JP2009074123A - 表面品質が良好なNi含有鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造現場で生産障害となっているNi含有鋼板表面疵の手入れ工程の負荷を軽減するため、加熱、圧延前の素材に存在する旧γ粒界上のAlNに起因する鋼板表面疵の発生を防止したNi含有鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、0.03≦C≦0.2、0.02≦Si≦0.5、0.3≦Mn≦2.0、0.0005≦P≦0.02、0.0001≦S≦0.006、1.0≦Ni≦10、0.01≦Al≦0.08、0.002≦N≦0.006、0.0005≦O≦0.004、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片において、表層下2〜20mmまでの平均旧オーステナイト粒径が500μm以下である鋼片を圧延素材として、1000〜1180℃で加熱し、圧延することを特徴とするNi含有鋼の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】質量%で、0.03≦C≦0.2、0.02≦Si≦0.5、0.3≦Mn≦2.0、0.0005≦P≦0.02、0.0001≦S≦0.006、1.0≦Ni≦10、0.01≦Al≦0.08、0.002≦N≦0.006、0.0005≦O≦0.004、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片において、表層下2〜20mmまでの平均旧オーステナイト粒径が500μm以下である鋼片を圧延素材として、1000〜1180℃で加熱し、圧延することを特徴とするNi含有鋼の製造方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、Niを1〜10%含有する鋼の加熱、圧延において、圧延表面疵を防止した表面品質が良好なNi含有鋼の製造方法に関する。
従来からNi含有鋼は低温用溶接構造用鋼として液化ガスタンクなどに広く用いられている。Ni含有鋼では、(1)鋳片の表面割れ、(2)加熱、圧延時のスケール押し込み疵など、が生成しやすく、圧延後の鋼板表面疵となることが知られている。一方、Ni含有鋼は、液化ガスタンクなどの厳格な安全性を要求される用途に用いられる場合が多いために、圧延後の厳格な鋼板表面検査と表面疵手入れが必要であり、この鋼板表面手入れ工程は、生産障害となっている。
このような、Ni含有鋼の鋼板表面疵に対して、(2)加熱、圧延時のスケール押し込み疵は、加熱圧延条件の適正化での対策が一般的であるが、(1)の鋳片表面割れなど鋳片に付随する割れが原因となる場合、以下に示すような、鋼成分および鋳造条件を規制する技術が主として開示されているが、近年、圧延素材の表面形状に着目した技術も報告されている。
特許文献1には、Ni:5.5〜10%含有する低温用鋼の連続鋳造において、S:0.0020%以下、N:0.0045%以下、Ca:0.0020〜0.0070%の規制をして連続鋳造することを特徴とする含Ni低温用鋼の連続鋳造における表面疵防止方法が開示されている。
特許文献2には、Niを5〜10%含有する低温用鋼の連続鋳造において、鋳片表面温度が1150℃から950℃の領域の鋳片表面冷却速度を20℃/分以下とすることを特徴とする、含Ni低温用鋼の連続鋳造における表面疵防止方法が開示されている。
特許文献3には、Niを5.5〜10%含有する低温用鋼の連続鋳造において、P≦0.01%およびS≦0.005%の規制に併せて、連続鋳造時に内部凝固界面ひずみ率を定義して、これを規制することを特徴とする技術が開示されている。
特許文献4には、Niを5.5〜10%含有する低温用鋼の連続鋳造において、鋼成分をP≦0.002%、S≦0.002%、Al≦0.02%およびN:0.001〜0.004%の規制に併せて、連続鋳造時の鋳片の2次冷却条件を規制して鋳片表層の柱状オーステナイト(以下、オーステナイトをγと記す)粒層の厚みを25mm以下とすることを特徴とするNi含有鋼鋳片の製造方法が開示されている。
特許文献5には、Niを5〜10%含有する鋼の連続鋳造において、Al:0.005〜0.03%、N≦0.0030%かつ、AlとNの濃度の積を規制するとともに、連続鋳造後の矯正応力を受ける領域における鋳片の表面温度が750℃以上となるように冷却することを特徴とする低温用Ni含有鋼の製造方法が開示されている。
特許文献6には、Niを5.5〜10%含有する鋼の連続鋳造において、P≦0.0010W%、S≦0.0010%、Al:0.002〜0.030%、N≦0.0040%の規制をし、さらにAlとNの濃度積の規制をするとともに、連続鋳造時の鋳片の2次冷却において、鋳片幅と厚さの比と、長辺面と短辺面の冷却水量比との関係を規制することを特徴とする低温用Ni含有鋼の連続鋳造方法が開示されている。
特許文献7には、Niを8.5〜10%含有する鋼において、Si≦010%、P≦0.0020%、S≦0.0020%、Al:0.007〜0.015%、N≦0.0040%に規制して粒界酸化や介在物を減少することで、表面疵を減少できるNi含有鋼が開示されている。
特許文献8には、Niを1〜10%含有した鋼の表面を機械的に研削し、表面の形状を規制することで、Ni含有鋼の圧延表面疵を防止する技術が開示されている。
本発明が解決しようとしている課題は、製造現場で生産障害となっているNi含有鋼板表面疵の手入れ工程の負荷を軽減するため、特に、(1)鋳片が起因となり圧延時に生成する表面疵の発生を防止するNi含有鋼の製造方法を提供することである。
表面疵の防止に際し、(1)鋳片表面割れに対しては、本発明者らは、垂直型の連続鋳造機を使用することで、鋳片表面割れの発生を防止している。しかしながら、その鋳片内部に存在する微細な粒界酸化物やAlNなどの粒界析出物の存在により、その後の圧延時に開口して疵となる場合がある。粒界酸化物などは、鋳片あるいは、鋼片表面の研削により、除去できる。しかしながら、AlNについては、鋳片あるいは、鋳片を1250℃以上の高温で加熱し、分塊圧延した鋼片においても、再度、厚板工場にて加熱する時に、粗大な旧γ粒界上に析出するために、スケール生成防止のために、AlNが溶解し得ない温度で低温加熱され、圧延された場合、上記の粒界が開口して疵となる。
本発明が解決しようとする技術的な課題は、このような、加熱、圧延前の素材に存在する旧γ粒界上のAlNに起因する鋼板表面疵の発生を防止する技術を確立することである。
本発明は、上記の課題を解決するために、多くの実験から、加熱、圧延前の素材の結晶粒がAlNを起因とする圧延時の割れ発生と密接に関連していることを知見した。
本発明は上記知見に基づいて完成したもので、その発明の要旨は、次のとおりである。
(1) Niを1〜10%含有するNi含有鋼の加熱、圧延において、圧延表面疵を防止するNi含有鋼の製造方法であって、質量%で、
0.03≦C≦0.2、
0.02≦Si≦0.5、
0.30≦Mn≦2.0、
0.0005≦P≦0.02、
0.0001≦S≦0.006、
1.0≦Ni≦10、
0.01≦Al≦0.08、
0.002≦N≦0.006
0.0005≦O≦0.004、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片において、表層下2〜20mmまでの平均旧オーステナイト粒径が500μm以下である鋼片を圧延素材として、1000〜1180℃で加熱し、圧延することを特徴とするNi含有鋼の製造方法。
0.03≦C≦0.2、
0.02≦Si≦0.5、
0.30≦Mn≦2.0、
0.0005≦P≦0.02、
0.0001≦S≦0.006、
1.0≦Ni≦10、
0.01≦Al≦0.08、
0.002≦N≦0.006
0.0005≦O≦0.004、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片において、表層下2〜20mmまでの平均旧オーステナイト粒径が500μm以下である鋼片を圧延素材として、1000〜1180℃で加熱し、圧延することを特徴とするNi含有鋼の製造方法。
(2) 更に、母材や継手の強度、靱性改善元素群を、質量%で、
0.03≦Cu≦1.5、
0.03≦Cr≦1.0、
0.02≦Mo≦1.0、
0.003≦Nb≦0.1、
0.003≦V≦0.1、
0.005≦Ti≦0.02、
0.0005≦B≦0.002、
0.0005≦Ca≦0.005、
0.0005≦Mg≦0.005、
0.001≦REM≦0.01、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載のNi含有鋼の製造方法。
0.03≦Cu≦1.5、
0.03≦Cr≦1.0、
0.02≦Mo≦1.0、
0.003≦Nb≦0.1、
0.003≦V≦0.1、
0.005≦Ti≦0.02、
0.0005≦B≦0.002、
0.0005≦Ca≦0.005、
0.0005≦Mg≦0.005、
0.001≦REM≦0.01、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)記載のNi含有鋼の製造方法。
本発明のNi含有鋼の製造方法により、Ni含有鋼の圧延時に生成する表面疵の発生を防止することができ、生産障害となっている鋼板手入れ工程を軽減あるいは、省略できるため、生産性の向上と製造コスト低減が可能となる。従って、本発明は工業上、極めて効果が大きい。
最初に、本発明のNi含有鋼の化学成分(質量%)を限定した理由について述べる。
C:0.03〜0.02%、
Cは、強度を改善する元素であるが、0.03%未満では母材強度が確保できず、逆に0.2%を超えて含有すると母材の靭性や溶接性を阻害するために、下限値を0.03、上限値を0.2%に限定した。
Cは、強度を改善する元素であるが、0.03%未満では母材強度が確保できず、逆に0.2%を超えて含有すると母材の靭性や溶接性を阻害するために、下限値を0.03、上限値を0.2%に限定した。
Si:0.02〜0.5%、
Siは、母材強度に有効な元素である。0.02%未満ではその効果が得れず、逆に0.5%を超えて含有されると溶接熱影響部のミクロ組織中に島状マルテンサイトが生成し、溶接部の靭性が低下する。従って、その下限値を0.02%とし、上限値を0.5%とした。
Siは、母材強度に有効な元素である。0.02%未満ではその効果が得れず、逆に0.5%を超えて含有されると溶接熱影響部のミクロ組織中に島状マルテンサイトが生成し、溶接部の靭性が低下する。従って、その下限値を0.02%とし、上限値を0.5%とした。
Mn:0.3〜2.0%、
Mnも母材強度の上昇に有効な元素である。0.3%未満ではこの効果が得られず、逆に、2.0%を超えて含有すると、焼戻し脆化を促進する。従って、下限値を0.3%、上限値を2.0%とした。
Mnも母材強度の上昇に有効な元素である。0.3%未満ではこの効果が得られず、逆に、2.0%を超えて含有すると、焼戻し脆化を促進する。従って、下限値を0.3%、上限値を2.0%とした。
P:0.0005〜0.02%、
Pは旧γ粒界に偏析し靭性に有害な元素であり低いほうが望ましい。0.02%を超えて含有すると、靱性の低下が顕著になるので、上限値を0.02%とした。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.01%である。一方、0.0005%未満へのP含有量を低減するには、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0005%とした。
Pは旧γ粒界に偏析し靭性に有害な元素であり低いほうが望ましい。0.02%を超えて含有すると、靱性の低下が顕著になるので、上限値を0.02%とした。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.01%である。一方、0.0005%未満へのP含有量を低減するには、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0005%とした。
S:0.0001〜0.006%、
Sは、硫化物として鋼中に存在すると、有害な介在物となり、靱性や延性を阻害するために、低い方が好ましい。0.006%を超えて含有すると、靱性、延性の低下が顕著となるので、0.006%を上限とする。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.004%である。一方、0.0001%未満へのS含有量の低減は、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0001%とした。
Sは、硫化物として鋼中に存在すると、有害な介在物となり、靱性や延性を阻害するために、低い方が好ましい。0.006%を超えて含有すると、靱性、延性の低下が顕著となるので、0.006%を上限とする。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.004%である。一方、0.0001%未満へのS含有量の低減は、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0001%とした。
Ni:1.0〜10%、
Niは、低温靭性の確保に必須の元素であり、1.0%未満では、その効果が得られず、その下限値を1.0%とした。一方、10%を越えて含有されると経済性を損なうため、上限値を10%とした。
Niは、低温靭性の確保に必須の元素であり、1.0%未満では、その効果が得られず、その下限値を1.0%とした。一方、10%を越えて含有されると経済性を損なうため、上限値を10%とした。
Al:0.01〜0.08%、
Alは、鋼の脱酸とAl窒化物の生成により、結晶粒粒径の微細化に有効な元素であり、0.01%未満の含有ではその効果が認められないため、これを下限値とした。一方、0.08%を越えて含有すると、粗大なAl窒化物やアルミナが生成するために、母材および溶接熱影響部の特性を阻害する。従って、その上限値を0.08%とした。なお、良好な靭性確保から、より好ましい上限値は、0.05%である。
Alは、鋼の脱酸とAl窒化物の生成により、結晶粒粒径の微細化に有効な元素であり、0.01%未満の含有ではその効果が認められないため、これを下限値とした。一方、0.08%を越えて含有すると、粗大なAl窒化物やアルミナが生成するために、母材および溶接熱影響部の特性を阻害する。従って、その上限値を0.08%とした。なお、良好な靭性確保から、より好ましい上限値は、0.05%である。
N:0.002〜0.006%、
NはAl窒化物として母材の結晶粒の細粒化に必要な元素である。従って、0.002%未満の含有量では、その効果が得られず、逆に、0.006%を超えて含有されると、粗大なAl窒化物が析出し、母材靭性を阻害する。従って、その下限値を0.002%未満として、上限値を0.006%とした。
NはAl窒化物として母材の結晶粒の細粒化に必要な元素である。従って、0.002%未満の含有量では、その効果が得られず、逆に、0.006%を超えて含有されると、粗大なAl窒化物が析出し、母材靭性を阻害する。従って、その下限値を0.002%未満として、上限値を0.006%とした。
O:0.0005〜0.004%、
Oは、介在物として、靱性、延性に有害な元素であり、低い方が好ましい。0.004%を超えて含有されると、特に、靱性の低下が著しくなるので、上限値を0.004%とする。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.003%である。一方、0.0005%未満への含有量とするには、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0005%とした。
Oは、介在物として、靱性、延性に有害な元素であり、低い方が好ましい。0.004%を超えて含有されると、特に、靱性の低下が著しくなるので、上限値を0.004%とする。靱性確保から、より好ましい上限値は、0.003%である。一方、0.0005%未満への含有量とするには、生産障害と製造コストの上昇を招くので、下限値を0.0005%とした。
さらに、本発明では、母材や溶接継手の強度、靱性に有効な選択元素の限定範囲を以下の理由により決定した。
Cu:0.03〜1.5%、
Cuは母材強度上昇に有効に作用し、0.03%未満では、この効果が得れられず、逆に、1.5%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させて、靱性を阻害するために、その下限値を0.03%、上限値を1.5%とした。
Cuは母材強度上昇に有効に作用し、0.03%未満では、この効果が得れられず、逆に、1.5%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させて、靱性を阻害するために、その下限値を0.03%、上限値を1.5%とした。
Cr:0.03〜1.0%、
Crは母材強度に有効に作用し、0.03%未満では、その効果が得られず、逆に、1.0%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させ、靱性を阻害するために、その下限値を0.03%、上限値を1.0%とした。
Crは母材強度に有効に作用し、0.03%未満では、その効果が得られず、逆に、1.0%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させ、靱性を阻害するために、その下限値を0.03%、上限値を1.0%とした。
Mo:0.02〜1.0%、
Moは母材の強度上昇に有効に作用し、0.02%未満では、その効果が得られず、逆に、1.0%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させ、靱性を阻害するために、その下限値を0.02%、上限値を1.0%とした。
Moは母材の強度上昇に有効に作用し、0.02%未満では、その効果が得られず、逆に、1.0%を超えて含有すると、溶接熱影響部を硬化させ、靱性を阻害するために、その下限値を0.02%、上限値を1.0%とした。
Nb:0.003〜0.1%、
Nbは、母材の強度上昇および結晶粒の細粒化に有効な元素である。0.003%未満では、これらの効果が得られないので、その下限値を0.003%とする。逆に、0.1%を超えて含有されると溶接熱影響部におけるNb炭化物の析出により硬化し、靱性が阻害されるために、その上限値を0.1%とした。
Nbは、母材の強度上昇および結晶粒の細粒化に有効な元素である。0.003%未満では、これらの効果が得られないので、その下限値を0.003%とする。逆に、0.1%を超えて含有されると溶接熱影響部におけるNb炭化物の析出により硬化し、靱性が阻害されるために、その上限値を0.1%とした。
V:0.003〜0.1%、
Vは母材の強度上昇に有効な元素であり、0.003%未満では、この効果が得られず、逆に、0.1%を超えて含有されると母材靭性を阻害するために、その下限値を0.003%、上限値を0.1%とした。
Vは母材の強度上昇に有効な元素であり、0.003%未満では、この効果が得られず、逆に、0.1%を超えて含有されると母材靭性を阻害するために、その下限値を0.003%、上限値を0.1%とした。
Ti:0.005〜0.02%、
Tiは母材の強度上昇および結晶粒の細粒化に有効な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が得られず、逆に、0.02%を超えて含有されると、粗大なTi窒化物を形成し、母材および溶接熱影響部の靭性を阻害するので、その下限値を0.005%、上限値を0.02%とした。
Tiは母材の強度上昇および結晶粒の細粒化に有効な元素である。0.005%未満ではこれらの効果が得られず、逆に、0.02%を超えて含有されると、粗大なTi窒化物を形成し、母材および溶接熱影響部の靭性を阻害するので、その下限値を0.005%、上限値を0.02%とした。
B:0.0005〜0.002%、
Bは制御冷却および焼入れ処理を施す場合に特に有効な強度改善元素である。0.0005%未満の含有量ではその効果が得られず、逆に、0.002%を超えて含有されると、粗大な炭硼化物などを析出して、靱性を阻害するので、その下限値を0.0005%、上限値を0.002%とした。
Bは制御冷却および焼入れ処理を施す場合に特に有効な強度改善元素である。0.0005%未満の含有量ではその効果が得られず、逆に、0.002%を超えて含有されると、粗大な炭硼化物などを析出して、靱性を阻害するので、その下限値を0.0005%、上限値を0.002%とした。
Ca:0.0005〜0.005%、
Caはアルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.0005%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.005%を超えて含有されると粗大なCa含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.0005%、上限値を0.005%とした。
Caはアルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.0005%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.005%を超えて含有されると粗大なCa含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.0005%、上限値を0.005%とした。
Mg:0.0005〜0.005%、
MgはCaと同様に、アルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.0005%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.005%を超えて含有されると粗大なMg含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.0005%、上限値を0.005%とした。
MgはCaと同様に、アルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.0005%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.005%を超えて含有されると粗大なMg含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.0005%、上限値を0.005%とした。
REM:0.001〜0.01%、
REMはCaと同様にアルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.001%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.01%を超えて含有されると粗大なCa含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.001%、上限値を0.01%とした。
REMはCaと同様にアルミナや硫化マンガンなどの介在物の形態を制御することで、靱性の向上に有効な元素であり、0.001%未満の含有ではその効果が得られず、逆に、0.01%を超えて含有されると粗大なCa含有介在物などが生成して靭性を低下させる。従って、その下限値を0.001%、上限値を0.01%とした。
次に本発明での圧延素材(鋼片)と製造方法について述べる。
本発明では、鋳片を分塊圧延して製造した鋼片を圧延素材として、加熱、圧延により鋼板を製造するが、鋼片の表層下20mmまでの平均旧γ粒径が500μm以下であることを必要とする。以下のその限定理由について説明する。
図1は、発明者らが行った実験結果である。表1に示す成分を有するNi含有鋼を溶解、鋳造し、厚みが245mmの鋳片を製造した後、分塊圧延時の累積圧下率(以下、圧下率と記す)を変えることで、鋼片の表層下2〜20mmまでの平均結晶粒を215μmから650μmに変化させた試料を作成した。これらの試料から、高温引張試験片を加工し、1000℃および1250℃で加熱(30分間保持)後、800℃まで冷却し、その温度で、歪み速度0.1/sで引張試験を行い、破断した試験片から絞り値を測定した。
なお、平均旧γ粒径は、鋼片の表層下2mm〜20mm間のミクロ組織観察用試料を採取し、鏡面研磨後、γ粒現出腐食液でエッチングを行い、JIS切断法により、γ粒度を算出、それより平均旧γ粒径を求めた。
また、この800℃での引張試験は、熱間圧延を模擬したものであり、その時の絞り値が小さいほど割れが発生する可能性が高いことを示す。図1には、横軸に鋼片の結晶粒径を、縦軸には、絞り値を示した。図から明らかなように、加熱温度が、より低温である1000℃の場合、鋼片の結晶粒径の粗大化に伴い、絞り値が低下することが分かる。
この絞り値の低下は、試験後の引張試験片の破面調査の結果、Al窒化物が鋼片の旧γ粒界に相当する破面上に生成していたことから、鋼片の加熱段階で、Al窒化物が粒界に析出するが、加熱温度が1000℃と低い場合、Al窒化物が溶解せず、800℃での加工で開口し、絞り値が低下したものと考えられる。一方、加熱温度が1250℃と高い場合、Al窒化物は、加熱中に溶解することから、鋼片の旧γ粒界での破断は見られなくなる。
発明者らの経験から、絞り値が70%を下回ると、熱間圧延後の鋼板に表面疵の発生が認められるようになる。このことから、鋼片の結晶粒径(平均旧γ粒径)が500μm以下のものを用いて加熱することで、熱間圧延時、鋼片の旧γ粒界の開口を防止することができ、鋼板表面疵の発生を抑制することが可能となる。このため、本発明では鋼片の表層下2から20mmまでの平均旧γ粒径を500μm以下と限定した。なお、平均旧γ粒径は10μmでも本発明の効果は得られる。
また、鋼片内の結晶粒を規定する範囲を表層下2mmから20mmの範囲に限定したのは、鋼片の表面下2mm未満になると、次工程における加熱時のスケールオフや、熱間圧延における変形などで、鋼板表面への影響が小さくなることから、下限値を2mmとした。一方、20mmを超える鋼片での厚み位置は、熱間圧延後鋼板の表面疵に影響を与えないため、上限値を20mmとした。
鋼片の旧γ粒を細粒化する方法としては、例えば、分塊圧延の累積圧下率を適正化する方法、分塊圧延の温度を規制する方法、さらに、分塊圧延後、表裏面を短時間水冷し、その後、冷却を中断して復熱させることで表層20mmまでの範囲で熱履歴を与える方法などで、表層下2〜20mm程度の平均旧γ粒径を500μmにすることは可能である。
次に、鋳片および鋼片を加熱し、熱間圧延を施し所定の板厚の鋼板を得る。加熱温度は、熱間圧延を施すために、1000℃以上に加熱することが必要となるが、1180℃を超えると、加熱スケールによる鋼板表面の疵が生成しやすくなるので、下限温度を1000℃、上限温度を1180℃とした。
なお、加熱に先立ち、鋼板表面の切削などによる手入れ、さらに、酸化防止剤の塗布などを実施しても、本発明に対して何ら差し支えない。
さらに、本発明により熱間圧延された鋼板を用いて、所定の材質を付与するために、焼入れ焼戻し処理や焼準処理などの熱処理を施しても、本発明の鋼板表面疵の発生には、何ら影響を与えるものではない。
以下、本発明の実施例を示す。転炉および二次精錬設備を用いて溶製された鋼を、垂直型連続鋳造機により厚みが245mm〜400mmの鋳片を製造した。表2に供試鋼材の化学成分を示す。化学成分はいずれも本発明の範囲内である。表3は、それらの鋳片を用いて、本発明範囲を実施した時の実施例、および本発明範囲から逸脱した製造方法で製造した時の比較例を示した。
鋳片は分塊工程において、加熱・圧延し鋼片として製造されるが、分塊工程で加熱後、5〜60%の圧下率で分塊圧延を行い、その後、空冷もしくは水冷を実施した。
その後、冷片となった鋼片の一部から、γ粒度測定用試験片を採取し、腐食法により旧γ粒界を現出させた後、JIS切断法を用いて鋼片表面2mm〜20mm内の平均旧γ粒径を求めた。次に、加熱・圧延により、18mm〜120mmの鋼板を製造し、ショットブラスト後、目視あるいは、磁粉探傷により、鋼板表面の疵個数を求め、1m2当たりの疵個数を求めた。
表3において、全23鋼の中で、番号1、3、5、7,8、9,11、12、14、15、17、19、20、22は、本発明範囲内にて製造された鋼である。平均γ粒径は、すべて、500μm以下で製造されており、加熱温度も1000〜1180℃範囲である。その結果、圧延された鋼板表面疵個数は、0.15個/m2以下で、表面品質は良好である。
それに対し、番号2、4、6、10、13、16、18、21、23は本発明範囲を逸脱したものである。番号2、4、10、13、16、18、23は、分塊圧延時の圧下率が比較的小さく、鋼片の平均γ粒径が、500μmを超えるものである。これらの例は、次工程である加熱温度範囲は、本発明範囲であるものの、圧延された鋼板表面疵個数は、2.9〜9.3個/m2と本発明鋼より著しく高い値を示していて、表面品質が劣る。さらに、番号6、21は、鋼片の平均γ粒径は、それぞれ420μm、390μmと本発明範囲であるものの、加熱温度がそれぞれ1250℃、1270℃と本発明範囲を逸脱して加熱されたものである。その結果、スケール起因の表面疵が発生し、鋼板表面疵個数は、それぞれ9.6個/m2、3.7個/m2と本発明例を大きく超える値となっていて、表面品質が劣る。
Claims (2)
- Niを1〜10%含有するNi含有鋼の加熱、圧延において、圧延表面疵を防止するNi含有鋼の製造方法であって、質量%で、
0.03≦C≦0.2、
0.02≦Si≦0.5、
0.3≦Mn≦2.0、
0.0005≦P≦0.02、
0.0001≦S≦0.006、
1.0≦Ni≦10、
0.01≦Al≦0.08、
0.002≦N≦0.006
0.0005≦O≦0.004、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片において、表層下2〜20mmまでの平均旧オーステナイト粒径が500μm以下である鋼片を圧延素材として、1000〜1180℃で加熱し、圧延することを特徴とするNi含有鋼の製造方法。 - 、
更に、母材や継手の強度、靱性改善元素群を、質量%で、
0.03≦Cu≦1.5、
0.03≦Cr≦1.0、
0.02≦Mo≦1.0、
0.003≦Nb≦0.1、
0.003≦V≦0.1、
0.005≦Ti≦0.02、
0.0005≦B≦0.002、
0.0005≦Ca≦0.005、
0.0005≦Mg≦0.005、
0.001≦REM≦0.01、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のNi含有鋼の製造方法。
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