JP5589335B2 - 高靭性鋼の製造方法 - Google Patents
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- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
(1)初めにオーステナイト再結晶温度域圧延を実施し、
次に、
(2)次にオーステナイト未再結晶温度域圧延と、それに引き続いてのオーステナイト再結晶温度域への急速加熱とからなる工程を2回以上実施する、
ことにより微細なオーステナイトが得られ、その後の圧延および/または冷却条件の組合せにより、優れた靭性が得られることを知見した。
成分組成における%は全て質量%とする。
Cは鋼板の強度を確保するため、少なくとも0.01%の添加が必要であり0.30%を超えて添加すると、著しく溶接性を低下させ、また母材靱性を低下させるため、C量は、0.01〜0.30%の範囲とする。
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.80%を超えて添加すると溶接性および母材靭性を著しく低下させるため、Si量は0.01〜0.80%の範囲とする。
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であるが、過剰に添加すると溶接性を損なう問題があるため、Mn量は0.20〜2.50%の範囲とする。
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減することが好ましく、P量、S量はそれぞれ0.020%以下、0.0070%以下とする。
Alは脱酸元素であり、0.003%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、Al量は0.003〜0.100%の範囲とする。
Cuは強度を増加させるために添加することができる元素で0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とすることが好ましい。
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能な元素である。0.01%以上の添加で効果を発揮し、9.0%超えでは効果が飽和し経済的に不利であるので、Niを添加する場合は、その量は0.01〜9.0%の範囲とすることが好ましい。
Crは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、3.0%を超えて添加すると、靭性を劣化させるため、Crを添加する場合、その量は0.01〜3.0%の範囲とすることが好ましい。
Moは強度を増加するのに有効であり、0.01%以上添加するとその効果を発揮し、2.0%を超えて添加すると、著しく靭性を劣化させるとともに経済性を損なうため、Moを添加する場合、その量は0.01〜2.0%の範囲とすることが好ましい。
Nb、Vは母材の強度と靭性を向上させる元素であり、いずれも0.003%以上の添加で効果を発揮する。またそれぞれ0.1%、0.5%を超えるとかえって靭性の低下を招くおそれがある。従って、これらの元素を添加する場合、Nb量は0.003〜0.1%の範囲、V量は0.003〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
Tiは母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保に効果があるので添加することができ、この効果は、0.005%以上の含有で生じる。しかし0.20%を超えて添加すると靭性が劣化するため添加する場合には、0.005〜0.20%の範囲とすることが好ましい。
Bは鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、この効果によって強度を増加させることができる。この効果は0.0005%以上の添加で顕著になり、0.0040%を超えて添加しても効果は飽和するため、Bを添加する場合、その量は0.0005〜0.0040%の範囲とすることが好ましい。
Ca、Mg、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。しかし、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させる。従って、これらの元素を添加する場合、Ca量は0.0001〜0.0060%、Mg量は0.0001〜0.0060%、REM量は0.0001〜0.0200%の範囲とすることが好ましい。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
上記した組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、性能所望の形状に圧延し、圧延中または圧延後に、冷却および加熱を行う。
鋳造後、鋼素材温度が室温まで低下してから、あるいは高温の状態で、鋼素材を加熱炉に挿入して鋼素材加熱温度は1000℃以上とする。鋼素材加熱温度は、靭性確保の観点からはより低温が好ましいが、1000℃未満では鋼素材の厚さ中央部付近に未圧着ザクが残存して、板厚1/2部の性能を劣化させる可能性があることと、Nb,Vなどを添加した場合には十分に固溶しないため、1000℃以上とする。また、過度の高温に加熱するとこの段階でのオーステナイト粒(後工程におけるオーステナイト量との比較のため初期オーステナイト粒とも称する)が粗大化し、これに伴い最終的に得られる金属組織も粗大化して、靭性が劣化するので、通常、鋼素材加熱温度は1300℃以下で実施され、1150℃以下であることが好ましい。
加熱された鋼素材に対して、オーステナイト再結晶温度域で1パス以上の圧下を行う圧延を実施する。オーステナイト再結晶温度域圧延は加熱時のオーステナイト粒をある程度まで均一微細化するのに必要であり、1パス以上、好ましくは累積圧下率が15%以上の圧延を行う。
引き続き、オーステナイト未再結晶温度域で累積圧下率35%以上の圧延を行う。このオーステナイト未再結晶温度域圧延は、圧下率が小さいと、その後に実施する急速加熱後のミクロ組織微細化効果が発揮できないため、累積圧下率35%以上を確保する。また、圧下率は高い方が好ましいが、工業的には80%程度が上限となる。
オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延の後、温度がAr3変態点を下回ることのない温度域から、オーステナイト再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。加熱方法は特に限定しないが、高周波誘導加熱が好ましい。
前記オーステナイト未再結晶温度域での第一の圧延の後の急速加熱後は、ミクロ組織の一層の微細化やオースフォーム効果を得ることを目的として、さらにオーステナイト未再結晶温度域で第二の圧延を行う必要がある。その効果を発揮するには、この温度域で35%以上の累積圧下率が必要である。
前記オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後の急速加熱は、オーステナイト未再結晶温度域での第二の圧延の後、温度がAr3変態点を下回ることのない温度域から、オーステナイト再結晶温度域までを2℃/sec以上の昇温速度で加熱する。
上記の(5)および(6)からなる工程を更に1回または複数回実施することにより、オーステナイト粒の一層の微細化を図ることができる。
加速冷却は、上述の製造プロセスのうち、オーステナイト再結晶温度域への最後の急速加熱を実施した鋼に対して行い、Ar3変態点以上の温度から600℃以下の温度まで行う。Ar3変態点未満の温度から行った場合には一部フェライトが生成するため、所定の強度が得られない。また、600℃以上で冷却を停止した場合も、同様に一部フェライトが生成するため、所定の強度が得られない。冷却速度は、空冷以上の冷却速度が必要であり、10℃/secの強冷却が好ましい。冷却方法は特に限定しないが、水冷による冷却が好ましい。
加速冷却後、必要に応じ、焼戻しを行う。焼戻しは、主として、加速冷却により焼入れを行った鋼材に対して、強度・靭性バランスの適正化、残留応力の軽減などの目的で行われ、実施する場合はAc1変態点以下の温度で行う。昇温速度、保持時間は特に限定しないが、圧延ライン上の高周波誘導加熱装置などの急速加熱装置で実施することが、靭性および効率の点で好ましい。
Ar3=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu
Ac1=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
一方、オーステナイト再結晶温度域の下限温度は、鋼組成のほか、結晶粒径や加工履歴や歪量などの影響を受けるが、概ね800〜950℃の範囲にある。事前に予備試験をして調査することにより、前記下限温度を推測することができる。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.01〜0.30%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、Al:0.003〜0.100%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、1000℃以上に加熱し、オーステナイト再結晶温度域において圧延後、オーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第一の圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で加熱し、続いてオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の第二の圧延を終了後、Ar3変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱し、Ar3変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする高強度高靭性鋼の製造方法。
- 前記第二の圧延終了後にオーステナイト再結晶温度域まで加熱昇温した後に、さらにオーステナイト未再結晶温度域において累積圧下率35%以上の圧延を実施する圧延工程と、該圧延終了後、Ar3変態点以上の温度からオーステナイト再結晶温度域まで2℃/sec以上の昇温速度で再加熱する加熱工程とからなる圧延・加熱工程を一回以上行った後に、Ar3変態点以上の温度から600℃以下に加速冷却することを特徴とする請求項1記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
- 鋼組成に、更に、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜9.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%、Ti:0.005〜0.20%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
- 600℃以下に加速冷却した後に、さらに、Ac1変態点以下の温度に焼戻す工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
- 前記累積圧下率35%以上のオーステナイト未再結晶温度域圧延を行う前のオーステナイト再結晶温度域圧延中または同オーステナイト再結晶温度域圧延後に水冷を実施し、オーステナイト未再結晶温度域まで空冷よりも速い速度で冷却する工程を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高靭性鋼の製造方法。
- 前記加速冷却の直前に実施されるオーステナイト再結晶温度域への加熱時の、平均オーステナイト粒径が15μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高強度高靭性鋼の製造方法。
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