JP4051042B2 - Crを含有する電縫鋼管およびその製造方法 - Google Patents
Crを含有する電縫鋼管およびその製造方法 Download PDFInfo
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マルテンサイト系高Cr電縫鋼管は、炭素鋼鋼管に比べて耐食性が高く、容易に高強度化が可能であり、また、オーステナイト系ステンレス鋼管に比べて安価であることから、高い耐食性や強度を要求される部位に広く使用されている。例えば、石油・天然ガスの輸送で湿潤炭酸ガスや湿潤硫化水素を含むような過酷な腐食環境で用いられるラインパイプや、火力発電ボイラの主蒸気配管のような高温での高いクリープ強度と耐酸化性が要求される環境で用いられるボイラ鋼管等が挙げられる。
フェライト系ステンレス電縫鋼管は、オーステナイト系ステンレス鋼管に比べて強度、加工性、溶接性等は劣るものの、耐酸化性、耐応力腐食割れ性、耐熱疲労特性等に優れ、しかも安価であることから、高い耐食性を要求される部位に広く使用されている。例えば、自動車排気系のパイプ、発電プラントの空気加熱器、給湯配管等が挙げられる。
オーステナイト系ステンレス電縫鋼管は、フェライト系ステンレス鋼管に比べて高価であるが、高温強度、加工性、溶接性等に優れるため、発電ボイラの過熱器、化学プラント、熱交換器等に用いられる。
Cr−Moを含有する低合金電縫鋼管は、ステンレス鋼に比べて安価であり、高温強度に優れるため、発電ボイラ、化学プラント、熱交換器等に広く用いられる。
更に、本出願人は、先に、溶接部品質を向上させるために電縫鋼管の突合せ端面を電縫溶接する際に還元性高温燃焼炎或いはプラズマを高速で吹付ける技術を特許文献18で提案している。
(1)Crを含有する電縫鋼管の電縫溶接部の接合界面に存在する介在物の占有面積率の合計が0.05%以下であり、個々の前記介在物の占有面積が0.01mm2以下であり、かつ、前記介在物の数密度が接合界面1mm2あたり0.1個以下であることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管。
(2)前記電縫鋼管が、質量%で9〜15%のCrを含有するマルテンサイト系高Cr電縫鋼管であることを特徴とする(1)記載のCrを含有する電縫鋼管。
(3)前記電縫鋼管が、質量%で10.5〜25%のCrを含有するフェライト系ステンレス電縫鋼管であることを特徴とする(1)記載のCrを含有する電縫鋼管。
(4)前記電縫鋼管が、質量%で15〜30%のCrおよび5〜30%のNiを含有するオーステナイト系ステンレス電縫鋼管であることを特徴とする(1)記載のCrを含有する電縫鋼管。
(5)前記電縫鋼管が、質量%で1〜9%のCrを含有し、MoとWの添加量の合計が0.1〜3.0%である低合金電縫鋼管であることを特徴とする(1)記載のCrを含有する電縫鋼管。
(6)(1)〜(5)の何れかの項に記載のCrを含有する鋼板を管状に成形加工し、その突合せ端面を電縫溶接する際に、少なくとも溶接点から溶接上流側に給電距離の1/5だけ離れた位置までの全範囲にわたる突合せ端面に対して、還元性雰囲気で、かつ1400℃以上の温度を有する還元性高温燃焼炎を流速が200m/s以上の条件で吹き付けることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
(7)(1)〜(5)のいずれかの項に記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法において、鋼板を管状に成形加工し、その突合せ端面を電縫溶接する際に、少なくとも溶接点から溶接上流側に給電距離の1/5だけ離れた位置までの全範囲にわたる突合せ端面に対して、非酸化性雰囲気で、かつ1400℃以上の温度を有する非酸化性高温プラズマを流速が30〜230m/sの条件で吹き付けることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
(8)前記還元性高温燃焼炎は、CO:1〜5体積%、及び、H:1〜10体積%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする(6)記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
(9)前記非酸化性高温プラズマは、Ar単独ガス、または、ArとN2、H2及びHeのうちの少なくとも一種以上との混合ガスであることを特徴とする、(7)記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
先ず、マルテンサイト系高Cr電縫鋼管におけるCrは鋼材に耐食性を付与する元素であり、マルテンサイト組織を主体とした高Cr鋼とするための必須の元素である。質量%でのCrの含有量が15%を越えると、他の合金元素を如何に調整してもマルテンサイト組織を得るのが困難となるため、添加量の上限は15%が好ましく、また、Crの含有量が9%未満になると十分な耐食性が得られないので下限は9%が好ましい。
次に、オーステナイト系ステンレス電縫鋼管におけるCrは鋼材に耐食性を付与する元素であり、オーステナイト系ステンレス鋼とならしめるための必須の元素である。質量%でのCrの含有量が30%を越えるとオーステナイト系ステンレス鋼としては高価になるため、添加量の上限は30%が好ましく、また、Crの含有量が15%未満になると、オーステナイト系ステンレス鋼としては十分な耐食性が得られないので下限は15%が好ましい。また、Niはオーステナイト組織とするために必須の元素である。質量%でのNiの含有量が30%を越えると高価になるため、添加量の上限は30%が好ましく、また、Niの含有量が5%未満になると、オーステナイト組織が得られないので下限は5%が好ましい。
次に、Cr−Moを含有する低合金電縫鋼管におけるCr、MoおよびWはいずれも鋼材に高温強度を付与する元素である。Crの含有量が9%を越えると上記マルテンサイト系高Cr電縫鋼管の範疇に入り、また、Crの含有量が1未満になると、電縫溶接部の品質に優れる電縫鋼管の製造が困難なくなされているために、下限は1%とした。また、MoとWの含有量の合計が3.0%を越えると低合金電縫鋼管としては高価になるため、添加量の上限は3.0%が好ましく、また、MoとWの含有量の合計が0.5%未満になると、十分な高温強度が得られないので下限は15%が好ましい。
従って、請求項2〜5に記載のCr添加量はそれぞれに記載の金属組織を容易に得ることが可能であることを主眼に決定されたものではあるが、それぞれに記載の金属組織を主体としつつ、一部に他の金属組織が混在した場合でも、本発明に含まれる。但し、他の金属組織の混在比率は、体積%で5%以下としたほうがよい。
CxHyM+(1/2)zO2→CO2+(1/2)yH2O+M+ηCO+ξH・・・(1)
(但し、M:燃焼中のCおよびH以外のその他成分)
に示す燃焼反応によって形成されるが、ここで還元性環境の場合にはη>0、ξ>0となるが、そのためにはz<4x+y、x>0、y>0,z>0の条件が必要となる。
Arの主ガス中のH2は、突合せ端面における酸化反応を抑制する作用を有し、この作用を十分に得るためにはH2の含有量を5体積%以上とするのが好ましい。その含有量の上限は特に限定する必要はないが、通常、40%を超えるとプラズマが不安定になるためその上限は40%とするのが好ましい。
Arの主ガス中のN2及びHeは、プラズマの熱伝導、熱伝達係数を向上させ鋼板端面の加熱能力を高めるためにそれぞれを20体積%以上または10体積%以上添加するのが好ましい。それらの含有量の上限は特に限定する必要はないが、通常、何れも50%を超えるとプラズマが不安定になるためその上限は何れも50%とするのが好ましい。
一方、非酸化性高温プラズマの場合には、流速を増大しすぎると、突合せ端面周囲の空気の巻き込みが大きくなって非酸化性雰囲気を確保して酸化反応を抑制することが困難となり、さらには、溶融金属のスパッタ発生が顕著となって飛散した溶融金属の酸化物による溶接部欠陥が増加するために、流速の上限を230m/sとする必要がある。一方、突合せ端面の非酸化性雰囲気を維持させるとともに、酸化物発生の要因となる冷却水を排除するために、流速の下限は30m/sとする必要がある。
Cの添加はクロム炭化物の生成が懸念されるので0.2%を上限とした方がよい。Siは耐酸化性を向上させるので、Si:0.05〜1%、添加が可能である。Ni、Cuは耐食性を向上させ、また、マルテンサイト組織が得易くなるので、それぞれ、Ni:0.5〜5%、Cu:0.2〜3%、添加することが可能である。Mnはマルテンサイト組織が得易くなるので0.5〜3%、添加することが可能である。Moは耐食性を向上させ、また、高温強度を向上させるので、Mo:0.2〜3%添加することが可能である。W、Nb及びVは高温強度を向上させるので、それぞれ、W:0.2〜3%、Nb:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、添加することが可能である。
また、本発明において、フェライト系ステンレス電縫鋼管を得る場合には、必要とされる特性を得るためにCr:10.5〜25%の外に以下の元素を必要量添加することが可能である。
Cは耐食性を低下させるために0.03%を上限とした方がよい。特に、15%Cr以下の場合にはマルテンサイト組織の生成を防止するために、0.02%を上限とした方がよい。Si及びAlは耐酸化性を向上させるので、それぞれ0.05〜1.0%の添加が可能である。Ni及びCuは耐食性を向上させるので、それぞれ0.1〜1.0%の添加が可能である。Mnは耐酸化性を低下さえるので1%以下に制限した方がいい。Mo、Wは耐食性を向上させ、また、高温強度を向上させるので、それぞれ0.2〜3.0%添加することが可能である。Nb、Ti及びVは高温強度を向上させるので、それぞれ0.01〜1.0%添加することが可能である。
更にオーステナイト系ステンレス電縫鋼管を得る場合には、必要とされる特性を得るためにCr:15〜30%、Ni:5〜30%の外に以下の元素を必要量添加することが可能である。
Cは高温強度の向上に有効であるが耐食性を低下させるために0.01〜0.15%の範囲に制限した方がよい。Si及びAlは耐酸化性を向上させるので、それぞれ0.05〜5.0%の添加が可能である。Cuは高温強度を向上させるので、それぞれ0.1〜3.0%の添加が可能である。Mnはオーステナイト安定化に有効であるが耐酸化性を低下さえるので3%以下に制限した方がいい。Mo、Wは耐食性を向上させ、また、高温強度を向上させるので、0.2〜8.0%添加することが可能である。Nb、Ti及びVは高温強度を向上させるので、それぞれ0.01〜1.0%添加することが可能である。
また、Cr−Mo系低合金電縫鋼管を得る場合には、必要とされる特性を得るためにCr:1〜9%、Mo+W:0.5〜3.0%の外に以下の元素を必要量添加することが可能である。
Cは高温強度の向上に有効であるが溶接性を低下させるために0.01〜0.20%の範囲に制限した方がよい。Si及びAlは耐酸化性を向上させるので、それぞれ0.05〜2.0%の添加が可能である。Niは焼き入れ性を向上させるので0.05〜1.0%の添加が可能である。Mnは焼き入れ性を向上させるが耐酸化性を低下さえるので1.5%以下に制限した方がいい。Nb、Ti及びVは高温強度を向上させるので、それぞれ0.01〜0.5%添加することが可能である。
また、表1のD〜Gはフェライト系ステンレス電縫鋼管で、DはSUH409に類似の自動車用排ガス部品に用いられる鋼管であり、EはSUS444に類似の熱交換器・温水器等に用いられる鋼管である。また、FはSUS430J1Lに類似の自動車用排ガス部品に用いられる鋼管であり、GはSUS445J1に類似の比較的Cr量が高い鋼管である。
更に、表1のH〜Jはオーステナイト系ステンレス電縫鋼管で、HはSUS304TB相当の鋼管、IはASTM A240 S31254に類似の耐塩化物応力腐食特性に優れる鋼管であり、JはSUS310J2TB鋼管である。
また、表1のK〜Mは低合金電縫鋼管で、K、L、MはそれぞれSTBA22、火STBA24J1、STBA25に相当する鋼管である。
Claims (9)
- Crを含有する電縫鋼管の電縫溶接部の接合界面に存在する介在物の占有面積率の合計が0.05%以下であり、個々の前記介在物の占有面積が0.01mm2以下であり、かつ、前記介在物の数密度が接合界面1mm2あたり0.1個以下であることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管。
- 前記電縫鋼管が、質量%で9〜15%のCrを含有するマルテンサイト系高Cr電縫鋼管であることを特徴とする請求項1記載のCrを含有する電縫鋼管。
- 前記電縫鋼管が、質量%で10.5〜25%のCrを含有するフェライト系ステンレス電縫鋼管であることを特徴とする請求項1記載のCrを含有する電縫鋼管。
- 前記電縫鋼管が、質量%で15〜30%のCrおよび5〜30%のNiを含有するオーステナイト系ステンレス電縫鋼管であることを特徴とする請求項1記載のCrを含有する電縫鋼管。
- 前記電縫鋼管が、質量%で1〜9%のCrを含有し、MoとWの添加量の合計が0.1〜3.0%である低合金電縫鋼管であることを特徴とする請求項1記載のCrを含有する電縫鋼管。
- 請求項1〜5の何れかの項に記載のCrを含有する鋼板を管状に成形加工し、その突合せ端面を電縫溶接する際に、少なくとも溶接点から溶接上流側に給電距離の1/5だけ離れた位置までの全範囲にわたる突合せ端面に対して、還元性雰囲気で、かつ1400℃以上の温度を有する還元性高温燃焼炎を流速が200m/s以上の条件で吹き付けることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかの項に記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法において、鋼板を管状に成形加工し、その突合せ端面を電縫溶接する際に、少なくとも溶接点から溶接上流側に給電距離の1/5だけ離れた位置までの全範囲にわたる突合せ端面に対して、非酸化性雰囲気で、かつ1400℃以上の温度を有する非酸化性高温プラズマを流速が30〜230m/sの条件で吹き付けることを特徴とするCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
- 前記還元性高温燃焼炎は、CO:1〜5体積%、及び、H:1〜10体積%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項6記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
- 前記非酸化性高温プラズマは、Ar単独ガス、または、ArとN2、H2及びHeのうちの少なくとも一種以上との混合ガスであることを特徴とする、請求項7記載のCrを含有する電縫鋼管の製造方法。
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