JP2000063997A - マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管 - Google Patents

マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管

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JP2000063997A
JP2000063997A JP10238622A JP23862298A JP2000063997A JP 2000063997 A JP2000063997 A JP 2000063997A JP 10238622 A JP10238622 A JP 10238622A JP 23862298 A JP23862298 A JP 23862298A JP 2000063997 A JP2000063997 A JP 2000063997A
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Masahiko Hamada
昌彦 濱田
Kazuhiro Ogawa
和博 小川
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶接部に高温割れがなく、しかも強度、靭性お
よび耐食性に優れた溶接金属を有する低Cマルテンサイ
ト系ステンレス鋼溶接鋼管を提供する。 【解決手段】母材部がC:0.1%以下、Cr:8〜15%を含有
し、面積率で80%以上がマルテンサイトのマルテンサイ
ト系ステンレス鋼であり、溶接金属がC:0.1%以下、Cr:
(母材のCr含有量-0.5)〜(母材のCr含有量+2.0)%、
Ti:0.003〜0.02%を含み、しかも式「Ni+30C+0.5Mn」で
与えられるNi当量が12%以下、式「Cr+Mo+1.5Si+0.5N
b」で与えられるCr当量が8〜16%で、かつNi当量とCr当
量との関係が式「0.4(Cr当量-8)≦Ni当量≦1.5(Cr当
量-8)」を満たす溶接鋼管。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、C含有量が0.1
%以下のマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管とその製
造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年生産されている石油や天然ガス中に
は、炭酸ガスが含まれている場合が増加している。この
ような環境中では、炭素綱や低合金鋼は著しく腐食され
るため、石油や天然ガス中に腐食抑制剤が添加されてい
る。しかし、腐食抑制剤の効果は、高温では失われる。
また、海底パイプラインでは、腐食抑制剤の添加回収に
膨大なコストがかかる。 【0003】このような背景から腐食抑制剤の添加を必
要としない耐食材料として、AISI規格に規定される
410鋼に代表されるような12〜13%のCrを含有
するマルテンサイト系ステンレス鋼が広く使用され始め
ている。上記の410鋼には、高強度を得るために比較
的多量(0.16〜0.22%程度)のCが添加されて
いる。 【0004】パイプラインは、パイプとパイプを突き合
わせ溶接接合して施設される。上記の410鋼のような
比較的炭素量の高いマルテンサイト系ステンレス鋼を通
常の溶接方法で突き合わせ溶接した場合には、溶接熱影
響部の硬さが上昇し、衝撃特性を劣化させる。また、硬
さの上昇は、硫化物応力腐食割れの感受性が高まる点で
も問題がある。このような溶接後の硬さ上昇は、溶接施
工後に600℃程度以上に保持するような熱処理を施す
ことにより回避することが可能である。しかし、このよ
うな溶接後の熱処理は、やはり膨大なコスト上昇をもた
らす。このような問題を解決する手段としては、C量を
下げて溶接熱影響部での硬さ上昇を抑えることが有効で
ある(例えば、特開平2−243740号公報、同5−
287455号公報参照)。C量を低くすることによ
り、炭酸ガスを含有する石油や天然ガス用のラインパイ
プに適する継目無鋼管の製造が可能となる。 【0005】さらに、特開平4−191319号公報に
は、熱延法で製造した低C(≦0.08%)のマルテン
サイト系ステンレス鋼板を管状に連続的に成形した後、
電縫溶接法にて溶接し、次いでその電縫溶接部を熱処理
することにより、湿潤な炭酸ガスを含有する石油や天然
ガス用のラインパイプに適する電縫鋼管を得る方法が示
されている。 【0006】マルテンサイト系ステンレス鋼は、基本的
には高強度を有することから、薄肉化によるパイプライ
ン施工コストの削減が可能である。しかし、継目無鋼管
は、比較的小径かつ肉厚の厚い鋼管の製造に適した方法
であるためにこのようなニーズを満足させることが困難
であった。また、電縫鋼管は薄肉化が可能であるが、電
縫鋼管の溶接部にはペネトレーターと呼ばれる特有の欠
陥が発生することが知られており、この欠陥を起点とし
て破壊が生じる可能性があり、安全上の問題が大きい。 【0007】ラインパイプの製造方法としては、上記の
継目無製管法や電縫管製造法の他に鋼板をプレス成形し
た後に溶融溶接によりシーム溶接する方法がある。この
種の代表的な製管方法としては、サブマージアーク溶接
を利用したUOE製管法がある。これらの製管方法は、
比較的大径で、かつ厚肉(肉厚10〜20mm)のライ
ンパイプを製造するのに適した代表的な製管法である。
しかし、低Cのマルテンサイト系ステンレス鋼を対象に
した製管方法については、適当な方法がないのが実状で
ある。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の現状に鑑み、低Cマルテンサイト系ステンレス鋼を母
材にして溶融溶接法により製造された溶接鋼管で、その
溶接部に高温割れがなく、しかも溶接部の強度、靭性お
よび耐食性に優れた溶接鋼管を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく、マルテンサイト系ステンレス鋼の化学
組成について検討する一方、製管溶接を実施する際の問
題点の抽出を行った結果、次のことを知見した。 【0010】マルテンサイト系ステンレス鋼(Cr含有
量8〜15%)が充分な溶接性と耐食性を有するには、
C量を0.1%以下に低減することが重要である。 【0011】溶接入熱量が20kJ/cm以上の溶接を
行った場合には、溶接ビードの中央に高温割れが発生す
る。これは、溶接入熱量の増大に伴う熱応力の増大と溶
融金属量の増加が重畳して凝固割れ感受性が高まったた
めと推測される。 【0012】一般に、高温割れ感受性を改善するには、
P、Sなどの不純物元素を低減することが重要とされて
いる。しかし、不純物元素の低減は、コスト上昇の原因
となる。また、不純物の低減のみで高温割れを完全に停
止することは困難である。 【0013】さらに、オーステナイト系ステンレス鋼の
溶接金属の高温割れ感受性を改善するには、面積分率に
して数%のフェライト相を含有させることが効果的であ
ることが知られている。 【0014】ステンレス鋼の凝固組織は、例えば、図1
に示すシェフラーの組織図を用い、後に示す式(Ni
+30×C+0.5×Mn)で求められるNi当量と、
式(Cr+Mn+1.5×Si+0.5×Nb)で求
められるCr当量から推定することが可能である。な
お、上記両式中の各元素記号は、鋼中のそれぞれの元素
の含有量(重量%)を意味する。 【0015】そこで、溶接金属中のNi量(またはNi
当量)を変化させることによって凝固形態を変化させ、
高温割れの発生の有無を調査した。その結果、Cr当量
とNi当量とを特定の範囲に調整すれば、高温割れが発
生しなくなることを知見した。具体的には、溶接金属の
Cr当量とNi当量とを図1中に示す斜線領域、すなわ
ちCr当量を8〜16%、Ni当量を12%以下とし、
かつNi当量とCr当量との関係を式「0.4×(Cr
当量−8)≦Ni当量≦1.5×(Cr当量−8)」を
満たすように調整すれば、高温割れが発生しないことを
知見した。 【0016】この理由は、高温割れが発生しない組成域
では、凝固形態がフェライト−オーステナイト包晶域と
考えられることから、凝固形態をコントロールすること
によって高温割れ感受性が低下したためと推定される。 【0017】一方、円周溶接施工時のTクロス部での特
性を考慮すると、溶接金属においても低C化が重要であ
り、溶接金属のC量は母材と同等程度にする必要があ
る。また、耐食性の確保の観点から、母材と同等あるい
は母材以上のCrを溶接金属に含有させる必要がある。 【0018】さらに、溶接金属の靭性を確保するには、
Ti量のコントロールが極めて重要で、適量のTi、具
体的には0.005〜0.02重量%のTi添加によっ
て溶接金属の靭性が著しく向上することを知見した。た
だし、0.02%を超えるTi添加は、かえって溶接金
属の靭性を低下させる。この微量のTi添加による靭性
の改善と、0.02%を超える過剰なTi添加による靭
性劣化の理由は、次のように推定される。 【0019】まず、粒内の組織は、Ti添加の有無にか
かわらず、マルテンサイト組織であり、低合金鋼の溶接
金属で見られるようなTi添加に伴う組織の微細化は生
じていない。Ti添加によってスピネル酸化物の生成が
促進されるとの報告もあるが、スピネル酸化物は、球形
の比較的微細な酸化物を形成しやすいことから、Ti添
加による靭性の改善は、酸化物の形態変化に起因したも
のである可能性が高い。また、過剰なTi添加による靭
性の低下は、TiNなどの析出物の形成が靭性に悪影響
を及ぼしているものと推測される。 【0020】本発明は、上記の知見をもとに完成された
もので、その要旨は下記のマルテンサイト系ステンレス
溶接鋼管にある。 【0021】重量%で、C:0.1%以下、Cr:8〜
15%を含有し、面積率で80%以上がマルテンサイト
であるマルテンサイト系ステンレス鋼からなる溶接鋼管
であって、溶接金属の化学組成が下記の条件を満たすマ
ルテンサイト系ステンレス溶接鋼管。 【0022】溶接金属の化学組成;重量%で、C:0.
1%以下、Cr:(母材のCr含有量−0.5)〜(母
材のCr含有量+2.0)%、Ti:0.003〜0.
02%を含み、しかも下記の式で与えられるNi当量
が12%以下、式で与えられるCr当量が8〜16%
で、かつNi当量とCr当量との関係が下記の式を満
たす。 【0023】 Ni当量=Ni+30×C+0.5×Mn・・・・・・・・・・・・・ Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb・・・・・・・・ 0.4×(Cr当量−8)≦Ni当量≦1.5×(Cr当量−8)・・ ここで、式および式中の元素記号は、溶接金属中の
それぞれの元素の含有量(重量%)を意味する。 【0024】上記本発明のマルテンサイト系ステンレス
溶接鋼管は、母材部の肉厚が10〜25mmであること
が好ましい。 【0025】 【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。なお、以下において、特にことわらない限り
「%」は「重量%」を意味する。 【0026】まず、母材のマルテンサイト系ステンレス
鋼について説明する。 【0027】本発明における母材のマルテンサイト系ス
テンレス鋼は、C:0.1%以下、Cr:8〜15%を
含有し、面積率で80%以上がマルテンサイト組織であ
れば、どのようなマルテンサイト系ステンレス鋼であっ
てもよい。 【0028】これは、C含有量が0.1%を超えると、
製管溶接および円周溶接後の溶接熱影響部の硬さが高く
なりすぎて靭性および耐応力腐食割れ性が低下する。C
の下限は特に定めないが、耐食性、特に溶接部の耐応力
腐食割れ性の観点からは低ければ低いほど好ましい。 【0029】また、Cr含有量が8%未満では、炭酸ガ
ス環境下での十分な耐食性の確保が困難になり、逆に1
5%超では強度の調整ができなくなる。さらに、マルテ
ンサイト組織が面積率で80%未満であると、 局部的
な耐食性低下域が形成され、必要な耐食性が確保できな
くなるためである。 【0030】なお、上記のCとCr以外の成分について
は特に制限しないが、下記であることが望ましい。 【0031】Si:Siは脱酸元素として添加される
が、1%超の過剰な添加は靭性の低下を招くので、その
含有量の上限は1%とするのが好ましい。 【0032】Mn:Mnは脱酸元素あるいは強化元素と
して添加されるが、2%超の過剰な添加は耐応力腐食割
れ性の低下を招くので、その含有量の上限は2%とする
のが好ましい。 【0033】Al:Alは脱酸元素として添加される
が、0.1%超の過剰な添加は鋼の清浄度を低下させる
ので、その含有量の上限は0.1%とするのが好まし
い。 【0034】N:Nは不可避的不純物であり、過剰に存
在すると母材の靭性を低下させるので、その含有量の上
限は0.02%とするのが好ましい。 【0035】PおよびS:PとSは上記のNと同様の不
可避的不純物であり、母材の熱間加工性の改善および溶
接金属の高温割れ感受性の低減の観点からは低ければ低
いほどよいが、過剰な低減はコスト上昇を招く。しか
し、いずれの元素も0.02%程度までであれば特に問
題はないので、その含有量の上限は0.02%とするの
が好ましい。 【0036】Ni、CuおよびCo:これらの元素は添
加しなくてもよいが、添加すればいずれの元素も湿潤炭
酸ガス環境下での耐食性の改善および母材の靭性改善に
寄与する。その効果は、いずれの元素も0.5%以上で
顕著になるが、Niの場合10%でその効果が飽和して
これ以上添加してもコスト上昇を招くだけであり、Cu
とCoは5%でその効果が飽和する。このため、添加す
る場合のNi、CuおよびCoの含有量は、それぞれ
0.5〜10%、0.5〜5%、0.5〜5%とするの
が好ましい。なお、これらの元素は、いずれか1種の添
加または2種以上の複合添加でもよい。 【0037】MoおよびW:これらの元素は添加しなく
てもよいが、添加すればいずれの元素も湿潤炭酸ガス環
境下での耐食性と耐応力腐食割れ性の改善に寄与する。
その効果は、いずれの元素も0.2%以上で顕著になる
が、いずれの元素も3%でその効果が飽和する。このた
め、添加する場合のMoとWの含有量は、いずれも0.
2〜3%とするのが好ましい。なお、これらの元素は、
いずれか一方の添加または両方の複合添加でもよい。 【0038】Ti、NbおよびV:これらの元素は添加
しなくてもよいが、添加すればいずれの元素も強度調整
に寄与する。その効果は、Tiでは0.003%以上、
NbとVでは0.01%以上で顕著になるが、Tiの場
合0.02%超、NbとVの場合0.05%超の過剰な
添加は溶接熱影響部および溶接金属の靭性低下を招く。
このため、添加する場合のTi、NbおよびVの含有量
は、それぞれ0.003〜0.02%、0.01〜0.
05%、0.01〜0.05%とするのが好ましい。な
お、これらの元素は、いずれか1種の添加または2種以
上の複合添加でもよい。 【0039】次に、溶接金属の化学組成を前記のように
規定した理由について説明する。 【0040】C:0.1%以下溶接金属のC量が0.1
%超であると、溶接金属および溶接熱影響部の硬さが高
くなりすぎ、これらの部分の靭性および耐応力腐食割れ
性が低下する。したがって、C含有量は0.1%以下と
した。なお、下限は特に定めないが、耐食性、特に耐応
力腐食割れ性の観点からは低ければ低いほど好ましい。 【0041】Cr:溶接金属のCr量が母材のCr量よ
りも0.5%を超えて少ないと、溶接金属が選択腐食さ
れ、溶接部の耐食性が確保できなくなる。逆に、溶接金
属中のCr量が母材のCr量よりも2.0%を超えて多
いと、溶接熱影響部に選択腐食が生じやすくなる。した
がって、Cr含有量は、(母材のCr含有量−0.5)
〜(母材のCr含有量+2.0)%とした。 【0042】Ti:0.003〜0.02% Tiは、溶接金属の靭性を確保するために添加するが、
その含有量が0.003%未満では効果が得られず、
0.02%を超えて含有させると逆に靭性が低下する。
したがって、Ti含有量は0.003〜0.02%とし
た。 【0043】Ni当量およびCr当量:前述の式で求
められる溶接金属のNi当量が12%超、同じく前述の
式で求められる溶接金属のCr当量が8%未満または
16%超であり、かつNi当量の値が{0.4×(Cr
当量−8)}%未満または{1.5×(Cr当量−
8)}%超であると、凝固割れが発生し、欠陥のない健
全な溶接金属部が形成されない。したがって、Ni当量
を12%以下、Cr当量を8〜16%とした上で、Ni
当量とCr当量の関係を「{0.4×(Cr当量−
8)}%≦Ni当量≦{1.5×(Cr当量−8)}
%」と定めた。 【0044】なお、上記以外の成分については特に制限
しない。しかし、溶接金属中には、母材中に含まれる成
分が必然的に混入し、上記以外の成分を含有することに
なるが、それらの成分の含有量が前述の母材と同じ範囲
内であれば、その特性が劣化することはない。ただし、
一般に、溶接金属中には、母材に比べて多量の酸素が混
入し、酸化物の増加を招いて靭性低下を招く。したがっ
て、溶接金属中の酸素含有量は低い方が好ましく、0.
1%以下であれば特に問題ない。このため、上記以外の
成分は、前述の母材と同じにし、その上で酸素含有量を
0.1%以下に制限するのが好ましい。 【0045】上記本発明の溶接鋼管を構成する溶接金属
の化学組成は、製管溶接にワイヤなどの添加材を用いな
い例えばプラズマ溶接法やレーザ溶接法などの溶接方法
を採用する場合には、化学組成を本発明で規定する溶接
金属の化学組成と同じに調整した母材を用いることによ
り、何らの問題もなく得られる。 【0046】また、例えばサブマージドアーク溶接法や
TIG溶接法などのように、ワイヤなどの添加材を用い
る溶接方法を採用する場合には、得られた溶接金属の化
学組成は母材の化学組成と用いるワイヤの化学組成の双
方に依存する。このため、本発明の溶接鋼管をサブマー
ジドアーク溶接法やTIG溶接法を用いて製造するに
は、用いる溶接方法に応じて、上記の化学組成を有する
溶接金属が得られるようにその化学組成を調整した母材
とワイヤを用いれば、上記と同様に何らの問題もなく得
られる。 【0047】なお、サブマージドアーク溶接法で得られ
た溶接鋼管の場合、その溶接金属に後熱処理を施すのが
好ましく、この場合には強度および耐食性を損なわせる
ことなく、溶接金属の靭性をより一層向上させることが
できる。ただし、その後熱処理は、900℃以上で焼入
れし、次いで800℃以下で焼戻すのが好ましく、その
理由は次の通りである。すなわち、900℃未満で焼入
れしたのでは溶体化が不十分になり、800℃超で焼戻
ししたのではオーステナイト化して再焼入れされる領域
生じるからである。 【0048】なお、焼入れ温度の上限および焼戻し温度
の下限は、特に制限されない。しかし、焼入れ温度が1
200℃超では結晶粒が粗大化し、靭性が低下する。ま
た、焼戻し温度が500℃未満では十分な硬度低下が図
れず、耐食性の向上が望めない。このため、焼き入れ温
度は900〜1200℃、焼戻し温度は500〜800
℃とするのが好ましい。 【0049】上記の後熱処理は、溶接金属(シーム部)
のみまたはシーム部を含む鋼管の一部に施せば十分であ
るが、溶接鋼管全体に施してもよい。 【0050】 【実施例】表1に示す化学組成を有するとともに、表2
に示すように、マルテンサイト相の面積率が95%と9
0%の2種類の肉厚20mmの鋼板(母材)と、表3に
示す化学組成を有する直径4.0mmの7種類のワイヤ
を準備した。なお、表1に示す母材No. B2の鋼板につ
いては、熱延後、900℃に5分間加熱保持した後に水
焼入れし、次いで640℃に60分間加熱保持する焼戻
し処理を施し、0.2%耐力と靭性とを表2に示す値、
すなわち0.2%耐力を610MPa(API規格のX
80グレードを満たす)、破面遷移温度(vTs)を−
50℃に調整した。 【0051】 【表1】 【0052】 【表2】 【0053】 【表3】【0054】《実施例1》表1および表2に示す鋼板の
うちのNo. B1の鋼板を対象にした。B1の鋼板を管状
に成形した後その突き合わせ部を、表3に示すワイヤの
うちのNo. W1〜W4のワイヤを用いる一方、1電極の
サブマージアーク溶接機を用い、入熱量を種々変えて
(10〜40kJ/cm)製管溶接した。この時、フラ
ックスには、市販の溶融型のフラックス(住金溶接工業
(株)社製の商品名:#−100)を用いた。 【0055】そして、得られた溶接鋼管の溶接金属の化
学組成を調べる一方、高温割れの発生の有無を調べ、そ
の結果を溶接条件と併せて表3に示した。 【0056】なお、表3中のNieq欄はNi当量、C
req欄はCr当量、※1欄は前述の式の左辺の計算
値、※2欄は同式の右辺の計算値を示し、式欄の結
果の×印はNi当量が前述の式を満たさない場合、○
印はNi当量が前述の式を満たす場合を示している。 【0057】 【表3】 【0058】表3に示す結果から明らかなように、上記
の溶接条件で得られた溶接鋼管のうち、各成分の含有量
は本発明で規定する範囲内ではあるが、Ni当量が本発
明で規定する範囲を外れる溶接金属を有する試番1〜3
および6の溶接鋼管には、溶接ビードの中央部に高温割
れが発生していた。 【0059】これに対し、各成分の含有量およびNi当
量がともに本発明で規定する範囲内の溶接金属を有する
溶接鋼管の溶接ビードには、高温割れは発生していなか
った。 【0060】《実施例2》表1および表2に示す鋼板の
うちのNo. B2の鋼板を対象にし、表3に示すワイヤの
うちのNo. W2およびNo. W5〜W7のワイヤを用いる
一方、3電極のサブマージアーク溶接機(DC−AC−
AC)を用い、入熱量を40kJ/cm一定にて両面各
一層の溶接とした以外は上記の実施例1と同様の条件
で、製管溶接を模擬した溶接継手の溶接を行った。 【0061】そして、得られた溶接継手の溶接金属の化
学組成を調べる一方、高温割れの発生の有無を調べた。
また、溶接金属の強度、靭性および耐食性についても調
査した。さらに、溶接後の溶接継手部に、950℃に5
分間加熱保持した後に水焼入れし、次いで650℃に5
分間加熱保持する焼戻しの後熱処理を施し、後熱処理の
溶接金属の強度、靭性および耐食性についても調査し
た。 【0062】なお、強度は、溶接継手部から図2に示す
試験片を採取して引張試験に供し、その破断位置を調べ
ることにより評価した。また、靭性は、溶接継手部から
溶接金属の最終凝固部分にノッチを付与した衝撃試験片
(JIS Z 2202に規定される4号試験片)を採
取してシャルピー衝撃試験に供し、破面遷移温度を調べ
ることにより評価した。 【0063】さらに、耐食性は、それぞれ下記の条件に
よる耐炭酸ガス腐食試験とカソード防食下での耐応力腐
食割れ試験を行い、いずれの場合も試験後の試験片を目
視観察し、耐炭酸ガス腐食性については局部腐食の発生
の有無、カソード防食下での耐応力腐食割れ性について
は割れの発生の有無を調べることに評価した。ただし、
カソード防食下での耐応力腐食割れ試験については、後
熱処理を施したものについてのみ行った。 【0064】耐炭酸ガス腐食性試験:鋼板の表面から5
mm肉厚方向に入った位置より採取し、その表面を粗さ
600番のエメリー紙で研磨した後に脱脂乾燥した、長
手方向の中央に溶接ビードが位置する幅22mm、厚さ
3mm、長さ100mmの試験片を、流速2.5m/s
ec.、液温125℃の圧力30bar.にて炭酸ガス
を飽和させた5%食塩水中に720hr浸漬。 【0065】カソード防食下での耐応力腐食割れ性試
験:鋼板の表面から5mm肉厚方向に入った位置より採
取した長手方向の中央に溶接ビードが位置する幅10m
m、厚さ2mm、長さ75mmの試験片に、3点曲げ治
具を用いて母材の0.2%耐力(610MPa)と同じ
応力を付加し、この試験片を温度25℃、電位−130
0mVvs.SCEの人工海水中に720hr浸漬。 【0066】以上の調査結果のうち、高温割れの発生の
有無については溶接条件と併せて表3に、それ以外の結
果については表5に示した。 【0067】 【表4】 【0068】 【表5】【0069】表4および表5に示す結果から明らかなよ
うに、いずれの試番の溶接金属もNi当量およびCr当
量が本発明で規定する条件を満たしており、高温割れは
発生していなかった。また、溶接のままの強度は、いず
れも母材部で破断し良好であり、耐炭酸ガス腐食性も良
好であった。 【0070】ところが、Ti量が本発明で規定する範囲
を外れる溶接金属(試番8、10)は靭性が悪く、特に
Ti量が0.024%と多い試番10では靭性が著しく
悪かった。しかし、Tiを含む溶接金属(試番8、10
および11)では、溶接後に後熱処理を施すと、靭性が
母材とほぼ同等にまで上昇した。また、後熱処理後の強
度は、いずれも母材部で破断し良好であり、耐炭酸ガス
腐食性およびカソード防食下での耐応力腐食割れ性も良
好であった。 【0071】 【発明の効果】本発明の溶接鋼管は、溶接部に高温割れ
がなく、しかも溶接部の強度、靭性および耐食性に優れ
ているので、パイプラインの構成部材として用いて極め
て有用である。
【図面の簡単な説明】 【図1】シェフラーの組織図を示す図である。 【図2】実施例における引張試験で用いた試験片の形状
と寸法を示す図である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】重量%で、C:0.1%以下、Cr:8〜
    15%を含有し、面積率で80%以上がマルテンサイト
    であるマルテンサイト系ステンレス鋼からなる溶接鋼管
    であって、溶接金属の化学組成が下記の条件を満たすこ
    とを特徴とするマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管。 溶接金属の化学組成;重量%で、C:0.1%以下、C
    r:(母材のCr含有量−0.5)〜(母材のCr含有
    量+2.0)%、Ti:0.003〜0.02%を含
    み、しかも下記の式で与えられるNi当量が12%以
    下、式で与えられるCr当量が8〜16%で、かつN
    i当量とCr当量との関係が下記の式を満たす。 Ni当量=Ni+30×C+0.5×Mn・・・・・・・・・・・・・ Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb・・・・・・・・ 0.4×(Cr当量−8)≦Ni当量≦1.5×(Cr当量−8)・・ ここで、式および式中の元素記号は、溶接金属中の
    それぞれの元素の含有量(重量%)を意味する。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003293095A (ja) * 2002-04-04 2003-10-15 Walsin Lihwa Corp 高強度マルテンサイトステンレス鋼材
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