明の規定以上に含有されている試験No.11、および16は、耐ポリチオンSCC性に劣る。Mnの含有量が本発明の規定以上である、試験No.13は耐食性が劣る。それぞれNiまたはCrの含有量が本発明の規定を満足しない試験No.14、および15は、クリープ強度に劣る。
表3に、表1中のA〜Fの成分を有する鋼について、種々の製造条件にて鋼板を作製し、最大結晶粒径およびHAZ割れ感受性を評価した結果を示す。
Figure 0006920420
本発明の製造条件を満足する試験No.19〜24の発明例は、最大結晶粒径が0.3mm未満であり、HAZ総割れ長さも1.5mm以下であることから、良好な耐HAZ割れ性を示した。
一方で、本発明の製造条件を満足しない試験No.25〜33の鋼は、以下に示す理由で要求される特性を満足しなかった。
まず、試験No.33は、二回圧延を実施しないことで非常に粗大な未再結晶粒が残存し、試験No.25、および27〜31は、本発明の規定する製造条件を実施しないことで粗大な未再結晶粒が残存しており、HAZ総割れ長さも1.5mm超となり、耐HAZ割れ感受性が低下していた。試験No.26とNo.32は、本発明の規定する製造条件を満足せず、熱延疵が発生した。
本発明によれば、板厚6.0mm以上の厚鋼板であっても、耐ポリチオン酸SCC性と耐溶接割れ性とに優れたオーステナイト系ステンレス鋼板を得ることができる。本発明によれば、耐ポリチオン酸SCC性が要求される石油脱硫装置のうち、加熱炉管といった鋼管および薄鋼板だけでなく、反応器またはインターナル等、厚鋼板での製造が必要な装置または設備にも使用するオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することができる。

Claims (6)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.04%未満、
    Si:1.5%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.03%以下、
    N:0.02〜0.35%、
    O:0.03%以下、
    Nb:0.20〜0.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Ni:6.0〜30.0%、
    Al:0.05%以下、
    Ti:0〜0.4%、
    V:0〜0.4%、
    Ta:0〜0.2%、
    Hf:0〜0.2%、
    Zr:0〜0.2%、
    Cu:0〜3.0%、
    Mo:0〜5.0%、
    W:0〜5.0%、
    Co:0〜1.0%、
    B:0〜0.012%、
    Ca:0〜0.02%、
    Mg:0〜0.02%、および、
    REM:0〜0.1%、を含有し、
    残部:Feおよび不純物、
    であり、圧延方向に垂直な断面において、最大結晶粒径が0.3mm未満である、板厚6.0mm以上のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
  2. 前記鋼板の化学組成が、さらに、質量%で、
    Cu:0.02〜3.0%、
    B:0.0001〜0.012%、および
    Mg:0.0001〜0.02%
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
  3. 前記鋼板の化学組成が、さらに、質量%で、
    Ti:0.005〜0.4%、
    V:0.005〜0.4%、
    Ta:0.003〜0.2%、
    Hf:0.003〜0.2%、
    Zr:0.003〜0.2%、
    Mo:0.05〜5.0%、
    W:0.05〜5.0%、
    Co:0.03〜1.0%、
    Ca:0.0001〜0.02%、および、
    REM:0.001〜0.1%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
  4. 石油脱硫装置用である、請求項1〜のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
    (a)請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
    (b)前記鋼板を1100〜1250℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延し、
    当該工程において、加熱後、二次熱間圧延終了までの間に850〜1100℃の温度域で3分以上保持する工程と、
    (c)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
    を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
    (A)請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
    (B)前記鋼板を1100〜1250℃で中間熱処理する工程と、
    (C)前記鋼板を950〜1100℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延する工程と、
    (D)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
    を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
JP2019510035A 2017-03-31 2018-03-28 オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 Active JP6920420B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017071934 2017-03-31
JP2017071934 2017-03-31
PCT/JP2018/012965 WO2018181570A1 (ja) 2017-03-31 2018-03-28 オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2018181570A1 JPWO2018181570A1 (ja) 2020-03-26
JP6920420B2 true JP6920420B2 (ja) 2021-08-18

Family

ID=63676090

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019510035A Active JP6920420B2 (ja) 2017-03-31 2018-03-28 オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP6920420B2 (ja)
CN (1) CN110520549B (ja)
WO (1) WO2018181570A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109355472B (zh) * 2018-12-22 2022-03-18 佛山培根细胞新材料有限公司 一种铜铌钴改性奥氏体不锈钢及其加工与热处理方法
CN110484836B (zh) * 2019-09-24 2021-01-05 南京佑天金属科技有限公司 一种铪锆钛钼增强奥氏体不锈钢及其制备方法
EP4089195A4 (en) * 2020-01-10 2024-03-20 Nippon Steel Corp AUSTENITIC STAINLESS STEEL MATERIAL
CN112853231A (zh) * 2020-08-18 2021-05-28 浙江增诚钢管有限公司 一种高压锅炉用不锈钢无缝钢管及其制作方法
CN114457223B (zh) * 2020-11-09 2024-05-17 中国科学院金属研究所 一种奥氏体不锈钢的热变形加工工艺
WO2023166926A1 (ja) * 2022-03-01 2023-09-07 日鉄ステンレス株式会社 耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金厚鋼板及びその製造方法
CN115261719A (zh) * 2022-05-14 2022-11-01 江阴市中岳机锻有限公司 一种耐低温艏外轴套及其加工工艺
CN115386700B (zh) * 2022-09-06 2023-09-26 太原理工大学 一种抑制超级奥氏体不锈钢形变孪晶界析出相析出且利于再结晶的方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61270356A (ja) * 1985-05-24 1986-11-29 Kobe Steel Ltd 極低温で高強度高靭性を有するオ−ステナイト系ステンレス鋼板
JPH0711389A (ja) * 1993-06-29 1995-01-13 Nippon Steel Corp 靱性の優れた極低温用オーステナイト系ステンレス鋼厚板および棒
JPH0860244A (ja) * 1994-08-23 1996-03-05 Nippon Steel Corp オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法
JP3427387B2 (ja) * 1995-09-27 2003-07-14 住友金属工業株式会社 耐食性に優れた高強度溶接鋼構造物
CN102041457B (zh) * 2009-10-20 2012-10-10 宝山钢铁股份有限公司 一种奥氏体不锈钢
JP6433196B2 (ja) * 2014-08-22 2018-12-05 新日鐵住金株式会社 低温用途向ステンレス鋼
JP6621254B2 (ja) * 2015-06-26 2019-12-18 日鉄ステンレス株式会社 耐熱性と表面平滑性に優れた排気部品用オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN110520549B (zh) 2022-01-04
CN110520549A (zh) 2019-11-29
WO2018181570A1 (ja) 2018-10-04
JPWO2018181570A1 (ja) 2020-03-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6920420B2 (ja) オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法
US20230203632A1 (en) Austenitic stainless steel weld joint
JP4258679B1 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼
US10233523B2 (en) Carburization resistant metal material
JP6369632B2 (ja) 高Cr系オーステナイトステンレス鋼
JP5880310B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼
EP3693484A1 (en) Austenitic stainless steel weld metal and welded structure
WO2014119197A1 (ja) 高強度2.25Cr-1Mo-V鋼用サブマージアーク溶接ワイヤおよび溶接金属
JP2008025014A (ja) Lpg・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材
JP2009074123A (ja) 表面品質が良好なNi含有鋼の製造方法
EP3693486B1 (en) Austenitic stainless steel welding metal and welded structure
EP3693487A1 (en) Austenitic stainless steel
JPS5980752A (ja) 硫化水素環境で溶接部の耐水素割れ性及び耐硫化物応力腐食割れ性に優れた鋼
WO2021141107A1 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼材
JP6795038B2 (ja) オーステナイト系耐熱合金およびそれを用いた溶接継手
JP7226019B2 (ja) オーステナイト系耐熱鋼
JP7468470B2 (ja) フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2021080510A (ja) オーステナイト系耐熱鋼溶接継手

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190911

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190911

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200707

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210202

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20210331

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210524

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210629

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210726

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6920420

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150