JP2003119543A - 塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材およびその製造方法

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JP2003119543A
JP2003119543A JP2001317264A JP2001317264A JP2003119543A JP 2003119543 A JP2003119543 A JP 2003119543A JP 2001317264 A JP2001317264 A JP 2001317264A JP 2001317264 A JP2001317264 A JP 2001317264A JP 2003119543 A JP2003119543 A JP 2003119543A
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Kiyotaka Nakajima
清孝 中島
Tadashi Ishikawa
忠 石川
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼
材およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 質量%で、C:0.005〜0.15
%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5〜2%、P:
0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.00
1〜0.05%、Ti:0.001〜0.05%、N:
0.001〜0.008%を含有し、残部Feおよび不
可避不純物からなり、パーライトを面積率で5%未満含
む、フェライトを主とするミクロ組織、あるいは、ラン
ダムに分散されたパーライトを面積率で5%以上20%
未満含む、フェライトを主とする層状組織ではないミク
ロ組織を有し、30%の塑性歪が導入された場合の歪時
効前の靭性劣化量が、限界CTOD値が0.1mmのとき
の温度シフト量で、30℃以下であることを特徴とする
塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地震によって1回
あるいは繰返しの大きな塑性変形を受けるような溶接構
造物に使用される塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構
造用鋼材およびその製造方法に関するものである。例え
ば、この鋼材は海洋構造物、圧力容器、造船、橋梁、建
築、ラインパイプ等の溶接構造物一般に用いることがで
きるが、特に耐震性を必要とする建築、橋梁等の構造物
用鋼材として有用である。
【0002】
【従来の技術】従来から行われている耐震設計は、地震
時に柱や梁の構造体が塑性化することによりエネルギー
を吸収させ、建築物の耐震安全性を確保しようとするも
のである。このため、建築用鋼材は、低降伏比鋼(低Y
R鋼)や高一様伸び鋼が求められるようなった。低降伏
比化の手段については数多く提案されており、さらに焼
入れ停止温度の制御によりセメンタイトを安定化させ
て、直接的に延性特性(一様伸び)を向上させる技術も
特開平6−25737号公報に開示されている。
【0003】地震による構造物の崩壊が材料の延性破壊
のみによって引き起こされるのであれば、このような鋼
材の使用は構造物の安全性向上につながる。しかし、阪
神大震災のような巨大地震において鋼材は必ずしも延性
破壊で終局的な崩壊に至っているわけではなく、1回あ
るいは繰返しの大きな塑性変形を受けることによって鋼
材の靭性が劣化し、脆性破壊が生じた可能性が震災後の
様々な調査によって示された。
【0004】鋼材の靭性は、塑性歪を受けた場合、歪時
効により劣化することが知られていた。しかし、阪神大
震災で発生した脆性破壊の多くは、部材に大規模な塑性
変形が発生した直後、歪時効の影響が現れる前に、脆性
き裂が発生・進展していた。このため、塑性歪を受けた
直後の歪時効の影響が現れる前において靱性劣化が少な
い鋼板が切望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】構造物の安全確保の観
点からは当然のことながら脆性破壊発生抑制を考慮する
ことが第一である。したがって、阪神大震災のような大
地震の場合、脆性破壊防止のためには、大きな塑性変形
を受けたときの靭性劣化量を少なくし、脆性破壊を生じ
難くさせることが非常に重要な課題であり、本発明はそ
のような塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材
およびその製造方法を提供することをその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、種々のミク
ロ組織を有する鋼を用いて、塑性歪を実験的に付与し、
シャルピー衝撃試験を行い、遷移温度の変化から靭性変
化量を調べた。その結果、塑性歪による靭性変化量は、
鋼材のミクロ組織に大きく依存することを知見した。本
発明はかかる知見に基づき完成されたもので、その要旨
とする所は以下の通りである。
【0007】(1)質量%で、C:0.005〜0.1
5%、Si:0.01〜1%、Mn:0.5〜2%、
P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.
001〜0.05%、Ti:0.001〜0.05%、
N:0.001〜0.008%を含有し、残部Feおよ
び不可避不純物からなり、パーライトを面積率で5%未
満含む、フェライトを主とするミクロ組織を有し、30
%の塑性歪が導入された場合の歪時効前の靭性劣化量
が、限界CTOD値が0.1mmのときの温度シフト量
で、30℃以下であることを特徴とする塑性歪による靭
性劣化の少ない溶接構造用鋼材。 (2)質量%で、C:0.005〜0.15%、Si:
0.01〜1%、Mn:0.5〜2%、P:0.05%
以下、S:0.02%以下、Al:0.001〜0.0
5%、Ti:0.001〜0.05%、N:0.001
〜0.008%を含有し、残部Feおよび不可避不純物
からなり、ランダムに分散されたパーライトを面積率で
5%以上20%未満含む、フェライトを主とする層状組
織ではないミクロ組織を有し、30%の塑性歪が導入さ
れた場合の歪時効前の靭性劣化量が、限界CTOD値が
0.1mmのときの温度シフト量で、30℃以下であるこ
とを特徴とする塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造
用鋼材。 (3)質量%で、Cu:0.1〜2.5%、Ni:0.
1〜5%、Cr:0.1〜1%、Mo:0.1〜1.5
%、Nb:0.005〜0.2%、V:0.005〜
0.2%、B:0.0002〜0.005%の1種また
は2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記
(1)または(2)に記載の塑性歪による靭性劣化の少
ない溶接構造用鋼材。 (4)フェライトの結晶粒径が10μm以下であること
を特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の
塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材。 (5)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の溶接構
造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上125
0℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再結晶γ
域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域で圧延
を行い、5〜20℃/sの冷却速度で100〜600℃
まで加速冷却することを特徴とする塑性歪による靭性劣
化の少ない溶接構造用鋼材の製造方法。 (6)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の溶接構
造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上125
0℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再結晶γ
域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域で圧延
を行い、200℃以下まで空冷し、その後、Ac3 変態
点+50℃〜Ac3 変態点+200℃まで再加熱し、5
〜20℃/sの冷却速度で200℃以下まで加速冷却、
あるいは、200℃以下まで空冷することを特徴とする
塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材の製造方
法。 (7)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の溶接構
造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上125
0℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再結晶γ
域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域と、A
3 変態点−100℃〜Ar3 変態点の2相域とで圧延
を行い、5〜20℃/sの冷却速度で200℃以下まで
加速冷却、あるいは200℃以下まで空冷することを特
徴とする塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材
の製造方法。 (8)さらに、300〜650℃で焼戻しを行うことを
特徴とする前記(5)乃至(7)のいずれかに記載の塑
性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材の製造方
法。
【0008】
【発明の実施の形態】フェライト−パーライトの層状組
織を有する一般的な鋼を用いて、種々の塑性歪を付与
後、脆性破壊したときの破面を詳細に観察した結果、フ
ェライト−パーライト界面剥離、あるいは、界面近傍の
セメンタイトの割れが脆性破壊の起点となっていること
を知見した。これは、不均一組織であるがゆえに、フェ
ライト−パーライト界面への局所的な変形によって応力
・歪が集中したことが原因である。以下に、ミクロ組織
の限定理由を述べる。
【0009】パーライト面積率を5%未満に低減した鋼
ならば、局所的な変形が緩和され、脆性破壊発生起点が
減少し、塑性歪による靭性劣化量が少なくなることか
ら、これに限定した。パーライト面積率が5%以上存在
していても、層状ではなく、ランダムに分散させること
で、不均一な変形を回避できる。しかし、20%以上で
は、その効果がなくなるので、20%未満とした。フェ
ライトの結晶粒径が大きいと、塑性歪を付与したときの
堆積転位による応力集中が重畳され、脆性破壊が生じや
すくなるために、10μm以下が望ましい。
【0010】本発明における化学成分に関しての要件
は、ミクロ組織の要件と構造用鋼としての基本的な強
度、靭性を満足するための限定である。各合金元素の範
囲を限定した理由を以下に述べる。なお、以下%は質量
%を意味するものとする。
【0011】Cは、鋼の強度を向上させる有効な成分と
して含有するもので、0.005%未満では母材強度を
確保するのが困難である。0.15%超では母材および
溶接部の靭性や耐溶接割れ性の低下、または、パーライ
ト面積率の増加を招き靭性劣化量が増大するので、0.
05〜0.15%とした。
【0012】Siは、脱酸元素として、また、母材の強
度確保に有効な元素であるが、0.01%未満の含有で
は脱酸が不十分となり、また、強度確保に不利である。
逆に1%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を形成して
延性や靭性の劣化を招く。そこで、Siの範囲は0.0
1〜1%とした。
【0013】Mnは、母材の強度、靭性の確保に必要な
元素であり、0.5%以上含有する必要があるが、溶接
部の靭性、割れ性等材質上許容できる範囲で上限を2%
とした。
【0014】Pは、鋼素材の靭性に影響を与える元素で
あり、極力少ない方が好ましいが、塑性歪による靭性劣
化には、大きな影響を与えない。精錬工程の負荷を軽減
して、生産性の向上、コスト低下を考慮して、許容でき
るP量の上限を実験結果に基づいて0.05%とした。
【0015】Sは、低いほど好ましく、0.02%を超
えるとMnS析出が顕著になり、母材の靭性を阻害し、
板厚方向の延性も低下させる。そのためその量を0.0
2%以下とした。
【0016】Alは、脱酸、オーステナイト粒径の細粒
化等に有効な元素であり、効果を発揮するためには0.
001%以上含有する必要がある。一方、0.05%を
越えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性
を極端に劣化させるため、その量を0.001〜0.0
5%とした。
【0017】Tiは、析出強化により母材強度向上に寄
与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加
熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素であり、効
果を発揮するためには0.001%以上含有する必要が
ある。一方、0.05%を越えると、粗大な酸化物を形
成して延性を極端に劣化させるため、その量を0.00
1〜0.05%とした。
【0018】Nは、AlやTiと化合してオーステナイ
ト粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械的性質
の向上に寄与する。また、工業的に鋼中のNを完全に除
去することは不可能であり、必要以上に低減することは
製造工程に過大な負担をかけるため好ましくない。その
ため工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容で
きる範囲として下限を0.001%とする。過剰に含有
すると、固溶Nが増加し、歪時効特性が劣化するため
に、上限を0.008%とした。
【0019】選択的に添加するCu、Ni、Cr、M
o、Nb、Bは全て焼入れ性を向上させる元素であり、
パーライト変態を抑制するために、基本成分に1種また
は2種以上含有することが効果的である。以下に各元素
の成分限定理由を述べる。
【0020】Cuは、靭性を低下させずに強度の上昇に
有効な元素であるが、0.1%未満では効果がなく、
2.5%を超えると鋼片加熱時や溶接時に割れを生じや
すくするために、その量を0.1〜2.5%とした。
【0021】Niは、靭性および強度の改善に有効な元
素であり、その効果を得るためには0.1%以上の添加
が必要であるが、5%を超えて添加しても効果が飽和す
る一方で、溶接性が劣化するために、その量を0.1〜
5%とした。
【0022】Crは、焼入れ性を高めて強度を確保する
上で0.1%以上必要である。一方、1%を超えるとN
iと同様の理由で好ましくない。したがって、その量を
0.1〜1%とした。
【0023】Moは、焼入れ性向上、強度向上、耐焼戻
し脆化、再結晶抑制に有効な元素で、その効果を得るた
めには0.1%以上の添加が必要であるが、1.5%を
超えると靭性および溶接性が劣化する。したがって、そ
の量を0.1〜1.5%とした。
【0024】Nbは、析出強化により母材の強度向上に
寄与するが、0.005%未満では効果がなく、0.2
%を超える過剰の添加では、延性や靭性が劣化する。し
たがって、その量を0.005〜0.2%とした。
【0025】Vは、Nbと同様に析出強化により母材強
度上昇に効果を示す元素である。0.005%未満では
効果がなく、0.2%を超える過剰の添加では、延性や
靭性が劣化する。したがって、その量を0.005〜
0.2%とした。
【0026】Bは、固溶状態でオーステナイト粒界に偏
析することで、微量で焼入れ性を高めることが可能な元
素であるが、粒界に偏析した状態では、オーステナイト
の再結晶抑制にも有効である。焼入れ性、再結晶抑制に
効果を発揮するためには0.0002%以上の添加が必
要であるが、一方、0.005%を超える過剰の添加
は、粗大な析出物を生じて、靭性が劣化するため、0.
0002〜0.005%に限定した。
【0027】次に、本発明の塑性歪による靭性劣化量が
少ない溶接構造用鋼材の製造に際しての限定理由を述べ
る。熱間圧延に先立ち、鋼塊を100%オーステナイト
化する必要があり、このためには鋼塊の温度をAc3
態点以上に加熱する必要がある。しかし、1250℃を
超えて加熱すると、オーステナイト粒が著しく粗大化
し、圧延後に10μm以下の細粒組織が得られなくなる
ので、加熱温度の上限は1250℃とした。
【0028】鋼塊を加熱後、950℃以上の再結晶オー
ステナイト域で圧延を開始する。これは、オーステナイ
ト粒径の再結晶による微細化および、層状組織の原因と
なる偏析帯の解消のためである。さらに、微細な組織を
得るためには850℃以下の未再結晶オーステナイト域
での圧延を行うことが望ましい。
【0029】圧延後の加速冷却は、パーライト面積率を
5%以下に低減させるためである。5℃/s以下では、
この効果は得られず、20℃/s以上ではマルテンサイ
ト主体組織となり、素材の靭性を損なうために上限を2
0℃/sとした。加速冷却の停止温度を100〜600
℃としたのは、その温度範囲ならば変態が十分に終了し
ており、ミクロ組織の構成に影響を及ぼさないために、
この範囲に限定した。
【0030】また、オーステナイト域で圧延後、空冷し
た場合には、塑性歪による著しい靭性の劣化を招くフェ
ライトーパーライト層状組織が発達する。これを回避す
るためには、Ac3 変態点+50℃〜Ac3 変態点+2
00℃まで再加熱後、空冷あるいは加速冷却することが
必要である。この処理を行うことによって、層状組織の
原因となる圧延中に延伸化された偏析帯が解消され、パ
ーライトがランダムに分散、あるいはパーライト面積率
が5%以下の微細なミクロ組織を形成することが可能で
ある。Ac3 変態点+50℃以下の温度では、オーステ
ナイトへの逆変態が完全には行われず、Ac3 変態点+
200℃以上の温度では、オーステナイト粒の粗大化が
始まり好ましくない。したがってこの範囲に限定した。
【0031】また、オーステナイト域で圧延後、2相域
で圧延を行うことにより、フェライト粒の微細化および
第二相組織の分散化が図れる。Ar3 変態点−100℃
以下では、展伸化した加工フェライト集合組織が発達
し、セパレーションが問題となり好ましくない。したが
って、この範囲に限定した。
【0032】前記(8)に記載の圧延、冷却後に引き続
き実施する焼戻し処理は、回復による母材組織の靭性向
上を目的としたものであるから、加熱温度は、逆変態が
生じない温度である650℃以下でなければならない。
回復は転位の消滅、合体により格子欠陥密度を減少させ
るものであり、これを実現させるためには300℃以上
に加熱することが必要であるため、下限を300℃とし
た。
【0033】
【実施例】表1に示す化学成分の供試鋼を用いて、表2
に示す製造条件で製造した板厚20〜40mmの厚鋼板に
ついて、結晶粒径、ミクロ組織の状態、母材の降伏強
度、引張強度、限界CTODが0.1mmとなる温度、及
び30%予歪材(塑性歪を付与した材料)の限界CTO
Dが0.1mmとなる温度、限界CTODが0.1mmとな
る温度のシフト量を表3に示す。
【0034】母材の引張特性は、板厚の1/4t部から
圧延方向に平行に採取したJISA2号引張試験片を用
いて常温試験により測定した。母材の靭性は、引張試験
と同一の位置、方向から採取した板厚貫通方向の疲労ノ
ッチ付き3点曲げ試験片により評価した。塑性歪付与後
の靭性は、長手方向と圧延方向が平行となるように採取
した矩形試験片に予め30%の塑性歪(公称歪)を長手
方向に付与した後、母材と同様にCTOD試験によって
評価した。温度シフト量は、母材と予歪材の限界CTO
Dが0.1mmとなる温度を測定し、予歪材の温度と母材
の温度の差をとることで算出した。
【0035】表1、2に示すように、鋼番1、3、4、
6〜8、10〜15、17、18、20の鋼板は本発明
の範囲内の化学成分及び製造法方法で製造されている。
これにより、表3に示すように所望の結晶粒径及びミク
ロ組織が得られ、30%の塑性歪付与後の限界CTOD
が0.1mmとなる温度シフト量が30℃以下となってい
る。
【0036】鋼番2、5、9、16、19は、本発明の
化学成分の範囲内であるが、製造方法の範囲を満たして
いないために、ミクロ組織あるいは、結晶粒径の要件が
満たされていない。鋼番21、24、26、27、29
は、本発明の製造方法の範囲内であるが、化学成分の範
囲を満たしていないために、ミクロ組織あるいは、結晶
粒径の要件が満たされていない。鋼番22、23、2
5、28、30は、化学成分、製造方法ともに本発明の
範囲内を満たしていないために、ミクロ組織あるいは、
結晶粒径の要件が満たされていない。したがって、これ
らの鋼板では、塑性歪付与後の靭性劣化量が大きくなっ
ており、実構造物に使用中に大地震によって大きな塑性
歪を受けた場合、脆性破壊が起こる危険性が生じる。
【0037】以上の実施例から、本発明により製造され
た鋼材は、使用中に大地震による大きな塑性歪を受ける
ような構造物に使用された場合にも従来にない高い安全
性を有していることが明白である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】本発明は使用中に大地震による大きな塑
性歪を受けるような場合にも、材質、特に靭性の劣化が
小さい安全性の非常に大きな溶接用鋼材を特殊な合金元
素を用いることなく、通常の鋼材の製造プロセスにおい
て可能にしたものであり、その産業上の効果は極めて大
きいといえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/58 C22C 38/58 Fターム(参考) 4E002 AA07 AD07 BD07 BD08 CB01 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA11 AA14 AA15 AA16 AA19 AA20 AA21 AA22 AA23 AA24 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 BA01 CA02 CA03 CC03 CD02 CD03 CF01 CF02 CF03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.005〜0.15%、 Si:0.01〜1%、 Mn:0.5〜2%、 P :0.05%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.001〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、 N :0.001〜0.008% を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、パー
    ライトを面積率で5%未満含む、フェライトを主とする
    ミクロ組織を有し、30%の塑性歪が導入された場合の
    歪時効前の靭性劣化量が、限界CTOD値が0.1mmの
    ときの温度シフト量で、30℃以下であることを特徴と
    する塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C :0.005〜0.15%、 Si:0.01〜1%、 Mn:0.5〜2%、 P :0.05%以下、 S :0.02%以下、 Al:0.001〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、 N :0.001〜0.008% を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、ラン
    ダムに分散されたパーライトを面積率で5%以上20%
    未満含む、フェライトを主とする層状組織ではないミク
    ロ組織を有し、30%の塑性歪が導入された場合の歪時
    効前の靭性劣化量が、限界CTOD値が0.1mmのとき
    の温度シフト量で、30℃以下であることを特徴とする
    塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材。
  3. 【請求項3】 質量%で、 Cu:0.1〜2.5%、 Ni:0.1〜5%、 Cr:0.1〜1%、 Mo:0.1〜1.5%、 Nb:0.005〜0.2%、 V :0.005〜0.2%、 B :0.0002〜0.005%の1種または2種以
    上を、さらに含有することを特徴とする請求項1または
    2に記載の塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼
    材。
  4. 【請求項4】 フェライトの結晶粒径が10μm以下で
    あることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に
    記載の塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
    溶接構造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上
    1250℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再
    結晶γ域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域
    で圧延を行い、5〜20℃/sの冷却速度で100〜6
    00℃まで加速冷却することを特徴とする塑性歪による
    靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
    溶接構造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上
    1250℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再
    結晶γ域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域
    で圧延を行い、200℃以下まで空冷し、その後、Ac
    3 変態点+50℃〜Ac3 変態点+200℃まで再加熱
    し、5〜20℃/sの冷却速度で200℃以下まで加速
    冷却、あるいは、200℃以下まで空冷することを特徴
    とする塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
    溶接構造用鋼材製造において、鋼片をAc3 変態点以上
    1250℃以下の温度に加熱した後、950℃以上の再
    結晶γ域で圧延を開始し、850℃以下の未再結晶γ域
    と、Ar3 変態点−100℃〜Ar3 変態点の2相域と
    で圧延を行い、5〜20℃/sの冷却速度で200℃以
    下まで加速冷却、あるいは200℃以下まで空冷するこ
    とを特徴とする塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造
    用鋼材の製造方法。
  8. 【請求項8】 さらに、300〜650℃で焼戻しを行
    うことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記
    載の塑性歪による靭性劣化の少ない溶接構造用鋼材の製
    造方法。
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