JP7367896B1 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

高強度と優れた低温靭性とを兼ね備え、かつ製造性にも優れる鋼板を提供する。所定の成分組成と、板厚1/4位置における残留オーステナイトの体積率が3.0%未満であり、板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の最大粒径が100μm以下であり、かつ、板厚1/2位置における、旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aが4.5以下であるミクロ組織とを有し、板厚が40mm以下、降伏強度が585MPa以上、かつ引張強度が690MPa以上である、鋼板。

Description

本発明は、鋼板に関し、特に、高強度と優れた低温靭性とを兼ね備え、液化ガス貯蔵用タンクなどの低温環境で使用される構造用鋼として好適に用いることができる鋼板に関する。また、本発明は前記鋼板の製造方法に関する。
液化ガス貯蔵用タンク等の低温用構造物に用いられる厚鋼板には、強度に加えて、低温での脆性破壊に対する安全性確保の観点から、低温靱性に優れることが要求される。例えば、液化天然ガス(LNG)は、LNGの沸点である-164℃以下の低温で貯蔵されるため、LNG貯蔵用タンクに用いられる厚鋼板には、-164℃以下の温度において優れた靱性が要求される。
そこで、従来、液化ガス貯蔵用タンク等の用途には、7%や9%と高濃度のNiを含むみ、低温靭性に優れる厚鋼板が使用されてきた。
例えば、特許文献1では、熱延鋼板に焼入れ処理、二相域焼入れ処理、および焼戻し処理を順次施すことにより、板厚40mm以上の9%Ni鋼を製造する方法が提案されている。
また、特許文献2では、優れた低温靱性を有する厚肉9%Ni鋼板を容易に製造することができる方法が提案されている。前記方法では、鋼中のSi量を低減すると同時に、適切な加熱圧延を付与し、ミクロ組織を制御することで、二相域焼入れ処理を施さなくても安定な残留オーステナイト(γ)を多量に生成でき、広い焼戻し温度範囲で優れた靭性を得ることができる。
特許文献3では、鋼板の1/4t位置における旧オーステナイトの平均粗大粒径が20μm以下である、靭性に優れたNi含有鋼板が提案されている。
特開平4-371520号公報 特開平6-184630号公報 国際公開第2020/136829号
近年、SOxやNOxの排出規制強化に伴い、船舶燃料を重油からLNGへ転換することが検討されており、7%Ni鋼板や9%Ni鋼板などNi含有量の高い鋼板を船舶燃料用タンクの本体に適用することが模索されている。この用途では、従来の地上貯蔵用タンクに比べ、板厚が薄いことが求められる。さらに、鋼材需要量が多いため、製造性に優れる鋼板が求められる。
しかし、特許文献1~3で提案されているような従来の技術には、次の問題があった。
すなわち、特許文献1で提案されている9%Ni鋼の製造方法では、熱延鋼板に対して、焼入れ処理、二相域焼入れ処理、および焼戻し処理の3段階の熱処理を施す必要がある。そのため、製造コストおよび生産性の面で不利であった。また、前記二相域焼入れ処理は、通常の焼入れ処理とは異なる特殊な温度に設定された炉を用いて行う必要がある。そのため、前記方法を適用している製造ラインでは、他の製品を製造することができないという製造上の制約があった。
また、特許文献2で提案されている厚肉9%Ni鋼板の製造方法では、Si含有量を0.10質量%以下に厳格に管理する必要があり、成分設計の自由度が低かった。
さらに、特許文献3で提案されているNi含有鋼板を製造するためには、再加熱焼入れ時の特定の温度域において昇温速度を厳密に制御する必要があるため、製造性の観点で課題があった。
本発明は上記の実状に鑑みてなされたものであり、高強度と優れた低温靭性とを兼ね備え、かつ製造性にも優れる鋼板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を達成するため、低温環境で使用される構造用鋼に好適なNiを含有する鋼板を対象に、鋼板の成分組成、製造方法に関して鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
[1] 5.0~10.0質量%のNiを添加した鋼素材を、圧下比が5以上、かつ最終5パスのうち1パス当たりの圧下率が10%以上であるパス数が2以上の条件で熱間圧延して板厚40mm以下の熱延鋼板とすることにより、オーステナイト粒を細粒化するとともに整粒化することができる。そしてその結果、前記熱延鋼板に再加熱焼入れおよび焼戻しを施した後に得られるミクロ組織においても、旧オーステナイト粒が細粒化および整粒化されるため、優れた低温靭性が得られる。
[2] 従来、優れた低温靭性を実現するためには、二相域焼入れを行って残留オーステナイト量を高める必要があった。これに対して上記のプロセスでは、熱間圧延、再加熱焼入れ、および焼戻しによりオーステナイト粒を細粒化、整粒化することができる。そのため、二相域焼入れによる残留オーステナイト量の増加を行う必要がなく、残留オーステナイトの体積率が3.0%未満であっても、優れた低温靭性が得られる。したがって、上記プロセスで得られる鋼板は、製造性にも優れている。
本発明は、以上の知見にさらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
1.質量%で、
C :0.01~0.15%、
Si:0.01~1.00%、
Mn:0.10~2.00%、
P :0.010%以下、
S :0.0050%以下、
Ni:5.0~10.0%、
Al:0.002~0.100%、および
N :0.0080%以下、を含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
板厚1/4位置における残留オーステナイトの体積率が3.0%未満であり、
板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の最大粒径が100μm以下であり、かつ、
板厚1/2位置における、旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aが4.5以下であるミクロ組織とを有し、
板厚が40mm以下であり、
降伏強度が585MPa以上、かつ、
引張強度が690MPa以上である、鋼板。
2.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~1.00%、
Cr:0.01~1.50%、
Mo:0.03~1.0%、
Nb:0.001~0.030%、
V :0.01~0.10%、
Ti:0.003~0.050%、
B :0.0003~0.0050%、
Sn:0.01~0.30%、
Sb:0.01~0.30%、
W :0%超、2.00%以下、
Co:0%超、2.00%以下、
Ca:0.0005~0.0050%、
Mg:0.0005~0.0100%、
Zr:0.0005~0.0050%、
Ta:0.01~0.20%、
Y :0.001~0.010%、および
REM:0.0010~0.0200%、
からなる群より選択される少なくとも1つを含有する、上記1に記載の鋼板。
3.上記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を、900℃以上1200℃以下の加熱温度まで加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱した鋼素材を、圧下比が5以上、かつ最終5パスのうち1パス当たりの圧下率が10%以上であるパス数が2以上の条件で熱間圧延して板厚40mm以下の熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後の熱延鋼板を、Ac3点以上900℃以下の再加熱温度まで再加熱し、焼入れする再加熱焼入れ工程と、
前記再加熱焼入れ工程後の熱延鋼板を、500℃以上650℃以下の焼戻し温度で焼戻しする焼戻し工程とを有する、鋼板の製造方法。
本発明の鋼板は、高強度と優れた低温靭性とを兼ね備えている。加えて、本発明の鋼板は、熱間圧延工程後に一般的な再加熱焼入れと焼戻しを行うことで製造できるため、本発明の鋼板を製造しているラインで他の製品を一緒に生産することもでき、製造性に優れている。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な実施形態の例を示すものであって、本発明はこれに限定されない。
[鋼板]
本発明の一実施形態における鋼板は、特定の成分組成、ミクロ組織、板厚、引張強度、および降伏強度を備えている。以下、それぞれの限定理由について説明する。
[成分組成]
まず、鋼板の成分組成の適正範囲およびその限定理由について説明する。なお、以下の説明において、含有量の単位としての「%」は、とくに断らない限り「質量%」を表す。
C:0.01~0.15%
Cは、鋼板を高強度化する効果を有する元素である。前記効果を得るために、C含有量は0.01%以上、好ましくは0.03%以上とする。一方、C含有量が0.15%より高いと低温靭性が低下する。これは、鋼板の、特に中心偏析部においてCr炭化物やNb、V、Ti系炭化物が過度に析出するためである。そのため、C含有量は0.15%以下、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
Si:0.01~1.00%
Siは、製鋼プロセスにおいて脱酸剤として作用する元素である。また、Siは、固溶強化により鋼板を高強度化する効果を有する。前記効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。一方、Si含有量が1.00%より高いと、介在物の増大により低温靭性が低下することに加え、溶接性および表面性状が劣化する。そのため、Si含有量は1.00%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下とする。
Mn:0.10~2.00%
Mnは、鋼板の焼き入れ性を高め、高強度化させる効果を有する元素である。前記効果を得るため、Mn含有量を0.10%以上、好ましくは0.40%以上とする。一方、Mn含有量が2.00%より高いと、中心偏析を助長し、低温靭性の低下を引き起こす。そのため、Mn含有量は2.00%以下、好ましくは、1.00%以下とする。
P:0.010%以下
P含有量が0.010%を超えると、低温靭性が低下する。これは、Pが粒界に偏析して粒界強度を低下させ、破壊起点となるためである。そのため、P含有量は0.010%以下とする。一方、低温靭性の観点からは、Pを可能な限り低減することが望ましいため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの上昇および生産性の低下を招く。そのため、工業的な生産の観点からは、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.0050%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、低温靭性を著しく劣化させる。そのため、Sは可能な限り低減することが望ましく、S含有量は0.0050%以下、好ましくは0.0020%以下とする。一方、低温靭性の観点からも、Sを可能な限り低減することが望ましいため、S含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの上昇および生産性の低下を招くため、工業的な生産の観点からは、S含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
Ni:5.0~10.0%
Niは、鋼板の強度を向上させる効果を有する元素である。また、Niは、鋼板の低温靭性の向上に極めて有効な元素である。Ni含有量が5.0%未満であると、所望の強度および低温靭性を得ることができない。そのため、Ni含有量は5.0%以上、好ましくは、6.5%以上、より好ましくは6.8%以上、さらに好ましくは8.0%以上とする。一方、Niは高価な元素であるため、その含有量が高いほど鋼板コストが高騰する。そのため、Ni含有量は10.0%以下、好ましくは9.5%以下とする。
Al:0.002~0.100%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、溶鋼脱酸プロセスにおいて汎用的に使用されている。また、Alは、鋼中のNと反応してAlNを形成する。この反応により固溶Nが低減される結果、低温靭性が向上する。前記効果を得るために、Al含有量を0.002%以上、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.020%以上とする。一方、Al含有量が0.100%より高いと、鋼中の介在物が増加し、かえって低温靭性が劣化する。そのため、Al含有量は0.100%以下、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.060%以下とする。
N:0.0080%以下
Nは、窒化物や炭窒化物を形成し、それにより低温靭性を低下させる。N含有量が0.0080%より高いと所望の低温靭性を得ることができない。そのため、N含有量は0.0080%以下、好ましくは0.0040%以下とする。一方、低温靭性の観点からは、Nを可能な限り低減することが望ましいため、N含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、過度の低減は製造コストの上昇および生産性の低下を招くため、工業的な生産の観点からは、N含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。
本発明の一実施形態における鋼板は、上記元素を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。
また、本発明の他の実施形態における鋼板の成分組成は、鋼板の特性をさらに向上させることを目的として、任意に、以下に挙げる元素の少なくとも1つをさらに含有することができる。
Cu:0.01~1.00%
Cuは、焼入れ性向上により鋼板強度をさらに高める効果を有する元素である。Cuを添加する場合、前記効果を得るために、Cu含有量を0.01%以上とする。一方、Cu含有量が1.00%より高いと、鋼板の低温靭性が低下することに加え、鋼素材表面の性状が悪化する。そのため、Cu含有量は1.00%以下、好ましくは、0.30%以下とする。
Cr:0.01~1.50%
Crは、鋼板強度のさらなる向上に有効な元素である。Crを添加する場合、前記効果を得るために、Cr含有量を0.01%以上とする。一方、Crは圧延中に窒化物、炭化物、炭窒化物などの析出物として析出する場合があり、前記析出物は腐食や破壊の起点となって低温靭性を低下させる。そのため、Cr含有量は1.50%以下、好ましくは1.00%以下とする。
Mo:0.03~1.0%
Moは、鋼板の焼戻し脆化感受性を抑制する効果を有する元素である。また、Moは、鋼板強度をさらに向上させる効果を有する。Moを添加する場合、前記効果を得るために、Mo含有量を0.03%以上、好ましくは0.05%超とする。一方、Mo含有量が1.0%を超えると低温靭性が低下する。そのため、Mo含有量は1.0%以下、好ましくは0.30%以下とする。
Nb:0.001~0.030%
Nbは、鋼板の強度をさらに向上させる効果を有する元素である。Nbを添加する場合、前記効果を得るために、Nb含有量を0.001%以上、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.007%以上とする。一方、Nb含有量が0.030%より高いと粗大な炭窒化物が生成し、低温靱性が低下する。そのため、Nb含有量は0.030%以下、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.022%以下とする。
V:0.01~0.10%
Vは、鋼板の強度をさらに向上させる効果を有する元素である。Vを添加する場合、前記効果を得るために、V含有量を0.01%以上、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上とする。一方、V含有量が0.10%より高いと、粗大な炭窒化物が析出し、破壊の起点となる。また、析出物が粗大化し、低温靱性を劣化させることがある。そのため、V含有量を0.10%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下とする。
Ti:0.003~0.050%
Tiは、窒化物もしくは炭窒化物として析出し、鋼板組織中のオーステナイト粒をさらに細粒化させる効果を有する元素である。Tiを添加する場合、前記効果を得るために、Ti含有量を0.003%以上、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.007%以上とする。一方、Ti含有量が0.050%より高いと、析出物が粗大化し、低温靱性が低下する。そのため、Ti含有量は0.050%以下、好ましくは0.035%以下、より好ましくは0.032%以下とする。
B:0.0003~0.0050%
Bは、鋼板の強度をさらに向上させる効果を有する元素である。Bを添加する場合、前記効果を得るために、B含有量を0.0003%以上とする。一方、B含有量が0.0050%より高いと、粗大な析出物を生成し、低温靭性が低下する。そのため、B含有量は0.0050%以下、好ましくは、0.0030%以下とする。
Sn:0.01~0.30%
Snは、鋼板の耐食性を向上させる効果を有する元素であり、少量の含有でも効果を発揮する。そのため、Snを添加する場合、Sn含有量は0.01%以上とする。一方、Snが過剰であると低温靱性が低下する。そのため、Sn含有量は0.30%以下、好ましくは0.25%以下とする。
Sb:0.01~0.30%
Sbは、Snと同様に、鋼板の耐食性を向上させる効果を有する元素であり、少量の含有でも効果を発揮する。そのため、Sbを添加する場合、Sb含有量は0.01%以上とする。一方、Sbが過剰であると低温靱性が低下することに加え、コストが上昇する。そのため、Sb含有量は0.30%以下、好ましくは0.25%以下とする。
W:0%超、2.00%以下
Wは、SnやSbと同様に、鋼板の耐食性を向上させる効果を有する元素であり、少量の含有でも効果を発揮する。そのため、Wを添加する場合、W含有量は0%超、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上とする。一方、Wが過剰であると低温靱性が低下することに加え、コストが上昇する。そのため、W含有量は2.00%以下、好ましくは0.50%以下とする。
Co:0%超、2.00%以下
Coは、Sn、Sb、Wと同様に、鋼板の耐食性を向上させる効果を有する元素であり、少量の含有でも効果を発揮する。そのため、Coを添加する場合、Co含有量は0%超、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上とする。一方、Coが過剰であるとコストが上昇する。そのため、Co含有量は2.00%以下、好ましくは1.50%以下とする。
Ca:0.0005~0.0050%
Caは、MnS等の介在物の形態制御に有効な元素である。介在物の形態制御とは、展伸した硫化物系介在物の生成を抑制し粒状の介在物とすることをいう。この介在物の形態制御を介して、低温靭性をさらに向上させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。Caを添加する場合、前記効果を得るために、Ca含有量を0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上とする。一方、Caを多く含有させると、非金属介在物量が増加し、低温靭性が低下する場合がある。そのため、Ca含有量は0.0050%以下、好ましくは0.0040%以下とする。
Mg:0.0005~0.0100%
Mgは、Caと同様に、MnS等の介在物の形態制御に有効な元素である。この介在物の形態制御を介して、低温靭性をさらに向上させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。Mgを添加する場合、前記効果を得るために、Mg含有量を0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上とする。一方、Mgを多く含有させると、非金属介在物量が増加し、低温靭性が低下する場合がある。そのため、Mg含有量は0.0100%以下、好ましくは0.0050%以下、より好ましくは0.0040%以下とする。
Zr:0.0005~0.0050%
Zrは、CaやMg同様、MnS等の介在物の形態制御に有効な元素である。この介在物の形態制御を介して、低温靭性をさらに向上させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。Zrを添加する場合、前記効果を得るために、Zr含有量を0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上とする。一方、Zrを多く含有させると、非金属介在物量が増加し、低温靭性が低下する場合がある。そのため、Zr含有量は0.0050%以下、好ましくは0.0040%以下とする。
Ta:0.01~0.20%
Taは、鋼板強度のさらなる向上に有効な元素である。Taを添加する場合、前記効果を得るために、Ta含有量を0.01%以上とする。一方、Ta含有量が0.20%を超えると、析出物生成によって低温靭性が低下する。そのため、Ta含有量は0.20%以下とする。
Y:0.001~0.010%
Yは、高温で安定な酸化物の形成に有効な元素である。前記酸化物の形成により、溶接熱影響部の旧オーステナイト粒の粗大化を効果的に抑制することが可能となり、溶接部の靭性を向上させることができる。Yを添加する場合、前記効果を得るために、Y含有量を0.001%以上とする。一方、Y含有量が0.010%を超えると、介在物量が増加し、低温靭性が低下する。そのため、Y含有量は0.010%以下とする。
REM:0.0010~0.0200%
REM(希土類金属)は、Ca、Mg、Zrと同様に、MnS等の介在物の形態制御に有効な元素である。この介在物の形態制御を介して、低温靭性をさらに向上させるとともに、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。REMを添加する場合、前記効果を得るために、REM含有量を0.0010%以上、好ましくは0.0020%以上とする。一方、REMを多く含有させると、非金属介在物量が増加して低温靭性が低下する場合がある。そのため、REM含有量は0.0200%以下とする。
[ミクロ組織]
次に本発明の鋼板のミクロ組織について説明する。本発明の一実施形態における鋼板は、ミクロ組織が下記(1)~(3)の条件を満たす。
(1)板厚1/4位置における残留オーステナイトの体積率が3.0%未満である。
(2)板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の最大粒径が100μm以下である。
(3)板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aが4.5以下である。
なお、旧オーステナイト粒とは、オーステナイト(γ)が冷却されて組織変態が起こり、別の組織となった鋼板から見た際の変態前のγ粒を指す用語である。
残留γ:3.0%未満
従来の技術では、残留オーステナイト量を高めることによって低温靭性を向上させていた。しかし、残留オーステナイト量を増加させるためには二相域焼入れが必要となり製造性が低下する。そのため、本発明では板厚1/4位置における残留オーステナイト量を体積率で3.0%未満、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.6%以下とする。一方、残留オーステナイトの体積率の下限はとくに限定されず、0%であってよく、0.5%以上であってもよい。
なお、残留オーステナイト以外の組織については特に限定されないが、上記ミクロ組織は、焼戻しマルテンサイトとベイナイトを主体とすることが好ましい。具体的には、焼戻しマルテンサイトとベイナイトの合計面積率が90%以上であることが好ましい。焼戻しマルテンサイトとベイナイトの合計面積率の上限はとくに限定されないが、100%であってよい。
前記残留オーステナイトの体積率は、X線回折により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
旧γ粒の最大粒径:100μm以下
粗大な旧オーステナイト粒が存在すると、その粗大な旧オーステナイト粒に応力が集中し、破壊の起点となるため、低温靭性が低下する。そのため、本発明では板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の最大粒径を100μm以下、好ましくは80μm以下とする。一方、前記最大粒径の下限はとくに限定されないが、旧γ粒の最大粒径を20μm以下とするためには焼入れ条件などを非常に厳格に制御する必要があるため、製造性に劣る。そのため、工業的な生産の観点からは、前記最大粒径を20μm超とすることが好ましく、22μm以上とすることがより好ましく、25μm以上とすることがさらに好ましい。なお、本発明では、旧オーステナイト粒の粒径として円相当径を用いるものとする。
前記旧オーステナイト粒の最大粒径は、光学顕微鏡により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
b/a≦4.0
本発明においては、旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aを4.5以下とする。b/aが4.5より高い場合、旧オーステナイト粒の整粒化が不十分であり、部分的に粗大な結晶粒が存在することから靭性が低下する。b/aは4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。一方、b/aの下限は特に限定されないが、理論上の下限値は1である。b/aが1に近いほど、粗大な結晶粒の生成が抑制され、整粒化が進行していることを意味するため、b/aは1に近いほど好ましい。工業的な生産の観点からは、b/aは1.2以上であってよく、1.3以上であってもよい。なお、前記aおよびbの値としては、板厚1/2位置における値を用いる。
前記平均粒径aおよび平均値bの値は、光学顕微鏡により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
また、板厚1/2位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比は、特に限定されないが、2.0以下であることが好ましい。前記アスペクト比が2.0以下であると、機械的特性の異方性、特に低温靭性の異方性が改善される。
前記旧オーステナイト粒のアスペクト比は、光学顕微鏡により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定することができる。
[板厚]
板厚:40mm以下
鋼板の板厚が40mmを超える場合、熱間圧延工程において、オーステナイト粒の細粒化および整粒が不十分となる。そしてその結果、再加熱焼入れおよび焼戻しを施した後の鋼板組織の細粒化および整粒化が不十分となり、低温靭性が低下する。そのため、鋼板の板厚は40mm以下とする。さらに、板厚が40mm以下である場合、熱処理時間が短くなるため、焼戻し時に焼戻し脆化の影響を低下させることができる。そのため、本発明においてはSi含有量の制約は小さい。一方、板厚の下限については特に限定されないが、6mm以上とすることが好ましい。
[引張強度]
TS:690MPa以上
本発明に係る鋼板の引張強度(TS)は、690MPa以上とする。本発明の鋼板は、690MPa以上という高い引張強度を有しているため、LNGタンクなどの用途に好適に用いることができる。一方、前記引張強度の上限はとくに限定されないが、例えば、830MPa以下であってよく、800MPa以下であってもよい。
[降伏強度]
YS:585MPa以上
本発明に係る鋼板の降伏強度(YS)は、585MPa以上とする。本発明の鋼板は、585MPa以上という高い降伏強度を有しているため、LNGタンクなどの用途に好適に用いることができる。一方、前記降伏強度の上限はとくに限定されないが、例えば、790MPa以下であってよく、770MPa以下であってもよい。
上記引張強度および降伏強度は、JIS Z 2204に準拠した引張試験により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定できる。
[低温靭性]
本発明に係る鋼板の低温靭性は、-196℃における吸収エネルギーvE-196が100J以上であることが好ましい。本発明の鋼板は、vE-196が100J以上という高い低温靭性を有しているため、LNGタンクなどの用途に好適に用いることができる。前記吸収エネルギーvE-196は150J以上であることが好ましい。一方、前記吸収エネルギーvE-196の上限はとくに限定されないが、例えば、400J以下であってよく、350J以下であってもよい。
上記吸収エネルギーvE-196は、JIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験により測定することができる。より具体的には、実施例に記載した方法で測定できる。
[製造方法]
次に、本発明の一実施形態における鋼板の製造方法について説明する。前記鋼板は、上述した成分組成を有する鋼素材に対して、下記の(1)~(5)の工程を順次施すことによって製造することができる。
(1)加熱工程
(2)熱間圧延工程
(3)冷却工程
(4)再加熱焼入れ工程
(5)焼戻し工程
以下、各工程における条件について説明する。なお、以下の説明において、温度「℃」は、板厚1/2位置における温度を意味するものとする。板厚1/2位置における温度は、差分計算などにより求められる。
(鋼素材)
上記鋼素材としては、任意の形態の素材を使用することができる。前記鋼素材は、例えば、鋼スラブであってよい。鋼素材の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、上記した成分組成を有する溶鋼を常法により溶製し、鋳造して製造することができる。前記溶
製は、転炉、電気炉、誘導炉等、任意の方法により行うことができる。また、前記鋳造は、生産性の観点から連続鋳造法で行うことが好ましいが、造塊法により行ってもよい。
(加熱工程)
加熱工程では、上記鋼素材を900℃以上1200℃以下の加熱温度まで加熱する。前記加熱は、鋳造などの方法によって得た鋼素材を一旦冷却した後に行ってもよく、また、得られた鋼素材を冷却することなく直接、前記加熱に供することもできる。
鋼素材を加熱するのは、鋼素材の組織中の析出物を固溶させるためである。加熱温度が900℃未満の場合、未固溶の析出物の影響が大きくなり、混粒となるなど均一な組織が得られない。そのため、鋼素材の加熱温度は900℃以上とする。一方、加熱温度が1200℃を超えると、逆変態したオーステナイト粒が著しく粗大化し、次の熱間圧延および熱処理工程を経ても鋼板組織の十分な細粒化が図れない。また、過大なエネルギーが必要となり、製造性が低下する。そのため、鋼素材の加熱温度は1200℃以下、好ましくは1150℃以下とする。なお、加熱時間は特に限定されないが、2時間以上、8時間以下とすることが好ましい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、前記加熱工程で加熱された鋼素材を熱間圧延して板厚が40mm以下の熱延鋼板とする。圧延終了温度は特に限定されないが、オーステナイト単相域となる700℃以上とすることが好ましい。前記圧延終了温度の上限はとくに限定されないが、950℃以下であることが好ましく、920℃以下であることがより好ましい。
圧下比:5以上
鋼板組織の細粒化と整粒化を図るためには、熱間圧延工程において十分な加工を加え、オーステナイト粒の再結晶を促すことが必要である。前記熱間圧延工程における圧下比が5未満の場合、加工量が不足し、粗大なオーステナイト粒が残存し、その結果、低温靭性が低下する。また、圧下比が5未満であると、ポロシティと呼ばれる内部微小空孔等の鋳造欠陥の無害化が不十分となり、低温靭性が低下する。そのため、熱間圧延工程における圧下比は5以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上とする。一方、圧下比の上限は特に限定されないが、50以下とすることが好ましい。なお、ここで前記圧下比は、(鋼素材の板厚/熱間圧延後の熱延鋼板の板厚)と定義される。
最終5パスのうち圧下率が10%以上であるパス数:2以上
鋼板組織の細粒化と整粒化には、特に、熱間圧延工程の後半においてのオーステナイト粒の再結晶が有効である。そのため、前記熱間圧延工程の最終5パスのうち1パス当たりの圧下率が10%以上であるパス数を2以上とする。前記パス数が2未満であると、オーステナイト粒の整粒化が十分に進行しない。そしてその結果、最終的に得られる鋼板におけるb/aが4.0より大きくなり、低温靭性が劣化する。b/aをさらに低減するという観点からは、前記熱間圧延工程の最終5パスのうち1パス当たりの圧下率が10%以上であるパス数は、3以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましく、5とすることがさらに好ましい。
(冷却工程)
次いで、上記熱間圧延工程で得られた熱延鋼板を冷却する。前記冷却により析出物の粗大化が抑制され、強度および靭性が向上する。前記冷却工程における冷却停止温度はとくに限定されないが、例えば、常温(20℃など)以上であってよい。また、前記冷却停止温度は、400℃以下とすることが好ましい。
前記冷却は、特に限定されることなく、例えば、空冷、水冷など、任意の方法で行うことができる。強度、低温靭性など必要な特性を高めるために、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却などの水冷を実施してもよい。ただし、水冷を行った場合、急速に冷却されるため、圧延時に形成された細長い組織が残留し、組織の異方性が大きくなる傾向がある。そのため、組織の異方性を低減するという観点からは、空冷を行うことが好ましい。
[再加熱焼入れ工程]
再加熱焼入れ工程では、前記冷却工程後の熱延鋼板を、Ac3点以上900℃以下の再加熱温度に加熱した後に焼き入れする。Ac3点以上に再加熱することにより、熱延鋼板全体の組織がオーステナイトに逆変態する。その結果、鋼板組織の細粒化がさらに生じ、低温靭性が向上する。前記再加熱温度がAc3点未満であると、加熱後の鋼板のミクロ組織中にフェライト相が含まれるため、ミクロ組織を均一にできず低温靭性が低下する。一方、前記再加熱温度が900℃を超えると、オーステナイト粒が成長して粗大になるため、低温靭性が低下する。
なお、Ac3点は下記(1)式で計算される。
Ac3(℃)=937.2-436.5C+56Si-19.7Mn-16.3Cu-26.6Ni-4.9Cr+38.1Mo+124.8V+136.3Ti-19.1Nb+198.4Al+3315B…(1)
ただし、上記(1)式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
焼入れは、特に限定されることなく、任意の条件で行うことができるが、水冷で行うことが好ましい。
前記焼入れの条件は特に限定されないが、200℃未満の冷却停止温度まで冷却することが好ましい。前記冷却停止温度は100℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。一方、前記冷却停止温度の下限はとくに限定されないが、例えば、前記冷却停止温度は室温以上であってもよい。
(焼戻し工程)
焼戻し工程では、再加熱焼入れ工程後の鋼板を500℃以上650℃以下の焼戻し温度で焼戻しする。焼戻し温度が500℃未満の場合、降伏強度が低下する。一方、焼戻し温度が650℃を超える場合は、鋼板組織の再結晶により強度が著しく低下する。したがって、焼戻し温度は、500℃以上650℃以下とする。
上記焼戻し工程の後は、鋼板を冷却することが好ましい。前記冷却の方法は特に限定されず、例えば、空冷、水冷など、任意の方法で行うことができる。
以下、本発明の作用効果について、実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
表1に示す成分組成の鋼を溶製し、鋼素材としての鋼スラブを得た。得られた鋼スラブに対して、表2に示した条件で、加熱工程、熱間圧延工程、冷却工程、再加熱焼入れ工程、および焼戻し工程を順次施して鋼板を製造した。なお、再加熱焼入れ工程においては、鋼板を表2に示した再加熱温度まで再加熱した後、200℃未満の冷却停止温度まで冷却した。
次いで、得られた鋼板のそれぞれについて、以下の手順で残留オーステナイト量(体積率)、旧オーステナイト粒の最大粒径、および旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aを測定した。測定結果を表3に示す。
(残留オーステナイト量)
得られた鋼板の板厚1/4位置が測定面となるよう、板面に平行にX線回折用試験片を採取した。前記試験片に鏡面研磨および電解研磨を施した後、X線回折に供した。対称反射X線回折パターンに現れるα-Feの(200)、(211)面、γ-Feの(200)、(220)、(311)面の回折強度を求め、次式にて残留オーステナイト量Vγを算出した。
Vγ=100/((IαRγ/IγRα)+1)
ここで、Vγ:残留オーステナイトの体積率、I:回折X線強度、R:単位体積当たりの理論強度値である。前記回折X線強度Iとしては、バックグラウンド除去後の積分強度を使用した。なお、残留オーステナイト量が極めて少ない場合には十分な測定精度が得られないため、算出された残留オーステナイト量が0.5%以下の場合についてはミクロ組織に残留オーステナイトが実質的に含まれていない(0%)と見なし、表3の残留γの体積率欄は空欄(-)とした。
表3には残留γ量のみを記載したが、全ての実施例及び比較例における鋼板は、焼戻しマルテンサイトとベイナイトを主体とするミクロ組織を有していた。具体的には、焼戻しマルテンサイトとベイナイトの合計面積率が90%以上であった。
(旧γ粒の結晶粒径)
得られた鋼板から、板厚1/2位置が観察位置となるように、組織観察用の試験片を採取した。前記試験片を、圧延方向(L方向)断面を観察面とするよう樹脂に埋め、鏡面研磨した。次いで、ピクリン酸腐食を実施した後、倍率200倍の光学顕微鏡で観察した。撮影した10視野分の画像を解析し、旧オーステナイト粒の最大粒径と、旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aを求めた。ここで、旧オーステナイト粒の粒径としては、円相当径を使用した。
また、旧オーステナイト粒を楕円近似した場合における長軸を短軸で除して得られる比率をアスペクト比として算出した。
さらに、得られた鋼板のそれぞれについて、以下の手順で機械的特性を評価した。評価結果を表3に示す。
(強度)
鋼板の板幅方向(C方向)が引張方向と一致するように、JIS Z 2201に記載の5号試験片を採取し、JIS Z 2204に準拠して引張試験を行い、降伏強度(YS)及び引張強度(TS)を求めた。
(低温靭性)
低温靭性を評価するためにシャルピー衝撃試験を行った。具体的には、まず、前記鋼板から、該鋼板の圧延方向(L方向)が長辺となるように2mmVノッチを有するシャルピー衝撃試験片を採取した。前記試験片を液体窒素中で-196℃に冷却し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃試験を行い、-196℃における吸収エネルギーvE-196を測定した。3本の試験片で同様の測定を行い、得られた吸収エネルギーvE-196の平均値を表3に示した。なお、板厚が12mm以下の場合は、サブサイズ試験片を用いて評価した。
通常の試験片を用いた場合、vE-196が100J以上を合格とした。また、サブサイズ試験片を用いた場合、vE-196が50J以上を合格とした。
表3に示した結果から分かるように、本発明例の鋼板は、上記特性を満足し、強度(引張強度及び降伏強度)、低温靭性、製造性ともに優れていた。一方、本発明の範囲を外れる比較例の鋼板は、強度(引張強度及び降伏強度)、低温靭性、製造性の少なくとも1つが劣っていた。
Figure 0007367896000001
Figure 0007367896000002
Figure 0007367896000003

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.01~0.15%、
    Si:0.01~1.00%、
    Mn:0.10~2.00%、
    P :0.010%以下、
    S :0.0050%以下、
    Ni:5.0~10.0%、
    Al:0.002~0.100%、および
    N :0.0080%以下、を含有し、
    残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
    板厚1/4位置における残留オーステナイトの体積率が3.0%未満であり、
    板厚1/2位置における旧オーステナイト粒の最大粒径が100μm以下であり、かつ、
    板厚1/2位置における、旧オーステナイト粒の平均粒径aに対する、旧オーステナイト粒の粒径の上位5%における平均値bの比b/aが4.5以下であるミクロ組織とを有し、
    板厚が40mm以下であり、
    降伏強度が585MPa以上、かつ、
    引張強度が690MPa以上である、鋼板。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Cu:0.01~1.00%、
    Cr:0.01~1.50%、
    Mo:0.03~1.0%、
    Nb:0.001~0.030%、
    V :0.01~0.10%、
    Ti:0.003~0.050%、
    B :0.0003~0.0050%、
    Sn:0.01~0.30%、
    Sb:0.01~0.30%、
    W :0%超、2.00%以下、
    Co:0%超、2.00%以下、
    Ca:0.0005~0.0050%、
    Mg:0.0005~0.0100%、
    Zr:0.0005~0.0050%、
    Ta:0.01~0.20%、
    Y :0.001~0.010%、および
    REM:0.0010~0.0200%、
    からなる群より選択される少なくとも1つを含有する、請求項1に記載の鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼素材を、900℃以上1200℃以下の加熱温度まで加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で加熱した鋼素材を、圧下比が5以上、かつ最終5パスのうち1パス当たりの圧下率が10%以上であるパス数が2以上の条件で熱間圧延して板厚40mm以下の熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
    前記熱延鋼板を冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程後の熱延鋼板を、Ac3点以上900℃以下の再加熱温度まで再加熱し、焼入れする再加熱焼入れ工程と、
    前記再加熱焼入れ工程後の熱延鋼板を、500℃以上650℃以下の焼戻し温度で焼戻しする焼戻し工程とを有する、鋼板の製造方法。
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