JP6571937B2 - 耐熱管の溶接構造 - Google Patents
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Description
質量%にて、Cr:15%〜50%、Ni:18%〜70%、Al:1%〜6%を少なくとも含有するオーステナイト系高Ni耐熱管どうしを溶接してなる耐熱管の溶接構造であって、
前記耐熱管どうしの管外面の溶接周辺部に、Al酸化物を含むアルミナ被膜を形成した。
エチレン製造用分解炉10では、図1に示すように、直管状の耐熱管20,20を突き合わせ溶接30し、これらを部分的に置注鋳造法で製造された継手状耐熱管(フィッティング)12と溶接14して組み立てることで、コイル形状で使用される。耐熱管20のサイズは、たとえば、外径50mm〜160mm、肉厚5mm〜15mm、長さ3000mm〜6000mmである。
Cr:15%〜50%
Crは、高温強度及び繰返し耐酸化性の向上への寄与の目的のため、15%以上含有させる。しかし、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は50%とする。なお、Crの含有量は20%〜45%がより望ましい。
Niは、繰返し耐酸化性及び金属組織の安定性の確保に必要な元素である。また、Niの含有量が少ないと、Feの含有量が相対的に多くなる結果、耐熱管の管内面及び管外面にCr−Fe−Mn酸化物が生成され易くなる。これにより、管内面のアルミナバリア層の生成が阻害される。また、管外面の溶接周辺部へのアルミナ被膜の生成も阻害される。このため、少なくとも18%以上含有させるものとする。70%を超えて含有しても増量に対応する効果が得られないので、上限は70%とする。なお、Niの含有量は20%〜50%がより望ましい。
Alは、耐浸炭性及び耐コーキング性等にすぐれたアルミナバリア層を管内面に形成し、管外面の溶接周辺部にアルミナ被膜を形成するために添加する。一方で、Alの増大はクリープ破断強度や引張り特性等の機械的特性の低下、溶接性の低下を招く。
Cは、鋳造性を良好にし、高温クリープ破断強度を高める作用がある。このため、少なくとも0.05%を含有させる。しかし、含有量があまり多くなると、Cr7C3の一次炭化物が幅広く形成され易くなり、アルミナバリア層やアルミナ被膜を形成するAlの移動が抑制されるため、管内面及び管外面、特に溶接周辺部へのAlの供給不足が生じて、アルミナバリア層やアルミナ被膜の局部的な寸断が起こり、アルミナバリア層やアルミナ被膜の連続性が損なわれる。また、二次炭化物が過剰に析出するため、引張延性、靱性の低下を招く。このため、上限は0.7%とする。なお、Cの含有量は0.2%〜0.6%がより望ましい。
Siは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯合金の流動性を高めるために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は2.5%とする。なお、Siの含有量は2.0%以下がより望ましい。
Mnは、溶湯合金の脱酸剤として、また溶湯中のSを固定するために含有させるが、含有量があまり多くなると高温クリープ破断強度の低下を招くので上限は5%とする。なお、Mnの含有量は1.6%以下がより望ましい。
希土類元素とは、周期律表のLaからLuに至る15種類のランタン系列に、YとScを加えた17種類の元素を意味する。本発明の耐熱合金に含有させる希土類元素は、La、Y、及び、Ceからなる群のうち少なくとも一種以上が含まれることが好ましい。この希土類元素は、アルミナバリア層やアルミナ被膜の生成と安定化の促進に寄与する。
一方、あまりに多く含有すると、引張延性、靱性が悪化するので、上限は0.4%とする。
W、Moは、基地中に固溶し、基地のオーステナイト相を強化することにより、クリープ破断強度を向上させる。この効果を発揮させるために、W及びMoの少なくとも一種を含有させるものとし、Wの場合は0.5%以上、Moの場合は0.1%以上含有させる。
Nb、Ti及びZrは、炭化物を形成し易い元素であり、WやMoほど基地中には固溶しないため、アルミナバリア層やアルミナ被膜の形成には特段の作用は認められないが、クリープ破断強度を向上させる作用がある。必要に応じて、Ti、Zr及びNbの少なくとも一種を含有させることができる。含有量は、Nbが0.1%以上、Ti及びZrが0.01%以上である。
しかし、過剰に添加すると、引張延性の低下を招く。Nbは、さらに、アルミナバリア層やアルミナ被膜の耐剥離性を低下させる。このため、上限は、Nbは1.8%、Ti及びZrは0.6%とする。
Bは、鋳造体の粒界を強化する作用があるので、必要に応じて含有させることができる。なお、含有量が多くなるとクリープ破断強度の低下を招くため、添加する場合でも0.5%以下とする。
Nは、合金基地中に固溶して高温引張強度を向上させる作用がある。しかし、その量が多くなると、Alと結合してAlNを形成し、引張延性が低下するので、0.2%以下とする。好ましくは0.06〜0.15%である。
Caは、脱硫・脱酸元素として作用がある。そのため、TiやAlの歩留まり向上に寄与する。この効果は、0.001%以上の添加により得られる。しかし、多量に添加すると、溶接性を損なうので、0.5%以下とする。
耐熱管は、溶湯を溶製し、遠心力鋳造により上記組成に鋳造される。なお、静置鋳造等であっても構わない。
得られた耐熱管20,20は、端部を突き合わせた状態で同方向に回転させつつ、TIG溶接等を施すことにより、図2及び図3に示すように、溶接棒が溶加すると共に、開先部26の母材が溶融して、ビード33が開先部26に順次積層される。TIG溶接の場合、溶接条件として溶接電流70A〜180A、溶接電圧7V〜21V、溶接速度70cm/分〜180cm/分を例示できるが、耐熱管に加わる溶接温度を、700℃〜900℃の範囲内に収まるよう管理する必要がある。溶接温度が上記よりも低いとアルミナ被膜が形成され難くなり、また、溶接温度が上記よりも高いとアルミナ被膜に代えてクロミア被膜が形成されてしまうためである。
そして、溶接後の耐熱管20,20に熱処理を施すことで、溶接周辺部35に溶接時に形成された薄いアルミナ被膜を成長させて、より厚い被膜40とすることができる。このとき、アルミナ皮膜は0.05以上形成されており、0.5μm以上形成されることがより好ましい。なお、この熱処理は、独立した工程として実施することもできるし、加熱炉において耐熱管を設置して使用される際の高温雰囲気においても実施することができる。
22 鋳放し部
25 開先加工部
26 開先部
27 平行部
28 テーパー部
31 溶接部
33 ビード
40 アルミナ被膜
50 クロミア被膜
Claims (10)
- 質量%にて、Cr:15%〜50%、Ni:18%〜70%、Al:1%〜6%を少なくとも含有するオーステナイト系高Ni耐熱管どうしを溶接してなる耐熱管の溶接構造であって、
前記耐熱管どうしの管外面の溶接周辺部の表面粗さ(Ra)を6.3μm以下とし、前記管外面の溶接周辺部にAl酸化物を含むアルミナ被膜を形成した、
ことを特徴とする耐熱管の溶接構造。 - 前記溶接周辺部は、耐熱管どうしを溶接する際に熱影響を受ける管外面である、
請求項1に記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記アルミナ被膜は、厚さ0.1μm〜2μmである、
請求項1又は請求項2に記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記耐熱管は、質量%にて、
C:0.05%〜0.7%、Si:0%を越えて2.5%以下、Mn:0%を越えて5%以下、希土類元素:0.005%〜0.4%、並びに、
W:0.5%〜10%及び/又はMo:0.1%〜5%を含有し、
残部Fe及び不可避的不純物からなる、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記耐熱管は、質量%にて、
Nb:0.1%〜3%、Ti:0.01%〜0.6%、及び、Zr:0.01%〜1%からなる群から選択される少なくとも1種を含有している、
請求項4に記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記希土類元素は、La、Y、及び、Ceの少なくとも1種である、
請求項4又は請求項5に記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記耐熱管は、質量%にて、
B:0.001%〜0.5%を含有している、
請求項4乃至請求項6の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記耐熱管は、質量%にて、
N:0.005%〜0.2%を含有している、
請求項4乃至請求項7の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。 - 前記耐熱管は、質量%にて、
Ca:0.001%〜0.5%を含有している、
請求項4乃至請求項8の何れかに記載の耐熱管の溶接構造。 - 請求項1乃至請求項9の何れかに記載の耐熱管の溶接構造を有する加熱炉。
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