JP5355919B2 - オーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合部構造及び溶接接合方法 - Google Patents
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Description
この反応管の材料として、オーステナイト系高Ni鋼材が好適に用いられている(特許文献1乃至特許文献3)。
この反応管の顕微鏡組織を観察すると、1次Cr炭化物の近傍に針状の2次Cr炭化物(Cr23C6)が析出しており、この針状の2次Cr炭化物がクリープ破断強度低下の原因になっていることがわかった。
ところで、この種のオーステナイト系高Ni鋼材は、変態がなく、高温での組織変化がないため、鋳造後は、突合せ溶接を行なうだけで、溶接の前又は後に熱処理を行なっていない。
具体的には、溶接接合工程の前又は後に前記条件の熱処理を行なうことにより、溶接熱影響部を含むマトリックス中に、粒サイズ約100nm以下の微細な2次析出物(Nb,Ti)(C,N)、NbCが生成する。このように、溶接接合工程の前又は後に前記条件の熱処理を行なっておくと、溶接熱影響部は、1000〜1150℃の温度で50〜100時間時効処理を施した後の金属組織が、少なくともその任意の1箇所の0.1mm×0.1mmの領域において、長辺が2μm以上の析出クロム炭化物の数は10個以下となる。
なお、前記熱処理は、溶接工程の前又は後のどちらか一方で行えば目的を達成することはできるが、溶接工程の前と後の両方で行なってもよい。
この鋼材の成分限定理由は次のとおりである。なお、「%」は、全て質量%である。
Cは、溶鋼の鋳造凝固時に、Cr、Ti、Nb等と結合して炭化物を粒界に晶出する。また、溶接の前又は後の加熱処理により、微細な2次析出物(Nb,Ti)(C,N)、NbCを生成する。これにより、1000℃以上の温度に長時間曝されたときに針状の2次Cr炭化物(Cr23C6)の析出が抑制され、クリープ破断強度の低下を防止できる。このため、Cは0.05%以上含有させるものとし、含有量があまり多くなると、鋳放し状態での伸びが低下するので、上限は0.8%とする。
Siは、溶鋼の脱酸剤として、また溶鋼の流動性を高めるために0.8%以上含有させるが、含有量があまり多くなるとクリープ破断強度の低下を招くので上限は3%とする。
Mnは、溶鋼の脱酸剤として、また溶鋼中のSを固定するために含有させるが、含有量があまり多くなるとクリープ破断強度の低下を招くので上限は3%とする。
Crは、高温強度及び耐酸化性の確保に必要な元素である。約1000℃を超える使用環境に耐え得るクリープ破断強度を確保するために、20%以上含有させる。含有量の増加と共に耐酸化性は向上するが、あまり多く含有すると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は45%とする。
Niは、耐酸化性及び金属組織の安定性の確保に必要な元素であり、30%以上含有させる。60%を含有しても増量に対応する効果が得られないので、上限は60%とする。
Nbは、溶鋼の鋳造凝固時に、Ti、Cと結合して炭化物を粒界に晶出する。また、溶接前後の加熱処理により、微細な2次析出物(Nb,Ti)(C,N)、NbCを生成する。これにより、1000℃を超える温度に長時間曝されたときに針状の2次Cr炭化物(Cr23C6)の析出が抑制され、クリープ破断強度の低下を防止できる。このため、Nbは0.5%以上含有させるものとし、含有量があまり多くなると、耐酸化性が低下するので、上限は4%とする。
Tiは、溶鋼の鋳造凝固時に、Nb、Cと結合して炭化物を粒界に晶出する。また、溶接前後の加熱処理により、微細な2次析出物(Nb,Ti)(C,N)を生成する。これにより、1000℃を超える温度に長時間曝されたときに針状の2次Cr炭化物(Cr23C6)の析出が抑制され、クリープ破断強度の低下を防止できる。このため、Tiは0.01%以上含有させるものとし、含有量があまり多くなると、引張伸びが低下するので、上限は0.6%とする。
W、Mo、Zr及びAlは、上記範囲内で含有することにより、クリープ破断強度の向上に寄与するからである。
熱処理は、溶接の前又は後に行なう。熱処理条件は、920℃×5時間である。
供試管の合金化学成分を表1に示す。表1中、No.1〜No.5は発明例、No.6〜No.7はCrの範囲が本発明から外れる参考例である。
表2中、例えば、供試管No.1A、No.1B及びNo.1Cは、No.1の合金化学成分であることを示している。
発明例及び比較例は、溶接の前又は後に上記条件の熱処理を行なった例であり、比較例は、熱処理を行わない従来例である。なお、発明例及び参考例の継手寿命は、同じ成分の比較例(1C、2C、3C、4C、5C、6C)と比較したときの寿命を表している。
なお、供試管No.7については、Cr含有量が本発明の規定よりも多いため、所定のクリープ破断強度を得ることができなかった。
図2を参照すると、1次Cr炭化物の近傍に、長さ2μm以上の針状2次Cr炭化物が析出している。一方、図1を参照すると、1次Cr炭化物の近傍に針状2次Cr炭化物の析出は認められない。
図1と図2との比較から明らかなように、比較例の供試管No.2Cのクリープ破断強度の低下は、大きな針状2次Cr炭化物の析出によるものと考えられる。また、表2から明らかなように、溶接工程の前又は後に熱処理を施すことにより、クリープ破断強度の低下が抑えられること、即ち、大きな針状2次Cr炭化物の析出を防止できることがわかる。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.8%〜3%、Mn:3%以下、Cr:20〜45%、Ni:30〜60%、Nb:0.5〜4%、Ti:0.01〜0.6%を含有すると共に、W:0.5〜6%、Mo:0.5〜5%、Zr:0.01〜0.5%及びAl:0.01〜0.5%からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避の不純物であるオーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合部構造であって、前記鋼材同士の溶接による鋼材の熱影響部は、1000℃〜1150℃の温度で50〜100時間時効処理することにより、少なくともその任意の1箇所の0.1mm×0.1mmの領域において、長辺が2μm以上の析出クロム炭化物の数が10個以下である金属組織を有してなる、オーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合部構造。
- オーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接による鋼材の熱影響部は、溶接部境界から鋼材側の2mmの範囲内での任意の1箇所の0.1mm×0.1mmの領域において、長辺が2μm以上の析出クロム炭化物の数が10個以下である金属組織を有してなる請求項1に記載の溶接接合部構造。
- 請求項1又は2に記載の溶接接合部構造を有する反応管。
- 請求項3に記載の反応管を有する加熱炉。
- 質量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.8%〜3%、Mn:3%以下、Cr:20〜45%、Ni:30〜60%、Nb:0.5〜4%、Ti:0.01〜0.6%を含有すると共に、W:0.5〜6%、Mo:0.5〜5%、Zr:0.01〜0.5%及びAl:0.01〜0.5%からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避の不純物であるオーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合方法において、前記鋼材同士を溶接した後、前記鋼材同士の少なくとも溶接部分及びその近傍領域に、750〜1000℃の温度で0.5〜100時間の熱処理を行ない、前記鋼材同士の溶接による鋼材の熱影響部に微細な2次炭化物を析出させることを特徴とする、オーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合方法。
- 質量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.8%〜3%、Mn:3%以下、Cr:20〜45%、Ni:30〜60%、Nb:0.5〜4%、Ti:0.01〜0.6%を含有すると共に、W:0.5〜6%、Mo:0.5〜5%、Zr:0.01〜0.5%及びAl:0.01〜0.5%からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避の不純物であるオーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合方法において、前記鋼材同士を溶接する前に、前記鋼材の少なくとも溶接接合される部分及びその近傍で溶接の熱影響を受ける領域に、750〜1000℃の温度で0.5〜100時間の熱処理を行なって、前記領域に微細な2次炭化物を析出させ、次に、前記鋼材同士を溶接することを特徴とする、オーステナイト系高Ni鋼材同士の溶接接合方法。
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