JP2010248621A - 高強度高靭性鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は再加熱焼入れを必要としない微細オーステナイト粒径を得る製造方法を提供する
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、さらに、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有する高強度高靭性鋼の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、靭性に優れた鋼材の製造方法に関し、特に、造船、海洋構造物、建設機械、建築、橋梁、タンク、鋼管、水圧鉄管などの溶接鋼構造物に利用する厚鋼板、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼の製造方法として好適なものに関する。
脆性破壊を起こす可能性のある大型の溶接構造物として使用される厚鋼板への要求性能は、高強度化に加え高い靭性や溶接性の確保などますます過酷化する傾向にある。鋼板の強度や板厚が増加すると、一般的に靭性は低下する傾向にあるので、厚鋼板の靭性の向上技術としては、これまで、特許文献1および特許文献2には制御圧延や制御冷却が記載され、さらには、特許文献3には直接焼入れ-焼戻し技術が記載されており、これらTMCP技術や圧延後に行うオンラインの熱処理技術の適用がなされてきた。
靭性の向上には、結晶粒の微細化が有効であることが従来から知られており、様々な検討がなされている。合金設計や圧延時の加熱温度や圧延温度などを工夫することによる細粒化も検討されているが、現状では、圧延−冷却で得られる厚鋼板のオーステナイト粒径は20〜30μm程度が限界であり、圧延後の再加熱焼入れなどで得られる結晶粒径に比べても大きく、圧延−冷却ままあるいは、圧延−冷却−焼戻しプロセスでの靭性の向上には限界がある。
特開昭57−134518号公報 特開昭59−83722号公報 特開昭63−223125号公報
上述したように、これまでの厚板製造プロセスを用いた靭性向上には限界があり、更なる靭性の向上が望まれている。本発明は、再加熱焼入れを必要としない、圧延−加速冷却ままあるいは直接焼入れ−焼戻しプロセスにおいて、微細なオーステナイト粒径を得ることにより、靭性を大幅に向上させる製造方法を得ることを目的とする。
本発明者等は、上記問題点を解決するため、オーステナイト粒径に及ぼす圧延時の加熱・冷却・圧下パターンに着目して鋭意検討を行った結果、高強度鋼において、初めにオーステナイト再結晶温度域圧延を、次にオーステナイト未再結晶温度域圧延を実施し、その後、オーステナイト再結晶温度域へ急速加熱することにより微細なオーステナイトが得られ、その後の圧延・冷却条件の組合せにより、優れた靭性が得られることを知見した。
すなわち、適正条件下の圧延時の加熱温度とオーステナイト再結晶温度域圧延により初期オーステナイト粒径の粗大化を防止して均一なオーステナイト粒を得、その後の未再結晶温度域圧延の累積圧下率を確保し、フェライト変態を生じさせることなく、Ar変態点以上の温度から再結晶温度域に短時間で加熱することにより、微細な再結晶オーステナイトが得られること、さらにその後、微細なオーステナイト粒に対して未再結晶温度域圧延を行うことにより、組織のいっそうの微細化が図られ、加速冷却後、または直接焼入れ−焼戻し後に優れた強度および靭性が得られることを知見した。
本発明の要旨はつぎのとおりである。
第一の発明は、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、さらに、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有する高強度高靭性鋼の製造方法である。
第二の発明は、鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第三の発明は、600℃以下に加速冷却した後、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有する第一または第二の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第四の発明は、質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、さらに、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率15%以上の圧延を行い、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有する高強度高靭性鋼の製造方法である。
第五の発明は、鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする第四の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第六の発明は、600℃以下に加速冷却した後、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有する第四または第五の発明に記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第七の発明は、前記累積圧下率40%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行う前のオーステナイト再結晶温度域圧延中または同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷を実施し、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷よりも速い速度で冷却する工程を有する第一乃至第六の発明のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
第八の発明は、前記オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後のオーステナイト再結晶温度域への加熱後に、15μm以下の平均オーステナイト粒径を有することを特徴とする第一乃至第七の発明のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法である。
本発明によれば、再結晶域圧延と累積圧下率40%以上の未再結晶域圧延の後に、再結晶温度域への急速加熱を行うプロセスを有することにより、急速加熱ままで15μm以下のオーステナイト粒径が得られ、本プロセスを適用しない場合と比較して、破面遷移温度を指標として約20℃〜60℃の靭性向上が認められ、強度−靭性バランスが向上し、産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.成分組成について
成分組成における%は全て質量%とする。
C:0.01〜0.30%
Cは鋼板の強度を確保するため、少なくとも0.01%の添加が必要であり0.30%を超えて添加すると、著しく溶接性を低下させ、また母材靱性を低下させるため、C量は、0.01〜0.30%の範囲とする。
Si:0.01〜0.80%
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.80%を超えて添加すると溶接性および母材靭性を著しく低下させるため、Si量は0.01〜0.80%の範囲とする。
Mn:0.20〜2.50%
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であるが、過剰に添加すると溶接性を損なう問題があるため、Mn量は0.20〜2.50%の範囲とする。
P:0.020%以下、S:0.0070%以下
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減することが好ましく、P量、S量はそれぞれ0.020%以下、0.0070%以下とする。
sol.Al:0.003〜0.100%
Alは脱酸元素であり、sol.Al量が0.003%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、sol.Al量は0.003〜0.100%の範囲とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、更に所望の特性を向上させる場合は、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、B、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を選択元素として添加することができる。
Cu:0.01〜2.0%
Cuは強度を増加させるために添加することができる元素で0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とする。
Ni:0.01〜9.0%
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能な元素である。0.01%以上の添加で効果を発揮し、9.0%超えでは効果が飽和し経済的に不利であるので、Niを添加する場合は、その量は0.01〜9.0%の範囲とする。
Cr:0.01〜3.0%
Crは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、3.0%を超えて添加すると、靭性を劣化させるため、Crを添加する場合、その量は0.01〜3.0%の範囲とする。
Mo:0.01〜2.0%
Moは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、Moを添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とする。
Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%
Nb、Vは母材の強度と靭性を向上させる元素であり、いずれも0.003%以上の添加で効果を発揮する。またそれぞれ0.1%、0.5%を超えるとかえって靭性の低下を招くおそれがある。従って、これらの元素を添加する場合、Nb量は0.003〜0.1%の範囲、V量は0.003〜0.5%の範囲とする。
Ti:0.005〜0.20%
Tiは母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保に効果があるので添加することができ、この効果は、0.005%以上の含有で生じる。しかし0.20%を超えて添加すると靭性が劣化するため添加する場合には、0.005〜0.20%の範囲とする。
B:0.0005〜0.0040%
Bは鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、この効果によって強度を増加させることができる。この効果は0.0005%以上の添加で顕著になり、0.0040%を超えて添加しても効果は飽和するため、Bを添加する場合、その量は0.0005〜0.0040%の範囲とする。
Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%
Ca、Mg、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。しかし、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させる。従って、これらの元素を添加する場合、Ca量は0.0001〜0.0060%、Mg量は0.0001〜0.0060%、REM量は0.0001〜0.0200%の範囲とする。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
2.製造条件について
上記した組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、性能所望の形状に圧延し、圧延中または圧延後に、冷却および加熱を行う。
(1)加熱温度
鋳造後、鋼片温度が室温まで低下してからあるいは高温の状態で、鋼片を加熱炉に挿入して鋼片加熱温度は1000℃以上とする。鋼片加熱温度は、靭性確保の観点からはより低温が好ましいが、1000℃未満では鋼片厚中央の未厚着ザクが残存して、板厚1/2部性能を劣化させる可能性があることと、Nb,Vなどを添加した場合には十分に固溶しないため、1000℃以上とする。また、過度の高温に加熱すると初期オーステナイト粒が粗大化し、靭性が劣化するので、通常、鋼片加熱温度は1300℃以下とするが、より好ましくは1150℃以下である。
(2)1次圧延
1次圧延は、鋼片等の鋼素材を、所望の形状とするために行い、オーステナイト再結晶温度域で1パス以上の圧下を行い、引き続き、オーステナイト未再結晶温度域で累積圧下率40%以上の圧延を行う。オーステナイト再結晶温度域圧延は加熱時のオーステナイト粒をある程度まで均一微細化するのに必要であり、1パス以上、好ましくは累積圧下率が20%以上の圧延を行う。その後のオーステナイト未再結晶温度域圧延は、圧下率が小さいと、その後急速加熱後のミクロ組織微細化効果が発揮できないため、累積圧下率40%以上を確保する。また、圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる。
また、オーステナイト再結晶温度域圧延の後、オーステナイト未再結晶温度域圧延を開始するまでの間は、空冷で待ってもよいが、オーステナイト再結晶温度域圧延中あるいは同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷により冷却を行い、オーステナイト未再結晶温度域圧延までの時間を空冷よりも短縮する方が効率的にも好ましく、また、空冷の場合に比べて水冷による冷却の方が再結晶オーステナイトの成長を抑制する効果があり、組織の微細化に対して、より有効である。
(3)1次圧延後の急速加熱
オーステナイト未再結晶温度域圧延の後、温度がAr変態点を下回ることのない温度域から、オーステナイト再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。加熱方法は特に限定しないが、高周波誘導加熱が好ましい。
加熱開始温度がAr変態点を下回れば、フェライト変態が起こり、再加熱時に逆変態によりオーステナイトは微細化されるが、その後の加熱時の加熱温度代が大きくなり効率および経済性を損なうとともに、Nb炭化物などの析出・粗大化が促進され、混粒組織となりやすく靭性低下の原因となるので、Ar変態点以上の温度から昇温を開始するのが良い。この場合の最高加熱温度はオーステナイト再結晶温度域内であることが必要であり、(オーステナイト再結晶温度の下限+100℃)以下の低温が好ましい。必要以上に温度を上げるとオーステナイト粒の成長が起こり、オーステナイトの微細化効果が得られないためである。
また、昇温速度は、2℃/sec以下では、再結晶の前に加工組織の回復や、NbやTiなどの炭化物の加工誘起析出が起こり、靭性を劣化させるため、2℃/sec以上とする。加熱後の保持は行ってもよいが、再結晶が完了するとその後に粒成長が起こるため、必要以上の保持は行うべきではなく、短時間が好ましい。
以上説明したように、初期オーステナイト粒径を制御した上でオーステナイト未再結晶温度域圧延の累積圧延率を確保し、オーステナイト再結晶温度域に急速に加熱することにより、オーステナイトの微細化が達成される。条件を整えることにより、結晶粒径が15μm以下や10μm以下のオーステナイト粒が得られる。
なお、前記オーステナイト再結晶温度域に加熱時のオーステナイト粒の形態は、その後の圧延・冷却・熱処理後、オーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液で腐食して、金属組織を観察することにより、旧オーステナイト粒界として観察することができる。よって、この組織観察結果から線分法や画像処理などの方法により求められる、旧オーステナイト粒の円相当径を以って、前記加熱時のオーステナイト粒径を把握することができる。
(4)2次圧延
急速加熱後は、ミクロ組織のいっそうの微細化やオースフォーム効果を得ることを目的として、さらに圧延を行うことができる。その場合はオーステナイト未再結晶温度域で行い、その効果を発揮するにはこの温度域において15%以上の累積圧下率が必要である。
(5)加速冷却
加速冷却は、オーステナイト再結晶温度域に急速加熱した鋼板あるいは、その後累積圧下率15%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行った鋼板に対して行い、Ar変態点以上の温度から600℃以下の温度まで行う。Ar変態点未満の温度から行った場合には一部フェライトが生成するため、所定の強度が得られない。また、600℃以上で冷却を停止した場合も同様である。冷却速度は、空冷以上の冷却速度が必要であり、10℃/secの強冷却が好ましい。冷却方法は特に限定しないが、水冷による冷却が好ましい。
(6)焼戻し
加速冷却後、必要に応じ、焼戻しを行う。焼戻しは、主として、加速冷却により焼入れを行った鋼材に対して、強度・靭性バランスの適正化、残留応力の軽減などの目的で行われ、実施する場合はAc変態点以下の温度で行う。昇温速度、保持時間は特に限定しないが、圧延ライン上の高周波誘導加熱装置などの急速加熱装置で実施することが、靭性および効率の点で好ましい。
なお、焼入れ焼戻しプロセスによらず、加速冷却ままの状態で製品となるいわゆる非調質鋼の場合には、通常、焼戻しを実施しない。
ここで、本発明における鋼材温度は、鋼材の表面と中心部の平均温度を示している。Ar、Ac変態点は鋼成分によって異なる。Ar、Ac変態点は下式によって求めることができる。但し、各式において、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
Ar=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu
Ac=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
一方、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は、鋼組成のほか、結晶粒径や加工履歴や歪量などの影響を受けるが、概ね800〜950℃の範囲にある。事前に予備試験をして調査することにより、前記下限温度を推測することができる。
本発明は厚鋼板、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼製品に適用可能である。本発明で「厚鋼板」とは、板厚6mm以上の鋼板を指すものとする。
表1に示す組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で250mm厚のスラブ(鋼素材)とし、表2および表3に示す熱間圧延条件により10〜40mm厚の鋼板を作製した。表1において、鋼種Zの供試鋼は成分組成のいずれかが本発明の範囲外となっている。
Figure 2010248621
Figure 2010248621
Figure 2010248621
得られた厚鋼板について、板厚方向1/4の位置から平行部直径6mmφの引張試験片を採取して、JIS Z 2241(1998)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さTSおよび0.2%耐力YSを求めた。
また、板厚方向1/4の位置からJIS Z 2202(1998)の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピー衝撃試験片を採取して、JIS Z 2242(1998)の規定に準拠して衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求めた。
更に、板厚方向1/4の位置から組織観察用試験片を採取し、オーステナイト粒界を優先的に腐食する腐食液で腐食後、光学顕微鏡により平均旧オ−ステナイト粒径(円相当径)を線分法にて測定した。これは、高温時のオーステナイトの粒界に相当する部分を腐食により現出するものであるが、観察時にはベイナイトやマルテンサイトなど、他の相に変態した後の状態なので、観察時に現存する組織と区別するために「旧オーステナイト(粒径)」などと称するものである。
表4および表5に試験結果を示す。
Figure 2010248621
Figure 2010248621
ここでは、引張強度950MPa以上で、シャルピー衝撃試験における脆性破面遷移温度(vTrs)が−40℃以下、旧オーステナイト粒径は15μm以下を発明例とした。
成分組成、製造条件の規定のいずれかが本発明範囲外となった鋼板No.4、5、9、10、14、30は、本発明例鋼板No.1〜3、6〜8、No.11〜13、No.15〜28と比較して靱性が劣っている。なお、鋼板No.5は、1次圧延終了温度がオーステナイト未再結晶温度域内の比較的高温域であったため、オーステナイト未再結晶温度域での圧延の累積圧下率が本発明の範囲よりも小さくなり、かつ、再加熱がない条件であったので、靱性が低下した例である。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、さらに、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有する高強度高靭性鋼の製造方法。
  2. 鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  3. 600℃以下に加速冷却した後、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有する請求項1または2に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  4. 質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後、Ar変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、さらに、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率15%以上の圧延を行い、Ar変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却する工程を有する高強度高靭性鋼の製造方法。
  5. 鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  6. 600℃以下に加速冷却した後、さらに、Ac変態点以下の温度に焼戻す工程を有する請求項4または5に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  7. 前記累積圧下率40%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行う前のオーステナイト再結晶温度域圧延中または同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷を実施し、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷よりも速い速度で冷却する工程を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
  8. 前記オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率40%以上の圧延を実施した後のオーステナイト再結晶温度域への加熱後に、15μm以下の平均オーステナイト粒径を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
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