JP2006097908A - 溶接構造貯湯タンク及びその構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 缶体素材であるフェライト系ステンレス鋼表面におけるCr欠乏層の生成を抑えるための合金設計を行ない、適正な溶接条件により、溶接部の耐食性に優れた溶接構造貯湯タンク及びその構築方法を提供する。
【解決手段】 C:0.015質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr17.0〜21.0質量%,Mo:0.5〜1.7質量%,Ni:0.6質量%以下,Cu:0.8質量%以下,Nb:0.05〜0.5質量%,Ti:0.05〜0.3質量%,N:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.2質量%,さらに必要に応じてB:0.005質量%以下を含み、かつ19.5<Cr+3Mo<23.5の関係を満足し、残部が実質的にFeからなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼板を素材とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、接合部を溶接接合した溶接構造貯湯タンク及びその構築方法に関する。
ステンレス鋼は、温水環境で優れた耐食性を呈し、且つ必要な強度ももっていることから、貯湯タンク用の材料として広く使用されている。しかし、使用条件によっては腐食を起こし、漏水の原因となることがある。貯湯タンクの耐食性において最も問題となる腐食は、溶接隙間部の腐食である。貯湯タンクの溶接隙間部の腐食を防止するため、Al等の犠牲陽極を設置する犠牲防食法,外部電源から防食電流を供給する陰極防食法等が採用されている。しかし、Alを犠牲陽極として使用すると、Alの腐食生成物によって水が白濁したり、フィルターに目詰りが生じる等のトラブルが発生し易い。そのため、より耐食性に優れた鋼材を無防食で使用することが最近の傾向である。なかでも、電気温水器缶体のように比較的構造が単純なものでは、塩化物溶液中での応力腐食割れの危険がほとんどなく、比較的安価なフェライト系ステンレス鋼の使用が主流となってきている。
具体的には、低炭素・低窒素の19Cr−2.0Mo−Ti/Nb鋼(SUS444)が用いられている。
ところで、温水器の缶体は鏡板、胴を溶接で接合しているために、腐食は溶接部、特に鏡板と胴の溶接隙間部で生じ易くなる。このため、温水環境での溶接部耐食性が要求されている。
上記低炭素・低窒素の19Cr−2.0Mo−Ti/Nb鋼は、耐粒界腐食性に優れ、加工性及び溶接性もある程度満足できる材料である。しかし、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比較して再不動態化能は強いものの、溶接部の耐食性低下が大きい。しかも、フェライト系ステンレス鋼の耐隙間腐食性は隙間構造で大きく変化するため、低炭素・低窒素19Cr−2.0Mo−Ti/Nb鋼を用いたとしても、溶接状態や溶接隙間構造によっては隙間腐食が生じる問題があった。
そこで、溶接隙間の回避を目的とした構造として、特許文献1に、低炭素・低窒素の19Cr−2.0Mo−Ti/Nb鋼板を使用した温水器用缶体であって、鏡板への胴の挿入深さを20mmまでとして隙間腐食の発生を避けたものが提案されている。
特開昭54−72711号公報
溶接構造貯湯タンクには、耐応力腐食割れ性やコストの観点からフェライト系ステンレス鋼が用いられる。しかし、フェライト系ステンレス鋼も上記したように溶接構造で用いられると、溶接部の耐食性低下が大きいため本来の優れた耐食性が必ずしも活かされていない。
溶接部の耐食性低下は、溶接時の加熱によりCrが酸化され、酸化物の直下でCr欠乏層が形成されるためと考えられている。しかしながら、本発明者らは、溶接構造貯湯タンクの耐食性に及ぼす要因について種々検討した結果、目視で酸化スケールが確認できない程度のごく僅かな酸化を生じていても耐食性が低下することがわかった。ただし、腐食形態が孔食の場合には、一旦Cr欠乏層で腐食が起こるが、酸素が供給されてステンレス鋼は再不動態化し、腐食の進行は止められる。一方、腐食形態が隙間腐食の場合には、隙間内の液が隙間外の液と入れ替わらないために、酸素が不足して再不動態化し難く、腐食は継続する。したがって、溶接隙間構造となる部位では耐食性に留意する必要がある。
このような腐食メカニズムを前提にすると、まず、表面酸化によってCr欠乏層が生成されることを極力抑制することが有効である。また溶接隙間が形成されないような缶体構造を設計することが有効である。
そこで、本発明は、缶体の素材であるフェライト系ステンレス鋼表面における溶接部近傍でのCr欠乏層の生成を抑えるための合金設計を行なうとともに、溶接隙間構造を避けた缶体構造を採用し、しかも酸化物を形成させない条件で溶接することにより、溶接部の耐食性に優れた溶接構造貯湯タンクを提供することを目的とする。
本発明の溶接構造貯湯タンクは、その目的を達成するため、C:0.015質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr17.0〜21.0質量%,Mo:0.5〜1.7質量%,Ni:0.6質量%以下,Cu:0.8質量%以下,Nb:0.05〜0.5質量%,Ti:0.05〜0.3質量%,N:0.015質量%以下及びAl:0.01〜0.2質量%を、さらに必要に応じてB:0.005質量%以下を含み、かつ19.5<Cr+3Mo<23.5の関係を満足し、残部が実質的にFeからなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼板が素材として用いられ、当該素材鋼板の溶接接合により構築されていることを特徴とする。
フランジが接合された溶接構造貯湯タンクの場合には、フランジの溶接接合位置をフランジのOリング装着位置から20mm以上離しているものが好ましい。
そして、溶接部の耐食性に優れた溶接構造貯湯タンクは、上記素材鋼板を、シールガスを供給しながら溶接接合する際に、溶接部の温度が400℃以下になるまで溶接ビード及び溶接熱影響部を含めた溶接部にシールガスを供給し続けることにより構築される。
本発明の溶接構造貯湯タンクは、従来の低炭素・低窒素19Cr−2.0Mo−Ti/Nb鋼に代えて、素材としてCr欠乏層を形成し難いステンレス鋼を用いたために、溶接部耐食性、特に耐隙間腐食性を向上させた耐久性に優れた溶接構造貯湯タンクが得られている。
また、隙間が形成されないような缶体構造を採用するとともに、溶接時に酸化によるCr欠乏層が形成されがたいシール溶接法を採用することにより、耐食性が一段と向上した溶接構造貯湯タンクが得られる。
このように、素材の合金設計と、比較的簡素な缶体構造及び比較的単純な溶接手段の採用により、耐久性に優れた溶接構造貯湯タンクを比較的廉価に提供できるため、本発明は、貯湯タンクの普及に貢献できる。
本発明者らは、溶接隙間部の再不動態化能に及ぼす合金元素の影響について、種々検討を行なってきた。その結果、溶接隙間部の再不動態化能は、Crの含有量を増加させることによって向上するが、Ti及びAlを組合せて添加するとき著しく改善されることを見出した。再不動態化能の改善は、Crに比較してTi及びAlが溶接時に優先的に酸化し、Crの酸化に起因したCr欠乏層が鋼材表層部に生成することが抑制されることに起因する。しかし、Ti又はAlの単独添加では、再不動態化能に顕著な改善はみられない。すなわち、Alの酸化物の標準生成自由エネルギーは非常に低く、溶接時の雰囲気でAl酸化物を生成するには酸素ポテンシャルが高すぎる。しかし、Ti及びAlを組合せて添加するとき、Tiの優先酸化によって酸素ポテンシャルが下げられ、Alの酸化が容易になる。その結果、Alの酸化皮膜が形成され、Crの酸化防止、すなわちCr欠乏層の生成防止に有効に作用する。
本発明で素材として用いられるフェライト系ステンレス鋼としては、上記のような耐食性のみならず、加工性及び溶接性も必要とされる。
溶接構造貯湯タンク用フェライト系ステンレス鋼に必要な特性を得るため、各合金元素の含有量及び合金元素間の成分関係は、次のように定められる。
C,N:
鋼中に含まれる不可避的成分であり、C含有量及びN含有量の低減によって材料が軟質になり、加工性が向上する。また、炭化物,窒化物の生成が少なくなることから、溶接性及び溶接部の耐食性が向上する。この点で、C含有量及びN含有量は低い方が好ましく、本発明ではともに上限を0.015質量%と規定した。
Si:
脱酸のほか、鋼を硬質にする元素である。溶接構造貯湯タンクでは高圧で使用する場合があり、缶体として要求される強度を得るために含有量を調節する。しかし、添加量が多くなると溶融金属の粘性が低下するとともに、溶接部の高温割れに対して有害であるので、含有量の上限は1.0質量%、望ましくは0.4質量%とする。
Mn:
鋼中に不純物として微量存在するSと結合し、化学的に不安定な硫化物であるMnSを形成して耐食性を低下させる。さらに固溶するMnも耐食性を阻害するので低い方が好ましく、本発明においてはその上限を1.0質量%に規定した。
P:
母材及び溶接部の靭性を劣化させることから、低い方が望ましい。しかし、含Cr鋼の脱Pは困難であり、過度にP含有量を低減することは製造コストの上昇を招く。そこで、本発明においては、P含有量の上限を0.045質量%に規定した。
S:
Mnと結合し、MnSを生成する。MnSは、孔食の起点となり耐食性を阻害するが、孔食の成長を促進する作用はない。しかし、溶接部の高温割れに悪影響を及ぼすために、低い方が好ましく、本発明では上限を0.005質量%に規定した。
Cr:
フェライト系ステンレス鋼の不動態化能の高める上で重要な合金成分であり、溶接部の耐孔食性,耐隙間腐食性及び一般の耐食性を向上させる。これら耐食性の向上は、Cr含有量17.0質量%以上で顕著になる。耐食性向上効果は添加量とともに大きくなるが、Cr量が多くなると機械的性質や靭性を損ね、コスト増にも繋がる。このため、耐食性の観点から必要量のCr量に止めることが好ましい。本件発明の溶接構造の貯湯タンクは温水環境で使用され、溶接時のCrの酸化ロスも小さいので、21.0質量%を上限とする。
Mo:
Crとともに耐食性を高める有効な合金成分である。Moの耐食性改善効果の発現にはCrが必須で、Cr量が高い鋼ほど耐食性改善効果は大きくなる。本発明の貯湯タンクが温水環境で用いられることを考慮すると、0.5質量%に満たないMo量では耐食性の改善効果は小さい。一方、1.7質量%を超えて添加すると、加工性の低下やコストの上昇を招く。本発明では、溶接時の加熱によるCrの酸化とこれに伴うCr欠乏層の形成が小さいこと、Crの欠乏層の形成に対してMoは殆ど影響しないことから、Mo量は0.5〜1.7質量%とする。
Ni:
フェライト系ステンレス鋼の靭性を改善する上で有効な合金成分である。しかも、腐食の進行を抑制する作用を有する。しかし、多量にNiを添加することは、鋼材コストを上昇させるばかりでなく、鋼を硬質にして加工性を阻害する。したがって、本発明においては、通常のフェライト系ステンレス鋼で規定されている0.6質量%以下に定めた。
Cu:
適量のCuは、フェライト系ステンレス鋼の孔食電位を向上させ、腐食の進行を抑える作用を有するが、過剰に添加するとむしろ耐食性を阻害する。本発明においては0.8質量%を上限とする。
Nb:
Tiと同様に、C,Nとの親和力が強く、フェライト系ステンレス鋼において問題となる粒界腐食を防止する上で不可欠の合金成分である。この効果を発揮させるには、0.05質量%が必要である。また、温水缶体では使用する水道圧に耐えるレベルの強度が要求されるが、Nbは鋼の機械的強度を高くするためにも不可欠の合金成分である。ただし、過剰に添加すると溶接高温割れが生じるようになり、溶接部靭性も低下するので上限は0.5質量%とする。
Ti:
本発明フェライト系ステンレス鋼における重要な合金成分であり、Alとの複合添加によって、溶接時に鋼材の表層部にAlの酸化皮膜を容易に形成させ、Crの酸化ロスを防止して溶接部耐食性の低下を抑える。また、Nbと同様にC及びNを固定し耐粒界腐食を向上させる作用を呈する。これらの効果を発揮させるには、0.05質量%が必要である。しかし、多量のTiが含まれると素材の表面品質や溶接性を低下させるので。0.3質量%を上限とする。
Al:
本発明フェライト系ステンレス鋼における重要な合金成分である。すなわち、Tiとの組合せの添加によって、溶接時の加熱で鋼表面にAl酸化皮膜を優先的に形成し、Crの酸化ロスを防止することができる。その結果、耐食性の低下が抑制される。しかし、0.01質量%未満のAl含有量では、Alの酸化皮膜が形成されにくい。逆に、0.2質量%を超えるAl含有量では、鋼材の表面品質と溶接性が低下する。したがって、本発明においては、Al含有量を0.01〜0.2質量%の範囲に定めた。
B:
フェライト系ステンレス鋼の二次加工性を改善する作用を有する。また、溶接熱影響部における結晶粒の粗大化を抑制し、溶接継手の強度低下に対して有効に作用する。本発明では必要に応じて添加される。しかし、過剰に添加すると結晶粒界等にCr硼化物として析出して耐食性を低下させるので、添加する場合は、上限を0.005質量%とする。
19.5<Cr+3Mo<23.5:
Cr+3Moの指標はステンレス鋼の耐食性レベルを表わす。耐食性の改善はCr及びMo量の調整が基本で、Moの改善効果はCrの3倍である。この値が大きいほど、ステンレス鋼の耐食性は向上するが、用途や使用方法に応じて適量に調整される。
本発明は、上水を用いる貯湯タンクで、材料成分と溶接施工方法、或いは構造の特定により溶接による耐食性低下を避けることができたため、Cr+3Moの必要最少量は、19.5質量%である。一方、23.5質量%以上のCr+3Mo量は過剰であり、コスト増や成形性の低下をもたらす。
上記のようなフェライト系ステンレス鋼板が素材として用いられ、溶接法で接合されて貯湯タンクが構築される。
ところで、貯湯タンクは、図1に示されるように缶本体5にフランジ1が取付けられ、当該フランジ部でOリング3を挟んでプレート2が取付けられることがある。このような構造では、Oリング3とフランジ1或いはプレート2を構成する鋼板との間に隙間が形成される形態となる。この隙間となる部位に酸化スケールが形成されていると耐隙間腐食性は著しく低下することになる。
したがって、Oリングが装着される位置は、溶接の熱影響を受けても酸化されないように、溶接部から極力離すことが好ましい。
詳細は、次の実施例に記載するが、本発明者らは、Oリング装着位置と溶接線との間の間隔を種々変更して耐食性を調査した結果、その距離を20mm以上離すと、溶接の影響を受けずに隙間腐食性を低下させることはなかった。
実際の貯湯タンクを溶接法で構築する際にも、溶接部近傍が表面酸化され難いような溶接条件を採用する必要がある。
通常のTIG溶接時においても、Arガスをシールガスとして溶接に供給して溶接部の近傍が表面酸化されることを抑制している。そこで、貯湯タンクにフランジを溶接接合する工程において、熱影響部の耐食性に及ぼすArガスシールの影響についても検討した。
その結果、詳細は実施例で示すが、溶接部の材料温度が400℃以下になるまでシールガスを流し続ける必要があることを見出した。当該フェライト系ステンレス鋼は、材料温度が400℃を超える温度では表面酸化しやすいために、溶接部近傍の表面酸化を抑制するためには、溶接温度〜400℃の間を確実にシールガスで覆う必要があることを意味している。
実施例1:
表1に示した成分組成を有する各種ステンレス鋼を実験用真空溶解炉にて溶製し、熱間圧延により板厚3mmの熱延板を製造した。熱延板を板厚1.0mmまで冷間圧延し、1000〜1070℃で仕上げ焼鈍を施し、酸洗したのち供試材とした。
なお、表1中、No.1〜No.6は、本発明で規定する要件を満足したフェライト系ステンレス鋼であり、何れも固定化元素としてNb及びTiを複合添加しており、微量元素としてAlを含有している。No.1〜No.4は18%Crの鋼で、その内、No.3はNi含有鋼、No.4はCuとNiを含有する鋼である。No.5とNo.6は、Mo量が異なる20%Crの鋼である。
No.7〜No.10は比較鋼であり、製造履歴は本発明鋼と同じである。その内、No.7はMo及びTiが本発明の組成範囲から外れた鋼、No.8はAlを含まない鋼である。また、No.9はMoが、No.10はCrがそれぞれ本発明の組成範囲に満たない鋼である。
耐食性の評価は、TIG溶接により隙間部を形成した試験片を作製し、浸漬試験を行なって評価した。溶接隙間試験片は、図2に示すように、20mm×40mm,板厚1mmの板を2枚重ね、短辺側の一端をTIG溶接し、他方にφ5mmのガラス棒を差し込んだものである。
浸漬試験は、80℃に保持した1000ppmの濃度のCl-水溶液中で30日間行なった。図3に試験方法を示すが、腐食を促進させるためのPt補助カソード21を試験片22に接続させている。当該浸漬試験では、容量300リットルの温水缶体に相当するカソード能力を有している。
そして、耐食性の評価は、再不動態皮膜が形成されるまでの時間と、腐食試験液から引き上げたときの侵食の深さで判定した。
再不動態皮膜は、寒天質の塩橋23を介して照合電極24を試験片22に接続し、試験片22に流れる腐食電流が1μA未満になったときに形成されたものとした。そして、再不動態皮膜の形成が1週間以内に行なわれているものを耐食性が良いとした。なお、図3中、25が試験液、本実施例では80℃に保持した1000ppmの濃度のCl-水溶液であり、26はエアレーションノズルである。
侵食の深さは、30日間の浸漬後に、各試験片を腐食試験液から引き上げて調査した。そして、最大侵食深さが0.1mm未満のものを耐食性が良いとした。
その結果を表2に示す。
なお、表2中、◎は7日以内に腐食電流が1μA未満になって消滅したものを、○は30日以内に腐食電流が1μA未満になって消滅したものを、そして●は30日以上にわたって1μA以上の腐食電流が流れ続けたものを示す。
さらに、△は腐食試験液から引き上げた試験片に全く腐食が認められなかったものを、▲は0.1mm以下の腐食が認められたものを、さらに、■は0.1mm以上に腐食していたものを示している。
Figure 2006097908
Figure 2006097908
表2に示す結果からもわかるように、本発明の貯湯タンク用素材(試験No.1〜6)は、何れも隙間腐食による浸食深さが0.1mm以下と浅く、隙間腐食は進行していないことがわかる。一方、JIS444鋼である比較例のNo.7は、溶接部耐食性が本発明のタンク用素材に比べて劣っていた。Tiを含有していないためにAlの優先酸化が十分に進行せず、Crの欠乏層が形成されて耐食性が低下したものと思われる。No.8は元々Al含有量が少ないために、Alの優先酸化が起こらず、Crの欠乏層が形成されて耐食性が低下したものと思われる。
No.9はMo量が、No.10はCr含有量が元々少ないために、Ti及びAlを組合せて添加しても十分な耐食性を発揮することができていない。
実施例2:
実施例1で用いたNo.1の鋼板を素材として用い、図1に示すように缶体5にフランジ1を溶接線4でTIG溶接した貯湯タンクについて、溶接位置が隙間腐食性に及ぼす影響について調査した。なお、フランジ1上でOリング3を挟んで上鏡板となるプレート2が取付けられた断面形状を有するものである。
フランジ1にOリング3を介してプレート2が取付けられると、Oリング3とフランジ及びプレートとの間に隙間が形成されるので、この隙間と溶接線4との間隔xが隙間腐食性に与える影響を、x値を種々変えて調査したものである。
そして、溶接熱影響部の耐食性評価を、JIS G0577「ステンレス鋼の孔食電位測定法」に準じて行なった。溶接加熱により熱影響部に酸化物が形成され、すなわちCrの欠乏層が形成されて耐食性が低下すると、孔食電位の測定で通常見られる不動態領域がなくなり、測定開始直後から腐食電流が増加する。
溶接による耐食性の低下がない、或いはごく僅かであることの判定基準は、本明細書においては、不動態領域が存在すること、すなわち0.1V,SCEでの電流値が10μA/cm2以下であることとした。
その結果を表3に示す。
Figure 2006097908
表3の結果から明らかなように、溶接位置をOリング装着位置よりも20mm以上離すことにより、溶接の熱影響によっても表面酸化は抑えられ、隙間腐食が発生することはない。一方、溶接位置がリング装着位置から20mm離れていないと、熱影響を受けて表面酸化が起こってCrの欠乏層が形成され、耐食性が低下、すなわち隙間腐食が起こり易くなっている。
実施例3:
実施例1で用いたNo.1の鋼板を素材として用い、缶体にフランジをTIG溶接で溶接接合する際の、熱影響部の耐食性に及ぼすArガスシールの影響について調査した。
缶体とのTIG溶接線から10mm離れた位置のフランジに熱電対を取付け、フランジ部をAr雰囲気にするためArガス供給ノズルを設けた蓋を取付けた。本実施例でのTIG溶接は、このノズルからフランジの温度が200〜500℃の各温度に低下するまでArガスを流しながら行なった。
このようにして溶接接合したフランジから孔食電位測定のための試験片を切り出し、前記孔食電位測定法により溶接熱影響部の耐食性評価を行なった。
その結果を表4に示す。
Figure 2006097908
表4の結果から明らかなように、溶接熱影響部の温度が400℃に下がるまでArガスシールを継続して行なうと、当該熱影響部表面の酸化が抑えられ、Cr欠乏層の形成が抑制されて、隙間腐食が発生することはない。一方、溶接熱影響部の温度が400℃よりも高い時点でシールガスの供給を停止すると、熱影響を受けて表面酸化が進行し、Crの欠乏層が形成されて耐食性が低下、すなわち隙間腐食が起こり易くなっている。
フランジを備えた貯湯タンクの構造を説明する部分断面図 隙間腐食試験片の形状を示した図 試験片を試験液に浸漬し、腐食試験を行なう態様を説明する図

Claims (4)

  1. C:0.015質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.0質量%以下,P:0.045質量%以下,S:0.005質量%以下,Cr17.0〜21.0質量%,Mo:0.5〜1.7質量%,Ni:0.6質量%以下,Cu:0.8質量%以下,Nb:0.05〜0.5質量%,Ti:0.05〜0.3質量%,N:0.015質量%以下及びAl:0.01〜0.2質量%を含み、かつ19.5<Cr+3Mo<23.5の関係を満足し、残部が実質的にFeからなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼板が素材として用いられ、当該素材鋼板の溶接接合により構築されていることを特徴とする溶接構造貯湯タンク。
  2. フェライト系ステンレス鋼板が、さらにB:0.005質量%以下を含むものである請求項1に記載の溶接構造貯湯タンク。
  3. フランジが接合された溶接構造貯湯タンクであって、前記フランジの溶接接合位置がフランジのOリング装着位置から20mm以上離されている請求項1又は2に記載の溶接構造貯湯タンク。
  4. シールガスを供給しながら貯湯タンクを溶接法で構築する際、溶接部の温度が400℃以下になるまで溶接ビード及び溶接熱影響部を含めた溶接部にシールガスを供給し続ける請求項1〜3のいずれかに記載の溶接構造貯湯タンクの構築方法。
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