JP6920420B2 - オーステナイト系ステンレス厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
C:0.04%未満、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.03%以下、
N:0.02〜0.35%、
O:0.03%以下、
Nb:0.05〜0.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Ni:6.0〜30.0%、
Al:0.05%以下、
Ti:0〜0.4%、
V:0〜0.4%、
Ta:0〜0.2%、
Hf:0〜0.2%、
Zr:0〜0.2%、
Cu:0〜3.0%、
Mo:0〜5.0%、
W:0〜5.0%、
Co:0〜1.0%、
B:0〜0.012%、
Ca:0〜0.02%、
Mg:0〜0.02%、および、
REM:0〜0.1%、を含有し、
残部:Feおよび不純物、
であり、圧延方向に垂直な断面において、最大結晶粒径が0.3mm未満である、板厚6.0mm以上のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
Ti:0.005〜0.4%、
V:0.005〜0.4%、
Ta:0.003〜0.2%、
Hf:0.003〜0.2%、
Zr:0.003〜0.2%、
Cu:0.02〜3.0%、
Mo:0.05〜5.0%、
W:0.05〜5.0%、
Co:0.03〜1.0%、
B:0.0001〜0.012%、
Ca:0.0001〜0.02%、
Mg:0.0001〜0.02%、および、
REM:0.001〜0.1%、
から選択される1種以上を含有する、(1)に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
(a)(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(b)前記鋼板を1100〜1250℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延し、
当該工程において、加熱後、二次熱間圧延終了までの間に850〜1100℃の温度域で3分以上保持する工程と、
(c)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
(A)(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(B)前記鋼板を1100〜1250℃で中間熱処理する工程と、
(C)前記鋼板を950〜1100℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延する工程と、
(D)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
前述したように、再結晶を促進するために最終の固溶化熱処理を高温化することはできない。そのような制約をクリアするため、熱間圧延を分割して2段階とし、1段階目の熱間圧延後に高温熱処理を行い鋳片の粗大結晶を再結晶させる。この場合、2段階目の加工熱処理では、初期粒径が小さくなるため、比較的低温の熱処理でも再結晶は進行する。
高温加熱で固溶したNbが熱処理時に析出すると、再結晶が遅延する。これを回避するためには、熱処理により再結晶を行う前の2段階目の熱間圧延時において、Nb析出物が十分に析出するよう温度および時間の条件を適切に制御することで、Nb析出物の析出を概ね完了させることが肝要である。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、過剰に含有させるとCr炭化物の析出を促進し、耐粒界腐食性および耐ポリチオン酸SCC性が低下するため、極力低減することが望ましい。そのため、C含有量は、0.04%未満とする。C含有量は0.03%以下であるのが好ましく、0.02%以下であるのがより好ましい。一方で、過度の低減は、精錬コストの上昇に繋がるため、C含有量は0.005%以上であるのが好ましい。
Siは、脱酸剤として含有させる元素である。しかし、過剰に含有させると液化割れ感受性を増大させるとともに、オーステナイト相の安定性を低下させる。そのため、Si含有量は、1.5%以下とする。Si含有量は、1.0%以下であるのが好ましく、0.75%以下であるのがより好ましい。一方、脱酸の効果を得るためには、Si含有量は、0.02%以上であるのが好ましく、0.1%以上であるのがより好ましく、0.2%以上であるのがさらに好ましい。
Mnは、オーステナイト相を安定化させるとともに、Sによる熱間加工性劣化の低減に有効な元素である。しかし、Mnを過剰に含有させると、靭性および耐食性等の劣化を引き起こす。そのため、Mn含有量は2.0%以下とする。Mn含有量は、1.8%以下であるのが好ましく、1.6%以下であるのがより好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Mn含有量は0.5%以上であるのが好ましい。
Pは、原料等から不可避的に混入する不純物である。Pは溶接熱サイクル中およびその後の高温での使用中に溶接部の粗大粒(粗粒HAZ)の粒界に偏析し、溶接後の液化割れだけでなく延性低下割れの原因にもなるため、低減することが好ましい。そのため、P含有量は0.04%以下とする。P含有量は0.03%以下であるのが好ましい。
Sは、原料等から不可避的に混入する不純物である。SもPと同様に、粒界に偏析し、粗粒HAZ部における溶接後の液化割れ、および延性低下割れの原因となる。そのため、S含有量は0.03%以下とする。S含有量は、0.015%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましく、0.001%以下であるのがさらに好ましい。
Nは、オーステナイト相を安定化させ、オーステナイト相に固溶するとともに、粒内に微細な窒化物として析出し、クリープ強度を向上させるのに有効な元素である。そのため、N含有量は、0.02%以上とする。しかし、Nを過剰に含有させると、Cr窒化物が粒界に析出し、HAZでの耐ポリチオン酸SCC性が低下する。そのため、N含有量は、0.35%以下とする。N含有量は、0.04%以上が好ましく、0.06%以上がより好ましい。また、N含有量は、0.3%以下であるのが好ましく、0.2%以下であるのがより好ましく、0.1%以下であるのがさらに好ましい。
Oは、不可避的に混入する不純物である。非金属介在物の代表である酸化物を構成する元素であり、過剰な含有は靭性を阻害する。また粗大なクラスター状酸化物が生成すると表面疵の原因となる。そのため、O含有量は0.03%以下とする。O含有量は0.01%以下であるのが好ましく、0.007%以下であるのがより好ましく、0.005%以下であるのがさらに好ましい。
Nbは、C固定化元素として含有される。具体的には、鋼中のCと結合して炭化物を析出させることによって、粒界へのCr炭化物の析出が抑制され、耐粒界腐食性および耐ポリチオン酸SCC性を高める効果を有する。また、粒内に析出した微細なNb炭化物は、クリープ強度の向上にも寄与する。そのため、Nb含有量は0.05%以上とする。
但し、上記式中の元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
Crは、高温での耐酸化性および耐食性を確保するために必要な元素である。そのため、Cr含有量は、15.0%以上とする。しかしながら、多量に含有させると、高温でのオーステナイト相の安定性を低下させ、クリープ強度の低下を引き起こす。そのため、Cr含有量は25.0%以下とする。Cr含有量は、16.0%以上であるのが好ましく、17.0%以下であるのがより好ましい。
Niは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、長時間使用後のクリープ強度を維持するために必須な元素である。また、耐酸性および耐塩化物SCC性を向上させる元素でもある。そのため、Ni含有量は、6.0%以上とする。しかしながら、Niは、高価な元素であるため、含有量が多いとコストが上昇する。そのため、Ni含有量は30.0%以下とする。Ni含有量は7.0%以上であるのが好ましく、9.0%以上であるのがより好ましい。また、Ni含有量は、13.0%以下であるのが好ましい。
Alは、鋼の脱酸のために用いられる元素であり、鋼中の酸素を低減するためにSiと併せて含有させる。しかしながら、AlはNとの親和力が比較的大きな元素であり、過剰に含有させるとAlNを生じて母材の靭性を劣化させる。その程度はN含有量にも依存するが、Alが0.05%を超えると靭性低下が著しくなるため、Al含有量は、0.05%以下とする。一方で、上記効果を得るためには、0.003%以上であるのが好ましい。
V:0〜0.4%
Ta:0〜0.2%
Hf:0〜0.2%
Zr:0〜0.2%
Ti、V、Ta、HfおよびZrは、C固定化元素として重要であり、鋼中のCと結合した炭化物が粒内に析出することによって、粒界へのCr窒化物析出が抑制され、耐食性を高める効果を有する。また、粒内に析出した微細な炭化物は、クリープ強度の向上にも寄与する。そのため、この効果を得るために、これらの元素から選択される1種以上を、必要に応じて含有させても良い。
Cuは、高温で微細に析出して高温強度を向上させることに有効である上に、オーステナイト相を安定化させる作用を有するので、必要に応じて含有させる。しかし、Cuを過度に含有させた場合、熱間加工時、および溶接時に液相Cuが粒界に析出し、熱間加工性、または耐液化割れ性を著しく低下させる。そのため、Cu含有量を3.0%以下とする。Cu含有量は2.0%以下であるのが好ましい。一方で、上記の効果を得るためには、Cu含有量は0.02%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのが好ましい。
W:0〜5.0%
MoおよびWは、マトリックスに固溶して高温強度を向上させる効果を有し、特に高温でのクリープ強度の向上に有効な元素であるので、必要に応じて含有させる。しかし、両元素とも含有量が高い場合、オーステナイト相の安定性を低下させ、クリープ強度を低下させる。加えて、粗粒HAZでの延性低下割れ感受性が高くなる。
Coは、オーステナイト相の安定性を高めて、高温強度を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させる。しかし、Coは非常に高価な元素であるため、多量に含有させるとコスト上昇を招く。そのため、Co含有量は1.0%以下とする。Co含有量は、0.8%以下であるのが好ましい。一方で、上記効果を得るためには、Co含有量は0.03%以上であるのが好ましい。
Ca:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%
REM:0〜0.1%
B、Ca、MgおよびREMは熱間加工性を向上させる元素であるので、必要に応じて含有させる。しかしながら、これら元素を過剰に含有させた場合、逆に熱間加工性、および靭性の低下を引き起こす。そのため、これら元素の含有量はそれぞれ、B:0.012%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、およびREM:0.1%以下とする。
本発明では、溶接時の延性低下割れを回避しうる金属組織の要件を、圧延方向に垂直な断面における最大結晶粒径が0.3mm未満と規定する。0.3mm以上の粗大粒が無い場合には、粗大粒の粒界への応力集中が少なく、割れを抑制することができる。更に、最大結晶粒径が0.15mm未満であるのが好ましい。
本発明における延性低下割れの課題は、素材厚との関係で大きな圧下率を確保し難い板厚6.0mm以上の厚鋼板の場合に生じる。したがって、本発明においては、板厚6.0mm以上の厚鋼板を対象とする。板厚は10.0mm以上であるのが好ましく、21.0mm以上であるのがより好ましい。板厚は、26.0mm以上であるのがさらに好ましく、35.0mm以上であるのが一層好ましい。上限に関し、特に規定は設けないが、80.0mm以下が好ましい。
以上の観点から、以下に示す2通りの工程で圧延を行うことによって、本発明の厚鋼板において再結晶を促進させることができる。以下各工程について説明する。
(a)一次熱間圧延工程
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼板は、粗大な粒組織の再結晶を促進するため、熱間圧延を2回に分けて行う。1段階目の熱間圧延の鋳片または鋼片の加熱温度は、加熱によるNbの固溶を抑制し、低温圧延によってひずみをより蓄積させるために、比較的低温が好ましい。しかしながら、温度が低すぎると加工時に熱間加工割れを生じる可能性が出てくるため、1000〜1200℃で実施するのが好ましく、1050〜1150℃であるのがより好ましい。つまり、一次熱間圧延の圧延終了温度は、1200℃以下であるのが好ましい。また、圧下率は、再結晶を促進させるために30%以上とする。
前述の通り、再結晶を促進させるために、本工程において、1100〜1250℃の温度域まで鋼板を加熱する。そのため、加熱温度は、1100℃以上とする。一方、加熱温度が1250℃超では強度が低下し、自重による曲がり等の原因となるため、1250℃以下とする。
Nbの再固溶を防止しかつ再結晶を促進するために、固溶化熱処理の温度は950〜1150℃とする。
(A)一次熱間圧延工程
上述の方法と同様に、1段階目の熱間圧延の鋳片加熱温度は、加熱によるNbの固溶を抑制し、低温圧延によってひずみをより蓄積させるために、比較的低温が好ましい。しかしながら、温度が低すぎると加工時に熱間加工割れを生じる可能性が出てくるため、1000〜1200℃で実施するのが好ましく、1050〜1150℃であるのがより好ましい。つまり、一次熱間圧延の圧延終了温度は、1200℃以下であるのが好ましい。また、圧下率は、再結晶を促進させるために30%以上とする。
前述の通り、再結晶を促進させるために、一次熱間圧延後で、かつ後述する二次熱間圧延前に、鋼板を1100〜1250℃に加熱する。本発明においては、一次熱間圧延後、二次熱間圧延前における上記の加熱を中間熱処理と記載する。
Nb析出物の析出を促進するために、本工程において、950〜1100℃の温度域まで鋼板を加熱したうえで熱間圧延を行う。
Nbの再固溶を防止しかつ再結晶を促進するために、固溶化熱処理の温度は950℃〜1150℃とする。
まず、試験No.33は、二回圧延を実施しないことで非常に粗大な未再結晶粒が残存し、試験No.25、および27〜31は、本発明の規定する製造条件を実施しないことで粗大な未再結晶粒が残存しており、HAZ総割れ長さも1.5mm超となり、耐HAZ割れ感受性が低下していた。試験No.26とNo.32は、本発明の規定する製造条件を満足せず、熱延疵が発生した。
Claims (6)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.04%未満、
Si:1.5%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.03%以下、
N:0.02〜0.35%、
O:0.03%以下、
Nb:0.20〜0.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Ni:6.0〜30.0%、
Al:0.05%以下、
Ti:0〜0.4%、
V:0〜0.4%、
Ta:0〜0.2%、
Hf:0〜0.2%、
Zr:0〜0.2%、
Cu:0〜3.0%、
Mo:0〜5.0%、
W:0〜5.0%、
Co:0〜1.0%、
B:0〜0.012%、
Ca:0〜0.02%、
Mg:0〜0.02%、および、
REM:0〜0.1%、を含有し、
残部:Feおよび不純物、
であり、圧延方向に垂直な断面において、最大結晶粒径が0.3mm未満である、板厚6.0mm以上のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。 - 前記鋼板の化学組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.02〜3.0%、
B:0.0001〜0.012%、および
Mg:0.0001〜0.02%
から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。 - 前記鋼板の化学組成が、さらに、質量%で、
Ti:0.005〜0.4%、
V:0.005〜0.4%、
Ta:0.003〜0.2%、
Hf:0.003〜0.2%、
Zr:0.003〜0.2%、
Mo:0.05〜5.0%、
W:0.05〜5.0%、
Co:0.03〜1.0%、
Ca:0.0001〜0.02%、および、
REM:0.001〜0.1%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。 - 石油脱硫装置用である、請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
(a)請求項1〜3のいずれかに記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(b)前記鋼板を1100〜1250℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延し、
当該工程において、加熱後、二次熱間圧延終了までの間に850〜1100℃の温度域で3分以上保持する工程と、
(c)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス厚鋼板を製造する方法であって、
(A)請求項1〜3のいずれかに記載の化学組成を有する鋳片または鋼片を加熱し、圧下率を30%以上の条件で一次熱間圧延し、鋼板とする工程と、
(B)前記鋼板を1100〜1250℃で中間熱処理する工程と、
(C)前記鋼板を950〜1100℃に加熱し、圧延終了温度を1050℃以下、圧下率を30%以上の条件で、二次熱間圧延する工程と、
(D)950〜1150℃温度域で固溶化熱処理を行う工程と
を、順に施す、オーステナイト系ステンレス厚鋼板の製造方法。
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