JP6571937B2 - 耐熱管の溶接構造 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱管どうしを溶接してなる溶接構造に関するものであり、より具体的には、管外面の溶接周辺部の組織の脆化や粒界腐食を抑制し、耐酸化性を高めることのできる耐熱管の溶接構造に関するものである。
エチレンやプロピレン製造用の反応管や炭化水素の熱分解に用いられる分解管などの耐熱管は、直管どうし、及び/又は直管と曲管との管体どうしを外周面側から突合せ溶接することによって、配管系が構成される。この配管系は、900℃〜1150℃に加熱される高温酸化雰囲気で使用されるため、高温強度にすぐれるオーステナイト系の耐熱合金が用いられている。近年、操業の効率化を図るため、さらなる高温操業が求められている。
この種オーステナイト系耐熱合金は、高温強度を維持すべく高温雰囲気での使用中に母材が酸化されることを抑制する必要がある。そのため、母材に含まれる成分(Cr,Si,Al,Fe等)の一部を酸化させて、管内面に金属の酸化物層を形成し、この酸化物層がバリアとなって、母材の酸化を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開昭52−78612号公報 特開昭57−39159号公報
オーステナイト系耐熱合金から構成される反応管や分解管などの耐熱管は、約1000℃以上の温度で操業を続けると、管外面の溶接周辺部に組織の脆化や、粒界腐食、耐酸化性が低下し、反応管や分解管の寿命が短くなる不都合があった。
そして、鋭意研究の結果、その原因が、管外面の溶接周辺部の粒界にCr炭化物が形成されることに加え、金属酸化物層としてCr酸化物(主にCr2O3(クロミア)からなる)が形成されたことによるものであることを見い出した。
金属酸化物層としてCr酸化物が形成されてしまうと、酸化物の緻密性が低いため、酸素や炭素の侵入防止機能が十分ではなく、高温雰囲気下で母材が内部酸化を起こし、酸化物層が肥大化する。また、肥大化した酸化物層は、加熱と冷却の繰り返しサイクルにおいて剥離し易く、剥離に到らない場合であっても、外部雰囲気からの酸素や炭素の侵入防止機能が十分でないから、酸化物層を通過して母材に内部酸化や浸炭を生じる不都合がある。
本発明の目的は、上記問題点を解消する為、管外面の溶接周辺部の組織の脆化や粒界腐食の抑制、耐酸化性の低下を防ぐことのできる耐熱管の溶接構造を提供することである。
本発明に係る耐熱管の溶接構造は、
質量%にて、Cr:15%〜50%、Ni:18%〜70%、Al:1%〜6%を少なくとも含有するオーステナイト系高Ni耐熱管どうしを溶接してなる耐熱管の溶接構造であって、
前記耐熱管どうしの管外面の溶接周辺部に、Al酸化物を含むアルミナ被膜を形成した。
前記溶接周辺部は、耐熱管どうしを溶接する際に熱影響を受ける管外面とすることができる。
本発明の耐熱管の溶接構造によれば、耐熱管どうしの管外面の溶接周辺部にアルミナ被膜を形成したことで、管外面の溶接周辺部について、高温域での組織の脆化を抑制、また、耐酸化性の低下を防ぐことができる。
図1は、本発明の耐熱管の溶接構造を具える加熱炉の要部を示す説明図である。 図2は、本発明に係る耐熱管どうしの溶接部近傍の拡大図である。 図3は、図2の線A−Aに沿う断面図である。 図4は、溶接前の耐熱管の開先加工部の断面図である。 図5は、発明例6の耐熱管どうしの溶接後、熱処理前の溶接部近傍の写真である。 図6は、発明例6の耐熱管どうしの溶接後、熱処理を施した溶接部近傍の写真である。 図7は、比較例2の耐熱管どうしの溶接後、熱処理を施した溶接部近傍の写真である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
エチレン製造用分解炉10では、図1に示すように、直管状の耐熱管20,20を突き合わせ溶接30し、これらを部分的に置注鋳造法で製造された継手状耐熱管(フィッティング)12と溶接14して組み立てることで、コイル形状で使用される。耐熱管20のサイズは、たとえば、外径50mm〜160mm、肉厚5mm〜15mm、長さ3000mm〜6000mmである。
図2及び図3は、本発明の耐熱管20の突き合わせ溶接部31の溶接構造を示している。耐熱管20,20どうしの突合部や溶接部や継手との突合部には、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等により、耐熱管20と同等成分の溶接棒が溶加したビード33が形成されている。なお、溶接はTIG溶接に限らず、被覆アーク溶接、MIG(Metal Inert Gas)溶接、電子ビーム溶接、プラズマアーク溶接、レーザービーム溶接等も可能である。
耐熱管20は、図4に示すように、管外面21の端部に開先加工を施した状態で溶接が実施される。開先加工部25は、設計肉厚を確保するように先端にU字状の開先部26を有すると共に、外径差をなくすため開先部26に連続した平行部27と平行部27から耐熱管20の鋳放し部22に連続するテーパー部28を具える。
なお、管内面23は、機械加工や研磨加工により内径が均一となるように加工される。
開先加工部25は、炉内で露出し、高温酸化雰囲気に曝される。従って、組織の脆化や粒界腐食、耐酸化性の劣化により、強度が低下し易い。特に、平行部27とテーパー部28は、鋳放し部22に比べて肉厚が薄いため、これら影響を受け易い。
そこで、本発明では、溶接部31となるビード33の周辺の領域、すなわち溶接周辺部35にアルミニウム酸化物を含むアルミナ被膜40を形成している。溶接周辺部35とは、平行部27及びテーパー部28を意味する。なお、溶接周辺部35とは、少なくとも溶接の際に熱影響を受ける管外面21の熱影響部を含んでいる。
アルミナ被膜を形成するアルミニウム酸化物は、アルミナ(Al)を主体として構成される。アルミナ被膜は、緻密性が高く、酸素や炭素を透過し難いから、高温酸化雰囲気に曝される溶接周辺部の酸化を抑えることができ、酸化を主因とする減肉を防ぎ、強度等を維持するために役立つ。
また、アルミナ被膜を形成することで、溶接周辺部にクロム酸化物からなるクロミア被膜の形成を抑えることができ、クロミア被膜を原因とする組織の脆化、粒界腐食、耐酸化性の低下を防止できる。
さらに、耐熱管20には、鋳放し部22及びビード33に、クロミア被膜が形成された場合にも、これらクロミア被膜に挟まれる溶接周辺部にアルミナ被膜を形成することで、アルミナ被膜の剥離を効果的に阻止できる。
耐熱管は、Cr:15%〜50%、Ni:18%〜70%、Al:1〜6%を少なくとも含有するオーステナイト系高Ni合金から形成する。なお、本明細書において、「%」は、特に表示がないときは「質量%」である。
また、耐熱管は、C:0.05%〜0.7%、Si:0%を越えて2.5%以下、Mn:0%を越えて5%以下、希土類元素:0.005%〜0.4%、並びに、W:0.5%〜10%及び/又はMo:0.1%〜5%をさらに含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる耐熱合金とすることが望ましい。
上記耐熱管には、Nb:0.1%〜3%、Ti:0.01%〜0.6%、及び、Zr:0.01%〜1%からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが望ましい。
希土類元素は、La、Y、及び、Ceの少なくとも1種とすることができる。
また、上記耐熱管は、B:0.001%〜0.5%を含有することが望ましい。
さらに、上記耐熱管には、N:0.005%〜0.2%を含有することが望ましい。
さらに、上記耐熱管には、Ca:0.001%〜0.5%を含有することが望ましい。
<成分限定理由の説明>
Cr:15%〜50%
Crは、高温強度及び繰返し耐酸化性の向上への寄与の目的のため、15%以上含有させる。しかし、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は50%とする。なお、Crの含有量は20%〜45%がより望ましい。
Ni:18%〜70%
Niは、繰返し耐酸化性及び金属組織の安定性の確保に必要な元素である。また、Niの含有量が少ないと、Feの含有量が相対的に多くなる結果、耐熱管の管内面及び管外面にCr−Fe−Mn酸化物が生成され易くなる。これにより、管内面のアルミナバリア層の生成が阻害される。また、管外面の溶接周辺部へのアルミナ被膜の生成も阻害される。このため、少なくとも18%以上含有させるものとする。70%を超えて含有しても増量に対応する効果が得られないので、上限は70%とする。なお、Niの含有量は20%〜50%がより望ましい。
Al:1%〜6%
Alは、耐浸炭性及び耐コーキング性等にすぐれたアルミナバリア層を管内面に形成し、管外面の溶接周辺部にアルミナ被膜を形成するために添加する。一方で、Alの増大はクリープ破断強度や引張り特性等の機械的特性の低下、溶接性の低下を招く。
Alは、管内面にアルミナバリア層、管外面の溶接周辺部にアルミナ被膜を良好に形成するために、少なくとも1%以上含有させる。しかし、Al含有量が6%を超えると、アルミナバリア層やアルミナ被膜の形成効果はほぼ飽和するため、本発明では上限を6%に規定する。なお、Alの含有量は2.0%〜4.0%がより望ましい。
C:0.05%〜0.7%
Cは、鋳造性を良好にし、高温クリープ破断強度を高める作用がある。このため、少なくとも0.05%を含有させる。しかし、含有量があまり多くなると、Crの一次炭化物が幅広く形成され易くなり、アルミナバリア層やアルミナ被膜を形成するAlの移動が抑制されるため、管内面及び管外面、特に溶接周辺部へのAlの供給不足が生じて、アルミナバリア層やアルミナ被膜の局部的な寸断が起こり、アルミナバリア層やアルミナ被膜の連続性が損なわれる。また、二次炭化物が過剰に析出するため、引張延性、靱性の低下を招く。このため、上限は0.7%とする。なお、Cの含有量は0.2%〜0.6%がより望ましい。
Si:0%を超えて2.5%以下
Siは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯合金の流動性を高めるために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は2.5%とする。なお、Siの含有量は2.0%以下がより望ましい。
Mn:0%を超えて5%以下
Mnは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯中のSを固定するために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は5%とする。なお、Mnの含有量は1.6%以下がより望ましい。
希土類元素:0.005%〜0.4%
希土類元素とは、周期律表のLaからLuに至る15種類のランタン系列に、YとScを加えた17種類の元素を意味する。本発明の耐熱合金に含有させる希土類元素は、La、Y、及び、Ceからなる群のうち少なくとも一種以上が含まれることが好ましい。この希土類元素は、アルミナバリア層やアルミナ被膜の生成と安定化の促進に寄与する。
アルミナバリア層やアルミナ被膜の生成を高温の酸化性雰囲気下での加熱処理によって行なう場合は、希土類元素を0.005%以上含有させることでアルミナバリア層やアルミナ被膜の生成に有効に寄与する。
一方、あまりに多く含有すると、引張延性、靱性が悪化するので、上限は0.4%とする。
W:0.5%〜10%及び/又はMo:0.1%〜5%
W、Moは、基地中に固溶し、基地のオーステナイト相を強化することにより、クリープ破断強度を向上させる。この効果を発揮させるために、W及びMoの少なくとも一種を含有させるものとし、Wの場合は0.5%以上、Moの場合は0.1%以上含有させる。
しかし、W及びMoは、含有量があまり多くなると、引張延性の低下や、耐浸炭性の劣化を招く。また、Cが多い場合と同じように、(Cr,W,Mo)の一次炭化物が幅広く形成され易くなり、アルミナバリア層やアルミナ被膜を形成するAlの移動が抑制されるため、鋳造体の表面部分へのAlの供給不足が生じ、アルミナバリア層やアルミナ被膜の局部的な寸断が起こり、アルミナバリア層やアルミナ被膜の連続性が損なわれ易くなる。また、WやMoは原子半径が大きいため、基地中に固溶することにより、AlやCrの移動を抑制してアルミナバリア層やアルミナ被膜の生成を妨げる作用がある。このため、Wは10%以下、Moは5%以下とする。なお、両元素を含有する場合でも、合計含有量は10%以下とすることが好ましい。
また、以下の成分をさらに含むことができる。
Nb:0.1%〜3%、Ti:0.01%〜0.6%、及び、Zr:0.01%〜1%及びからなる群から選択される少なくとも一種
Nb、Ti及びZrは、炭化物を形成し易い元素であり、WやMoほど基地中には固溶しないため、アルミナバリア層やアルミナ被膜の形成には特段の作用は認められないが、クリープ破断強度を向上させる作用がある。必要に応じて、Ti、Zr及びNbの少なくとも一種を含有させることができる。含有量は、Nbが0.1%以上、Ti及びZrが0.01%以上である。
しかし、過剰に添加すると、引張延性の低下を招く。Nbは、さらに、アルミナバリア層やアルミナ被膜の耐剥離性を低下させる。このため、上限は、Nbは1.8%、Ti及びZrは0.6%とする。
B:0.001%〜0.5%以下
Bは、鋳造体の粒界を強化する作用があるので、必要に応じて含有させることができる。なお、含有量が多くなるとクリープ破断強度の低下を招くため、添加する場合でも0.5%以下とする。
N:0.005%〜0.2%
Nは、合金基地中に固溶して高温引張強度を向上させる作用がある。しかし、その量が多くなると、Alと結合してAlNを形成し、引張延性が低下するので、0.2%以下とする。好ましくは0.06〜0.15%である。
Ca:0.001%〜0.5%
Caは、脱硫・脱酸元素として作用がある。そのため、TiやAlの歩留まり向上に寄与する。この効果は、0.001%以上の添加により得られる。しかし、多量に添加すると、溶接性を損なうので、0.5%以下とする。
本発明の耐熱管は、管本体を構成する耐熱合金は、上記成分を含み、残部Feであるが、合金の溶製時に不可避的に混入するP、Sその他の不純物は、この種の合金材に通常許容される範囲であれば存在しても構わない。
<耐熱管>
耐熱管は、溶湯を溶製し、遠心力鋳造により上記組成に鋳造される。なお、静置鋳造等であっても構わない。
得られた耐熱管には、管内面23は、機械加工や研磨加工により内径が均一となるように加工が施され、管外面21には、図4に示すような開先加工が施される。図示の実施形態では、開先加工部25は、先端にU字状の開先部26を有し、開先部26に連続した平行部27と平行部27から耐熱管20の鋳放し部22に連続するテーパー部28を具える。
開先加工部は、平行部とテーパー部の表面粗さ(Ra)が6.3μm以下となるように加工することが好適であり、表面粗さ(Ra)を2.5μm〜4.0μmとすることがより望ましい。表面粗さ(Ra)を上記のように調整することで、クロミア被膜の形成を抑えることができ、続く溶接処理、熱処理によってより好適にアルミナ被膜を形成することができる。
なお、次に説明する溶接処理の前に、予め開先加工を施した耐熱管に熱処理を施してもよい。開先加工を施した耐熱管に熱処理を実施することで、開先加工部のAlが酸素と結合して、アルミナ被膜を予め開先加工部、特に溶接により熱影響を受ける平行部とテーパー部に形成することができる。この熱処理は、耐熱管全体に実施してもよいし、開先加工部に局部的に実施してもよい。
<溶接処理>
得られた耐熱管20,20は、端部を突き合わせた状態で同方向に回転させつつ、TIG溶接等を施すことにより、図2及び図3に示すように、溶接棒が溶加すると共に、開先部26の母材が溶融して、ビード33が開先部26に順次積層される。TIG溶接の場合、溶接条件として溶接電流70A〜180A、溶接電圧7V〜21V、溶接速度70cm/分〜180cm/分を例示できるが、耐熱管に加わる溶接温度を、700℃〜900℃の範囲内に収まるよう管理する必要がある。溶接温度が上記よりも低いとアルミナ被膜が形成され難くなり、また、溶接温度が上記よりも高いとアルミナ被膜に代えてクロミア被膜が形成されてしまうためである。
この溶接処理を酸化性雰囲気下、たとえば大気中などの酸素を20体積%以上含む酸化性ガス、スチームやCOが混合された酸化性環境において実施することで、開先加工部25、より詳細には、管外面21の溶接周辺部35は、溶接により熱影響を受けて加熱されると共に、加熱された溶接周辺部35のAlが酸化されて、溶接周辺部35には、薄いアルミナ被膜40を形成することができる。
図5は、後述する実施例における発明例6の溶接後の写真である。溶接周辺部をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察したところ、厚さ0.1μmの薄いアルミナ被膜が形成されていることがわかった。溶接後に形成されるアルミナ皮膜の厚さは、0.001μm以上あればよいが、0.01μm以上形成されていることがより好ましい。
<熱処理>
そして、溶接後の耐熱管20,20に熱処理を施すことで、溶接周辺部35に溶接時に形成された薄いアルミナ被膜を成長させて、より厚い被膜40とすることができる。このとき、アルミナ皮膜は0.05以上形成されており、0.5μm以上形成されることがより好ましい。なお、この熱処理は、独立した工程として実施することもできるし、加熱炉において耐熱管を設置して使用される際の高温雰囲気においても実施することができる。
熱処理は、酸化性雰囲気下にて実施される。酸化性雰囲気とは、上記と同様、酸素を20体積%以上含む酸化性ガス、スチームやCOが混合された酸化性環境である。熱処理は、900℃〜1100℃を例示できる。熱処理は、5時間以上実施することが望ましい。
溶接周辺部は、予め溶接によって薄いアルミナ被膜が形成されているから、クロム酸化物等は形成されず、薄いアルミナ被膜を通過した酸素と溶接周辺部35の表面近傍のAlが優先して結合し、アルミナ被膜40が厚く成長する。
図6は、上記した図5の熱処理後の写真である。溶接周辺部をSEMにより観察したところ、アルミナ被膜が厚さ0.1μm〜2μmまで成長していることがわかった。
溶接周辺部に形成された厚いアルミナ被膜は、緻密性が高く、外部から酸素、炭素、窒素の母材への侵入を防ぐバリアとして作用するから、溶接周辺部は、操業時に高温酸化雰囲気に曝されても、組織の脆化や粒界腐食が抑えられ、耐酸化性の低下も防止されるから、強度低下も防ぐことができる。
本発明では、図3に示すように、鋳放し部22とビード33に形成されるクロミア被膜50,50によってアルミナ被膜40が挟まれている。これにより、アルミナ被膜40の剥離を好適に抑えることができる。
高周波誘導溶解炉の大気溶解により溶湯を溶製し、金型遠心力鋳造により、下記表1に掲げる合金組成の耐熱管を夫々2本ずつ作製し、機械加工を施した。機械加工前の管本体は、内径80mm、外径100mm、長さ250mmである。なお、表1中「−」は含有していないか不可避的に含有していることを意味する。
得られた耐熱管について、夫々端部に図4に示すように開先加工を施して、対となる同じ組成の管体どうしを突合せTIG溶接により接合した。なお、平行部27及びテーパー部28の表面粗さ(Ra)は3.2μmである。また、TIG溶接条件は、溶接電流90A〜150A、溶接電圧9V〜17V、溶接速度80〜160cm/分で行ない、耐熱管に加わる溶接温度について、発明例は700℃〜900℃、比較例は900℃を超える温度に調整した。
図5は、発明例6の溶接後の写真である。溶接周辺部をSEMにより観察したところ、厚さ0.005μm以上の薄いアルミナ被膜が形成されていることがわかった。また、その他の発明例についても厚さ0.1μm以上となる0.1μm〜1.5μmの薄いアルミナ被膜が溶接周辺部に形成されていた。
一方、比較例について、同様にSEMにより観察したところ、アルミナ被膜は形成されておらず、クロミア被膜のみが形成されていた。これは、耐熱管に加わる溶接温度が900℃を超えていたため、アルミナ被膜が形成される前にクロミア被膜が形成されたためである。
続いて、溶接により接合された耐熱管について、夫々大気中(酸素約21%)、1000℃、8時間の加熱を施し、加熱後、炉冷する処理を行なった。
発明例及び比較例について、溶接周辺部をSEMにより観察し、アルミナ被膜の形成の有無を調べた。結果を表2に示す。なお、表2中、溶接周辺部にアルミナ被膜が形成されたものは「○」、クロミア被膜が形成されたものは「×」としている。
表2を参照すると、発明例は何れもアルミナ被膜が溶接周辺部に良好に形成されていることがわかる。図6は、発明例6の熱処理後の写真である。発明例6の溶接周辺部をSEMにより観察したところ、アルミナ被膜が厚さ約0.1μm〜2μmまで成長していることがわかった。また、その他の発明例についても同様に厚さ0.1μm〜2μmの厚いアルミナ被膜が溶接周辺部に形成されていた。
一方、比較例について、同様にSEMにより観察したところ、何れも溶接周辺部にはクロミア被膜が形成されていた。図7は、比較例2の熱処理後の写真である。図7を参照すると、比較例2では、鋳放し部、ビードだけでなく、溶接周辺部までもクロミア被膜が形成されていることが観察された。
発明例について、上記のように厚いアルミナ被膜が形成されたのは、溶接周辺部は、予め溶接によって薄いアルミナ被膜が形成されており、クロム酸化物等は形成されず、薄いアルミナ被膜を通過した酸素と溶接周辺部の表面近傍のAlが優先して結合し、アルミナ被膜が成長したためである。
比較例は、溶接によって溶接周辺部にクロミア被膜が形成された結果、熱処理を実施しても溶接周辺部にはクロミア被膜の厚さが増しただけであり、アルミナ被膜は形成されなかったと考えられる。
なお、発明例について、鋳放し部とビードを観察すると、何れもクロミア被膜が形成されており、これらクロミア被膜に溶接周辺部のアルミナ被膜が挟まれて存在していた。これにより、溶接周辺部に形成されたアルミナ被膜の剥離を好適に抑えることができるものと考えられる。
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
20 耐熱管
22 鋳放し部
25 開先加工部
26 開先部
27 平行部
28 テーパー部
31 溶接部
33 ビード
40 アルミナ被膜
50 クロミア被膜

Claims (10)

  1. 質量%にて、Cr:15%〜50%、Ni:18%〜70%、Al:1%〜6%を少なくとも含有するオーステナイト系高Ni耐熱管どうしを溶接してなる耐熱管の溶接構造であって、
    前記耐熱管どうしの管外面の溶接周辺部の表面粗さ(Ra)を6.3μm以下とし、前記管外面の溶接周辺部にAl酸化物を含むアルミナ被膜を形成した、
    ことを特徴とする耐熱管の溶接構造。
  2. 前記溶接周辺部は、耐熱管どうしを溶接する際に熱影響を受ける管外面である、
    請求項1に記載の耐熱管の溶接構造。
  3. 前記アルミナ被膜は、厚さ0.1μm〜2μmである、
    請求項1又は請求項2に記載の耐熱管の溶接構造。
  4. 前記耐熱管は、質量%にて、
    C:0.05%〜0.7%、Si:0%を越えて2.5%以下、Mn:0%を越えて5%以下、希土類元素:0.005%〜0.4%、並びに、
    W:0.5%〜10%及び/又はMo:0.1%〜5%を含有し、
    残部Fe及び不可避的不純物からなる、
    請求項1乃至請求項3の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。
  5. 前記耐熱管は、質量%にて、
    Nb:0.1%〜3%、Ti:0.01%〜0.6%、及び、Zr:0.01%〜1%からなる群から選択される少なくとも1種を含有している、
    請求項4に記載の耐熱管の溶接構造。
  6. 前記希土類元素は、La、Y、及び、Ceの少なくとも1種である、
    請求項4又は請求項5に記載の耐熱管の溶接構造。
  7. 前記耐熱管は、質量%にて、
    B:0.001%〜0.5%を含有している、
    請求項4乃至請求項6の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。
  8. 前記耐熱管は、質量%にて、
    N:0.005%〜0.2%を含有している、
    請求項4乃至請求項7の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。
  9. 前記耐熱管は、質量%にて、
    Ca:0.001%〜0.5%を含有している、
    請求項4乃至請求項8の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。
  10. 請求項1乃至請求項の何れかに記載の耐熱管の溶接構造を有する加熱炉。
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