JP2005023354A - 低炭素ステンレス鋼管の配管溶接継手とその製造方法 - Google Patents

低炭素ステンレス鋼管の配管溶接継手とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】BWR 原子力発電プラントに見られるSCC 防止を図るステンレス鋼管の配管溶接継手とその製造方法を提供する。
【解決手段】SCCの原因として、配管開先加工の表面硬度上昇と切削油や環境中に含まれるSCC 加速物質の付着、熱影響による母材金属組織変化、溶接熱変形による残留応力上昇と硬化とにその原因があるとして、溶接継手形成後に、溶接部を300 〜700 ℃に加熱して応力除去熱処理をする。
鋼の化学組成は、C:0.08 %以下、Si: 1%以下、Mn: 2%以下、P:0.04 %以下、 S:0.01 %以下、 Ni:10〜15%、 Cr:16〜19%を含むものとする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接施工によりステンレス鋼管を配管する際に用いられる配管溶接継手とその製造方法に関する。さらに詳述すれば、本発明は、溶接後の耐食性の劣化を防止した、いわゆる非鋭敏化SCC 対策を施した配管溶接継手とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術の問題点】
従来は、化学工業プラント、原子力発電プラント等における各種配管には、通常の JIS規格のSUS304、316 型ステンレス鋼管が使用されていた。しかし、溶接部のHAZ 部での鋭敏化 (Cr炭化物の粒界析出によるCr欠乏層の生成) により、応力腐食割れ(SCC) が発生してしまう場合がある。このような問題を解消する鋼種として、低炭素SUS304、316 型ステンレス鋼が開発された。
【0003】
かかる低炭素ステンレス鋼は、溶接後に二次的熱処理を必要としないことを特徴として開発され使用されているものである。
例えば特許文献1には、二次的熱処理を実施せず耐硝酸腐食性を高めた材料が開示されている。これは、溶接熱影響部の腐食はδフェライトとオーステナイトの界面にMoが濃縮することが原因であるとして、δフェライトが形成されない母材成分とした発明である。この成分系ではオーステナイトは線膨張率が高く熱収縮が大きくなり、変形性に富んだフェライトが存在しないことから、変形吸収性が不足し溶接割れが発生しやすくなる。
【0004】
特許文献2には、低炭素ステンレス鋼の高濃度硝酸環境下の粒界腐食、SCC 対策が開示されており、それによれば、低炭素ステンレス鋼の粒界割れは、Laves 相またはχ相が粒界に析出することによるものであることに着目し、V、 Snの微量添加と特定条件の熱処理を行うものである。しかしながら、溶接施工されるときの熱影響および非鋭敏化SCC のへ考慮がなく、この技術では十分とは言えない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−209309号公報
【特許文献2】特開平6−184631号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここに、本発明の課題は、溶接施工されるステンレス鋼管の配管において溶接に伴う耐食性の劣化を防止した、いわゆる「非鋭敏化SCC 」に対する対策を施した配管溶接継手とその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
従来、低炭素ステンレス鋼の溶接部におけるSCC(応力腐食割れ) は、予想されなかった新たな課題であり、当然ながら、これを解決する先行技術は見当たらない。
【0008】
例えば、特許文献1にあっては、後述するように非鋭敏化SCC の大きな要因の一つである残留応力が上昇し耐SCC 性で不利である。
また、特許文献2は、ただ単に粒界での脆化防止を図るというに過ぎず、非鋭敏化SCC の要因については何一つ開示することも示唆することもない。
【0009】
すなわち、低炭素ステンレス鋼は、これまで、配管溶接時の熱影響によっても鋭敏化が起こらないと考えられ、溶接後の熱処理は不要であると考えられてきた。そのため、これまでに低炭素ステンレス鋼の配管後に熱処理を行うことを前提にこれに適した鋼管の化学組成、熱処理条件を検討したものはない。
【0010】
ここに、本発明者らは、上述の課題を達成すべく、種々検討を重ね、次のような知見を得た。
(i)低炭素JIS SUS316型ステンレス鋼であっても、700 ℃を超えた温度で鋭敏化処理を行うと粒界に金属間化合物が析出する。Moの増加と共にこれは顕著になり、これが、粒界脆化の一因である。
【0011】
(ii) 開先加工の表層には切削加工による硬化層が存在する。これは転位密度が高く割れの起点となる。
(iii)配管溶接による溶接部近傍には700 ℃を超えて加熱される熱影響部が存在し、前記(i) の金属間化合物の粒界析出が存在する可能性がある。
【0012】
(iv) 溶接部は縮径することで、内面近傍では軸方向に大きな引張残留応力が発生するとともに溶接部近傍の硬度が上昇し材料を脆化させている。つまり、SCC による亀裂進展を容易にしてしまう要因である。
【0013】
(v)開先加工部内面には、切削油の極圧添加剤に由来するCl、F、S等のSCC に対する腐食加速物質 (単にSCC 加速物質とも云う) が存在し、加工後アルカリ脱脂液および/または溶剤により除去しても、完全には除去されずに表面で極圧反応膜として残存し、または表面の粗さに取り込まれ切削面に押し込まれている。これらが使用中に表面凹部に濃縮してSCC を加速する。切削油を使用しない場合でも、配管施工時に、作業者が手などで触れることでSCC に対するSCC 加速物質の付着がある。また、この種の配管が使用される化学工業プラント、原子力発電プラント等は海岸近くに多くが立地しているので、配管施工時に環境中のClを多量に含む海塩粒子の付着を避け得ない。
【0014】
(vi)上記のような状態で使用するため、鋭敏化しない低炭素ステンレス鋼であってもSCC 割れが発生することがあるのである。
すなわち、低炭素ステンレス鋼にあっては、溶接部は鋭敏化されてないものの、開先加工内面の硬化層、溶接熱影響による金属間化合物の粒界析出、溶接熱変形による残留応力および硬化部分、SCC に対するSCC 加速物質 (Clイオン、Fイオン、SOイオン等を指す) のそれぞれの存在を要因とする新たなSCC(非鋭敏化SCC)が発生している。
【0015】
本発明は溶接後に溶接部を加熱処理することによりこれらの問題を解消できることを見出したのである。
ここに、本発明は、溶接施工されるステンレス鋼管の配管に際して、配管開先加工の表面硬度上昇と切削油や環境中に含まれるSCC 加速物質の付着、熱影響による母材金属組織変化そして溶接熱変形による残留応力上昇と硬化に伴う耐食性の劣化を防止した、いわゆる非鋭敏化SCC 対策を行った配管溶接継手とその製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明において化学組成、熱処理条件を上述のように限定した理由について説明する。なお、本明細書において、鋼の化学組成を示す「%」は、とくにことわりがない限り、「質量%」である。
【0017】
図1は、通常のステンレス鋼管に見られた溶接熱影響部の鋭敏化による応力腐食割れの模式的説明図であり、図中、鋼管母材を溶接する溶接金属の周囲には鋭敏化部が生成しており、それに沿って割れは発生する。クロム欠乏層の存在領域と割れ発生領域とは一致している。
【0018】
図2は、低炭素ステンレス鋼に見られる応力腐食割れを説明する模式図であり、この場合には、図1の場合と異なり、溶接開先部内面の硬化層から発生した割れは、溶接金属に向かって伸びている。
【0019】
低炭素ステンレス鋼の溶接継手に見られるこのような割れには、本発明によれば、開先部における硬化層の存在およびClイオン、SOイオンなどのSCC 加速物質の存在が考えられる。
【0020】
このように開先加工の内面硬化層の粒内割れを起点とし、その後、残留応力の引張主応力方向に沿って粒界割れとして進展するのである。
ここに、図3は、管端部縦断面における溶接開先部の拡大模式図であり、管端部の内面における開先部の内旋加工部には、図1、図2に示す加工硬化層が形成されており、その周囲には前述のSCC 加速物質が不可避的に存在する。
【0021】
したがって、本発明によれば、配管溶接後に溶接部の熱処理を行うことで、上述のような割れ発生の原因を除くのである。
すなわち、溶接部を300 〜700 ℃に加熱する熱処理を行うことで、応力歪が開放され、 硬度上昇部の軟化も見られ、さらに、切削油中のCl、 F、 S等付着物が飛散してしまうことから、溶接継手部におけるSCC の防止を効果的に図ることができる。
【0022】
本発明において、鋼の化学組成を規定した理由は、次の通りである。

C量が、0.08%を超えると、溶接時の加熱により配管の結晶粒界にCr23の炭化物の析出が起こり、その結果粒界に沿ってCr欠乏層が形成し、耐粒界腐食性が劣化する。従って、C:0.08 %以下とする。C含有量の下限は低いほど望ましいが、精錬時の脱炭時間の増大によりコスト増を招くため、0.001 %以上とするのが好ましい。
【0023】
Si
Siは脱酸剤として添加される元素である。不可避元素であり、0.1 %以上が含まれる。1.0 %を超えると熱間加工性を劣化させる。従って、Si:1.0%以下とする。好ましくは、0.2 〜0.6 %である。
【0024】
Mn
Mnは、精錬工程において脱硫、脱酸剤として添加される元素である。不可避的に含有され、0.1 %以上は含まれる。2.0 %を超えると熱間加工性を劣化させる。従って、Mn:2.0%以下とする。また、Mnは、溶接割れ防止に有効な元素であり、1%未満ではその効果は充分ではないことから、1 %以上が望ましい。
【0025】

Pは結晶粒界に偏析して、粒界の脆化をきたし耐SCC 性を劣化させると共に耐溶接割れ性にも悪影響を及ぼす不純物元素である。従って、P: 0.04%以下とする。
【0026】

Sは硫化物の生成による選択的腐食による耐孔食性の低下、耐溶接割れ性の劣化をもたらす不純物元素である。従って、Sは0.01%以下とする。
【0027】
Ni
Niはオーステナイト相を安定化させる効果を有する。オーステナイト系ステンレス鋼には通常5%以上含有される。しかし、20%を超えて添加するとオーステナイト組織が安定になりすぎ、鋳造時の凝固割れを引き起こす。溶接使用され、かつ高温高圧水による腐食環境下である原子力発電プラントの配管に用いる場合、8 〜16%に制限するのが望ましい。
【0028】
Cr
Crはステンレス鋼表面に不動態皮膜を形成させる基本元素であり。本発明のステンレス鋼では少なくとも15%以上は必要であるが、Crはフェライト生成元素でもあり、25%を超えて添加するとオーステナイト組織の安定性が得られなくなるので25%を上限とする。溶接使用され、かつ高温高圧水による腐食環境下である原子力発電プラント用途の場合、16〜20%添加しておくことが望ましい。
【0029】
本発明は、上記の化学組成を有するものであればよく、残部の化学組成については特に制限されないが、残部は鉄および不純物であることが好ましい。また、上記の化学組成成分のほか、下記の化学組成成分を含有させてもよい。
【0030】
Mo
Moは、必要に応じて添加され、不働態皮膜の安定性を増し、耐孔食性の向上および表面粒界浸食防止に効果のある元素である。その効果は1.5 %未満では充分でない。一方、3%を超えると金属間化合物析出が顕著となり耐SCC が劣化する。従って、添加する場合、Moは1.5 %〜3%とする。
【0031】
溶接部熱処理時の熱影響部において結晶粒界に析出する金属間化合物を抑制するためには上限を2.5 %とすることが望ましい。
金属間化合物は、Moの増加と共に低温、短時間側で析出しやすくなるためである。
【0032】
Moは、添加しない場合でも、製鋼原料、製鋼工程時の汚染により不可避的に最大0.5 %混入してくるため、その場合には、上限は0.5 %とする。

Nは、オーステナイト生成元素であると共に強度の向上に有効な元素であるが、不可避的に混入してくる元素であるため、本発明においてはとくに制限しない。しかし、低炭素ステンレス鋼は、炭素量の減少による強度低下を、Nの添加で補うことが行われる。
【0033】
したがって、Nは、必要に応じて含有される。原子力発電プラント用途に適用する場合は、0.05%未満では強度向上が充分ではない。0.13%超になると窒化物の形成で耐食性に悪影響を与えるばかりでなく、加工性の低下を招く。従って、積極的に添加する場合、Nは0.05%〜0.13%とする。
【0034】
Nb Ti Ta Zr
Nb 、 Ti 、 Ta、 Zrの内一種以上を合計で0.01〜1%添加してもよい。鋼管製造時および溶接後の熱処理において炭化物、窒化物を生成し、これが微細に析出することにより、いわゆるピン留め効果により結晶粒成長を防止する効果が有り、0.01%以上でその効果が見られる。また1%超を添加してもその効果が飽和するばかりでなく、炭化物、窒化物が増加しまた大型化して脆化を招く。
【0035】
結晶粒の粗粒化は、耐SCC 性劣化と亀裂進展速度の増加を引き起こすばかりでなく粒界反射により超音波探傷性を劣化させる。
本発明における溶接部の加熱処理の作用と条件限定理由を説明すると次の通りである。
【0036】
本発明によれば、溶接部での残留応力の低減、加工硬化部の軟化、SCC 加速物質の低減をそれぞれ図るために、溶接後に、溶接部を300 〜700 ℃に加熱する熱処理を行う。
【0037】
鋼管の突合せ溶接部では、溶接金属の凝固と冷却熱収縮により外径、 内径が縮径変形する。溶接部から離れた鋼管部の変形拘束により、外面は軸圧縮、内面には軸引張の残留応力が発生する。この変形により溶接部近傍では硬度の上昇が見られる。また内面加工層では溶接部近傍数ミリの範囲では若干の軟化が見られるが、その部分を離れると内表面表層分の加工硬化層は残存している。
【0038】
溶接部数ミリの領域以外は、溶接熱による温度上昇は小さく、300 ℃未満と予想され、SCC 加速物質の熱飛散も充分でない。
図4は、溶接ままと応力低減のため溶接後 200℃〜900 ℃に加熱し1Hr均熱後放冷した時 (以下、単にSR処理という) の残留応力の変化をグラフで示す。
【0039】
残留応力測定法は、内面外面の軸方向および周方向に歪ゲージを貼り付けた後、その部分を配管より切り取った時の開放歪より算出した。
図4中、溶接ままでは外面圧縮 (図4では●“−”の値) 、内面引張 (○“+”の値) の絶対値として大きな残留応力が存在する。300 ℃以上のSR処理で大きく低減している。SCC には引張残留応力が悪影響を及ぼすことより、引張残留応力を100N/mm以下とし更には圧縮残留応力としておくことが望ましい。200 ℃のSR処理では引張残留応力の低減が不十分であり、本発明では300 ℃以上とした。
【0040】
SR処理後の冷却方法を内面水冷とした場合、内面から外面に冷却速度分布が大きくなり、速く冷却される内面は、その後の外面側部分の冷却による熱収縮の影響を強く受けた結果として圧縮残留応力が残る傾向になる。その傾向はSR処理温度が高いほど冷却時の熱収縮量が大きく、強く現れる。一方、外面は引張残留応力が現れる。特に内面のSCC が問題となる場合においては、SR処理後の冷却方法として内面水冷を選択する。外面SCC に対しては不利である。
【0041】
図5は、これらの関係をグラフで示す。
次に、配管内面に切削加工を行ったものから試験材を切り出し、200 ℃〜900 ℃に加熱し1Hr均熱後空冷のSR処理を実施し、軸方向断面にて切削加工した内面から0.05mm位置のマイクロビッカース硬さ試験を実施した。
【0042】
図6はこれらの実験結果をまとめて示すグラフである。
図6から分かるように切削ままでは硬度が高い。200 ℃からやや軟化し500 ℃までは徐々に軟化する。500 ℃を超えると急激な軟化が見られる。SCC を防止する上では250Hv 以下が望ましく、600 ℃以上がさらに望ましい。
【0043】
次に、極圧添加剤としてCl、 S を含む切削油を使用して内面切削後アルカリ脱脂した配管を用い、加熱した時の発生ガスの分析を行った。各温度に均熱後5分間管内ガスを吸引し純水中に捕集する。捕集水をイオンクロマトグラフにてClイオン、SOイオン濃度を分析した。200 ℃、600〜900 ℃では分析定量限界以下(1ppm以下)である。
【0044】
図7は、このときの実験結果をまとめて示すグラフであり、これからも分かるように、切削面に残存するCl、 S 分は200 ℃では分解飛散せず、300 ℃〜500 ℃で発生しており、700 ℃以上になると定量下限以下となった。切削面に残存していたものが700 ℃までに全て飛散している。
【0045】
これらの結果から、SCC 加速物質であるCl、S はSR処理により除去可能であることが分かる。
これは環境中より付着したCl、S についても同様である。これらは切削加工時に押し込まれていない分だけ容易に飛散する。
【0046】
SR 熱処理温度の限定理由
SR処理の温度加熱の下限は、残留応力の除去、軟化、SCC 加速物質の熱飛散という観点からは300 ℃とする。
【0047】
その効果を十分に引き出すためには前述の図4〜7に示すとおり600 ℃以上とすることが望ましい。
SR処理の加熱温度の上限は、以下の理由で700 ℃とする。
【0048】
溶接金属は、溶接割れ防止の観点より5%程度のフェライト量が析出するような成分とするのが一般的であり、このフェライトは溶接ままでは溶接時の熱変形の吸収性に富むδフェライトであるが、本鋼種の場合700 ℃以上の熱処理によりδフェライトが脆いσ相に変化する。また700 ℃以上になると配管母材においても粒界に金属間化合物が析出し耐SCC 性が劣化をきたす。このためSR処理の加熱温度の上限を700 ℃とする。
【0049】
SR処理の均熱時間は、材料温度がこの範囲の所定温度で30分保持されれば良い。
加熱方法は外面からの加熱を行うが、例えば外面からの高周波加熱法がある。
【0050】
加熱処理後は、冷却されるが、所定値以上の圧縮残留応力を確保するためには、このときの冷却は急冷を行う。特に内面のSCC 割れに対しては内面急冷が良い。かかる態様によれば、内面圧縮残留応力を付与することができる。もちろん、内外面急冷でも可能である。
【0051】
このような内面圧縮残留応力を付与するには、熱処理後に配管内面に冷却水を流す事で実現できる。
次に、本発明における鋼管、溶接継手の製造法について説明する。
【0052】
電気炉その他ステンレス鋼にて常用される溶解炉で溶鋼とした後、AOD 炉、VOD 炉その他常用される精錬炉にて成分調整を行う。その後インゴット法または連続鋳造法等の常用される造塊法にて鋼塊を得る。
【0053】
鋼管は、鋼塊より直接もしくは鍛造または圧延した後、熱間押出法、エルハルトプッシュベンチ法、マンネスマン製管法等の常用される熱間製管法により製造する。必要に応じてこれを更に抽伸法、冷間圧延法等の冷間加工法を加えて鋼管を得る。鋼管には固溶化熱処理を実施する。必要であれば鋼管には内外切削、研削が実施され、曲がり取り、所定長さに切断される。鋼管端部には突合せ溶接用に開先加工を実施する。
【0054】
管継手類は種々の形状に応じて鋼塊より直接もしくは鍛造または圧延した後、熱間加工法、鋼管からの熱間および/または冷間加工により所定の形状とし、固溶化熱処理を実施する。必要であれば鋼管には内外切削、研削が実施され、所定形状へ仕上られる。端部には突合せ溶接用に開先加工を実施する。
【0055】
ここで、このような鋼管または管継手は溶接され本発明にかかる配管溶接継手および配管を構成する。
本発明において使用する溶接はTIG 溶接、被覆アーク溶接等一般的な溶接法である。
【0056】
溶接金属は、溶接割れ防止のため配管母材よりもフェライト量が多くなる成分のものが使用されるのが一般的である。本発明おいても同様のものを使用する。
ここに、本発明における配管溶接継手の態様としては、端部に開先加工を行った鋼管同士を直接接合することで構成してもよく、同様に端部を開先加工した継手部材を介在させて鋼管同士を接合して構成してもよい。
【0057】
配管を溶接施工後にSR処理をするが、その場合、溶接部を外面から加熱できる方法を取るのが良い。例えば高周波加熱法により溶接部の加熱処理を行うことができる。
【0058】
溶接熱変形部を同時に加熱するため、少なくともこの変形部の長さに相当する長さの加熱長さが必要である。通常の場合、溶接部を中心に100L程度の加熱長さがあればよい。
【0059】
冷却装置は、内面圧縮残留応力を付与するには内面冷却として配管内面に冷却水を流せるような設備としておく。目的に応じて、内面水冷が選択可能にしておく。また、溶接部熱処理でより確実に内面引張り残留応力を低減する目的で、加熱時から外面を内面より高温になるよう肉厚方向に温度勾配を付与した加熱を行い、冷却時にも外面より内面が低温になるような温度勾配を維持した熱処理を行うことがある。これを実現するため、加熱時より内面に冷却水を流すことも可能である。このうちの熱処理方法を目的に応じて選択すればよい。
【0060】
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0061】
【実施例】
表1に示す化学組成の鋼を電気炉にて溶解し、AOD 炉にて成分調整後にインゴット法にて鋼塊を製造する。
【0062】
鋼塊より鍛造法にて丸鋼にし、所定長さに切断し穴繰り加工と端面および外面切削加工を行い押出用素材を得る。これをユジーンセジュルネ式熱間押出製管法にて製管し、鋼管とする。この鋼管を固溶化熱処理として1060℃に加熱し3分保持後、水冷を実施し、曲がり取りを行う、所定長さに切断後、脱スケ−ル酸洗を実施する。次いで旋盤により開先加工を行い、溶接継手用鋼管とする。開先加工には極圧剤としてSを含有する切削油を使用し、加工終了後に溶剤で切削油を除去した。開先加工の形状は、図3に示す通りである。
【0063】
溶接継手用鋼管の寸法は、外径216.3mm 、内径170.3mm 、肉厚23.0mm 、長さ500 mmである。
このようにして用意された溶接継手用鋼管は、開先部を突き合わせて、被覆アーク溶接にて上記鋼管同士を接続する。
【0064】
被覆アーク溶接により溶接継手を形成してから、溶接部の応力除去熱処理を行うが、本例では、高周波加熱法により表1の条件で加熱と冷却を実施する。
このようにして得た配管溶接継手について次の各種試験によりその特性を評価する。
【0065】
残留応力については、溶接部の内外表面に歪ゲージを貼り付け切り出し法にて内外面軸方向残留応力を求める。
次いで、マイクロビッカース硬度試験により、溶接部近傍熱処理部での内表面0.05mm深さ位置での縦断面最大硬度を調査する。
【0066】
内外表面をスワブ試験による塩化物、フッ化物、硫化物に関する付着物を測定し、合計値を単位表面積当たりで評価する。
溶接部近傍の縦断面腐食試験は、10%蓚酸による粒界腐食試験により行う。
【0067】
これらの試験結果は、表1にまとめて示す。
本発明に従い溶接部を加熱処理することでSCC 要因の除去改善が確実になされており、応力腐食割れ防止に優れた性能を発揮する。
【0068】
【表1】
Figure 2005023354
【0069】
本発明によれば、非鋭敏化SCC の要因である硬さの低下、引張残留応力の低減、SCC 加速物質の除去が確実になされており、応力腐食割れ性に優れた性能を発揮する。特に内面のSCC が問題である場合、内面水冷を実施した実施例2、4、6、8、10、12、14、17において内面軸方向引張応力の低減効果が空冷の場合より大きく有効である。
【0070】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ステンレス鋼管の溶接部SCC 問題が防止できることから各種プラントの配管寿命向上、操業上のトラブルによる損失防止が図れる。特に、BWR 原子力発電プラントにおける低炭素ステンレス鋼管の非鋭敏化SCC 割れ問題が防止できるから、本発明にかかるステンレス鋼管の配管溶接継手を採用することにより、BWR 原子力発電プラントの安全性を高め且つプラントの運転効率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術における溶接熱影響部の鋭敏化による応力腐食割れの模式的説明図である。
【図2】低炭素ステンレス鋼に見られる応力腐食割れの模式的説明図である。
【図3】溶接開先部の形状の模式的説明図である。
【図4】管内面および外面のそれぞれにおける応力除去熱処理温度と残留応力との関係を示すグラフである。
【図5】応力除去熱処理温度と残留応力との関係を示すグラフである。
【図6】応力除去熱処理温度と硬さとの関係を示すグラフである。
【図7】応力除去熱処理温度と熱飛散するSCC 加速物質濃度との関係を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.08 %以下、Si: 1%以下、Mn: 2%以下、P:0.04 %以下、 S:0.01 %以下、 Ni:5 〜20%、 Cr:15〜25%を含む化学組成の鋼管の配管溶接継手であって、当該溶接継手の溶接部を、300 〜700 ℃に加熱処理して得たものであることを特徴とする配管溶接継手。
  2. 質量%で、
    C:0.08 %以下、Si: 1%以下、Mn: 2%以下、P:0.04 %以下、 S:0.01 %以下、 Ni:5 〜20%、 Cr:15〜25%を含む化学組成の鋼管の配管溶接継手であって、当該溶接継手の溶接部が、内表面引張残留応力100N/mm以下、硬さ250Hv 以下、内外面ともに塩化物、硫化物またはフッ化物を含むSCC 加速物質の合計付着量が1mg/m以下であることを特徴とする配管溶接継手。
  3. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Mo:1.5 〜3%を含有する、請求項1または2記載の配管溶接継手。
  4. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Nb、 Ti、 Ta、 およびZrから成る群から選んだ1種または2種以上を、合計で0.01〜1%含む請求項1〜3のいずれかに記載の配管溶接継手。
  5. 質量%で、
    C:0.08 %以下、Si: 1%以下、Mn: 2%以下、P:0.04 %以下、 S:0.01 %以下、 Ni:5 〜20%、 Cr:15〜25%を含む化学組成の鋼管を溶接して配管溶接継手を製造する方法であって、前記鋼管を溶接して配管溶接継手とし、次いで、該溶接配管継手の溶接部を300 〜700 ℃に加熱することを特徴とする、配管溶接継手の製造方法。
  6. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Mo:1.5 〜3%を含有する、請求項5記載の配管溶接継手の製造方法。
  7. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Nb、 Ti、 Ta、 およびZrから成る群から選んだ1種または2種以上を、合計で0.01〜1%含む請求項5または6記載の配管溶接継手の製造方法。
  8. 請求項1ないし4のいずれかに記載の配管溶接継手を備えた非鋭敏化SCC 性に優れた低炭素ステンレス鋼配管。
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