JP3293024B2 - 耐サワー性の優れた高靱性電縫鋼管用鋼の製造方法 - Google Patents

耐サワー性の優れた高靱性電縫鋼管用鋼の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐サワー性の優れ
た高靱性電縫鋼管用鋼の製造方法に係わり、さらに詳し
くは、例えば石油・天然ガス掘削、あるいは輸送におい
て、湿潤硫化水素を含む環境下にあっても割れ抵抗が高
く、かつ低温靱性の優れた電縫鋼管用鋼の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年生産される石油・天然ガス中には、
硫化水素を含む場合が非常に多く、さらに海水、淡水な
どの水が共存する場合には、鋼表面で起こる腐食に基づ
く減肉だけではなく、腐食によって鋼表面で発生した水
素が鋼中に侵入することによって破壊を起こすことがあ
り、問題となっている。この破壊は、高張力鋼に古くか
ら認められる硫化物応力割れとは異なり、外部からの付
加応力がなくとも発生が認められる。
【0003】この破壊は、環境中から侵入した水素が、
母材中に存在する圧延方向に長く伸びたMnSなどのA
系硫化物系介在物と地鉄との境界に集積してガス化し、
そのガス圧によって発生するもので、前記MnSなどの
A系硫化物系介在物が鋭い切り欠きとなり、これを割れ
の核として板面平行割れに成長し、この板面平行割れが
板厚方向に連結されるものである。この種の割れを以下
「水素膨れ割れ」と呼ぶ。
【0004】こうした水素膨れ割れに対する抵抗の高い
鋼については、従来から様々な研究がなされ、種々の鋼
が提案されている。それらは、例えば特公昭57−17
065号公報あるいは特公昭57−16184号公報な
どにその代表例がみられるごとく、CuやCo添加によ
る割れ防止、極低S化によるMnSの減少、Caあるい
は希土類元素などの添加によるSの固定などを利用する
ものであって、これらの技術によって現在までにかなり
厳しい環境にまで耐え得る鋼が開発されている。
【0005】ところで、電縫鋼管はホットコイルなどの
鋼板を成形して電縫溶接するものであって、言うまでも
なく、鋼板との決定的な相違は溶接部および溶接熱影響
部が存在することである。この電縫溶接部では、MnS
などの硫化物系介在物が存在しない場合でも水素膨れ割
れを生じることがあり、しかも電縫溶接部の場合には板
面垂直割れ型の水素膨れ割れであることが母材部と異な
っており、母材の板面平行型水素膨れ割れと同等か、あ
るいはそれ以上に重大な欠陥である。しかも、この割れ
は従来の水素膨れ割れに対する対策鋼を使用した電縫鋼
管であっても発生し、上述のような技術では防止できな
い。
【0006】一方において、近年石油・天然ガスが産出
される地域はアラスカ、ロシア、北極海といった極寒地
まで広がっており、こうした地域で使用されるラインパ
イプには母材および電縫溶接部の両方において低温靱性
が優れていることが要求される。このとき、産出流体に
硫化水素を含む場合には低温靱性とともに耐サワー性も
必要であることは言うまでもない。
【0007】電縫鋼管においては、溶接部の靱性が母材
に比べて低下するため、電縫溶接部も含めて靱性の優れ
た電縫鋼管についても従来から様々な研究がなされ、種
々の方法および鋼管が提案されている。それらは、例え
ば特開昭54−136512号公報、特開昭57−14
0823号公報、特公昭58−53707号公報あるい
は特公昭58−53708号公報等にその代表例がみら
れるごとく、熱延工程の仕上温度および巻取温度の管理
による素材の靱性向上、造管後冷却速度の制限による結
晶粒度の制御、固溶Nの減少、NbあるいはVによる結
晶粒の微細化などを利用するものであって、これらの技
術によって現在までに靱性のかなり優れた電縫鋼管が開
発されている。
【0008】しかしながら、これらの電縫鋼管は、通常
の環境で使用されるものであって、硫化水素や水を含ん
だいわゆるサワー環境で使用することを考慮したもので
はない。また、耐サワー電縫鋼管の電縫溶接部の電縫衝
合部において靱性が母材に比べて著しく劣る場合があ
る。この場合、上述の各種技術をもってしても改善され
ない。
【0009】このような電縫鋼管の電縫溶接部の水素膨
れ割れおよび靱性低下の原因は、電縫衝合部およびその
両側の熱影響部に存在する板状のCaO、Al2 3
主成分とする酸化物系介在物であり、母材中に予め存在
した球状に近いこの酸化物系介在物が電縫溶接時の熱影
響によって鋼の融点近くにまで加熱された上、スクイズ
ロールによって両側から加圧されるために、板状に変形
して生成したものである。
【0010】そこで、特公昭63−16461号公報で
は、従来より主に脱酸を目的として添加されてきたAl
を極力減少させ、Tiを脱酸元素として使用することに
よって、電縫溶接時に変形しやすい介在物の生成を防止
した母材および電縫溶接部の耐サワー性と靱性に優れた
電縫鋼管用鋼を提案している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】今後、石油・天然ガス
資源の枯渇が懸念され、その産出地域の環境はさらに厳
しくなり、また産出流体の硫化水素含有量も多くなるこ
とが予想される。こうした状況で使用されるラインパイ
プには、母材および電縫溶接部の両方において、これま
で以上の低温靱性、耐サワー性が要求されるようになる
が、これまでの技術では十分ではないことが判明した。
【0012】本発明は、上記のような従来のものの欠
点、すなわち電縫衝合部靱性の低下および電縫溶接部の
板面垂直型水素膨れ割れが溶接熱影響部に存在する板状
の酸化物系介在物によって発生することを解決するため
になされたものであって、溶鋼中の酸素を250ppm
以下に制限した溶鋼に、10〜70%のTiを含むTi
合金を添加して脱酸することによって、鋼中の酸化物系
介在物の組成および径を制御する耐サワー性と靱性の優
れた電縫鋼管用鋼の製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、上記課題を解
決するための本発明の要旨とするところは、転炉で溶製
して出鋼した溶鋼を真空脱ガスおよび/もしくはMn、
Siによる脱酸を行って溶鋼中の酸素を250ppm以
下とし、次いで化学組成がTi:10〜70重量%の成
分と残部はFe、Mn、Siのうち1種または2種以上
および不可避的不純物とからなる合金を溶鋼に添加し、
重量%で、Ti:0.010〜0.2%、C:0.01
〜0.35%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.
1〜2.0%、Ca:0.0005〜0.02%を含有
し、かつAl:0.005%以下、P:0.015%以
下、S:0.008%以下に制限し、あるいはさらに
(a)Cu:0.2〜0.6%、Ni:0.1〜1.0
%、Cr:0.2〜3.0%の1種または2種以上、ま
たは(b)Mo:0.10〜1.0%、Nb:0.01
〜0.15%、V:0.01〜0.15%の1種または
2種以上の(a)、(b)何れか一方または両方を含有
し、残部は鉄および不可避的不純物からなる鋼を連続鋳
造することを特徴とする耐サワー性の優れた高靱性電縫
鋼管用鋼の製造方法にある。
【0014】
【作用】最初に、本発明において各成分の範囲を前述の
ごとく限定した理由を以下に述べる。Cは鋼の強度を最
も安定して向上させる基本的な元素であるため、強度確
保のためには0.01%以上含有させることが必要であ
るが、0.35%を超えると鋼の靱性に対しては好まし
くない影響があるので、その範囲を0.01〜0.35
%とする。
【0015】Siは強度を向上させる元素であるので
0.02%以上含有すべきであるが、靱性確保のために
は上限の含有量を0.5%とすべきである。Mnは強度
上必要な元素であるので0.1%以上含有すべきである
が、溶接性および靱性確保のためには上限の含有量を
2.0%とすべきである。Caは鋼中のSをCaSとし
て固定してMnSの生成を防止することによって母材の
耐サワー性向上に非常に有効な元素であり、母材の耐サ
ワー性の確保のために0.0005%以上含有すること
が必要であるが、0.02%を超えるとCaS−CaO
を主成分とする大型介在物を形成するので、上限の含有
量は0.02%とすべきである。
【0016】TiはAlに代えて脱酸に使用する主要な
元素であり、チタン酸化物を主成分とする複合介在物は
電縫溶接時に著しく変形しにくいが、0.010%未満
ではチタン酸化物はCaO、SiO2 、MnOと複合し
た介在物を生成する。この介在物はCaOとAl2 3
を主成分とする酸化物系介在物と同様に変形しやすく、
電縫溶接時の熱影響によって鋼の融点近くにまで加熱さ
れた上、スクイズロールによって両側から加圧され、板
状に変形して電縫鋼管の電縫溶接部の水素膨れ割れおよ
び靱性低下を招く。一方、Tiが0.2%を超えると靱
性を低下させるため、Tiは0.010〜0.2%とす
べきである。
【0017】AlはCaおよびOと結合して変形しやす
い介在物を生成するために0.005%以下に制限すべ
きであり、少ない程好ましい。Pは母材の水素膨れ割れ
を伝播しやすくさせる元素であるので、0.015%以
下とすべきである。SはMnと結合して母材部の水素誘
起割れの起点となるMnSを作るので、母材部の耐サワ
ー性確保のためには0.008%以下に抑えなければな
らない。
【0018】以上が基本成分系であるが、本発明では、
これらの他にそれぞれの用途に応じて、(a)Cu、N
i、Crの1種以上、(b)Mo、Nb、Vの1種以上
の(a)、(b)何れか一方あるいは両方を含有させる
ことができる。まず、Cu、NiおよびCrは、何れも
母材の耐食性向上と鋼中への水素侵入量減少の効果を有
する。
【0019】Cuは0.20%未満では効果がなく、
0.60%を超えると熱間加工性に悪影響を及ぼすの
で、0.20〜0.60%の範囲に限定する。Niは
0.1%未満では効果がなく、1.0%を超えると硫化
物応力腐食割れを誘発するおそれがあるので、0.1〜
1.0%の範囲に限定する。Crは0.2%未満では効
果がなく、3.0%を超えると鋼の靱性を低下させるの
で、0.2〜3.0%の範囲に限定する。
【0020】次に、Mo、NbおよびVは、何れも鋼の
強度を向上させる元素であって、Moは0.10%以
上、NbおよびVは0.01%以上含有させることによ
って同等の強度向上効果を示すが、Moは1.0%、N
bおよびVは0.15%を超えて添加すると靱性を低下
させるおそれがあるため、Moは0.10〜1.0%、
NbおよびVはそれぞれ0.01〜0.15%の範囲に
限定する。
【0021】上述の各合金成分は、それぞれ単独に、あ
るいは併用しても、上記の制限範囲内において本発明が
目的とする効果に何等支障を与えるものではない。不純
物のうちN量は0.010%を超えると溶接性に問題を
生じるので好ましくないものであって、0.010%以
下であれば鋼の材質に著しい影響を及ぼさないが、歪み
時効の影響や円周溶接部の靱性なども考慮すると少ない
程よい。
【0022】一方、O量はCaの大部分が酸化物となら
ずにSの固定に有効に利用されるためには0.010%
以下で少ない程よい。Tiで脱酸した鋼はチタン酸化物
を含む介在物を含有する。このチタン酸化物が主成分で
ある介在物は電縫溶接時に著しく変形しにくく、電縫鋼
管の電縫溶接部の水素膨れ割れおよび靱性低下を防止す
ることが可能である。
【0023】本発明者らは、チタン酸化物を主成分とす
る組成の種々の大きさの介在物を分散させた鋼を実験室
的に溶製、鋳造し、通常の方法で圧延を行って11mm
厚の鋼板とし、通常の工程によって電縫鋼管とした。こ
れらの電縫管の電縫溶接部を含んで厚さ9mm、幅20
mm、長さ100mmの試験片を採取し、耐サワー性の
評価に供した。また、母材からも同様な寸法、形状、採
取方法の試験片を採取して耐サワー性の評価試験に供し
た。耐サワー性の評価試験としては、上記の試験片をH
2 Sを飽和させた5%NaCl水溶液に0.5%CH3
COOHを添加した溶液(温度25℃、pH2.8〜
3.8)中に98時間浸漬して割れを測定した。割れの
発生の有無は、電縫溶接部を含む試験片では試験片の断
面について超音波探傷し、その後の断面の検鏡観察によ
って判定した。
【0024】こうして観察した割れ部の介在物厚み、
幅、長さから変形を受ける前の鋳片内の介在物の大きさ
を算出した結果、割れ部の介在物は何れも200μmよ
り大きいことが判った。欠陥が発生しなかった部分を切
断して鋼中の介在物の大きさを測定したが、これには2
00μm以下の介在物が検出された。以上のことより、
割れを発生させないためには介在物の大きさを200μ
m以下とすることが必要であることが推測されたため、
200μm以下のチタン酸化物を主成分とする組成の介
在物のみを分散させた鋼を実験室的に溶製、鋳造し、通
常の方法で圧延を行って鋼板とし、通常の工程によって
電縫鋼管とした。これらの電縫管の電縫溶接部の耐サワ
ー性の評価試験を行い、超音波探傷して割れの発生を検
査したところ、割れは発生していなかった。従って、チ
タン酸化物が主成分の粒径が200μm以下の酸化物系
介在物を鋼中に含有せしめることが有効である。
【0025】しかしながら、通常の製造方法で製造した
場合には、チタン酸化物が主成分で粒径が200μm以
下の酸化物系介在物のみを鋼中に含有せしめることは困
難である。そこで、本発明者らは、種々の実験検討を行
った結果、脱酸時の過飽和度を小さくすると生成する介
在物の個数および介在物径が小さくなることが判明し
た。過飽和度はTiと酸素の積で決まるので、過飽和度
を小さくする方法としては、脱酸合金中のTi含有量を
低くすることと脱酸時の溶鋼中の酸素を低くすることが
有効である。脱酸合金中のTi含有量が高い場合には溶
鋼中に添加した脱酸合金の周囲にTi濃度の高い部分が
生成して過飽和度が高くなるので、Ti含有量の低い脱
酸合金を使用する。
【0026】さらに、酸素濃度と合金中Ti含有量を変
化させた実験検討を行い、酸素濃度および合金中Ti含
有量が低くなるに従って介在物径は小さくなり、酸素を
250ppm以下とし、かつTi含有量が70%以下の
合金で脱酸することで、最大でも200μmの介在物と
なることを見出した。Ti含有量が高くなると介在物径
が大きくなるとともに脱酸時にチタン酸化物の割合の高
い介在物が生成し、これが溶鋼中に残存して混在する。
Ti濃度が低すぎると合金量が多くなりすぎ、溶鋼温度
の低下が起こって溶鋼の凝固や鋳造が困難になったり、
添加に時間がかかり、生産性に障害を与える。Ti含有
量が高い場合には少量ずつ添加すると部分的に過飽和度
の高い部分が少なくなり有効である。
【0027】また、TiをFeやSi、Mnとの合金と
することで、Tiの活量を下げるとともに部分的に濃度
の高い領域を減少させるため、過飽和度が一層減少し、
微小な介在物の生成を促進する。以下、本発明の製造方
法についてさらに詳細に説明する。まず、転炉で目標と
する0.01〜0.35%のCを含む溶鋼を溶製する。
その際、溶鋼中のCが目標とするC濃度よりも高い場合
には、出鋼後に真空脱ガス装置等による脱炭処理を行っ
て所定のC濃度まで低減し、また目標とするC濃度より
も低い場合には、出鋼後にCを添加して所定のC濃度と
する。また、溶鋼を出鋼する際、必要に応じてFe−M
nを投入してもよい。
【0028】次に、出鋼した溶鋼をMn、Siおよび/
または真空脱ガス処理による予備脱酸を行って溶鋼中の
酸素を250ppm以下とする。Alは低い方がよいの
で、Fe−MnやFe−Siを添加してMn、Siによ
り脱酸を行う。Mn、Siの添加量は脱酸時に添加する
Ti合金中に含まれるSiやMnによって増加する量を
考慮して添加する。また、MnやSiは脱酸力が弱いの
で、製品によっては目標範囲内では溶鋼中の酸素を25
0ppm以下にすることが困難な場合があるので、その
際には真空脱ガス処理により真空脱酸を行って酸素を下
げる。このとき、必要があればC源を溶鋼中に添加して
もよい。
【0029】溶鋼中の酸素が250ppmより高くなる
と、Ti合金を多量に添加することが必要になり、後述
するように脱酸時の過飽和度が大きくなりすぎてTi添
加時に高融点で粗大なチタン酸化物が多数生成し、さら
にこれらが凝集して大きな介在物となる。このようにし
て溶鋼中の酸素を250ppm以下に調整した溶鋼に、
化学組成がTi:10〜70重量%の成分と残部はF
e、Mn、Siのうち1種または2種以上および不可避
的不純物とからなる合金を添加して、Tiを溶鋼成分と
して0.010〜0.2%含有させる。さらに、他の成
分を調整するのに必要な合金を添加して所定の成分とす
る。
【0030】このようにして溶製した溶鋼中にはチタン
酸化物が主成分で最大でも200μmの介在物のみを含
有し、この溶鋼は通常と同じ方法でタンディッシュを通
して連続鋳造機で鋳造することが可能である。さらに、
この鋳片を通常と同じ方法で熱間圧延まま、あるいは熱
間圧延直後の制御冷却工程、さらには圧延材を焼準、焼
戻しあるいは焼入れ、焼戻しする等、通常の鋼材に使用
される製造工程を適用して鋼板にした後、通常の工程に
よって電縫鋼管とする。さらに、この電縫鋼管の一部ま
たは全体に焼準、焼戻しあるいは焼入れ、焼戻しする工
程を適用してもよい。何れの工程を適用または併用する
かは、硬度、靱性などの特性確保の必要に応じて決定す
ればよい。
【0031】
【実施例】表1、表2(表1のつづき)は本発明および
比較する従来法の鋼の製造方法例である。270トン転
炉で溶製した溶鋼を表1、表2に示す方法で溶製し、表
3、表4(表3のつづき)に示す成分とした鋼を連続鋳
造機で鋳造した。得られた鋳片を常法により12.7m
m厚の鋼板に熱間圧延した後、通常の工程によって外径
406mmの電縫鋼管とした。本発明法でも従来法と同
様に問題なく製造が可能であった。
【0032】鋳片の一部を採取して断面を調査し、介在
物の組成、大きさ、形状を調べた。その結果を表1、表
2に示す。本発明によるものは、鋳片内にチタン酸化物
を主体とする組成で、かつ200μm以下の大きさの球
形の介在物が検出されており、Al2 3 、CaOを主
成分とする介在物は検出されなかった。鋼管の耐サワー
性の評価試験を行った結果を表2に併せて示す。本発明
により製造した鋼管では、電縫部および母材において水
素膨れ割れは発生しておらず、かつ電縫部においても靱
性の低下は非常に小さかった。これに対して、比較法を
使用した鋼管では、電縫部に板面垂直型の水素膨れ割れ
が発生するとともに、電縫部の靱性が著しく低下してい
る。
【0033】また、冷延鋼板ではこれらの介在物が破砕
され、微細分散化していることが確認された。なお、実
施例の表中B1〜B3は本発明と同じ方法を適用したも
のであるが、本発明の限定範囲を超えたものであり、B
4、B5は従来法である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【発明の効果】本発明は、pHが低く厳しい環境におい
ても水素膨れ割れがなく、かつ低温靱性の良好な耐サワ
ー性に優れた高靱性電縫鋼管用鋼の製造方法を提供する
ことを可能としたものであり、産業の発展に貢献すると
ころ極めて大なるものがある。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−299286(JP,A) 特開 平7−136748(JP,A) 特開 昭64−15320(JP,A) 特開 平4−279248(JP,A) 特開 平4−279247(JP,A) 特開 平4−191314(JP,A) 特開 平8−238544(JP,A) 特開 平6−100924(JP,A) 特開 平6−100923(JP,A) 特開 平5−263182(JP,A) 特開 平3−236419(JP,A) 特開 平3−229819(JP,A) 特開 平2−175815(JP,A) 特開 平1−150453(JP,A) 特開 昭64−15321(JP,A) 特開 昭62−1811(JP,A) 特開 昭63−16461(JP,A) 特開 平7−233415(JP,A) 特開 平6−293919(JP,A) 特開 平6−293918(JP,A) 特開 平6−293914(JP,A) 特開 平5−295434(JP,A) 特開 平5−171341(JP,A) 特開 平3−236420(JP,A) 特開 昭61−79745(JP,A) 特開 平7−278664(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/00 B22D 11/108 C22C 38/00 301 C22C 38/58

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転炉で溶製して出鋼した溶鋼を真空脱ガ
    スおよび/もしくはMn、Siによる脱酸を行って溶鋼
    中の酸素を250ppm以下とし、次いで化学組成がT
    i:10〜70重量%の成分と残部はFe、Mn、Si
    のうち1種または2種以上および不可避的不純物とから
    なる合金を溶鋼に添加し、重量%で、Ti:0.010
    〜0.2%、C:0.01〜0.35%、Si:0.0
    2〜0.5%、Mn:0.1〜2.0%、Ca:0.0
    005〜0.02%を含有し、かつAl:0.005%
    以下、P:0.015%以下、S:0.008%以下に
    制限し、あるいはさらに(a)Cu:0.2〜0.6
    %、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.2〜3.0%
    の1種または2種以上、または(b)Mo:0.10〜
    1.0%、Nb:0.01〜0.15%、V:0.01
    〜0.15%の1種または2種以上の(a)、(b)何
    れか一方または両方を含有し、残部は鉄および不可避的
    不純物からなる鋼を連続鋳造することを特徴とする耐サ
    ワー性の優れた高靱性電縫鋼管用鋼の製造方法。
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